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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】運転支援装置及び運転支援システム
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20230809BHJP
   B60W 30/095 20120101ALI20230809BHJP
   G08G 1/09 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
G08G1/16 A
B60W30/095
G08G1/09 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2017220539
(22)【出願日】2017-11-16
(65)【公開番号】P2019091325
(43)【公開日】2019-06-13
【審査請求日】2020-07-20
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-18
(73)【特許権者】
【識別番号】597151563
【氏名又は名称】株式会社ゼンリン
(72)【発明者】
【氏名】花村 悠介
(72)【発明者】
【氏名】山根 小百合
(72)【発明者】
【氏名】増岡 孝紀
【合議体】
【審判長】山本 信平
【審判官】吉村 俊厚
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-300209(JP,A)
【文献】特開2007-322172(JP,A)
【文献】特開2007-139573(JP,A)
【文献】特開2003-014474(JP,A)
【文献】特開2013-037579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08G 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両が走行を予定する道路レベルの経路に存在する障害に関する情報と、前記車両の走
行車線における隣接車線への車線変更の可否を判断可能な情報、及び前記車両の走行車線
の幅員情報の少なくとも一方を含む車線ネットワーク情報とに基づいて、前記障害の回避
支援の処理であって、前記経路内に存在する障害の回避として、前記経路内において前記
障害を回避する第一の処理と、前記障害が存在する前記経路を回避するように前記経路を
変更する第二の処理とのいずれか一方を行い、前記障害に関する情報は、前記障害の近傍に
存在する前記車両のうち、前記障害が存在する前記経路を走行予定の前記車両に送信され
運転支援装置。
【請求項2】
前記車線ネットワーク情報は、さらに、リンクの情報とノードの情報とからなる論理ネ
ットワーク情報を車線レベルに細分化した各車線に沿って連なる複数の車線区間情報を含
み、前記車線区間情報は前記リンクの情報と対応づけられており、前記経路は、前記論理
ネットワーク情報に基づいて導出されている、請求項1記載の運転支援装置。
【請求項3】
前記運転支援装置は、前記車線ネットワーク情報に基づいて、前記障害が存在する経路
内において前記障害を回避することが可能であると判断され、前記障害が存在する経路を
回避するように前記走行予定経路を変更することが不可能であると判断される場合には、
前記第一の処理を選択する請求項1又は2記載の運転支援装置。
【請求項4】
前記運転支援装置は、前記車線ネットワーク情報に基づいて、前記障害が存在する経路
内において前記障害を回避することが不可能であると判断され、前記障害が存在する経路
を回避するように前記走行予定経路を変更することが可能であると判断される場合には、
前記第二の処理を選択する請求項1から3のいずれか一項記載の運転支援装置。
【請求項5】
前記回避支援の処理は、更に前記障害を通過するまで現在の走行車線の走行を維持する
第三の処理と、前記車両を減速して前記障害の解消を待機する第四の処理と、の少なくと
もいずれかを更に含み、
前記運転支援装置は、前記車線ネットワーク情報に基づいて、前記障害が存在する経路
内において前記障害が存在する車線とは異なる車線を前記車両が走行していると判断され
る場合には、前記第三の処理を選択する請求項1~4のいずれか一項記載の運転支援装置

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、処理装置、プログラム及び/又はデータに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バス停の位置および当該バス停が存在する道路の情報を取得するバス停情報取得部と、出発地から目的地までの第1の経路を探索し、第1の経路に含まれる一車線道路にバス停が存在する場合はそのバス停を回避する第2の経路を更に探索する経路探索部と、第1の経路および第2の経路の片方を走行予定経路として選択する経路選択部と、を備えるナビゲーション装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-9403号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、適切な運転支援の実現に有効な運転支援装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面に係る運転支援装置は、車両が走行を予定する道路レベルの経路に存在
する障害に関する情報と、車両の走行車線における隣接車線への車線変更の可否を判断可
能な情報、及び車両の走行車線の幅員情報の少なくとも一方を含むネットワーク情報とに
基づいて、障害の回避支援の処理を行う。すなわち、車両が走行を予定する道路レベルの経
路内に存在する障害の回避として、車両が走行を予定する道路レベルの経路内において障
害を回避する第一の処理と、障害が存在する経路を回避するように車両が走行を予定する
道路レベルの経路を変更する第二の処理とのいずれか一方の回避支援の処理を行い、前記
障害に関する情報は、前記障害の近傍に存在する前記車両のうち、前記障害が存在する前記
経路を走行予定の前記車両に送信される
【0006】
車線ネットワーク情報は、さらに、リンクの情報とノードの情報とからなる論理ネットワーク情報を車線レベルに細分化した各車線に沿って連なる複数の車線区間情報を含み、車線区間情報はリンクの情報と対応づけられており、経路が論理ネットワーク情報に基づいて導出される
【0007】
運転支援装置は、車線ネットワーク情報に基づいて、障害が存在する経路内において障害を回避することが可能であると判断され、障害が存在する経路を回避するように走行予定経路を変更することが不可能であると判断される場合には、第一の処理を選択す
【0008】
運転支援装置は、車線ネットワーク情報に基づいて、障害が存在する経路内において障害を回避することが不可能であると判断され、障害が存在する経路を回避するように走行予定経路を変更することが可能であると判断される場合には、第二の処理を選択す
【0009】
回避支援の処理は、更に障害を通過するまで現在の走行車線の走行を維持する第三の処理と、車両を減速して障害の解消を待機する第四の処理と、の少なくともいずれかを更に含み、運転支援装置は、車線ネットワーク情報に基づいて、障害が存在する経路内において障害が存在する車線とは異なる車線を車両が走行していると判断される場合には、第三の処理を選択す
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】運転支援システムの構成を示す模式図である。
図2】地図データの内容を示す模式図である。
図3】車線区間データの内容を例示するテーブルである。
図4】属性情報の内容を例示するテーブルである。
図5】車線変更による障害の回避の可否を例示する平面図である。
図6】同一車線内における障害の回避の可否を例示する平面図である。
図7】運転支援装置及びサーバのハードウェア構成図である。
図8】障害情報の送信手順を示すフローチャートである。
図9】送信対象車両の選択手順を示すフローチャートである。
図10】障害が発生した道路の状態を模式的に示す平面図である。
図11】回避支援手順を示すフローチャートである。
図12】運転支援システムの変形例を示す模式図である。
図13】障害情報の送信手順を示すフローチャートである。
図14図13における回避支援の処理の選択・送信手順を示すフローチャートである。
図15図14における指令内容の選択手順を示すフローチャートである。
図16】回避支援手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態について、図面を参照しつつ詳細に説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0013】
〔運転支援システム〕
図1に示す運転支援システム1は、車両2(例えば自動車)の運転支援の一例として、車両2の自動運転を実行するシステムである。運転支援システム1は、車両2に搭載される運転支援装置100と、ネットワーク回線を介して運転支援装置100に接続されるサーバ200とを備える。
【0014】
サーバ200は、障害の近傍に存在する車両2のうち、当該障害が存在する経路を走行予定の車両2に障害に関する情報を送信することを実行するように構成されている。ここでの「障害」は、車両2の走行の妨げになるもの全般を含む。障害の具体例としては、停留所に停車したバス、故障車、路面に放置された落下物等が挙げられる。
【0015】
例えばサーバ200は、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、地図データベース211と、車両位置記憶部212と、車両位置情報取得部213と、障害情報取得部214と、候補車両抽出部215と、予定経路情報取得部216と、送信対象選択部217と、障害情報送信部218とを有する。地図データベース211は、運転支援用の地図データ220を記憶している。図2に示すように、地図データ220は、論理ネットワーク情報230及び車線ネットワーク情報240を含む。
【0016】
論理ネットワーク情報230は、目的地までの経路探索に用いられる情報である。論理ネットワーク情報230は、所定の地点に対応付けられた複数のノード231と、ノード231同士を結ぶリンク232とにより構成された情報であり、一連のノード231及びリンク232により示される経路が道路3に対応している。以下の説明においては、論理ネットワークレベルでの経路(一連のノード231及びリンク232により示される経路)を単に「経路」という。車線ネットワーク情報240は、論理ネットワーク情報230におけるリンク232を車線レベルに細分化した情報であり、各車線に沿って連なる複数の車線区間データ241と、車線区間データ241ごとに定められた車線属性情報242とを含む。各車線区間データ241は、いずれかの経路におけるリンク232に対応付けられている。
【0017】
図3に例示するように、車線区間データ241は、レーンID、座標点列、進入側レーンID、退出側レーンID、及びレーン長さ等を含む。レーンIDは、車線区間に固有のIDである。座標点列は、車線区間に対応する車線の中心線上に位置する点の座標データを順に並べたデータ列である。進入側レーンIDは、車線区間の始点に連なる他の車線区間のIDである。退出側レーンIDは、車線区間の終点に連なる他の車線区間のIDである。レーン長さは、車線区間の始点から終点までの長さである。
【0018】
図4に例示するように、車線属性情報242は、レーンID、車線幅、総レーン数、レーン番号、左側レーンID、右側レーンID、車線変更情報を含む。レーンIDは、当該属性情報の対象となる車線区間のIDである。車線幅は、車線の幅員を示す数値である。総レーン数は、同一の道路3内に含まれる車線4の総数である。レーン番号は、車線区間が左側又は右側から何番目の車線4に属するかを示す値である。左側レーンIDは、車線区間の左側に位置する他の車線区間のIDである。右側レーンIDは、車線区間の右側に位置する他の車線区間のIDである。車線変更情報は、左側及び右側のそれぞれへの車線変更の可否を示す。車線変更情報は、例えば、当該車線が存在しないことを示す0、当該車線への車線変更が可能であることを示す1、及び当該車線への車線変更が不可能であることを示す2等の、3種類の数値を含む。
【0019】
図1に戻り、車両位置記憶部212は、ネットワーク回線を介してサーバ200に接続された車両2の位置情報を記憶する。車両位置情報取得部213は、車両2の現在位置の情報を運転支援装置100から取得し、車両位置記憶部212に記憶された位置情報を更新する。
【0020】
障害情報取得部214は、例えば道路交通情報センターや道路を走行する車両等から、道路上に生じた障害に関する情報を取得する。障害情報取得部214が取得する情報は、少なくとも障害が発生している位置の座標、障害の事象(事故、落下物等)、及び障害の発生時期を含む。障害情報取得部214が取得する情報は、障害が発生している範囲の大きさの情報を更に含んでいてもよく、障害が解消される予想時刻を含んでいてもよい。
【0021】
候補車両抽出部215は、車両位置記憶部212に記憶された情報に基づいて、障害の近傍に存在する車両2を候補車両として抽出する。例えば候補車両抽出部215は、障害が発生している位置を中心にして所定サイズの円内に位置する車両2を候補車両として抽出する。予定経路情報取得部216は、候補車両抽出部215により抽出された車両2の走行予定経路を示す情報を運転支援装置100から取得する。例えば走行予定経路は、論理ネットワーク情報230のノード231及びリンク232により示される。以下、走行予定経路を示す情報を「予定経路情報」という。
【0022】
送信対象選択部217は、予定経路情報取得部216により取得された予定経路情報に基づいて、障害が存在する経路を走行予定の車両2を選択する。例えば送信対象選択部217は、予定経路情報により示される経路が障害の位置を含んでいる場合に、当該予定経路情報に対応する車両2を選択する。障害情報送信部218は、送信対象選択部217により選択された車両2の運転支援装置100に、障害に関する情報を送信する。障害情報送信部218が送信する情報は、少なくとも障害が発生している位置の座標を含む。
【0023】
車両2は、ユーザインタフェース21と、GPS受信機22と、車載カメラ23と、レーダ24と、アクセルアクチュエータ25と、ブレーキアクチュエータ26と、ステアリングアクチュエータ27と、運転支援装置100とを有する。
【0024】
ユーザインタフェース21は、入力部及び表示部を含む(不図示)。入力部は、例えばキーパッド等であり、ユーザによる情報入力を取得する。表示部は、例えば液晶モニタ等であり、ユーザへの情報を表示する。なお、所謂タッチパネルのように、入力部及び表示部は一体化されていてもよい。また、ユーザインタフェース21は、音声出力部を含んでいてもよい。音声出力部は、例えばスピーカー等であり、ユーザへの情報を音声出力する。
【0025】
GPS受信機22は、GPS(Global Positioning System)用の衛星信号を受信する。車載カメラ23は、車両2の周辺の画像情報を取得する。レーダ24は、車両2の周辺の物体の情報を取得する。アクセルアクチュエータ25は、例えば電動モータ等を動力源として、車両2のアクセルの開度を調節する。ブレーキアクチュエータ26は、例えば電動モータ等を動力源として、車両2のブレーキの作動状態を調節する。ステアリングアクチュエータ27は、例えば電動モータ等を動力源として、車両2の舵角を調節する。
【0026】
運転支援装置100は、車両2の走行予定経路に存在する障害に関する情報と、車線ネットワーク情報240とに基づいて導出された障害の回避支援の処理に従って車両2の運転支援を実行する。運転支援装置100は、障害に関する情報と、車線ネットワーク情報240とに基づいて回避支援の処理を決定することを更に実行するように構成されていてもよい。例えば運転支援装置100は、機能モジュールとして、地図情報取得部111と、目的地情報取得部112と、位置情報取得部113と、他車情報取得部114と、経路探索部115と、位置・経路情報送信部116と、障害情報取得部117と、回避支援選択部118と、走行制御部119とを有する。
【0027】
地図情報取得部111は、車両2の走行予定範囲の地図データ220を地図データベース211から取得する。例えば地図情報取得部111は、車両2の現在位置と、目的地の位置とを含む所定範囲の地図データ220を地図データベース211から取得する。目的地情報取得部112は、ユーザインタフェース21への入力に基づいて車両2の目的地の情報を取得する。位置情報取得部113は、GPS受信機22から車両2の現在位置情報を取得する。他車情報取得部114は、車載カメラ23及びレーダ24からの情報に基づいて、車両2の周辺車両の走行状態に関する情報を取得する。走行状態に関する情報は、例えば周辺車両の現在位置及び速度の情報を含む。
【0028】
経路探索部115は、地図情報取得部111により取得された論理ネットワーク情報230と、目的地情報取得部112により取得された目的地の位置情報と、位置情報取得部113により取得された現在位置の情報とに基づいて、現在位置から目的地までの車両2の走行予定経路を導出する。位置・経路情報送信部116は、位置情報取得部113により取得された現在位置情報をサーバ200の車両位置情報取得部213に送信し、経路探索部115により導出された走行予定経路の情報をサーバ200の予定経路情報取得部216に送信する。
【0029】
障害情報取得部117は、サーバ200の障害情報送信部218から送信された障害に関する情報を取得する。回避支援選択部118は、障害に関する情報と、車線ネットワーク情報240とに基づいて回避支援の処理を決定する。回避支援の処理は、障害が存在する経路内において障害を回避する第一の処理と、障害が存在する経路を回避するように走行予定経路を変更する第二の処理と、のいずれかを少なくとも含む。回避支援の処理は、第一の処理及び第二の処理の両方を含んでいてもよい。回避支援の処理は、障害を通過するまで現在の走行車線を維持する第三の処理と、減速して障害の解消を待機する第四の処理と、の少なくともいずれかを更に含んでいてもよい。
【0030】
回避支援選択部118は、車線ネットワーク情報240に基づいて、障害が存在する経路内において障害を回避することが可能であると判断され、障害が存在する経路を回避するように走行予定経路を変更することが不可能であると判断される場合には、第一の処理を選択する。また、回避支援選択部118は、車線ネットワーク情報240に基づいて、障害が存在する経路内において障害を回避することが不可能であると判断され、障害が存在する経路を回避するように走行予定経路を変更することが可能であると判断される場合には、第二の処理を選択する。更に、回避支援選択部118は、車線ネットワーク情報240に基づいて、障害が存在する経路内において障害が存在する車線とは異なる車線を車両2が走行していると判断される場合には、第三の処理を選択する。第一の処理、第二の処理及び第三の処理のいずれによっても障害を回避することが不可能である場合、回避支援選択部118は第四の処理を選択する。
【0031】
第二の処理を選択した場合、回避支援選択部118は、走行予定経路の変更を経路探索部115に要求する。これに応じ、経路探索部115は、障害が存在する経路を回避するように走行予定経路を変更する。第一の処理、第三の処理又は第四の処理を選択した場合、回避支援選択部118は、その実行を走行制御部119に要求する。
【0032】
走行制御部119は、経路探索部115により導出された走行予定経路と、地図情報取得部111により取得された地図データ220と、位置情報取得部113により取得された現在位置情報と、他車情報取得部114により取得された周辺車両の走行状態に関する情報と、回避支援選択部118からの要求とに基づいて車両2を走行させるようにアクセルアクチュエータ25、ブレーキアクチュエータ26及びステアリングアクチュエータ27を制御する。
【0033】
回避支援選択部118からの回避支援の処理の実行要求がある場合、走行制御部119は当該回避支援の処理に従って車両2を走行させるようにアクセルアクチュエータ25、ブレーキアクチュエータ26及びステアリングアクチュエータ27を制御する。回避支援の処理の実行要求がない場合、走行制御部119は、走行予定経路の車線に沿って車両2が走行するように、アクセルアクチュエータ25、ブレーキアクチュエータ26及びステアリングアクチュエータ27を制御する。
【0034】
ここで、障害が存在する経路内において障害を回避することが可能である場合の具体例としては、同一経路内の車線変更により障害を回避可能である場合、または同一車線内における幅員の余裕を利用して障害を回避可能である場合等が挙げられる。
【0035】
図5は、2車線の道路33における左の車線43Aに停車したバス2Xが、同じ車線43Aを走行する車両2Kの障害となっている場合を例示している。図5の(a)において、左の車線43A及び右の車線43Bの間の境界線61は、車線ネットワーク情報240の車線43Aに対応する区間の右側への車線変更情報が1(車線変更可能)となっており、車線変更可となっている。このような場合、車両2Kは、右の車線43Bへの車線変更によりバス2Xを回避することができる。図5の(b)において、左の車線43A及び右の車線43Bの間の境界線62は、車線ネットワーク情報240の車線43Aに対応する区間の右側への車線変更情報が2(車線変更不可)となっており、車線変更不可となっている。このような場合、車両2Kは、右の車線43Bに移ることができないので、車線変更によりバス2Xを回避することができない。
【0036】
図6は、道路34の車線44に停車したバス2Xが、同じ車線44を走行する車両2Kの障害となっている場合を例示している。図6の(a)においては、車線ネットワーク情報240の車線44に対応する区間の車線幅W1とバス2Xの幅W2とを比較すると、車線44の車線幅W1がバス2Xの幅W2よりも十分に大きいので、バス2Xの右側に車両2Kの幅W3よりも大きなスペースがある。このような場合、車両2Kは、車線44の右側を走行してバス2Xを回避することができる。図6の(b)においては、車線ネットワーク情報240の車線44に対応する区間の車線幅W1とバス2Xの幅W2とを比較すると、バス2Xの左右のスペースが車両2Kの幅W3よりも小さい。このような場合、車両2Kは、車線44内の右側を走行してバス2Xを回避することができない。
【0037】
なお、障害の回避に車線変更が必要となる場合、回避支援選択部118は、障害の前後両方における車線変更の可否に基づいて車線変更による障害の回避可否を判定してもよい。例えば回避支援選択部118は、障害よりも後方における車線変更が可能であっても、障害よりも前方における車線変更が不可能である場合には、車線変更による障害の回避が不可能であると判定してもよい。
【0038】
回避支援選択部118は、車線ネットワーク情報240に加え、車両2から障害までの距離にも基づいて、障害が存在する経路内における回避の可否を判定してもよい。例えば回避支援選択部118は、車両2から障害までの距離が所定値よりも小さい場合には、車線変更又は同一車線内の障害の回避は不可能であると判定してもよい。
【0039】
障害が存在する経路を回避するように走行予定経路を変更することが可能である場合の具体例としては、車両2から障害までの間に、現在走行中の経路とは別の経路への分岐点、又はUターン可能な場所等が存在している場合が挙げられる。
【0040】
上述した運転支援装置100は、一つ又は複数のコンピュータにより構成される。例えば運転支援装置100は、図7に示す回路190を有する。回路190は、一つ又は複数のプロセッサ191と、メモリ192と、ストレージ193と、通信ポート194と、入出力ポート195とを有する。ストレージ193は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体を有し、上述した各機能モジュールを構成するためのプログラムを記憶している。記録媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。メモリ192は、ストレージ193からロードしたプログラム及びプロセッサ191による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ191は、メモリ192と協働して上記プログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。通信ポート194は、無線の通信方式によりネットワークNWに接続されており、プロセッサ191からの指令に従い、ネットワークNWを介してサーバ200との間でデータ通信を行う。入出力ポート195は、プロセッサ191からの指令に従って、ユーザインタフェース21、GPS受信機22、車載カメラ23、レーダ24、アクセルアクチュエータ25、ブレーキアクチュエータ26、及びステアリングアクチュエータ27との間で電気信号の入出力を行う。
【0041】
サーバ200は、一つ又は複数のコンピュータにより構成される。例えばサーバ200は、図7に示す回路290を有する。回路290は、一つ又は複数のプロセッサ291と、メモリ292と、ストレージ293と、通信ポート294とを有する。ストレージ293は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記録媒体を有し、上述した各機能モジュールを構成するためのプログラムを記憶している。記録媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。メモリ292は、ストレージ293からロードしたプログラム及びプロセッサ291による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ291は、メモリ292と協働して上記プログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。通信ポート294は、有線又は無線の通信方式によりネットワークNWに接続されており、プロセッサ291からの指令に従い、ネットワークNWを介して運転支援装置100の通信ポート194との間でデータ通信を行う。
【0042】
〔運転支援手順〕
続いて、運転支援方法の一例として、運転支援システム1が実行する運転支援手順を説明する。この運転支援手順は、障害に関する情報をサーバ200が運転支援装置100に送信する手順(以下、「障害情報の送信手順」という。)と、障害情報を取得した運転支援装置100が障害を回避するように運転支援を実行する手順(以下、「回避支援手順」という。)とを含む。以下、障害情報の送信手順及び回避支援手順を詳細に例示する。
【0043】
(障害情報の送信手順)
図8に示すように、サーバ200は、まずステップS01,S02,S03を順に実行する。ステップS01では、障害情報取得部214が、道路上に生じた障害に関する情報を取得する。ステップS02では、候補車両抽出部215が、車両位置記憶部212に記憶された情報に基づいて、障害の近傍に存在する車両2を候補車両として抽出する。ステップS03では、予定経路情報取得部216が、候補車両抽出部215により抽出された候補車両の走行予定経路を示す情報を位置・経路情報送信部116から取得する。
【0044】
次に、サーバ200は、ステップS04,S05を順に実行する。ステップS04では、送信対象選択部217が、予定経路情報取得部216により取得された予定経路情報に基づいて、障害が存在する経路を走行予定の車両2を選択する。ステップS05では、障害情報送信部218が、送信対象選択部217により選択された車両2の障害情報取得部117に、障害に関する情報を送信する。以上で障害情報の送信手順が完了する。
【0045】
ここで、ステップS04の内容をより詳細に例示する。図9に示すように、サーバ200は、まずステップS11を実行する。ステップS11では、送信対象選択部217が、候補車両抽出部215により抽出された候補車両のいずれかを判定対象として選択する。
【0046】
次に、サーバ200はステップS12を実行する。ステップS12では、判定対象の車両2の走行予定経路内に障害があるか否かを送信対象選択部217が判定する。ステップS12において、判定対象の車両2の走行予定経路内に障害があると判定した場合、サーバ200はステップS13を実行する。ステップS13では、判定対象の車両2が障害の解消前に障害の位置に到達するか否かを送信対象選択部217が判定する。
【0047】
ステップS13において、判定対象の車両2が障害の解消前に障害の位置に到達すると判定した場合、サーバ200はステップS14を実行する。ステップS14では、送信対象選択部217が、判定対象の車両を障害に関する情報の送信先に設定する。
【0048】
次に、サーバ200はステップS15を実行する。ステップS12において、判定対象の車両2の走行予定経路内に障害がないと判定した場合、運転支援装置100はステップS14を実行することなくステップS15を実行する。ステップS13において、判定対象の車両2が障害の解消以後に障害の位置に到達すると判定した場合も、運転支援装置100はステップS14を実行することなくステップS15を実行する。ステップS15では、全候補車両についての判定が完了したか否かを送信対象選択部217が確認する。
【0049】
ステップS15において、判定が完了していない候補車両があると判定した場合、運転支援装置100はステップS16を実行する。ステップS16では、送信対象選択部217が、判定が完了していない候補車両のいずれかを判定対象として選択する。その後、サーバ200は処理をステップS12に戻す。以後、全候補車両についての判定が完了するまでは、障害に関する情報の送信対象の選択が繰り返される。ステップS15において、全候補車両についての判定が完了したと判定した場合、サーバ200はステップS04を完了させる。
【0050】
図10は、障害が発生した道路の状態を模式的に示す平面図である。図10においては、2本の道路31,32が交差点51において交差している。道路31は4本の車線41A,41B,41C,41Dを含んでおり、車線41A,41Bが図示左側から右側への走行車線であり、車線41C,41Dが図示右側から左側への走行車線である。道路32は4本の車線42A,42B,42C,42Dを含んでおり、車線42A,42Bが図示下側から上側への走行車線であり、車線42C,42Dが図示上側から下側への走行車線である。
【0051】
車線41Aのうち、交差点51の通過後の位置には障害91が発生している。このような場合、上述した障害情報の送信手順によれば、障害91の近傍に位置する9台の車両2A,2B,2C,2D,2E,2F,2G,2H,2Jが候補車両抽出部215により候補車両として抽出される。車両2A,2B,2C,2D,2E,2Fは、障害91が存在する経路を走行予定であるため、送信対象選択部217により選択される。車両2G,2H,2Jは、障害91が存在する経路を走行予定ではないため、送信対象選択部217により選択されない。
【0052】
(回避支援手順)
図11は、障害に関する情報を取得した運転支援装置100による回避支援手順を例示するフローチャートである。図11に示すように、運転支援装置100は、まずステップS21を実行する。ステップS21では、障害情報取得部117が、サーバ200の障害情報送信部218から送信された障害に関する情報を取得する。
【0053】
次に、運転支援装置100はステップS22を実行する。ステップS22では、車両2が走行している車線に障害があるか否かを回避支援選択部118が確認する。ステップS22において、車両2が走行している車線に障害があると判定した場合、運転支援装置100はステップS23を実行する。ステップS23では、障害が存在する経路内で障害を回避することが可能であるか否かを回避支援選択部118が確認する。ステップS23において、障害が存在する経路内で障害を回避することが可能であると判定した場合、運転支援装置100はステップS24を実行する。ステップS24では、回避支援選択部118が上記第一の処理(障害が存在する経路内で障害を回避する)を選択し、その実行を走行制御部119に要求する。走行制御部119は、第一の処理に従って車両2が障害を回避するようにアクセルアクチュエータ25、ブレーキアクチュエータ26及びステアリングアクチュエータ27を制御する。この際に、走行制御部119は、他車情報取得部114により取得された周辺車両の走行状態に関する情報も参照し、周辺車両の走行を妨げないタイミングで車両2が障害を回避するようにアクセルアクチュエータ25、ブレーキアクチュエータ26及びステアリングアクチュエータ27を制御する。
【0054】
ステップS23において、障害が存在する経路内で障害を回避することが不可能であると判定した場合、運転支援装置100はステップS25を実行する。ステップS25では、走行予定経路の変更によって障害を回避することが可能であるか否かを回避支援選択部118が確認する。ステップS25において、走行予定経路の変更によって障害を回避することが可能であると判定した場合、運転支援装置100はステップS26を実行する。ステップS26では、回避支援選択部118が上記第二の処理(障害が存在する経路を回避するように走行予定経路を変更する)を選択し、走行予定経路の変更を経路探索部115に要求する。経路探索部115は、障害が存在する経路を回避するように走行予定経路を変更する。
【0055】
ステップS25において、走行予定経路の変更によって障害を回避することが不可能であると判定した場合、運転支援装置100はステップS27を実行する。ステップS27では、回避支援選択部118が上記第四の処理(減速して障害の解消を待機する)を選択し、その実行を走行制御部119に要求する。走行制御部119は、第四の処理に従って車両2が減速(例えば停止)するようにアクセルアクチュエータ25、ブレーキアクチュエータ26及びステアリングアクチュエータ27を制御する。
【0056】
ステップS22において、車両2が走行している車線に障害はないと判定した場合、運転支援装置100はステップS28を実行する。ステップS28では、回避支援選択部118が上記第三の処理(障害を通過するまで現在の走行車線を維持する)を選択し、その実行を走行制御部119に要求する。走行制御部119は、第三の処理に従って車両2が障害を通過するまで現在の走行車線を維持するように、アクセルアクチュエータ25、ブレーキアクチュエータ26及びステアリングアクチュエータ27を制御する。以上で回避支援手順が完了する。
【0057】
再び図10を参照し、回避支援選択部118による回避支援の処理の選択例を示す。図10において、車両2Fが走行している車線には障害91がない。このため、車両2Fの回避支援選択部118は、上記ステップS28を実行して上記第三の処理を選択する。車両2A,2B,2C,2D,2Eの走行予定車線(車線41A)には障害91がある。車線ネットワーク情報240の車線41Aに対応する区間の右側への車線変更情報が1(車線変更可能)となっており、車線41Aから車線41Bへの車線変更が可能である場合、車両2B,2C,2D,2Eの回避支援選択部118は、上記ステップS24を実行して上記第一の処理を選択する。車両2Aについては、障害91までの距離が小さいために車線変更の余裕がなく、走行予定経路の変更余地もないため、回避支援選択部118は上記ステップS27を実行して上記第四の処理を選択する。
【0058】
車線ネットワーク情報240の車線41Aに対応する区間の右側への車線変更情報が2(車線変更不可)となっており、車線41Aから車線41Bへの車線変更が不可能であり、且つ車線41A内における障害91の回避も不可能である場合、車両2A,2B,2C,2Dについては、走行予定経路の変更余地もないので、これらの回避支援選択部118は上記ステップS27を実行して上記第四の処理を選択する。車両2Eについては、道路32に進入するように走行予定経路を変更する余地があるので、車両2Eの回避支援選択部118は上記ステップS26を実行して上記第二の処理を選択する。
【0059】
〔変形例〕
以上においては、回避支援の処理の決定を運転支援装置が実行する構成を例示したが、これに限られない。運転支援システム1は、回避支援の処理の決定をサーバが実行するように構成されていてもよい。図12は、回避支援の処理の決定をサーバが実行する構成を例示する模式図である。図12に示すサーバ201は、サーバ200の障害情報送信部218を回避支援選択部251及び回避指令送信部252に置き換えたものである。
【0060】
回避支援選択部251は、送信対象選択部217により選択された各車両2について回避支援の処理を選択する。回避支援選択部118と同様に、回避支援選択部251は、障害に関する情報と、車線ネットワーク情報240とに基づいて回避支援の処理を決定する。回避指令送信部252は、回避支援選択部251により決定された回避支援の処理を、障害に関する情報として運転支援装置101に送信する。
【0061】
運転支援装置101は、運転支援装置100の障害情報取得部117及び回避支援選択部118を回避指令取得部121に置き換えたものである。回避指令取得部121は、回避指令送信部252から送信された回避支援の処理を受信する。回避指令送信部252から受信した回避支援の処理が上記第二の処理である場合、回避指令取得部121は、走行予定経路の変更を経路探索部115に要求する。これに応じ、経路探索部115は、障害が存在する経路を回避するように走行予定経路を変更される。回避指令送信部252から受信した回避支援の処理が上記第一の処理、第三の処理又は第四の処理である場合、回避支援選択部118は、その実行を走行制御部119に要求する。
【0062】
図13は、サーバ201が実行する障害情報の送信手順のフローチャートである。図13に示すように、サーバ201は、上記ステップS01,S02,S03,S04と同様のステップS31,S32,S33,S34を実行した後に、ステップS35を実行する。ステップS31では、障害情報取得部214が障害に関する情報を取得する。ステップS32では、候補車両抽出部215が障害の近傍に存在する車両2を候補車両として抽出する。ステップS33では、予定経路情報取得部216が候補車両の走行予定経路を示す情報を位置・経路情報送信部116から取得する。ステップS34では、障害が存在する経路を走行予定の車両2を送信対象選択部217が選択する。ステップS35では、回避支援選択部251及び回避指令送信部252が、回避支援の処理の選択・送信処理を実行する。
【0063】
図14は、ステップS35における処理内容を示すフローチャートである。図14に示すように、サーバ201は、まずステップS41を実行する。ステップS41では、回避支援選択部251が、送信対象選択部217により選択された車両2のいずれか一つを対象車両として選択する。次に、サーバ201はステップS42を実行する。ステップS42では、対象車両が走行している車線に障害があるか否かを回避支援選択部251が確認する。ステップS42において、対象車両が走行している車線に障害があると判定した場合、サーバ201はステップS43を実行する。ステップS43では、障害が存在する経路内で障害を回避することが可能であるか否かを回避支援選択部251が確認する。ステップS43において、障害が存在する経路内で障害を回避することが可能であると判定した場合、サーバ201はステップS44を実行する。ステップS44では、走行予定経路の変更によって障害を回避することが可能であるか否かを回避支援選択部251が確認する。ステップS44において、走行予定経路の変更によって障害を回避することが可能であると判定した場合、サーバ201はステップS45を実行する。ステップS45では、回避支援選択部251が、上記第一の処理及び上記第二の処理のいずれか一方を選択する。ステップS45の具体的な処理内容については後述する。ステップS44において、走行予定経路の変更によって障害を回避することが不可能であると判定した場合、サーバ201はステップS46を実行する。ステップS46では、回避支援選択部251が上記第一の処理を選択する。
【0064】
ステップS43において、障害が存在する経路内で障害を回避することが不可能であると判定した場合、サーバ201はステップS47を実行する。ステップS47では、走行予定経路の変更によって障害を回避することが可能であるか否かを回避支援選択部251が確認する。ステップS47において、走行予定経路の変更によって障害を回避することが可能であると判定した場合、サーバ201はステップS48を実行する。ステップS48では、回避支援選択部251が上記第二の処理を選択する。
【0065】
ステップS47において、走行予定経路の変更によって障害を回避することが不可能であると判定した場合、サーバ201はステップS49を実行する。ステップS49では、回避支援選択部251が上記第四の処理を選択する。ステップS42において、当該車両2が走行している車線に障害はないと判定した場合、サーバ201はステップS51を実行する。ステップS51では、回避支援選択部251が上記第三の処理を選択する。
【0066】
ステップS45、ステップS46、ステップS48、ステップS49、又はステップS51を実行した後、サーバ201はステップS52を実行する。ステップS52では、回避指令送信部252が、回避支援選択部251により選択された回避支援の処理を、障害に関する情報として運転支援装置101に送信する。次に、サーバ201はステップS53を実行する。ステップS53では、送信対象選択部217により選択された全ての車両2に対して回避支援の処理の送信が完了したか否かを回避指令送信部252が確認する。
【0067】
ステップS53において、回避支援の処理の送信が完了していない車両2があると判定した場合、サーバ201はステップS54を実行する。ステップS54では、回避支援選択部251が、回避支援の処理の送信が完了していない車両2のいずれかを対象車両として選択する。その後、サーバ201は処理をステップS42に戻す。以後、送信対象選択部217により選択された全ての車両2に対して回避支援の処理の送信が完了するまでは、対象車両に対する回避支援の処理の選択及び送信が繰り返される。ステップS53において、回避支援の処理の送信が完了していない車両2はないと判定した場合、サーバ201は処理を完了する。
【0068】
ここで、ステップS45の内容をより詳細に例示する。図15に示すように、サーバ201は、まずステップS61,S62を順に実行する。ステップS61では、障害が存在する経路の混雑状況を回避支援選択部251が確認する。例えば回避支援選択部251は、障害が存在する経路の所定範囲内に存在する車両2の台数を確認する。ステップS62では、上記混雑状況に基づいて、障害が存在する経路における渋滞見込の有無を判定する。例えば回避支援選択部251は、上記所定範囲内に存在する車両2の台数が所定の閾値未満である場合に、渋滞見込なしと判定する。
【0069】
ステップS62において、渋滞見込なしと判定した場合、サーバ201はステップS63を実行する。ステップS63では、回避支援選択部251が上記第一の処理を選択する。ステップS62において、渋滞見込ありと判定した場合、サーバ201はステップS64を実行する。ステップS64では、回避支援選択部251が上記第二の処理を選択する。以上でステップS45の処理が完了する。
【0070】
図16は、運転支援装置101が実行する回避支援手順を示すフローチャートである。図16に示すように、運転支援装置101は、まずステップS71を実行する。ステップS71では、回避指令取得部121が、サーバ201の回避指令送信部252から送信された回避支援の処理を取得する。次に、運転支援装置101はステップS72を実行する。ステップS72では、回避指令送信部252から受信した回避支援の処理が上記第一の処理であるか否かを回避指令取得部121が確認する。ステップS72において、回避支援の処理が第一の処理であると判定した場合、運転支援装置101はステップS73を実行する。ステップS73では、回避指令取得部121が第一の処理の実行を走行制御部119に要求する。走行制御部119は、第一の処理に従って車両2が障害を回避するようにアクセルアクチュエータ25、ブレーキアクチュエータ26及びステアリングアクチュエータ27を制御する。
【0071】
ステップS72において、回避支援の処理が第一の処理ではないと判定した場合、運転支援装置101はステップS74を実行する。ステップS74では、回避支援の処理が上記第二の処理であるか否かを回避指令取得部121が確認する。ステップS74において、回避支援の処理が第二の処理であると判定した場合、運転支援装置101はステップS75を実行する。ステップS75では、回避指令取得部121が走行予定経路の変更を経路探索部115に要求する。経路探索部115は、障害が存在する経路を回避するように走行予定経路を変更する。
【0072】
ステップS74において、回避支援の処理が第二の処理ではないと判定した場合、運転支援装置101はステップS76を実行する。ステップS76では、回避支援の処理が上記第三の処理であるか否かを回避指令取得部121が確認する。ステップS76において、回避支援の処理が第三の処理であると判定した場合、運転支援装置101はステップS77を実行する。ステップS77では、回避指令取得部121が第三の処理の実行を走行制御部119に要求する。走行制御部119は、第三の処理に従って車両2が障害を通過するまで現在の走行車線を維持するように、アクセルアクチュエータ25、ブレーキアクチュエータ26及びステアリングアクチュエータ27を制御する。
【0073】
ステップS76において、回避支援の処理が第三の処理ではないと判定した場合、運転支援装置101はステップS78を実行する。ステップS78では、回避指令取得部121が上記第四の処理の実行を走行制御部119に要求する。走行制御部119は、第四の処理に従って車両2が減速(例えば停止)するようにアクセルアクチュエータ25、ブレーキアクチュエータ26及びステアリングアクチュエータ27を制御する。以上で回避支援手順が完了する。
【0074】
〔本実施形態の効果〕
以上に説明したように、運転支援装置100は、車両2の走行予定経路に存在する障害に関する情報と、車両2の走行車線における隣接車線への車線変更の可否を表す可否情報、及び車両2の走行車線の幅員情報の少なくとも一方を含む車線ネットワーク情報240とに基づいて導出された障害の回避支援の処理に従って車両2の運転支援を実行するように構成されている。
【0075】
走行予定経路に障害が存在する場合に、常に走行予定経路の変更を行う場合、実際には走行予定経路内で障害を回避し得る状況においても走行予定経路を変更することとなる場合がある。これに対し、車線変更の可否情報、及び車両2の走行車線の幅員情報の少なくとも一方に基づけば、現走行予定経路内における障害の回避の可否を判定し得る。このため、車線変更の可否情報、及び車両2の走行車線の幅員情報の少なくとも一方を含む車線ネットワーク情報240に基づく回避支援の処理は、走行予定経路の変更を伴わずに障害を回避する処理を選択肢に含み得る。当該車線ネットワーク情報240に基づいて導出された回避支援の処理に従って車両2の運転支援を実行する運転支援装置100によれば、効率的な運転支援を実行することができる。
【0076】
運転支援装置100は、障害に関する情報と、車線ネットワーク情報240とに基づいて回避支援パターンを決定することを更に実行するように構成されていてもよい。この場合、運転支援装置100において回避支援パターンの決定を実行することで、障害に関する情報の取得後、当該障害を回避するための運転支援を実行するまでのタイムラグを短縮することができる。
【0077】
回避支援の処理は、障害が存在する経路内において障害を回避する第一の処理と、障害が存在する経路を回避するように走行予定経路を変更する第二の処理と、の少なくともいずれかを含んでいてもよい。この場合、より効率的な運転支援を実行することができる。
【0078】
運転支援装置100は、車線ネットワーク情報240に基づいて、障害が存在する経路内において障害を回避することが可能であると判断され、障害が存在する経路を回避するように走行予定経路を変更することが不可能であると判断される場合には、第一の処理を選択するように構成されていてもよい。この場合、より効率的な運転支援を実行することができる。
【0079】
運転支援装置100は、車線ネットワーク情報240に基づいて、障害が存在する経路内において障害を回避することが不可能であると判断され、障害が存在する経路を回避するように走行予定経路を変更することが可能であると判断される場合には、第二の処理を選択するように構成されていてもよい。この場合、より効率的な運転支援を実行することができる。
【0080】
回避支援の処理は、更に障害を通過するまで現在の走行車線を維持する第三の処理と、減速して障害の解消を待機する第四の処理と、の少なくともいずれかを更に含み、運転支援装置100は、車線ネットワーク情報240に基づいて、障害が存在する経路内において障害が存在する車線とは異なる車線を車両2が走行していると判断される場合には、第三の処理を選択するように構成されていてもよい。この場合、より効率的な運転支援を実行することができる。
【0081】
運転支援システム1は、サーバ200,201と、車両2に搭載された運転支援装置100,101とを備え、サーバ200,201は、障害の近傍に存在する車両2のうち、当該障害が存在する経路を走行予定の車両2に障害に関する情報を送信することを実行するように構成され、運転支援装置100,101は、障害に関する情報と、車両2の走行車線における車線変更の可否情報、及び車両2の走行車線の幅員情報の少なくとも一方を含む車線ネットワーク情報240とに基づいて導出された障害の回避支援の処理に従って車両2の運転支援を実行するように構成されており、回避支援の処理は、障害が存在する経路内において障害を回避する第一の処理と、障害が存在する経路を回避するように走行予定経路を変更する第二の処理とを含み、サーバ200,201は、車線ネットワーク情報240に基づいて、障害が存在する経路内において障害を回避可能であると判断され、障害が存在する経路を回避するように走行予定経路を変更することも可能であると判断される車両2に対し、第一の処理及び第二の処理のいずれを送信するかを、障害が存在する経路の混雑状況に応じて決定するように構成されている。運転支援システム1において、サーバ201は、障害に関する情報と、車線ネットワーク情報240とに基づいて回避支援の処理を決定することを更に実行し、決定した回避支援の処理を障害に関する情報として送信するように構成されていてもよい。この場合、運転支援装置101とは別のサーバ201において回避支援の処理の決定を実行することで、より多様な情報に基づいて回避支援の処理を決定することができる。例えば、障害に起因する渋滞の発生を抑制することができる。具体的には、障害が存在する経路の混雑の程度が高い場合には第二パターンを選択することによって、障害が存在する経路における渋滞の発生を抑制することができる。
【0082】
以上、実施形態について説明したが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。例えば、運転支援装置100は、必ずしもアクセルアクチュエータ25、ブレーキアクチュエータ26及びステアリングアクチュエータ27等を制御して車両2の自動運転を遂行するものでなくてもよい。例えば車線変更支援部150は、アクセルアクチュエータ25、ブレーキアクチュエータ26及びステアリングアクチュエータ27の制御に代えて、車線変更要否及び車線変更可否等をユーザインタフェース21によりユーザに報知するものであってもよい。ユーザへの報知形態としては、音声による報知又は画像表示による報知等が挙げられる。
【0083】
以上の実施形態の全部又は一部に記載された態様は、車線変更に係る適切な運転支援の実現に有効な運転支援装置の提供、処理速度の向上、処理精度の向上、使い勝手の向上、データを利用した機能の向上又は適切な機能の提供その他の機能向上又は適切な機能の提供、データ及び/又はプログラムの容量の削減、装置及び/又はシステムの小型化等の適切なデータ、プログラム、記録媒体、装置及び/又はシステムの提供、並びにデータ、プログラム、装置又はシステムの制作・製造コストの削減、制作・製造の容易化、制作・製造時間の短縮等のデータ、プログラム、記録媒体、装置及び/又はシステムの制作・製造の適切化のいずれか一つの課題を解決する。
【符号の説明】
【0084】
1…運転支援システム、2…車両、100…運転支援装置、200,201…サーバ、240…車線ネットワーク情報。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16