(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】圧力容器
(51)【国際特許分類】
F17C 1/16 20060101AFI20230809BHJP
F16J 12/00 20060101ALI20230809BHJP
B29C 49/48 20060101ALI20230809BHJP
B29C 49/04 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
F17C1/16
F16J12/00 A
B29C49/48
B29C49/04
(21)【出願番号】P 2019023743
(22)【出願日】2019-02-13
【審査請求日】2021-12-22
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大脇 優介
(72)【発明者】
【氏名】林 浩一郎
(72)【発明者】
【氏名】野坂 恭範
【審査官】加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-142017(JP,A)
【文献】特開2019-002505(JP,A)
【文献】特開2014-074470(JP,A)
【文献】特開2017-122464(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 1/16
F16J 12/00
B29C 49/48
B29C 49/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成樹脂材料からなり、円筒形の胴部の端部に略円環状の肩部が連なった形態の
ブロー成形品であるライナーと、
ブロー成形により前記肩部の内面に形成され、クレーター状に屈曲した凹凸形状の異形部と、
前記肩部の外面の一部のみに当接した状態で、前記ライナーに対し同心状に取り付けられた口金と、を備え、
前記口金の外周縁部は、周方向において前記異形部と対応する部位のみを押え部として径方向外方へ突出させた形態であり、
前記肩部における前記異形部の形成部位に前記押え部が当接されていることを特徴とする圧力容器。
【請求項2】
前記肩部の外面のうち前記押え部の当接領域と周方向に隣接する位置には、軸線方向に立ち上げた形態であり前記押え部に対し周方向に当接する側壁部が形成されていることを特徴とする請求項1記載の圧力容器。
【請求項3】
前記肩部の外面には、前記口金の外周縁部に当接する周壁部が形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の圧力容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧力容器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ブロー成形された合成樹脂製のライナーと、口金と、繊維強化樹脂層とを備えた圧力容器が開示されている。ライナーは、円筒形をなす胴部と、胴部の両端部から径方向内側へ延出したドーナツ状の肩部と、肩部の中心孔から軸線方向へ円筒状に突出したネック部とを有する。口金は、円形をなし、肩部とネック部の外面に密着する形態でライナーに取り付けられている。繊維強化樹脂層は、ライナーの外面と口金の外面を密着状態で包囲するように成形されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ライナーをブロー成形した場合、ライナーのうち胴部より小径となる肩部とネック部に連なる部位は、一対の金型の間で密着するように挟み付けられてバリとなる。そして、金型を型締めする際に、肩部の内面のうちバリの両端部に連なる部位に、クレーター状の異形部が発生する。この異形部はライナーに変形が生じたときに応力が集中する部位である。異形部における応力の集中を回避する手段としては、肩部のうち異形部の形成部位を口金で覆い、その部位の変形を抑制することが考えられる。しかし、そうすると、口金の外径が大きくなり、その分、圧力容器の重量が大きくなる。
【0005】
本発明は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、重量化を回避しながら、ブロー成形により生じる異形部への応力集中を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
合成樹脂材料からなり、円筒形の胴部の端部に略円環状の肩部が連なった形態のブロー成形品であるライナーと、
ブロー成形により前記肩部の内面に形成され、クレーター状に屈曲した凹凸形状の異形部と、
前記肩部の外面の一部のみに当接した状態で、前記ライナーに対し同心状に取り付けられた口金と、を備え、
前記口金の外周縁部は、周方向において前記異形部と対応する部位のみを押え部として径方向外方へ突出させた形態であり、
前記肩部における前記異形部の形成部位に前記押え部が当接されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
肩部のうち異形部の形成部位は、口金の押え部により変形を抑制されるので、応力の集中が低減されている。口金の外周縁部は、周方向において異形部と対応する部位のみが部分的に押え部として径方向外方へ突出した形態なので、周方向において異形部が形成されていない領域まで覆う大きさを有する円形の口金に比べると、本発明の口金は軽量である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】ライナーから第1口金と第2口金を外した状態をあらわす斜視図
【
図5】ライナーの成形工程をあらわす部分拡大正断面図
【
図6】ライナーの成形工程をあらわす部分拡大側断面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、前記肩部の外面のうち前記押え部の当接領域と周方向に隣接する位置には、軸線方向に立ち上げた形態であり前記押え部に対し周方向に当接する側壁部が形成されていてもよい。この構成によれば、押え部と側壁部との当接により、口金とライナーとの相対回転を規制することができる。
【0010】
本発明は、前記肩部の外面には、前記口金の外周縁部に当接する周壁部が形成されていてもよい。この構成によれば、口金の外周縁部を周壁部に当接させることにより、ライナーに対する口金の径方向への相対変位を規制することができる。
【0011】
<実施例1>
以下、本発明を具体化した実施例1を
図1~
図6を参照して説明する。尚、以下の説明において、上下の方向については、
図1~6にあらわれる向きを、そのまま上方、下方と定義する。前後及び左右の方向については、
図3~5にあらわれる向きを、そのまま左方、右方と定義する。
【0012】
本実施例1の圧力容器Aは、合成樹脂製のライナー10と、第1口金20(請求項に記載の口金)と、第2口金23(請求項に記載の口金)と、繊維強化樹脂層27とを備えて構成されている。圧力容器Aは、燃料電池自動車や天然ガス自動車に搭載され、高圧の水素ガスや天然ガスの充填容器として用いられるものである。
【0013】
ライナー10は、胴部11と、上下一対の肩部12と、上下一対の首部13を有する単一部材である。胴部11は、径寸法が全長に亘ってほぼ一定の円筒状をなし、軸線方向をライナー10と同じく上下方向に向けている。ライナー10の内部は、流体(水素ガスや天然ガス等)を貯留するための貯留空間14となっている。補強リングは、首部13の内周に密着した形態でライナー10と一体化されている。
【0014】
上側の肩部12は、胴部11の上端部に連なり、胴部11と同心状の円環形(ドーム状)をなす。上側の首部13は、肩部12の中心孔から軸線方向上方へ突出した形態であり、胴部11及び肩部12と同心の略円筒状をなす。上側の首部13は、上端部が閉塞された非貫通形態である。
【0015】
上端側の肩部12の内面(下面)には、左右一対の異形部15が形成されている。異形部15は、後述するブロー成形の工程において形成されるものであり、クレーター状若しくはえくぼ状に屈曲した凹凸形状をなしている。異形部15は、後述するブロー成形工程においてパリソンPのうち金型30で挟み付けられてバリBとなる部位の左右両端部に近い位置、即ち肩部12の外周縁に近い位置に形成される。径方向において、異形部15は、胴部11と首部13との間に配されている。
【0016】
上端側の肩部12のうち周方向において異形部15の形成部位を両側から挟む位置には、夫々、一対の側壁部16が形成されている。異形部15は一対形成されているので、側壁部16は二対形成されている。対をなす側壁部16は、肩部12の外面(上面)から上方(ライナー10の軸線と平行な方向)へ立ち上がった形態である。肩部12の上面には、対をなす側壁部16の間に区画された嵌合凹部17(請求項に記載の肩部における異形部の形成部位)が形成されている。肩部12をライナー10の軸線と平行に視たときの平面視において、異形部15は嵌合凹部17の形成領域内に位置している。
【0017】
上端側の肩部12の外面(上面)には、首部13を同心状に包囲するように立ち上がる一対の周壁部18が形成されている。一対の周壁部18は、ライナー10と同心状の円弧形をなす。周壁部18の周方向における端部は、側壁部16の径方向における内側の端部に対し略直角をなすように連なっている。肩部12の上面には、一対の周壁部18で囲まれるように区画された円形の収容凹部19が形成されている。収容凹部19の外周における左右両端部には、一対の嵌合凹部17が連なっている。換言すると、収容凹部19の外周から一対の嵌合凹部17が径方向外方へ突き出した形態となっている。
【0018】
下側の肩部12は、胴部11の下端部に連なり、胴部11と同心状の円環形(ドーム状)をなす。下側の首部13は、肩部12の中心孔から軸線方向下方へ突出した形態であり、胴部11及び肩部12と同心の略円筒状をなす。下側の首部13は上下に貫通した形態である。この下端側の肩部12にも、上端側の肩部12と同様、左右一対の異形部15と、一対の側壁部16と、嵌合凹部17と、周壁部18と、収容凹部19が形成されている。
【0019】
上述したように、ライナー10は、押出機(図示省略)と一対の金型30を用いてブロー成形法により成形されている。ライナー10の材料としては、高密度ポリエチレン(HDPE)とエチレン・ビニルアルコール共重合樹脂(EVOH)の混合樹脂、ポリアミド樹脂、ポリプロピレン樹脂等が用いられている。
【0020】
一対の金型30は、前後対称且つ左右対称な構造である。
図5,6に示すように、各金型30は、夫々、前後方向に移動する金型本体31と、金型本体31の上端部に取り付けられたスライド型32と、金型本体31の下端部に取り付けられたスライド型32(図示省略)とを備えて構成されている。スライド型32は、金型本体31に対して相対的に上下方向(パリソンP及びライナー10の軸線方向と平行な方向)へ移動し得るようになっている。スライド型32は、肩部12の外面(上面)のうち収容凹部19、周壁部18、嵌合凹部17及び側壁部16を含む中心側の円形領域を成形する。下側のスライド型32も同様の機能を有する。
【0021】
ライナー10の成形に際しては、ブロー成形機(図示省略)から略円筒形のパリソンPが軸線を上下方向に向けて下向きに押し出される。押し出されたパリソンP内には下方からロッド(図示省略)が収容される。そして、一対の金型30を前後からパリソンPを挟むように移動させて型締めし、ロッドを通して供給された加圧エアにより、パリソンPを金型30のキャビティ内面に密着させる。
【0022】
この後、パリソンPが固化すれば、金型30によるライナー10の成形工程が完了する。ライナー10が固化した後に金型30を型開きする際には、まず、上側の一対のスライド型32を上方へ移動させるとともに、下側の一対のスライド型32を下方へ移動させる。これにより、金型30が側壁部16及び周壁部18と干渉することを回避する。この後、一対の金型本体31を前後方向に離間するように移動させ、ライナー10を取り出す。
【0023】
型締めしたときには、パリソンPのうち肩部12の外面及び首部13の外周面に連なる部位が、前後一対の金型30の間で押し潰される。そのため金型30からライナー10を取り出しときには、金型30で押し潰された部位が、肩部12の外面及び首部13の外周面に連なるバリBとして残る。このバリBを除去すると、除去した痕に左右一対のパーティングライン28が形成される(
図1,2を参照)。上記した異形部15は、パリソンPのうち金型30で押し潰された部位と、加圧により拡径変形する肩部12の外周縁部との境界に形成される。したがって、パーティングライン28は、肩部12の外面のうち異形部15の形成部位(嵌合凹部17)を通過する。
【0024】
図2,3に示すように、第1口金20は、軸線を上下方向に向けた円柱状をなす第1本体部21と、第1本体部21の軸線方向両端部のうち基端部(下端部)から径方向外方へ突出した左右一対の第1押え部22(請求項に記載の押え部)とを備えた単一部品である。第1本体部21の基端部の外周縁は、第1口金20及びライナー10と同心の円形をなす。一対の第1押え部22は、第1本体部21の基端部の外周縁から径方向外方へ突出した形態である。
【0025】
第1口金20は、ライナー10の上端部に取り付けられ、上側の肩部12の外面を密着状態で覆っている。第1口金20をライナー10に取り付けた状態では、第1本体部21の基端部が収容凹部19内に嵌合されている。第1本体部21(第1口金20)の外周縁は、周壁部18に対し径方向内側から密着している。また、一対の第1押え部22が一対の嵌合凹部17に嵌合される。第1押え部22の下面は、嵌合凹部17の上面(肩部12のうち異形部15が形成されている内面とは反対側の外面)に当接している。また、各第1押え部22の径方向に延びる外側面は、一対の側壁部16に対し周方向に当接している。
【0026】
図2,4に示すように、第2口金23は、軸線を上下方向に向けた円筒状をなす第2本体部24と、第2本体部24の軸線方向両端部のうち上端部から径方向外方へ張り出した左右一対の第2押え部25(請求項に記載の押え部)とを備えた単一部品である。第2本体部24の基端部の外周縁は、第2口金23及びライナー10と同心の円形をなす。一対の第2押え部25は、第2本体部24の基端部の外周縁から径方向外方へ突出した形態である。第2本体部24の内周には雌ネジ部26が形成され、雄ネジ部にはバルブ(図示省略)がねじ込みにより取り付けられるようになっている。
【0027】
第2口金23は、ライナー10の上端部に取り付けられ、下側の肩部12の外面を密着状態で覆っている。第2口金23をライナー10に取り付けた状態では、第2本体部24の基端部が収容凹部19内に嵌合されている。第2本体部24(第2口金23)の外周縁は、周壁部18に対し径方向内側から密着している。また、一対の第2押え部25が一対の嵌合凹部17に嵌合される。第2押え部25の上面は、嵌合凹部17の下面(肩部12のうち異形部15が形成されている内面とは反対側の外面)に当接している。また、各第2押え部25の径方向に延びる外側面は、一対の側壁部16に対し周方向に当接している。
【0028】
繊維強化樹脂層27は、炭素繊維強化プラスチック(GFRP)、ガラス繊維強化プラスチック等(GFRP)からなる。繊維強化樹脂層27は、胴部11の外周の全領域と、肩部12の外面のうち第1口金20よりも外周側の領域と、肩部12の外面のうち第2口金23よりも外周側の領域と、第1口金20の外周面のうち基部側の外周面と、第2口金23の外周面のうち基部側の領域とに亘って形成されている。
【0029】
繊維強化樹脂層27は、フィラメントワインディング法、即ち、胴部11の軸線を中心として回転するライナー10、第1口金20及び第2口金23の外面に、繊維束(図示省略)に液状の熱硬化性樹脂を含浸させたもの、又は繊維束に含浸した熱硬化性樹脂を半硬化状態にしたもの(プリプレグ繊維)を巻き付けることによって形成されている。繊維束は、炭素繊維、ガラス繊維、ケプラ繊維等からなる糸状の繊維を束ねたものである。
【0030】
ライナー10に繊維強化樹脂層27を成形する工程を説明する。まず、所定形状にブロー成形されて第1口金20と第2口金23が取り付けられたライナー10を、所定のフィラメントワインディング位置へ搬送し、第1口金20と第2口金23に回転駆動装置の駆動軸(図示省略)を取り付ける。この状態で、回転駆動装置を起動してライナー10と両口金20,23を回転させる。回転しているライナー10の外面には、ボビン(図示省略)から繰り出した繊維束が巻き付けられていく。
【0031】
繊維束を巻き付ける工程では、駆動軸が連結された第1口金20と、ボビンから繊維束を引き込む従動側のライナー10の上端部との界面に、回転方向の剪断力が作用する。そのため、剪断力が大きくなった場合には、第1口金20とライナー10との間で滑りが生じて第1口金20が空転することが懸念される。また、駆動側の第2口金23とライナー10の下端部との間にも剪断力が作用するので、第2口金23が空転することも懸念される。
【0032】
その対策として、本実施例1では、ライナー10の側壁部16と第1押え部22とを周方向に当接させているとともに、ライナー10の側壁部16と第2押え部25とを周方向に当接させている。これらの当接により、ライナー10と第1口金20と第2口金23は、一体回転する状態に保たれる。繊維束の巻き付け工程が終わった後は、繊維束に含浸されている樹脂を硬化させる。以上の工程を経ることにより、ライナー10と両口金20,23の外面に繊維強化樹脂層27が積層状態で形成され、圧力容器Aの製造が完了する。
【0033】
また、繊維束の巻き付け工程において、第1口金20とライナー10との間に剪断力が作用し、第2口金23とライナー10との間に剪断力が作用したときには、肩部12の内面のうち形状が複雑な異形部15には応力が集中することが懸念される。また、繊維強化樹脂層27の形成後において圧力容器A(貯留空間14)の内圧上昇等に起因してライナー10が外面側へ膨らむように変形した場合にも、異形部15に応力が集中することが懸念される。しかし、第1押え部22と第2押え部25が、肩部12の外面のうち異形部15が形成されている部位に密着状態で当接しているので、異形部15及び異形部15に隣接する領域の変形が抑制される。これにより、異形部15における応力の集中が防止される。
【0034】
本実施例の圧力容器Aは、合成樹脂製のライナー10と、第1口金20と、第2口金23とを備えている。ライナー10は、円筒形の胴部11の端部に略円環状の肩部12が連なった形態である。肩部12の内面には凹凸形状(クレーター状)の異形部15が形成されている。第1口金20は、上端側の肩部12の外面の一部のみに当接した状態で、ライナー10に対し同心状に取り付けられている。第2口金23は、下端側の肩部12の外面の一部のみに当接した状態で、ライナー10に対し同心状に取り付けられている。
【0035】
第1口金20の外周縁部は、周方向において異形部15と対応する部位のみを第1押え部22として径方向外方へ突出させた形態である。第2口金23の外周縁部は、周方向において異形部15と対応する部位のみを第2押え部25として径方向外方へ突出させた形態である。第1押え部22及び第2押え部25は、肩部12における異形部15の形成部位(嵌合凹部17)に当接されている。上側の肩部12における異形部15の形成部位は、第1押え部22により変形を抑制されるので、応力の集中が低減されている。下側の肩部12における異形部15の形成部位は、第2押え部25により変形を抑制されるので、応力の集中が低減されている。
【0036】
第1口金20の外周縁部は、周方向において異形部15と対応する部位のみが部分的に第1押え部22として径方向外方へ突出した形態である。第2口金23の外周縁部も、周方向において異形部15と対応する部位のみが部分的に第2押え部25として径方向外方へ突出した形態である。これにより、周方向において異形部15が形成されていない領域まで覆う大きさを有する円形の口金に比べると、本実施例1の第1口金20と第2口金23は軽量となっている。したがって、本実施例1の圧力容器Aによれば、重量化を回避しながら、ブロー成形により生じる異形部15への応力集中を抑制することができる。
【0037】
また、上側の肩部12の外面のうち第1押え部22の当接領域(嵌合凹部17)と周方向に隣接する位置には、一対の側壁部16が形成されている。一対の側壁部16は、肩部12の外面から軸線方向に突出した形態であり、第1押え部22に対し周方向に当接する。下側の肩部12の外面のうち第2押え部25の当接領域(嵌合凹部17)と周方向に隣接する位置には、一対の側壁部16が形成されている。一対の側壁部16は、肩部12の外面から軸線方向に突出した形態であり、第2押え部25に対し周方向に当接する。第1押え部22と側壁部16との当接及び第2押え部25と側壁部16との当接により、第1口金20とライナー10との相対回転及び第2口金23とライナー10との相対回転が規制されている。
【0038】
また、上側の肩部12の外面には、第1口金20の外周縁部のうち第1押え部22が形成されていない領域に当接する周壁部18が形成されている。第1口金20の外周縁部を周壁部18に当接させることにより、ライナー10に対する第1口金20の径方向への相対変位を規制することができる。また、下側の肩部12の外面にも、第2口金23の外周縁部のうち第2押え部25が形成されていない領域に当接する周壁部18が形成されている。第2口金23の外周縁部を周壁部18に当接させることにより、ライナー10に対する第2口金23の径方向への相対変位を規制することができる。
【0039】
<他の実施例>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施例に限定されるものではなく、例えば次のような実施例も本発明の技術的範囲に含まれる。
(1)上記実施例では、肩部に、押え部と周方向に当接する側壁部が形成されているが、肩部は、側壁部を有しない形態であってもよい。
(2)上記実施例では、肩部に、口金の外周縁を径方向に当接される周壁部を形成したが、肩部は、周壁部を有しない形状であってもよい。
【符号の説明】
【0040】
A…圧力容器
10…ライナー
11…胴部
12…肩部
15…異形部
16…側壁部
17…嵌合凹部(肩部における異形部の形成部位)
18…周壁部
20…第1口金(口金)
22…第1押え部(押え部)
23…第2口金(口金)
25…第2押え部(押え部)