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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】車両処理装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/24 20060101AFI20230809BHJP
   B60S 3/04 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
G01B11/24 A
B60S3/04
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019209652
(22)【出願日】2019-11-20
(65)【公開番号】P2021081327
(43)【公開日】2021-05-27
【審査請求日】2022-08-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000103138
【氏名又は名称】エムケー精工株式会社
(72)【発明者】
【氏名】宮沢 利明
(72)【発明者】
【氏名】滝澤 良平
(72)【発明者】
【氏名】境澤 孝宣
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-180453(JP,A)
【文献】特開2003-098007(JP,A)
【文献】特開2016-217837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
G01V 1/00-99/00
B60S 3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地面に起立する一対のフレームを有し、車両に対して相対的に前後に移動可能な本体部と、
前記一対のフレームのそれぞれに設けられた発光部および受光部を有し、前記発光部と前記受光部との間で車両を検出する車両検出部と、を備え、
前記発光部は、複数の発光素子を有し、前記本体部の起立方向および前後方向に沿って前記発光素子が並んで行列配置されており、
前記受光部は、複数の受光素子を有し、前記本体部の起立方向に沿って前記受光素子が並んで一列配置されている、
車両処理装置。
【請求項2】
前記本体部の前後方向に並ぶ前記発光素子のうち前端のものと後端のものとの中間位置で対向するように前記受光素子が一列配置されている、
請求項記載の車両処理装置。
【請求項3】
地面に起立する一対のフレームを有し、車両に対して相対的に前後に移動可能な本体部と、
前記一対のフレームのそれぞれに設けられた発光部および受光部を有し、前記発光部と前記受光部との間で車両を検出する車両検出部と、を備え、
前記発光部は、複数の発光素子を有し、前記本体部の起立方向および前後方向に沿って前記発光素子が並んで行列配置されており、
前記本体部の起立方向の同一高さにおいて前後方向に並ぶ前記発光素子が同時に発光される、
車両処理装置。
【請求項4】
地面に起立する一対のフレームを有し、車両に対して相対的に前後に移動可能な本体部と、
前記一対のフレームのそれぞれに設けられた発光部および受光部を有し、前記発光部と前記受光部との間で車両を検出する車両検出部と、を備え、
前記発光部は、複数の発光素子を有し、前記本体部の起立方向および前後方向に沿って前記発光素子が並んで行列配置されており、
前記発光素子の行列配置において前後方向ピッチが起立方向ピッチよりも狭い、
車両処理装置。
【請求項5】
前記発光素子が、表面実装型LEDである、
請求項1~のいずれか一項に記載の車両処理装置。
【請求項6】
前記発光素子の行列配置の一列が他列よりも前記本体部の起立方向上方に延びている、
請求項1~のいずれか一項に記載の車両処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両処理装置に関し、特に、処理対象の車両(車体)に対して検出処理を行い、その形状(車形)に合わせて洗浄処理を行う機能を備える洗車装置に適用して有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平10-338103号公報(特許文献1)には、車形検出装置およびこれを備えた洗車装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-338103号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載のような洗車装置では、前後に移動可能な本体部(フレーム)の起立方向(上下方向)に所定間隔毎に対をなす発光(投光)素子と受光素子が設けられている。この洗車装置では、本体部の移動と共に発光素子と受光素子との間に形成される光軸の通光/遮光によって車両の有無を検出する。光軸の通光/遮光は、受光素子での受光量が所定の閾値に達するか否かで判定され、通光した光軸を1、遮光した光軸を0とし2値データに変換される。起立方向を縦、移動方向を横とした行列配置を構成する各セルを2値データで示すことで車形画像データを取得することができる。
【0005】
例えば、縦(行)側の1セルの長さは隣り合う発光素子の縦ピッチ(起立方向ピッチ)に相当し、横(列)側の1セルの長さは走行する本体部の位置検出用ロータリエンコーダのパルス発生タイミングに相当する。このため、1セルの縦分解能には本体部の起立方向に並ぶ複数素子の配置が寄与し、横分解能にはロータリエンコーダの性能が寄与する。車両検出の精度を向上するためには、これらの分解能を向上させることが考えられる。しかしながら、縦分解能を向上(起立方向の発光素子を多くして縦ピッチを狭くする)したり、横分解能を向上(エンコーダの性能向上)したりしても、発光素子や受光素子の汚れ等により光軸自体が妨げられては、車両検出の精度を十分に向上できないおそれがある。
【0006】
本発明の一目的は、車両検出の精度を向上することのできる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一解決手段に係る車両処理装置は、地面に起立する一対のフレームを有し、車両に対して相対的に前後に移動可能な本体部と、前記一対のフレームのそれぞれに設けられた発光部および受光部を有し、前記発光部と前記受光部との間で車両を検出する車両検出部と、を備える。ここで、前記発光部は、複数の発光素子を有し、前記本体部の起立方向および前後方向に沿って前記発光素子が並んで行列配置されている。
【発明の効果】
【0008】
一解決手段によれば、車両検出の精度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る車両処理装置の正面視からの概略図である。
図2図1に示す車両処理装置の側面視からの概略図である。
図3図1に示す車両処理装置の車両検出部を説明する概略図であり、(a)は受光部側からみた発光部、(b)は発光部側からみた受光部、(c)は平面視の発光部および受光部である。
図4図1に示す車両処理装置の制御系の概略図である。
図5図1に示す車両処理装置の車形検出処理フローの概略図である。
図6】本発明の他の実施形態に係る車両処理装置の車両検出部を説明する概略図であり、(a)は受光部側からみた発光部、(b)は発光部側からみた受光部、(c)は平面視の発光部および受光部である。
図7】本発明の他の実施形態に係る車両処理装置の車両検出部を説明する概略図であり、(a)は受光部側からみた発光部、(b)は発光部側からみた受光部である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下の本発明における実施形態では、必要な場合に複数のセクションなどに分けて説明するが、原則、それらはお互いに無関係ではなく、一方は他方の一部または全部の変形例、詳細などの関係にある。このため、全図において、同一の機能を有する部材には同一の符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。また、構成要素の数(個数、数値、量、範囲などを含む)については、特に明示した場合や原理的に明らかに特定の数に限定される場合などを除き、その特定の数に限定されるものではなく、特定の数以上でも以下でも良い。また、構成要素などの形状に言及するときは、特に明示した場合および原理的に明らかにそうではないと考えられる場合などを除き、実質的にその形状などに近似または類似するものなどを含むものとする。
【0011】
(実施形態1)
本発明の実施形態1では、車両処理装置として洗車装置に適用した場合について図面を参照して説明する。図1および図2は、本実施形態に係る洗車装置10の正面視および側面視からの概略図である。図3は、車両検出部26を説明する概略図であり、(a)は受光部RU側からみた発光部EU、(b)は発光部EU側からみた受光部RU、(c)は平面視の発光部EUおよび受光部RUである。図4は、洗車装置10の制御系の概略図である。図5は、洗車装置10の車形検出処理フローの概略図である。
【0012】
洗車装置10は、地面G(敷設面)に起立して設けられた本体部11(本体機ともいう)を備えている。本体部11は、処理対象となる車両Cを跨ぐように門型状のフレーム(筐体)で構成されている。このため、本体部11は、地面Gから起立する一対の脚フレーム11Aと、この一対の脚フレーム11Aにかかる梁フレーム11Bとを有している。
【0013】
また、洗車装置10は、レール12と、車輪13、14とを備えている。一対のレール12は、互いが平行となるように延在して地面Gに設けられている。車輪13、14は、一対の脚フレーム11Aの底部のそれぞれに設けられている。洗車装置10では、車輪13を駆動輪、車輪14を従動輪としている。洗車装置10では、この一対のレール12間に車両Cが停車(図2では車両Cの前端を本体部11に向けて停車)した状態で、一対のレール12上を車輪13、14(計4輪)を介して本体部11が前後に移動(往復走行)することとなる。なお、図2の右方向が本体部11の前方向、左方向が後方向となる。
【0014】
また、洗車装置10は、モータ15と、エンコーダ16とを備えている。モータ15は、地面Gに対して車輪13よりも高い位置から車輪13と接続されるように本体部11の一対の脚フレーム11Aのそれぞれに設けられている。このモータ15は、正逆転可能に構成されており、車輪13(駆動輪)を介して本体部11を前後に移動させる。エンコーダ16は、本体部11の脚フレーム11Aの一方に設けられ、その一方側のモータ15の出力軸に連結されている。エンコーダ16は、レール12上における本体部11の走行位置を検出する。すなわち、エンコーダ16は、モータ15の回転方向すなわち車輪13の回転方向を検出しながら単位角度回転ごとにパルス信号を出力することで、レール12上における本体部11の位置を与えることができる。
【0015】
また、洗車装置10は、前後スイッチ17およびドック18A、18Bを備えている。前後スイッチ17は、一方の脚フレーム11Aの底部に設けられている。また、ドック18Aは、一方のレール12の一端側(本体部11の前後方向前側)に設けられ、ドック18Bは、同じレール12の他端側(前後方向後側)に設けられている。前後スイッチ17は、本体部11の移動によりドック18A、18Bでスイッチングし、ドック18Aとドック18Bとの間で本体部11の移動限界を検出する。このため、洗車装置10では、本体部11が停車した車両Cを跨いで車長方向に通過するように移動限界の範囲内で移動することができる。なお、洗車装置10が入車待ちの状態(待機状態)は、前後スイッチ17がドック18Bとスイッチングして本体部11が停止した状態である。
【0016】
また、洗車装置10は、本体部11に設けられたトップブラシ20および一対のサイドブラシ21を備えている。トップブラシ20(回転ブラシ)は、待機時に門型状の本体部11の開口上部側(梁フレーム11B側)に収容されている。このトップブラシ20は、可動部として本体部11の移動に伴って回転しながら上下に昇降し、主に車両Cの上面をブラッシングすることができる。また、一対のサイドブラシ21(回転ブラシ)は、それぞれ待機時に門型状の本体部11の開口側部側(一対の脚フレーム11A側)に収容されている。一対のサイドブラシ21は、可動部として本体部11の移動に伴って回転しながら開閉動作(互いが近づいたり離れたりする動作)し、主に車両Cの前面、側面および後面をブラッシングすることができる。
【0017】
また、洗車装置10は、本体部11に設けられるトップスプレー22および一対のサイドスプレー23を備えている。トップスプレー22は、門型状の本体部11の開口上部側(梁フレーム11B側)に収容されている。トップスプレー22は、本体部11の移動に伴ってパイプに設けられた複数の噴射ノズル(不図示)から水などの洗浄液を噴射し、主に車両Cの上面を洗浄することができる。また、一対のサイドスプレー23は、それぞれ門型状の本体部11の開口側部側(一対の脚フレーム11A側)に収容されている。一対のサイドスプレー23は、本体部11の移動に伴ってパイプに設けられた複数の噴射ノズル(不図示)から水などの洗浄液を噴射し、主に車両Cの側面を洗浄することができる。なお、洗車装置10では、本体部11の前進に伴って車両Cをブラッシング洗浄するため、トップスプレー22およびサイドスプレー23はトップブラシ20およびサイドブラシ21よりも本体部11の前側に設けられている。
【0018】
また、洗車装置10は、本体部11に設けられるトップノズル24(ブロワノズル)および一対のサイドノズル25(ブロワノズル)を備えている。トップノズル24は、待機時に門型状の本体部11の開口上部側(梁フレーム11B側)に収容されている。トップノズル24は、可動部として本体部11の移動に伴って送風しながら車両Cと接触せずに上下に昇降し、主に車両Cの上面を乾燥することができる。また、一対のサイドノズル25は、それぞれ待機時に門型状の本体部11の開口側部側(一対の脚フレーム11A側)に収容されている。一対のサイドノズル25は、可動部として本体部11の移動に伴って送風しながら車両Cと接触せずに開閉動作(互いが近づいたり離れたりする動作)し、主に車両Cの側面を乾燥することができる。
【0019】
また、洗車装置10は、本体部11に設けられ、車両Cを検出する車両検出部26を備えている。車両検出部26は、一対の脚フレーム11Aのそれぞれに設けられた発光部EUおよび受光部RUを備え、発光部EUと受光部RUとの間で車両Cを検出するよう構成されている。発光部EUと受光部RUとが対向するように、発光部EUは、門型状の本体部11の開口右側部側(一方の脚フレーム11A側)に収納され、受光部RUは、門型状の本体部11の開口左側部側(他方の脚フレーム11A側)に収納されている。
【0020】
車両検出部26は、発光部EUが有する発光素子Eと、受光部RUが有する受光素子Rとにより、透過型の光電センサとしての機能を有している。より具体的には、発光素子E(例えば、LED)と受光素子R(例えば、フォトダイオード)との間で光信号(例えば、赤外線)を授受して光軸Bが形成される。この光軸Bの通光/遮光を基に、車両検出部26は車両Cの有無を検出し、種々のデータを取得することができる。例えば、通光した光軸を1、遮光した光軸を0に変換した2値データを基にし、車両Cの側方からの形状として車形画像データを取得することができる。また、発光素子Eと受光素子Rは、本体部11の起立方向(鉛直方向)に沿って設けられているため、車両Cを検出した発光素子Eおよび受光素子Rの設置高さを基に、車両Cの高さを取得することができる。
【0021】
図3(a)に示すように、発光部EUは、複数の発光素子Eを有し、本体部11の起立方向yおよび前後方向xに沿って発光素子Eが並んで行列配置されている。本実施形態では、複数の発光素子Eは、起立方向yのm行、前後方向xの3列の行列配置(素子数m×3個)を構成している。また、図3(b)に示すように、受光部RUは、複数の受光素子Rを有し、本体部11の起立方向yおよび前後方向xに沿って受光素子Rが並んで行列配置されている。本実施形態では、複数の受光素子Rは、起立方向yのm行、前後方向xの3列の行列配置(素子数m×3個)を構成している。
【0022】
このように、発光部EUにおける発光素子Eの行列配置は、地面G側から1行目、2行目・・・m行目とし、本体部11の前面11F側から1列目、2列目、3列目と構成されている。本実施形態では、例えば、1行1列の発光素子Eであれば発光素子E11と番号を付し、m行3列のものであれば発光素子Em3のように番号を付して表す。また、受光部RUにおける受光素子Rの行列配置についても同様である。
【0023】
ここで、同じ行の発光素子Eであれば、それらの地面Gからの設置高さは同じとなる。具体的には、1行目の発光素子E11、E12、E13であれば、地面Gからの高さy1として全てが同じ設置高さにある。また、2行目の発光素子E21、E22、E23であれば、地面Gからの高さy2として全てが同じ設置高さにある。そして、隣接する行の発光素子Eの間隔は同じである。本体部11の起立方向の発光素子Eが等間隔であることを縦ピッチpy(起立方向ピッチ)と記す。
【0024】
また、同じ列の発光素子Eであれば、本体部11の前面11Fからの設置距離は同じとなる。具体的には、1列目の発光素子E11、E21、E31、・・・Em1であれば、前面11Fからの距離x1として全てが同じ設置距離にある。また、2列目の発光素子E12、E22、・・・Em2であれば、前面11Fからの距離x2として全てが同じ設置距離にある。また、3列目の発光素子E13、E23、・・・Em3であれば、前面11Fからの距離x3として全てが同じ設置距離にある。そして、隣接する列の発光素子Eの間隔は同じである。本体部11の前後方向の発光素子Eが等間隔であることを横ピッチpx(前後方向ピッチ)と記す。
【0025】
受光部RUにおける受光素子Rの行列配置も発光部EUにおける発光素子Eの行列配置もm行×3列に構成されている。このため、発光部EUの複数の発光素子Eと、受光部RUの複数の受光素子Rは同数であり、本実施形態では、同じ行で同じ列のもの同士が向かい合うように配置されている。例えば、図3(c)に示すように、発光素子E11と受光素子R11とが距離W離れて向かい合っている。発光素子E11が発光し、受光素子R11で受光することで地面に水平な光軸B11が形成される。発光素子E12と受光素子R12、発光素子E13と受光素子R13も同様であり、発光素子E12と受光素子R12との間では光軸B22、発光素子E13と受光素子R13との間では光軸B33が形成される。これら光軸B11、B22、B33による光は車幅方向z(前面11Fと平行な方向)において平行に同じ距離Wを進むことになる。
【0026】
ところで、縦分解能向上の観点からは、縦ピッチpyが狭い方が好ましい。しかしながら、例えば、図3(a)に示す発光素子E21に水滴が付着した場合、その水滴は、重力により下へ落ちていくため縦ピッチpyが狭くなると発光素子E11に付着するおそれが高くなってしまう。そこで、本実施形態では、本体部11の前後方向xに複数の発光素子Eを設けることで、同じ設置高さにあるもの同士で補完しあうようにしている。例えば、発光素子E21に水滴が付着していても本体部11の前後方向xに隣接するように設けられた発光素子E22、E23によって、それらが設置されている高さy2における発光素子Eとしての機能(検出に十分な光軸Bが形成されること)を確保することができる。したがって、車両検出の精度を向上することができる。また、本実施形態では、受光部RUでも本体部11の前後方向xに複数の受光素子Rを設けており、同様の作用効果を得ることができる。
【0027】
また、重力により水滴が下へ落ちて下隣の発光素子Eに付着するのを回避するため、ある程度の縦ピッチpyを確保することも考えられる。水滴が付着しづらくなるように縦ピッチpyが確保された場合であっても、横ピッチpxに関しては縦ピッチpyより狭くした方が、光の指向性の面から重力による水滴の影響を回避しやすい。そこで、本実施形態では、横ピッチpx(前後方向ピッチ)が縦ピッチpy(起立方向ピッチ)よりも狭くなるように発光部EUの発光素子Eを配置している。このように前後方向xにおいて発光素子Eが近づくことで、同じ設置高さにあるもの同士でより緊密に補完しあうことができ、車両検出の精度をより向上することができる。また、発光素子Eとして、例えば砲弾型や表面実装型(チップ型)のLEDを用いることができる。表面実装型の場合、本体部11の前後方向xに互いを近づけて配置することができる。
【0028】
このような発光部EUおよび受光部RUを有する車両検出部26を備える洗車装置10は、図4に示すように、発光部EU用の走査駆動部30と、受光部RU用の走査駆動部31とを備えている。本実施形態では、走査駆動部30は、車両検出時において本体部11の起立方向(行方向)に並ぶ一列目の発光素子Eを下から上(もしくは上から下)へ順次点灯し、次いで同様に2列目、3列目と順次点灯する。また、走査駆動部31は、発光素子Eの走査に向かい合う受光素子Rを順次受光状態とする。これにより、対応する発光素子Eと受光素子Rとの間で光信号の授受がなされ、地面Gに水平な光軸Bが形成される。
【0029】
また、洗車装置10は、車形制御部32を備えている。車形制御部32はCPUなどの電子部品から構成された種々の処理部(処理手段)を有し、本体部11の走行エンコーダ16からのパルス信号により、各走査駆動部30、31を動作させて車両Cの上面形状を検出するものである。この車形制御部32は、走行位置検出部33と、受光検出部34と、閾値設定部35と、車両検出部36と、車両データ作成部37と、画像処理部40と、データ記憶部41とを備えている。
【0030】
走行位置検出部33は、走行エンコーダ16からのパルス信号により本体部11の走行位置を検出する。受光検出部34は、各受光素子Rでの受光量(受光レベル)を検出する。閾値設定部35は、発光部EUと発光部RUとの間に車両Cが存在しない状態で各受光素子Rが受信する受光量に基づいて光軸Bの通光/遮光を判定する閾値を設定する。ここで、閾値とは、発光素子Eが発光したことによって対応する受光素子Rで受ける受光量の増加分と対比される数値である。発光により受光量が閾値以上増加すればその光軸Bは通光しているとして車両非検出と判定し、閾値に達しなければその光軸Bは遮光されているとして車両検出と判定される。
【0031】
また、車両検出部36は、走行エンコーダ16からのパルス信号をトリガとして走査駆動部30、31を動作させ、受光検出部34で検出される各受光素子Rの受光量を、閾値設定部35で設定した閾値と比較して各光軸Bの通光/遮光を判定する。車両データ作成部37は、走行位置検出部33から与えられる本体部11の走行位置と車両検出部36で検出した各光軸Bの通光/遮光から2値画像データを作成する。画像処理部40は、車両データ作成部37で作成した2値画像データを解析処理し、洗車用データを作成する。データ記憶部41は、走行位置検出部33で検出される本体部11の走行位置データ、閾値設定部35で設定される閾値、車両データ作成部37で作成される2値画像データや、画像処理部40で抽出される洗車用データなどが記憶される。
【0032】
また、洗車装置10は、洗車制御部42と、洗車駆動部43と、操作パネル44とを備えている。洗車制御部42は、洗車処理プロブラムに従って洗車駆動部43を介してトップブラシ20、トップノズル24などの処理装置(可動部)や本体部11のモータ15などを駆動し、本体部11を移動させつつ、車両Cの洗浄、乾燥といった洗車処理を行わせる。例えば、洗車制御部42は、作成された洗車用車形データに基づいてトップブラシ20およびトップノズル24を昇降制御し、車体面を忠実にトレースするよう操作する。操作パネル44は、本体部11とは別設される洗車受付装置(図示しない)に設けられ、ユーザによって洗車内容の選択入力や洗車開始入力が行われる。
【0033】
次に、車形制御部32を用いた車形検出の処理方法について説明する。図5に示すように、車形検出処理は、閾値設定処理(ステップS10)、車両検出処理(ステップS20)、判定処理(ステップS30)、車形データ作成処理(ステップS40)、画像処理(ステップS50)を含み、この順に行われる。
【0034】
<閾値設定処理(ステップS10)>
閾値設定部35では、発光素子Eを発光させる前の受光素子Rでの受光量と、発光素子Eを発光させたときの受光素子Rでの受光量との差分受光量に基づいて判別閾値を設定する。この判別閾値は、各発光素子Eや受光素子Rの個々の性能や精度に応じて通光/遮光を判別する基準値となるため、汚れの付着等による受光量低下も許容できるように車両検出前には必ず個々の受光素子R毎に設定される。
【0035】
より具体的には、まず、車両検出部26の発光部EUと受光部RUとの間に車両Cが本体部11に入り込んでいない状態で行われ、受光部RUの走査駆動部31を駆動し、発光素子Eを発光させる前の受光素子Rの受光量raの取り込みが行われる。次いで、発光部EUの走査駆動部30と受光部RUの走査駆動部31とを同期駆動し、発光素子Eを発光させた時の受光素子Rの受光量rbの取り込みが行われる。その後、受光量raと受光量rbとの差分受光量rcを算出し、この差分受光量rcに対して所定割合(例えば50%)を閾値Sとして設定し、データ記憶部41に記憶する。
【0036】
上記の手順で、各受光素子Rの全てに対して閾値Sの設定を行う。例えば、この設定動作で検出された受光素子R11の差分受光量rc11=10であった場合、受光素子R11の閾値S=5と設定される。なお、ここでは閾値Sを設定する際の所定割合を50%としているが、洗車装置10を使用する環境(湯気の発生等)や検出の精度によってその都度設定することが望ましい。
【0037】
<車両検出処理(ステップS20)>
車両検出部36では、まず、受光部RUの走査駆動部31を駆動し、発光素子Eを発光させる前の受光素子Rの受光量raの取り込みが行われる。次いで、発光部EUの走査駆動部30と受光部RUの走査駆動部31とを同期駆動し、発光素子Eを発光させた時の受光素子Rの受光量rbの取り込みが行われる。その後、受光量raと受光量rbとの差分受光量rcを算出する。
【0038】
次いで、閾値設定処理によってデータ記憶部41に記憶された閾値Sを読み出して、算出した差分受光量rcと比較する。差分受光量rcが閾値Sよりも低ければ光軸Bを「遮光」と判定し、閾値Sよりも高ければ光軸Bを「通光」と判定する。そして、一走査分(行列配置の一列分)の検出が終わると、それを車両データとしてデータ記憶部41に記憶する。同様に、行列配置の他の列分についても走査による検出を行い、それを車両データとしてデータ記憶部41に記憶する。
【0039】
なお、行列配置の同じ行にある(本体部11の起立方向の同一高さにおいて前後方向に並ぶ)発光素子Eを同時に発光させることもできる。例えば、発光部EU側では、同一の設置高さy1にある発光素子E11、E12、E13を同時に発光させ、受光部RU側では、同一の設置高さy1にある受光素子R11、R12、R13で順に受光させることもできる。同時に発光させることで発光量が多くなるため、発光部EUと受光部RUとの間に水飛沫がある場合であっても、その影響を受けにくくすることができる。すなわち、水飛沫を車両Cがあると誤検出することを防止することができるので、車両検出の精度を向上することができる。
【0040】
<判定処理(ステップS30)>
ここでは、同じ設定高さにある受光素子Rの判定結果について多数決判定を行う。例えば、同じ設定高さの行列配置1行目にある受光素子R11、R12、R13の3つ(3列分)において、2つ以上が「通光」であれば、1行目の受光素子Rとして「通光」と判定し、2つ以上が「遮光」であれば、1行目の受光素子Rとして「遮光」と判定する。行列配置のその他の行にある受光素子Rに対しても同様に行われると、それらのデータが車両データ作成部37に送られる。
【0041】
なお、本実施形態では、発光素子Eおよび受光素子Rの行列配置において本体部11の起立方向に沿って3列の場合を説明している。これに限らず、行列配置において2列や4列、それ以上であってもよく、それらの場合でも前述の多数決判定を行うことができる。また、行列配置が偶数列の場合において、多数決判定が「通光」、「遮光」とも同数であれば、例えば「遮光」と判定すればよい。この判定結果から後述する洗車用データが作成され、これを基に車両Cに対してブラシなどを近づけて処理が行われるため、「遮光」と判定した方が車両Cへ近づきすぎてダメージを与えてしまうことを防止することができるからである。
【0042】
<車両データ作成(ステップS40)>
車両データ作成部37では、車両検出部36から受けた車両データに含まれる「通光」を「0」、「遮光」を「1」とした2値データを作成する。そして、この2値データを本体部11が所定距離走行するごとに作成し、本体部11が往行するまで実行して、横軸を横ピッチpx、縦軸を縦ピッチpyとした行列上に展開された車形データを形成する。作成した車両データは、データ記憶部41に記憶され、画像処理部40で洗車用データに画像処理される。
【0043】
<画像処理(ステップS50)>
画像処理部40では、2値化した車両データに論理フィルターをかけて輪郭線を抽出する。この処理は、車両データにおいて「1」が隣どうし連続して存在している連結成分の、最も下でかつ最も左に位置するセルを追跡開始点とし、この点を中心にその周りに隣接する8セルを右まわりに調べ、「0」から「1」に変わるセルを検出していき、検出したセルを輪郭線とするものである。実際には、本体部11の走行とともに車両Cの車体画像データが順次送られてきて展開されつつ輪郭線を追跡するため、車両全体の画像データ取り込みを完了した時点で全体の輪郭線が抽出される。こうして得られた車両Cの輪郭から、本体部11の前後方向xに対する本体部11の起立方向yのデータを決定した洗車用データを作成することができる。
【0044】
次に、洗車装置10の動作(車両処理方法)について説明する。洗車装置10は、ユーザによって操作パネル44で受付がなされると、所定の停車位置に車両Cを停車させるよう表示機などによってユーザに案内を出す。これにより、車両Cは車両検出部26で検出されない所定の停車位置に停車させられる。次いで、前述したように、車形検出処理が行われ(ステップS10~S50)、洗車用データが作成される。この洗車用データの作成は、本体部11が往路を走行する間継続して実行され、連続した車両Cの上面輪郭が得られる。なお、1往行中に車形検出と洗浄を同時に行うことが可能である。
【0045】
車両Cの形状が検出されると、検出された車両Cの輪郭に基づいて洗車動作が行われる。洗車動作は、本体部11の走行に伴い、例えば、シャンプー噴射を伴う車両Cへのブラッシング処理と、高速風の噴射によるブロー処理が順次実行される。このうち、トップブラシ20およびトップノズル24は、検出された車両Cの輪郭に沿って昇降制御される。洗車動作が終了すると、洗車装置10は表示機などによってユーザに車両Cの退出を促す。
【0046】
(実施形態2)
前記実施形態1では、受光部の受光素子を行列配置(m行×3列)とした場合について説明した。本発明の実施形態2では、受光部の受光素子を本体部の起立方向に沿って並ぶ一列配置(m行×1列)とした場合について図面を参照して説明する。図6は、本実施形態2に係る車両検出部26aを説明する概略図であり、(a)は受光部RUa側からみた発光部EU、(b)は発光部EU側からみた受光部RUa、(c)は平面視の発光部EUおよび受光部RUaである。
【0047】
車両検出部26aは、一対の脚フレーム11A(図1参照)のそれぞれに設けられた発光部EUおよび受光部RUaを備え、発光部EUと受光部RUaとの間で車両Cを検出するよう構成されている。図6(a)に示す車両検出部26aの発光部EUは、図3(a)で示したものと同様であり複数の発光素子Eがm行3列の行列配置されている(素子数m×3個)。他方、図6(b)に示す車両検出部26aの受光部RUaは、複数の受光素子Rを有し、本体部11の起立方向yに沿って受光素子Rが並んで一列配置されている(素子数m×1個)。なお、図6(b)に示す受光部RUaは、図3(b)に示した受光部RUの行列配置のうち、2列目の受光素子R12、R22・・・Rm2を残したものとして示している。
【0048】
本実施形態では、本体部11の起立方向yの同一設置高さ(例えば、y1)において、前後方向xに並ぶ3つの発光素子(E11、E12、E13)を同時に発光させて1つの受光素子(R12)で受光するよう構成されている。より具体的には、走査駆動部30は本体部11の起立方向yに沿って並ぶ1~3列目の発光素子Eを同時に下から上(もしくは上から下)へ順次点灯し、走査駆動部31は発光素子Eの走査に向かい合う同一の設定高さにある受光素子Rを順次受光状態とする。これにより、同一設定高さにある3つの発光素子Eと対応する1つの受光素子Rとの間で光信号の授受がなされ、地面Gに水平な光軸Bが形成される。
【0049】
例えば、図6(c)に示すように、発光素子E11が発光し、受光素子R12で受光することで地面Gに水平な光軸B12が形成される。発光素子E12と受光素子R12、発光素子E13と受光素子R12も同様であり、地面Gに水平な光軸B22および光軸B32が形成される。同時に発光させることで発光量が多くなるため、発光部EUと受光部RUaとの間に水飛沫がある場合であっても、その影響を受けにくくすることができる。すなわち、水飛沫を車両Cがあると誤検出することを防止することができるので、車両検出の精度を向上することができる。
【0050】
また、本実施形態では、本体部11の前後方向xに並ぶ発光素子E(例えば、E11、E12、E13)のうち前端のもの(例えば、E11)と後端のもの(例えば、E13)との中間位置(例えば、E12が設けられている設置距離x2)で対向するように受光素子が一列配置されている(R12、R22、R32・・・Rm2)。例えば、図6(c)に示すように、光軸B22による光が車幅方向z(前面11Fと平行な方向)と平行に進んで受光素子R12で受光され、更に光軸B12、B32による光が車幅方向zとは交差して進んで受光素子R12に集まるようにして受光(集光)される。このため、見かけ上は、発光側で太く、受光側に向かうに従い細くなる光軸B22を形成することができる。このような光軸を用いることでも、車両検出の精度を向上させることができる。
【0051】
(実施形態3)
前記実施形態2では、発光部の発光素子を行列配置(m行×3列)とした場合について説明した。本発明の実施形態3では、発光部の行列配置の一列が他列よりも本体部の起立方向に延びている場合について図面を参照して説明する。図7は、本実施形態3に係る車両検出部26bを説明する概略図であり、(a)は受光部RUa側からみた発光部EUa、(b)は発光部EUa側からみた受光部RUaである。
【0052】
車両検出部26bは、一対の脚フレーム11A(図1参照)のそれぞれに設けられた発光部EUaおよび受光部RUaを備え、発光部EUaと受光部RUaとの間で車両Cを検出するよう構成されている。図7(b)に示す車両検出部26bの受光部RUaは、図6(b)で示したものと同様であり複数の受光素子Rが一列配置されている(素子数m×1個)。他方、図7(a)に示す車両検出部26bの発光部EUaは、複数の発光素子Eを有し、本体部11の起立方向yおよび前後方向xに沿って発光素子Eが並んで行列配置され(素子数n×3個)、その一列が他列よりも起立方向yの上方に延びて配置されている(素子数(m-n)×1個)。すなわち、発光部EUaでは、1行目からn行目までが3列配置、n+1行目からm行目までが一列配置となるように構成されている。なお、図7(a)に示す発光部EUaの一列配置は、図6(a)に示した発光部EUの行列配置のうち、2列目の発光素子E(n+1)2、・・・Em2を残したものとして示している。
【0053】
水飛沫は重力によって落ちていくため、本体部11の起立方向yの上側よりも下側に多くの発光素子Eを配置することが好ましい。このように、起立方向yの下側に配置された前後方向xに並ぶ3つの発光素子Eを同時に発光させることで発光量を増加させ、発光部EUと受光部RUaとの間に水飛沫がある場合であっても、その影響を受けにくくすることができる。すなわち、水飛沫を車両Cがあると誤検出することを防止することができるので、車両検出の精度を向上することができる。
【0054】
以上、本発明を実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0055】
前記実施形態では、車両処理装置として、洗車装置に適用した場合について説明した。これに限らず、例えば、車両の形状を検出する車形検出装置にも適用することができる。
【0056】
また、前記実施形態では、地面に停車した車両に対して本体部が移動する両処理装置を説明した。これに限らず、例えば、車両の車長方向に移動可能なキャリア(コンベヤ)に車両を搭乗させて、地面に固定された本体部に対して車両が移動する場合や、車両および本体部が共に移動する場合であってもよい。このため、本発明には、処理対象となる車両に対して本体部が相対移動する関係が含まれる。
【0057】
また、前記実施形態では、発光素子からの光信号を同じ設置高さの受光素子で受信することで、地面に水平な光軸を形成する場合について説明した。これに限らず、発光素子とは異なる設置高さの受光素子で受信することで、地面に対して傾斜した光軸を形成することもできる。例えば、図4に示すような発光素子E21からの光信号に対して、受光素子R21で受信する(地面に水平な光軸)だけでなく、受光素子R21の上隣の受光素子R31や下隣の受光素子R11で受信することで、地面Gに対して傾斜した光軸を形成することもできる。これによれば、発光素子E11と発光素子E21との間(受光素子R11と受光素子R21との間)、発光素子E21と発光素子E31との間(受光素子R21と受光素子R31との間)の高さにおいても車両Cを検出することができることとなる。このため、受光素子Rの縦ピッチpyに基づく縦分解能よりも、高分解能とすることもできる。
【符号の説明】
【0058】
10 洗車装置
11 本体部
11A 脚フレーム
C 車両
EU 発光部
RU 受光部
G 地面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7