(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】煙突
(51)【国際特許分類】
F23L 17/02 20060101AFI20230809BHJP
E04H 12/28 20060101ALI20230809BHJP
G10K 11/16 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
F23L17/02 602F
E04H12/28 A
G10K11/16 100
(21)【出願番号】P 2022065475
(22)【出願日】2022-04-12
【審査請求日】2022-04-13
(73)【特許権者】
【識別番号】503304360
【氏名又は名称】コーキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100082083
【氏名又は名称】玉田 修三
(72)【発明者】
【氏名】岩成 真一
(72)【発明者】
【氏名】小林 公武
【審査官】豊島 ひろみ
(56)【参考文献】
【文献】特許第6618780(JP,B2)
【文献】特開2004-94065(JP,A)
【文献】実公昭47-40744(JP,Y1)
【文献】実開平3-46735(JP,U)
【文献】特開2021-110242(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0105213(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23L 17/00 - 17/16
E04H 12/28
F23J 13/00 - 13/08
G10K 11/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
煙突本体を形成している筒体の上向き排気流路を通過した排気流がその頂部開口から排出される煙突であって、
複数の上向き突片が切り込み状の窪み部を隔てて環状に配列されてなる突片環状配列構造を備え、この突片環状配列構造によって上記筒体の頂部開口が取り囲まれていることを特徴とする煙突。
【請求項2】
複数の上記突片環状配列構造が、上記筒体の径方向に間隔を隔てて同心状に配備されている請求項1に記載した煙突。
【請求項3】
上記突片環状配列構造が、上記筒体の頂部に一体に延設されている請求項1に記載した煙突。
【請求項4】
上記筒体が、この筒体の外側に断熱層を介して配備された外筒を備え、この外筒の頂部に上記突片環状配列構造が一体に延設されている請求項1に記載した煙突。
【請求項5】
上記筒体が、この筒体を取り囲んで筒体との間に上向き誘引流路を形成する筒状の風防カバーとを備え、この風防カバーの頂部に上記突片環状配列構造が一体に延設されている請求項1に記載した煙突。
【請求項6】
上記筒体が、この筒体の外側に断熱層を介して配備された外筒と、上記筒体を取り囲んで筒体との間に上向き誘引流路を形成する筒状の風防カバーとを備え、上記突片環状配列構造が、上記筒体の頂部と、上記外筒及び風防カバーのうちの少なくとも一方の頂部と、に一体に延設されている請求項2に記載した煙突。
【請求項7】
上記突片環状配列構造に含まれる上向き突片の頂角が鋭角である請求項1又は請求項2に記載した煙突。
【請求項8】
同心状に配備されている内外2つの上記突片環状配列構造の相互間において、内側の突片環状配列構造の上向き突片と外側の突片環状配列構造の窪み部とが、上記筒体の径方向に並んでいる請求項2に記載した煙突。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙突、詳しくは、筒体でなる煙突本体の上向き排気流路を通過した排気流がその頂部開口から排出されるように構成されている煙突に関する。
【背景技術】
【0002】
ビルなどの非常用発電システムに使用される煙突には、高温でかつ高速の排気流を処理し得る性能が要求される。この種の煙突において、上向き排気流路を形成する筒体には四角筒形や円筒形の筒体が選ばれることが多い。また、高温でかつ高速の排気流を処理する煙突では、煙突本体の頂部開口から排気流が排出されるのに伴って発生する騒音を抑制することが望まれている。そこで、この騒音を軽減するための対策についての提案が種々なされている。先行例1(たとえば特許文献1)では、煙突にその開口端を覆う庇ユニットを取り付けることによって騒音の発生を抑制することが提案されている。また、先行例2(たとえば特許文献2)には、騒音を地上の人々に伝搬しにくくするための煙突騒音低減装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-12445号公報
【文献】特開2017-89567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、本願発明者は煙突で騒音が発生する原因について鋭意調査を実施した。この調査は、煙突本体を形成している筒体の頂部開口を取り囲む端面が平坦で、筒体がその外側に断熱層を介して配備された外筒を備えている、という構成を有する煙突について実施した。その結果、騒音の発生原因として、筒体の頂部開口から排気流が不均一な渦流(旋回流)を伴って周期的に排出されるという現象や、排気流の排出に伴う荷重を受けて鋼製の筒体が振動するという現象、などを挙げられることを突き止めた。また、不均一な渦流の発生や筒体の振動を生じる原因には、筒体の頂部開口を取り囲んでいる筒体の端面が平坦であるために、筒体の頂部開口から排出される排気流が筒体の平坦な端面の全周域で一気に剥離してしまうという事実が挙げられることを突き止めた。
【0005】
本発明は、以上の状況の下でなされたものであり、煙突本体を形成している筒体の頂部開口付近に簡易な構成を追加するだけでありながら、筒体の頂部開口から排出される排気流が筒体の端面の全周域で一気に剥離してしまうという状況が軽減され、併せて、筒体の頂部開口から排気流が排出されるのに伴って生じる渦流の不均一性が改善され、排気流の排出に伴う荷重を受けて鋼製の筒体やその他の付随的部材が振動することが抑制され、その結果として騒音の発生が抑制される煙突を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る煙突は、煙突本体を形成している筒体の上向き排気流路を通過した排気流がその頂部開口から排出される煙突であって、複数の上向き突片が切り込み状の窪み部を隔てて環状に配列されてなる突片環状配列構造を備え、この突片環状配列構造によって上記筒体の頂部開口が取り囲まれている、というものである。
【0007】
この発明に係る煙突によると、筒体の頂部開口から排出される排気流は、実質的には筒体の頂部開口を取り囲んでいる突片環状配列構造の囲繞空間を経由して排出されることになる。そして、突片環状配列構造が、複数の上向き突片が切り込み状の窪み部を隔てて環状に配列されてなる、という構成を有しているために、この突片環状配列構造の上端面は複数の凹凸を有する非平坦面になっていて、排気流は突片環状配列構造の上方に向けて排出されるだけでなく、窪み部からも排出される。このことにより、筒体の頂部開口から排出される排気流が筒体の端面の全周域で一気に剥離してしまうという状況が軽減され、併せて、筒体の頂部開口から排気流が排出されるのに伴って生じる渦流の不均一性が改善され(渦流抑制作用)、排気流の排出に伴う荷重を受けて鋼製の筒体が振動することが抑制される(振動抑制作用)。したがって、この煙突では、筒体の頂部開口の端面が平坦で上記突片環状配列構造を備えていない煙突と比べると、突片環状配列構造によって発揮される上記の渦流抑制作用や振動抑制作用を通じて騒音の発生が抑制される。また、渦流抑制作用及び振動抑制作用により、筒体の頂部開口付近での排気流が排出されやすいことから排気効率の向上も期待できる。この煙突において、突片環状配列構造は、筒体にその一部として直接に配備しておいても、筒体とは別部材により構成して筒体の頂部開口付近に配備しておいてもよい。
【0008】
本発明では、複数の上記突片環状配列構造が、筒体でなる煙突本体の径方向に間隔を隔てて同心状に配備されていてもよい。これによっても、同心状に配備されている複数の突片環状配列構造によって、上記した渦流抑制作用や振動抑制作用が発揮されるようになり、これらの作用を通じて騒音の発生が抑制される。この発明においても、突片環状配列構造は、筒体にその一部として直接に配備しておいても、筒体とは別部材により構成して筒体の頂部開口付近に配備しておいてもよい。
【0009】
本発明では、上記突片環状配列構造が、上記筒体の頂部に一体に延設されていることが望ましい。この発明は、突片環状配列構造が、筒体にその一部として直接に配備されている事例である。これによれば、筒体の頂部開口から排出される排気流による不均一な渦流の発生が顕著に抑制され、同時に鋼製の筒体などの振動も顕著に抑制されるために、騒音の発生も高度に抑制される。
【0010】
本発明では、上記筒体が、この筒体の外側に断熱層を介して配備された外筒を備え、この外筒の頂部に上記突片環状配列構造が一体に延設されている、という構成を採用することも可能である。これによっても、筒体の頂部開口から排出される排気流による不均一な渦流の発生や、筒体でなる煙突本体などの振動が抑制されて、騒音の発生が抑制される。
【0011】
本発明では、上記筒体が、この筒体を取り囲んで筒体との間に上向き誘引流路を形成する筒状の風防カバーを備え、この風防カバーの頂部に上記突片環状配列構造が一体に延設されている、という構成を採用することも可能である。これによっても、筒体の頂部開口から排出される排気流による不均一な渦流の発生や、筒体などの振動が抑制されて、騒音の発生が抑制される。併せて、筒体と風防カバーとの間の上向き誘引流路を通過して上向きに放出される外気流の作用によっても、あるいは、筒体の頂部開口から排出される排気流に作用する横風の影響が風防カバーによって軽減されるという作用によっても、騒音の発生が抑制される。そしてこのことによっても、筒体の頂部開口付近での排気流が排出されやすいことから排気効率の向上もさらに期待できる。
【0012】
本発明では、上記筒体が、この筒体の外側に断熱層を介して配備された外筒と、上記筒体を取り囲んで筒体との間に上向き誘引流路を形成する筒状の風防カバーとを備え、上記突片環状配列構造が、上記筒体の頂部と、上記外筒及び風防カバーのうちの少なくとも一方の頂部と、に一体に延設されている、という構成を採用することが可能である。この発明は、複数の上記突片環状配列構造が、筒体の径方向に間隔を隔てて同心状に配備されている事例である。
【0013】
本発明では、上記突片環状配列構造に含まれる上向き突片の頂角が鋭角であることが望ましい。これは、突片環状配列構造に含まれる上向き突片の頂角が小さいほど排気流の剥離性が向上し、上記した渦流抑制作用が顕著に発揮されて上記した振動抑制作用も顕著に発揮される、という事実に基づいている。
【0014】
本発明では、同心状に配備されている内外2つの上記突片環状配列構造の相互間において、内側の突片環状配列構造の上向き突片と外側の突片環状配列構造の窪み部とが、煙突本体を形成している上記筒体の径方向に並んでいることが望ましい。これによれば、内外2つの突片環状配列構造による相乗作用によって、上記した渦流抑制作用や振動抑制作用が顕著に発揮される。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明に係る煙突によれば、突片環状配列構造によって筒体の頂部開口での排気流の剥離性が向上するために、騒音の発生原因になると考えられる不均一な渦流の発生や煙突本体などの振動の発生が抑制され、その結果、筒体の頂部開口から排気流が排出されるのに伴って発生する騒音が抑制されるようになるという効果が奏される。また、渦流抑制作用及び振動抑制作用により、筒体の頂部開口付近での排気流が排出されやすいことから排気効率の向上も期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図3】
図2の煙突本体の要部を拡大して示した断面図である。
【
図4】本発明の第1実施形態を示した要部の概略斜視図である。
【
図5】本発明の第2実施形態に係る煙突を示した要部の概略斜視図である。
【
図6】
図5の煙突の要部を拡大して示した断面図である。
【
図7】変形例による煙突本体を例示した概略斜視図である。
【
図8】本発明の第3実施形態に係る煙突を示した要部の概略斜視図である。
【
図9】突片環状配列構造の変形例を示した説明図である。
【
図10】
図1に示した突片環状配列構造の上向き突片11の形状の変形例を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明に係る煙突が備える突片環状配列構造10の概略斜視図である。この突片環状配列構造10は、複数の上向き突片11が切り込み状の窪み部12を隔てて環状に配列されてなる。図例の突片環状配列構造10では、上向き突片11が先尖り二等辺三角形状の山形に形成され、窪み部12がV字形の谷形に形成されている。また、相隣接する任意の2つの上向き突片11,11の下端同士は互いに接して隙間なく連続している。
【0018】
図2は煙突本体50を例示した概略斜視図、
図3は
図2の煙突本体50の要部を拡大して示した断面図である。
図2及び
図3に示した煙突本体50は鋼製の筒体60を有していると共に、筒体60の外側に断熱層61を介して配備された外筒62を備えている。この煙突本体50では、筒体60の内部空間が上向き排気流路63を形成していて、排気流はこの上向き排気流路63を、たとえば風速35~40m/秒で上昇した後、その頂部開口64から外気中に排出される。
【0019】
図4は本発明の第1実施形態に係る煙突100を示した要部の概略斜視図であり、以下、この第1実施形態に係る煙突100を、
図2又は
図3に示した煙突本体50を参照しつつ説明する。なお、この第1実施形態に係る煙突100では、
図1に示した突片環状配列構造10と同一の構成を備えた突片環状配列構造に符号10Aを付し、
図1に示した突片環状配列構造10の囲繞空間13に相当する囲繞空間に符号13Aを付すことにする。
【0020】
この第1実施形態に係る煙突100は、煙突本体50を形成している筒体60の頂部65(
図4では筒体60の頂部65を一転鎖線で示してある。)に、
図1に示した突片環状配列構造10と同一の構成を有する突片環状配列構造10Aが一体に延設されてなる。このような筒体60と突片環状配列構造10Aとの一体構造は、筒体60を上方に延長し、その延長部分の周方向複数箇所に切削加工などによって窪み部12…と上向き突片11…とを形作ることによって容易に製作することができる。
【0021】
図4に示した煙突100において、高温の排気流は、筒体60の上向き排気流路63(
図3参照)を高速で上昇した後、筒体60の頂部開口64(
図2又は
図3参照)とその頂部開口64を取り囲んでいる突片環状配列構造10Aの囲繞空間13Aとを経由して矢印Fのように排出される。そして、突片環状配列構造10Aの上端面が、複数の上向き突片11…と切り込み状の複数の窪み部12…とによって形作られる複数の凹凸を有する非平坦面になっていることにより、排気流は突片環状配列構造10Aの上方に向けて排出されるだけでなく、窪み部12からも排出される。このことにより、筒体60の頂部開口64(
図3参照)から排出される排気流がその筒体60の端面の全周域で一気に剥離してしまうという状況が起こりにくくなり、併せて、筒体60の頂部開口64から排気流が排出されるのに伴って生じる渦流の不均一性が改善され(渦流抑制作用)、排気流の排出に伴う荷重を受けて鋼製の筒体60が振動することが抑制される(振動抑制作用)。したがって、この煙突100では、筒体60の頂部開口64の端面が平坦で上記突片環状配列構造10Aを備えていない煙突、すなわち
図2に示した構造を有する煙突と比べると、突片環状配列構造10Aによって発揮される上記の渦流抑制作用や振動抑制作用を通じて騒音の発生が抑制される。また、渦流抑制作用及び振動抑制作用により、筒体60の頂部開口64付近での排気流が排出されやすいことから排気効率の向上も期待できる。
【0022】
図5は本発明の第2実施形態に係る煙突100を示した要部の概略斜視、
図6は
図5の煙突100の要部を拡大して示した断面図であり、以下、この第2実施形態に係る煙突100を説明する。なお、この第2実施形態に係る煙突100では、
図1に示した突片環状配列構造10と同一の構成を備えた内外2つの突片環状配列構造に符号10A,10Bを付し、
図1に示した突片環状配列構造10の囲繞空間13に相当する囲繞空間に符号13Aを付すことにする。
【0023】
この第2実施形態では、
図4を参照して説明した第1実施形態に係る煙突100の突片環状配列構造10Aに加えて、さらにその外側に別の突片環状配列構造10Bを配備してある。ここで、外側の別の突片環状配列構造10Bは、
図6に示したように、外筒62の頂部66に一体に延設されている。
図5に示した内外2つの突片環状配列構造10A,10Bは、筒体60(
図2及び
図3参照)の径方向に間隔を隔てて同心状に配備されている。筒体60と内側の突片環状配列構造10Aとの一体構造は、筒体60を上方に延長し、その延長部分の周方向複数箇所に切削加工などによって窪み部12…と上向き突片11…とを形作ることによって容易に製作することができる。同様に、外筒62と外側の突片環状配列構造10Bとの一体構造は、外筒62を上方に延長し、その延長部分の周方向複数箇所に切削加工などによって窪み部12…と上向き突片11…とを形作ることによって容易に製作することができる。
【0024】
図5に示した煙突100において、高温の排気流は、
図6に示した筒体60の上向き排気流路63(
図3参照)を高速で上昇した後、
図4を参照して説明したところと同様に、筒体60の頂部開口64(
図2又は
図3参照)とその頂部開口64を取り囲んでいる内側の突片環状配列構造10Aの囲繞空間13Aとを経由して矢印Fのように排出される。そして、内側の突片環状配列構造10Aの上端面が複数の凹凸を有する非平坦面になっていることにより、排気流は内側の突片環状配列構造10Aの上方に向けて排出されるだけでなく、窪み部12からも排出される。また、内側の突片環状配列構造10Aの窪み部12から排出された排気流が、外側の突片環状配列構造10Bと内側の突片環状配列構造10Aとの間の環状の隙間を経て上方に排出される。このことにより、筒体60の頂部開口64(
図3参照)から排出される排気流がその筒体60の端面の全周域で一気に剥離してしまうという状況が起こりにくくなり、併せて、筒体60の頂部開口64から排気流が排出されるのに伴って生じる渦流の不均一性が改善され(渦流抑制作用)、排気流の排出に伴う荷重を受けて鋼製の筒体60やその他の付随的部材が振動することが抑制される(振動抑制作用)。この煙突100では、内外2つの突片環状配列構造10A,10Bによる相乗作用によって、上記した渦流抑制作用や振動抑制作用が顕著に発揮される。特に、この第2実施形態では、
図5又は
図6に示されているように、同心状に配備されている内外2つの突片環状配列構造10A,10Bの相互間において、内側の突片環状配列構造10Aの上向き突片11と外側の突片環状配列構造10Bの窪み部12とが、筒体60の径方向に並んでいるために、内外2つの突片環状配列構造10A,10Bによる相乗作用による渦流抑制作用や振動抑制作用がいっそう顕著に発揮される。したがって、この煙突100では、内外2つの突片環状配列構造10A,10Bによって発揮される上記の渦流抑制作用や振動抑制作用を通じて騒音の発生が顕著に抑制される。
【0025】
図7は変形例による煙突本体50を例示した概略斜視図である。
図7の煙突本体50は、上記した外筒62を有する筒体60を取り囲んで筒体60との間に上向き誘引流路69を形成する筒状の風防カバー67を備えていて、風防カバー67の下半部は下拡がりのスカート部68として形成されている。
【0026】
図8は本発明の第3実施形態に係る煙突100を示した要部の概略斜視図である。なお、この第3実施形態に係る煙突100では、
図1に示した突片環状配列構造10と同一の構成を備えた内外2つの突片環状配列構造に符号10A,10Cを付し、
図1に示した突片環状配列構造10の囲繞空間13に相当する囲繞空間に符号13Aを付すことにする。
【0027】
この第3実施形態では、
図4を参照して説明した第1実施形態に係る煙突100の突片環状配列構造10Aに加えて、さらにその外側に別の突片環状配列構造10Cを配備してある。外側の別の突片環状配列構造10Cは、
図8に示したように、風防カバー67の頂部71(一点鎖線で示してある。)に一体に延設されている。
図8に示した内外2つの突片環状配列構造10A,10Cは、筒体60(
図2及び
図3参照)の径方向に間隔を隔てて同心状に配備されている。風防カバー67と外側の突片環状配列構造10Cとの一体構造は、風防カバー67を上方に延長し、その延長部分の周方向複数箇所に切削加工などによって窪み部12…と上向き突片11…とを形作ることによって容易に製作することができる。
【0028】
図8に示した煙突100において、高温の排気流は、
図7に示した筒体60の上向き排気流路63(
図3参照)を高速で上昇した後、
図4を参照して説明したところと同様に、筒体60の頂部開口64(
図2又は
図3参照)とその頂部開口64を取り囲んでいる内側の突片環状配列構造10Aの囲繞空間13Aとを経由して矢印Fのように排出される。そして、内側の突片環状配列構造10の上端面が複数の凹凸を有する非平坦面になっていることにより、排気流は内側の突片環状配列構造10Aの上方に向けて排出されるだけでなく、窪み部12からも排出される。また、内側の突片環状配列構造10Aの窪み部12から排出された排気流が、外側の突片環状配列構造10Cと内側の突片環状配列構造10Aとの間の環状の隙間を経て上方に排出される。このことにより、筒体60の頂部開口64(
図3参照)から排出される排気流がその筒体60の端面の全周域で一気に剥離してしまうという状況が起こりにくくなり、併せて、筒体60の頂部開口64から排気流が排出されるのに伴って生じる渦流の不均一性が改善され(渦流抑制作用)、排気流の排出に伴う荷重を受けて鋼製の筒体60やその他の付随的部材が振動することが抑制される(振動抑制作用)。この煙突100では、内外2つの突片環状配列構造10A,10Cによる相乗作用によって、上記した渦流抑制作用や振動抑制作用が顕著に発揮される。特に、この第3実施形態では、
図8に示されているように、同心状に配備されている内外2つの突片環状配列構造10A,10Cの相互間において、内側の突片環状配列構造10Aの上向き突片11と外側の突片環状配列構造10Cの窪み部12とが、筒体60の径方向に並んでいるために、内外2つの突片環状配列構造10A,10Cによる相乗作用による渦流抑制作用や振動抑制作用がいっそう顕著に発揮される。したがって、この煙突100では、内外2つの突片環状配列構造10A,10Cによって発揮される上記の渦流抑制作用や振動抑制作用を通じて騒音の発生が顕著に抑制される。また、筒体60と風防カバー67との間の上向き誘引流路69を通過して上向きに放出される外気流の作用によっても、あるいは、筒体60の頂部開口64から排出される排気流に作用する横風の影響が風防カバー67によって軽減されるという作用によっても、騒音の発生が抑制される。そしてこれらの相乗効果により、筒体60の頂部開口64付近での排気流が排出されやすいことから排気効率の向上もさらに期待できる。
【0029】
以上説明したように、第1実施形態では、
図4のように1つの突片環状配列構造10Aを筒体60だけに延設し、第2実施形態では、
図5のように内外2つの突片環状配列構造10A,10Bを筒体60と外筒62とに各別に振り分けて延設し、第3実施形態では、
図8のように内外2つの突片環状配列構造10A,10Cを筒体60と風防カバー67とに各別に振り分けて延設した事例をそれぞれ示してある。このことに関連して、本発明に係る煙突100の構成は、上記の第1~第3の実施形態に限定されることはなく、たとえば、筒体60と外筒62と風防カバー67との3つの部材にそれぞれ突片環状配列構造10A,10B,10Cを延設しておいてもよい。また、筒体60と外筒62と風防カバー67との3つの部材から選ばれる任意の1つの部材だけに
図1に示した突片環状配列構造10を延設しておいてもよい。要するに、
図1に示した突片環状配列構造10によって筒体60の頂部開口64が一重又は2重に取り囲まれていればよい。
【0030】
上記した第1~第3の各実施形態では、突片環状配列構造10A,10B,10Cの上向き突片11及び窪み部12のそれぞれが、周方向等間隔おきの16箇所に形成されているけれども、上向き突片11や窪み部12の数は16個に限定されるものではなく、筒体60の頂部開口64の口径などに応じて適切に定められるべきである。たとえば、筒体60の頂部開口64の口径が900mmであるときには、上向き突片11や窪み部12の数を各実施形態のように16個にすることが適切であることが判っている。また、上向き突片11や窪み部12の数が少なすぎたり多すぎたりすると上記した渦流抑制作用や振動抑制作用が十分に発揮されにくくなることが判っている。上向き突片11や窪み部12の適切な数として、上記した16個のほか、6~32個程度を選定することが望ましい。
【0031】
図9は
図1に示した突片環状配列構造10の変形例を示した説明図である。同図の事例では、複数の上向き突片11…の相隣接する下端同士の相互間に間隔Sが形成されている。このように複数の上向き突片11…の相隣接する下端同士の相互間に間隔Sを形成しておくと、上向き突片11,11の相互間隙間を広く形成することが容易になる。その一方で、突片環状配列構造10の相隣接する上向き突片11,11の下端同士が隙間なく連続していると、
図9の場合に比べて、上向き突片11の個数を増やして騒音抑制作用を向上させやすくなるという利点がある。
【0032】
図10は
図1に示した突片環状配列構造10の上向き突片11の形状の変形例を示した説明図である。図示の上向き突片11は、上端部が湾曲形状に形成されている点、及び、窪み部12がU字形になっている点で、
図1に示した突片環状配列構造10とは相違している。しかしながら、突片環状配列構造10に含まれる上向き突片11は、その頂角が鋭角、たとえば45度、60度などであることが望ましい。このように上向き突片11の頂角を鋭角にしておくと、排気流の排気時に生じる渦流の発生が抑制されて振動を抑制する作用が向上することが判っている。
【0033】
本発明に係る煙突100において、突片環状配列構造10は、上記した筒体60や外筒62、風防カバー67などに一体に延設されている必要性は必ずしもない。すなわち、上記したように、突片環状配列構造10によって筒体60の頂部開口64が一重又は2重に取り囲まれていればよい。したがって、突片環状配列構造10を筒体60や外筒62、風防カバー67とは別部材によって製作し、そのような別部材でなる突片環状配列構造10を筒体60などに支持体などを介して取り付けることによって筒体60の頂部開口64を一重又は2重に取り囲ませておいてもよい。
【0034】
さらに、煙突本体を形成している筒体の形状は、
図1~
図8に示した円筒形状に限らず、四角筒形状であってもよい。
【0035】
そのほか、複数の突片環状配列構造10を同心状に配備する場合、内側の突片環状配列構造10と外側の突片環状配列構造10との高さを変えることは勿論可能である。
【0036】
図1~
図10においては、説明及び図面の理解を容易にすることを意図して同一又は相応する要素に同一符号を付している。
【符号の説明】
【0037】
10,10A,10B,10C 突片環状配列構造
11 上向き突片
12 窪み部
50 煙突本体
60 筒体
61 断熱層
62 外筒
63 上向き排気流路
64 筒体の頂部開口
65 筒体の頂部
66 外筒の頂部
69 上向き誘引流路
67 風防カバー
71 風防カバーの頂部
100 煙突
【要約】
【課題】煙突本体を形成している筒体の頂部開口付近に簡易な構成を追加するだけで騒音の発生が抑制される煙突を提供する。
【解決手段】複数の上向き突片11が切り込み状の窪み部12を隔てて環状に配列されてなる突片環状配列構造10を備えており、この突片環状配列構造を、煙突本体50を形成している筒体60の頂部65や、筒体60を取り囲んで筒体60との間に上向き誘引通路を形成する風防カバー67の頂部71などに延設する。
【選択図】
図8