(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】伸縮部材
(51)【国際特許分類】
F16F 1/373 20060101AFI20230809BHJP
F16F 9/58 20060101ALI20230809BHJP
F16F 9/38 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
F16F1/373
F16F9/58 B
F16F9/38
(21)【出願番号】P 2019169066
(22)【出願日】2019-09-18
【審査請求日】2022-07-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000003148
【氏名又は名称】TOYO TIRE株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000534
【氏名又は名称】弁理士法人真明センチュリー
(72)【発明者】
【氏名】山本 梨紗子
(72)【発明者】
【氏名】上田 健
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-004084(JP,A)
【文献】特表2013-540955(JP,A)
【文献】特開2013-096430(JP,A)
【文献】特開平08-247204(JP,A)
【文献】特開昭63-279911(JP,A)
【文献】特表2018-507362(JP,A)
【文献】特開2000-301923(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 1/00- 6/00
F16F 9/00- 9/58
F16F 7/00- 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山と谷とが軸方向に連続した蛇腹状の内周面および外周面を有し、熱可塑性エラストマにより筒状に形成される伸縮部と、
前記外周面から突出する突起と、を備え、
前記外周面は、山の頂である外山頂と、
谷の底である外谷底と、
前記外山頂と前記外谷底との間であって、前記伸縮部を軸方向に収縮したときに互いに当接可能な位置にある第1当接面および第2当接面とを備え、
前記内周面は、山の頂である内山頂と、
谷の底である内谷底と、を備え、
全ての前記外谷底の径方向内側に前記内山頂が位置し、全ての前記外山頂の径方向内側に前記内谷底が位置し、
前記第1当接面が前記外谷底の軸方向の一側に連なり、前記第2当接面が前記外谷底の軸方向の他側に連なり、
前記突起は、前記第1当接面から突出する複数の第1突起と、
前記第2当接面から突出する複数の第2突起と、を備え、
互いに接触可能な前記第1当接面および前記第2当接面において、複数の前記第1突起と前記第2突起とが交互に周方向に離れて配置されることを特徴とする伸縮部材。
【請求項2】
前記突起は、径方向寸法よりも周方向寸法が大きいことを特徴とする請求項
1記載の伸縮部材。
【請求項3】
山と谷とが軸方向に連続した蛇腹状の内周面および外周面を有し、熱可塑性エラストマにより筒状に形成される伸縮部と、
前記外周面から突出する突起と、を備え、
前記外周面は、山の頂である外山頂と、
谷の底である外谷底と、
前記外山頂と前記外谷底との間であって、前記伸縮部を軸方向に収縮したときに互いに当接可能な位置にある第1当接面および第2当接面とを備え、
前記内周面は、山の頂である内山頂と、
谷の底である内谷底と、を備え、
全ての前記外谷底の径方向内側に前記内山頂が位置し、全ての前記外山頂の径方向内側に前記内谷底が位置し、
前記突起は、互いに当接可能な前記第1当接面または前記第2当接面のいずれか一方のみに設けられ、前記伸縮部の中心軸からの径方向距離が周方向に沿って変化するように全周に連続して形成されていることを特徴とする伸縮部材。
【請求項4】
前記伸縮部の中心軸を含む断面において、
前記第1当接面および前記第2当接面は、前記外谷底に連なる凹の曲線からなる内側部と、
前記内側部と前記外山頂とを連結する、直線または凸の曲線の少なくとも一方からなる外側部と、を備え、
前記突起は、前記外側部に設けられることを特徴とする請求項1
から3のいずれかに記載の伸縮部材。
【請求項5】
前記伸縮部の中心軸を含む断面において、前記外側部は、前記内側部に連なって前記伸縮部の中心軸に垂直な直線からなる垂直部を備え、
前記突起は、前記垂直部に設けられることを特徴とする請求項
4記載の伸縮部材。
【請求項6】
前記突起は、前記伸縮部の中心軸に関して回転対称に配置されることを特徴とする請求項1から
5のいずれかに記載の伸縮部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伸縮部材に関し、特に伸縮時の異音を発生し難くできる伸縮部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
蛇腹状の内周面および外周面を有する筒状に熱可塑性エラストマによって形成される伸縮部を備えた伸縮部材が知られている。この伸縮部材は、例えば、ショックアブソーバのシリンダと、そのシリンダから突出するピストンロッドに固定されるブラケットとの間に配置され、ショックアブソーバの大収縮時の衝撃を伸縮部の伸縮によって吸収するバンプストッパである(特許文献1)。特許文献1に開示された伸縮部材は、熱可塑性エラストマ製の伸縮部を変形し易くするために、伸縮部の外周面の全ての山頂の径方向内側に伸縮部の内周面の谷底を位置させ、伸縮部の外周面の全ての谷底の径方向内側に伸縮部の内周面の山頂を位置させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の技術では、伸縮部を収縮させ、内周面の谷底や外周面の谷底を支点に伸縮部が折りたたまれて軸方向に対向する2面が密着した後、一気に離れるときに、その2面の間に空気が入り難く異音が発生し易いという問題点がある。
【0005】
本発明は上述した問題点を解決するためになされたものであり、伸縮部の伸縮時の異音を発生し難くできる伸縮部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的を達成するために本発明の伸縮部材は、山と谷とが軸方向に連続した蛇腹状の内周面および外周面を有し、熱可塑性エラストマにより筒状に形成される伸縮部と、前記外周面から突出する突起と、を備え、前記外周面は、山の頂である外山頂と、谷の底である外谷底と、前記外山頂と前記外谷底との間であって、前記伸縮部を軸方向に収縮したときに互いに当接可能な位置にある第1当接面および第2当接面とを備え、前記内周面は、山の頂である内山頂と、谷の底である内谷底と、を備え、全ての前記外谷底の径方向内側に前記内山頂が位置し、全ての前記外山頂の径方向内側に前記内谷底が位置し、前記突起は、前記第1当接面および前記第2当接面の少なくとも一方に設けられる。
【発明の効果】
【0007】
請求項1記載の伸縮部材によれば、全ての外谷底の径方向内側に内山頂が位置し、全ての外山頂の径方向内側に内谷底が位置するので、内谷底や外谷底を支点に伸縮部が折りたたまれるように、熱可塑性エラストマ製の伸縮部を軸方向に収縮させ易くできる。この伸縮部が折りたたまれるときに、外谷底の軸方向の一側に連なる第1当接面と、外谷底の軸方向の他側に連なる第2当接面とが密着しようとする。しかし、第1当接面から突出する複数の第1突起と、第2当接面から突出する複数の第2突起とを備える突起によって、第1当接面と第2当接面とを密着し難くできる。その結果、伸縮部材は、第1当接面と第2当接面とが密着した後、一気に離れるときに、突起まわりから第1当接面と第2当接面との間に空気を入れ易くできるので、伸縮部の伸縮時の異音を発生し難くできる。
互いに接触可能な第1当接面および第2当接面において、複数の第1突起と第2突起とが交互に周方向に離れて配置される。これにより、伸縮部の伸縮時における第1当接面の変形の仕方と第2当接面の変形の仕方とを均一に近づけることができ、第1当接面または第2当接面の一方に応力集中することを抑制できる。その結果、伸縮部材は、突起を設けたことに起因した伸縮部の耐久性の低下をより抑制できる。
【0008】
請求項2記載の伸縮部材によれば、請求項1記載の伸縮部材の奏する効果に加え、次の効果を奏する。突起の径方向寸法よりも突起の周方向寸法が大きいので、伸縮部の収縮時に第1当接面と第2当接面とをより広い範囲で密着し難くできる。さらに、伸縮部の収縮時、第1当接面および第2当接面の変形量が径方向位置に応じて異なり易いため、突起の周方向寸法よりも突起の径方向寸法が大きい場合と比べて、その突起の長さ方向における突起の変形量の差を小さくできる。これにより、伸縮部材は、伸縮部の伸縮時に突起の長さ方向の一部のまわりに応力集中することを抑制できるので、突起を設けたことに起因した伸縮部の耐久性の低下をより抑制できる。
【0009】
請求項3記載の伸縮部材によれば、全ての外谷底の径方向内側に内山頂が位置し、全ての外山頂の径方向内側に内谷底が位置するので、内谷底や外谷底を支点に伸縮部が折りたたまれるように、熱可塑性エラストマ製の伸縮部を軸方向に収縮させ易くできる。この伸縮部が折りたたまれるときに、第1当接面と第2当接面とが密着しようとする。しかし、この第1当接面および第2当接面のいずれか一方に突起が設けられるので、突起まわりで第1当接面と第2当接面とを密着し難くできる。その結果、伸縮部材は、第1当接面と第2当接面とが密着した後、一気に離れるときに、突起まわりから第1当接面と第2当接面との間に空気を入れ易くできるので、伸縮部の伸縮時の異音を発生し難くできる。
【0010】
突起は、第1当接面または第2当接面のいずれか一方のみに全周に連続して形成されている。これにより、伸縮部の収縮時に第1当接面と第2当接面とをより広い範囲で密着し難くできる。さらに、伸縮部の中心軸から突起部までの径方向距離が周方向に沿って変化する。これにより、第1当接面または第2当接面に突起が全周に亘って密着した後、第1当接面または第2当接面から突起が離れるとき、突起のうち周方向外側に位置する部位から次第に離れていく。これらの結果、伸縮部材は、第1当接面と第2当接面との密着や、第1当接面または第2当接面への突起の密着に起因した異音の発生を抑制できる。
【0011】
請求項4記載の伸縮部材によれば、請求項1から3のいずれかに記載の伸縮部材の奏する効果に加え、次の効果を奏する。伸縮部の中心軸を含む断面において、第1当接面および第2当接面は、外谷底に連なる凹の曲線からなる内側部と、内側部の径方向外側と外山頂とを連結する、直線または凸の曲線の少なくとも一方からなる外側部と、を備えている。伸縮部の伸縮時、内側部の変形量よりも外側部の変形量が小さくなる。変形量が小さい外側部に突起が設けられているので、突起の大きさにもよるが、変形量が大きい内側部に突起が設けられる場合と比べて、伸縮部の伸縮時における突起まわりの伸縮部に応力が集中することを抑制できる。その結果、伸縮部材は、突起を設けたことに起因した伸縮部の耐久性の低下を抑制できる。
さらに、内側部よりも外谷底から径方向外側に離れた位置にある外側部に突起が設けられているので、伸縮部の伸縮時、突起によって第1当接面と第2当接面との間に早期に空気を入れ易くできる。その結果、伸縮部の伸縮時の異音をより発生し難くできる。
【0012】
請求項5記載の伸縮部材によれば、請求項4記載の伸縮部材の奏する効果に加え、次の効果を奏する。伸縮部の中心軸を含む断面において、外側部は、内側部に連なって中心軸に垂直な直線からなる垂直部を備えている。伸縮部が収縮後に伸長するとき、当接していた垂直部の径方向内側同士が先に離れ易くなる。このような垂直部に突起が設けられているので、伸縮部の伸長時に垂直部の径方向内側へ空気を入れ易くできる。その結果、伸縮部の伸縮時の異音をより発生し難くできる。
【0013】
請求項6記載の伸縮部材によれば、請求項1から5のいずれかに記載の伸縮部材の奏する効果に加え、次の効果を奏する。突起が伸縮部の中心軸に関して回転対称に配置される。これにより、伸縮部の変形の仕方を周方向に亘って均一に近づけることができ、伸縮時に伸縮部の周方向の一部に応力が集中することを抑制できる。その結果、伸縮部材は、突起を設けたことに起因した伸縮部の耐久性の低下をより抑制できる。
【0014】
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】第1実施形態における伸縮部材を有するストッパユニットの断面図である。
【
図2】
図1のII部分を拡大したストッパユニットの部分拡大断面図である。
【
図4】
図3のIV-IV線における伸縮部材の断面図である。
【
図5】第2実施形態における伸縮部材の部分断面図である。
【
図6】(a)は
図5のVIa-VIa線における伸縮部材の断面図であり、(b)は
図6(a)のVIb-VIb線における伸縮部材の断面図である。
【
図7】(a)は第3実施形態における伸縮部材の部分断面図であり、(b)は第1突起に沿って切断した伸縮部材の断面図である。
【
図8】第4実施形態における伸縮部材の正面図である。
【
図9】
図8のIX-IX線における伸縮部材の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好ましい実施の形態について、添付図面を参照して説明する。まず、
図1及び
図2を参照して第1実施形態における伸縮部材20を有するストッパユニット10及びショックアブソーバ1について説明する。
図1は、ショックアブソーバ1のピストンロッド4の中心軸Cを含む、ショックアブソーバ1に取り付けられたストッパユニット10の断面図である。
図2は、
図1のII部分を拡大したストッパユニット10の部分拡大断面図である。
【0017】
図1及び
図2に示すように、ショックアブソーバ1は、主に車輪(図示せず)と車体(図示せず)とを繋ぎ、車輪から車体への振動を緩衝するためのサスペンションの一部である。ショックアブソーバ1は、車体を支えつつ車輪からの衝撃を吸収するコイルスプリング(図示せず)の振動を減衰する。ショックアブソーバ1は、車輪側に取り付けられるシリンダ2と、シリンダ2の軸方向端面3から突出するピストンロッド4とを主に備える。ショックアブソーバ1は、車輪からの荷重入力に伴って、シリンダ2からのピストンロッド4の突出量が変化して伸縮し、振動を減衰する。
【0018】
ストッパユニット10は、ピストンロッド4が取り付けられる筒状のブラケット11と、ブラケット11のシリンダ2側に取り付けられる筒状の伸縮部材(ストッパ)20とを備える。ブラケット11は、ピストンロッド4の先端が固定される円筒部12と、円筒部12から径方向外側へ張り出す円板部13と、ゴムや熱可塑性エラストマなどの弾性体により形成されて円板部13の周囲を取り囲む弾性部14と、弾性部14を軸方向からそれぞれ挟む第1固定具15及び第2固定具16と、を備える。
【0019】
第1固定具15及び第2固定具16は、車体側に固定される金属製の部材である。第1固定具15は、弾性部14に対してシリンダ2とは反対側に位置する板材である。第2固定具16は、弾性部14のシリンダ2側と径方向外側とを囲って支持する筒体である。
【0020】
第2固定具16は、シリンダ2側の軸方向端面である円環状の接触面17と、接触面17の内周縁から弾性部14へ向かう内周面である被圧入面18と、を備える。接触面17は、中心軸Cと略垂直に形成され、シリンダ2の軸方向端面3と向かい合う。この接触面17と軸方向端面3との間で伸縮部材20が軸方向に圧縮される。
【0021】
被圧入面18は、中心軸Cを含む断面において中心軸Cと平行に、即ち接触面17に対して略垂直に略全体が形成されている。被圧入面18は、ピストンロッド4や円筒部12と所定の空間を隔てて同心円状に配置される。被圧入面18には、後述する伸縮部材20の取付部21が圧入される。被圧入面18には、取付部21の爪部24が嵌まる嵌合凹部19が軸方向の略中央に設けられている。
【0022】
伸縮部材20は、ピストンロッド4の外周を囲むようにシリンダ2とブラケット11との間に配置される筒状の部材である。伸縮部材20は、中心軸Cに垂直な断面が中心軸Cを中心とした円環状に形成されている。即ち、ピストンロッド4の中心軸Cとは、伸縮部材20の中心軸でもある。
【0023】
伸縮部材20は、各部が一体形成された熱可塑性エラストマ製の部材である。伸縮部材20を形成する熱可塑性エラストマの種類には、熱可塑性エラストマの特性に大きく寄与するハードセグメントに応じて、スチレン系、オレフィン系、ジエン系、塩化ビニル系、ウレタン系、エステル系、アミド系、フッ素系などが挙げられる。本実施形態の熱可塑性エラストマは、エステル系(例えば、ポリブチレンテレフタレート)のハードセグメントと、脂肪族ポリエーテル(例えば、ポリテトラメチレンエーテルグリコール)のソフトセグメントとのブロック共重合体である。このような市販の熱可塑性エラストマとしては、例えば、東レ・デュポン株式会社製「ハイトレル」(登録商標)が挙げられる。
【0024】
伸縮部材20は、ショックアブソーバ1の大収縮時、シリンダ2の軸方向端面3とブラケット11の接触面17との間に伸縮部材20が挟まれて軸方向に圧縮されることで、伸縮部材20の弾性力によって圧縮時の衝撃を吸収する。伸縮部材20は、第2固定具16の被圧入面18に圧入して嵌めることが可能に構成される略円筒状の取付部21と、取付部21のシリンダ2側の軸方向端部に連なる筒状の伸縮部30と、伸縮部30の外周面から突出する複数の第1突起41及び第2突起42(
図3参照)と、を備える。
【0025】
取付部21は、伸縮部30とは反対側の軸方向の先端の外周面から径方向外側へ突出する爪部24を備える。爪部24は、取付部21の周方向に断続的に設けられる部位である。この爪部24を被圧入面18の嵌合凹部19に嵌めることで、取付部21はブラケット11から外れ難くなる。
【0026】
伸縮部30は、シリンダ2の軸方向端面3とブラケット11の接触面17との間で軸方向に圧縮されて、衝撃を吸収する部位である。伸縮部30の外周面および内周面は、複数の山と谷とが軸方向に連続した蛇腹状に形成されている。伸縮部30の外周面は、取付部21から径方向外側へ張り出すように取付部21の外周面に連なる軸方向の端面31と、シリンダ2の軸方向端面3に接触可能な受圧面32と、山の頂である複数の外山頂33と、谷の底である複数の外谷底34と、外山頂33と外谷底34との間である第1当接面35及び第2当接面36と、を備える。
【0027】
端面31は、ショックアブソーバ1の大収縮時にブラケット11の接触面17に押し付けられて密着する面である。この端面31から取付部21が軸方向に突出している。受圧面32は、ショックアブソーバ1の大収縮時にシリンダ2の軸方向端面3と面接触して密着する面である。
【0028】
伸縮部30の内周面は、山の頂である複数の内山頂37と、谷の底である複数の内谷底38と、を備える。全ての外谷底34の径方向内側にそれぞれ内山頂37が位置し、全ての外山頂33の径方向内側にそれぞれ内谷底38が位置する。即ち、中心軸Cに垂直な仮想平面のうち、外山頂33が位置する仮想平面上には内谷底38が必ず位置し、外谷底34が位置する仮想平面上には内山頂37が必ず位置する。
【0029】
これにより、内谷底38や外谷底34を支点に伸縮部30が折りたたまれるように、伸縮部30を軸方向に収縮できる。そのため、一般的にゴムや発泡合成樹脂よりも硬い熱可塑性エラストマにより伸縮部30を形成しても、伸縮部30を軸方向に収縮させ易くできる。
【0030】
また、本実施形態では、複数の外山頂33の中心軸Cからの距離が、端面31側から受圧面32側へ向かうにつれて小さくなっている。同様に、複数の外谷底34の中心軸Cからの距離、複数の内山頂37の中心軸Cからの距離、複数の内谷底38の中心軸Cからの距離がそれぞれ、受圧面32側へ向かうにつれて小さくなっている。
【0031】
外谷底34及び内谷底38は、中心軸Cを含む断面において点である。第1当接面35及び第2当接面36は、伸縮部30を軸方向に収縮したときに互いに当接可能な部位である。外谷底34の端面31側に連なる部分が第1当接面35であり、外谷底34の受圧面32側に連なる部分が第2当接面36である。外山頂33及び内山頂37は、伸縮部30を軸方向に収縮したときに互いに当接しない部位であり、中心軸Cを含む断面において凸の曲線からなる。
【0032】
第1当接面35は、外谷底34の全周に連なる内側部35aと、内側部35aの全周と外山頂33の全周とを連結する外側部35bと、を備えている。内側部35aは、中心軸Cを含む断面において、凹の曲線からなる。外側部35bは、中心軸Cを含む断面において、凸の曲線からなる。内側部35aと外側部35bとの変曲点である境界35cは、第1当接面35の外周面の全周に亘って連続している。
【0033】
同様に第2当接面36は、中心軸Cを含む断面において、外谷底34に連なる凹の曲線からなる内側部36aと、内側部36aと外山頂33とを連結する凸の曲線からなる外側部36bと、を備えている。内側部36aと外側部36bとの変曲点である境界36cは、第2当接面36の外周面の全周に亘って連続している。
【0034】
次に
図3及び
図4を参照して第1突起41及び第2突起42について説明する。
図3は伸縮部材20の正面図である。
図4は
図3のIV-IV線における伸縮部材20の断面図である。なお、
図3では伸縮部30の軸方向の一部(受圧面32側の一部)の図示を省略している。また、
図3には境界35c,36cが二点鎖線で図示されている。
【0035】
図3及び
図4に示すように、第1突起41は、第1当接面35のうち境界35cよりも径方向外側に位置する外側部35bから突出している。第2突起42は、第2当接面36のうち境界36cよりも径方向外側に位置する外側部36bから突出している。第1突起41及び第2突起42は、伸縮部30と一体成形されている。第1突起41及び第2突起42は、形状および寸法が互いに同一の略半球状に形成されている。即ち、この半球の直径L2が第1突起41及び第2突起42の径方向寸法や周方向寸法と略同一である。
【0036】
第1突起41は、中心軸Cまわりの周方向に等間隔に8個設けられ、中心軸Cに関して回転対称に配置されている。同様に、第2突起42は、中心軸Cまわりの周方向に等間隔に8個設けられ、中心軸Cに関して回転対称に配置されている。第1突起41及び第2突起42は、中心軸Cからの径方向距離がそれぞれ同一である。即ち、中心軸Cを中心とした所定半径の仮想円上に全ての第1突起41及び第2突起42が配置されている。
【0037】
周方向に隣り合う第1突起41同士の間隔L1と、周方向に隣り合う第2突起42同士の間隔L1とは同一である。また、周方向に隣り合う第1突起41の周方向の中央に第2突起42が位置し、周方向に隣り合う第2突起42の周方向の中央に第1突起41が位置する。即ち、第1突起41と第2突起42とが交互に周方向に離れて配置され、その周方向に隣り合う第1突起41と第2突起42との間隔も全周に亘って同一である。
【0038】
以上のような伸縮部材20によれば、全ての外谷底34の径方向内側に内山頂37が位置し、全ての外山頂33の径方向内側に内谷底38が位置するので、内谷底38や外谷底34を支点に伸縮部30が折りたたまれるように、熱可塑性エラストマ製の伸縮部30を軸方向に収縮させ易くできる。この伸縮部30が折りたたまれるときに、第1当接面35と第2当接面36とが密着しようとする。第1当接面35と第2当接面36とが密着した後、第1当接面35と第2当接面36とが一気に離れるとき、その第1当接面35と第2当接面36との間に空気が入り難いと、伸縮部30の伸縮に伴って異音が発生し易くなる。
【0039】
これに対して、本実施形態では、第1当接面35及び第2当接面36からそれぞれ第1突起41及び第2突起42が突出しているので、第1突起41及び第2突起42まわりで第1当接面35と第2当接面36とを密着し難くできる。その結果、第1当接面35と第2当接面36との一部が密着した後、一気に離れるときに、第1突起41及び第2突起42まわりから第1当接面35と第2当接面36との間に空気を入れ易くできる。よって、伸縮部材20は、伸縮部30の伸縮時の異音を発生し難くできる。
【0040】
但し、第1突起41及び第2突起42が無い従来の伸縮部材に対して、伸縮部材20では、伸縮部30の伸縮時に、伸縮部30のうち第1突起41及び第2突起42を挟む部位(第1当接面35や第2当接面36)に応力が集中し易くなることがある。さらに、伸縮部30の伸縮時において、第1突起41及び第2突起42が設けられる部位の変形量が大きい程、第1突起41や第2突起42も大きく変形して、第1突起41及び第2突起42まわりの伸縮部30に応力が集中し易くなる。
【0041】
外谷底34を支点に折りたたまれて伸縮部30が収縮するとき、凹の曲線からなる内側部35a,36aの変形量よりも、凸の曲線からなる外側部35b,36bの変形量が小さくなる。本実施形態では、この外側部35b,36bにそれぞれ第1突起41及び第2突起42が設けられている。これにより、変形量が大きい内側部35a,36aに第1突起41や第2突起42が設けられる場合と比べて、伸縮部30の伸縮時における第1突起41や第2突起42まわりの応力集中を抑制できる。そのため、第1突起41や第2突起42を設けたことに起因した伸縮部30の耐久性の低下を抑制できる。
【0042】
特に、本実施形態で用いられる熱可塑性エラストマは、ゴムと比べて、成形後に初めて収縮したときに大きな歪みが残り易い(塑性変形し易い)。そのため、熱可塑性エラストマ製の伸縮部30の初めての収縮後には、伸縮時に変形し易い内側部35a,36aの塑性変形量が大きく、伸縮時に変形し難い外側部35b,36bの塑性変形量が小さい。
【0043】
この塑性変形量が小さい外側部35b,36bにそれぞれ第1突起41及び第2突起42が設けられているので、第1突起41や第2突起42の有無に応じて、塑性変形した後の伸縮部30の変形の仕方を変わり難くできる。これにより、その変形の仕方に応じた伸縮部30の緩衝特性や耐久性を、第1突起41や第2突起42が有る場合と無い場合とで略同様にできる。その結果、第1突起41や第2突起42が無い従来の伸縮部材用に設計された伸縮部30を用いて、第1突起41や第2突起42を有する伸縮部材20の伸縮部30の緩衝特性や耐久性を容易に設定できる。
【0044】
さらに、外側部35b,36bは、外谷底34から径方向外側に離れた位置にある。伸縮部30が収縮後に伸長するとき、第1当接面35と第2当接面36とが径方向外側から順に、即ち外側部35b,36b、内側部35a,36aの順に離れていくことが多い。そのため、外側部35b,36bに第1突起41及び第2突起42があることで、第1当接面35と第2当接面36との間に、第1突起41及び第2突起42によって早期に空気を入れ易くできる。その結果、伸縮部30の伸縮時の異音をより発生し難くできる。
【0045】
伸縮部材20は、第1突起41及び第2突起42がそれぞれ中心軸Cに関して回転対称に配置されている。そのため、伸縮時の伸縮部30の変形の仕方を周方向に亘って均一に近づけることができ、伸縮時に伸縮部30の周方向の一部に応力が集中することを抑制できる。その結果、第1突起41及び第2突起42を設けたことに起因した伸縮部30の耐久性の低下をより抑制できる。
【0046】
特に、中心軸Cから複数の第1突起41や第2突起42までの径方向距離がそれぞれ同一なので、伸縮部材20は、伸縮部30の変形の仕方を周方向に亘ってより均一に近づけることができる。さらに、複数の第1突起41や第2突起42がそれぞれ周方向に等間隔に配置されているので、伸縮部30の変形の仕方を周方向に亘ってより均一に近づけることができる。
【0047】
また、互いに接触可能な第1当接面35及び第2当接面36において、複数の第1突起41と第2突起42とが交互に周方向に離れて配置されている。これにより、伸縮部30の伸縮時における第1当接面35の変形の仕方と第2当接面36の変形の仕方とを均一に近づけることができ、第1当接面35又は第2当接面36の一方に応力集中することを抑制できる。その結果、伸縮部材20は、第1突起41及び第2突起42を設けたことに起因した伸縮部30の耐久性の低下をより抑制できる。
【0048】
特に、伸縮部材20は、第1突起41同士の間隔L1と第2突起42同士の間隔L1とが同一なので、伸縮部30の伸縮時における第1当接面35の変形の仕方と第2当接面36の変形の仕方とをより均一に近づけることができる。また、第1突起41と第2突起42とは形状および寸法が互いに同一であるので、伸縮部30の伸縮時における第1当接面35の変形の仕方と第2当接面36の変形の仕方とをより均一に近づけることができる。
【0049】
さらに、中心軸Cから全ての第1突起41及び第2突起42までの径方向距離が同一であって、第1突起41と第2突起42との間隔が全周に亘って同一である。そのため、伸縮部材20は、伸縮部30の伸縮時における第1当接面35の変形の仕方と第2当接面36の変形の仕方とを、周方向に亘って均一に近づけることができる。
【0050】
周方向寸法L2及び径方向寸法L2が同一である略半球状に第1突起41及び第2突起42が形成されている。そのため、伸縮部材20は、第1突起41及び第2突起42の周方向寸法が径方向寸法よりも大きい場合と比べ、第1突起41及び第2突起42が第1当接面35や第2当接面36に密着した後一気に離れるときに、第1突起41及び第2突起42の周方向の両側を回り込んで、第1突起41及び第2突起42の中心軸C側における第1当接面35と第2当接面36との間へ、空気を素早く入れることができる。これにより、伸縮時の異音をより発生し難くできる。
【0051】
次に
図5、
図6(a)及び
図6(b)を参照して第2実施形態について説明する。第1実施形態では、第1突起41及び第2突起42が略半球状である場合について説明した。これに対して第2実施の形態では、第1突起54及び第2突起55の径方向寸法L2よりも第1突起54及び第2突起55の周方向寸法L3が大きく形成される場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0052】
図5は第2実施形態における伸縮部材50の部分断面図であり、中心軸Cよりも紙面右側を伸縮部材50の断面図とし、中心軸Cよりも紙面左側を伸縮部材50の正面図とした。
図6(a)は
図5のVIa-VIa線における伸縮部材50の断面図である。
図6(b)は
図6(a)のVIb-VIb線における伸縮部材50の断面図である。なお、
図6(b)には、第1突起54が突出する部分の第1当接面52が二点鎖線で示されている。
【0053】
図5に示すように、伸縮部材50は、取付部21と、取付部21の軸方向端部に連なる筒状の伸縮部51と、伸縮部51の外周面から突出する複数の第1突起54及び第2突起55と、を備える。伸縮部材50は、これらの各部が一体形成された熱可塑性エラストマ製の部材である。伸縮部材50は、シリンダ2の軸方向端面3とブラケット11の接触面17との間に挟まれて軸方向に圧縮されることで、伸縮部材50の弾性力によって圧縮時の衝撃を吸収する。
【0054】
伸縮部51の外周面は、端面31と、受圧面32と、外山頂33と、外谷底34と、外山頂33と外谷底34との間を繋ぐ第1当接面52及び第2当接面53と、を備える。伸縮部51の内周面は、内山頂37と、内谷底38と、を備える。第1当接面52及び第2当接面53は、伸縮部51を軸方向に収縮したときに互いに当接可能な部位である。外谷底34の端面31側に連なる部分が第1当接面52であり、外谷底34の受圧面32側に連なる部分が第2当接面53である。
【0055】
第1当接面52は、外谷底34の全周に連なる内側部35aと、内側部35aの全周と外山頂33の全周とを連結する外側部52bと、を備えている。外側部52bは、中心軸Cを含む断面において、内側部35aに連なる直線からなる平面部52dと、平面部52dと外山頂33とを連結する凸の曲線からなる凸面部52eと、を備えている。
【0056】
同様に、第2当接面53は、外谷底34の全周に連なる内側部36aと、内側部36aの全周と外山頂33の全周とを連結する外側部53bと、を備えている。外側部53bは、中心軸Cを含む断面において、内側部36aに連なる直線からなる平面部53dと、平面部53dと外山頂33とを連結する凸の曲線からなる凸面部53eと、を備えている。内側部35a,36aと外側部52b,53bとの境界52c,53cは、伸縮部51の外周面の全周に亘って連続し、
図5に二点鎖線で示されている。
【0057】
第1突起54は、第1当接面52の外側部52bの平面部52dから突出している。第2突起55は、第2当接面53の外側部53bの平面部53dから突出している。これらの第1突起54及び第2突起55は、伸縮部51と一体成形されている。
【0058】
図6(a)に示すように、第1突起54は、中心軸Cを中心とした円弧状の部位である。具体的には、第1突起54は、第1実施形態の半球状の第1突起41を径方向寸法L2はそのままに周方向に延長して形成されている。第1突起54は、中心軸Cまわりの周方向に等間隔に4個設けられ、中心軸Cに関して回転対称に配置されている。中心軸Cから複数の第1突起54までの径方向距離はそれぞれ同一である。
【0059】
図5に示すように、第2突起55は、周方向に隣り合う第1突起54の周方向の中央に配置される。第2突起55は、第1突起54と同様に、中心軸Cを中心とした円弧状に形成されている。また、第2突起55は、中心軸Cまわりの周方向に等間隔に4個設けられ、中心軸Cに関して回転対称に配置されている。中心軸Cから複数の第2突起55までの径方向距離はそれぞれ同一である。
【0060】
中心軸Cから第1突起54までの径方向距離と、中心軸Cから第2突起55までの径方向距離とは互いに同一である。周方向に隣り合う第1突起54同士の間隔と、周方向に隣り合う第2突起55同士の間隔とは同一である。第1突起54と第2突起55とが交互に周方向に離れて配置され、その周方向に隣り合う第1突起54と第2突起55との間隔が全周に亘って同一である。
【0061】
このような第1突起54及び第2突起55が、伸縮部51の伸縮時の変形量が小さい外側部52b,53bからそれぞれ突出している。そのため、第1実施形態と同様に、伸縮部材50は、第1突起54及び第2突起55により伸縮時の異音を発生し難くできると共に、第1突起54及び第2突起55を設けたことに起因した伸縮部51の耐久性の低下を抑制できる。
【0062】
さらに、平面部52d,53dは中心軸Cを含む断面が直線なので、伸縮部51の収縮時に平面部52dと平面部53dとが密着し易い。この平面部52d,53dに第1突起54及び第2突起55を設けることで、伸縮部51の収縮時に平面部52d,53dを密着し難くでき、伸縮時の異音をより発生し難くできる。
【0063】
図6(a)及び
図6(b)を参照して第1突起54の形状および寸法について更に詳しく説明する。なお、第2突起55の形状および寸法は、第1突起54の形状および寸法と同一であるため、第2突起55の形状および寸法に関する説明を一部省略する。
【0064】
図6(a)及び
図6(b)に示すように、中心軸Cを中心とした円弧状の第1突起54は、径方向寸法L2よりも、周方向寸法L3が大きく形成されている。これにより、伸縮部51の収縮時に第1当接面52と第2当接面53とをより広い範囲で密着し難くできる。そのため、伸縮部材50は、第1実施形態のような半球状の第1突起41及び第2突起42と比べて、第1突起54及び第2突起55の数を少なくしつつ、伸縮部51の伸縮時の異音を十分に発生し難くできる。
【0065】
また、第1実施形態では、第1突起41及び第2突起42から第1当接面35や第2当接面36へ点状の局所的な荷重が加わるのに対して、第2実施形態では、第1突起54及び第2突起55から第1当接面52や第2当接面53へ線状の荷重を加えることができる。これにより、伸縮部材50は、第1突起54及び第2突起55から第1当接面52や第2当接面53へ加わる荷重を分散し易くできるので、即ち、第1突起54や第2突起55まわりの伸縮部51に応力が集中することを抑制できるので、伸縮部51の耐久性を確保できる。
【0066】
ここで、伸縮部51の伸縮時には、中心軸Cからの径方向位置に応じて第1当接面52や第2当接面53の変形量が異なり易い。そのため、第1突起54及び第2突起55の周方向寸法L3よりも第1突起54及び第2突起55の径方向寸法L2が大きい場合には、第1突起54及び第2突起55の長さ方向の位置に応じて第1突起54及び第2突起55の変形量が異なり易くなる。そうすると、第1突起54及び第2突起55のうち変形量が大きい部分のまわりの伸縮部51に応力が集中し易くなり、伸縮部51の耐久性が低下する。さらに、第1突起54及び第2突起55のうち変形量が大きい部分の周囲から、繰り返し変形に伴う伸縮部51の塑性変形が大きくなっていき、伸縮部51の耐久性が低下して緩衝特性が悪くなる。
【0067】
本実施形態では、第1突起54及び第2突起55の径方向寸法L2よりも第1突起54及び第2突起55の周方向寸法L3が大きいので、周方向寸法L3よりも径方向寸法L2が大きい場合と比べて、長さ方向における第1突起54及び第2突起55の変形量の差を小さくできる。特に、第1突起54及び第2突起55が中心軸Cを中心とした円弧状に形成されているので、長さ方向における第1突起54及び第2突起55の変形量の差をより小さくできる。これらの結果、伸縮部材50は、伸縮部51の伸縮時に第1突起54や第2突起55の長さ方向の一部のまわりに応力集中することを抑制できるので、伸縮部51の耐久性の低下や緩衝特性の悪化を抑制できる。
【0068】
第1突起54は、
図6(b)に示すような第1突起54に沿った、第1突起54が設けられる部分の第1当接面52に垂直な断面において、第1突起54の厚さT(第1当接面52から第1突起54の先端までの距離)が略一定である中央部56を備える。この中央部56は、第1突起54の周方向の中央部分に設けられ、周方向寸法が第1突起54の径方向寸法L2よりも十分に大きく形成されている。なお、同様に、第2突起55も中央部56を備える。
【0069】
伸縮部51の伸縮時に中央部56を挟む第1当接面52と第2当接面53とには、中央部56から周方向に亘って略均一な荷重が加わる。その結果、伸縮部材50は、中央部56から第1当接面52や第2当接面53に加わる荷重をより分散し易くできるので、伸縮部51の耐久性を向上できる。
【0070】
次に
図7(a)及び
図7(b)を参照して第3実施形態について説明する。第1,2実施形態では、第1当接面35,52及び第2当接面36,53からそれぞれ第1突起41,54及び第2突起42,55が突出する場合について説明した。これに対して第3実施の形態では、第1当接面62からのみ突起64が突出する場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
【0071】
図7(a)は、第3実施形態における伸縮部材60の部分断面図であり、中心軸Cよりも紙面右側を伸縮部材60の断面図とし、中心軸Cよりも紙面左側を伸縮部材60の正面図とした。
図7(b)は、突起64に沿って、突起64が設けられる部分の第1当接面62に対して垂直に切断した伸縮部材60の断面図である。なお、
図7(b)には、突起64が突出する部分の第1当接面62が二点鎖線で示されている。
【0072】
図7(a)に示すように、伸縮部材60は、取付部21と、取付部21の軸方向端部に連なる筒状の伸縮部61と、伸縮部61の外周面から突出する複数の突起64と、を備える。伸縮部材60は、これらの各部が一体形成された熱可塑性エラストマ製の部材である。伸縮部材60は、シリンダ2の軸方向端面3とブラケット11の接触面17との間に挟まれて軸方向に圧縮されることで、伸縮部材60の弾性力によって圧縮時の衝撃を吸収する。
【0073】
伸縮部61の外周面は、端面31と、受圧面32と、外山頂33と、外谷底34と、外山頂33と外谷底34との間を繋ぐ第1当接面62及び第2当接面63と、を備える。伸縮部61の内周面は、内山頂37と、内谷底38と、を備える。第1当接面62及び第2当接面63は、伸縮部61を軸方向に収縮したときに互いに当接可能な部位である。外谷底34の端面31側に連なる部分が第1当接面62であり、外谷底34の受圧面32側に連なる部分が第2当接面63である。
【0074】
第1当接面62は、外谷底34の全周に連なる内側部35aと、内側部35aの全周と外山頂33の全周とを連結する外側部62bと、を備えている。外側部62bは、中心軸Cを含む断面において、内側部35aに連なって中心軸Cに垂直な直線からなる垂直部62dと、垂直部62dと外山頂33とを連結する凸の曲線からなる凸面部62eと、を備えている。
【0075】
同様に、第2当接面63は、外谷底34の全周に連なる内側部36aと、内側部36aの全周と外山頂33の全周とを連結する外側部63bと、を備えている。外側部63bは、中心軸Cを含む断面において、内側部35aに連なって中心軸Cに垂直な直線からなる垂直部63dと、垂直部63dと外山頂33とを連結する凸の曲線からなる凸面部63eと、を備えている。内側部35a,36aと外側部62b,63bとの境界62c,63cは、伸縮部61の外周面の全周に亘って連続している。
【0076】
突起64は、第1当接面62の外側部62bの垂直部62dから突出し、伸縮部61と一体成形されている。突起64は、
図6(a)に示す第2実施形態の第1突起54と同様に配置されている。突起64は、中心軸Cを中心とした円弧状の部位である。突起64は、中心軸Cまわりの周方向に等間隔に4個設けられ、中心軸Cに関して回転対称に配置されている。中心軸Cから複数の突起64までの径方向距離はそれぞれ同一である。
【0077】
このような突起64が第1当接面62から突出しているので、第1,2実施形態と同様に、伸縮部材60は、伸縮部61の伸縮時に突起64まわりで第1当接面62と第2当接面63とを密着し難くできる。そのため、第1当接面62と第2当接面63との密着後、一気に離れるときに、突起64まわりから第1当接面62と第2当接面63との間に空気を入れ易くできるので、伸縮時の異音を発生し難くできる。さらに、第1,2実施形態と同様に、伸縮部材60は、伸縮部61の伸縮時の変形量が小さい外側部62bから突起64が突出しているので、突起64を設けたことに起因した伸縮部61の耐久性の低下を抑制できる。
【0078】
さらに、垂直部62d,63dは中心軸Cを含む断面が中心軸Cに垂直な直線なので、伸縮部61の収縮時に垂直部62d,63d同士が当接して離れるとき、垂直部62d,63dの径方向内側同士が先に離れ易くなる。このような垂直部62d,63dに突起64が設けられているので、伸縮部61の伸長時に垂直部62d,63dの径方向内側へ空気を入れ易くできる。その結果、伸縮部61の伸縮時の異音をより発生し難くできる。
【0079】
突起64の径方向寸法は、第2実施形態の第1突起54の径方向寸法L2と同一である。
図7(b)に示すように、突起64の周方向寸法L4は、突起64の径方向寸法L2よりも大きく形成されている。これにより、第2実施形態と同様に、伸縮部材60は、突起64の数を少なくしても伸縮部61の伸縮時の異音を十分に発生し難くできると共に、伸縮部61の耐久性の低下や緩衝特性の悪化を抑制できる。
【0080】
なお、突起64の周方向寸法L4は、第2実施形態の第1突起54や第2突起55の周方向寸法L3よりも大きく形成されている。突起64の周方向寸法L4は、第1突起54や第2突起55の周方向寸法L3の約2倍である。これにより、第1当接面52及び第2当接面53にそれぞれ第1突起54及び第2突起55が設けられる第2実施形態に対して、第3実施形態では第1当接面62のみに突起64が設けられていても、突起64によって伸縮部61の収縮時に第1当接面62と第2当接面63とを十分に密着し難くできる。その結果、伸縮部材60は、伸縮部61の伸縮時の異音を十分に発生し難くできる。
【0081】
突起64は、
図7(b)に示すような突起64に沿った、突起64が設けられる部分の第1当接面62に垂直な断面において、第1当接面62から突起64の先端までの距離(
突起64の厚さ)が周方向中央から周方向両端へ向かうにつれて徐々に短くなっている。
【0082】
これにより、伸縮部61の伸縮時に第1当接面62と第2当接面63とが密着した後、一気に離れるときに、突起64の周方向両端から周方向中央へ向かって突起64と第2当接面63とが次第に離れていく。伸縮部材60は、突起64の周方向両端から回り込まなくても、突起64と第2当接面63とが離れた隙間を通って、突起64の中心軸C側における第1当接面62と第2当接面63との間へ、空気を素早く入れることができる。その結果、伸縮部61の伸縮時の異音をより発生し難くできる。
【0083】
次に
図8及び
図9を参照して第4実施形態について説明する。第1,2,3実施形態では、第1突起41,54や第2突起42,55、突起64が周方向に複数配置されている場合について説明した。これに対して第4実施の形態では、突起72が周方向の全周に連続して形成されている場合について説明する。なお、第1実施の形態と同一の部分については、同一の符号を付して以下の説明を省略する。
図8は第4実施形態における伸縮部材70の正面図である。
図9は
図8のIX-IX線における伸縮部材70の断面図である。
【0084】
図8及び
図9に示すように、伸縮部材70は、取付部21と、伸縮部30と、伸縮部30の第1当接面35の外側部35bから突出する突起72と、を備える。伸縮部材70は、これらの各部が一体形成された熱可塑性エラストマ製の部材である。伸縮部材70は、シリンダ2の軸方向端面3とブラケット11の接触面17との間に挟まれて軸方向に圧縮されることで、伸縮部材70の弾性力によって圧縮時の衝撃を吸収する。
【0085】
伸縮部30の伸縮時の変形量が小さい外側部35bから突起72が突出しているので、第1,2,3実施形態と同様に、伸縮部材70は、突起72により伸縮部30の伸縮時の異音を発生し難くできると共に、突起72を設けたことに起因した伸縮部30の耐久性の低下を抑制できる。
【0086】
突起72は、中心軸Cまわりの全周に連続して形成された帯状の部位である。これにより、伸縮部30の収縮時に第1当接面35と第2当接面36とをより広い範囲で密着し難くできるので、伸縮部30の伸縮時の異音をより発生し難くできる。
【0087】
突起72は、中心軸Cから突起72までの径方向距離が周方向に沿って滑らかに変化する。具体的に、突起72は、中心軸Cからの径方向距離が最大値L5となる部分と、中心軸Cからの径方向距離が最小値L6となる部分とが、交互に周方向に等間隔に設けられている。さらに、中心軸Cの軸方向から見て、突起72のうち最大値L5となる部分は、径方向外側へ向かって凸の曲線状に形成され、最小値L6となる部分は、径方向内側へ向かって凸の曲線状に形成されている。これらの曲線同士が滑らかに繋がっている。
【0088】
伸縮部30の伸縮時、第1当接面35と第2当接面36とが密着した後、第1当接面35と第2当接面36とは主に径方向外側から次第に離れていく。そのため、第2当接面36に突起72が全周に亘って密着した後、突起72のうち最も周方向外側に位置する最大値L5となる部位から、最小値L6となる部位へ向かって次第に突起72が第2当接面36から離れていく。このように、伸縮部材70は、突起72が第2当接面36から一気に離れることを防止できるので、第2当接面36への突起72の密着に起因した異音の発生を抑制できる。
【0089】
特に、突起72のうち最大値L5となる部分と、最小値L6となる部分とが交互に等間隔に設けられている。そのため、伸縮部材70は、突起72が第2当接面36から次第に離れていくとき、突起72と第2当接面36とが既に離れている位置と、それらが未だに密着している位置とを周方向に亘って略均一に設けることができる。これにより、突起72と第2当接面36とが既に離れている部分を通る空気の圧力などに起因して、伸縮部30の変形の仕方が周方向に変化することを抑制できる。よって、伸縮部材70は、伸縮部30の変形の仕方を周方向に亘って均一に近づけることができるので、突起72を設けたことに起因した伸縮部30の耐久性の低下を抑制できる。
【0090】
突起72は、最大値L5となる部分や最小値L6となる部分が曲線状に形成されて、中心軸Cから突起72までの径方向距離が周方向に沿って滑らかに変化している。これにより、突起72のうち最大値L5となる部分や最小値L6となる部分が角を形成する場合と比べて、伸縮部30の伸縮時に最大値L5となる部分や最小値L6となる部分への応力集中を抑制できる。その結果、突起72や伸縮部30の耐久性の低下を抑制できる。
【0091】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内で種々の改良変形が可能であることは容易に推察できるものである。例えば、ブラケット11や伸縮部材20,50,60,70の各部の形状や寸法は適宜変更しても良い。また、中心軸Cから複数の外山頂33までのそれぞれの径方向距離を同一にしても良い。複数の外谷底34や内山頂37、内谷底38についても同様に、中心軸Cからの距離を同一にしても良い。凸面部52e,53e,62e,63eを省略し、中心軸Cを含む断面が直線からなる平面部52d又は垂直部62dによって外側部を形成しても良い。また、中心軸Cを含む断面において外山頂33を中心軸Cと略平行な直線により形成しても良い。
【0092】
また、外側部52b,53b,62b,63bの凸面部52e,53e,62e,63eに第1突起41,54や第2突起42,55、突起64,72を設けても良い。伸縮部51,61の伸縮時には第1当接面52,62と第2当接面53,63とが径方向外側から順に離れていくことが多いため、凸面部52e,53e,62e,63eに第1突起41,54や第2突起42,55、突起64,72を設けることで、第1当接面52,62と第2当接面53,63との間に早期に空気を入れ易くできる。その結果、伸縮部51,61の伸縮時の異音をより発生し難くできる。
【0093】
上記形態では、シリンダ2の軸方向端面3とブラケット11の接触面17との間に挟まれるストッパとしての伸縮部材20,50,60,70について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。伸縮部材は、山と谷とが軸方向に連続した蛇腹状の外周面および内周面の伸縮部30,51,61を有して軸方向に伸縮する部材であれば、ショックアブソーバ1の外周を覆うダストカバー等でも良い。特に、伸縮部材が軸方向に伸縮して衝撃を吸収するストッパであれば、第1当接面35,52,62と第2当接面36,53,63とが瞬間的に密着して離れるので、伸縮部材の伸縮時の異音が問題になり易い。このような伸縮部材に第1突起41,54や第2突起42,55、突起64,72を設けることで、問題になり易い伸縮部材の伸縮時の異音を抑制できるため、ストッパとしての伸縮部材に本発明を適用することが好ましい。
【0094】
上記第1,2実施形態では、第1突起41,54と第2突起42,55とが交互に周方向に離れて配置される場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。伸縮部30,51の伸縮時に第1突起41,54と第2突起42,55とが互いに接触するように配置しても良い。また、第1突起41,54や第2突起42,55、突起64,72をランダムに配置しても良く、第1当接面35,52,62や第2当接面36,53,63を形成する金型にエッチングやサンドブラスト、ショットブラスト等で形成した凹凸によって微小の第1突起41,54や第2突起42,55、突起64,72を形成しても良い。
【0095】
この場合、伸縮部30,51,61の伸縮時、微小の第1突起41,54や第2突起42,55、突起64,72まわりの伸縮部30,51,61に応力を集中させ難くできる。そのため、内側部35a,36aに微小の第1突起41,54や第2突起42,55、突起64,72を設けても、伸縮部30,51,61の耐久性を確保できる。言い換えれば、外側部35b,36b,52b,53b,62b,63bのみに第1突起41,54や第2突起42,55、突起64,72を設けることで、第1突起41,54や第2突起42,55、突起64,72を大きくしても、伸縮部30,51,61の耐久性を確保できる。
【0096】
上記第1,2実施形態では、第1当接面35,52から第1突起41,54が突出し、第2当接面36,53から第2突起42,55が突出する場合について説明したが、必ずしもこれに限られるものではない。上記第3,4実施形態のように、第1当接面35,52,62からのみ第1突起(突起)41,54を突出させ、第2突起42,55を省略しても良い。また、第2当接面36,53,63からのみ第2突起(突起)42,55を突出させ、第1突起41,54を省略しても良い。
【0097】
上記第3,4実施形態の突起64,72を、第1当接面35,52,62に代えて第2当接面36,53,63からのみ突出させても良い。また、上記第1,2実施形態のように、第1当接面35,52,62から突起(第1突起)64を突出させつつ、第2当接面36,53,63から突起(第2突起)64を突出させても良い。
【0098】
また、上記第1,2実施形態のように、第1当接面35,52,62から突起(第1突起)72を突出させつつ、第2当接面36,53,63から突起(第2突起)72を突出させても良い。この場合、第1突起72のうち最大値L5となる部分と、第2突起72のうち最大値L5となる部分とを周方向に離れて配置することが好ましい。これにより、伸縮部30,51,61の伸縮時における第1当接面35,52,62の変形の仕方と第2当接面36,53,63の変形の仕方とを均一に近づけることができる。
【0099】
但し、第1突起72と第2突起72との一部が交差し、その交差した部分から第1当接面35,52,62や第2当接面36,53,63へ加わる荷重が局所的に大きくなる。そのため、全周に連続する突起72は、第1当接面35,52,62又は第2当接面36,53,63のいずれか一方のみに設けることが好ましい。これにより、突起72から第1当接面35,52,62や第2当接面36,53,63へ加わる荷重を周方向に亘って均一に近づけることができるので、突起72に起因した伸縮部30,51,61の耐久性の低下を抑制できる。
【符号の説明】
【0100】
20,50,60,70 伸縮部材
30,51,61 伸縮部
33 外山頂
34 外谷底
35,52,62 第1当接面
35a,36a 内側部
35b,36b,52b,53b,62b,63b 外側部
36,53,63 第2当接面
37 内山頂
38 内谷底
41,54 第1突起(突起)
42,55 第2突起(突起)
62d,63d 垂直部
64,72 突起
C 中心軸