(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】検査情報管理システム
(51)【国際特許分類】
G06Q 10/20 20230101AFI20230809BHJP
G06Q 50/06 20120101ALI20230809BHJP
【FI】
G06Q10/20
G06Q50/06
(21)【出願番号】P 2022183294
(22)【出願日】2022-11-16
【審査請求日】2022-11-16
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 「[公開日] 令和4年5月19日 [公開場所] 釧路ガス株式会社(北海道釧路市寿4-1-2)」その他令和4年12月15日付け発明の新規性の例外の規定の適用を受けるための証明書に記載の行為で公開
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000241902
【氏名又は名称】北海道瓦斯株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000191397
【氏名又は名称】新和産業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】398028385
【氏名又は名称】北海道地図株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 貴文
(72)【発明者】
【氏名】小谷 滋彦
(72)【発明者】
【氏名】鹿嶋 純一
(72)【発明者】
【氏名】落藤 元彦
(72)【発明者】
【氏名】島田 亮
(72)【発明者】
【氏名】平森 利理
(72)【発明者】
【氏名】丹野 元輝
(72)【発明者】
【氏名】石崎 一隆
(72)【発明者】
【氏名】西野 沙織
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 宏隆
【審査官】橋沼 和樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/088178(WO,A1)
【文献】特開2016-212767(JP,A)
【文献】特開2008-065421(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06Q 10/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺な検査対象設備の配置を示す配置情報を記憶する記憶手段と、
検査の実行を示すユーザ入力を受け付ける入力手段と、
前記検査対象設備に対して行われた検査位置を
、衛星測位による位置の測定結果に基づいて取得する検査位置取得手段と、
前記記憶手段が記憶した前記配置情報が示す前記検査対象設備の配置に対して、前記検査位置取得手段が取得した前記検査位置に基づいて検査済範囲を導出する検査済範囲導出手段とを備えて
おり、
前記検査位置取得手段が、前記検査位置を取得する方法が異なるモードとして、単位時間ごとに取得される前記測定結果が示す位置を単位時間ごとの前記検査位置とする第1モードと、前記ユーザ入力に応じた時点で取得される前記測定結果が示す位置をその時点の前記検査位置とする第2モードとを選択的に取ることを特徴とする検査情報管理システム。
【請求項2】
前記検査済範囲導出手段が、前記検査位置から所定の距離の範囲にある前記検査対象設備を検査済みとすることを特徴とする請求項
1に記載の検査情報管理システム。
【請求項3】
検査に当たって検査員に携帯させる、ディスプレイが搭載された携帯端末を備えており、
前記携帯端末が、前記記憶手段が記憶した前記配置情報及び前記検査済範囲導出手段による導出結果に基づいて、前記検査対象設備の配置を示す地図の表示と、前記検査対象設備の配置における前記検査済範囲を示す前記地図上の表示とを前記ディスプレイに行わせることを特徴とする請求項1
又は2に記載の検査情報管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長尺な検査対象設備に対する検査に使用される検査情報管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、配管や配線等の長尺な設備に対し、特許文献1のような移動式の検査装置を用いたガスの漏洩検査等の検査が行われている。このような検査において、従来、検査の進捗管理として、例えば、配管等が表示された地図に検査済範囲を手書きしていくことがなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような手書きによる進捗管理は、手間が掛かったり正確性に欠けたりするおそれがある。長尺な設備に対する検査の進捗管理の自動化が望まれている。
【0005】
本発明の目的は、長尺な設備に対する検査の進捗管理の自動化が可能な検査情報管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の検査情報管理システムは、長尺な検査対象設備の配置を示す配置情報を記憶する記憶手段と、前記検査対象設備に対して行われた検査位置を取得する検査位置取得手段と、前記記憶手段が記憶した前記配置情報が示す前記検査対象設備の配置に対して、前記検査位置取得手段が取得した前記検査位置に基づいて検査済範囲を導出する検査済範囲導出手段とを備えている。
【0007】
これによると、記憶手段が記憶している配置情報が示す検査対象設備の配置に対して、検査済範囲導出手段が検査位置の取得結果に基づいて検査済範囲を導出する。したがって、検査の進捗管理の自動化が可能である。
【0008】
また、本発明においては、前記検査位置取得手段が、衛星測位による位置の測定結果に基づいて前記検査位置を取得することが好ましい。これによると、検査位置が衛星測位によって取得される。このため、検査の進捗管理の自動化がより高度に可能となる。
【0009】
また、本発明においては、前記検査位置取得手段が、単位時間ごとに取得される前記測定結果が示す位置を単位時間ごとの前記検査位置とすることが好ましい。これによると、衛星測位により単位時間ごとに取得される測定結果が示す位置が検査位置として取得される。このため、連続的に検査が実行される場合に検査位置が連続的に取得可能である。
【0010】
また、本発明においては、前記検査済範囲導出手段が、前記検査位置から所定の距離の範囲にある前記検査対象設備を検査済みとすることが好ましい。これによると、検査位置から所定の距離の範囲にある検査対象設備が検査済みとなる。したがって、検査済範囲が適切に取得可能である。
【0011】
また、本発明においては、検査に当たって検査員に携帯させる、ディスプレイが搭載された携帯端末を備えており、前記携帯端末が、前記記憶手段が記憶した前記配置情報及び前記検査済範囲導出手段による導出結果に基づいて、前記検査対象設備の配置を示す地図の表示と、前記検査対象設備の配置における前記検査済範囲を示す前記地図上の表示とを前記ディスプレイに行わせることが好ましい。これによると、検査員は、検査済範囲を表示した地図情報を携帯端末のディスプレイ上で確認しながら検査を進めていくことができる。
【0012】
また、本発明においては、検査の実行を示すユーザ入力を受け付ける入力手段を備えており、前記検査位置取得手段が、前記ユーザ入力に応じた時点で取得される前記測定結果が示す位置をその時点の前記検査位置とすることが好ましい。これによると、検査が不連続に実行される場合に、ユーザ入力に応じて検査実行のタイミングに合わせて、検査位置が適切に取得可能である。
【0013】
また、本発明においては、検査の実行を示すユーザ入力を受け付ける入力手段を備えており、前記検査位置取得手段が、前記検査位置を取得する方法が異なるモードとして、単位時間ごとに取得される前記測定結果が示す位置を単位時間ごとの前記検査位置とする第1モードと、前記ユーザ入力に応じた時点で取得される前記測定結果が示す位置をその時点の前記検査位置とする第2モードとを選択的に取ることが好ましい。これによると、連続的に検査が実行される場合と検査が不連続に実行される場合とのそれぞれに適切に対応可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係る検査のイメージ図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る検査情報管理システムの概略構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2の検査情報管理システムが有する各装置の構成を示すブロック図である。
【
図4】検査マッピング画像を表示した
図1の携帯端末の画面の一例である。
【
図5】
図1の検査情報管理システムが実行するバッファリングの概念図である。
【
図6】(a)検査マッピング画像を表示した
図1の携帯端末の画面の一例である。(b)
図6(a)から検査が進んだ後に検査マッピング画像を表示した携帯端末の画面の一例である。
【
図7】
図4とは別のモードにおける検査マッピング画像を表示した画面の一例である。
【
図8】
図7から画面遷移した後の検査マッピング画像を表示した画面の一例である。
【
図9】
図7の別のモードにおける検査済範囲の取得方法を表す概念図である。
【
図10】
図7の別のモードにおける検査済範囲の取得方法を表す概念図であって、
図9から検査が進んだ状態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施形態に係る検査情報管理システム1について図面を参照しつつ説明する。検査情報管理システム1は、ガス導管における漏洩検査の進捗管理に使用される。ガス導管には本支管及び内管が含まれている。本支管とは道路に平行して埋設されたガス導管である。内管とは建物等の敷地内に埋設されたガス導管である。本実施形態に係る漏洩検査には、本支管に対して
図1のカート式ガス検知器500を用いて連続的に行う検査(以下、「連続検査」とする)と、内管に対して別のガス検知器を用いて不連続的に行う検査(以下、「不連続検査」とする)とがある。
【0016】
連続検査では、
図1に示すように、検査員Pが、カート式ガス検知器500を作動状態に維持させつつ、本支管の敷設された方向に押して歩く。カート式ガス検知器500は、地表の空気を逐次吸引して捕集し、その中にガスが漏洩しているか否かを連続的に検知する。不連続検査では、検査員Pが内管に沿って移動しつつ、適宜のタイミングでガス検知器を作動させる。これにより、ガス検知器が、周囲の空気にガスが漏洩しているか否かを不連続的に検知する。
【0017】
検査情報管理システム1は、上記のようなガス導管の漏洩検査に当たって検査済範囲を自動で取得し、管理することを主な目的とする。検査情報管理システム1による検査済範囲を取得する処理に当たっては、本支管に対する連続検査に応じた本支管モード(本発明でいう第1モード)と、内管に対する不連続検査に応じた内管モード(本発明でいう第2モード)との2つのモードからいずれかが選択される。各モードの詳細については後述する。
【0018】
本実施形態における検査済範囲の導出に当たっては、GNSS端末400を用いた衛星測位が利用されている。これにより、検査の進捗管理の自動化がなされている。GNSS端末400は、RTK-GNSS(Real Time Kinematic Global Navigation Satellite System)受信機である。RTK-GNSS受信機は、RTK-GNSS測位による観測点でのGNSS観測を行う機器である。RTK-GNSS測位は、位置の分かっている基準局と位置を求めようとする観測点とで同時にGNSS観測を行い、基準局で観測したデータを観測点へリアルタイムに送信し、基準局の位置測定に基づき観測点の位置の測定結果をリアルタイムに求める測位方法である。測定結果は単位時間ごとに取得される。
【0019】
RTK方式によると、観測点に補正情報が送信されることで、観測点における位置情報のずれが修正される。よって、2cm~5cmの誤差でサブセンチメートル級の精度の測定が可能である。なお、具体的な測位システムとして、GPS(Global Positioning System)、GLONASS(Global Navigation Satellite System)、BeiDou、Galileo、QZSS(Quasi-Zenith Satellite System)等、いずれのシステムが使用されてもよい。
【0020】
検査情報管理システム1は、
図2に示すように、データベース100(本発明でいう記憶手段)、サーバ200、携帯端末300及び上記GNSS端末400を有している。データベース100、サーバ200、携帯端末300及びGNSS端末400のいずれもCPU(Central Processing Unit)、メモリデバイス(以下、メモリという)、各種インターフェース等のハードウェアと、メモリに格納されたプログラムデータ等のソフトウェアとによって構築されている。これらのソフトウェアはインターネットによるダウンロード又は各種の記録媒体により配布可能である。ハードウェアがソフトウェアに基づいて機能することにより、以下の各機能が実現されている。
【0021】
携帯端末300及びGNSS端末400は、検査員Pにより携行され、ガス導管に対する漏洩検査と同時に検査員Pに使用される。検査の際に、携帯端末300及びGNSS端末400は、Bluetooth(登録商標)、Wi-Fi(登録商標)等の近距離無線通信を通じて互いに接続され、互いの間でデータ通信を行う。サーバ200は、検査場所から離隔した場所に設置され、インターネット等の通信ネットワークNを通じて携帯端末300と接続される。データベース100及びサーバ200は、LAN(Local Area Network)を通じて互いに接続され、互いの間でデータ通信を行う。
【0022】
データベース100は、
図3に示すように、地図データ110、配管データ120、建物データ130及び検査位置データ140を有している。地図データ110は、ガス導管の設置範囲における道路や建物等の地図上の配置を示すデータであり、具体的には、
図4に示すような画面IM1のマップ画像C11を表すデータである。
【0023】
配管データ120は、配管配置データ121(本発明でいう配置情報を示すデータ)及び検査済範囲データ122を有している。配管配置データ121は、埋設されたガス導管全体の地図上における分布状況を示す画像である。具体的には、配管配置データ121は、
図4の配管配置画像C12に示されるような地図上の配管の配置を表すデータである。検査済範囲データ122は、配管配置データ121が示す配管の配置のうち、検査済みの領域がいずれであるかを示すデータである。具体的には、検査済範囲データ122は、
図6(b)に示すような画面IM4の検査済範囲画像C41を表すデータである。検査済範囲データ122は、後述するように、GNSS端末400により取得される測位の結果と配管配置データ121とに基づいてサーバ200によって生成された後、データベース100に格納される。
【0024】
建物データ130は、内管モードにおいて後述の通り選択可能なピンアイコンの配置を示すデータであり、具体的には、
図7のアイコン画像C51を表すデータである。
【0025】
検査位置データ140は、後述の通り、携帯端末300からサーバ200を経由して送信される検査位置情報を蓄積したものである。
【0026】
サーバ200は、サーバ側検査情報処理部210、検査済範囲導出部220及び地図データ調整部230を有している。
【0027】
サーバ側検査情報処理部210は、現在のモードが本支管モードであるか内管モードであるかを保持している。サーバ側検査情報処理部210は、携帯端末300からモードの切り替えの指示がサーバ200に送信されると、本支管モードと内管モードとの切替を行う。
【0028】
本支管モードにおいては、後述の通り携帯端末300から検査位置情報が逐次送信されてくる。サーバ側検査情報処理部210は、その検査位置情報をデータベース100に逐次転送する。データベース100は、サーバ側検査情報処理部210からの検査位置情報を検査位置データ140として蓄積する。
【0029】
内管モードにおいては、後述の通り検査が実行されたタイミングで携帯端末300から検査位置の候補となる位置情報(以下、候補位置情報とする)が送信されてくる。サーバ側検査情報処理部210は、携帯端末300からの候補位置情報をデータベース100に蓄積済みの検査位置データ140と照合する。そして、照合結果が所定の条件を満たす場合に、サーバ側検査情報処理部210は、候補位置情報を正式に検査位置情報とし、データベース100に転送する。また、サーバ側検査情報処理部210は、候補位置情報が示す内容が検査位置として許容された旨を携帯端末300に返信する。データベース100は、サーバ側検査情報処理部210からの検査位置情報を検査位置データ140として蓄積する。照合結果が所定の条件を満たさない場合には、サーバ側検査情報処理部210は、候補位置情報が示す内容が検査位置として許容されない旨を携帯端末300に返信する。
【0030】
上記において、所定の条件は、前回の検査位置から今回の検査位置までの距離が5m以内となることである。「5m」の距離は、ガス導管の漏洩検査として、地表の空気を捕集器を用いて5m以下の間隔で吸引して検査を行う旨が制度上、規定されていることに準じている。
【0031】
検査済範囲導出部220は、データベース100の検査位置データ140と、データベース100の配管配置データ121とに基づき、検査済範囲データ122を生成する。検査済範囲導出部220(本発明でいう検査済範囲導出手段)は、検査済範囲データ122をデータベース100に送信して、データベース100に格納させる。検査済範囲の導出方法の詳細については後述する。
【0032】
地図データ調整部230は、データベース100に格納された地図データ110、配管データ120、建物データ130及び検査位置データ140に基づいて、携帯端末300に表示させる検査マッピング画像を表すデータを生成し、携帯端末300に送信する。
【0033】
本支管モードにおいて生成される検査マッピング画像は、道路や建物等の地図上の配置、検査員の現在地、ガス導管の配置及び検査済範囲を示す画像を含んでいる。
図4及び
図6の画面IM1、IM3及びIM4に示す画像は本支管モードの検査マッピング画像の一例である。これらの画面においては、マップ画像C11が道路や建物等の配置を示す。配管配置画像C12が配管の配置を示す。
図4及び
図6(a)の検査位置画像C13、並びに
図6(b)の検査位置画像C43が検査員Pの位置を示す。検査済範囲画像C41が検査済範囲を示す。
【0034】
内管モードにおいて生成される検査マッピング画像には2つの種類がある。2つのうちの一方の検査マッピング画像は、
図7の画面IM5に一例を示すように、道路や建物等の地図上の配置及び検査対象となる各建物に重なったピンアイコンを示す画像(以下、建物選択画像とする)を含んでいる。画面IM5においては、マップ画像C11が道路や建物等の配置を示す。アイコン画像C51がピンアイコンを示す。2つのうちの他方の検査マッピング画像は、一方の検査マッピング画像においてピンアイコンが選択された場合に表示される画像であって、
図8の画面IM6に一例を示すように、道路や建物等の地図上の配置、ガス導管の配置、検査位置及び検査済範囲を示す画像(以下、検査範囲入力画像とする)を含んでいる。
図8の画面IM6においては、マップ画像C11が道路や建物等の配置を示す。検査位置画像C61が検査位置を示す。検査済範囲画像C62が検査済範囲を示す。
【0035】
携帯端末300は、タッチパネルディスプレイ310(本発明でいう入力手段)、モード切替部320、携帯側検査情報処理部330(本発明でいう検査位置取得手段)及び地図表示部340を有している。携帯端末300には、スマートフォン、タブレット端末等が用いられている。
【0036】
タッチパネルディスプレイ310は、文字や画像等を表示すると共に、ユーザが指等を接触させた位置を検出可能な画面を有している。検査員Pは、タッチパネルディスプレイ310を用いて実現されるGUI(Graphical User Interface)を通じ、携帯端末300へのユーザ入力を行う。上記GUIを通じたユーザ入力では、本支管モードと内管モードの切り替えの指示が可能である。また、後述の通り、内管モードにおいて、画面に表示されたアイコン画像を選択するユーザ入力及び検査実行のタイミングを示すユーザ入力が可能である。
【0037】
モード切替部320は、本支管モードと内管モードの切り替えを指示するユーザ入力が上記GUIを通じてなされると、モードを切り替える旨の指示をサーバ200に送信する。
【0038】
携帯側検査情報処理部330は、GNSS端末400から例えば1秒ごとに送信される測位の結果を随時取得する。この測位の結果は、GNSS端末400の緯度及び経度を示す。本支管モードにおいて、携帯側検査情報処理部330は、GNSS端末400から測位の結果を受け取るごとに、その測位の結果を示す情報を、検査が実行された位置(本発明でいう検査位置)を示す検査位置情報としてサーバ200に送信する。一方、内管モードにおいては、携帯側検査情報処理部330が、上記GUIを通じたユーザ入力に基づくタイミングでGNSS端末400からの測位の結果が示す位置情報をサーバ200に送信する。また、これに対するサーバ200からの返信に応じた表示をタッチパネルディスプレイ310に行わせる。
【0039】
地図表示部340は、検査マッピング画像を表すデータをサーバ200から受け取り、そのデータに基づいてタッチパネルディスプレイ310に検査マッピング画像を表示させる。上記の通り、
図4及び
図6~
図8の画面IM1及び画面IM3~IM6に示す画像は検査マッピング画像の一例である。
【0040】
以下、検査情報管理システム1による検査済範囲の導出方法の詳細について
図5~
図8を参照しつつ説明する。本支管モードにおいては、検査済範囲導出部220がバッファリングに基づき検査済範囲を導出する。
図5に示すように、バッファリングは、検査員Pの移動軌跡10に対して特定の範囲に相当するバッファ領域20を導出する処理である。バッファ領域20は、検査員Pの移動軌跡10上の各点を中心とした半径2.5mの円内の領域を重ね合わせた領域に相当する。「2.5m」の半径は、上記の通り、地表の空気を捕集器を用いて5m以下の間隔で吸引して検査を行う旨が規定されていることに準じている。5mの間隔で検査を行うことは、検査を行った位置を中心に半径2.5mの範囲内を検査済範囲とすることに対応するからである。検査済範囲導出部220は、検査位置データ140に基づいてバッファ領域20を取得する。次に、検査済範囲導出部220は、配管配置データ121が示す配管の配置とバッファ領域20とを比較し、配管においてバッファ領域20内に含まれる範囲を検査済範囲として導出する。
【0041】
検査員Pが、
図6(a)の検査位置画像C13に示す位置から、
図6(b)の検査位置画像C43に示す位置に移動する場合には、以下のように検査済範囲が取得される。検査員Pの移動に伴い、検査員Pの携帯するGNSS端末400からの測位の結果を示す情報が携帯端末300を通じて、検査位置情報としてサーバ200に逐次送信される。サーバ側検査情報処理部210は、携帯端末300からの検査位置情報を検査位置データ140としてデータベース100に蓄積する。一方、検査済範囲導出部220は、データベース100に格納された検査位置データ140を参照して、検査員Pによる検査開始の位置から現在位置までの移動軌跡に基づいたバッファ領域を取得する。
図6(b)の一点鎖線の領域Bは、C13に示す位置からC43に示す位置までの移動軌跡を基準とした場合に取得されるバッファ領域を示している。次に、検査済範囲導出部220は、取得されたバッファ領域と配管配置データ121とを比較することで、検査済範囲を導出する。具体的には、検査済範囲は、ガス導管において、
図6(b)の領域B内に位置する範囲(画像C41の範囲)に相当する。ガス導管において、画像C44a及びC44bの範囲は、ガス導管において画像C41を除いた範囲であり、検査が未済である範囲に相当する。
【0042】
内管モードにおいては、次の通り、携帯端末300において検査員Pが検査実行のタイミングを示すユーザ入力に基づいてサーバ200の検査済範囲導出部220が検査済範囲を導出する。まず、携帯端末300の地図表示部340は、サーバ200からの検査マッピング画像データに基づき、
図7の画面IM5に一例を示す建物選択画像をタッチパネルディスプレイ310に表示させる。検査員PがGUIを通じて建物選択画像に含まれるいずれかのピンアイコン(
図7中のアイコン画像C51)を選択すると、地図表示部340がサーバ200からのデータに基づき、
図8の画面IM6に一例を示す検査範囲入力画像をタッチパネルディスプレイ310に表示させる。
【0043】
検査範囲入力画像が表示された状態のタッチパネルディスプレイ310の画面に対し、検査員Pが検査を実行したタイミングで検査範囲入力画像の表示範囲内のいずれかの位置に指等を接触させる。これに応じ、携帯端末300の携帯側検査情報処理部330が、そのタイミングでGNSS端末400から送信された測位の結果が示す情報を検査位置の候補位置情報としてサーバ200に送信する。サーバ200においては、サーバ側検査情報処理部210により、候補位置情報が検査位置として許容されるか否かが判定される。その結果、検査位置として許容されない旨がサーバ200から送信されると、携帯側検査情報処理部330は、タッチパネルディスプレイ310の画面に「検査位置が条件を満たさない」旨を表示させる。検査位置として許容された旨がサーバ200から送信された場合には、携帯側検査情報処理部330は、タッチパネルディスプレイ310の画面に検査位置を指示するアイコンを表示させる。
図8の「●」のアイコン画像C61はその一例である。
【0044】
サーバ側検査情報処理部210により、候補位置情報が検査位置として許容されたと判定されると、サーバ200の検査済範囲導出部220が配管配置データ121及び検査位置データ140に基づいて検査済範囲を導出する。具体的には、
図9に示すように、配管配置データ121が示すガス導管の配置において、前回の検査位置から今回の検査位置までの範囲を検査済範囲とする。候補位置情報が検査位置として許容されたことにより、前回の検査位置から今回の検査位置までの距離が5m以下であることになる。検査員Pがガス導管に沿って移動しつつ、このような検査を何度も繰り返すことにより、
図10に示す検査済範囲が取得されると共に、各検査位置及びその個数が取得される。
【0045】
以上説明した本実施形態によると、データベース100に格納された配管配置データ121が示すガス導管の配置に対して、サーバ200の検査済範囲導出部220が携帯端末300からの検査位置情報に基づいて検査済範囲を導出する。したがって、検査の進捗管理の自動化が可能である。
【0046】
また、本実施形態では、検査位置情報を取得する方法が異なるモードとして、本支管モードと内管モードとからいずれかのモードが選択可能である。本支管モードにおいては、GNSS端末400が単位時間ごとに取得する測位の結果に基づいて検査位置情報が取得される。このため、本支管モードの連続検査に応じて検査位置が連続的に取得される。内管モードにおいては、検査範囲入力画像が表示されたタッチパネルディスプレイ310の画面に指等を接触させたタイミングで取得されるGNSS端末400の測位の結果に基づいて検査位置情報が取得される。このため、内管モードの不連続検査に応じて、検査実行のタイミングにおける検査位置が適切に取得される。
【0047】
また、本実施形態においては、検査済範囲導出部220が、検査位置情報が示す位置から所定の距離(2.5m)の範囲にあるガス導管を検査済みとする。したがって、検査済範囲が適切に取得可能である。
【0048】
また、本実施形態においては、検査員Pが携帯する携帯端末300のタッチパネルディスプレイ310の画面に検査済範囲を示す検査マッピング画像が表示される。したがって、検査員Pは、検査済範囲を確認しながら検査を進めていくことができる。
【0049】
また、本実施形態においては、検査が不連続に実行される内管モードで、検査が実行されたタイミングに応じ、携帯端末300のGUIを通じたユーザ入力がなされる。そのタイミングに基づいてGNSS端末400からの測位の結果が、検査位置の候補位置情報としてサーバ200に送信される。これにより、ユーザ入力に応じた検査実行のタイミングに合わせて、検査位置が適切に取得可能である。
【0050】
(変形例)
以上は、本発明の好適な実施形態についての説明であるが、本発明は上述の実施形態に
限られるものではなく、課題を解決するための手段に記載された範囲の限りにおいて様々
な変更が可能なものである。以下、上述の実施形態に係る変形例について説明する。
【0051】
上述の実施形態においては、本支管に対して連続検査が、内管に対して不連続検査がそれぞれ実行されることが前提である。これに対し、本支管に対して不連続検査が実行されてもよい。この場合、本支管の検査に当たって上記内管モードと同様の検査済範囲の導出が行われるようにシステムが構成されていればよい。また、内管に対して連続検査が実行されてもよい。この場合、内管の検査に当たって上記本支管モードと同様の検査済範囲の導出が行われるようにシステムが構成されていればよい。
【0052】
また、上述の実施形態においては、検査対象となる設備がガス導管である。これに対し、その他の長尺な検査対象設備が検査対象となる場合に本発明が適用されてもよい。例えば、上下水道管や配電網に対して適用されてもよい。
【0053】
また、上述の実施形態においては、携帯端末300は1台である。これに対し、異なる検査員がそれぞれ携帯端末300及びGNSS端末400を有していて、同時に異なる箇所の漏洩検査を行うことができる検査情報管理システムであってもよい。
【0054】
また、検査情報管理システム1は、記録した内容から、報告書を自動作成したり、携帯端末300に表示したりする機能を有していてもよい。
【0055】
また、上述の実施形態においては、RTK-GNSS測位が利用されている。しかし、単独測位、相対測位、他のRTK測位等、種々の測位方法が利用されていてもよい。
【符号の説明】
【0056】
1 検査情報管理システム
100 データベース
121 配管配置データ
220 検査済範囲導出部
300 携帯端末
310 タッチパネルディスプレイ
330 携帯側検査情報処理部
【要約】
【課題】長尺な設備に対する検査の進捗管理の自動化が可能である。
【解決手段】検査情報管理システム1は、ガス導管等の配置を示す配管配置データ121を記憶するデータベース100と、ガス導管等に対して行われた検査位置情報を取得する携帯側検査情報処理部330を有する携帯端末300と、配管配置データ121が示すガス導管等の配置に対して、携帯端末300からの検査位置情報に基づいて検査済範囲を導出する検査済範囲導出部220を有するサーバ200とを備えている。
【選択図】
図3