(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】PC板組立装置
(51)【国際特許分類】
E21D 11/40 20060101AFI20230809BHJP
【FI】
E21D11/40 B
(21)【出願番号】P 2019127450
(22)【出願日】2019-07-09
【審査請求日】2022-05-20
(73)【特許権者】
【識別番号】391023518
【氏名又は名称】一般社団法人日本建設機械施工協会
(73)【特許権者】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】真下 英人
(72)【発明者】
【氏名】安井 成豊
(72)【発明者】
【氏名】寺戸 秀和
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正憲
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 竜之介
(72)【発明者】
【氏名】末田 将大
(72)【発明者】
【氏名】夏目 岳洋
(72)【発明者】
【氏名】川井 貴史
【審査官】荒井 良子
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-208095(JP,A)
【文献】特開平02-171499(JP,A)
【文献】特開2003-336499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のPC板をトンネルの内側に周方向に配置してアーチ状に組み立てるPC板組立装置であって、
前記トンネルの内壁に沿うアーチ状のガイドレールを有して前記トンネルの延長方向へ移動可能な走行架台と、
前記ガイドレール上を走行可能な台車と、
前記台車に設けられ
、前記台車に対して遠近可能で、かつ、前記トンネルの延長方向を軸に旋回可能
であって、前記PC板のピックアップと保持とが可能な保持装置とを備えた
ことを特徴とするPC板組立装置。
【請求項2】
複数のPC板をトンネルの内側に周方向に配置してアーチ状に組み立てるPC板組立装置であって、
前記トンネルの内壁に沿うアーチ状のガイドレールを有して前記トンネルの延長方向へ移動可能な走行架台と、
前記ガイドレール上を走行可能な台車と、
前記PC板を保持可能な保持装置と、
前記保持装置を旋回駆動する旋回モータと、
前記旋回モータと前記台車との間に設けられて前記旋回モータを前記台車に対して遠近駆動させる油圧シリンダとを備えた
ことを特徴とす
るPC板組立装置。
【請求項3】
前記保持装置を前記台車に対してヨー方向、ピッチ方向および前後方向へ駆動する駆動装置を備えた
ことを特徴とする請求項1
または2に記載のPC板組立装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、PC板組立装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル内壁の表面処理(ライニング)を行う工法には、トンネルの延長方向に連続して設置されるアーチ状に組み立てた複数の円弧状のPC(プレキャストコンクリート)板をトンネル覆工として用いる工法がある。
【0003】
このような工法では、PC板の長手方向の両端に設けられた継ぎ手によってアーチ状に複数のPC板を組み合わせてトンネルの側壁に固定する。順次、アーチ状に組み合わせたPC板をトンネルの延長方向に設置しつつ、トンネルの延長方向で隣り合うPC板同士を継ぎ手によって連結する。
【0004】
より具体的には、PC板を組み立てるPC板組立装置を利用してPC板をアーチ状に組み立てつつトンネル内にトンネル覆工を設置する。PC板組立装置は、たとえば、アーチ状のガイド枠を備えた架台と、アーチ状のガイド枠上を走行する複数の台車と、トンネルの延長方向に対して横切る方向へ水平移動可能な移動体と、PC板を移動体へ運搬するホイストとを備えている。
【0005】
PC板組立装置は、まず、ホイストで移動体へPC板を運搬して移動体にPC板を仮保持させたのち、移動体をトンネル内壁側へ移動させる。移動体は、台車が移動するレールとは異なるレール上を移動し、トンネル内壁至近まで移動すると起立してPC板をほぼ垂直な姿勢に維持する。そして、移動体から一つの台車へPC板を移してこの台車にPC板を支持させた後、台車を駆動してPC板をトンネルの右或いは左のいずれか一方の側壁近傍に移動させて、PC板をトンネル内周面に沿って起こした状態で側壁に固定する。
【0006】
次に、PC板組立装置は、次のPC板を先程の要領で移動体を利用して別の台車に支持させた後、別の台車を駆動して側壁に一端が固定されたPC板の隣に次のPC板を配置し、PC板同士を継ぎ手によって連結する。
【0007】
このような手順を繰り返して、PC板組立装置は、四つのPC板を順次連結してアーチ状に組み立て終わると、架台をトンネル前方へ移動させて、既に組み立てられたPC板の隣にPC板をアーチ状に組み立てる(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このようなPC板組立装置では、トンネルの周方向に列をなしてアーチ状に組み立てられるPC板の数に応じた台車が必要となるので、列をなすPC板の数が台車の数を上回るとPC板を組立できずトンネル覆工の施工ができない。
【0010】
また、PC板組立装置は、複数の台車が必要となるだけでなく、台車にPC板を取り付けるための移動体と、移動体にPC板を運搬するためのホイストといったPC板を運搬するための設備も必要であり、構造が複雑で高コストとなってしまう。
【0011】
そこで、本発明は、トンネルの周方向にて列をなすPC板の数によらずPC板の組み立てが可能であって、構造が簡単で安価なPC板組立装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するため、本発明のPC板組立装置は、複数のPC板をトンネルの内側に周方向に配置してアーチ状に組み立てるPC板組立装置であって、トンネルの内壁に沿うアーチ状のガイドレールを有してトンネルの延長方向へ移動可能な走行架台と、ガイドレール上を走行可能な台車と、台車に設けられ台車に対して遠近可能で、かつ、トンネルの延長方向を軸に旋回可能であってPC板のピックアップと保持とが可能な保持装置とを備えて構成されている。
【0013】
このように構成されたPC板組立装置は、台車に設けられた保持装置が台車に対して遠近可能でかつ旋回可能であるので、平積みされたPC板に保持装置を対向させてPC板を拾って、台車を走行させてPC板をトンネル内の所望する位置まで運搬して、PC板を組み立てることができる。
【0014】
また、PC板組立装置は、保持装置を台車に対してヨー方向、ピッチ方向および前後方向へ駆動する駆動装置を備えていてもよい。このように構成されたPC板組立装置によれば、PC板のピックアップやPC板の連結の際にPC板の姿勢を駆動装置で微調整できるので、PC板の組み立て作業がより一層容易となる。
【0015】
また、本発明の他のPC板組立装置は、複数のPC板をトンネルの内側に周方向に配置してアーチ状に組み立てるPC板組立装置であって、トンネルの内壁に沿うアーチ状のガイドレールを有してトンネルの延長方向へ移動可能な走行架台と、ガイドレール上を走行可能な台車と、PC板を保持可能な保持装置と、保持装置を旋回駆動する旋回モータと、旋回モータと台車との間に設けられて旋回モータを前記台車に対して遠近駆動させる油圧シリンダとを備えて構成されている。このように構成されたPC板組立装置によれば、旋回モータでキャッチャーの全体を旋回させる必要がなく、旋回モータの負担を小さくできるとともに旋回モータを小型にでき、小型で大荷重の出力に有利な油圧シリンダでキャッチャーの全体を台車に対して遠近させるので、キャッチャーの小型化と重量の軽減とが図れる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のPC板組立装置によれば、トンネルの周方向にて列をなすPC板の数によらずPC板の組み立てが可能であり、構造が簡単となり安価となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施の形態におけるPC板組立装置の側面図である。
【
図2】一実施の形態におけるPC板組立装置の正面図である。
【
図3】一実施の形態におけるPC板組立装置の斜視図である。
【
図4】一実施の形態におけるPC板組立装置の台車およびキャッチャーの拡大側面図である。
【
図5】一実施の形態におけるPC板組立装置の台車およびキャッチャーの拡大斜視図である。
【
図6】PC板を保持するために台車をPC板の近傍に移動した状態における一実施の形態におけるPC板組立装置の正面図である。
【
図7】PC板を保持する動作を行う一実施の形態におけるPC板組立装置の正面図である。
【
図8】PC板を保持した一実施の形態におけるPC板組立装置の正面図である。
【
図9】PC板の組み立て作業を行う一実施の形態におけるPC板組立装置の正面図である。
【
図10】次のPC板の組み立て作業を行う一実施の形態におけるPC板組立装置の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。本実施の形態におけるPC板組立装置1は、
図1から
図3に示すように、トンネルTの内壁に沿うアーチ状のガイドレール2,2を有してトンネルTの延長方向へ移動可能な走行架台Fと、ガイドレール2,2上を走行可能な台車Wと、台車Wに設けられてPC板Bを保持する保持装置Aとを備えて構成されている。本実施の形態のトンネル覆工は1列で6個のアーチ状に組み立てられるPC板Bで構成されており、本実施の形態のPC板組立装置1は、6個のPC板BをトンネルTの内側に周方向に列をなすように接続してアーチ状に組み立てる。
【0019】
なお、トンネルTの延長方向において、PC板組立装置1の走行架台Fから見て保持装置Aが配置される方を後側とし、保持装置Aが配置されていない方を前側としている。
【0020】
以下、PC板組立装置1の各部について詳細に説明する。走行架台Fは、トンネルTの前後方向に平行配置されるアーチ状(円弧状)の一対のガイドレール2,2と、ガイドレール2,2間に掛け渡されてガイドレール2同士を連結する複数の梁3と、各ガイドレール2,2の両端に設けられた脚4と、各脚4の下端に回転自在に取り付けられる走行輪5と、各ガイドレール2,2の両端に設けたアウトリガー6とを備えて構成されている。
【0021】
ガイドレール2は、
図3および
図4に示すように、円弧状の内周フランジ2aと、内周フランジ2aの外周側に配置されて内周フランジ2aに対向する円弧状の外周フランジ2bと、内周フランジ2aと外周フランジ2bとを接続する円弧状のウェブ2cとを備えるとともに、外周フランジ2bの外周に設けたチェーンラック2dと、内周フランジ2aの内側に設けられた補強材としての門型フレーム2eとを備えている。そして、ガイドレール2,2は、複数の梁3によって互いに連結されている。
【0022】
ガイドレール2,2のそれぞれの両端には、下端に走行輪5を備えた脚4が取り付けられている。ガイドレール2,2の
図1中左方の走行輪5は、トンネルTの延長方向に沿って互いに平行配置される一対のレール7,7のうち図中左側のレール7を走行し、ガイドレール2,2の
図1中右方の走行輪5は、トンネルTの延長方向に沿って互いに平行配置される一対のレール7,7のうち図中右側のレール7を走行する。
【0023】
また、一方のレール7と前後のガイドレール2,2のうち一方の脚4との間には図外のテレスコピック型の油圧シリンダが介装されており、他方のレール7と前後のガイドレール2,2のうち一方の脚4との間には図外のテレスコピック型の油圧シリンダが介装されている。
【0024】
そして、ガイドレール2,2のそれぞれの両端に設けられたアウトリガー6は、伸長時には地面に接地してガイドレール2,2を上昇させて走行輪5をレール7から浮かせ、収縮時にはガイドレール2,2を下降させて地面から離間して走行輪5をレール7に当接させる。よって、走行架台Fは、アウトリガー6を伸長させて走行輪5がレール7から離間した状態では、走行架台Fの四隅のアウトリガー6のみが設置して走行不能となり、姿勢が安定して安全なPC板Bの組立作業を可能とする。また、走行架台Fは、アウトリガー6を収縮させて走行輪5がレール7上に載置される状態では、レール7上を走行してトンネルTの延長方向にて前後に移動できる。
【0025】
走行架台Fがレール7上を走行する状態において、前述した図外の油圧シリンダを伸縮させると、走行架台Fはレール7上を走行してトンネルT内で前後へ移動する。そして、アウトリガー6を伸長させて走行輪5をレール7から浮かせた状態で前記油圧シリンダを伸縮させると走行架台Fに対してレール7が相対移動するので、レール7をトンネルTの前後へ移動させ得る。このように、アウトリガー6と前記油圧シリンダを利用して走行架台Fとレール7のうちいずれか一方を選択してトンネルTに対して前後方向へ駆動できるので、走行架台Fは、トンネルT内を前後へ自走できる。
【0026】
台車Wは、
図4および
図5に示すように、矩形のフレーム10と、フレーム10の前後左右から垂下される4つの脚11と、後側の脚11,11間に設置されてフレーム10に取り付けられる3つの後側モータ12と、前側の脚11,11間に設置されてフレーム10に取り付けられる1つの前側モータ13と、フレーム10の後端に垂下されるキャッチャー支持フレーム14とを備えている。
【0027】
また、台車Wのフレーム10の後側の脚11の後方には、後側のガイドレール2の内周フランジ2aと外周フランジ2bとの間に挿入されて内周フランジ2aと外周フランジ2bの双方に当接する車輪15と、後側のガイドレール2のウェブ2cに当接するガイドローラ16とが回転自在に装着されている。
【0028】
さらに、台車Wのフレーム10の前側の脚11の前方には、前側のガイドレール2の内周フランジ2aと外周フランジ2bとの間に挿入されて内周フランジ2aと外周フランジ2bの双方に当接する車輪17と、前側のガイドレール2のウェブ2cに当接するガイドローラ18とが回転自在に装着されている。
【0029】
よって、台車Wにおける後側の脚11の車輪15,15と前側の脚11の車輪17,17とが前後のガイドレール2,2によって挟まれるように配置されており、これら車輪15,17がガイドレール2の両フランジ2a,2b間に挿入されているので、台車Wは、ガイドレール2,2によってガイドされてガイドレール2,2を走行してガイドレール2上を周方向に移動できる。また、台車Wは、脚11にガイドレール2,2のウェブ2c上を転動可能なガイドローラ16,18を備えているので、台車Wは、ガイドレール2,2に対して前後方向への移動が規制され、ガイドレール2,2上を前後にブレることなく滑らかに移動できる。
【0030】
各後側モータ12のシャフトには、後側のガイドレール2におけるチェーンラック2dに歯合するスプロケット12aが設けられており、前側モータ13のシャフトにも、前側のガイドレール2におけるチェーンラック2dに歯合するスプロケット13aが設けられている。よって、後側モータ12と前側モータ13とを同期して駆動すれば、台車Wは、ガイドレール2,2上を
図1中トンネルTの内壁に沿って時計回り方向と反時計回り方向のいずれへも移動できる。台車Wのガイドレール2,2上での移動には、後側モータ12或いは前側モータ13のみを設けて実現してもよいが、台車Wの前後にモータ13,12を設けることで、台車Wの前後がガイドレール2,2に対して斜めにずれて傾く姿勢となった場合に前後のモータ13,12のいずれか一方を駆動して台車Wを正しい姿勢に直すことができる。また、後側モータ12を1つとしてもよいが、後側モータ12を複数とすると、台車Wを駆動する際にモータが負担する荷重を複数の後側モータ12に分散できるので、後側モータ12を小型化でき、台車WひいてはPC板組立装置1を小型化できる。
【0031】
キャッチャー支持フレーム14は、箱型とされており、台車Wにおけるフレーム10の後方に取り付けられており、キャッチャーCを支持している。キャッチャーCは、PC板Bを保持可能な保持装置Aと、保持装置Aを台車Wに対して遠近移動させる油圧シリンダO1と、保持装置Aを台車Wに対して旋回駆動させる一対の旋回モータMと、保持装置Aを台車Wに対してピッチ方向へ駆動する一対の油圧シリンダO2と、保持装置Aを台車Wに対してヨー方向へ駆動する一対の油圧シリンダO3と、保持装置Aを台車Wに対して前後方向へ駆動する油圧シリンダO4とを備えている。
【0032】
台車Wのキャッチャー支持フレーム14内には、キャッチャー支持フレーム14によってガイドされて
図5中で上下方向へ移動可能な可動体20が設けられている。油圧シリンダO1は、テレスコピック型の油圧シリンダであって、可動体20とキャッチャー支持フレーム14の下端との間に介装されており、伸縮に伴って可動体20を上下方向へ駆動可能となっている。
【0033】
可動体20には、可動体20に対して回転自在な旋回体21と、スプロケット22とが装着されている。スプロケット22は、可動体20に固定されており、旋回体21の回転中心線はスプロケット22の軸心線に一致させてある。旋回体21の回転中心線は、台車Wがガイドレール2,2を走行する際の走行方向に直交しており、旋回体21は、台車Wの走行方向に直交する方向を軸にして旋回できる。
【0034】
旋回体21にはスプロケット22を中央にして挟む位置に歯合するスプロケット23,23を駆動する一対の旋回モータMが取り付けられている。よって、旋回モータMを駆動してスプロケット23,23を回転させると可動体20に固定したスプロケット22の外周をスプロケット23,23が旋回して旋回体21を台車Wに対して前記回転中心線を軸にして旋回駆動できる。
【0035】
旋回体21は、中央から斜めに突出するアーム21aを備えている。また、アーム21aの先端には、テーブル24がヒンジ連結されている。よって、テーブル24は、アーム21aの突出する方向に対して直交する方向を軸にして回転可能であって、台車Wおよび旋回体21に対してピッチ方向に俯仰できる。油圧シリンダO2は、テレスコピック型の油圧シリンダであって、テーブル24と旋回体21との間に介装されており、伸縮によってテーブル24を台車Wに対してピッチ方向へ駆動する。
【0036】
そして、テーブル24には、保持装置Aを収容する箱形のケース25がテーブル24の上面に対して水平方向へ回転自在に取り付けられている。よって、ケース25は、テーブル24に対しては相対的に水平回転でき、台車Wに対してヨー方向へ回転できる。油圧シリンダO3は、テレスコピック型の油圧シリンダであって2本で対をなしており、ケース25とテーブル24との間に介装されており、伸縮によってケース25をテーブル24に対してヨー方向へ駆動する。
【0037】
ケース25には、保持装置Aが収容されている。保持装置Aは、ケース25によってガイドされて台車Wに対して前後方向へ移動可能となっている。そして、油圧シリンダO4は、テレスコピック型の油圧シリンダであって2本で対をなしており、保持装置Aとケース25との間介装されており、伸縮によって保持装置Aをケース25に対して前後方向へ駆動する。
【0038】
保持装置Aは、ケース25内に収容される枠体26と、ケース25の左右に取り付けられる先端に爪27aを有する一対の把持片27,27と、枠体26内の中央に設けられてPC板Bから突出する図外の突起を掴むクランプ28とを備えている。クランプ28は、枠体26に対して前後方向と上下方向への移動が許容されており、枠体26内にクランプ28を前後および上下方向へ駆動する図外の駆動源が収容されている。
【0039】
保持装置Aは、ケース25をPC板Bに正対させて当接させた状態でクランプ28を駆動して当該クランプ28でPC板Bの図外の突起を掴むとともにクランプ28でPC板Bを把持片27,27の爪27a,27aへ向けて押圧する。このようにすると、保持装置Aは、クランプ28と爪27a,27aとでPC板Bの図外の突起と側部とをホールドしてPC板Bを強固に保持できる。保持装置AでPC板Bを保持した状態からクランプ28をPC板Bの図解の突起から離脱させれば、保持装置AからPC板Bが解放されてPC板Bを保持装置Aから取り外せる。
【0040】
以上のように構成されたキャッチャーCでは、油圧シリンダO1の伸縮によって旋回体21、テーブル24、ケース25とともに保持装置Aを台車Wに対して遠近方向へ駆動でき、旋回モータMの回転駆動によって旋回体21、テーブル24、ケース25とともに保持装置AをトンネルTの延長方向を軸にして旋回でき、油圧シリンダO2の伸縮によってテーブル24、ケース25とともに保持装置Aを台車Wに対してピッチ方向へ駆動でき、油圧シリンダO3の伸縮によってケース25とともに保持装置Aを台車Wに対してヨー方向へ駆動でき、油圧シリンダO4の伸縮によって保持装置Aを台車Wに対して前後方向へ駆動できる。
【0041】
なお、油圧シリンダO1,O2,O3,O4のキャッチャーCへの設置数は、単数であってもよいし、3つ以上であってもよい。また、旋回モータMは、対をなしてキャッチャーCに設けられているが、単数であってもよいし、3つ以上をキャッチャーCに設けてもよい。旋回モータMは、本実施の形態では、旋回体21に設けられていて旋回体21とともに旋回するので、対をなして重心が旋回体21の回転中心に一致するように配置されると保持装置Aの旋回の際の重量バランスが良くなるので有利である。
【0042】
また、保持装置Aは、台車Wに対して旋回と遠近が可能であればよいので、油圧シリンダO1よりも旋回モータMを台車W側に設けて、キャッチャーCの全体を旋回させるように構成してもよい。キャッチャーCの全体を旋回させる場合、旋回モータMの負担が大きくなるのに対して、油圧シリンダO1の方が旋回モータMよりも小型で大きな荷重の発生が可能であるから、本実施の形態のように油圧シリンダO1でキャッチャーCの全体を台車Wに対して遠近させる方がキャッチャーCの小型化と重量の軽減とが図れる。つまり、本実施の形態のPC板組立装置1は、キャッチャーCが保持装置Aを台車Wに対して旋回駆動する旋回モータMと、旋回モータMを台車Wに対して遠近駆動させる油圧シリンダO1とを有しているので、旋回モータMでキャッチャーCの全体を旋回させる必要がなく、旋回モータMの負担を小さくできるので旋回モータMを小型にでき、さらに小型で大荷重の出力に有利な油圧シリンダO1でキャッチャーCの全体を台車Wに対して遠近させるので、キャッチャーCの小型化と重量の軽減とが図れる。
【0043】
このように構成されたPC板組立装置1でPC板Bをアーチ状に組み立てる手順について説明する。まず、アウトリガー6を接地させて走行架台Fを地面に安定させ、
図6に示すように、台車Wを
図6中でガイドレール2の左端へ移動させて、トンネルTの左側壁近傍に積層されて組み立てを待つPC板Bの近傍へ配置する。
【0044】
アーチ状に列をなすのに必要な数のPC板BがトンネルTの内側を向く面、つまり、内周側面を上方にして積層(平積み)されている。このように積層されたPC板Bに対して上方側から保持装置Aを接近させてPC板Bを保持装置Aによって保持させるべく、
図7に示すように、台車Wに対してキャッチャーCにおける旋回モータMを駆動して保持装置AをPC板Bの上方に正対させた後、油圧シリンダO1を伸長させて保持装置Aを台車Wから遠ざかる方向へ駆動してPC板Bに当接させる。PC板Bに保持装置Aが当接すると保持装置Aのクランプ28を作動させ、保持装置AでPC板Bを把持する。
【0045】
保持装置AでPC板Bを保持した後は、
図8に示すように、油圧シリンダO1を収縮作動して、旋回モータMを駆動して台車Wに対して保持装置Aを台車Wにおける12時の位置(運搬位置)に戻す。そして、台車Wにおける後側モータ12および前側モータ13を駆動して台車Wにガイドレール2,2上を走行させて、トンネルTの右端側へPC板Bを運搬する。つまり、本実施の形態のPC板組立装置1は、保持装置Aを台車Wに対して旋回および遠近させて平積みされたPC板Bに対して接近させ、保持装置AでPC板Bを保持して拾い上げてPC板Bを望む位置へ運搬できる。なお、運搬位置における油圧シリンダO1は、運搬中のPC板Bが既に組み上がったPC板Bに干渉しなければ必ずしも最収縮している必要はない。
【0046】
つづいて、
図9に示すように、油圧シリンダO1を伸長させてPC板BをトンネルTの内壁へ接近させて、右端側の側壁Trに連結できる位置に配置して、PC板Bを側壁Trへ連結する。なお、今回、PC板Bをアーチ状に組み上げようとしている列の前に既にアーチ状に組み立てが終わったPC板Bの列(今回組み上げる列から見てトンネルTの後側の列)がある場合、先程のPC板Bは、側壁Trおよび既設の列における隣に配置されるPC板Bの双方に連結される。
【0047】
このPC板Bの連結の際は、PC板BのトンネルTの前後方向への移動が必要な場合には、キャッチャーCにおける油圧シリンダO4を駆動して保持装置Aを台車Wに対して前後方向へ駆動すればよい。また、PC板Bの連結にあたり、PC板Bの位置を微調整したい場合、必要に応じて、旋回モータMおよび油圧シリンダO1,O2,O3,O4を駆動してこれを行えばよい。トンネルTの内壁に対してPC板Bを対向させた状態から、油圧シリンダO1を駆動すればPC板BをトンネルTの内壁に対して遠近させることができ、旋回モータMを駆動すればPC板Bをロール方向へ駆動でき、油圧シリンダO2を駆動すればPC板Bをピッチ方向へ駆動でき、油圧シリンダO3を駆動すればPC板Bをヨー方向へ駆動でき、油圧シリンダO4を駆動すればPC板BをトンネルTの前後方向へ駆動できる。このように、本実施の形態のPC板組立装置1は、PC板Bの姿勢を微調整できるので組み立てを待つPC板Bを容易に保持できるとともに、PC板Bを適切な位置に配置して容易に組立てることができる。
【0048】
トンネルTの右側の側壁TrへのPC板Bの連結が済むと、保持装置AによるPC板Bの保持を解除して保持装置AをPC板Bから離脱させて、保持装置Aを運搬位置に戻し、次の組み立てを待つPC板Bを運搬するために台車Wにガイドレール2,2上を走行させてガイドレール2,2の左端へ移動させる。その後、保持装置AでPC板Bを保持して、
図10に示すように、台車Wをガイドレール2,2の右方へ移動させて側壁Trに連結されたPC板Bの隣に配置して、運搬したPC板Bを側壁Trに連結されたPC板Bに連結する。トンネルTの後側に既にアーチ状に組み立てられたPC板Bがあれば、この既設のPC板Bに運搬したPC板Bを連結する。トンネルTの右側の側壁Trに連結されたPC板Bへの運搬したPC板Bの連結が済むと、キャッチャーCと台車Wを前述の要領で駆動して、次に組み立てるPC板Bの保持と運搬と連結を前述の手順を繰り返して行い、トンネルTの内側に一列で6個のPC板Bをアーチ状に組み立てる。
【0049】
このようにPC板組立装置1による6個のPC板Bをアーチ状に組み立てる作業が終了すると、次の列のPC板Bを組み立てるべく、PC板組立装置1をトンネルTの前方へ移動させて保持装置Aを次の列のPC板Bの組み立てが可能となる位置に配置する。PC板組立装置1の移動については、アウトリガー6を収縮させて走行輪5をレール7に接地させた後、図外の油圧シリンダを駆動すればよい。なお、レール7を移動させる必要がある場合には、前述したようにアウトリガー6を伸長させてガイドレール2,2をレール7から浮かせた状態で前記図外の油圧シリンダを駆動すればよい。
【0050】
そして、PC板組立装置1の移動が終了した後は、前述した手順によってトンネルTの右側から順番にPC板Bを組み立てて、6個のPC板Bをアーチ状に組み立てればよい。この一連の工程を繰り返すことで、PC板組立装置1を利用してトンネルT内にアーチ状に組み立てられたPC板Bの列が形成され、トンネルTの全体にトンネル覆工が構築される。なお、本実施の形態では、トンネルTの左側にPC板Bを平積みしておき、トンネルTの右側からPC板Bを順次組み立てているが、PC板BをトンネルTの右側に平積みしてトンネルTの左側から組み立てるようにしてもよい。また、PC板Bの組み立てに際して、PC板Bの撓み等によって組立中のPC板Bの位置と既設の列のPC板Bの位置とがずれてしまう場合には、別途、PC板Bを支持する支持装置を用いてPC板Bを支持しつつPC板Bの組み立てを行ってもよい。
【0051】
以上、本実施の形態のPC板組立装置1は、トンネルTの内壁に沿うアーチ状のガイドレール2,2を有してトンネルTの延長方向へ移動可能な走行架台Fと、ガイドレール2,2上を走行可能な台車Wと、台車Wに設けられてPC板Bを保持可能であって台車Wに対して遠近可能で、かつ、トンネルTの延長方向を軸に旋回可能な保持装置Aとを備えて構成されている。
【0052】
このように構成されたPC板組立装置1では、台車Wに設けられた保持装置Aが台車Wに対して遠近可能でかつ旋回可能であるので、平積みされたPC板Bに保持装置Aを接近させてPC板Bを拾って、台車Wを走行させてPC板BをトンネルT内の所望する位置まで運搬して、PC板Bを組み立てることができる。このようにPC板組立装置1は、PC板Bのピックアップ、運搬および組み立ての一連のトンネル覆工の構築作業を保持装置Aを持つ1つの台車Wで行うことができる。よって、本実施の形態のPC板組立装置1によれば、トンネルTの周方向にて列をなすPC板Bの数によらず保持装置Aを持つ1つの台車WでPC板Bの組み立てが可能であって、構造が簡単となりコストも安価となる。
【0053】
そして、本実施の形態のPC板組立装置1によれば、ガイドレール2,2上を走行する保持装置Aを持つ台車WでPC板Bのピックアップ、運搬および組み立てを行えるので、走行架台Fの内側の空間を他の装置で占めてしまうことがなく、走行架台Fの内側に大きなスペースを確保できる。よって、本実施の形態のPC板組立装置1によれば、走行架台Fの内側スペースにトンネルT内を往来する作業車両や作業員の通路を確保できる。
【0054】
また、本実施の形態のPC板組立装置1では、保持装置Aを台車Wに対してヨー方向、ピッチ方向および前後方向へ駆動する油圧シリンダ(駆動装置)O2,O3,O4を備えているので、PC板BのピックアップやPC板Bの連結の際にPC板Bの姿勢を微調整できるので、PC板Bの組み立て作業がより一層容易となる。
【0055】
さらに、本実施の形態のPC板組立装置1では、保持装置Aを台車Wに対して旋回駆動する旋回モータMと、旋回モータMを台車Wに対して遠近駆動させる油圧シリンダO1とを有する。このように構成されたPC板組立装置1によれば、旋回モータMでキャッチャーCの全体を旋回させる必要がなく、旋回モータMの負担を小さくできるとともに旋回モータMを小型にでき、小型で大荷重の出力に有利な油圧シリンダO1でキャッチャーCの全体を台車Wに対して遠近させるので、キャッチャーCの小型化と重量の軽減とが図れる。
【0056】
なお、保持装置Aをピッチ方向、ヨー方向および前後方向へ駆動する駆動装置は、本実施の形態では、テレスコピック型の油圧シリンダO2,O3,O4とされているが、これに限られるものではない。
【0057】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱なく改造、変形及び変更ができるのは当然である。
【符号の説明】
【0058】
1・・・PC板組立装置、2・・・ガイドレール、A・・・保持装置、B・・・PC版、C・・・キャッチャー、F・・・走行架台、M・・・旋回モータ、O1・・・油圧シリンダ、O2,O3,O4・・・油圧シリンダ(駆動装置)、W・・・台車、