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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】熱電変換装置
(51)【国際特許分類】
   H10N 10/13 20230101AFI20230809BHJP
   F25B 21/02 20060101ALI20230809BHJP
   F25D 11/00 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
H10N10/13
F25B21/02 A
F25D11/00 101W
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2018189018
(22)【出願日】2018-10-04
(65)【公開番号】P2020057730
(43)【公開日】2020-04-09
【審査請求日】2021-09-30
(73)【特許権者】
【識別番号】398032289
【氏名又は名称】株式会社テックスイージー
(74)【代理人】
【識別番号】100111084
【弁理士】
【氏名又は名称】藤野 義昭
(72)【発明者】
【氏名】小林 隆秀
【審査官】田邊 顕人
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-347500(JP,A)
【文献】特開2016-063104(JP,A)
【文献】特開2001-194022(JP,A)
【文献】特開2010-038530(JP,A)
【文献】特開2012-195441(JP,A)
【文献】特開2007-227793(JP,A)
【文献】特開2009-278767(JP,A)
【文献】特開2017-143094(JP,A)
【文献】特開2016-174025(JP,A)
【文献】特開2018-037485(JP,A)
【文献】特開2017-069555(JP,A)
【文献】特開2017-221066(JP,A)
【文献】特開2017-073430(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0152989(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10N 10/13
F25D 11/00
F25B 21/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の熱電素子を備えた熱電変換モジュールと、
当該熱電変換モジュールの吸熱面に接触して熱を伝える伝熱部と
を備えた熱電変換装置であって、
前記伝熱部は、第一の伝熱部材及び第二の伝熱部材を備え、
前記第二の伝熱部材は、前記第一の伝熱部材と、前記熱電変換モジュールとの間に配置されており、多数の気孔を有する変形可能な多孔質材料で構成されていて、前記気孔内には、熱伝導性物質が充填されており
前記第一の伝熱部材は、前記第二の伝熱部材に当接しており、
前記第二の伝熱部材は、前記第一の伝熱部材が当接することで変形している
ことを特徴とする熱電変換装置。
【請求項2】
前記熱伝導性物質は、熱伝導性グリースである
ことを特徴とする請求項1に記載の熱電変換装置。
【請求項3】
前記多孔質材料は、多孔質金属である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の熱電変換装置。
【請求項4】
前記多孔質金属は、金属スポンジである
ことを特徴とする請求項3に記載の熱電変換装置。
【請求項5】
複数の熱電素子を備えた熱電変換モジュールと、
当該熱電変換モジュールに接触して熱を伝える伝熱部と
を備えた熱電変換装置であって、
前記伝熱部は、第一の伝熱部材及び第二の伝熱部材を備え、
前記第二の伝熱部材は、前記第一の伝熱部材と、前記熱電変換モジュールとの間に配置されており、変形可能な材料で構成されていて、
前記第一の伝熱部材の底面の大きさは、前記第二の伝熱部材の上面の大きさより小さく、
前記第一の伝熱部材は、前記第二の伝熱部材に当接しており、
前記第二の伝熱部材は、前記第一の伝熱部材が当接することで変形している
ことを特徴とする熱電変換装置。
【請求項6】
複数の熱電素子を備えた熱電変換モジュールと、
当該熱電変換モジュールに接触して熱を伝える伝熱部と
を備えた熱電変換装置であって、
前記伝熱部は、第一の伝熱部材及び第二の伝熱部材を備え、
前記第二の伝熱部材は、前記第一の伝熱部材と、前記熱電変換モジュールとの間に配置されており、変形可能な材料で構成されていて、
前記第一の伝熱部材の底面の大きさは、前記複数の熱電素子が存在する領域に対応し、
前記第一の伝熱部材は、前記第二の伝熱部材に当接しており、
前記第二の伝熱部材は、前記第一の伝熱部材が当接することで変形している
ことを特徴とする熱電変換装置。
【請求項7】
前記第一の伝熱部材の底面の大きさは、前記第二の伝熱部材の上面の大きさより小さいことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の熱電変換装置。
【請求項8】
前記第一の伝熱部材の底面の大きさは、前記複数の熱電素子が存在する領域に対応する
ことを特徴とする請求項1~5及び7のいずれか一項に記載の熱電変換装置。
【請求項9】
前記第二の伝熱部材は、シート状の形状を有する
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の熱電変換装置。
【請求項10】
前記伝熱部は、前記熱電変換モジュールの吸熱面に接触する
ことを特徴とする請求項1~のいずれか一項に記載の熱電変換装置。
【請求項11】
前記熱電変換モジュールの周囲を覆うケースを更に備え、
前記第一の伝熱部材は、前記ケースに対して固定されている
ことを特徴とする請求項1~10のいずれか一項に記載の熱電変換装置。
【請求項12】
前記熱電変換モジュールの放熱面に接触する放熱側伝熱部を更に備え、
前記ケースは、前記放熱側伝熱部に固定されている
ことを特徴とする請求項11に記載の熱電変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、冷蔵庫等の冷却ユニットとして利用される熱電変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、ペルチェ効果を利用した電子冷却システムが知られている。このような電子冷却システムでは、一般に、多数の熱電素子を集積して、吸放熱効率を向上させた熱電変換モジュール(ペルチェモジュール)が利用されている。
【0003】
図5は、熱電変換モジュールの構造を説明するための図である。同図に示すように、熱電変換モジュール500は、板状に並べられた複数のπ型熱電素子510(n型半導体素子511及びp型半導体素子512の一端を金属電極513で接合したもの)によって構成されており、複数のπ型熱電素子510は、金属電極520によって、電気的には直列に、熱的には並列に接続されている。同図に示した例では、矢印の方向(π型熱電素子のn側からp側へ向かう方向)に直流電流を流すと、上面側(π型熱電素子のnp接合側)で吸熱が行われ、底面側で放熱が行われることになる。また、一般に、上面及び底面には、それぞれ、絶縁基板(例えば、セラミック基板)530が接合されており、吸熱面及び放熱面を形成している。なお、同図では、上面側の絶縁基板は省略してある。
【0004】
このような熱電変換モジュールは、例えば、上面及び底面が吸熱側伝熱部材(例えば、伝熱ブロック)及び放熱側伝熱部材(例えば、放熱フィン)で挟持され、水分等の侵入を防ぐために周囲(側方)が合成樹脂製のケースで覆われた状態、すなわち、ユニット化された状態で使用される。
【0005】
図6は、熱電変換ユニット(ペルチェユニット)の例を示す断面図である。同図に示すように、熱電変換ユニット600は、伝熱ブロック610と、放熱フィン620と、ケース630とを備え、伝熱ブロック610と、放熱フィン620との間に、熱電変換モジュール640が挟持されている。
【0006】
同図に示した熱電変換ユニット600では、ケース630は、伝熱ブロック610と一体をなすように、インサート成形で形成されるが、ケース630の寸法には一定のばらつきが生じる。また、熱電変換モジュール640の厚さにも、製造上のばらつきが存在する。そのため、熱電変換ユニット600の各構成部材610~640を組み付けた時に、伝熱ブロック610(又は放熱フィン620)と、熱電変換モジュール640との間に、不必要な隙間が生じることがあった。この場合、例えば、そのまま両者を熱伝導性接着剤で接着すると、両者を接着する接着層の厚みが大きくなってしまい、熱伝導性が悪くなることになる。
【0007】
また、同図に示した熱電変換ユニット600を冷蔵庫の冷却ユニットとして利用する場合、例えば、被冷却物である冷蔵室背面に、伝熱ブロック610がネジ留めされるが、このとき、熱電変換ユニット600は片持ち梁状に支持されることとなる。そのため、冷蔵庫の運搬中等に生じた振動が熱電変換ユニット600に伝わると、伝熱ブロック610を介して、熱電変換モジュール640に不均一な力(偏荷重)が加わることとなり、その結果、熱電変換モジュール640が破壊されるおそれがあった。
【0008】
なお、特開2003-114080号公報には、金属製の吸熱側熱導体と放熱側熱導体の間に熱電変換素子を挟持し、前記吸熱側熱導体を合成樹脂製の枠体の内側に配置した熱電変換装置であって、前記吸熱側熱導体の外周に枠体を一体にインサート成形したものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2003-114080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、各構成部材の寸法のばらつきに対処することができると共に、運搬中の振動などによって生じる外力の熱電変換モジュールへの影響を緩和することが可能な熱電変換装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係る熱電変換装置は、複数の熱電素子を備えた熱電変換モジュールと、当該熱電変換モジュールに接触して熱を伝える伝熱部とを備えた熱電変換装置であって、前記伝熱部は、第一の伝熱部材及び第二の伝熱部材を備え、前記第二の伝熱部材は、前記第一の伝熱部材と、前記熱電変換モジュールとの間に配置されており、変形可能な材料で構成されていることを特徴とする。
【0012】
この場合において、前記第二の伝熱部材は、多数の気孔を有する多孔質材料によって構成されているようにしてもよい。この場合、前記気孔内には、熱伝導性物質が充填されているようにしてもよい。更に、この場合、前記熱伝導性物質は、熱伝導性グリースであってもよい。
【0013】
また、以上の場合において、前記多孔質材料は、多孔質金属であってもよい。この場合、前記多孔質金属は、金属スポンジであってもよい。
【0014】
また、以上の場合において、前記第一の伝熱部材は、前記第二の伝熱部材に当接しており、前記第二の伝熱部材は、前記第一の伝熱部材が当接することで変形しているようにしてもよい。この場合、前記第一の伝熱部材の底面(第二の伝熱部材に対向する面)の大きさは、前記第二の伝熱部材の上面(第一の伝熱部材に対向する面)の大きさより小さいようにしてもよい。また、前記第一の伝熱部材の底面の大きさは、前記複数の熱電素子が存在する領域に対応するようにしてもよい。
【0015】
また、以上の場合において、前記第二の伝熱部材は、シート状の形状を有するようにしてもよい。また、前記伝熱部は、前記熱電変換モジュールの吸熱面に接触するようにしてもよい。
【0016】
また、以上の場合において、前記熱電変換モジュールの周囲を覆うケースを更に備え、前記第一の伝熱部材は、前記ケースに対して固定されているようにしてもよい。この場合、前記熱電変換モジュールの放熱面に接触する放熱側伝熱部(例えば、放熱フィン)を更に備え、前記ケースは、前記放熱側伝熱部に固定されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、各構成部材の寸法のばらつきに対処することが可能となる。また、伝熱部に加わる外力の影響が直接、熱電変換モジュールにまで及ぶのを防ぐことができるので、熱電変換モジュールが破壊されるのを防止することができ、熱電変換装置の信頼性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による熱電変換ユニット100の構成を説明するための正面図である。
図2】本発明による熱電変換ユニット100の構成を説明するための平面図である。
図3図2のA-A断面図である。
図4図3の熱電変換モジュール140の周辺を示す拡大断面図である。
図5】熱電変換モジュール500の構造を説明するための図である。
図6】熱電変換ユニット600の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0020】
以下では、本発明による熱電変換装置としての熱電変換ユニット(ペルチェユニット)について説明する。本発明による熱電変換ユニットは、冷却システムに利用されるものであって、例えば、冷蔵庫や冷凍庫の冷却ユニットとして使用される。
【0021】
図1図4は、本発明による熱電変換ユニット(ペルチェユニット)の構成を説明するための図である。図1は正面図を示し、図2は平面図を示し、図3は、図2のA-A断面図を示し、図4は、図3の熱電変換モジュール周辺の拡大断面図を示す。
【0022】
図1に示すように、本発明による熱電変換ユニット100は、伝熱部110と、放熱フィン120と、ケース130とを備える。更に、図3に示すように、伝熱部110と、放熱フィン120との間には、熱電変換モジュール140が挟持されている。
【0023】
伝熱部110は、熱電変換モジュール140の一方の面(本実施形態では、吸熱面)に接触して熱を伝達する伝熱部材である。図3に示すように、本実施形態においては、伝熱部110は、2つの部材、すなわち、伝熱ブロック111と、伝熱シート112とによって構成されている。伝熱ブロック111と伝熱シート112とは、両者が接触した状態で使用され、伝熱シート112が、熱電変換モジュール140の一方の面(本実施形態では、吸熱面)に接触し、伝熱ブロック111が、被冷却物に固定(例えば、ネジ留め)される。伝熱ブロック111及び伝熱シート112の詳細については後述する。
【0024】
放熱フィン120は、熱電変換モジュール140の他方の面(本実施形態では、放熱面)に接触して熱を伝達(放熱)する伝熱部材(放熱側伝熱部)であって、例えば、熱伝導性の高い金属(例えば、アルミニウム)によって構成される。放熱フィン120と熱電変換モジュール140との接触面には、熱伝導性を高めるため、例えば、熱伝導性に優れた半固形状の物質である熱伝導性グリース(サーマルグリース)が塗布されている。放熱フィン120は、矩形状平板121と、その底面に取り付けられた多数のフィン122とによって構成されており、例えば、ファン(不図示)によって強制空冷される。
【0025】
ケース130は、伝熱部110(伝熱シート112)及び放熱フィン120(矩形状平板121)によって挟持される熱電変換モジュール140の周囲(側方)を間隔をあけて覆い密閉空間を形成するものであって、例えば、熱伝導性が低く、耐水性を有し、ガス透過性が低い合成樹脂(例えば、ポリフェニレンスルフィド)で構成される。ケース130は、伝熱ブロック111の側面の大部分を覆うように、伝熱ブロック111の側面に沿って伸びる側壁部131と、放熱フィン120の上面の一部を覆うよう、放熱フィン120の上面に沿って外向きに伸びる張出部132とによって構成されており、断面が概ねL字状になるように形成される。ケース130は、例えば、伝熱ブロック111と一体をなすように、インサート成形によって形成され、張出部132が放熱フィン120(矩形状平板121)に固定(ネジ留め)される。
【0026】
ケース130の張出部132の一辺には、図2に示すように、熱電変換モジュール140に直流電流を供給するためのタブ端子133が一組設けられている。タブ端子133と熱電変換モジュール140(の金属電極)とは、リード線134によって接続されている。
【0027】
熱電変換モジュール140は、前述したように、板状に並べられた複数のπ型熱電素子によって構成されており、複数のπ型熱電素子は、金属電極によって、電気的には直列に、熱的には並列に接続されている。また、図4に示すように、上面側及び底面側の金属電極141,142には、それぞれ、絶縁基板(例えば、セラミック基板)143,144が接合されている。すなわち、金属電極141,142によって接合された複数の半導体素子145が、一対の絶縁基板143,144によって挟持されている。なお、簡単のため、図4では、リード線134及び放熱フィン120のフィン122は省略している。
【0028】
次に、伝熱部110を構成する伝熱ブロック111及び伝熱シート112の詳細について説明する。
【0029】
伝熱ブロック111は、伝熱シート112と接触して熱を伝達する伝熱部材であって、例えば、熱伝導性の高い金属(例えば、アルミニウム)によって構成される。伝熱ブロック111は、概ね四角柱状の形状を有しており、ケース130からその一部が外部に露出して、当該伝熱ブロック111(の露出部分)に、被冷却物(例えば、冷蔵室)が接続される。
【0030】
図3に示すように、伝熱ブロック111の底面(熱電変換モジュール140側の面)は、熱電変換モジュール140の放熱面より、やや小さくなるように形成されている。より具体的には、図4に示すように、熱電変換モジュール140を構成する半導体素子145が存在する範囲(領域)と同じ大きさを有するように形成されている。このように、伝熱ブロック111の底面の大きさを、半導体素子145が存在する領域の大きさに対応させることより、半導体素子145によって支持されていない絶縁基板143の縁部分が、伝熱ブロック111によって押されるのを防止することが可能となる。
【0031】
伝熱シート112は、伝熱ブロック111及び熱電変換モジュール140と接触して熱を伝達する伝熱部材であって、熱伝導性が高く、変形可能な材料(例えば、多孔質金属)によって構成される。本実施形態においては、伝熱シート112は、多孔質金属の一種である金属スポンジ(例えば、ニッケルスポンジ)によって構成されている。伝熱シート112は、薄い平板状(シート状)の形状を有しており、ケース130内において、伝熱ブロック111と、熱電変換モジュール140との間に配置される。なお、組み付け時には、例えば、放熱フィン120上に載置された熱電変換モジュール140上に、伝熱シート112が載置され、更にその上に、伝熱ブロック111が載置される。
【0032】
伝熱シート112の上面及び底面には、熱伝導性を高めるため、例えば、熱伝導性に優れた半固形状の物質である熱伝導性グリース(サーマルグリース)が塗布されている。本実施形態においては、組み付ける前に、例えば、へらを使って伸ばすことで、伝熱シート112の上面及び底面に熱伝導性グリースが塗り広げられる。へら等を使って、伝熱シート112の表面に熱伝導性グリースを塗り広げることによって、伝熱シート112の表面から内部に熱伝導性グリースが押し込まれることとなり、伝熱シート112を構成する金属スポンジの気孔内に熱伝導性グリースが充填されて、伝熱シート112自体の熱伝導性も向上することになる。できるだけ多くの気孔に熱伝導性グリースが充填されるよう、充分な量の熱伝導性グリースが塗布される。
【0033】
伝熱シート112の上面及び底面は、熱電変換モジュール140の吸熱面(絶縁基板143)と同じサイズを有する。従って、伝熱シート112を熱電変換モジュール140の吸熱面(絶縁基板143)上に載置した際、熱電変換モジュール140の吸熱面(絶縁基板143の上面)の全領域が、伝熱シート112によって覆われることになる。伝熱シート112の厚さ(図4における上下方向の長さ)は、熱電変換ユニット100の各構成部材を組み付けた際、伝熱ブロック111が伝熱シート112に当接するような寸法に設定される。すなわち、熱電変換ユニット100の各構成部材を組み付けた際に形成される伝熱ブロック111と熱電変換モジュール140との間の隙間の大きさより、伝熱シート112の厚さが大きくなるように、各構成部材の寸法が決められる。例えば、熱電変換ユニット100の各構成部材を組み付けた際に形成される伝熱ブロック111と熱電変換モジュール140との間の隙間の寸法が、製造上のばらつきを考慮すると、0.7~0.8mmとなる場合、伝熱シート112の厚さは、0.8mmより大きな寸法(例えば、1mm)に設定される。
【0034】
熱電変換ユニット100では、伝熱ブロック111が、ケース130に固定されているので、伝熱シート112の厚さを一定以上にすると、ケース130を放熱フィン120に対して固定した際、伝熱ブロック111が、熱電変換モジュール140上に載置された伝熱シート112に当接するようになり、その結果、伝熱シート112が変形すると共に、伝熱シート112が熱電変換モジュール140に押しつけられることになる。従って、ケース130や熱電変換モジュール140の寸法に製造上のばらつきがあったとしても、伝熱シート112の厚さを適当な値に設定していれば、伝熱ブロック111と伝熱シート112との間に隙間は生じなくなり、各構成部材の寸法のばらつきを吸収することが可能となる。
【0035】
このように、熱電変換ユニット100では、変形可能(圧縮可能)な伝熱シート112が適宜変形することによって、各構成部材の寸法のばらつきを吸収する。例えば、各構成部材の製造上のばらつきにより、伝熱ブロック111と熱電変換モジュール140との間の隙間の寸法が、最小で0.7mm、最大で0.8mmとなる場合において、厚さ1mmの伝熱シート112を使用したときは、当該伝熱シート112が、実際の隙間の寸法に応じて、元の厚さの70~80%の厚さ(0.7~0.8mm)にまで変形することで、各構成部材の寸法のばらつきを吸収する。
【0036】
また、運搬中の振動等によって、伝熱ブロック111に外力が加わった場合でも、当該外力が直接、熱電変換モジュール140に伝わることはなく、変形可能な伝熱シート112によって吸収されるので、熱電変換モジュール140への外力の影響を緩和することが可能となる。つまり、運搬中の振動等によって、熱電変換モジュール140が破壊されるのを防止することが可能となり、熱電変換ユニット100の信頼性を向上させることが可能となる。
【0037】
また、前述したように、組み付けられた状態では、伝熱ブロック111と伝熱シート112とは当接することになるが、伝熱ブロック111の底面(伝熱シート112に対向する面)の大きさは、伝熱シート112の上面(伝熱ブロック111に対向する面)の大きさより小さくなっており、伝熱ブロック111が、伝熱シート112に対して押し付けられると、押し付けられた部分が変形して窪んだ状態となり、図4に示すように、伝熱ブロック111の一部(底面部)が、伝熱シート112に形成された窪み(凹部)に嵌まり込んだような状態となる。その結果、伝熱ブロック111の横方向(図4における左右方向)の動きが規制されることとなり、振動等によって、伝熱ブロック111が横方向にずれて、熱電変換モジュール140に不均一な力(偏荷重)が加わることを防止することが可能となる。
【0038】
以上説明したように、本実施形態においては、吸熱側伝熱部110を、伝熱シート112に当接する伝熱ブロック111と、伝熱ブロック111が当接することで適宜変形する伝熱シート112とで構成するようにしているので、ケース130や熱電変換モジュール140等の寸法にばらつきがあったとしても、伝熱ブロック111と伝熱シート112との間等に不必要な隙間が生じることを防止することが可能となる。また、伝熱ブロック111に外力が加わった場合でも、当該外力が熱電変換モジュール140に直接伝達されず、伝熱シート112で吸収されるので、振動等によって、熱電変換モジュール140が破壊されるのを防止することが可能となる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、当然のことながら、本発明の実施形態は上記のものに限られない。例えば、前述した実施形態では、伝熱シート112を、多孔質金属の一種である金属スポンジで構成するようにしていたが、熱伝導性が高く、変形可能な他の材料、例えば、カーボンスポンジや、グラファイト製熱伝導シート等で構成することも考えられる。
【符号の説明】
【0040】
100 熱電変換ユニット
110 伝熱部
111 伝熱ブロック
112 伝熱シート
120 放熱フィン
121 矩形状平板
122 フィン
130 ケース
131 側壁部
132 張出部
133 タブ端子
134 リード線
140 熱電変換モジュール
141 低温側電極
142 高温側電極
143 低温側絶縁基板
144 高温側絶縁基板
145 半導体素子
500 熱電変換モジュール
510 π型熱電素子
511 n型半導体素子
512 p型半導体素子
513,520 金属電極
530 絶縁基板
600 熱電変換ユニット
610 伝熱ブロック
620 放熱フィン
630 ケース
640 熱電変換モジュール
図1
図2
図3
図4
図5
図6