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特許7328774スモークハードコートフィルム及びこれを用いた表示装置
<図1>
  • 特許-スモークハードコートフィルム及びこれを用いた表示装置 図1
  • 特許-スモークハードコートフィルム及びこれを用いた表示装置 図2
  • 特許-スモークハードコートフィルム及びこれを用いた表示装置 図3
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  • 特許-スモークハードコートフィルム及びこれを用いた表示装置 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】スモークハードコートフィルム及びこれを用いた表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/14 20150101AFI20230809BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20230809BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20230809BHJP
   G02B 5/00 20060101ALI20230809BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
G02B1/14
B32B27/20 A
B32B7/023
G02B5/00 A
G09F9/00 302
G09F9/00 313
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2019050295
(22)【出願日】2019-03-18
(65)【公開番号】P2020154043
(43)【公開日】2020-09-24
【審査請求日】2022-02-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000125978
【氏名又は名称】株式会社きもと
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100118991
【弁理士】
【氏名又は名称】岡野 聡二郎
(72)【発明者】
【氏名】橘 和寿
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 翔
(72)【発明者】
【氏名】加藤 龍哉
【審査官】越河 勉
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-260101(JP,A)
【文献】国際公開第2010/055564(WO,A1)
【文献】特開2007-121608(JP,A)
【文献】特開2014-215589(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 1/10-1/18
B32B 27/20
B32B 7/023
G02B 5/00
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光型ディスプレイを備える表示装置と、前記表示装置のディスプレイ側に設けられるスモークハードコートフィルムと、を少なくとも備え、
前記スモークハードコートフィルムは、硬化樹脂と前記硬化樹脂中に分散された着色剤とを少なくも含有するハードコート層、及び平面視で枠エリアと前記枠エリア内に配置されるディスプレイ表示エリアとを区画形成する印刷層を少なくとも備え、前記ディスプレイ表示エリアの前記スモークハードコートフィルムの全光線透過率(JIS K7361-1準拠)が0.5%以上75%未満であり、
前記スモークハードコートフィルムが前記ディスプレイ表面側に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時の前記ディスプレイ表示エリアのSCI方式における550nm反射率(RDA)と前記ディスプレイ周囲の前記枠エリアとの同550nm反射率(RFA)との差(|RDA-RFA|)が5%以下であり、
前記スモークハードコートフィルムが前記ディスプレイ表面側に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時の前記ディスプレイ表示エリアのSCI方式におけるXYZ表色系の反射率X DA 値,同Y DA 値,同Z DA 値(JIS Z 8720:2012準拠、CIE標準イルミナントD 65 を使用。)がいずれも6%以下であ
ことを特徴とする、スモークハードコートフィルム付の表示装置。
【請求項2】
前記スモークハードコートフィルムが前記ディスプレイ表面側に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時の前記ディスプレイ表示エリアのSCI方式における550nm反射率(RDA)が6%以内である
請求項1に記載のスモークハードコートフィルム付の表示装置。
【請求項3】
発光型ディスプレイを備える表示装置のディスプレイ側に設けられるスモークハードコートフィルムであり、
硬化樹脂と前記硬化樹脂中に分散された着色剤とを少なくも含有するハードコート層、及び平面視で枠エリアと前記枠エリア内に配置されるディスプレイ表示エリアとを区画形成する印刷層を少なくとも備え、
前記ディスプレイ表示エリアの前記スモークハードコートフィルムの全光線透過率(JIS K7361-1準拠)が0.5%以上75%未満であり、
前記ディスプレイ表面側に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時の前記ディスプレイ表示エリアのSCI方式におけるXYZ表色系の反射率X DA 値,同Y DA 値,同Z DA 値(JIS Z 8720:2012準拠、CIE標準イルミナントD 65 を使用。)がいずれも6%以下であり、且つ、ディスプレイ消灯時の前記ディスプレイ表示エリアのSCI方式における550nm反射率(RDA)と前記ディスプレイ周囲の前記枠エリアとの同550nm反射率(RFA)との差(|RDA-RFA|)を5%以下とすることを特徴とする、スモークハードコートフィルム。
【請求項4】
前記ディスプレイ表面側に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時の前記ディスプレイ表示エリアの前記550nm反射率(RDA)を6%以内とする
請求項3に記載のスモークハードコートフィルム。
【請求項5】
前記ディスプレイ表面側に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時の前記ディスプレイ表示エリアのSCI方式におけるXYZ表色系の反射率XDA値,同YDA値,同ZDA値(JIS Z 8720:2012準拠、CIE標準イルミナントD65を使用。)と前記ディスプレイ周囲の前記枠エリアの同反射率XFA値,YFA値,ZFA値の差(|XDA値-XFA値|、|YDA値-YFA値|、|ZDA値-ZFA値|)をいずれも5以内とする
請求項3又は4に記載のスモークハードコートフィルム。
【請求項6】
前記ディスプレイ表面側に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時の前記ディスプレイ表示エリアのSCI方式におけるXYZ表色系の反射率XDA値,同YDA値,同ZDA値(JIS Z 8720:2012準拠、CIE標準イルミナントD65を使用。)をいずれも4%以下である
請求項3~5のいずれか一項に記載のスモークハードコートフィルム。
【請求項7】
前記着色剤は、0.01~2.0μmの平均粒子径D50を有するカーボンブラックを含む
請求項3~6のいずれか一項に記載のスモークハードコートフィルム。
【請求項8】
前記着色剤の含有割合が、全樹脂成分100質量部に対する固形分換算で1~15質量部である
請求項3~7のいずれか一項に記載のスモークハードコートフィルム。
【請求項9】
前記ハードコート層は、マット剤をさらに含有する
請求項3~8のいずれか一項に記載のスモークハードコートフィルム。
【請求項10】
前記マット剤の含有割合が、全樹脂成分100質量部に対する固形分換算で1~15質量部である
請求項9に記載のスモークハードコートフィルム。
【請求項11】
材フィルム上に少なくとも前記ハードコート層及び前記印刷層が成型加工された成型加工物である
請求項3~10のいずれか一項に記載のスモークハードコートフィルム。
【請求項12】
前記ハードコート層、材フィルム、及び前記印刷層をこの順に少なくとも有する積層構造を備える積層成型体である
請求項3~11のいずれか一項に記載のスモークハードコートフィルム。
【請求項13】
反射防止層、前記ハードコート層、材フィルム、及び前記印刷層をこの順に少なくとも有する積層構造を備える積層成型体である
請求項3~11のいずれか一項に記載のスモークハードコートフィルム。
【請求項14】
ハードコート層、基材フィルム、印刷層、及び成型用樹脂層をこの順に少なくとも有する積層構造を備え、発光型ディスプレイを備える表示装置のディスプレイ側に設けられる、一体化スモークハードコートフィルム成型加工物であって、
前記ハードコート層は、硬化樹脂と前記硬化樹脂中に分散された着色剤とを少なくも含有し、
前記印刷層は、平面視で枠エリアと前記枠エリア内に配置されるディスプレイ表示エリアとを区画形成し、
前記ディスプレイ表示エリアの前記一体化スモークハードコートフィルム成型加工物の全光線透過率(JIS K7361-1準拠)が0.5%以上75%未満であり、
前記ディスプレイ表面側に設けられた状態において、前記ディスプレイ表面側に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時の前記ディスプレイ表示エリアのSCI方式におけるXYZ表色系の反射率X DA 値,同Y DA 値,同Z DA 値(JIS Z 8720:2012準拠、CIE標準イルミナントD 65 を使用。)がいずれも6%以下であり、且つ、ディスプレイ消灯時の前記ディスプレイ表示エリアのSCI方式における550nm反射率(RDA)と前記ディスプレイ周囲の前記枠エリアとの同550nm反射率(RFA)との差(|RDA-RFA|)を5%以下とすることを特徴とする、一体化スモークハードコートフィルム成型加工物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に意匠性に優れるハードコートフィルム、及びこれを用いた表示装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OELD又はIELD)等の発光型ディスプレイを備える画像表示装置が、幅広い分野で利用されている。また近年、これらは、表示装置の画像表示部(ディスプレイ)に抵抗膜方式や静電容量方式のタッチパネル等が設けられた入力装置としても幅広く使用されている。このような入力装置として用いる場合には、耐擦傷性や耐摩耗性等の目的のために、ハードコートフィルムが一般的に用いられている。
【0003】
従来、この種の用途において用いられるハードコートフィルムには、十分な硬度を有するのみならず、その使用態様から、透明性が十分に高いことが求められている。すなわち、耐擦傷性や耐摩耗性の他に、全線透過率(或いは可視光透過率)が90%以上の透明性(光学特性)が求められている。また近年では、例えば抗菌性、耐薬品性、防汚性等の他、蛍光灯や太陽光下で使用した際の外光の映り込みやギラツキを抑えるために反射防止性や防眩性等が求められるようになってきている(特許文献1~5参照)。
【0004】
一方、静電容量式タッチパネルの見栄えを良くする技術として、透明導電膜等の導電性パターン層のパターンを不可視化するとともにギラツキの発生を抑制したハードコートフィルムが提案されている(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-203935号公報
【文献】特開2015-017243号公報
【文献】特開2017-159506号公報
【文献】特開2017-179099号公報
【文献】特開2018-055056号公報
【文献】特開2015-184638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した発光型ディスプレイのディスプレイ表示エリアが平面視で枠内に配置された表示装置が一般的に用いられてきている中、ディスプレイに表示される画像や動画への没入感が高まる等の理由により、ピアノブラック調の黒色枠の人気が高まっている。また、黒色系の内装材が多く用いられている車載用途やシアタールーム用途等においては、発光型ディスプレイ周辺の黒色系の内装材や外装材との意匠性の統一感の観点からも、この傾向が顕著となっている。実際、これらの用途において、発光型ディスプレイが取り付けられる収納部の周囲のインテリアパネルやダッシュボード等には、ピアノブラック調や黒色メタル調等の、黒色系の内装材や外装材が多用されている。
【0007】
しかしながら、本発明者らの知見によれば、上記従来のハードコートフィルムを発光型ディスプレイに取り付けた場合、特にディスプレイ消灯時において、ディスプレイの表示エリアとその周囲の枠エリア等との色調及び質感が大きく異なり、意匠性が十分に高められていないことが判明した。すなわち、従来技術では、ディスプレイ消灯時に統一感のある意匠性を実現できておらず、かかる観点から、例えば高級志向の車載用途やシアタールーム用途等において、新たな設計思想のハードコートフィルムが求められていることが判明した。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものである。すなわち本発明の目的は、ディスプレイ消灯時においてディスプレイの表示エリアとその周囲の枠エリア等との意匠性の統一感を高め得る、新たな設計思想のハードコートフィルム等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために、ディスプレイの表示エリアとその周囲の枠エリア等の光学特性等を鋭意検討した結果、硬化樹脂とこの硬化樹脂中に分散された着色剤とを少なくも含有するハードコート層、及び平面視で枠エリアとこの枠エリア内に配置されるディスプレイ表示エリアとを区画形成する印刷層を少なくとも備え、前記ディスプレイ表示エリアの前記スモークハードコートフィルムの全光線透過率Tt(JIS K7361-1準拠)が0.5%以上75%未満である所定のスモークハードコートフィルムを新たに設計し、これを用いることで上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下に示す種々の具体的態様を提供する。
〔1〕発光型ディスプレイを備える表示装置と、前記表示装置のディスプレイ側に設けられるスモークハードコートフィルムと、を少なくとも備え、前記スモークハードコートフィルムは、硬化樹脂と前記硬化樹脂中に分散された着色剤とを少なくも含有するハードコート層、及び平面視で枠エリアと前記枠エリア内に配置されるディスプレイ表示エリアとを区画形成する印刷層を少なくとも備え、前記ディスプレイ表示エリアの前記スモークハードコートフィルムの全光線透過率(JIS K7361-1準拠)が0.5%以上75%未満であり、前記スモークハードコートフィルムが前記ディスプレイ表面側に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時の前記ディスプレイ表示エリアのSCI方式における550nm反射率(RDA)と前記ディスプレイ周囲の前記枠エリアとの同550nm反射率(RFA)との差(|RDA-RFA|)が5%以下であることを特徴とする、スモークハードコートフィルム付の表示装置。
【0011】
〔2〕前記スモークハードコートフィルムが前記ディスプレイ表面側に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時の前記ディスプレイ表示エリアのSCI方式における550nm反射率(RDA)が6%以内である〔1〕に記載のスモークハードコートフィルム付の表示装置。
【0012】
〔3〕発光型ディスプレイを備える表示装置のディスプレイ側に設けられるスモークハードコートフィルムであり、硬化樹脂と前記硬化樹脂中に分散された着色剤とを少なくも含有するハードコート層、及び平面視で枠エリアと前記枠エリア内に配置されるディスプレイ表示エリアとを区画形成する印刷層を少なくとも備え、前記ディスプレイ表示エリアの全光線透過率(JIS K7361-1準拠)が0.5%以上75%未満であり、前記ディスプレイ表面側に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時の前記ディスプレイ表示エリアのSCI方式における550nm反射率(RDA)と前記ディスプレイ周囲の前記枠エリアとの同550nm反射率(RFA)との差(|RDA-RFA|)を5%以下とすることを特徴とする、スモークハードコートフィルム。
〔4〕前記ディスプレイ表面側に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時の前記ディスプレイ表示エリアの前記550nm反射率(RDA)を6%以内とする〔3〕に記載のスモークハードコートフィルム。
【0013】
〔5〕前記ディスプレイ表面側に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時の前記ディスプレイ表示エリアのSCI方式におけるXYZ表色系の反射率XDA値,同YDA値,同ZDA値(JIS Z 8720:2012準拠、CIE標準イルミナントD65を使用。)と前記ディスプレイ周囲の前記枠エリアの同反射率XFA値,YFA値,ZFA値の差(|XDA値-XFA値|、|YDA値-YFA値|、|ZDA値-ZFA値|)をいずれも5以内とする〔3〕又は〔4〕に記載のスモークハードコートフィルム。
〔6〕前記ディスプレイ表面側に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時の前記ディスプレイ表示エリアのSCI方式におけるXYZ表色系の反射率XDA値,同YDA値,同ZDA値(JIS Z 8720:2012準拠、CIE標準イルミナントD65を使用。)をいずれも6以下とする〔3〕~〔5〕のいずれか一項に記載のスモークハードコートフィルム。
【0014】
〔7〕前記着色剤は、0.01~2.0μmの平均粒子径D50を有するカーボンブラックを含む〔3〕~〔6〕のいずれか一項に記載のスモークハードコートフィルム。
〔8〕前記着色剤の含有割合が、全樹脂成分100質量部に対する固形分換算で1~15質量部である〔3〕~〔7〕のいずれか一項に記載のスモークハードコートフィルム。
【0015】
〔9〕前記ハードコート層は、マット剤をさらに含有する〔3〕~〔8〕のいずれか一項に記載のスモークハードコートフィルム。
〔10〕前記マット剤の含有割合が、全樹脂成分100質量部に対する固形分換算で1~15質量部である〔9〕に記載のスモークハードコートフィルム。
【0016】
〔11〕前記基材フィルム上に少なくとも前記ハードコート層及び前記印刷層が成型加工された成型加工物である〔3〕~〔10〕のいずれか一項に記載のスモークハードコートフィルム。
〔12〕前記ハードコート層、前記基材フィルム、及び前記印刷層をこの順に少なくとも有する積層構造を備える積層成型体である〔3〕~〔11〕のいずれか一項に記載のスモークハードコートフィルム。
〔13〕反射防止層、前記ハードコート層、前記基材フィルム、及び前記印刷層をこの順に少なくとも有する積層構造を備える積層成型体である〔3〕~〔11〕のいずれか一項に記載のスモークハードコートフィルム。
〔14〕
ハードコート層、基材フィルム、印刷層、及び成型用樹脂層をこの順に少なくとも有する積層構造を備え、発光型ディスプレイを備える表示装置のディスプレイ側に設けられる、一体化スモークハードコートフィルム成型加工物であって、前記ハードコート層は、硬化樹脂と前記硬化樹脂中に分散された着色剤とを少なくも含有し、前記印刷層は、平面視で枠エリアと前記枠エリア内に配置されるディスプレイ表示エリアとを区画形成し、前記ディスプレイ表示エリアの前記一体化スモークハードコートフィルム成型加工物の全光線透過率(JIS K7361-1準拠)が0.5%以上75%未満であり、前記ディスプレイ表面側に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時の前記ディスプレイ表示エリアのSCI方式における550nm反射率(RDA)と前記ディスプレイ周囲の前記枠エリアとの同550nm反射率(RFA)との差(|RDA-RFA|)を5%以下とすることを特徴とする、一体化スモークハードコートフィルム成型加工物。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ディスプレイ消灯時においてディスプレイの表示エリアとその周囲の枠エリア等との意匠性の統一感を高め得る、新たな設計思想のスモークハードコートフィルム及びこれを用いた表示装置等を提供することができる。そして、このスモークハードコートフィルム等を用いることで、例えば高級志向の車載用途やシアタールーム用途等において求められる、高い意匠性を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】発光型ディスプレイのディスプレイ側に設けられた一実施形態のスモークハードコートフィルム100及び画像表示装置300を示す概略平面図である。
図2図1のII-II断面図である。
図3】一実施形態のスモークハードコートフィルム100を示す概略断面図である。
図4】一実施形態の一体化スモークハードコートフィルム成型加工物101を示す概略断面図である。
図5】スモークハードコートフィルム100及び画像表示装置300の一例の実測データである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限定されるものではない。但し、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、本明細書において、例えば「1~100」との数値範囲の表記は、その上限値「100」及び下限値「1」の双方を包含するものとする。また、他の数値範囲の表記も同様である。
【0020】
(第一実施形態)
図1及び図2は、本発明の第一実施形態のスモークハードコートフィルム100及びこれを用いた画像表示装置300の概略構成を示す平面図及び断面図である。本実施形態のスモークハードコートフィルム100は、基材フィルム11と、この基材フィルム11の一方の面11a側に設けられたハードコート層21と、基材フィルム11の他方の面11b側に設けられた印刷層41を少なくとも備える。そして、図2に示すとおり、スモークハードコートフィルム100は、発光型ディスプレイを備える表示装置200のディスプレイD側に設けられている。
【0021】
本実施形態のスモークハードコートフィルム100は、ハードコート層21、基材フィルム11、及び印刷層41が、少なくともこの順に配列された積層構造(3層構造)を有する。この積層構造において、ハードコート層21は、スモークハードコートフィルム100の表側の最表面に配置されており、スモークハードコートフィルム100の最表面に露出した状態で配置されている。なお、ハードコート層21の表面は、必要に応じて、帯電防止処理や防汚処理や抗菌処理や反射防止処理等の任意の表面処理が施されていてもよい。また、ハードコート層21の表面には、必要に応じて、帯電防止層や保護層や防汚層や抗菌層や反射防止膜や印刷層等の任意の層が設けられていてもよい。本実施形態では、ハードコート層21の表面には、反射防止層31が設けられている。一方、スモークハードコートフィルム100の裏側(基材フィルム11の他方の面11b側)には、加飾層となる印刷層41が設けられている。また、印刷層41の表面には、必要に応じて、保護層や防汚層やプライマー層等の任意の層が設けられていてもよい。スモークハードコートフィルム100としては、ハードコート層21、基材フィルム11及び印刷層41が、少なくともこの順に配列された積層構造を有するものが好ましい。
【0022】
ここで本明細書において、「~の一方(他方)の面側に設けられた」とは、本実施形態のように基材フィルム11の表面(例えば面11aや面11b)にハードコート層21や印刷層41が直接載置された態様のみならず、基材フィルム11の面11aとハードコート層21との間や、基材フィルム11の面11bと印刷層41との間に、図示しない任意の層(例えばプライマー層、接着層等)が介在してハードコート層21や印刷層41が基材フィルム11から離間して配置された態様を包含する意味である。また、ハードコート層21及び印刷層41を少なくとも備える積層構造とは、ハードコート層21及び印刷層41のみが基材フィルム11上に直接積層した構造のみならず、3層構造の層間に上述したような任意の層をさらに設けた構造を包含する意味である。
【0023】
基材フィルム11は、ハードコート層21及び印刷層41を支持するものである。基材フィルム11の構成素材としては、ハードコート層21及び印刷層41を支持可能なものである限り、その種類は特に限定されない。寸法安定性、機械的強度及び軽量化等の観点から、合成樹脂フィルムが好ましく用いられる。合成樹脂フィルムの具体例としては、ポリエステルフィルム、ABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリカーボネートフィルム等が挙げられる。また、(メタ)アクリル系、ナイロン系、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系、セルロース系、ポリスルホン系、ポリフェニレンスルフィド系、ポリエーテルスルホン系、ポリエーテルエーテルケトン系のフィルムを用いることもできる。これらは1種を単独で用いることができ、また2種以上の任意の組み合わせで用いることもできる。また、これらを任意の組み合わせで用いた積層フィルムも好適に用いることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル、メタクリルの双方を含む概念である。これらの中でも、基材フィルム11としては、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリカーボネートフィルム、(メタ)アクリル系フィルム、及びこれらを任意に組み合わせた積層フィルムが好適に用いられる。
【0024】
基材フィルム11の外観は、透明、半透明、無色、着色のいずれであってもよく、特に限定されないが、透光性が高いものが好ましい。具体的には、JIS K 7361-1に準拠して測定される全光線透過率が80%以上の透明樹脂フィルムが好ましく、より好ましくは85%以上、さらに好ましくは90%以上、特に好ましくは92%以上である。
【0025】
基材フィルム11の厚みは、要求性能及び用途に応じて適宜設定でき、特に限定されない。軽量化及び薄膜化の観点からは、基材フィルム11の厚みは、50μm以上が好ましく、より好ましくは80μm以上、さらに好ましくは100μm以上であり、上限側は、2mm以下が好ましく、より好ましくは1mm以下、さらに好ましくは500μm以下である。なお、ハードコート層21や印刷層41との接着性を向上させる観点から、必要に応じて、基材フィルム11表面にアンカー処理やコロナ処理等の各種公知の表面処理を行うこともできる。
【0026】
ハードコート層21は、基材フィルム11の表面硬度を高め、耐擦傷性や耐摩耗性を向上させ、基材フィルム11の表面平滑性を高める等の観点から設けられる膜である。本実施形態のハードコート層21は、上述した意匠性を具備させるため、硬化樹脂と、この硬化樹脂中に分散された着色剤とを少なくも含有するハードコード塗膜が用いられている。なお、本実施形態においては、基材フィルム11の一方の面11a上のみにハードコート層21を設けたものを例示したが、基材フィルム11の一方の面11a側及び他方の面11b側の双方にハードコート層を設けてもよい。
【0027】
ハードコート層21を構成する素材としては、公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。一般的には、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の公知の樹脂と着色剤とを少なくとも含有する樹脂組成物を硬化させる等した硬化物から構成することができる。
【0028】
熱可塑性樹脂及び熱硬化性樹脂としては、飽和又は不飽和のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、アクリルウレタン系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、エポキシアクリレート系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂、ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、セルロース系樹脂、アセタール系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
電離放射線硬化性樹脂としては、電離放射線(紫外線又は電子線)の照射によって硬化する光重合性プレポリマーを用いることができる。また、光重合性プレポリマーは単独でも使用可能であるが、架橋硬化性の向上や、硬化収縮の調整等、種々の性能を付与或いは向上させる観点から、光重合性モノマーを併用することが好ましい、さらに必要に応じて、光重合開始剤、光重合促進剤、増感剤(例えば、紫外線増感剤)等の助剤を用いてもよい。
【0030】
光重合性プレポリマーは、一般的に、カチオン重合型とラジカル重合型に大別される。カチオン重合型光重合性プレポリマーとしては、エポキシ系樹脂やビニルエーテル系樹脂などが挙げられる。エポキシ系樹脂としては、例えばビスフェノール系エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂等が挙げられる。ラジカル重合型光重合性プレポリマーとしては、アクリル系プレポリマー(硬質プレポリマー)が挙げられる。光重合性プレポリマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、1分子中に2個以上のアクリロイル基を有し、架橋硬化することにより3次元網目構造となるアクリル系プレポリマー(硬質プレポリマー)が、ハードコート性の観点から好ましい。
【0031】
アクリル系プレポリマーとしては、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート、メラミンアクリレート、ポリフルオロアルキルアクリレート、シリコーンアクリレート等が挙げられるが、これらに特に限定されない。アクリル系プレポリマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0032】
ウレタンアクリレート系プレポリマーとしては、ポリエーテルポリオールやポリエステルポリオールとポリイソシアネートの反応によって得られるポリウレタンオリゴマーを、(メタ)アクリル酸との反応でエステル化したものが挙げられるが、これに特に限定されない。ウレタンアクリレート系プレポリマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
ポリエステルアクリレート系プレポリマーとしては、多価カルボン酸と多価アルコールの縮合によって得られる両末端に水酸基を有するポリエステルオリゴマーの水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したもの、多価カルボン酸にアルキレンオキシドを付加して得られるオリゴマーの末端の水酸基を(メタ)アクリル酸でエステル化したものが挙げられるが、これらに特に限定されない。ポリエステルアクリレート系プレポリマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
エポキシアクリレート系プレポリマーとしては、比較的低分子量のビスフェノール型エポキシ樹脂やノボラックエポキシ樹脂のオキシラン環と、(メタ)アクリル酸との反応でエステル化したものが挙げられるが、これに特に限定されない。エポキシアクリレート系プレポリマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0035】
光重合性モノマーとしては、単官能アクリルモノマー(例えば2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート等)、2官能アクリルモノマー(例えば1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート等)、3官能以上のアクリルモノマー(例えばジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、トリメチルプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート等)等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの光重合性モノマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート、メタクリレートの双方を含む概念である。
【0036】
光重合開始剤としては、ラジカル重合型光重合性プレポリマーや光重合性モノマーに対しては、例えばアセトフェノン、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾイン、ベンジルメチルケタール、ベンゾイルベンゾエート、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-メチル-1-(4-(メチルチオ)フェニル)-2-(4-モルフォリニル)-1-プロパン、α-アシルオキシムエステル、チオキサンソン類等が挙げられるが、これらに特に限定されない。カチオン重合型光重合性プレポリマーに対する光重合開始剤としては、例えば芳香族スルホニウムイオン、芳香族オキソスルホニウムイオン、芳香族ヨードニウムイオンなどのオニウムと、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、ヘキサフルオロアンチモネート、ヘキサフルオロアルセネートなどの陰イオンとからなる化合物が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
光重合促進剤としては、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸エチルエステルなどが挙げられる。紫外線増感剤としては、n-ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルホスフィン等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらは1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0038】
これら助剤の配合量は、特に限定されないが、通常、上述した光重合性プレポリマー及び光重合性モノマーの合計100質量部に対して、0.2~10質量部の範囲内で適宜設定すればよい。
【0039】
或いは、ハードコート層21として、電離放射線硬化性有機無機ハイブリットハードコート剤(以下、単に「ハイブリットハードコート剤」とも称する。)の硬化膜を用いることもできる。ハイブリットハードコート剤としては、特に限定されないが、少なくとも表面に光重合反応性を有する感光性基が導入された反応性シリカ粒子(以下、単に「反応性シリカ粒子」とも称する。)を含むものが挙げられる。ここで、光重合反応性を有する感光性基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基に代表される重合性不飽和基等を挙げることができる。また、ハイブリットハードコート剤として、この反応性シリカ粒子の表面に導入された光重合反応性を有する感光性基と光重合反応可能な化合物、例えば、重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を含むものであってもよい。これらのハイブリットハードコート剤は、上述した反応性シリカ粒子や重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物を公知の溶剤と混合或いは溶解させた液状混合物として用いることができる。
【0040】
反応性シリカ粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、0.001~0.1μmであることが好ましく、より好ましくは0.001~0.01μmである。このような反応性シリカ粒子としては、例えば、母体となる粉体状シリカ或いはコロイダルシリカに対し、分子中に加水分解性シリル基、重合性不飽和基、下記一般式(1)で表わされる基及び(2)で表わされる基を有する化合物(以下、「重合性不飽和基修飾加水分解性シラン」とも称する。)が、シリルオキシ基を介して化学的に結合しているものを用いることができる。すなわち、重合性不飽和基修飾加水分解性シランが、加水分解性シリル基の加水分解反応によって、シリカ粒子との間に、シリルオキシ基を生成して化学的に結合しているようなものを、反応性シリカ粒子として用いることができる。なお、加水分解性シリル基としては、アルコキシリル基、アセトキシリル基等のカルボキシリレートシリル基、クロシリル基等のハロゲン化シリル基、アミノシリル基、オキシムシリル基、ヒドリドシリル基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。また、重合性不飽和基としては、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、ビニル基、プロペニル基、ブタジエニル基、スチリル基、エチニイル基、シンナモイル基、マレート基、アクリルアミド基等が挙げられるが、これらに特に限定されない。
【0041】
【化1】
(式中、Xは、-NH-、酸素原子又は硫黄原子を表し、Yは、酸素原子又は硫黄原子を表し、但し、Xが酸素原子のときYは硫黄原子である。)
【0042】
【化2】
【0043】
重合性不飽和基を有する不飽和有機化合物としては、分子中に2個以上の重合性不飽和基を有する多価不飽和有機化合物、或いは分子中に1個の重合性不飽和基を有する単価不飽和有機化合物等を挙げることができる。
【0044】
ここで、多価不飽和有機化合物としては、例えばエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0045】
また、単価不飽和有機化合物としては、例えばメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、メチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-メトキシプロピル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0046】
ハイブリットハードコート剤の硬化膜は、反応性シリカ粒子や光重合反応可能な化合物の他に、上述した光重合開始剤、光重合促進剤、増感剤(例えば、紫外線増感剤)等の助剤、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等を含有していてもよい。これらの好ましい素材や配合量については上述したとおりであるため、ここでの重複した説明は省略する。
【0047】
ハードコート層21の硬化樹脂中には、着色剤が分散されている。この着色剤は、スモークハードコートフィルム100のディスプレイ表示エリアDAの全光線透過率Tt(JIS K7361-1準拠)を所定範囲内に調整するためのものである。ここで用いる着色剤としては、所望性能に応じて公知の着色剤から適宜選択することができ、その種類は特に限定されない。着色剤は、1種単独で用いることができ、また2種以上を任意の組み合わせで用いることもできる。
【0048】
着色剤としては、全光線透過率や550nm反射率の調整容易性、ハードコート層21やスモークハードコートフィルム100の色を落ち着いた高級感のある暗色系(黒色系)に調整できる等の観点から、黒色粒子が好ましく用いられる。黒色粒子としては、例えば、マグネタイト系ブラック、銅・鉄・マンガン系ブラック、チタンブラック、カーボンブラック、アニリンブラック等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、黒色樹脂粒子、チタンブラック、カーボンブラック、アニリンブラックが好ましく、より好ましくはカーボンブラック、アニリンブラックである。カーボンブラックとしては、オイルファーネスブラック、ランプブラック、チャンネルブラック、ガスファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ケッチェンブラック等、各種公知の製法で作製されたものが知られているが、その種類は特に制限されない。導電性を付与し或いは静電気による帯電を防止する観点から、導電性カーボンブラックが特に好ましく用いられる。カーボンブラックの歴史は古く、例えば三菱化学株式会社、旭カーボン株式会社、御国色素株式会社、レジノカラー工業株式会社、Cabot社、DEGUSSA社等から、各種グレードのカーボンブラック単体及びカーボンブラック分散液が市販されており、要求性能や用途に応じて、これらの中から適宜選択すればよい。
【0049】
着色剤の粒子サイズは、全光線透過率や550nm反射率、分散性、製膜性、取扱性等の観点から、要求性能等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、平均粒子径D50が0.01~2.0μmであることが好ましく、より好ましくは0.05~0.1.0μm、さらに好ましくは0.08~0.5μmである。例えば、0.01~2.0μmの平均粒子径D50を有するカーボンブラック着色剤として好ましく用いられる。粒子サイズが大きな着色剤を用いると全光線透過率が低くなる傾向にあり、また、粒子サイズが小さな着色剤を用いると全光線透過率が高くなる傾向にある。なお、本明細書における平均粒子径D50とは、レーザー回折式粒度分布測定装置(例えば、島津製作所社:SALD-7000等)で測定される、体積基準のメジアン径(D50)を意味する。
【0050】
同様に、着色剤の含有量(総量)も、全光線透過率や550nm反射率、分散性、製膜性、取扱性等の観点から、要求性能等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、上述した他の必須成分及び任意成分との配合バランスの観点から、ハードコート層21に含まれる全樹脂成分100質量部に対する固形分換算で、1~15質量部が好ましく、より好ましくは1.5~14質量部、さらに好ましくは2~10質量部である。着色剤の使用量が多いと全光線透過率が低くなる傾向にある。
【0051】
また、防眩性を向上させる観点から、ハードコート層21は、上述した硬化樹脂及び着色剤以外に、多孔質シリカ等のシリカ類、アルミナ、タルク、クレイ、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、二酸化チタン、酸化ジルコニウム等のマット剤を含有していてもよい。マット剤を配合することにより、550nm反射率を調整でき、また、ハードコート層21やスモークハードコートフィルム100の色調(質感)を暗色系から透明系(クリア系)に調整することもできる。マット剤の粒子サイズは、全光線透過率や550nm反射率、分散性、製膜性、取扱性等の観点から、要求性能等に応じて適宜設定すればよく、特に限定されないが、平均粒子径D50が1~20μmが好ましく、より好ましくは1~15μm、さらに好ましくは2~10μmである。また、マット剤として、平均粒子径D50がナノノーダーサイズの小粒径のものを含んでいてもよい。マット剤の配合量は、必要に応じて適宜調整でき、特に限定されないが、ハードコート層21に含まれる全樹脂成分100質量部に対する固形分換算で、1~15質量部が好ましく、1~13質量部がより好ましく、1~10質量部がさらに好ましい。
【0052】
なお、ハードコート層21は、本発明の効果を過度に阻害しない程度であれば、各種添加剤を含有していてもよい。各種添加剤としては、表面調整剤、滑剤、蛍光増白剤、難燃剤、抗菌剤、防カビ剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤、可塑剤、レベリング剤、流動調整剤、消泡剤、分散剤、貯蔵安定剤、架橋剤、シランカップリング剤等が挙げられるが、これらに特に限定されない。滑剤としては、ポリエチレン、パラフィン、ワックス等の炭化水素系滑剤;ステアリン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等の脂肪酸系滑剤;ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド等のアミド系滑剤;ステアリン酸ブチル、ステアリン酸モノグリセリド等のエステル系滑剤;アルコール系滑剤;金属石鹸、滑石、二硫化モリブデン等の固体潤滑剤;シリコーン樹脂粒子、ポリテトラフッ化エチレンワックス、ポリフッ化ビニリデン等のフッ素樹脂粒子等が挙げられるが、これらに特に限定されない。これらの中でも、特に有機系滑剤が好ましく用いられる。また、バインダー樹脂として、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂を用いる場合には、例えばn-ブチルアミン、トリエチルアミン、トリ-n-ブチルホスフィン等の増感剤や紫外線吸収剤等を用いてもよい。これらの含有割合は、特に限定されないが、ハードコート層21中に含まれる全樹脂成分に対する固形分換算で、一般的にはそれぞれ0.01~5質量%であることが好ましい。
【0053】
ハードコート層21の厚みは、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、0.1~20μmが好ましく、より好ましくは0.5~15μm、さらに好ましくは2~12μmである。なお、ハードコート層21そのものの透光性は、上述したスモークハードコートフィルム100の全光線透過率を実現する観点から、その厚み方向からの垂直入射、すなわち入射角0°でのディスプレイ表示エリアDAの全光線透過率Tt(JIS K7361-1準拠)が0.5%以上75%未満に調整されていることが好ましい。
【0054】
また、ハードコート層21の表面硬度も、所望性能に応じて適宜設定することができ、特に限定されないが、好ましくはHB以上、より好ましくはF以上、さらに好ましくはH以上である。なお、本明細書において、ハードコート層21の表面硬度の値は、JIS-K5600(1999)に準拠した方法で測定した鉛筆引っかき値(鉛筆硬度)で表される値とする。
【0055】
ハードコート層21の製造方法は、当業界で公知の方法を用いることができ、特に限定されない。例えば、上述した硬化性樹脂を含む組成物(塗布液)を、基材フィルム11の一方の面11a側にドクターコート、ディップコート、ロールコート、バーコート、ダイコート、ブレードコート、エアナイフコート、キスコート、スプレーコート、スピンコート等の従来公知の塗布方法で塗布し、必要に応じて乾燥した後、硬化処理を行うことで基材フィルム11上にハードコート層21を設けることができる。ここで使用する塗布液は、常法にしたがい各種溶媒を配合することができる。溶媒としては、水;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のエーテル系溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール系溶剤、並びにこれらの混合溶媒等、当業界で公知のものを用いることができる。このように塗布された塗膜に、必要に応じて電離放射線処理、熱処理、及び/または加圧処理する等して硬化性樹脂を硬化させることにより、ハードコート層21を製膜することができる。
【0056】
また、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂、及び電離放射線硬化性有機無機ハイブリットハードコート剤よりなる群から選択される1種以上と着色剤とを少なくとも含有する組成物を基材フィルム11上に成型加工することにより、基材フィルム11上にハードコート層21が設けられた成型加工物としての積層体を得ることもできる。成型加工方法としては、公知の方法を適用することができ、特に限定されない。例えば、プレス成型、絞り加工成型、圧空成形、真空成型、インサート成形、フィルムインサート成形等の公知の成型方法を適用して、基材フィルム11上に硬化性組成物を供給し硬化させることで、成型加工物としての上記積層体を得ることができる。このとき、反射防止層31や印刷層41等も同様に成型加工することができ、或いは、基材フィルム11とハードコート層21の成型加工物の成型加工後に反射防止層31や印刷層41等を設けることもできる。一例を挙げると、基材フィルム11の一方の面11a上にハードコート層21を成膜し、必要に応じでハードコート層21上に反射防止層31をさらに成膜し、次いで、基材フィルム11の他方の面11b上に印刷層41を成膜し、得られた積層体(反射防止層31、ハードコート層21、基材フィルム11、及び印刷層41をこの順に有する例えば図3に示す積層体)をインサート成形する等して、所定形状に成形された成型加工物(例えば図4に示す一体化スモークハードコートフィルム成型加工物101)を得ることができる。このようにして従来公知の成型加工技術を適用することで、基材フィルム11上に少なくともハードコート層21及び印刷層41が成型加工された成型加工物(一体化スモークハードコートフィルム成型加工物)や、基材フィルム11上に少なくともハードコート層21、反射防止層31及び印刷層41が成型加工された成型加工物(一体化スモークハードコートフィルム成型加工物)等を得ることができる。なお、フィルムインサート成形等の成型加工を行う場合には、この印刷層41に代えて基材フィルム11の他方の面11b上に、或いは、印刷層41上に、成型用樹脂(成型用樹脂層51)が設けられていてもよい。
【0057】
電離放射線照射において使用する光源は、特に限定されない。例えば、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、中圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、電子線加速器等を用いることができる。また、このときの照射量も、使用する光源の種類や出力性能等に応じて適宜設定でき、特に限定されない、紫外線の照射量は、一般的には積算光量100~6,000mJ/cm程度が目安とされる。
【0058】
また、熱処理において使用する熱源も、特に限定されない。接触式及び非接触式のいずれであっても好適に使用することができる。例えば、遠赤外線ヒーター、短波長赤外線ヒーター、中波長赤外線ヒーター、カーボンヒーター、オーブン、ヒートローラ等を用いることができる。熱処理における処理温度は、特に限定されないが、一般的には80~200℃であり、好ましくは100~150℃である。
【0059】
反射防止層31は、可視光域において透明性を有し、且つ層界面による光の干渉作用を利用して反射光を打ち消し合う性能(以下、反射防止性という)を有する層である。このように反射防止層31をさらに設けることで、外光や外部影像の映り込みを防止乃至低減することができる。このような反射防止性を有する反射防止層31としては、透明性の高い低屈折率層を、特定波長(反射防止を目的とする主波長)に対して光学膜厚として特定波長の1/4と等しくなるような膜厚に設ける単層反射防止層の他、この低屈折率層に特定波長に基づいた光学膜厚の高屈折率層や中屈折率層を適宜一層以上積層した多層反射防止層が採用できる。なお、ここでいう光学膜厚とは、膜の屈折率nと機械的な膜厚dとの積ndによって求められる膜厚のことである。
【0060】
反射防止層31を構成する素材は、当業界で公知のものを用いることができ、その種類は特に限定されない。例えば、低屈折率層を構成する材料としては、Siの酸化物やLi、Na、Mg、Al、Ca等のフッ化物が知られている。また、高屈折率層を構成する材料としては、Ti、Cr、Zr、Ni、Mb等の単体やTi、Zn、Y、Zr、In、Sn、Sb、Hf、Ta、Ce、Pr、Nd等の酸化物が知られている。さらに、中屈折率層を構成する材料としては、La、Nd、Pb等のフッ化物が知られている。
【0061】
反射防止層31を形成する方法としては、上述した低、高或いは中屈折率層を構成する材料等を、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の真空成膜法により設ける方法が知られている。また、テトラエトキシシラン、テトラメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン等の珪素アルコキシドを加水分解して調製した酸化珪素ゾルや、ジルコニアプロポキシド、アルミニウムイソプロポキシド、チタンブトキシド、チタンイソプロポキシド等の珪素以外の金属アルコキシドを加水分解して調製した金属酸化物ゾル等を適宜選択して、ブレードコータ法、ロッドコータ法、グラビアコータ法などの塗布法により形成することもできる。さらに、フッ素含有樹脂、フッ素系高分子、アルコキシシラン加水分解物を利用したアルコキシシラン系樹脂等の反射防止塗料を塗布する液体塗布法により設ける方法も採用できる。
【0062】
反射防止層31の厚みは、可視光域の反射防止を好適に行うに際して、その構成中の低・高・中屈折率層の光学膜厚が0.01~0.8μm、好ましくは0.01~0.4μm範囲で適宜選択した低・高・中屈折率層を必要に応じて積層した厚みとすることができる。なお、反射を防止しようとする光の中心波長は可視光域となるので、λを一般的に可視光域といわれる波長の中心波長である550nmとし、無機薄膜として酸化珪素を用いた場合には屈折率nは1.40程度となるため、反射防止層の厚みdは約0.1μmとなる。
【0063】
基材フィルム11の面11b側に設けられた印刷層41は、美麗な外観イメージや識別性を与えるため等の目的で設けられるものであり、線、枠、文字、記号、模様、絵柄、商品名、説明等を表示する加飾層である。本実施形態の印刷層41としては、平面視で外周を囲うように、黒色枠状のインク層が設けられており、これにより、平面視で枠エリアFAとこの枠エリアFA内に配置されるディスプレイ表示エリアDAとの区画形成がなされている。印刷層41は、水性インク、油性インク、昇華性インク等を用いて、グラビア印刷、ロール印刷、スプレー印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷等の公知の印刷方法で形成することができる。印刷層41は、単色印刷であっても多色印刷であってもよく、また、スクリーン印刷でもベタ印刷でもよい。印刷層41の厚みは、常法にしたがい適宜調整することができ、特に限定されない。一般的には0.01~200μmが好ましく、より好ましくは0.05~150μm、さらに好ましくは0.1~100μmである。
【0064】
以上のとおり構成された、基材フィルム11及びハードコート層21が少なくともこの順に配列された積層構造を有する本実施形態のスモークハードコートフィルム100は、その厚み方向からの垂直入射、すなわち入射角0°でのディスプレイ表示エリアDAの全光線透過率(JIS K7361-1準拠)が0.5%以上75%未満に調整されている。このように全光線透過率が調整されたスモークハードコートフィルム100を発光型ディスプレイに取り付けることにより、特にディスプレイ消灯時において、平面視でディスプレイ表示エリアDAとその周囲の枠エリアFA等との色調及び質感を近似させることができる。
【0065】
スモークハードコートフィルム100のディスプレイ表示エリアDAの全光線透過率は、0.5%以上75%未満の範囲内で、被着体となる発光型ディスプレイの種類やディスプレイ輝度に応じて、また所望性能に応じて、適宜調整すればよい。スモークハードコートフィルム100の上記全光線透過率は、例えば、使用する着色剤の種類及び使用量、使用するマット剤の種類及び使用量等を変更することで調整可能である。なお、本明細書において、スモークハードコートフィルム100の全光線透過率は、ヘーズメーター(例えば、NDH4000(日本電色工業社製))で測定される値を意味する。
【0066】
スモークハードコートフィルム100の被着体となる表示装置200は、本実施形態においては、発光型ディスプレイである液晶ディスプレイを備え、図1の平面視で示すとおり、スモークハードコートフィルム100が設けられた際に、枠エリアFA内にディスプレイ表示エリアDAが配置される構成となっている。この液晶ディスプレイは、バックライト、導光板、拡散板、液晶層、配向膜、透明電極、カラーフィルタ、及び偏光板等(いずれも図示せず)を備える液晶ディスプレーモジュールである。なお、本実施形態では、粘着層Aを介してディスプレイD上にスモークハードコートフィルム100が設けられた態様を示したが、粘着層Aは必須構成ではなく、ディスプレイD上にスモークハードコートフィルム100を直接設けることができる。また、粘着層Aを設ける場合には、スモークハードコートフィルム100の裏面側及びディスプレイDの表面側の全面に粘着層Aを設けてもよいし、スモークハードコートフィルム100の裏面側及びディスプレイDの表面側の一部のみに粘着層Aを設けてもよい。
【0067】
そして本実施形態の画像表示装置300は、スモークハードコートフィルム100がディスプレイ表面に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時のディスプレイ表示エリアDAのSCI方式における550nm反射率(RDA)とディスプレイ周囲の枠エリアFAとの同550nm反射率(RFA)との差(|RDA-RFA|)が5%以下とされている。このように550nm反射率の差(|RDA-RFA|)が5%以下とした本実施形態の画像表示装置300は、外方から見た際に、特にディスプレイ消灯時において、ディスプレイ表示エリアDAとその周囲の枠エリアFAとの色調及び質感が近似した、一体感(統一感)のある意匠性を実現している。これはすなわち、発光型ディスプレイのディスプレイ表示エリアDAは、スモークハードコートフィルム100が未設置の状態では、ディスプレイ消灯時のSCI方式における550nm反射率(RDA)が一般的には7~20%程度以上であり、枠エリアFAの同550nm反射率(RFA)と大きく相違していたため、意匠性が損なわれていたことに起因する。かかる観点から、本実施形態のスモークハードコートフィルム100は、スモークハードコートフィルム100が未設置の状態でディスプレイ消灯時のSCI方式における550nm反射率(RDA)が少なくとも5%超である発光型ディスプレイに使用する際に殊に有効なものとなる。上記の550nm反射率の差(|RDA-RFA|)は、5%以下であれば高い意匠性が得られるが、より高い意匠性を得る観点から、4%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。なお、本明細書において、550nm反射率(RDA)及び550nm反射率(RFA)は、分光測色計(例えばCM-700d(コニカミノルタ社製)でSCI方式にて測定される値を意味する。
【0068】
より高い意匠性を得る観点から、本実施形態の画像表示装置300においては、スモークハードコートフィルム100がディスプレイ表面に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時のディスプレイ表示エリアDAのSCI方式における550nm反射率(RDA)が6%以内であることが好ましく、5%以下が好ましく、4%以下がより好ましい。このとき、スモークハードコートフィルム100がディスプレイ表面に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時の枠エリアFAのSCI方式における550nm反射率(RFA)は5%以内であることが好ましく、4%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。
【0069】
一方、ピアノブラック調や黒色メタル調等の、黒色系の内装材や外装材と調和させて高級感を高める観点から、ディスプレイ表面に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時のディスプレイ表示エリアDAのSCI方式におけるXYZ表色系の反射率XDA値,同YDA値,同ZDA値と、ディスプレイ周囲の枠エリアFAの同反射率XFA値,YFA値,ZFA値の差(|XDA値-XFA値|、|YDA値-YFA値|、|ZDA値-ZFA値|)が、いずれも5%以内であることが好ましい。このようにスモーク調に構成することにより、ピアノブラック調や黒色メタル調等の、黒色系の内装材や外装材が多用されている高級志向の車載用途やシアタールーム用途等に、特に意匠性が高められたものとなる。上記の反射率の差(|XDA値-XFA値|、|YDA値-YFA値|、|ZDA値-ZFA|値は、4%以下がより好ましく、3%以下がさらに好ましい。なお、本明細書において、XYZ表色系の反射率は、JIS Z 8720:2012に準拠し、CIE標準イルミナントD65を使用し、分光測色計(例えばCM-700d(コニカミノルタ社製)でSCI方式にて測定される値を意味する。
【0070】
より高い意匠性を得る観点から、本実施形態の画像表示装置300においては、スモークハードコートフィルム100がディスプレイ表面に設けられた状態において、ディスプレイ表示エリアDAのSCI方式におけるXYZ表色系の反射率XDA値,同YDA値,同ZDA値(JIS Z 8720:2012準拠、CIE標準イルミナントD65を使用。)が6%以内であることが好ましく、5%以下がより好ましく、4%以下がさらに好ましい。このとき、スモークハードコートフィルム100がディスプレイ表面に設けられた状態において、ディスプレイ消灯時の枠エリアFAのSCI方式における同反射率XFA値,YFA値,ZFA値550nmは5%以内であることが好ましく、4%以下が好ましく、3%以下がより好ましい。
【0071】
なお、本実施形態では、表示装置200として液晶ディスプレイ(LCD)を用いた例を示したが、上述したスモークハードコートフィルム100は、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OELD又はIELD)等の発光型ディスプレイを備える表示装置においても同様に適用可能であり、また、同様の作用効果が得られる。
【0072】
図5に、図3と同等構造を有するスモークハードコートフィルム100、これを用いてフィルムインサート成形した図4と同等構造を有する一体化スモークハードコートフィルム成型加工物101、及びこの一体化スモークハードコートフィルム成型加工物101を用いた画像表示装置300における、ディスプレイ表示エリアDAの全光線透過率、ディスプレイ表示エリアDA及び枠エリアFAの550nm反射率、並びにディスプレイ表示エリアDA及び枠エリアFAのXYZ表色系の反射率等の実測データの一例を示す。ここでは、着色剤として250nmの平均粒子径D50を有するカーボンブラックを、マット剤として5μmの平均粒子径D50を有するシリカをそれぞれ用いた。なお、図中において「phr」は、ハードコート層22中に含まれる全樹脂成分100質量部に対する固形分換算の質量部を示す。
【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明は、発光型ディスプレイを備える画像表示装置において、ディスプレイの表示エリアとその周囲の枠エリア等との意匠性の統一感を高め得る新たな設計思想を提供するものであり、ブラウン管(CRT)、プラズマディスプレイ(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(OELD又はIELD)等の発光型ディスプレイのハードコートフィルムとして、広く且つ有効に利用可能であり、とりわけ、ピアノブラック調や黒色メタル調等の、黒色系の内装材や外装材が多用されている高級志向の車載用途やシアタールーム用途等において、殊に有効に利用可能である。
【符号の説明】
【0074】
11 ・・・基材フィルム
11a・・・面
11b・・・面
21 ・・・ハードコート層
31 ・・・反射防止層
41 ・・・印刷層
51 ・・・成型用樹脂層
100 ・・・スモークハードコートフィルム
101 ・・・一体化スモークハードコートフィルム成型加工物
200 ・・・表示装置
300 ・・・画像表示装置
A ・・・粘着層
D ・・・ディスプレイ
DA ・・・ディスプレイ表示エリア
F ・・・枠
FA ・・・枠エリア
図1
図2
図3
図4
図5