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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】楽器用調律器
(51)【国際特許分類】
   G10G 7/02 20060101AFI20230809BHJP
【FI】
G10G7/02 100
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2018228209
(22)【出願日】2018-12-05
(65)【公開番号】P2020091387
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】592201092
【氏名又は名称】後藤ガット有限会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591032703
【氏名又は名称】群馬県
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(72)【発明者】
【氏名】梶原 篤
(72)【発明者】
【氏名】後藤 昌甲
(72)【発明者】
【氏名】宮島 洋
(72)【発明者】
【氏名】新嶋 修
(72)【発明者】
【氏名】内海 祐太
(72)【発明者】
【氏名】松本 真
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健斗
【審査官】中村 天真
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/043469(WO,A1)
【文献】特開平03-001194(JP,A)
【文献】特開2012-141358(JP,A)
【文献】特開2010-181798(JP,A)
【文献】米国特許第04281577(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10G 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2つの検出軸を有する加速度センサと、
前記加速度センサの少なくとも2つの検出軸の出力に基づいて、楽器の操作により生じた楽音の振動の周波数を検出周波数として検出する周波数検出手段であって、前記加速度センサの少なくとも2つの検出軸の出力信号のうち波形振幅の最大値と最小値との差が最も大きい検出軸の出力信号、又は前記波形振幅の最大値と最小値との差が閾値以上の検出軸の出力信号、若しくは前記少なくとも2つの検出軸の出力信号の合成値に基づいて、前記検出周波数を検出する周波数検出手段と、
前記検出周波数の基準となる基準周波数を設定する基準周波数設定手段と、
前記検出周波数と前記基準周波数との周波数偏差を検出する周波数偏差検出手段と、
前記周波数偏差に基づいて、前記楽器の調律情報を表示する表示制御手段と、
を備える、楽器用調律器。
【請求項2】
前記加速度センサは、3つの検出軸を有する3軸加速度センサである、
請求項1に記載の楽器用調律器。
【請求項3】
調律対象の設定操作を受け付ける操作手段を備え、
前記基準周波数設定手段は、前記操作手段が受け付けた前記設定操作に基づいて、前記基準周波数を設定する、
請求項1又は2に記載の楽器用調律器。
【請求項4】
前記基準周波数設定手段は、前記周波数検出手段が検出した前記検出周波数に基づいて、前記基準周波数を設定する、
請求項1からのいずれか1項に記載の楽器用調律器。
【請求項5】
前記加速度センサの出力に基づいて、楽器の姿勢情報を検出する姿勢検出手段を備え、
前記基準周波数設定手段は、前記姿勢検出手段が検出した前記姿勢情報に基づいて、前記基準周波数を設定する、
請求項1からのいずれか1項に記載の楽器用調律器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器を調律するために用いる楽器用調律器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ギター、バイオリン、ピアノ、サックス、トランペット、フルート等の楽器を調律するために用いる調律器(チューナ)が知られている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
従来の調律器は、装置全体を動作させるための電池等の電源と、楽器の操作により生じた楽音の振動を検出する振動センサと、電源のオン/オフ、調律の設定条件、及び表示条件等を入力するためのスイッチ等の操作手段と、調律の設定条件や調律の状況を表示するための表示手段と、振動センサや操作手段からの入力を基に計算を行い、表示手段に情報を表示させる計算機(CPU)とから構成されるのが一般的である。
【0004】
例えば、ギターのような弦楽器の場合、調律器は一般的に弦楽器のヘッド部に取り付けられる。弦楽器において調律対象となる弦が操作されると、その操作により生じた楽音の振動は振動センサの出力信号に基づいて検出される。そして、検出された周波数と基準周波数との周波数偏差が検出され、その検出結果に基づいて調律情報が表示手段に表示される。これにより、演奏者は、表示手段に表示された調律情報を確認しながら、楽器の調律を行うことが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-181798号公報
【文献】特開2012-141358号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の調律器に備えらえる振動センサの感度方向は1軸のみであるため、楽器に取り付けられた調律器の姿勢(取り付け状態)によっては、振動センサの感度が不足してしまい、楽器から発生する楽音の振動を的確に捉えられない場合がある。
【0007】
この対応策の1つとして、楽器に対する調律器の取り付け位置や向きを規定することが考えられる。これにより、楽器から発生する楽音の振動に対して振動センサの感度が最も大きくなるように調律器を配置することが可能となる。しかし、このような対応策は、楽器や調律器におけるデザインの制約を招き、演奏者にとって使い勝手が良くないという問題がある。
【0008】
また、楽器の特性により、特定の周波数において振動センサの感度方向の振動が弱く、他の方向の振動が強く出るような場合もある。このような場合、従来の調律器では、振動センサの感度が1軸方向のみである指向性を有するため、楽器の調律を正確に行えないことになる。
【0009】
特許文献1、2には、振動センサを備えた調律器が開示されているものの、これらの課題については全く言及されておらず、当然のことながら、その課題を解決するための手段については記載も示唆もない。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、使い勝手が良く、安定かつ正確な調律が可能な楽器用調律器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、以下の発明を提供する。
【0012】
本発明の第1態様に係る楽器用調律器は、少なくも2つの検出軸を有する加速度センサと、加速度センサの出力に基づいて、楽器の操作により生じた楽音の振動の周波数を検出周波数として検出する周波数検出手段と、検出周波数の基準となる基準周波数を設定する基準周波数設定手段と、検出周波数と基準周波数との周波数偏差を検出する周波数偏差検出手段と、周波数偏差に基づいて、楽器の調律情報を表示する表示制御手段と、を備える。
【0013】
本発明の第2態様に係る楽器用調律器は、第1態様において、加速度センサは、3つの検出軸を有する3軸加速度センサである。
【0014】
本発明の第3態様に係る楽器用調律器は、第1態様又は第2態様において、周波数偏差検出手段は、加速度センサの出力のうち最大値と最小値との差が最も大きい検出軸の出力に基づいて周波数偏差を検出する。
【0015】
本発明の第4態様に係る楽器用調律器は、第1態様から第3態様のいずれか1つの態様において、調律対象の設定操作を受け付ける操作手段を備え、基準周波数設定手段は、操作手段が受け付けた設定操作に基づいて、基準周波数を設定する。
【0016】
本発明の第5態様に係る楽器用調律器は、第1態様から第4態様のいずれか1つの態様において、基準周波数設定手段は、周波数検出手段が検出した検出周波数に基づいて、基準周波数を設定する。
【0017】
本発明の第6態様に係る楽器用調律器は、第1態様から第5態様のいずれか1つの態様において、加速度センサの出力に基づいて、楽器の姿勢情報を検出する姿勢検出手段を備え、基準周波数設定手段は、姿勢検出手段が検出した姿勢情報に基づいて、基準周波数を設定する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、使い勝手が良く、安定かつ正確な調律が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】第1の実施形態に係る調律器の構成例を示したブロック図である。
図2】第1の実施形態に係る調律器の動作を示したフローチャートである。
図3】第1の実施形態に係る調律器の他の取り付け形態を示した図である。
図4】第2の実施形態に係る調律器の構成例を示したブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について詳説する。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る調律器10の構成例を示したブロック図である。図1に示すように、本実施形態の調律器10は、加速度センサ12と、波形成形回路14と、演算制御部16と、表示部18と、操作部20とを備えている。また、図示は省略したが、調律器10は、調律器10の各部を動作させるための電源を供給する電源部を備えている。電源部は、一次電池または二次電池で構成される。
【0022】
加速度センサ12は、互いに直交する3つの検出軸(X軸、Y軸、Z軸)を有する3軸加速度センサで構成される。この加速度センサ12は、各検出軸に対応した3つのセンサ12a、12b、12cを有しており、各センサ12a、12b、12cからそれぞれ対応する検出軸についての検出信号S、S、Sを出力する(以下、「加速度センサ12の出力信号S、S、S」という。)。加速度センサ12の出力信号S、S、Sは、波形成形回路14に対して出力される。なお、加速度センサ12は、その出力信号S、S、Sを、デジタル信号で出力するデジタル出力タイプのものでもよいし、アナログ信号で出力するアナログ出力タイプであってもよい。但し、アナログ出力タイプは、デジタル出力タイプと比べてA/D変換、通信などでの遅延が生じないので、変化への応答性が速く、楽器の調律には望ましい。本実施形態では、一例として、アナログ出力タイプの加速度センサ12が用いられる。
【0023】
波形成形回路14は、ハイパスフィルタや増幅回路などを備え、加速度センサ12の出力信号S、S、Sを出力信号毎にハイパスフィルタでフィルタ処理して、各出力信号S、S、Sに含まれるノイズ成分(低周波成分)を除去し、さらに出力信号毎に増幅回路で増幅してパルス状波形に変換し、変換後の出力信号S、S、Sを出力信号T、T、Tとして演算制御部16に対して出力する。
【0024】
演算制御部16は、波形成形回路14の出力信号T、T、Tに各種処理を施して楽器の調律情報を検出して表示部18に表示させるものである。
【0025】
演算制御部16は、CPU、メモリ(RAM、ROM、不揮発性メモリ)、A/Dコンバータ、その他周辺回路などを備えている。メモリには、CPUを動作させるためのプログラムの他、各種データが記憶される。演算制御部16は、メモリに記憶されたプログラムがCPUによって実行されることによって、図1に示した各機能が実現される。
【0026】
演算制御部16は、信号選択部22と、周波数検出部24と、周波数偏差検出部26と、基準周波数設定部28と、記憶部30と、表示制御部32として機能する。
【0027】
信号選択部22は、波形成形回路14の出力信号T、T、Tのうち、波形振幅の最大値と最小値との差が最も大きい出力信号を検出用信号Uとして選択して、選択した検出用信号Uを周波数検出部24に対して出力する。
【0028】
周波数検出部24は、信号選択部22の出力信号である検出用信号Uの周波数を検出して、検出した周波数(以下、「検出周波数」という。)Fを周波数偏差検出部26に対して出力する。なお、後述するように、周波数検出部24は、基準周波数設定部28に対して検出周波数Fを出力するようにしてもよい。周波数検出部24は、本発明の周波数検出手段の一例である。
【0029】
周波数偏差検出部26は、基準周波数設定部28によって設定された基準周波数Fと、周波数検出部24で検出された検出周波数Fとの偏差(以下、「周波数偏差」という。)ΔFを検出し、検出した周波数偏差ΔFを表示制御部32に対して出力する。周波数偏差検出部26は、周波数偏差検出手段の一例である。
【0030】
基準周波数設定部28は、基準周波数Fを設定し、設定した基準周波数Fを周波数偏差検出部26に対して出力する。基準周波数Fは、周波数検出部24で検出された検出周波数Fの周波数偏差を算出するための基準となる。基準周波数Fの設定は、ユーザ(演奏者)が操作部20を使用して設定することができる。基準周波数設定部28は、本発明の基準周波数設定手段の一例である。
【0031】
操作部20は、調律器10の筐体に設けられたスイッチやボタンなどで構成される。操作部20は、ユーザによる操作により、調律対象とする音名(又は弦の番号、弦名等)を設定する設定操作を受け付けると、その設定操作に対応する操作信号を基準周波数設定部28に出力する。操作部20は、本発明の操作手段の一例である。
【0032】
記憶部30には、各音名(又は弦の番号、弦名等)に対応する基準周波数が周波数テーブルとして記憶されており、この周波数テーブルは基準周波数設定部28が参照することが可能となっている。
【0033】
表示制御部32は、周波数偏差検出部26が検出した周波数偏差ΔFに基づいて、表示部18に楽器の調律情報を表示する。表示部18は、針式メータや液晶表示素子、LED素子などの少なくともいずれか1つ以上で構成される。なお、表示部18は、視覚的に調律情報を表示するものの他、スピーカなど聴覚的に調律情報を表示するものであってもよい。また、表示部18は、視覚的なものと聴覚的なものとの両方を組み合わせて調律情報を表示するものであってもよい。表示制御部32は、本発明の表示制御手段の一例である。
【0034】
次に、本実施形態の調律器10の動作について、図2を参照して説明する。図2は、本実施形態の調律器10の動作を示したフローチャートである。ここでは、楽器として、ギター等の弦楽器の調律を行う場合を一例に説明する。
【0035】
まず、前処理として、調律器10に備えられるクリップ(不図示)で弦楽器のヘッド部等を挟み込むことにより、調律器10を弦楽器に取り付ける。
【0036】
次に、操作部20において、ユーザの操作により調律対象の設定操作が行われる(ステップS10)。調律対象としては、複数の弦にそれぞれ対応する音名に限らず、弦の番号又は弦名を設定するようにしてもよい。調律対象の設定操作が行われると、その設定操作に対応した操作信号が、操作部20から基準周波数設定部28に対して出力される。
【0037】
基準周波数設定部28は、調律対象の設定操作に対応した操作信号を取得すると、記憶部30に記憶された周波数テーブルを参照して、調律対象の設定操作で設定された調律対象(音名など)に対応する基準周波数を読み出し、読み出した基準周波数を基準周波数Fとして設定する(ステップS12)。そして、基準周波数設定部28は、設定した基準周波数Fを周波数偏差検出部26に対して出力する。
【0038】
次に、ユーザの操作によって調律対象となる弦が操作されると、その操作により生じた楽音が調律器10に入力される(ステップS14)。このとき、調律器10に備えられる加速度センサ12は、調律器10に入力された楽音の振動を検出する(ステップS16)。
【0039】
加速度センサ12の出力信号S、S、Sは、波形成形回路14を介して信号選択部22に入力され、波形振幅の最大値と最小値との差が最も大きい出力信号が検出用信号Uとして選択される。そして、周波数検出部24において、選択された検出用信号Uの周波数が検出周波数Fとして検出される(ステップS18)。
【0040】
次に、周波数偏差検出部26において、基準周波数Fと検出周波数Fとの周波数偏差ΔFが検出される(ステップS20)。そして、表示制御部32による制御により、表示部18には、楽器の調律情報として、調律対象の音名(又は弦の番号、弦名等)と、その音名から決定される基準周波数との周波数偏差ΔFが表示される。なお、表示部18が表示する情報としては、これらの調律情報に限らず、他の調律情報を含んでいてもよい。以上により、本フローチャートの処理を終了する。
【0041】
このように本実施形態の調律器10によれば、楽器の操作により生じた楽音の振動は、加速度センサ12によって検出される。この加速度センサ12は、互いに直交する3つの検出軸を有する3軸加速度センサで構成されるので、3つの検出軸の出力信号のうち最も信号強度が大きくなる検出軸の出力信号を用いて、楽器の操作により生じた楽音の振動の周波数(検出周波数F)を検出することが可能となる。これにより、楽器に対する調律器10の取り付け位置や向きに影響されることなく、楽器から発生する楽音の振動を的確に捉えることができる。したがって、使い勝手が良く、安定かつ正確な調律が可能となる。
【0042】
なお、本実施形態では、好ましい態様の一例として、加速度センサ12を3軸加速度センサで構成したが、これに限らず、加速度センサ12は、互いに直交する2つの検出軸を有する2軸加速度センサで構成されていてもよい。この場合にも、1軸方向のみの感度を有する振動センサを備えた従来の調律器に比べて、使い勝手が良く、安定かつ正確な調律が可能となる。
【0043】
なお、本実施形態では、信号選択部22において、波形成形回路14の出力信号T、T、Tのうち、波形振幅の最大値と最小値との差が最も大きい出力信号を検出用信号Uとして選択しているが、これに限られるものではない。例えば、波形成形回路14の出力信号T、T、Tのうち、波形振幅の最大値と最小値との差が所定の閾値以上の出力信号を用いるようにしてもよい。
【0044】
また、本実施形態では、信号選択部22は、波形成形回路14の出力信号T、T、Tを二乗平均、加算平均、又は単純和などの信号を求め、この求めた信号を用いて楽器の操作により生じた楽音の振動の周波数(検出周波数F)を検出するようにしてもよい。
【0045】
また、本実施形態では、基準周波数設定部28は、操作部20における調律対象の設定操作に応じて基準周波数Fを設定するようにしたが、これに限られるものではない。例えば、図1の破線矢印で示すように、周波数検出部24が検出した検出周波数Fを基準周波数設定部28に対して出力するように構成し、基準周波数設定部28は、記憶部30に記憶された周波数テーブルを参照して、検出周波数Fに最も近い周波数を基準周波数Fとして設定してもよい。この場合、ユーザは、操作部20を介して調律対象の設定操作が不要となるので利便性が向上する。
【0046】
また、本実施形態では、例えば、ギターなどの弦楽器の場合には、従来の調律器と同様に、弦楽器のヘッド部に調律器10のクリップで挟み込んで着脱自在に取り付ける構成としたが、調律器10の取り付け形態はこれに限らず、例えば、楽器部品にネジ止めで調律器10を取り付ける構成としてもよい。また、後述する図3のような形態も採用することが可能である。
【0047】
図3は、調律器10の他の取り付け形態を示した図であり、弦楽器のヘッド部52を示した図である。なお、図3において、符号50aはヘッド部52の表面52a(弦54が配置される側の面)を示した図であり、符号50bはヘッド部52の裏面52b(弦54が配置される側とは反対側の面)を示した図である。
【0048】
図3に示すように、弦楽器のヘッド部52の裏面52bに調律器10の加速度センサ12、波形成形回路14、及び演算制御部16を含む調律器本体60を取り付ける。また、各弦54に対応して設けられるペグポスト56に導光体及び発光素子(LED等)を組み込み、これを表示部18として用いる。これにより、各弦54の調律情報を弦54毎(ペグポスト56毎)に色の変化や明るさの変化、点灯、点滅、消灯による状態変化等によって示すことも可能である。また、このように調律器本体60及び表示部18を配置することで、楽器本来の意匠を変えずに、楽器に調律器10を備えることができる。
【0049】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。以下、第1の実施形態と共通する部分については説明を省略し、本実施形態の特徴的部分を中心に説明する。
【0050】
図4は、第2の実施形態に係る調律器10Aの構成例を示したブロック図である。
【0051】
図4に示すように、第2の実施形態の調律器10Aは、第1の実施形態の構成に加え、さらに姿勢検出部34を備えている。姿勢検出部34には、加速度センサ12の出力信号S、S、Sが姿勢検出部34に入力されるようになっている。
【0052】
姿勢検出部34は、加速度センサ12の出力信号S、S、Sに基づき、調律器10Aが取り付けられた楽器の姿勢(傾き、向き)を示す姿勢情報を検出するものである。姿勢検出部34が検出した姿勢情報は、基準周波数設定部28に出力される。姿勢検出部34は、本発明の姿勢検出手段の一例である。
【0053】
加速度センサ12の出力信号S、S、Sには、それぞれ、楽器の操作により生じた楽音の振動の他に、楽器に取り付けられた調律器10Aの姿勢によって変化する加速度信号が含まれている。そこで、姿勢検出部34は、加速度センサ12の出力信号S、S、Sの変化を公知の方法で検出することにより、楽器の姿勢を示す姿勢情報を検出する。
【0054】
基準周波数設定部28は、姿勢検出部34が検出した姿勢情報に基づいて、基準周波数Fを設定することが可能となっている。記憶部30には、調律器10Aが取り付けられた楽器の姿勢に対応する基準周波数が周波数テーブルとして記憶されている。基準周波数設定部28は、姿勢検出部34から姿勢情報を取得すると、記憶部30に記憶された周波数テーブルを参照して、楽器の姿勢に応じた基準周波数を基準周波数Fとして設定する。
【0055】
第2の実施形態によれば、楽器の姿勢を示す姿勢情報を検出する姿勢検出部34を備えたので、姿勢検出部34の検出結果を利用して基準周波数Fを設定することが可能となっている。そのため、操作部20を介さずに基準周波数Fを素早く設定することが可能となる。また、調律器10Aが取り付けられた楽器を上下に振るなどの加速度の変化を利用して、操作部20の操作に置き換えることが可能となる。
【0056】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、以上の例には限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0057】
10…調律器、10A…調律器、12…加速度センサ、14…波形成形回路、16…演算制御部、18…表示部、20…操作部、22…信号選択部、24…周波数検出部、26…周波数偏差検出部、28…基準周波数設定部、30…記憶部、32…表示制御部、34…姿勢検出部、52…ヘッド部、54…弦、56…ペグポスト、60…調律器本体
図1
図2
図3
図4