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特許7328838研磨パッド及びその製造方法、並びに研磨加工品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】研磨パッド及びその製造方法、並びに研磨加工品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/11 20120101AFI20230809BHJP
   B24B 9/00 20060101ALI20230809BHJP
   B24B 31/00 20060101ALI20230809BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
B24B37/11
B24B9/00 601H
B24B31/00 Z
H01L21/304 622Y
H01L21/304 622F
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019164243
(22)【出願日】2019-09-10
(65)【公開番号】P2021041483
(43)【公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-06-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】柏田 太志
(72)【発明者】
【氏名】徳重 伸
(72)【発明者】
【氏名】高木 正孝
【審査官】亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-050277(JP,A)
【文献】特開2010-108968(JP,A)
【文献】特開2010-157619(JP,A)
【文献】特開2004-087647(JP,A)
【文献】特開平10-308369(JP,A)
【文献】特開2010-162636(JP,A)
【文献】特開2011-005606(JP,A)
【文献】特開2018-148212(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/00 - 37/34
B24B 9/00
B24B 31/00
H01L 21/304
B24D 3/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不織布と該不織布に含浸した樹脂とを含む樹脂含浸不織布からなる円形または円環形の研磨パッドであって、
ワークの外周縁部に形成されたノッチ部を研磨するための研磨部を外周に有し、
前記研磨パッドを厚さ方向に切断して現れる断面において、前記研磨パッドの表面と水平な方向に対して±30°以内となるように配向した繊維の割合が、50%以上である、
研磨パッド。
【請求項2】
前記樹脂が水系ポリウレタン樹脂を含む、
請求項1に記載の研磨パッド。
【請求項3】
前記樹脂がミクロポーラスを有しない、
請求項1又は2に記載の研磨パッド。
【請求項4】
前記樹脂の100%モジュラスが、0.5~5.0MPaである、
請求項1~3のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【請求項5】
前記樹脂含浸不織布の表面のショアA硬度が、60~90°である、
請求項1~4のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【請求項6】
前記樹脂含浸不織布の密度が、0.48~0.70g/cm3である、
請求項1~5のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【請求項7】
前記樹脂含浸不織布の前記不織布に対する前記樹脂の質量比率は、1.35以上である、
請求項1~6のいずれか一項に記載の研磨パッド。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法であって、
繊維が水平方向に配向したフリースを複数枚積層させ、前記繊維を交絡させて、不織布主面の面内方向に対して前記繊維が配向した不織布を作製する不織布作製工程と、
前記不織布に水系樹脂分散液を含浸させる含浸工程と、
含浸させた前記水系樹脂分散液を乾燥させて樹脂含浸不織布を得る乾燥工程と、
得られた前記樹脂含浸不織布を円形または円環形に裁断する裁断工程と
裁断された前記樹脂含浸不織布の外周に、ワークの外周縁部に形成されたノッチ部を研磨するための研磨部を形成する研磨部形成工程と、を有する、
研磨パッドの製造方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の研磨パッドを用いて、ワークの外周縁部に形成されたノッチ部を研磨する研磨工程を有する、
研磨加工品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド及びその製造方法、並びに研磨加工品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコン単結晶などのウェハには、その方向を示すために、ウェハの最外周のエッジ部分に形成された小さい切り込み(ノッチ部)が形成される。ウェハの表面は研磨スラリーを用いて研磨パッドによる化学機械研磨加工等が行われるが、ノッチ部についてもチッピング防止やダストの巻き込みを防止することを目的として研磨加工が施される。
【0003】
このようなノッチ部の研磨加工に用いられる研磨パッドとしては、たとえば、基材に樹脂を含浸して成る研磨パッドにおいて、空隙率が、基材の厚み方向外側から厚み方向中央側へと高くなる傾斜分布を有するように構成される研磨パッドなどが知られている(例えば、特許文献1参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2011-009584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示される研磨パッドは密度や硬度が場所によって異なるため、立ち上がりに時間を要したり、スラリーの保持量やウェハのようなワーク(被加工物)への接触が一様ではなく研磨状態にバラツキが出たり、スクラッチを生じさせたりする恐れがある。また、ワークのノッチ部を研磨する研磨パッドは、その研磨工程においてワークの主面と研磨パッドの主面がほぼ直交するようにワークと接触するため、研磨パッドの摩耗により寿命が短くなるという問題がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、耐摩耗性に優れたノッチ研磨用の研磨パッド及びその製造方法、並びに当該研磨パッドを用いた研磨加工品の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討した。その結果、研磨パッドの表面と水平な方向の面に繊維の配向を調整することで、繊維の端部が研磨面になり、それにより、繊維や樹脂の脱落を抑制させ、上記課題を解決しうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
不織布と該不織布に含浸した樹脂とを含む樹脂含浸不織布からなる円形または円環形の研磨パッドであって、
ワークの外周縁部に形成されたノッチ部を研磨するための研磨部を外周に有し、
前記研磨パッドを厚さ方向に切断して現れる断面において、前記研磨パッドの表面と水平な方向に対して±30°以内となるように配向した繊維の割合が、50%以上である、
研磨パッド。
〔2〕
前記樹脂が水系ポリウレタン樹脂を含む、
〔1〕に記載の研磨パッド。
〔3〕
前記樹脂がミクロポーラスを有しない、
〔1〕又は〔2〕に記載の研磨パッド。
〔4〕
前記樹脂の100%モジュラスが、0.5~5.0MPaである、
〔1〕~〔3〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔5〕
前記樹脂含浸不織布の表面のショアA硬度が、60~90°である、
〔1〕~〔4〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔6〕
前記樹脂含浸不織布の密度が、0.48~0.70g/cm3である、
〔1〕~〔5〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔7〕
前記樹脂含浸不織布の前記不織布に対する前記樹脂の質量比率は、1.35以上である、
〔1〕~〔6〕のいずれか一項に記載の研磨パッド。
〔8〕
〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の研磨パッドの製造方法であって、
繊維が水平方向に配向したフリースを複数枚積層させ、前記繊維を交絡させて、不織布主面の面内方向に対して前記繊維が配向した不織布を作製する不織布作製工程と、
前記不織布に水系樹脂分散液を含浸させる含浸工程と、
含浸させた前記水系樹脂分散液を乾燥させて樹脂含浸不織布を得る乾燥工程と、
得られた前記樹脂含浸不織布を円形または円環形に裁断する裁断工程と、
裁断された前記樹脂含浸不織布の外周に、ワークの外周縁部に形成されたノッチ部を研磨するための研磨部を形成する研磨部形成工程と、を有する、
研磨パッドの製造方法。
〔9〕
〔1〕~〔7〕のいずれか一項に記載の研磨パッドを用いて、ワークの外周縁部に形成されたノッチ部を研磨する研磨工程を有する、
研磨加工品の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐摩耗性に優れたノッチ研磨用の研磨パッド及びその製造方法、並びに当該研磨パッドを用いた研磨加工品の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態の研磨パッドの使用方法の一例を示す概略図である。
図2】研磨パッドの断面の一例を示す概略図である。
図3】実施例1の研磨パッドの断面写真の一つを示す。
図4】比較例1の研磨パッドの断面写真の一つを示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。また、図面における上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示す位置関係に基づくものとする。更に、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0012】
〔研磨パッド〕
本実施形態の研磨パッドは、不織布と該不織布に含浸した樹脂とを含む樹脂含浸不織布からなる円形または円環形の研磨パッドであって、ワーク(被加工物)の外周縁部に形成されたノッチ部を研磨するための研磨部を外周に有し、研磨パッドを厚さ方向に切断して現れる断面において、研磨パッドの表面と水平な方向に対して±30°以内となるように配向した繊維の割合が、50%以上である。なお、「円環形」とは、略円盤状の形状の中心付近に、その円盤状の厚さ方向に貫通する孔を有する形状を意味する。
【0013】
図1に、本実施形態の研磨パッドの使用方法の一例を示す。本実施形態の研磨パッドは、円形または円環形の研磨パッドであり、研磨部によりワークの外周縁部に形成されたノッチ部を研磨する。具体的には、研磨部をワークのノッチ部に接触させながら、研磨パッドを回転させることで、研磨部によるノッチ部の研磨を行う。
【0014】
ワークのノッチ部を研磨する研磨パッドは、その研磨工程においてワークの主面と研磨パッドの主面をほぼ直交するように接触させるため、研磨パッドの研磨部が摩耗しやすく、寿命が短いという課題がある。研磨部の摩耗は、主に、研磨部とワークの接触面(以下、「研磨面」ともいう。)から、研磨によって繊維や樹脂が削れたり脱落したりすることにより生じる。特に、繊維が研磨パッドの奥まで埋まっておらず、研磨面から脱離しやすいほど、摩耗しやすいことが分かってきた。
【0015】
これに対して、本実施形態では、研磨パッドの表面と水平な方向に繊維の配向を調整する。これにより、繊維の一端部が研磨面に露出するようにし、繊維の他端部が研磨パッドに埋まっている状態となり、繊維の脱落が抑制される。また、基材である繊維の脱落が抑制されることにより、それに付着した樹脂の脱落も抑制することができる。
【0016】
上記のような観点から、本実施形態の研磨パッドは、その厚さ方向の断面における繊維の配向割合を規定する。具体的には、研磨パッドの厚さ方向の断面において、研磨パッドの表面と水平な方向に対して±30°以内となるように配向した繊維の割合は、本数基準で、50%以上であり、好ましくは60%以上であり、より好ましくは70%以上である。上記のように研磨パッドの表面と水平な方向に対して±30°以内となるように配向した繊維の割合が50%以上であることにより、耐摩耗性がより向上する。
【0017】
研磨パッドの表面と水平な方向と平行に近い配向を有する繊維の割合は、実施例に記載の方法により測定することができる。例えば、研磨パッドの厚さ方向に平行な面で、研磨パッドを切断し断面を得る。そして、このようにして得られた断面の写真に写る繊維の配向を調べることで、研磨パッドの表面と水平な方向に対して±30°以内となるように配向した繊維の割合を算出することができる。
【0018】
なお、本実施形態における研磨部とは、図1及び図2に示すように、研磨パッドの外周部であって、ワークのノッチ部に適合する形状を有する部分をいう。
【0019】
研磨パッドの表面と水平な方向と平行に近い配向を有する繊維の割合を増やす場合は、フリースの厚さを調整したり、積層枚数や交絡密度を調整したり、不織布に対する樹脂の組成・粘度や含浸割合(絞り)を調整したりすることにより、制御することができる。
【0020】
〔樹脂含浸不織布〕
本実施形態の研磨パッドは、不織布と該不織布に含浸した樹脂とを含む樹脂含浸不織布からなる。以下、研磨パッドを構成する樹脂含浸不織布の態様について詳述する。
【0021】
(不織布)
不織布を構成する繊維としては、特に制限されないが、例えば、ポリアミド系繊維、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系繊維、ポリプロピレンやポリエチレン等のポリオレフィン系繊維、(メタ)アクリレート等のアクリル系繊維のような合成繊維;綿及び麻のような天然繊維が挙げられる。不織布を構成する繊維は、一種単独で用いても、二種以上を併用してもよい。また、異なる繊維からなる不織布を重ねて用いてもよい。不織布を得る際に繊維を交絡させる方法としても特に限定されず、例えば、ニードルパンチであってもよく、水流交絡であってもよい。
【0022】
不織布を構成する繊維の繊度は、好ましくは0.1~10dtexであり、より好ましくは1.1~7.8dtexであり、さらに好ましくは2.2~5.6dtexである。繊度が上記範囲内であることにより、スクラッチの発生が減少するほか、研磨パッドの表面と水平な方向と平行に近い配向を有する繊維の割合を上記範囲に調整しやすくなる傾向にある。
【0023】
不織布を構成する繊維の平均繊維長は、好ましくは20~80mmであり、より好ましくは30~70mmであり、さらに好ましくは35~60mmである。平均繊維長が上記範囲内であることにより、スクラッチの発生が減少するほか、研磨パッドの表面と水平な方向と平行に近い配向を有する繊維の割合を上記範囲に調整しやすくなる傾向にある。
【0024】
不織布の厚さは、好ましくは2~7mmであり、より好ましくは3~6mmであり、さらに好ましくは4~5mmである。不織布の厚さは研磨対象となるノッチに適するよう適宜調整することができる。
【0025】
(樹脂)
不織布に含浸させる樹脂としては、特に制限されないが、例えば、水系樹脂や溶剤系樹脂が上げられ、ポリウレタン、ポリウレタンポリウレア等のポリウレタン樹脂;ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル等のアクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリフッ化ビニリデン等のビニル系樹脂;ポリサルホン、ポリエーテルサルホン等のポリサルホン系樹脂;アセチル化セルロース、ブチリル化セルロース等のアシル化セルロース系樹脂;ポリアミド系樹脂;及びポリスチレン系樹脂が挙げられる。
【0026】
このなかでも、水系樹脂が好ましく、水系ポリウレタン樹脂がより好ましい。ポリウレタン樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリエステル系ポリウレタン樹脂、ポリエーテル系ポリウレタン樹脂、及びポリカーボネート系ポリウレタン樹脂が挙げられる。このような樹脂を用いることにより、耐摩耗性がより向上する傾向にある。この理由は、特に制限されるものではないが、樹脂付着方法によって研磨パッドの断面形態が異なることに起因するものと考えられる。
【0027】
例えば、水系樹脂を不織布に含浸させ、乾燥させて、研磨パッドを得た場合と、湿式凝固により研磨パッドを得た場合とでは、研磨パッドの断面形態が異なる。湿式凝固により研磨パッドを得た場合では、通常は、図4に示すように研磨パッドの樹脂部分に凝固再生する際に生じたミクロポーラスが発生する。一方で、図3に示すように水系樹脂(水系樹脂分散液)を不織布に含浸させ、乾燥させて、研磨パッドを得た場合では、凝固再生に由来するミクロポーラスは生じない。ミクロポーラスのような空隙があるほど樹脂部は脆くなる傾向にあるため、耐摩耗性向上の観点から水系樹脂を用いることが好ましい。また、このような観点から、本実施形態の研磨パッドは樹脂がミクロポーラスを有しないことが好ましい。なお、ミクロポーラスとは、例えば、図4の写真中に確認できる樹脂部分の黒色の孔のように、湿式樹脂を凝固液に浸漬させた際に形成される略球形の孔であり、大きさは、およそ1~20μm程度であるものをいう。ミクロポーラスは不定形な繊維間の空隙とは異なるものである。
【0028】
なお、湿式凝固とは、樹脂溶液を、樹脂に対して貧溶媒である凝固液に浸漬することで樹脂を凝固再生させる方法である。不織布に樹脂溶液を含浸させた上で湿式凝固を用いる場合、凝固液中では、不織布の繊維に付着している樹脂溶液の表面で樹脂溶液の溶媒と凝固液との置換が進行し、これにより樹脂が繊維の表面に凝固再生される。
【0029】
樹脂の100%モジュラスは、好ましくは0.5~5.0MPaであり、より好ましくは0.5~4.0MPaであり、さらに好ましくは1.0~3.0MPaである。樹脂の100%モジュラスが上記範囲内であることにより、スクラッチの発生を抑制し、得られる被研磨物の品質がより向上する傾向にある。100%モジュラスは、その樹脂からなるシートを100%伸ばしたとき、すなわち元の長さの2倍に伸ばしたとき、に掛かる荷重を単位面積で割った値である。
【0030】
樹脂含浸不織布の不織布に対する樹脂の質量比率は、好ましくは1.35以上であり、より好ましくは1.40~3.00であり、さらに好ましくは1.60~2.70である。不織布に含浸させる樹脂の質量比率が上記範囲内であることにより、研磨パッドの硬度がより向上し、それによりライフがより向上する傾向にある。また、不織布と樹脂の割合を調整することにより、研磨パッドの硬度等の物理特性を調整することができる。
【0031】
樹脂含浸不織布のショアA硬度は、好ましくは60~90°であり、より好ましくは65~90°であり、さらに好ましくは75~85°である。ショアA硬度が60°以上であることにより、研磨パッドのライフがより向上する傾向にある。また、ショアA硬度が90°以下であることにより、スクラッチの発生を抑制し、得られる被研磨物の品質がより向上する傾向にある。なお、ショアA硬度は、実施例に記載の方法により測定することができる。また、ショアA硬度は、例えば、用いる樹脂の種類及び付着量により調整することができる。
【0032】
樹脂含浸不織布の密度は、好ましくは0.48~0.70g/cm3であり、より好ましくは0.48~0.62g/cm3であり、さらに好ましくは0.52~0.62g/cm3である。密度が0.48g/cm3以上であることにより、研磨パッドのライフがより向上する傾向にある。また、密度が0.70g/cm3以下であることにより、スクラッチの発生を抑制し、得られる被研磨物の品質がより向上する傾向にある。なお、密度は、実施例に記載の方法により測定することができる。また、密度は、例えば、樹脂の含浸量により調整することができる。
【0033】
樹脂含浸不織布の圧縮率は、好ましくは1.0~5.0%であり、より好ましくは1.0~4.0%であり、さらに好ましくは1.2~3.0%である。圧縮率が上記範囲内であることにより、ノッチ部との密着性がより良好となるほか、ワークの主面と研磨パッドの主面をほぼ直交するように接触させる研磨工程において研磨パッドの変形がより抑制される傾向にある。なお、圧縮率は、実施例に記載の方法により測定することができる。また、圧縮率は、上記密度を調整することにより調整することができる。
【0034】
樹脂含浸不織布の圧縮弾性率は、好ましくは75~98%であり、より好ましくは80~95%であり、さらに好ましくは85~92%である。圧縮弾性率が上記範囲内であることにより、ノッチ部との密着性がより良好となるほか、ワークの主面と研磨パッドの主面をほぼ直交するように接触させる研磨工程において研磨パッドの変形がより抑制される傾向にある。なお、圧縮弾性率は、実施例に記載の方法により測定することができる。また、圧縮弾性率は、用いる樹脂の種類により調整することができる。
【0035】
本実施形態の研磨パッドの厚さは、好ましくは2~7mmであり、より好ましくは3~6mmであり、さらに好ましくは4~5mmである。研磨パッドの厚さは研磨対象となるノッチに適するよう適宜調整することができる。
【0036】
なお、上記各種物性の測定は、特段の指定がない限り、試料を温度20±2℃、相対湿度65±5%の環境下に24時間放置した後行った。また、研磨パッドは、研磨部とそれ以外の部分との構成は一様であり、摩耗により順次研磨部となるため、研磨部に代えて、研磨部よりも中心よりの部分等を各種測定に採用することができる。
【0037】
〔研磨パッドの製造方法〕
本実施形態の研磨パッドの製造方法は、繊維がフリースの面内方向に配向したフリースを複数枚積層させ、繊維を交絡させて、不織布主面の面内方向に対して繊維が配向した不織布を作製する不織布作製工程と、不織布に水系樹脂分散液を含浸させる含浸工程と、含浸させた水系樹脂分散液を乾燥させて樹脂含浸不織布を得る乾燥工程と、得られた樹脂含浸不織布を円形または円環形に裁断する裁断工程と、裁断された樹脂含浸不織布の外周に、ワークの外周縁部に形成されたノッチ部を研磨するための研磨部を形成する研磨部形成工程と、を有する。
【0038】
〔不織布作製工程〕
不織布作製工程は、繊維が水平方向に配向したフリースを複数枚積層させ、繊維を交絡させて、不織布主面の面内方向に対して繊維が配向した不織布を作製する工程である。ここで、水平方向と面内方向は、平行である。
【0039】
不織布の作製は、フリースの形成と、フリースの繊維の結合に分けることができる。フリースの形成方法としては、特に制限されないが、例えば、乾式法、湿式法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法などが挙げられる。また、フリースの繊維の結合方法としては、特に制限されないが、例えば、ケミカルボンド法(浸漬法、スプレー法)、サーマルボンド法、ニードルパンチ法、水流交絡法(ウォータージェット法)などが挙げられる。これら各方法は任意に組み合わせることが可能であり、例えば、乾式法により繊維の方向性を整えたフリースを形成し、得られたフリースを複数枚積層させ、ニードルパンチにより繊維を交絡させて不織布を作製することができる。
【0040】
不織布作製工程では、繊維の長さ方向を水平方向に揃え、かつ、交絡時にもその繊維配向を維持することが好ましい。繊維の長さ方向を水平方向に揃える方法としては、フリースの目付を軽くして、積層枚数を多くする方法が挙げられる。一例として、乾式法を用いる場合、混打綿機で原綿のチップや塊状綿を小さな塊まで前開繊する。次に、カード機に前開繊した繊維を供給し、カード機で繊維を開繊して、目的とする目付のフリースを形成する。このようにして得られたフリースを何層も積層することで、水平方向に配向した繊維がより多くなる傾向にある。
【0041】
また、交絡後にも繊維配向を維持する方法としては、交絡条件を調整する方法が挙げられる。一例として、ニードルパンチで交絡させて不織布を形成する場合、パンチング数(密度)が少ないほど、ニードルが通過した部分に生じる交絡筋(繊維が不織布の厚み方向に配向した部分)が減少する傾向にある。一方で、パンチング数(密度)が多いほど、樹脂を含浸させた時の繊維配向が乱れにくく、研磨パッドとしたときの繊維配向を所定の範囲に調整することができる。
【0042】
〔含浸工程〕
含浸工程は、上記のようにして得られた不織布に水系樹脂分散液(エマルジョン)を含浸させる工程である。具体的な方法としては、例えば、水系樹脂分散液に不織布を十分に浸漬した後、マングルローラ等を用いて余剰な水系樹脂分散液を不織布から絞り落とすことで樹脂の付着量を調整する。水系樹脂分散液は、樹脂と水を含み、必要に応じて、その他添加剤を含んでいてもよい。樹脂としては上述したものを用いることができる。なお、「水系樹脂分散液」とは、分散媒が水であることを意味する。水系樹脂分散液には、必要に応じて、水溶性有機溶剤が含まれていてもよい。
【0043】
水系樹脂分散液としては、上述した樹脂を含む分散液であれば特に制限されない。このなかでも、樹脂エマルジョンであることが好ましく、水系ポリウレタン樹脂のエマルジョンであることがより好ましい。このような水系樹脂分散液は溶剤系樹脂と比較して高濃度であっても粘度が低い傾向にある。そのため、不織布に樹脂を多量に含浸させた場合でも、繊維の方向を乱すことなく、樹脂を含浸させることができる。
【0044】
水系樹脂分散液における樹脂の含有量は、水系樹脂分散液の総量に対して、好ましくは10~50質量%であり、より好ましくは15~45質量%であり、さらに好ましくは20~40質量%である。樹脂の含有量が上記範囲内である水系樹脂分散液を用いることにより、樹脂を比較的多く含浸させた樹脂含浸不織布が得られる傾向にある。
【0045】
〔乾燥工程〕
乾燥工程は、含浸させた水系樹脂分散液を乾燥させて樹脂含浸不織布を得る工程である。これにより、ミクロポーラスが生じることなく、樹脂含浸不織布を得ることができる。
【0046】
〔裁断工程〕
裁断工程は、上記乾燥工程を経た樹脂含浸不織布を円形または円環形(ドーナツ型円盤状)に裁断する工程である。
【0047】
〔研磨部形成工程〕
研磨部形成工程は、ワークの外周縁部に形成されたノッチ部を研磨するための研磨部を形成する工程である。円形または円環形(ドーナツ型円盤状)に裁断された樹脂含浸不織布の外周にワークの外周縁部に形成されたノッチ部を研磨するための研磨部を形成する。研磨部の形成方法としては、例えば、切削が挙げられる。
【0048】
〔研磨加工品の製造方法〕
本実施形態の研磨加工品の製造方法は、上記研磨パッドを用いて、ワークの外周縁部に形成されたノッチ部を研磨する研磨工程を有する。ワークとしては、ノッチ部を有するものであれば特に制限されない。また、研磨方法としては、図1に示すように、ワークの主面と研磨パッドの主面をほぼ直交するように接触させる方法が挙げられる。また、本実施形態の研磨加工品の製造方法は、上記の研磨工程に加えて、上記の研磨パッド又は別の研磨パッドの主面を接触面として、その研磨パッドを用いてワークの主面を研磨する別の研磨工程を有してもよい。
【0049】
研磨工程においてはスラリーを用いてもよい。スラリーに含まれる成分としては、例えば、化学機械研磨において用いられる研磨粒子(砥粒)、純水、添加剤が挙げられる。添加剤としては特に限定されないが例えば酸、アルカリ、界面活性剤、酸化剤、反応抑制剤などが挙げられる。
【0050】
界面活性剤としては、特に限定されないが非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤などがあげられる。
【0051】
酸化剤としては、特に限定されないが、例えば、過酸化水素などが挙げられる。
【0052】
また、スラリーには、必要に応じて、その他の添加剤が含まれていてもよい。そのような添加剤としては、例えば、カルボン酸エステル、カルボン酸アミド及びカルボン酸等が挙げられる。
【実施例
【0053】
以下、本発明を実施例及び比較例を用いてより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例によって何ら限定されるものではない。
【0054】
〔ショアA硬度〕
バネを介して厚さ4.5mm以上の研磨パッドの試験片表面(主面)に押針(測定子)を押し付け30秒後の押針の押し込み深さから、研磨パッドのショアA硬度を測定した。測定装置としては、デュロメータ タイプAを用いた。これを3回行って相加平均からショアA硬度を求めた。なお、試験片が4.5mm未満のときは試験片を、厚さ4.5mm以上になるように複数枚重ねて測定した。
【0055】
〔圧縮率〕
ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を用い、日本工業規格(JIS L 1021)に準拠して、研磨パッドの圧縮率を測定した。具体的には、初荷重で30秒間加圧した後の厚さt0を測定し、次に最終圧力の下で5分間放置後の厚さt1を測定した。これらから、圧縮率を下記式により算出した。このとき、初荷重は100g/cm2、最終荷重は1120g/cm2とした。
圧縮率(%)=(t0-t1)/t0×100
【0056】
〔圧縮弾性率〕
ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を用いて、日本工業規格(JIS L 1021)に準拠して、研磨パッドの圧縮弾性率を測定した。具体的には、初荷重で30秒間加圧した後の厚さt0を測定し、次に最終荷重のもとで5分間放置後の厚さt1を測定した。全ての荷重を除き、5分間放置後、再び初荷重で30秒間加圧した後の厚さt0’を測定した。これらから、圧縮弾性率を下記式により算出した。このとき、初荷重は100g/cm2、最終荷重は1120g/cm2であった。
圧縮弾性率(%)=(t0’-t1)/(t0-t1)×100
【0057】
〔厚さ〕
ショッパー型厚さ測定器(加圧面:直径1cmの円形)を用いて、日本工業規格(JIS K 6505)に準拠して、研磨パッドの厚さを測定した。具体的には、研磨パッドを10cm×10cmに切り出した試料片3枚用意し、各試料片に、厚さ測定器の所定位置にセットした後、480g/cm2の荷重をかけた加圧面を試料片の表面に載せ、5秒経過後に厚さを測定した。1枚の試料片につき、5箇所の厚さを測定し相加平均を算出し、さらに3枚の試料片の相加平均を求めた。なお、研磨パッドサイズの関係で10cm×10cmの試料片を得ることが困難な場合は研磨パッド内の15箇所の厚さを測定し相加平均を求めて研磨パッドの厚さとしてもよい。
【0058】
〔密度〕
日本工業規格(JIS K 6505)に準拠して、研磨パッドの密度を測定した。具体的には、厚さの測定で用いたものと同様の試料片を用意し、その質量を自動天秤で測定後、下記式により密度を算出し、3枚の試料片の相加平均を求めて研磨パッドの密度とした。なお、研磨パッドサイズの関係で10cm×10cmの試料片を得ることが困難な場合は、採取可能な大きさの試料片を3枚用意し試料の質量と体積から密度を算出し3枚の相加平均を求めて研磨パッドの密度としてもよい。
密度(g/cm3)=質量(g)/(10(cm)×10(cm)×試料片の厚さ(cm))
【0059】
〔繊維配向の割合の確認〕
実施例または比較例で得られた研磨パッドを、切断することで、研磨パッドの断面を露出させたサンプルを用意した。得られた研磨パッドの断面を走査型電子顕微鏡(製品名「JCM-5700」、日本電子株式会社製)により、撮影し、得られた画像データに基づいて、研磨パッドの表面と水平な方向に対して±30°以内となるように配向した繊維の割合を確認した。具体的には、100倍のSEM断面写真で見える繊維(但し、切断面が繊維断面のみで繊維の方向が見えないものは除く)の総本数と、研磨パッドの表面と水平な方向に対して±30°以内となるように配向した繊維の本数を数え、総本数に対する研磨パッドの表面と水平な方向に対して±30°以内となるように配向した繊維の本数の割合を算出した。この算出操作は、3箇所で測定し、繊維配向は、その相加平均で表した。
【0060】
〔摩擦摩耗試験〕
摩擦摩耗試験機(製品名「摩擦摩耗試験機154D」、株式会社井元製作所社製)を用いて、下記条件で摩擦摩耗試験を行った。なお、試験片としては、実施例または比較例で得られた研磨パッドを円形における円の中心軸に平行な面で切断し、断面を露出させたサンプルを3つ用意し、3つのサンプルの断面が一面に並ぶように張り合わせたものを使用した。摩擦摩耗試験機に、露出させた断面とサンドペーパーが接触するように試験片を設置して、試験を行った。摩擦摩耗試験の評価においては、下記条件下による試験片の断面の削れ量を秤量し、それに基づいて耐摩耗性を評価した。この場合、削れ量が少ないほど耐摩耗性に優れることを意味する。なお、実施例の評価は比較例の削れ量を100としたときの相対値で表した。
流水量 :50mL/min
サンドペーパー番手:#240
圧力 :296g/cm2
時間 :10min
回転数 :60rpm
【0061】
〔実施例1〕
ポリエチレンテレフタレート繊維(繊度3.3dtex、平均繊維長51mm)からなる不織布を、ポリエチレンテレフタレート原綿を混打綿機に通したのち、カード(梳綿機)によりフリースを形成し繊維の方向性を整え、積層させ、ニードルパンチで繊維をからめることにより作製した。得られた不織布は、主面の面内方向に対して±30°以内となるように配向した繊維の割合が、50%以上であった。
【0062】
得られた不織布を、水系ポリウレタンの樹脂分散液(100%モジュラス2.0Mps、製品名「ボンディック」、DIC社製)に浸漬した。浸漬後、1対のローラ間を加圧可能なマングルローラを用いて余剰の樹脂分散液を絞り落とし、不織布に樹脂分散液を略均一に含浸させた。次いで、樹脂分散液を乾燥させて樹脂含浸不織布を得た。なお、得られた樹脂含浸不織布において、不織布1質量部に対する樹脂量は1.9質量部であった。
【0063】
その後、得られた樹脂含浸不織布をドーナツ型円盤状に裁断して、外周にはワークの外周縁部に形成されたノッチ部を研磨するための研磨部を形成した。
【0064】
上記のようにして得られた研磨パッドについて、厚さ方向に切断することで、断面を形成し、研磨パッドの表面と水平な方向に対して±30°以内となるように配向した繊維の割合を確認したところ73%であった。
【0065】
図3に、実施例1の研磨パッドの断面写真の一つを示す。なお、断面写真の横方向が研磨パッドの表面と水平な方向であり、縦方向が研磨パッドの厚さ方向である。図3に示すように、水系樹脂を用いた場合には繊維の配向性が維持され、繊維の向きが異方的なものとなることが分かる。
【0066】
〔実施例2〕
不織布1質量部に対する樹脂量を1.5質量部としたこと以外は、実施例1と同様にして、研磨パッドを得た。得られた研磨パッドについて、厚さ方向に切断することで、断面を形成し、研磨パッドの表面と水平な方向に対して±30°以内となるように配向した繊維の割合を確認したところ60%であった。
【0067】
〔比較例1〕
実施例1で得られた不織布を、湿式ポリウレタン樹脂(100%モジュラス12Mps、製品名「クリスボン」、DIC社製)とN,N-ジメチルホルムアミドとを含む樹脂溶液中に浸漬した。浸漬後、1対のローラ間を加圧可能なマングルローラを用いて余剰の樹脂溶液を絞り落とし、不織布に樹脂溶液を略均一に含浸させた。次いで、室温の水からなる凝固液中に浸漬することにより、樹脂を凝固再生させて樹脂含浸不織布を得た。なお、得られた樹脂含浸不織布において、不織布1質量部に対する樹脂量は1.3質量部であった。
【0068】
その後、得られた樹脂含浸不織布をドーナツ型円盤状に裁断して、外周にはワークの外周縁部に形成されたノッチ部を研磨するための研磨部を形成した。
【0069】
上記のようにして得られた研磨パッドについて、厚さ方向に切断することで、断面を形成し、研磨パッドの表面と水平な方向に対して±30°以内となるように配向した繊維の割合を確認したところ45%であった。
【0070】
図4に、比較例1の研磨パッドの断面写真の一つを示す。なお、断面写真の横方向が研磨パッドの表面と水平な方向であり、縦方向が研磨パッドの厚さ方向である。図4に示すように、湿式樹脂を用いた場合には、樹脂の付着量を増加させるために樹脂濃度を高める必要があるが、樹脂溶液の濃度を高くすると粘度が高くなり含浸の抵抗が大きくなり、含浸時に繊維の配向性が失われ、マイグレーションなどにより更に繊維の向きに乱れが生じ、等方的なものとなることが分かる。図4の写真中に確認できる樹脂部分の黒色の孔は、ミクロポーラスと呼ばれるものであり、湿式樹脂を凝固液に浸漬させた際に形成される孔である。このミクロポーラスの大きさは、およそ1~20μm程度であり、繊維間の空隙とは異なるものである。
【0071】
なお、比較例1では、不織布として主面の面内方向に繊維が配向したものを用いたが、これが、面内方向に繊維が配向していない不織布の場合には、当然ながら、研磨パッドの表面と水平な方向に繊維が配向したものは得られなかった。
【0072】
【表1】
※繊維配向:研磨パッドの表面と水平な方向の面に対して±30°以内となるように配向した繊維の割合
【0073】
研磨パッドの研磨レートについて確認したところ、いずれのパッドも同程度の研磨レートを有していた。また、水系ポリウレタンを用いた実施例の研磨パッドは、溶剤を使用しないため、環境負荷のより少ない方法で製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明の研磨パッドは、シリコンウェハ等のワークの外周縁部に形成されたノッチ部を研磨するための研磨パッドとして、産業上の利用可能性を有する。
図1
図2
図3
図4