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特許7328752環境中の氷晶の存在を検出するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】環境中の氷晶の存在を検出するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/27 20060101AFI20230809BHJP
   B64D 15/20 20060101ALI20230809BHJP
   G01W 1/00 20060101ALI20230809BHJP
   G01V 8/12 20060101ALI20230809BHJP
   G01N 21/47 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
G01N21/27 B
B64D15/20
G01W1/00 G
G01V8/12 J
G01N21/47 B
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018219127
(22)【出願日】2018-11-22
(65)【公開番号】P2019101031
(43)【公開日】2019-06-24
【審査請求日】2021-10-26
(31)【優先権主張番号】1761297
(32)【優先日】2017-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514235879
【氏名又は名称】サフラン エアロテクニクス エスアーエス
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】ボドゥアン フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】ボノ リュドヴィク
【審査官】田中 洋介
(56)【参考文献】
【文献】特公平06-019479(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2012/0193477(US,A1)
【文献】特開平06-118179(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/00-21/61
G01W 1/00-1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境に対して相対的に移動する検出装置(2)によって実行される、当該環境中の氷晶の存在を検出するための検出方法であって、
上記環境に対して少なくとも1つの放射光を上記検出装置(2)により放射する放射工程(16)と、
第1波長域(λ)の範囲内にある光線及び第2波長域(λ)の範囲内にある光線を含む、上記放射光の少なくとも一部を上記検出装置(2)により受信する受信工程(18)と、
以下の式から取得される対比を表す比較信号(Comp(t))を上記検出装置(2)により算出する算出工程(20)と、
Comp(t)=(Rλ2(t)-Rλ1(t))/(Rλ2(t)+Rλ1(t))
λ1(t):第1波長域λの範囲内にある上記光線の時間tにわたる強度
λ2(t):第2波長域λの範囲内にある上記光線の時間tにわたる強度
上記比較信号(Comp(t))のノイズ(B)を算出するノイズ算出工程(24)と、
上記ノイズ(B)と定義された閾値(S)とを比較する閾値化工程(26)と、
上記ノイズ(B)が上記閾値(S)より大きい場合に、上記環境中の氷晶の存在の検出
を示す信号を通信する通信工程(28)と、を含み、
上記環境は、前記検出装置を取り巻く空気である、検出方法。
【請求項2】
さらに、少なくとも、タイムフレーム(FT)が定義されるサンプリング工程(22)を含む、請求項1に記載の検出方法。
【請求項3】
さらに、少なくとも、
タイムフレーム(FT)に対して時間(D)だけシフトした次のタイムフレーム(FTi+1)を検討する連続工程(30)、及び/又は、
上記ノイズ算出工程(24)及び上記閾値化工程(26)を繰り返すループ工程(32)、を含む請求項に記載の検出方法。
【請求項4】
上記時間(D)は上記タイムフレームの時間よりも短い、請求項3に記載の検出方法。
【請求項5】
さらに、少なくとも、
上記ノイズ(B)が上記閾値(S)より大きい場合に、計算器の値(Cj)を増加する増加工程(34)、及び/又は
上記計算器の上記値(Cj)とトリガ閾値(Sa)とを比較する確認工程(36)、を含む請求項3又は4に記載の検出方法。
【請求項6】
上記計算器の上記値(Cj)が上記トリガ閾値(Sa)より大きい場合に、上記通信工程(28)により通信する、請求項5に記載の検出方法。
【請求項7】
さらに、少なくとも、上記計算器の上記値(Cj)をゼロに初期化するリセット工程(40)を含む、請求項6に記載の検出方法。
【請求項8】
上記ノイズ算出工程(24)は、定義された上記タイムフレームにおける上記比較信号(Comp(t))の標準偏差を算出する算出工程を含む、請求項に記載の検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に大気中を飛行中の航空機に搭載される光学装置によって環境中の着氷状況を検出する分野に関する。
【背景技術】
【0002】
航空機が過冷却液体状態の水粒子を含む雲の中を通過する場合、これらの粒子が、航空機のある部分に氷層を付着させる。このような現象の発生を防ぐために、このような着氷の検出を可能にする氷検出方法が仏国特許出願公報第2970946号に知られている。しかしながら、当該文献に記載の検出方法では、既に形成されて大気中に存在する氷晶を検出することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このような氷晶は、航空機に付着せず、航空機において跳ね返る。このような既に形成された氷晶により、電力損失を招くエンジン着氷現象、及び/又は、航空機の速度センサ、角度センサ、又は温度センサにより送信された情報を歪ませる現象を起こしうる。このため、既に形成された氷晶の検出は必要不可欠である。
【0004】
本発明は、環境中の氷晶の存在を検出するための方法を提供することを目的とする。このため、本発明は、環境に対して相対的に動作する検出装置によって実行される、当該環境中の氷晶の存在を検出するための検出方法であって、上記環境に対して少なくとも1つの放射光を上記検出装置により放射する放射工程と、第1波長域の範囲内にある光線及び第2波長域の範囲内にある光線を含む、上記放射光の少なくとも一部を上記検出装置により受信する受信工程と、以下の式から取得される対比を表す比較信号(Comp(t))を上記検出装置により算出する算出工程と、Comp(t)=(Rλ2(t)-Rλ1(t))/(Rλ2(t)+Rλ1(t))Rλ1(t):第1波長域λの範囲内にある上記光線の時間tにわたる強度、Rλ2(t):第2波長域λの範囲内にある上記光線の時間tにわたる強度、上記比較信号(Comp(t))のノイズを算出するノイズ算出工程と、上記ノイズと定義された閾値とを比較する閾値化工程と、上記ノイズが上記閾値より大きい場合に、上記環境中の氷晶の存在の検出を示す信号を通信する通信工程と、を含む検出方法である。
【0005】
幾つかの特定の実施形態によれば、当該検出方法は、以下の特徴のうち1つ以上を、個々に又は互いの組み合わせにより含む。
【0006】
上記検出方法は、タイムフレームが定義されるサンプリング工程を含む。
【0007】
検出方法は、さらに、少なくとも、上記タイムフレームに対してある時間だけシフトした次のタイムフレームを検討する連続工程、及び/又は、上記ノイズ算出工程及び上記閾値化工程を繰り返すループ工程、を含む。
【0008】
シフトされた時間は上記タイムフレームの時間よりも短い。
【0009】
検出方法は、さらに、少なくとも、上記ノイズが上記閾値より大きい場合に、計算器の値を増加する増加工程、及び/又は、上記計算器の上記値とトリガ閾値とを比較する確認工程、を含む。
【0010】
上記計算器の上記値が上記トリガ閾値より大きい場合に、上記通信工程により通信する。
【0011】
検出方法は、さらに、上記計算器の上記値をゼロに初期化するリセット工程を含む。
【0012】
上記ノイズ算出工程は、検討された上記タイムフレームにおける上記比較信号(Comp(t))の標準偏差を算出する算出工程を含む。
【0013】
上記ノイズ算出工程は、検討された上記タイムフレームにおける上記比較信号のフーリエ変換を算出する算出工程を含む。
【0014】
当然に、本発明の種々の特徴、変形例、及び/又は各実施形態は、これらが互いに互換性がないか、互いに排他的でない限り、種々の組合せにおいて互いに関連してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0015】
後述の詳細な説明を読むことにより、本発明はより理解され、他の構成及び利点が明らかになる。詳細な説明は、非限定的な例として提示された添付図面を参照する、具体的な例としてのみ提供された実施形態を含む。これらの図面は、本発明とその実施の説明を完全に理解するうえで役立ち、必要に応じて、本発明の定義付けに寄与し、図面には参照が付与される。
図1】本発明に係る氷晶を検出するための方法を実施可能な氷検出装置の例の概略図である。
図2】本発明に係る氷晶を検出するための方法の工程のうち第1の部分を示すフローチャートである。
図3】時間の経過に伴う対比信号を示すグラフである。
図4】本発明に係る氷晶を検出するための方法の工程のうち第2の部分を示すフローチャートである。
図5】本発明に係る氷晶を検出するための方法の第2の部分の変形例に含まれる工程を示すフローチャートである。
図6】本発明に係る方法の第2の部分についての他の実施形態に係るグラフを示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図面において、種々の実施形態に共通する構造及び/又は機能要素は同一の参照符号を有しうることに留意されたい。このため、特に明記しない限り、このような要素は、同一の構造特性、寸法特性、及び材料特性を有する。
【0017】
図1は、氷検出装置2の例示的な実施形態の概略図である。このような氷検出装置2は、本発明に係る検出方法の実施に用いることができる。
【0018】
具体的に、氷検出装置2は、翼部、尾翼、機体、エンジンナセル、又は、特に航空機製造業者によって特定される任意の他の場所等の、航空機の外面に取り付けられうる。
【0019】
図1を参照して、氷検出装置2は、送信器4と受信器10を備える。送信器4は放射軸E-Eを有する。送信器4は、1台の送信器4であるのが好ましい。受信器10は受信軸R-Rを有する。
【0020】
また、さらに、図1の例によれば、氷検出装置2は、目標面6を有する突起部8を備える。目標面6は、氷検出装置2の幾何学的構造によって散乱又は反射を起こしうる。
【0021】
また、氷検出装置2は、受信器10の上流側に配置された少なくとも1つの光フィルタリング手段を備えてもよい。
【0022】
他の実施形態によれば、氷検出装置2は、受信器10の第1部分の上流側に配置された第1光フィルタリング手段、及び/又は、受信器10の第2部分の上流側に配置された第2光フィルタリング手段を備えてもよい。受信器10の第2部分は、選択的に(preferentially)受信器10の第1部分と区別することができる。
【0023】
例として、光フィルタリング手段は、帯域通過フィルタである。あるいは、氷検出装置2は、受信器10の第1部分の上流側に配置された第1低域通過フィルタ、及び/又は、受信器10の第2部分の上流側に配置された第2帯域通過フィルタを備えてもよい。受信器10の第2部分は、受信器10の第1部分と区別可能である。
【0024】
図1において、フィルタリング手段、具体的には第1低域通過フィルタ及び第2帯域通過フィルタは図示されていない。
【0025】
送信器4は、好ましくは1.1μm以上1.7μm以下の波長を有する光を放射することができる。
【0026】
特定の一実施形態によれば、受信器10の受信軸R-Rは送信器4の放射軸E-Eと交差する。具体的に、送信器4の放射軸E-Eは、目標面6により規定される実質的な平面において受信器の受信軸R-Rと交差する。
【0027】
プローブとも称される突起部8は、好ましくは、空気力学的プロファイルを有する。このような空気力学的プロファイルは、特に、全米航空諮問委員会(NACAとしても知られている)により定義されている。
【0028】
具体的には、図1に図示された実施形態において、突起部8は、航空機の外面12に対して垂直に延びる円筒形状を有する。
【0029】
さらに、目標面6は、送信器4により放射された光の少なくとも一部を、氷検出装置2の幾何学的構造に応じて反射又は散乱できるように構成される。
【0030】
受信器10は、目標面6によって散乱又は反射された光の少なくとも一部を受信できる。
【0031】
第1フィルタリング手段は、第1波長域λの光放射をフィルタリングでき、その波長域は、特に1.3μm以上1.45μm以下、さらに特に1.4μm以上1.45μm以下、さらに特には1.42μmに等しい。
【0032】
第2フィルタリング手段は、第2波長域λの光放射をフィルタリングでき、その波長域は、特に1.5μm以上1.7μm以下、さらに特には1.5μm以上1.6μm以下、さらに特には1.55μmに等しい。
【0033】
氷及び/又は液体水における波長域λ及び波長域λの伝送特性は異なる。
【0034】
波長域λの特性及び波長域λの特性によって、光経路における氷の存在と液体水の存在とを区別することができる。とりわけ、第1波長域λ及び第2波長域λで受信された光放射の強度を比較することにより、光経路における氷の存在と液体水の存在とを区別することができる。
【0035】
検出装置2は、さらにコンピュータ14を備える。具体的に、コンピュータ14は、少なくとも、第1変化Rλ1(t)と第2変化Rλ2(t)を測定することができる。
・第1変化Rλ1(t):特に受信器10の第1部分に受信された、第1波長域λにおける光放射の時間の経過に伴う強度の変化。
・第2変化Rλ2(t):特に受信器10の第2部分に受信された、第2波長域λにおける光放射の時間の経過に伴う強度の変化。
【0036】
本発明によれば、第1変化Rλ1(t)及び第2変化Rλ2(t)の時間の経過に伴う変化を比較するために、比較信号Comp(t)を算出することが好ましい。この比較信号Comp(t)は、特に、第1変化Rλ1(t)と第2変化Rλ2(t)との対比であってよい。この対比は、以下の式によって定義される。
Comp(t)=(Rλ2(t)-Rλ1(t))/(Rλ2(t)+Rλ1(t))
本発明によれば、コンピュータ14によって算出された比較信号Comp(t)の時間の経過に伴う変化は、環境(特に大気等)における氷の有無を決定及び/又は推定するために用いられる。
【0037】
特定の一実施形態によれば、比較信号Comp(t)は、時間の経過に伴う放射の対比における変化を表す対比信号Comp(t)である。
【0038】
特に、このために、コンピュータ14は、送信器4及び受信器10に接続される。
【0039】
第1変形例によれば、検出装置2の送信器4は、2つの放射レーザを備える。第1レーザは、第1波長域λの光を放射することができる。第2レーザは、第2波長域λの光を放射することができる。第1レーザ及び第2レーザは、例えば、航空機の機体の内側に設置され、かつ、機窓を通じて外側に向けられる。この実施形態において、当該装置は、波長域λに対する第1光フィルタリング手段、及び波長域λに対する第2光フィルタリング手段を備えていない。このように配置されて、第1レーザ及び第2レーザは、相対的な大気の流れに曝された対象面を照射する。
【0040】
第2変形例によれば、検出装置2は、突起部8を備えない。このような構成において、目標面6は、航空機の外面に直接設けられる。
【0041】
第3変形例によれば、検出装置2の送信器4及び受信器10は、互いに向かい合うとともに、互に離間して配置される。このような配置において、検出装置2は、送信器4と受信器10との間を通過する氷晶を検出することができる。この場合、放射軸E-E及び受信軸R-Rは、一致することが好ましい。このため、放射軸E-E及び受信軸R-Rは、複数の点で互いに交差する。
【0042】
ここで、図2を参照する。図2は、本発明に係る氷晶を検出するための方法の工程のうち第1の部分を示すフローチャートである。
【0043】
当該検出方法は、放射工程16と称される第1工程16を含む。当該第1工程16中に、特にコンピュータ14の制御下にある送信器4は、目標面6に向かって光を放射する。図1の実施形態によれば、放射された光は、目標面6によって散乱又は反射される。
【0044】
その後、この射線光の全部又は一部が第1フィルタリング手段を通過する、及び/又は、この放射光の全部又は一部が第2フィルタリング手段を通過する。
【0045】
他の実施形態によれば、放射光の第1部分が第1フィルタリング手段を通過し、かつ、放射光の他の部分が第2フィルタリング手段を通過する。
【0046】
その結果、当該検出方法は、受信工程18と称される第2工程18を含む。当該第2工程18中に、特に目標面6により散乱又は反射された光が受信器10に受信される。
【0047】
放射光(特に散乱光又は反射光)を受信した後、当該検出方法は、識別工程と称される補完工程を含む。当該識別工程の間、氷検出装置2は、規定された波長域(具体的には、第1波長域λ及び第2波長域λ)に従って、受信光をフィルタリングする。
【0048】
その結果、当該検出方法は、送信工程と称される付加工程を含む。当該付加工程中に、受信器10は、時間の経過に伴う放射光の特性パラメータの変化をコンピュータ14に送信する。特性パラメータは、一例として、識別工程で規定された波長域における放射強度であり、とりわけ、時間の経過に伴う、第1波長域λにおける放射強度の第1変化Rλ1(t)と第2波長域λにおける放射強度の第2変化Rλ2(t)である。
【0049】
送信工程に続き、当該検出方法は、算出工程20と称される付加工程20を含む。当該付加工程20中に、コンピュータ14は、比較信号Comp(t)の時間の経過に伴う変化を算出する。
【0050】
環境(特に大気)に氷晶が存在し、放射、反射、及び/又は散乱された光が横切り、受信器10に受信されると、時間の経過に伴う放射強度の変化を生み(とりわけ、時間の経過に伴う、第1波長域λにおける放射強度の第1変化Rλ1(t)と第2波長域λにおける放射強度の第2変化Rλ2(t))、大きく、突然に十分な変化を示す。
【0051】
放射強度の変化を比較計測(それぞれ第1変化Rλ1(t)及び第2変化Rλ2(t)が好ましい)すると、環境中に氷晶(特に、放射、反射、及び/又は散乱された光を遮断する氷晶)の存在を検出することができる。同様に、本発明によれば、目標面6に当たる氷晶の存在を検出することができる。
【0052】
特に、上記比較計測は、時間の経過に伴う比較信号Comp(t)、及び、比較信号Comp(t)のノイズBを算出することで行われるのがよい。
【0053】
図3は、比較信号Comp(t)が対比信号Comp(t)である場合の時間の経過に伴う比較信号Comp(t)を表すグラフ例である。この図から分かるように、対比信号Comp(t)は、氷晶が存在する場合に著しく「波立って」いる。
【0054】
このために、前述した工程、すなわち、放射工程16、受信工程18、識別工程、送信工程、及び算出工程20は、長期間にわたって継続し、特に、飛行中はずっと継続する。
【0055】
その結果、本発明は、環境中の氷晶の存在を検出するために、本発明に係る検出方法に補完工程22~補完工程30を提供する。
【0056】
送信器10が放射した放射光の性質によって、補完工程22~補完工程30は、不連続データ又は連続データに関係する。
【0057】
このため、送信器10がパルス状の放射光を所定の周波数で放射する場合、放射されたパルスごとに、その放射光を受信した後に比較信号Comp(t)中に1つの点が得られる。放射光の受信後に得られる比較信号Comp(t)は不連続である。その後、比較信号Comp(t)のそれらの点が、本発明に係る検出方法の工程22~工程30で処理される。
【0058】
送信器が連続的な放射光を放射する場合、当該放射光を受信した後に得られる比較信号Comp(t)は連続的である。この場合も同様に、その後、比較信号Comp(t)は、本発明に係る検出方法の工程22~工程30で処理される。
【0059】
図4は、本発明に係る氷晶を検出するための方法の工程のうちの第2の部分としての補完工程22~補完工程30の詳細を示す図である。
【0060】
より具体的に、サンプリング工程22と称される工程22中に、コンピュータ14は、時間tにおいて、比較信号Comp(t)のサンプルを検討する。当該サンプルは、タイムフレームFT内のものであり、以下を含む。
・比較信号Comp(t)が不連続である場合、時間tの直前に算出された比較信号Comp(t)のある一定数の点。
・比較信号Comp(t)が連続的である場合、時間tの直前に算出された比較信号Comp(t)の一部。
【0061】
ノイズ算出工程24と称される工程24中に、コンピュータ14は、検討されたタイムフレームFTに対する比較信号Comp(t)のノイズBを算出する。
【0062】
特定の一実施形態において、好ましくは、比較信号Comp(t)のノイズBは、比較信号Comp(t)の標準偏差σの値に等しい。
【0063】
閾値化工程26と称される工程26の間に、ノイズBは、定義された閾値Sと比較される。このとき、
・ノイズBが閾値Sより大きい場合、コンピュータ14は、通信工程28と称される工程28中に、環境(大気等)における氷晶の存在の検出を示す信号を、特にコックピットに向けて送信し、かつ
・ノイズBが閾値Sより小さい場合、連続工程30と称される工程30が実行される。当該工程では、比較信号Comp(t)のノイズBの算出を繰り返すために、時間ti+1において、新たな次のタイムフレームFTi+1が検討され、コンピュータ14は、タイムフレームFTに続く次のタイムフレームFTi+1における、不連続又は連続的な比較信号Comp(t)を検討する。
【0064】
通信工程28は、氷晶の存在を検出する工程である。
【0065】
同様に、連続工程30は、任意で、通信工程28において検出信号が送信された後に開始されてもよい。
【0066】
次のタイムフレームFTi+1は、タイムフレームFTと同じ時間を有することが好ましい。次のタイムフレームFTi+1は、時間的に時間Dだけシフトする。シフト時間Dは、1つのタイムフレームの時間よりも短いのが好ましい。
【0067】
次のタイムフレームFTi+1は、ある数の点、又は時間ti+1の直前に算出された比較信号Comp(t)の一部を含む。
【0068】
ループ工程32とも称される次の工程32中に、プロセスはノイズ算出工程24に戻る。ノイズ算出工程24では、コンピュータ14が、次のタイムフレームFTi+1におけるノイズBを判定する。
【0069】
ノイズ算出工程24、閾値化工程26、通信工程28、連続工程30、及びループ工程32は、飛行中またはその一部の期間中、長時間にわたって比較信号Comp(t)に対して繰り返されるのが好ましい。本発明に係る検出方法は、飛行中ずっと連続的に実行されることが好ましい。
【0070】
ここで、本発明に係る検出方法の第2の部分の変形例を示す図5を参照する。この変形例において、ノイズ算出工程24、閾値化工程26、連続工程30、及びループ工程32は、図4に関連して説明される検出方法のノイズ算出工程24、閾値化工程26、連続工程30、及びループ工程32と同一であり、以後は繰り返し説明しない。
【0071】
閾値化工程26中に、ノイズBが閾値Sより大きい場合、コンピュータ14は、その後、増加工程34と称される工程34中に計算器の値Cjを増加させる。
【0072】
その結果、確認工程36と称される工程36中に、計算器の値Cjは、トリガ閾値Saと比較される。その後、
・値Cjがトリガ閾値Saより大きい場合、コンピュータ14は、通信工程38と称される工程38中に、環境(大気等)中の氷晶の存在の検出を示す信号を、特にコックピットに向かって送信する。また、さらに、コンピュータ14は、リセット工程40と称される工程40中に、計算器の値Cjをゼロに初期化することができ、かつ、
・値Cjがトリガ閾値Saより小さい場合、連続工程30が実施される。連続工程30では、比較信号Comp(t)におけるノイズBの算出を繰り返すために新たな次のタイムフレームFTi+1が検討される。
【0073】
この実施形態において、通信工程38は、氷晶の存在を検出する工程である。
【0074】
図6は、本発明に係る方法の第2の部分の他の実施形態の変形例に係るグラフを示す。このような構成において、閾値化工程26は、先に算出したノイズの平均値を算出する工程(とりわけ、算出されたノイズBの複数の値を用いて)と、算出された平均値と低閾値Sb及び高閾値Shとを比較する工程と、をさらに含む。
【0075】
そして、算出された平均値が高閾値Shより大きい場合、コンピュータ14は、通信工程28又は通信工程38において、大気中の氷晶の存在の検出を示す信号を、特にコクピットに向かって送信する。
【0076】
さらに、任意で、環境(大気等)中の氷晶の存在の検出を示す信号が送信された場合、コンピュータ14は、それぞれの反復において算出された平均値が低閾値Sbを下回らない限り、環境中の氷晶の検出を示す信号の通信を停止しない。
【0077】
他の変形例によれば、ノイズBは、タイムフレームFTにおける比較信号Comp(t)のフーリエ変換の算出から算出される。
【0078】
当然に、本発明は、上述の各実施形態に限定されず、単なる例として提供される。本発明は、本発明の範囲内で当業者によって考えうる種々の変更、代替形態、及び他の変形例、ならびに、特に、別々に、又は関連して適用されうる上述の種々の動作モードの任意の組合せを包含する。
【0079】
放射される放射光は、第1波長域λの範囲の光線、及び第2波長域λの範囲の光線を含む。
【0080】
検出装置2は、環境に対して相対的に動作する。この相対的動作は、環境に対する航空機の動作(例えば、航空機が飛行中の場合)、滑走路に駐機した航空機に対する風の動き、航空機又はヘリコプターのプロペラによって動かされた空気の動き、又は空気吸入口に吸入された空気の動きに起因する。
【0081】
要約すれば、本発明は、航空機のための、大気中の氷晶の存在を検出するための方法に関する。当該方法は、検出装置2によって実行される。検出装置2は、放射軸E-Eを有する少なくとも1つの送信器4と、少なくとも1つの点で放射軸E-Eと交差する受信軸R-Rを有する受信器10と、送信器4及び受信器10に接続されたコンピュータ14とを備える。当該方法は、以下の工程を備える。
・大気中への放射光の放射工程16。
・放射された放射光の少なくとも一部を受信する受信工程18。受信した放射光の少なくとも一部は、第1波長域λの範囲の光線及び第2波長域λの範囲の光線を含む。上記方法はさらに以下の工程を含むことを特徴とする。
・比較信号Comp(t)を算出する算出工程20。比較信号Comp(t)は、時間tにわたる対比の変化を表し、その対比は以下の式で表現される。
Comp(t)=(Rλ2(t)-Rλ1(t))/(Rλ2(t)+Rλ1(t))
λ1(t)は、第1波長域λにおける光線の時間tにわたる強度を示す。Rλ2(t)は、第2波長域λにおける光線の時間tにわたる強度を示す。
・対比信号Comp(t)における現在のタイムフレームFTを検討する検討工程22。
・検討されたタイムフレームにおける対比信号のノイズBを決定する決定工程24。
・ノイズBと定義された閾値Sとを比較する比較工程26。上記ノイズが上記定義された閾値Sより大きい場合には、大気中の氷晶の存在の検出を示す信号を送信する。
・次のタイムフレームFTi+1を検討しつつ、上記決定工程と上記比較工程を繰り返す繰り返し工程。次のタイムフレームFTi+1は、現在のタイムフレームFTに対して時間Dだけ時間的にシフトしたものである。
【0082】
変形例として、決定工程は、検討されたタイムフレームにおける対比信号の標準偏差を算出する工程を含む。
【0083】
変形例として、決定工程は、検討されたタイムフレームにおける対比信号のフーリエ変換を算出する工程を含む。
【0084】
変形例として、繰り返し工程は、以下の工程を含む。
・ノイズBが上記定義された閾値Sより大きい場合、計算器の値Cjを増加させる増加工程34。
・計算器の値Cjとアラート閾値Saとを比較する比較工程36。
・計算器の値Cjがアラート閾値Saより大きい場合に、氷晶の存在の検出を示す信号を送信する送信工程38、及び計算器の値Cjを0(ゼロ)に初期化する初期化工程40。
・計算器の値Cjがアラート閾値Saより小さい場合、次のタイムフレームを検討しつつ決定工程24を繰り返す繰り返し工程。
【0085】
変形例において、シフト時間Dは、タイムフレームの時間未満である。
【0086】
変形例において、第1波長域λは、とりわけ1.5μm以上1.7μm以下、さらには1.5μm以上1.6μm以下、さらには1.55μmに等しい。第2波長域λは、とりわけ1.3μm以上1.45μm以下、さらには1.4μm以上1.45μm以下、さらには1.42μmに等しい。
【0087】
変形例において、比較信号は、1/Comp(t)又はK×Comp(t)(Kは実数)に等しい。
【0088】
変形例において、比較信号(Comp(t))は、対比の変化、又は放射光Rλ1(t)及び放射光Rλ2(t)の強度の比較を可能にする任意の他の信号の変化を表す。
図1
図2
図3
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図5
図6