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  • 特許-シャープペンシル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】シャープペンシル
(51)【国際特許分類】
   B43K 21/00 20060101AFI20230809BHJP
【FI】
B43K21/00 J
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2019162886
(22)【出願日】2019-09-06
(65)【公開番号】P2021041544
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】303022891
【氏名又は名称】株式会社パイロットコーポレーション
(72)【発明者】
【氏名】梶原 巧
【審査官】三橋 健二
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-166783(JP,A)
【文献】実開昭59-015590(JP,U)
【文献】特開2018-089868(JP,A)
【文献】実開昭57-073187(JP,U)
【文献】実開昭59-179088(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B43K 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸筒内に芯繰出機構を配し、前記芯繰出機構が芯タンクを備え、前記芯タンクの後方に前記軸筒の後端開口に挿通するノブ体を配し、前記ノブ体を押動することにより、前記芯繰出機構を作動させて前記軸筒の先端から芯を突出させるシャ-プペンシルであって、
前記ノブ体が、筒部材と、該筒部材の内部で前後動する駒部材と、を備え、
前記駒部材が、前記筒部材の内面に摺動する大径部と、該大径部より小径で当該大径部の前方へ配置された小径部とを有し、
前記ノブ体の筒部材が、前記芯タンクの後部に挿着される筒状の挿着部を有し、
前記挿着部の外面に、前記芯タンクの内面に形成された係止受突部を乗り越えて係止させる係止突部が設けられ、
前記ノブ体を前記軸筒の後端開口に挿通させ、前記ノブ体の筒部材を前記芯タンクの後部に挿着させる際において、
前記芯タンクに予備の芯が入っていない状態では、前記駒部材の大径部の外面と前記筒部材の挿着部の内面とが近接することで、前記筒部材の挿着部が内方に撓まずに、前記挿着部の係止突部が前記芯タンクの係止受突部に当接して、前記ノブ体が前記芯タンクに係止されず、
前記芯タンクに予備の芯が入った状態では、前記ノブ体の駒部材が、前記予備の芯に接触して後方に押動されることで、前記駒部材の小径部の外面と前記筒部材の挿着部の内面との間に隙間が形成され、前記筒部材の挿着部が内方へ撓み、前記挿着部の係止突部が前記芯タンクの係止受突部を乗り越えて、前記ノブ体が前記芯タンクに係止され、
前記ノブ体が前記芯タンクに挿着された状態においては、前記駒部材に設けられた規制部により該駒部材の前進が規制されること、あるいは駒部材が予備の芯に接触して後方に押動されることで、前記挿着部の係止突部の径内方向において、前記駒部材の外面と前記筒部材の挿着部の内面との間に隙間が形成され、前記筒部材の挿着部が内方へ撓み、前記挿着部の係止突部が前記芯タンクの係止受突部を乗り越えて、前記ノブ体が前記芯タンクから取り外せる、ことを特徴としたシャープペンシル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノック操作等により筆記芯を所定量だけ口金の先端から繰り出すことで筆記が可能なシャープペンシルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のシャープペンシルには、軸筒の後部に装着された消しゴム、あるいは先行文献1のような消しゴム繰出機構などの部品を取り外すことで、軸筒内に設けられた芯タンクに予備の芯を補充できる構造がある。
このようなシャープペンシルでは、芯タンクに予備の芯を補充するとき、芯タンク内の芯がなくなった場合、あるいは芯がチャックに挟持された残り1本になった場合には、芯タンクに予備の芯を確実に補充して、筆記を継続できるものが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平10-166783号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、以上のような知見に基づいており、その目的は、芯タンクに予備の芯を補充する際に、芯の入れ損じを防止することができるシャープペンシルを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、
「軸筒内に芯繰出機構を配し、前記芯繰出機構が芯タンクを備え、前記芯タンクの後方に前記軸筒の後端開口に挿通するノブ体を配し、前記ノブ体を押動することにより、前記芯繰出機構を作動させて前記軸筒の先端から芯を突出させるシャ-プペンシルであって、
前記ノブ体が、筒部材と、該筒部材の内部で前後動する駒部材と、を備え、
前記駒部材が、前記筒部材の内面に摺動する大径部と、該大径部より小径で当該大径部の前方へ配置された小径部とを有し、
前記ノブ体の筒部材が、前記芯タンクの後部に挿着される筒状の挿着部を有し、
前記挿着部の外面に、前記芯タンクの内面に形成された係止受突部を乗り越えて係止させる係止突部が設けられ、
前記ノブ体を前記軸筒の後端開口に挿通させ、前記ノブ体の筒部材を前記芯タンクの後部に挿着させる際において、
前記芯タンクに予備の芯が入っていない状態では、前記駒部材の大径部の外面と前記筒部材の挿着部の内面とが近接することで、前記筒部材の挿着部が内方に撓まずに、前記挿着部の係止突部が前記芯タンクの係止受突部に当接して、前記ノブ体が前記芯タンクに係止されず、
前記芯タンクに予備の芯が入った状態では、前記ノブ体の駒部材が、前記予備の芯に接触して後方に押動されることで、前記駒部材の小径部の外面と前記筒部材の挿着部の内面との間に隙間が形成され、前記筒部材の挿着部が内方へ撓み、前記挿着部の係止突部が前記芯タンクの係止受突部を乗り越えて、前記ノブ体が前記芯タンクに係止され、
前記ノブ体が前記芯タンクに挿着された状態においては、前記駒部材に設けられた規制部により該駒部材の前進が規制されること、あるいは駒部材が予備の芯に接触して後方に押動されることで、前記挿着部の係止突部の径内方向において、前記駒部材の外面と前記筒部材の挿着部の内面との間に隙間が形成され、前記筒部材の挿着部が内方へ撓み、前記挿着部の係止突部が前記芯タンクの係止受突部を乗り越えて、前記ノブ体が前記芯タンクから取り外せる、ことを特徴としたシャープペンシル。」である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、予備の芯を補充するために、外したノブ体を軸筒の後端開口に挿通させ、ノブ体を芯タンクに挿着させる際に、芯タンクに予備の芯が入っていない状態では、ノブ体が芯タンクに係止されず、芯タンクに予備の芯が入った状態では、ノブ体が芯タンクに係止されることから、芯の入れ損じを防止することができ、また、ノブ体が芯タンクに挿着された状態においては、確実にノブ体を芯タンクから取り外すことができる、シャープペンシルを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施形態のシャープペンシルの縦断面図で、芯タンクに予備の芯がある状態を示す図である。
図2図1の要部拡大図である。
図3図2の部分拡大図である。
図4図2のノブ体を外した状態を示す図である。
図5】ノブ体の外観図で、図5Aは駒部材が前進した状態であり、図5Bは駒部材が後退した状態の図である。
図6】本実施形態のシャープペンシルの縦断面図で、芯タンクに予備の芯がない状態を示す図である。
図7図6の要部拡大図である。
図8図7の部分拡大図である。
図9】芯タンクに予備の芯がない状態で、外したノブ体を芯タンクに挿着する状態を示す要部拡大図である。
図10図9の部分拡大図である。
図11】芯タンクに予備の芯がある状態で、外したノブ体を芯タンクに挿着する状態を示す図である。
図12図11の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、添付の図面を参照して本発明の実施例を詳細に説明する。本実施例においては筆記先端側を前方と表現し、その反対側を後方と表現する。尚、図中の同じ部材、同じ部品については、同じ符号としている。
【0009】
図1は、本実施形態のシャープペンシルの縦断面図で、芯タンクに予備の芯がある状態を示す図である。図2は、図1の要部拡大図である。図3は、図2の部分拡大図である。図4は、図2のノブ体を外した状態を示す図である。図5は、ノブ体の外観図で、図5Aは駒部材が前進した状態であり、図5Bは駒部材が後退した状態の図である。
【0010】
シャープペンシル1は、軸筒2を、軸筒20と、当該軸筒本体20の前方に装着された口金3と、当該軸筒本体20の後方に装着された尾筒4とで構成してある。口金3は、軸筒2に固定されたコネクタ50に対して着脱可能に螺合されている。尾筒4は、側面に形成した窓孔4aに、軸筒本体20の後端部に形成した外向突部20aを係止させて、固定してある。前記尾筒4の軸線に沿って設けた後端開口4bには、軸筒2内に配した芯繰出機構5を作動させるノブ体6が挿通されている。
【0011】
前記芯繰出機構5は、芯タンク51と、芯タンク51の前方に挿着されたチャック52と、チャック52の拡径部52aが当接する締めリング53と、芯タンク51を後方に弾発するコイルスプリング54と、芯Sを前記口金3の内方で保持する芯ホルダ55と、前記コネクタ50とを有している。芯タンク51内には予備の芯YSが入っている。コネクタ50は前端部に内鍔50aを形成してあり、内鍔50aの前端面に締めリング53の後端部を当接させ、内鍔50aの後端面にコイルスプリング54の前端部を当接させる。
また、コネクタ50の中間部には外鍔50bを形成してあり、コネクタ50に形成した雄螺子50cを、口金3に形成した雌螺子3aに螺合させることで、コネクタ50の外鍔50bと口金3の後端面とで、軸筒本体20の前端部に形成した内鍔20bを挟持させ、軸筒本体20と口金3とを連結してある。
【0012】
前記ノブ体6は、筒部材61と、筒部材61の内部で前後動する駒部材62と、筒部材61の後部に挿着された消しゴム63と、筒部材61に螺合されて消しゴム63を被覆するキャップ64とからなる。キャップ64は、キャップ64の内面に形成した雌螺子64aを、筒部材61の後端部の外面に形成した雄螺子61aに螺合させることで、筒部材61に対して着脱自在に固定され、キャップ64を螺脱させることで、消しゴム63が使用可能となる。また、キャップ64は、透明な樹脂で成形されており、消しゴム63を被覆した状態で、キャップ64を透過して消しゴム63を視認できる。
【0013】
前記駒部材62は、棒状体621と矩形体622とからなり、棒状体621は、大径部621aと、該大径部621aの前方に形成した小径部621bとを有し、さらに、大径部621aの後方には、該大径部621aより小径に形成されて前記矩形体622に設けた凹部622aに嵌着される後方延出部621cが形成され、小径部621bの前方には、該小径部621bより小径に形成されて前記芯タンク51内に挿通される前方延出部621dが形成されている。また棒状体621は、小径部621bと前方延出部621dとを、後方へ向かって漸次拡径するテーパー部621eを介して連接されるよう形成してある。
前記前方延出部621dが挿通する芯タンク51は、前記チャック52が挿着された直線部51aの後端部に拡径部51bを設けてあり、直線部51aと拡径部51bとを後方へ向かって漸次拡径するテーパー部51cにより連接されるよう形成してある。
尚、前記棒状体621のテーパー部621eと、前記芯タンク51のテーパー部51cの角度は一致しており、芯タンク51内に予備の芯YSが入っていない状態では、棒状体621の前進が、該棒状体621のテーパー部621eと、芯タンク51のテーパー部51cとが当接することにより規制される(図8参照)。
前記駒部材62の矩形体622は、筒部材61の側壁に形成したスリット61b内を摺動し、図5Aに示すように、ノブ体6が芯タンク51から外された状態では、スリット61bの前端縁に対して矩形体622が当接することで、駒部材62の脱落が防止される。また、図5Bに示すように、駒部材62は、後方へスライドすることができる。
【0014】
前記筒部材61には、芯タンク51の拡径部51bに挿着される小径の挿着部61cが形成されており、挿着部61cの外面に形成された係止突部61dが、芯タンク51の拡径部51bの内面に形成された係止受突部51dを乗り越えることで、芯タンク51に対してノブ体6が固定される。挿着部61には二つの切込部61eが設けられており、挿着部61cの係止突部61dが、芯タンク51の係止受突部51dを乗り越え易くしてある。
また、筒部材61の挿着部61cの内面には、円環状の内向突起61fが形成されており、内向突起61fの内寸は、棒状体621の大径部621aの外形より若干大径に形成されており、内向突起61f間を、棒状体621の大径部621aが接触せずに前後動でき、あるいは若干摺接しながら前後動できるようにしてある。
【0015】
次に、図6から図8を用いて、芯タンク内に予備の芯がない状態について説明を行う。 図6は、本実施形態のシャープペンシルの縦断面図で、芯タンクに予備の芯がない状態を示す図である。図7は、図6の要部拡大図である。図8は、図7の部分拡大図である。
図に示す通り、シャープペンシル1は、芯タンク51内の予備の芯がなくなることで、駒部材62が、棒状体621のテーパー部621eと、芯タンク51のテーパー部51cとが当接されるまで前進する。軸筒本体20は、透明な樹脂で成形されており、使用者は、駒部材62の棒状体621が芯タンク51内に深く進入したことを視認して、芯タンク51への芯の補給が必要であると認識することができる。
【0016】
図8に示される通り、芯タンク51に予備の芯がなくなった状態では、棒状体621に設けられたテーパー部621e(規制部)が、芯タンク51のテーパー部51cに当接することで、駒部材62の前進が規制されることにより、挿着部61cの係止突部61dの径内方向において、棒状体621の小径部621bの外面と筒部材61の挿着部61cの内向突起61fの内面との間に隙間Kが形成され、筒部材61の挿着部61cが内方へ撓み、挿着部61cの係止突部61dが芯タンク51の係止受突部51dを乗り越えて、ノブ体6を芯タンク51から取り外すことができる。
図3に示される通り、芯タンク51に予備の芯YSがある状態では、駒部材62の棒状体621が予備の芯YSに接触して後方に押動されることで、挿着部61cの係止突部61dの径内方向において、棒状体621の前方延出部621dの外面と筒部材61の挿着部61cの内向突起61fの内面との間に隙間Kが形成され、筒部材61の挿着部61cが内方へ撓み、挿着部61cの係止突部61dが芯タンク51の係止受突部51dを乗り越えて、ノブ体6を芯タンク51から取り外すことができる。
つまり、本実施形態のシャープペンシル1は、芯タンク51内に予備の芯があってもなくても、ノブ体6を芯タンク51から取り外すことができる。
【0017】
次に、予備の芯を補充するために、芯タンク51から外したノブ体6を、再び芯タンク51に挿着する状体について説明を行う。
図9は、芯タンクに予備の芯がない状態で、外したノブ体を芯タンクに挿着する状態を示す要部拡大図である。図10は、図9の部分拡大図である。図11は、芯タンクに予備の芯がある状態で、外したノブ体を芯タンクに挿着する状態を示す図である。図12は、図11の部分拡大図である。
【0018】
図9及び図10は、芯タンク5に予備の芯を入れずに外したノブ体6を挿着する状態であり、重力により駒部材6が、棒状体621のテーパー部621eと芯タンク51のテーパー部51cとが当接するまで前進していることから、棒状体621の大径部621aの外面と筒部材61の挿着部61cの内面との隙間Kが、係止突部61dの外径と係止受突部51dの内径の差より小さくなることで、筒部材61の挿着部61cが内方に撓めずに、結果、挿着部61cの係止突部61dが芯タンク51の係止受突部51dに当接して、乗り越えられず、ノブ体6が芯タンク51に係止されない。
これにより使用者は、芯タンク51に予備の芯を入れ忘れていることに気が付くことができる。
【0019】
図11は、芯タンクに予備の芯を補充して外したノブ体を芯タンクに挿着する状態であり、棒状体621に予備の芯YSが接触することで駒部材62が後方へ押動され、棒状体621の小径部621dの外面と筒部材61の挿着部61cの内面との間に隙間Kが形成され、筒部材61の挿着部61cが内方へ撓み、挿着部61cの係止突部61dが芯タンク51の係止受突部61dを乗り越えて、ノブ体6が芯タンク51に係止される。
【符号の説明】
【0020】
1…シャープペンシル、
2…軸筒、
20…軸筒本体、20a…外向突部、20b…内鍔、
3…口金、3a…雌螺子、
4…尾筒、4a…窓孔、4b…後端開口、
5…芯繰出機構、
50…コネクタ、50a…内鍔、50b…外鍔、50c…雄螺子、
51…芯タンク、51a…直線部、51b…拡径部、51c…テーパー部、51d…係止受突部、
52…チャック、52a…拡径部、
53…締めリング、
54…コイルスプリング、
55…芯ホルダ、
6…ノブ体、
61…筒部材、61a…雄螺子、61b…スリット、61c…挿着部、61d…係止突部、61e…切込部、61f…内向突起、
62…駒部材、
621…棒状体、621a…大径部、621b…小径部、621c…後方延出部、621d…前方延出部、621e…テーパー部、
622…矩形体、622a…凹部、
63…消しゴム、
64…キャップ、64a…雌螺子、
S…芯、YS…予備の芯
K…隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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