(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】包装容器の製造方法
(51)【国際特許分類】
B65D 77/04 20060101AFI20230809BHJP
【FI】
B65D77/04 F
(21)【出願番号】P 2019046575
(22)【出願日】2019-03-14
【審査請求日】2022-03-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000175397
【氏名又は名称】三笠産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】弁理士法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西本 寛之
【審査官】米村 耕一
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-084294(JP,A)
【文献】特開平10-314272(JP,A)
【文献】特開2006-141857(JP,A)
【文献】特開2008-284125(JP,A)
【文献】特開2006-204529(JP,A)
【文献】特開2016-179854(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 77/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパウト付パウチ
と自立可能なスタンディングパウチ
とを有し、
スパウト付パウチは、パウチ本体と、パウチ本体の一端部に設けられた口栓とを有し、
スタンディングパウチは、上端部に出し入れ口を有するとともに、底部に折畳可能な底シート部を有し、
スパウト付パウチがスタンディングパウチ内に収納された包装容器の製造方法であって、
スパウト付パウチのパウチ本体を二つに折り曲げて、口栓を下向きにし、
口栓を折り曲げられたパウチ本体の下端部よりも下方に突出させた状態で、スパウト付パウチをスタンディングパウチの出し入れ口からスタンディングパウチ内に挿入し、
折り畳まれていた底シート部をスタンディングパウチ内からスパウト付パウチの口栓で下向きに押すことにより、底シート部を折畳状態から拡げて、スタンディングパウチを自立させることを特徴とする包装容器の製造方法。
【請求項2】
スタンディングパウチの出し入れ口
を溶着して閉鎖することを特徴とする請求項1記載の包装容器の製造方法。
【請求項3】
スパウト付パウチのパウチ本体は、折り曲げ箇所に、内向きに凹んだくびれ部を有していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の包装容器
の製造方法。
【請求項4】
スタンディングパウチは、遮光性と、水蒸気を透過させ難い水蒸気バリア性と、酸素を透過させ難い酸素バリア性との、少なくともいずれか1つを有していることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の包装容器
の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スパウト付パウチをスタンディングパウチ内に収納した包装容器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の包装容器としては、例えば
図8に示すように、スパウト付パウチ101をスタンディングパウチ102内に収納したものがある。
図9に示すように、スタンディングパウチ102は上端部に出し入れ口103を有しており、スパウト付パウチ101を出し入れ口103からスタンディングパウチ102内に収納した後、出し入れ口103を熱溶着にて閉鎖することにより、スタンディングパウチ102内が密封される。尚、スパウト付パウチ101は、口栓104を上向きにするとともに底部105(
図10参照)を下向きにして、スタンディングパウチ102内に収納されている。
【0003】
尚、上記のような二重構造の包装容器は例えば下記特許文献1に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら上記の従来形式では、
図9に示すように、スタンディングパウチ102の出し入れ口103を開いた状態で、スパウト付パウチ101をスタンディングパウチ102内に収納する際、出し入れ口103を十分に開かないと、スパウト付パウチ101の底部105がスタンディングパウチ102の上端部に引っ掛かって、スパウト付パウチ101をスタンディングパウチ102内にスムーズに挿入することができないといった問題がある。
【0006】
本発明は、スパウト付パウチをスタンディングパウチ内にスムーズに収納することが可能な包装容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本第1発明は、スパウト付パウチと自立可能なスタンディングパウチとを有し、
スパウト付パウチは、パウチ本体と、パウチ本体の一端部に設けられた口栓とを有し、
スタンディングパウチは、上端部に出し入れ口を有するとともに、底部に折畳可能な底シート部を有し、
スパウト付パウチがスタンディングパウチ内に収納された包装容器の製造方法であって、
スパウト付パウチのパウチ本体を二つに折り曲げて、口栓を下向きにし、
口栓を折り曲げられたパウチ本体の下端部よりも下方に突出させた状態で、スパウト付パウチをスタンディングパウチの出し入れ口からスタンディングパウチ内に挿入し、
折り畳まれていた底シート部をスタンディングパウチ内からスパウト付パウチの口栓で下向きに押すことにより、底シート部を折畳状態から拡げて、スタンディングパウチを自立させるものである。
【0008】
これによると、スタンディングパウチの出し入れ口を開いた状態で、スパウト付パウチをスタンディングパウチ内に収納する際、スパウト付パウチの口栓が折り曲げられたパウチ本体の下端部よりも下方に突出しているため、先ず、口栓が先行して出し入れ口に挿入され、この時、出し入れ口が口栓によって拡げられ、この状態を維持しながら、その直後に、パウチ本体が後続して出し入れ口に挿入される。これにより、パウチ本体がスタンディングパウチの上端部に引っ掛かり難くなり、スパウト付パウチをスタンディングパウチ内にスムーズに挿入することができる。
【0009】
また、スパウト付パウチを出し入れ口からスタンディングパウチ内に挿入した際、スパウト付パウチの口栓がスタンディングパウチの底シート部を下向きに押すため、底シート部が折畳状態から拡がって、スタンディングパウチが自立可能になる。この際、収納物が収納されているスパウト付パウチのパウチ本体の厚さが口栓の直径より薄い場合であっても、口栓によってスタンディングパウチの底シート部を十分に拡げることができるため、スタンディングパウチの自立性を確保することができる。
【0010】
本第2発明における包装容器の製造方法は、スタンディングパウチの出し入れ口を溶着して閉鎖するものである。
【0011】
これによると、スタンディングパウチの外部と内部とが確実に遮断される。
【0012】
本第3発明における包装容器の製造方法は、スパウト付パウチのパウチ本体は、折り曲げ箇所に、内向きに凹んだくびれ部を有しているものである。
【0013】
これによると、パウチ本体を折り曲げ箇所において容易に折り曲げることができる。また、スタンディングパウチ内からスパウト付パウチを取り出して手で持った際、手でくびれ部を掴むことにより、手とスパウト付パウチとの摩擦抵抗が大きくなるため、スパウト付パウチが滑り難くなり、グリップ性が向上する。
【0014】
本第4発明における包装容器の製造方法は、スタンディングパウチは、遮光性と、水蒸気を透過させ難い水蒸気バリア性と、酸素を透過させ難い酸素バリア性との、少なくともいずれか1つを有しているものである。
【0015】
これによると、スタンディングパウチによって、光や水蒸気又は酸素を遮断することができるため、スパウト付パウチ内の収納物の品質低下を防止することができる。また、スパウト付パウチに遮光性や水蒸気バリア性又は酸素バリア性を付与する必要が無く、スパウト付パウチを容易に製作することができる。
【発明の効果】
【0017】
以上のように本発明によると、パウチ本体がスタンディングパウチの上端部に引っ掛かり難くなり、スパウト付パウチをスタンディングパウチ内にスムーズに挿入することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施の形態における包装容器の斜視図である。
【
図2】同、包装容器のスパウト付パウチの斜視図である。
【
図3】同、包装容器のスパウト付パウチの一部切欠き正面図である。
【
図4】同、包装容器の折り曲げられたスパウト付パウチとスタンディングパウチの斜視図である。
【
図5】同、包装容器のスタンディングパウチの側方から見た断面図である。
【
図6】同、包装容器のスタンディングパウチの出し入れ口にスパウト付パウチの口栓を挿入したときの図である。
【
図7】同、包装容器のスタンディングパウチ内にスパウト付パウチを収納して、スタンディングパウチの底シート部が拡げられた様子を示す図である。
【
図9】同、包装容器のスパウト付パウチとスタンディングパウチの斜視図である。
【
図10】同、包装容器のスパウト付パウチの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明における実施の形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
図1に示すように、1はスパウト付パウチ2を自立可能なスタンディングパウチ3内に収納した二重構造の包装容器である。スパウト付パウチ2内には例えばプロテイン等の粉末体5(収納物の一例、
図3参照)が収納されている。
【0021】
図2,
図3に示すように、スパウト付パウチ2は、パウチ本体6と、パウチ本体6の上端部に設けられた口栓7とを有している。パウチ本体6は前後一対のシート9,10と底部シート11とを四角形の袋状に熱溶着したものである。また、口栓7は、パウチ本体6内に連通する連通孔と、連通孔を開閉する回転式の着脱自在なキャップ14を有している。
【0022】
図1,
図4に示すように、パウチ本体6は、口栓7を下向きにして二つに折り曲げられた状態で、スタンディングパウチ3内に収納される。この際、口栓7は折り曲げられたパウチ本体6の下端部よりも下方に突出している。
【0023】
パウチ本体6は、折り曲げ箇所15に、内向きにU又はV字形状に凹んだくびれ部16を有している。すなわち、くびれ部16は、パウチ本体6の両側部に形成されており、パウチ本体6の外側から内側に入り込んでいる。
【0024】
図4,
図5に示すように、スタンディングパウチ3は、前後一対のシート部21,22と底シート部23とを四角形の袋状に熱溶着したものであり、上端部に出し入れ口25を有している。
【0025】
底シート部23は、両シート部21,22の下部間に設けられており、逆V字形状に折畳可能である。
【0026】
図1,
図7に示すように、スパウト付パウチ2の口栓7が折り畳まれた底シート部23をスタンディングパウチ3内から下向きに押すことにより、底シート部23が折畳状態から拡げられ、スタンディングパウチ3の前後両シート部21,22の底部間が拡大し、スタンディングパウチ3が自立する。
【0027】
また、スタンディングパウチ3の出し入れ口25は、製造工程において、スパウト付パウチ2をスタンディングパウチ3内に収納した後、
図1および
図7の仮想線で示すように熱溶着にて閉鎖される。これにより、スタンディングパウチ3内が密封される。
【0028】
尚、スタンディングパウチ3の前後両シート部21,22および底シート部23はそれぞれ遮光性を有する遮光性フィルムおよびガスバリア性を有するガスバリア性フィルムで構成されている。遮光性フィルムには例えばアルミニウム等でできたフィルムが用いられる。また、ガスバリア性フィルムは水蒸気を透過させ難い水蒸気バリア性と酸素を透過させ難い酸素バリア性とを有しており、例えば、塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン単独重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、ポリアミド系樹脂、ポリクロロトリフルオロエチレン系樹脂、ポリアクリロニトリル系樹脂等の材質が用いられる。
【0029】
以下に、上記包装容器1の製造方法を説明する。
【0030】
図4に示すように、スパウト付パウチ2のパウチ本体6を二つに折り曲げて、口栓7を下向きにする。この際、パウチ本体6の折り曲げ箇所15にくびれ部16が形成されているため、パウチ本体6を容易に折り曲げることができる。
【0031】
そして、
図6に示すように、口栓7を折り曲げられたパウチ本体6の下端部よりも下方に突出させた状態で、スパウト付パウチ2をスタンディングパウチ3の出し入れ口25からスタンディングパウチ3内に挿入する。
【0032】
この際、先ず、口栓7が先行して出し入れ口25に挿入され、この時、出し入れ口25が口栓7によって拡げられ、この状態を維持しながら、その直後に、パウチ本体6が後続して出し入れ口25に挿入される。これにより、パウチ本体6がスタンディングパウチ3の上端部に引っ掛かり難くなり、スパウト付パウチ2をスタンディングパウチ3内にスムーズに挿入することができる。
【0033】
上記のようにしてスパウト付パウチ2を出し入れ口25からスタンディングパウチ3内に挿入した際、
図7に示すように、スパウト付パウチ2の口栓7がスタンディングパウチ3の底シート部23を下向きに押すため、底シート部23が折畳状態から拡がり、スタンディングパウチ3の前後両シート部21,22の底部間が拡大し、スタンディングパウチ3が自立可能になる。
【0034】
この際、粉末体5が収納されているスパウト付パウチ2のパウチ本体6の厚さT(
図6参照)が口栓7のキャップ14の直径D(
図3参照)より薄い場合であっても、キャップ14によって底シート部23を十分に拡げることができるため、スタンディングパウチ3の自立性を確保することができる。
【0035】
その後、
図1および
図7の仮想線で示すように、スタンディングパウチ3の出し入れ口25を熱溶着にて閉鎖し密封する。これにより、スタンディングパウチ3の外部と内部とが確実に遮断され、スパウト付パウチ2をスタンディングパウチ3内に収納した包装容器1が製造される。
【0036】
スタンディングパウチ3は遮光性と水蒸気バリア性と酸素バリア性を有しているため、スパウト付パウチ2内に収納された粉末体5の品質低下を防止することができる。また、スパウト付パウチ2に遮光性や水蒸気バリア性又は酸素バリア性を付与する必要が無く、スパウト付パウチ2を容易に製作することができる。
【0037】
以下に、上記包装容器1の使用方法を説明する。
【0038】
スタンディングパウチ3の上端部を破断して出し入れ口25を開き、スタンディングパウチ3内のスパウト付パウチ2を出し入れ口25からスタンディングパウチ3の外部に取り出す。
【0039】
その後、
図3に示すように、スパウト付パウチ2のパウチ本体6を折畳状態から真直ぐに延ばして口栓7を上向きにし、キャップ14を回して取り外し、口栓7を開く。次に、水を口栓7の連通孔からパウチ本体6内に供給し、その後、キャップ14を取り付けて口栓7を閉じ、この状態でスパウト付パウチ2を手で持って振り、パウチ本体6内の粉末体5と水とを攪拌して混合する。
【0040】
この際、手でスパウト付パウチ2のくびれ部16を掴むことにより、手とスパウト付パウチ2との摩擦抵抗が大きくなるため、スパウト付パウチ2が滑り難くなり、グリップ性が向上する。また、パウチ本体6内において、
図3の点線矢印Aで示すように粉末体5と水とがくびれ部16にぶつかって多方向に複雑に流動するため、粉末体5と水とが十分に攪拌される。
【0041】
その後、キャップ14を回して取り外して口栓7を開き、パウチ本体6内の粉末体5と水との混合液を口栓7から注ぎ出して飲む。
【0042】
これによると、水をパウチ本体6内に供給するため、パウチ本体6は水の供給量に見合った内容積を有している必要があり、その分、パウチ本体6の高さが増大するが、
図4に示すように、パウチ本体6を二つに折り曲げることにより、包装容器1の高さを低減することができる。
【0043】
上記実施の形態では、スタンディングパウチ3内にスパウト付パウチ2を収納しているが、スパウト付パウチ2と説明書とを収納してもよい。
【0044】
上記実施の形態では、スタンディングパウチ3は遮光性と水蒸気バリア性と酸素バリア性とを備えているが、このうちの少なくともいずれか1つを備えていてもよい。
【0045】
上記実施の形態では、収納物の一例として、スパウト付パウチ2内にプロテイン等の粉末体5を収納しているが、プロテインに限定されるものではなく、プロテイン以外の粉末体であってもよい。また、粉末体5と水とを混合しているが、水以外の飲料用液体であってもよい。また、粉末体に限定されるものではなく、濃縮液と水等とを混合して希釈するものであってもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 包装容器
2 スパウト付パウチ
3 スタンディングパウチ
6 パウチ本体
7 口栓
15 折り曲げ箇所
16 くびれ部
23 底シート部
25 出し入れ口