(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】位置検出器用カップリング
(51)【国際特許分類】
H02K 11/21 20160101AFI20230809BHJP
F16D 3/79 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
H02K11/21
F16D3/79 A
(21)【出願番号】P 2019110849
(22)【出願日】2019-06-14
【審査請求日】2022-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000149066
【氏名又は名称】オークマ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川村 聡一
(72)【発明者】
【氏名】林 康一
【審査官】一ノ瀬 薫
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-503669(JP,A)
【文献】米国特許第6826839(US,B2)
【文献】特開2016-226090(JP,A)
【文献】特開平8-284971(JP,A)
【文献】実開平7-11875(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 11/21
F16D 3/79
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検出対象の固定部と位置検出器の固定部とを結合するための位置検出器用カップリングであって、
成形加工されたリング状の薄板と、
第1および第2の厚板と、
タップ加工された第3および第4の厚板と、
を備え、
前記薄板は、前記リング状の中心に対して互いに対向する位置に第1の曲げ部および第2の曲げ部が対として配設されるとともに、前記中心に対して対向する位置に第3の曲げ部および第4の曲げ部が対として配設され、
前記第1の曲げ部および前記第2の曲げ部には、それぞれ周の接線方向に間隔を置いて2つの支持点が配設され、前記第3の曲げ部および前記第4の曲げ部には、それぞれ周の接線方向に間隔をおいて2つの支持点が配設され、
前記第1の曲げ部および前記第2の曲げ部それぞれの前記2つの支持点は、前記位置検出器の固定部と締結され、
前記第1の厚板及び前記第2の厚板は、前記薄板の面に直交する方向に屈曲した屈曲形状をなし、前記薄板の面に直交する方向に屈曲した部分には、それぞれ周の接線方向に間隔を置いて2つの支持点が配設され、
前記第3の曲げ部の前記2つの支持点には、前記第1の厚板の前記2つの支持点を挟み込むようにタップ加工された前記第3の厚板がボルト固定され
て前記リング状の中心から半径方向の外側に向かって順次前記第3の厚板、前記第1の厚板、前記第3の曲げ部が配置され、前記第4の曲げ部の前記2つの支持点には、前記第2の厚板の前記2つの支持点を挟み込むようにタップ加工された前記第4の厚板がボルト固定されて
前記リング状の中心から半径方向の外側に向かって順次第4の厚板、前記第2の厚板、前記第4の曲げ部が配置され、
前記第1の厚板および前記第2の厚板
の前記屈曲形状のうち前記薄板の面内の部分には、さらに、前記検出対象にボルト固定されるリングとの締結穴が配設される
ことを特徴とする位置検出器用カップリング。
【請求項2】
請求項1に記載の位置検出器用カップリングであって、
前記第3の厚板および前記第4の厚板は、薄板、第1の厚板、第2の厚板に比べて厚く設定される
ことを特徴とする位置検出器用カップリング。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の位置検出器用カップリングであって、
前記第1の厚板および前記第2の厚板は前記薄板に対して厚く設定される
ことを特徴とする位置検出器用カップリング。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の位置検出器用カップリングであって、
前記第3の曲げ部および前記第4の曲げ部それぞれの前記2つの支持点は、前記第1の厚板および前記第2の厚板それぞれの前記2つの支持点よりも外側に配置される
ことを特徴とする位置検出器用カップリング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工作機械等に用いられる位置検出器に内蔵されるカップリングに関する。
【背景技術】
【0002】
位置検出器用カップリングは、モータ等の検出対象の固定部と位置検出器の固定部とを締結するために用いられる。位置検出器用カップリングの機能は、回転軸の軸振れ量を吸収することにより、発生する誤差を低減させたり、回転軸からの振動・衝撃等を吸収することにより、位置検出器の軸受や処理回路基板等を保護することである。このように振動や衝撃を吸収するための弾性が求められる一方で、回転方向に対しては、検出誤差を排除するために、また、共振周波数をより高くするために、高い剛性が求められる。
【0003】
【0004】
カップリングは、成形加工された1枚の板と2つのブロックから構成され、支持点120,130と、支持点320,330は位置検出器の固定部にボルトで固定され、支持点220,230と支持点420,430は2つのブロック900,100とボルトで固定され、2つのブロック900,100は検出対象の固定部側のリングの穴600,800にボルトで固定され、穴500,700は検出対象の固定部にボルトで固定される。
【0005】
このカップリングには中心に対して対向する位置に曲げ部110と310、曲げ部210と410が配置されている。曲げ部から周の接線方向に間隔を置いた位置にそれぞれ2点の支持点120,130,220,230,320,330,420,430を配置する。これにより、z軸周りの回転力が働いた場合に曲げ部のそれぞれの支持点120,130,220,230,320,330,420,430は曲げ部110,210,310,410を主に板の圧縮、または、引張り方向の力で支えるため、高い剛性が得られる。また、曲げ部110,210,310,410に対して、その支持点120,130,220,230,320,330,420,430が間隔を置いて配置されることにより、x方向の変位に対して、曲げ部110,310は支持点120,130,320,330に対して板厚方向に変位し、y方向の変位に対して、曲げ部210,410は支持点220,230,420,430に対して板厚方向に変位することになるため、それぞれ弾性的に支持される。
【0006】
また、2つのブロック900,100はボルト固定部周辺をz方向に厚くすることで、支持点220,230,420,430を強固に支えるため、z軸周りの回転力に対して高い剛性が得られる。
【0007】
なお、特許文献1には、被検出部が装着されたエンコーダ回転軸と、検出部が装着されたハウジング筐体と、検出部にて検出した信号をエンコーダ回転情報へ処理する回路基板と、被検出部と検出部とが空隙を介して対向配置するべく、エンコーダ回転軸を回転自在に軸支するエンコーダ軸受と、ハウジング筐体と固定子とを結合する板ばね状のカップリングとを備えるエンコーダ内蔵モータが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
図3に示す従来のカップリングでは、z軸周りの回転力が働いた場合に曲げ部のそれぞれの支持点120,130,220,230,320,330,420,430を強固に支えるためには、2つの剛性の高いブロック900,100が必要であり、剛性を高くするために穴600,800にボルト固定する周辺部が肉厚である必要がある。そのため、モータ等の検出対象側の取付部が狭小でボルト固定部周辺に干渉物があるような場合には取り付けできない問題があった。
【0010】
また、支持点220,230,420,430へのボルト固定時に内側から外側に向かって工具で締め付けるため、作業性が悪かった。
【0011】
さらに、ボルト固定部周辺を肉厚にした部分の内側に曲げ部210,410を配置する必要があるため、z軸周りの回転力に対して支える腕の長さを制限され、剛性を高めるための妨げになっていた。
【0012】
位置検出器用カップリングは、取付時にz軸周りの回転方向に高い位置決め精度を要するため、2つの剛性の高いブロック900,100は成形加工のみでは穴精度不足となり、ネジ穴も必要であることから、フライス加工、タップ加工等の除去加工が必要であり、部品コストが高かった。
【0013】
本発明は、これらの課題に鑑みなされたものであり、検出対象の固定部と位置検出器の固定部とを軸方向と半径方向に弾性的で、かつ捩じり剛性が高く、しかも低コストで作業性に優れる位置検出器用カップリングを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、検出対象の固定部と位置検出器の固定部とを結合するための位置検出器用カップリングであって、成形加工されたリング状の薄板と、第1および第2の厚板と、タップ加工された第3および第4の厚板と、を備え、前記薄板は、前記リング状の中心に対して互いに対向する位置に第1の曲げ部および第2の曲げ部が対として配設されるとともに、前記中心に対して対向する位置に第3の曲げ部および第4の曲げ部が対として配設され、前記第1の曲げ部および前記第2の曲げ部には、それぞれ周の接線方向に間隔を置いて2つの支持点が配設され、前記第3の曲げ部および前記第4の曲げ部には、それぞれ周の接線方向に間隔をおいて2つの支持点が配設され、前記第1の曲げ部および前記第2の曲げ部それぞれの前記2つの支持点は、前記位置検出器の固定部と締結され、前記第1の厚板及び前記第2の厚板は、前記薄板の面に直交する方向に屈曲した屈曲形状をなし、前記薄板の面に直交する方向に屈曲した部分には、それぞれ周の接線方向に間隔を置いて2つの支持点が配設され、前記第3の曲げ部の前記2つの支持点には、前記第1の厚板の前記2つの支持点を挟み込むようにタップ加工された前記第3の厚板がボルト固定されて前記リング状の中心から半径方向の外側に向かって順次前記第3の厚板、前記第1の厚板、前記第3の曲げ部が配置され、前記第4の曲げ部の前記2つの支持点には、前記第2の厚板の前記2つの支持点を挟み込むようにタップ加工された前記第4の厚板がボルト固定されて前記リング状の中心から半径方向の外側に向かって順次第4の厚板、前記第2の厚板、前記第4の曲げ部が配置され、前記第1の厚板および前記第2の厚板の前記屈曲形状のうち前記薄板の面内の部分には、さらに、前記検出対象にボルト固定されるリングとの締結穴が配設されることを特徴とする。
【0015】
本発明の1つの実施形態では、前記第3の厚板および前記第4の厚板は、薄板、第1の厚板、第2の厚板に比べて厚く設定される。
【0016】
本発明の他の実施形態では、前記第1の厚板および前記第2の厚板は前記薄板に対して厚く設定される。
【0017】
本発明のさらに他の実施形態では、前記第3の曲げ部および前記第4の曲げ部それぞれの前記2つの支持点は、前記第1の厚板および前記第2の厚板それぞれの前記2つの支持点よりも外側に配置される。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ボルト周辺部の外形寸法を小型化して狭小スペースにおいても干渉を避けることができる。また、高コストな加工を要する従来の部品、具体的には
図3に示す従来のカップリングにおけるブロック900,100に相当する部品を第1~第4の厚板に置き換えることができ、コストダウンできる。加えて、第3の曲げ部と第1の厚板および第2の厚板、第4の曲げ部と第1の厚板および第2の厚板とをボルト固定する際に、外側から工具で締め付けることができるため、作業性が改善する。さらに、限られた寸法の中で第3の曲げ部と第4の曲げ部をより半径方向の外側へ配置することができ、薄板の面内で直交する2軸をx軸およびy軸とし、これらに直交する軸をz軸とした場合に、z軸周りの回転力に対して支える腕の長さを長くすることができるため、より高い剛性が得られ、また、z軸方向の変位に対しても支える腕の長さが長くなることで、より弾性的に支持し得る。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態である位置検出器用カップリングの全体を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態である位置検出器用カップリングの構造の一部を説明するための図である。
【
図3】従来の位置検出器用カップリングの全体を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本実施形態に係る位置検出器用カップリングの全体図を
図1に、その一部詳細図を
図2に示す。
【0021】
まず、
図1をもとに、位置検出器用カップリングの構成を説明する。
【0022】
本実施形態による位置検出器用カップリングは、成形加工された薄板10と厚板50,60と2箇所タップ加工された厚板70,80を備えて構成される。薄板10はリング状であり、その面内において直交する2軸をx軸およびy軸、これらに直交する軸をz軸とした場合に、z軸方向に曲げ部11,31および21,41が形成される。曲げ部11,31は、リング状の中心に対して対向する位置に対をなすように形成され、それぞれ第1の曲げ部および第2の曲げ部として機能する。また、曲げ部21,41は、リング状の中心に対して対向する位置に対をなすように形成され、それぞれ第3の曲げ部および第4の曲げ部として機能する。曲げ部11,31の配置位置と、曲げ部21,41の配置位置は、略90度をなすように配置される。
【0023】
曲げ部11には周の接線方向に間隔をおいて2つの支持点12,13が形成され、曲げ部31にも周の接線方向に間隔をおいて2つの支持点32,33が形成される。曲げ部11の支持点12,13と、曲げ部31の支持点32,33は、それぞれ位置検出器の固定部にボルト固定される。
【0024】
曲げ部21には周の接線方向に間隔をおいて2つの支持点22,23が形成され、曲げ部41にも周の接線方向に間隔をおいて2つの支持点42,43が形成される。
【0025】
厚板50はz軸方向に屈曲した屈曲形状をなし、z軸方向に屈曲した部分に間隔をおいて2つの支持点52,53が形成され、厚板60もz軸方向に屈曲した屈曲形状をなし、z軸方向に屈曲した部分に間隔をおいて2つの支持点62,63が形成される。厚板50は第1の厚板として機能し、厚板60は第2の厚板として機能する。
【0026】
また、厚板70、80は、既述したように2箇所においてタップ加工されており、厚板70は第3の厚板として機能し、厚板80は第4の厚板として機能する。
【0027】
曲げ部21の支持点22,23は、厚板50の支持点52,53を挟むように厚板70のタップ加工を用いて厚板70にボルト固定される。また、曲げ部41の支持点42,43は、厚板60の支持点62,63を挟むように厚板80のタップ加工を用いて厚板80にボルト固定される。すなわち、曲げ部21に関しては、リンク状の中心から半径方向の外側に向かって順次、厚板70、厚板50、曲げ部21が配置され、曲げ部41に関しては、リング状の中心から半径方向の外側に向かって順次、厚板80、厚板60、曲げ部41が配置される。
【0028】
屈曲形状の厚板50のx-y平面内の部位には締結穴51が形成され、同様に厚板60のx-y平面内の部位には締結穴61が形成される。厚板50は、位置検出器の検出対象の固定部側のリング90に締結穴51でボルト固定される。また、厚板60は、リング90に締結穴61でボルト固定される。すなわち、カップリングの厚板50,60を検出対象の固定部のリング90にボルト固定し、カップリングの曲げ部11,31を位置検出器の固定部にボルト固定することで、検出対象の固定部と位置検出器の固定部とを結合する。
【0029】
本実施形態のカップリングでは、z軸周りの回転力が働いた場合に曲げ部11と31、曲げ部21と41のそれぞれの支持点12,13,32,33,22,23,42,43は、曲げ部11と31、曲げ部21と41を主に板の圧縮、または、引張り方向の力で支えるため、高い剛性が得られる。
【0030】
また、曲げ部11と31、曲げ部21と41に対して、支持点12,13,32,33,22,23,42,43が間隔を置いて配置されることにより、x方向の変位に対して、曲げ部11と31は支持点12,13,32,33に対して板厚方向に変位し、y方向の変位に対して、曲げ部21と41は支持点22,23,42,43に対して板厚方向に変位することになるため、それぞれ弾性的に支持される。
【0031】
また、曲げ部11と31、曲げ部21と41が間隔を置いて配置されることにより、z方向の変位に対して、曲げ部11と31は、曲げ部21と41に対して板厚方向に変位することになるため、弾性的に支持される。
【0032】
さらに、
図2のように厚板60の支持点62,63を曲げ部41の両脇に差し込むように通し、曲げ部41の支持点42,43と厚板80で挟み込んでボルトで固定するような構造にし、その対角側である厚板50、曲げ部21、および厚板70についても同様の構造にすることで、限られた寸法の中で曲げ部41,21をより半径方向に外側へ配置することができ、z軸周りの回転力に対して支える腕の長さを長くすることができるため、より高い剛性が得られ、また、z方向の変位に対しても支える腕の長さが長くなることで、より弾性的に支持することができる。
【0033】
ここで、2カ所タップ加工された厚板70,80は、位置検出器にz軸周りの回転力が加わった際に薄板10と厚板50,60の各支持点22と52、23と53、42と62、43と63が曲げ部21,41を支点にして+y方向、-y方向に捻じれるように倒れる変位を抑えるように、薄板10、厚板50,60に比べて十分厚く、各厚板に2カ所ずつタップ加工されており、厚板1個で捻じれるように倒れる2つの支点の組をボルトで固定できる。
【0034】
また、厚板50,60は、位置検出器にz軸周りの回転力が加わった際に薄板10と厚板50,60の各支持点22と52、23と53、42と62、43と63が締結穴51,61を支点にy軸周りに回転する変位を抑えるように、薄板10に対して十分厚く設定される。
【0035】
本実施形態のカップリングによれば、検出対象の固定部と位置検出器の固定部とを軸方向と半径方向に弾性的で、かつ捩じり剛性の高い結合を得ることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 薄板、11,21,31,41,110,210,310,410 曲げ部、50,60 厚板、70,80 タップ加工された厚板、90 リング、100,900 ブロック、51,61 締結穴、91,92,500,600,700,800 穴、12,13,22,23,32,33,42,43,52,53,62,63,120,130,220,230,320,330,420,430 支持点。