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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】暖房給湯装置
(51)【国際特許分類】
   F24D 3/08 20060101AFI20230809BHJP
   F24D 3/00 20220101ALI20230809BHJP
【FI】
F24D3/08 E
F24D3/00 K
F24D3/00 M
F24D3/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019216326
(22)【出願日】2019-11-29
(65)【公開番号】P2021085630
(43)【公開日】2021-06-03
【審査請求日】2022-08-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100111970
【弁理士】
【氏名又は名称】三林 大介
(72)【発明者】
【氏名】森 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 悠也
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-009597(JP,A)
【文献】実開昭50-090244(JP,U)
【文献】特開2018-185082(JP,A)
【文献】特開2008-051383(JP,A)
【文献】特開2019-199987(JP,A)
【文献】特開2016-038155(JP,A)
【文献】国際公開第2018/096867(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24D 3/08
F24D 3/00
F24H 15/128
F24H 15/215
F24H 15/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
共通の熱媒を用いて、暖房端末に該熱媒を循環させて暖房する暖房運転と、給湯熱交換器に該熱媒を循環させて、該給湯熱交換器に供給される水を該熱媒との熱交換で加熱して湯を生成する給湯運転とを実行可能な暖房給湯装置において、
前記熱媒を加熱する加熱手段と、
前記熱媒を送る循環ポンプと、
前記熱媒の温度を検知する温度検知手段と、
前記熱媒の温度に応じて前記加熱手段の加熱を制御する加熱制御手段と、
前記暖房端末に前記熱媒を循環させる暖房回路、および前記給湯熱交換器に前記熱媒を循環させる給湯回路のそれぞれの開度を切り換えることで、共通の前記熱媒を振り分ける分配比を変更可能な分配手段と、
前記分配手段の切り換えを制御する分配制御手段と
を備え、
前記給湯回路を閉じて前記給湯運転の停止中であり、且つ、前記暖房回路を開けて前記暖房運転の実行中に前記加熱手段の加熱を停止した状態で、前記熱媒の温度が所定温度以上になると、前記分配制御手段は、前記給湯回路を開けて開度を増大させるように前記分配手段を制御する
ことを特徴とする暖房給湯装置。
【請求項2】
請求項1に記載の暖房給湯装置において、
前記分配制御手段は、前記加熱手段による前記熱媒の加熱箇所から流出する該熱媒の温度が、前記所定温度として第1所定温度以上になると、前記給湯回路の開度を増大させるように前記分配手段を制御する
ことを特徴とする暖房給湯装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の暖房給湯装置において、
前記分配制御手段は、前記加熱手段による前記熱媒の加熱箇所に流入する該熱媒の温度が、前記所定温度として第2所定温度以上になると、前記給湯回路の開度を増大させるように前記分配手段を制御する
ことを特徴とする暖房給湯装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通の熱媒を用いて、暖房端末に熱媒を循環させて暖房する暖房運転と、給湯熱交換器に熱媒を循環させて、給湯熱交換器に供給される水を熱媒との熱交換で加熱して湯を生成する給湯運転とを実行可能な暖房給湯装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バーナなどの加熱手段で熱媒を加熱し、循環ポンプで熱媒を暖房端末に循環させて暖房する暖房運転を実行可能であると共に、共通の熱媒を給湯熱交換器に循環させて、給湯熱交換器に供給される水を熱媒との熱交換で加熱して湯を生成する給湯運転を実行可能である暖房給湯装置が知られている(特許文献1)。こうした暖房給湯装置では、暖房端末に熱媒を循環させる暖房回路と、給湯熱交換器に熱媒を循環させる給湯回路とに共通の熱媒を振り分ける分配比を変更可能な三方弁などの分配手段を備えており、分配手段を制御することで、暖房運転と給湯運転とを切り換えることが可能である。また、熱媒の温度を検知する温度検知手段を備えており、熱媒の温度に応じて加熱手段の加熱を制御すると共に、熱媒の温度が所定の停止温度に達すると、加熱手段による加熱を停止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-185082号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、こうした暖房給湯装置では、暖房運転の実行中に暖房端末側で熱媒の流量が絞られることがあり、加熱手段へと供給される熱媒の総流量が大きく減少するのに伴い、熱媒を加熱する加熱手段の加熱量が抑制されても、流量の減少と加熱量の抑制との間にはタイムラグがあり、熱媒の温度が上昇してしまう。そして、熱媒の温度が停止温度に達すると、加熱手段による加熱を停止するものの、停止後も加熱手段の余熱で熱媒の温度が上昇すること(いわゆる後沸き)でオーバーシュートが発生する。こうして局所的に高温となった熱媒が少ない流量で循環することにより、温度検知手段で検知される熱媒の温度が変動して設定温度で安定するまでに時間がかかってしまうという問題があった。
【0005】
この発明は、従来の技術が有する上述した課題に対応してなされたものであり、暖房給湯装置で暖房運転を実行中に、暖房端末側で熱媒の流量が絞られたとしても、熱媒の温度の変動を速やかに緩和して安定するまでの時間を短縮することが可能な技術の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明の暖房給湯装置は次の構成を採用した。すなわち、
共通の熱媒を用いて、暖房端末に該熱媒を循環させて暖房する暖房運転と、給湯熱交換器に該熱媒を循環させて、該給湯熱交換器に供給される水を該熱媒との熱交換で加熱して湯を生成する給湯運転とを実行可能な暖房給湯装置において、
前記熱媒を加熱する加熱手段と、
前記熱媒を送る循環ポンプと、
前記熱媒の温度を検知する温度検知手段と、
前記熱媒の温度に応じて前記加熱手段の加熱を制御する加熱制御手段と、
前記暖房端末に前記熱媒を循環させる暖房回路、および前記給湯熱交換器に前記熱媒を循環させる給湯回路のそれぞれの開度を切り換えることで、共通の前記熱媒を振り分ける分配比を変更可能な分配手段と、
前記分配手段の切り換えを制御する分配制御手段と
を備え、
前記給湯回路を閉じて前記給湯運転の停止中であり、且つ、前記暖房回路を開けて前記暖房運転の実行中に前記加熱手段の加熱を停止した状態で、前記熱媒の温度が所定温度以上になると、前記分配制御手段は、前記給湯回路を開けて開度を増大させるように前記分配手段を制御する
ことを特徴とする。
【0007】
このような本発明の暖房給湯装置では、給湯運転を停止して暖房運転のみを実行中に、加熱手段の加熱を停止しているにもかかわらず、熱媒の温度が上昇するのであれば、暖房端末側で熱媒の流量が絞られて、加熱手段へと供給される熱媒の総流量が大きく減少し、後沸きで局所的に熱媒が高温となっていることが疑われる。そこで、分配手段を制御して給湯回路を開けて開度を増大させれば、給湯回路を流れる熱媒の流量が増すことにより、循環する熱媒の総流量を確保することができるので、局所的に高温となっていた熱媒が拡散し、給湯回路を閉じたまま開度を変更しない場合に比べて、熱媒の温度の変動が速やかに緩和され、熱媒の温度が安定するまでの時間を短縮することが可能となる。
【0008】
上述した本発明の暖房給湯装置では、加熱手段による熱媒の加熱箇所から流出する熱媒の温度が第1所定温度以上になると、給湯回路の開度を増大させるように分配手段を制御してもよい。
【0009】
加熱手段の加熱を停止した後の余熱による後沸きの影響は、まず加熱箇所から流出する熱媒の温度(往き温度)に顕著に現れるため、この往き温度が第1所定温度以上になったことに基づき、分配手段を制御して給湯回路の開度を増大させることにより、熱媒の温度の上昇(オーバーシュート)を迅速に抑制することが可能となる。
【0010】
また、こうした本発明の暖房給湯装置では、加熱手段による熱媒の加熱箇所に流入する熱媒の温度が第2所定温度以上になると、給湯回路の開度を増大させるように分配手段を制御してもよい。
【0011】
局所的に高温となった熱媒が循環するのに伴って、加熱箇所に流入する熱媒の温度(戻り温度)も上昇し、高温の熱媒が少ない流量で時間をかけて加熱箇所に流入すると、加熱箇所の損傷のリスクが高まる。そこで、熱媒の戻り温度が第2所定温度以上になったことに基づき、分配手段を制御して給湯回路の開度を増大させることにより、加熱箇所に流入する熱媒の総流量を確保して加熱箇所の損傷のリスクを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施例の暖房給湯装置1の構成を示した説明図である。
図2】本実施例の暖房端末の構成を示した説明図である。
図3】本実施例の三方弁29の構成を示した断面図である。
図4】本実施例のコントローラ40が実行する暖房運転中処理のフローチャートである。
図5】本実施例の温度変動緩和処理のフローチャートである。
図6】本実施例の三方弁29の中間状態を示した断面図である。
図7】暖房運転の実行中に暖房端末側で熱媒の流量が絞られたことにより、熱媒の温度が変動する様子を示した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施例の暖房給湯装置1の構成を示した説明図である。図示されるように暖房給湯装置1は、ハウジング2で覆われた内部に、燃料ガスと燃焼用空気との混合ガスを燃焼させるバーナ3を内蔵した燃焼ユニット4を備えている。燃焼ユニット4には、燃焼ファン5が接続されており、この燃焼ファン5によって混合ガスが送り込まれる。
【0014】
燃焼ファン5の吸入側には、燃焼用空気を供給する空気供給路7と、燃料ガスを供給するガス供給路8とを合流させる合流部6が設けられている。ガス供給路8には、ガス供給路8を開閉する開閉弁(図示省略)や、上流側から圧送される燃料ガスの圧力を大気圧に下げるゼロガバナ9が設けられている。合流部6には、調節弁が内蔵されており、燃焼ファン5に流入する燃焼用空気と燃料ガスとの比率を調節することが可能になっている。燃焼ファン5を駆動すると、ハウジング2内の空気と、ガス供給路8のゼロガバナ9よりも下流側の燃料ガスとが合流部6を通って所定の比率で燃焼ファン5に吸い込まれ、混合ガスが燃焼ユニット4に送り込まれる。
【0015】
燃焼ユニット4では、内蔵のバーナ3で混合ガスの燃焼が行われる。図示した例では、バーナ3から下方に向けて混合ガスが噴出するようになっており、下向きに炎が形成されると共に、燃焼排気が下方へと送られる。燃焼ファン5は、暖房給湯装置1の全体を制御するコントローラ40と電気的に接続されており、コントローラ40は、必要とされる加熱量に応じて燃焼ファン5の回転数を変更することで、バーナ3での燃焼量を制御する。尚、本実施例のバーナ3は、本発明の「加熱手段」に相当しており、本実施例のコントローラ40は、本発明の「加熱制御手段」に相当している。
【0016】
また、燃焼ユニット4には、高電圧の放電によって火花を飛ばす点火プラグ11や、バーナ3の火炎(着火)を検知するフレームロッド12や、燃焼ユニット4から燃焼ファン5への逆流を阻止する逆止弁13が設けられている。点火プラグ11およびフレームロッド12は、コントローラ40と電気的に接続されている。
【0017】
バーナ3の下方には、第1熱交換器15が設けられており、第1熱交換器15の下方には、第2熱交換器16が設けられている。バーナ3での燃焼によって生じた燃焼排気は、下方へと送られ、第1熱交換器15および第2熱交換器16を通過する。このとき、第1熱交換器15では、燃焼排気から顕熱を回収し、第2熱交換器16では、燃焼排気から潜熱を回収する。
【0018】
そして、第1熱交換器15および第2熱交換器16を通過した燃焼排気は、排気ダクト17を通って、ハウジング2の上部に突出した排気口18から排出される。また、図示した例では、ハウジング2の上部に給気口19が設けられており、給気口19からハウジング2内に取り入れた空気が、空気供給路7を介して燃焼ファン5に吸い込まれる。
【0019】
第1熱交換器15は、上流側が第2熱交換器16の下流側と接続されている。また、第1熱交換器15の下流側は、後述する暖房端末の上流側と往き通路21を介して接続されており、第2熱交換器16の上流側は、後述する暖房端末の下流側と戻り通路22を介して接続されている。戻り通路22には、温水などの熱媒を第2熱交換器16に向けて送る循環ポンプ23や、第2熱交換器16に流入する熱媒の温度(以下、戻り温度)を検知する戻り温度センサ24が設けられている。循環ポンプ23および戻り温度センサ24は、コントローラ40と電気的に接続されている。尚、本実施例の戻り温度センサ24は、本発明の「温度検知手段」に相当している。
【0020】
前述したように第2熱交換器16では、バーナ3の燃焼排気から潜熱を回収しており、循環ポンプ23の作動によって第2熱交換器16に送られた熱媒は、回収した熱で予備加熱された後、第1熱交換器15へと送られる。第1熱交換器15では、バーナ3の燃焼排気から回収した顕熱によって熱媒が加熱され、高温になった熱媒が往き通路21を通って暖房端末に供給される。往き通路21には、第1熱交換器15から流出する熱媒の温度(以下、往き温度)を検知する往き温度センサ25が設けられており、往き温度センサ25は、コントローラ40と電気的に接続されている。詳しくは後述するが、コントローラ40は、往き温度センサ25で検知される熱媒の温度に応じて必要とされる加熱量を判断し、バーナ3での燃焼を制御するようになっている。尚、本実施例の往き温度センサ25は、本発明の「温度検知手段」に相当している。また、本実施例の第2熱交換器16および第1熱交換器15は、本発明の「加熱箇所」に相当している。
【0021】
暖房端末を通過して冷めた熱媒は、戻り通路22を通って循環ポンプ23まで戻り、再び第2熱交換器16へと送られる。本実施例の循環ポンプ23は、一定の回転数を維持して熱媒を送るようになっている。このように循環させる熱媒は、温水に限られず、シリコーン油などを用いてもよい。また、第1熱交換器15には、燃焼排気が接する位置を避けてオーバーヒートスイッチ26が設けられている。オーバーヒートスイッチ26は、バイメタスイッチなどで構成された安全装置であり、熱媒の温度が所定の作動温度(本実施例では97度前後)に達した状態が所定時間継続すると作動して、バーナ3での燃焼を強制的に停止させる(燃料ガスの供給を遮断する)ようになっている。
【0022】
また、往き通路21の往き温度センサ25よりも下流側から分岐通路27が分岐しており、戻り通路22の循環ポンプ23よりも上流側に接続されている。この分岐通路27には、給湯熱交換器28が設けられており、分岐通路27と戻り通路22との接続部分には、三方弁29が設けられている。三方弁29の構成については別図を用いて後述するが、第1熱交換器15から流出する熱媒を、暖房端末を通るルート(暖房回路)と、給湯熱交換器28を通るルート(給湯回路)とに振り分ける分配比を三方弁29によって変更することが可能である。三方弁29は、コントローラ40と電気的に接続されている。尚、本実施例の三方弁29は、本発明の「分配手段」に相当しており、本実施例のコントローラ40は、本発明の「分配制御手段」に相当している。
【0023】
給湯熱交換器28は、液-液熱交換器であり、給水通路30および出湯通路31が接続されている。給水通路30を通って給湯熱交換器28に供給される上水は、給湯熱交換器28で熱媒との熱交換によって加熱されて湯となり、出湯通路31に流出する。給水通路30には、暖房給湯装置1に流入する上水の流量を計測する水量センサ32や、上水の流量を調節する水量サーボ33や、上水の温度を検知する給水温度センサ34が設けられている。出湯通路31には、給湯熱交換器28から流出した直後の湯の温度を検知する給湯熱交出口温度センサ35が設けられている。これら水量センサ32、水量サーボ33、給水温度センサ34、給湯熱交出口温度センサ35は、コントローラ40と電気的に接続されている。
【0024】
また、本実施例の暖房給湯装置1では、給水通路30と出湯通路31とがバイパス通路36で接続されている。暖房給湯装置1に流入した上水は、一部が給湯熱交換器28に供給されることなくバイパス通路36を通過可能であり、残りが給湯熱交換器28に供給される。そして、給湯熱交換器28で加熱された湯は、バイパス通路36を通った上水と混合されて暖房給湯装置1から流出する。バイパス通路36と出湯通路31との接続部分にはバイパスサーボ37が設けられており、給湯熱交換器28で加熱された湯と、バイパス通路36を通った上水との混合比は、バイパスサーボ37によって変更することが可能である。バイパスサーボ37は、コントローラ40と電気的に接続されている。
【0025】
出湯通路31のバイパスサーボ37よりも下流側には、暖房給湯装置1から流出する湯の温度を検知する出湯温度センサ38が設けられている。上述のように給水通路30の上水の一部が給湯熱交換器28を経ずにバイパス通路36を通って出湯通路31に合流すると、出湯温度センサ38での検知温度は、給湯熱交出口温度センサ35での検知温度よりも低くなることから、バイパスサーボ37で混合比を調節することによって、暖房給湯装置1から流出する湯の温度変動を抑制することができる。
【0026】
さらに、コントローラ40には、給湯用リモコン41や暖房用リモコン42が接続されている。使用者は、給湯用リモコン41を操作することで、給湯運転のON状態とOFF状態とを切り換えたり、給湯温度を設定したりすることが可能である。また、使用者は、暖房用リモコン42を操作することで、暖房運転の開始や停止を指示したり、暖房温度を設定したりすることが可能である。
【0027】
図2は、本実施例の暖房端末の構成を示した説明図である。まず、図2(a)に示した例では、暖房端末として床暖房50が接続されている。床暖房50は、蛇行するパイプ51を備えており、上流側に往き通路21が接続され、下流側に戻り通路22が接続されている。そして、熱媒がパイプ51を通過しながら放熱することで周囲を暖める。こうした床暖房50は、複数の部屋にそれぞれ設置されることがある。
【0028】
図2(b)には、3つの床暖房50a,50b,50cを備えた例が示されており、これら3つの床暖房50a~50cは、互いに並列に接続されている。すなわち、往き通路21は、3つに分岐して床暖房50a~50cの各々の上流側に接続されており、床暖房50a~50cの各々の下流側に接続された戻り通路22は、1つに合流して三方弁29に接続されている。
【0029】
また、各床暖房50には、図2(a)に示されるように、パイプ51を開閉する切換弁52が設けられており、切換弁52の操作によって、3つの床暖房50a~50cのそれぞれについて熱媒を循環させる場合と循環を停止させる場合とを切り換えることが可能である。例えば、全ての切換弁52を開くことで3つの床暖房50a~50cに熱媒を循環させることができる。一方、使用しない何れかの床暖房50について熱媒の循環を停止させる場合は、対応する切換弁52を閉じればよい。こうした切換弁52の操作は、使用者によって手動で行われる場合もあるし、床暖房50の制御で自動的に行われる場合もある。尚、暖房端末は、床暖房50に限られず、ファンコンベクタ(ルームヒーター)などであってもよい。
【0030】
図3は、本実施例の三方弁29の構成を示した断面図である。図示されるように三方弁29の内部には、3方向に通じる弁室60が形成されている。図示した例では、弁室60の左方に分岐通路27が接続され、右方に戻り通路22の暖房端末側(以下、端末側戻り通路22a)が接続され、上方に戻り通路22の循環ポンプ23側(以下、ポンプ側戻り通路22b)が接続されている。
【0031】
また、弁室60内には、分岐通路27を開閉する給湯側弁体61と、端末側戻り通路22aを開閉する暖房側弁体62とが収容されており、これら給湯側弁体61および暖房側弁体62は、左右方向に往復移動が可能な移動軸63に互いに反対向きに取り付けられている。移動軸63は、駆動モータ64によって駆動するようになっており、本実施例の駆動モータ64にはステッピングモータを採用している。
【0032】
図3(a)には、移動軸63が右方に移動して暖房側弁体62が端末側戻り通路22aを閉じ、給湯側弁体61が分岐通路27を開いた状態が示されている。この状態において、循環ポンプ23の作動によって第1熱交換器15から流出した熱媒は、暖房端末(床暖房50)に振り分けられることなく、給湯熱交換器28を循環することから、暖房運転は行われず、給湯運転が行われる。
【0033】
一方、移動軸63が左方に移動すると、図3(b)に示されるように給湯側弁体61が分岐通路27を閉じ、暖房側弁体62が端末側戻り通路22aを開いた状態となる。この状態において、循環ポンプ23の作動によって第1熱交換器15から流出した熱媒は、給湯熱交換器28に振り分けられることなく、暖房端末(床暖房50)を循環することから、給湯運転は行われず、暖房運転が行われる。
【0034】
また、本実施例の三方弁29は、分岐通路27とポンプ側戻り通路22bとが接続通路65を介して接続されており、接続通路65には差圧弁66が設けられている。差圧弁66は、接続通路65を開閉する弁体67や、弁体67を戻り通路22側から弁座68に押し付ける方向に付勢する閉弁バネ69を備えている。給湯運転中は、図3(a)のように給湯側弁体61が分岐通路27を開いており、分岐通路27とポンプ側戻り通路22bとに圧力差が生じないので、差圧弁66は、弁体67が閉弁バネ69の付勢力で弁座68に押し付けられて閉弁状態になっている。
【0035】
一方、前述したように本実施例の床暖房50には、パイプ51を開閉する切換弁52が設けられており、図3(b)のように給湯側弁体61が分岐通路27を閉じている暖房運転中に、床暖房50で切換弁52を閉じて熱媒の循環を停止させると、戻り通路22で循環する熱媒の流量が減少するため、往き通路21と連通する分岐通路27の圧力がポンプ側戻り通路22bの圧力よりも大きくなって圧力差が生じる。そして、この圧力差が閾値以上になると、差圧弁66は、閉弁バネ69の付勢力に抗して弁体67が弁座68から離れて開弁状態になるので、分岐通路27から接続通路65を介して熱媒がポンプ側戻り通路22bに流れる。こうした差圧弁66の開放によって、仮に3つの床暖房50a~50cの全てで切換弁52を閉じたとしても戻り通路22に循環する熱媒の最低流量が保持されることから、循環ポンプ23の空転を回避して故障を抑制することができる。
【0036】
また、このように循環する熱媒の総流量が減少しても、熱媒の流量センサなどを備えていないため、往き温度センサ25で熱媒の温度の上昇が検知されるまでバーナ3での燃焼量(加熱量)が維持されることにより、熱媒が余分に加熱されて熱媒の温度が急上昇する。そして、往き温度センサ25での検知温度が所定の停止温度(本実施例では87度)に達すると、何らかの異常が生じているものとして、バーナ3での燃焼を停止するようになっている。ただし、バーナ3での燃焼を停止した後も、燃焼ユニット4の余熱で加熱されて熱媒の温度が上昇すること(いわゆる後沸き)によって、オーバーシュートが発生する。こうして局所的に高温となった熱媒が少ない流量で循環することにより、往き温度センサ25や戻り温度センサ24で検知される熱媒の温度が変動し、なかなか安定しない。また、高温の熱媒によってオーバーヒートスイッチ26が作動すると、燃料ガスの供給の遮断によって暖房運転が禁止された状態となるため、再開までに時間がかかってしまう。
【0037】
そこで、本実施例の暖房給湯装置1では、暖房運転の実行中に暖房端末(床暖房50)側で熱媒の循環が停止された(熱媒の流量が絞られた)としても、熱媒の温度の変動を速やかに緩和するために、コントローラ40が以下のような暖房運転中処理を実行するようになっている。
【0038】
図4は、本実施例のコントローラ40が実行する暖房運転中処理のフローチャートである。この暖房運転中処理は、使用者による暖房用リモコン42の操作で暖房運転が開始されると実行される。尚、暖房運転の開始に伴い、三方弁29を図3(b)の暖房運転の状態として、循環ポンプ23を作動すると共に、バーナ3で混合ガスの燃焼を開始する。
【0039】
暖房運転中処理では、まず、バーナ3の燃焼量(加熱量)を制御する(STEP1)。本実施例の暖房給湯装置1では、暖房用リモコン42で設定された暖房温度に基づいて熱媒の目標温度を決定すると共に、往き温度センサ25で検知される熱媒の往き温度が目標温度となるようにバーナ3の燃焼量を設定し、その燃焼量に応じて燃焼ファン5の回転数(混合ガスの供給量)を変更するようになっている。また、バーナ3での燃焼量を最小量に抑えても熱媒の往き温度が目標温度を上回る場合には、バーナ3での燃焼と消火とを繰り返す断続燃焼制御を行うようになっている。例えば、目標温度を中間値とする温度範囲を設定し、熱媒の往き温度が温度範囲の上限温度に達すると、バーナ3での燃焼を一旦停止し、熱媒の往き温度が温度範囲の下限温度に達すると、バーナ3での燃焼を再開してもよい。
【0040】
続いて、往き温度センサ25で検知される熱媒の往き温度が所定の停止温度(87度)以上であるか否かを判断する(STEP2)。前述したように停止温度は、何らかの異常の発生を判断するために設定されており、熱媒の往き温度が停止温度未満である場合は(STEP2:no)、次に、暖房運転の停止指示があったか否かを判断する(STEP3)。使用者による暖房用リモコン42の操作で暖房運転の停止指示があった場合は(STEP3:yes)、暖房運転を停止して(STEP4)、図4の暖房運転中処理を終了する。このSTEP4では、バーナ3での燃焼を停止した後、循環ポンプ23を停止する。その後、使用者による暖房用リモコン42の操作で暖房運転の開始指示があると、暖房運転を再開して、再び図4の暖房運転中処理を実行する。
【0041】
一方、暖房運転の停止指示がない場合は(STEP3:no)、続いて、給湯運転の要請があったか否かを判断する(STEP5)。本実施例のコントローラ40は、給湯用リモコン41の操作による給湯運転のON状態において、図示しない給湯栓を使用者が開けて水量センサ32で計測される上水の流量が所定量以上になると、給湯運転の要請があったと判断する。
【0042】
給湯運転の要請があった場合は(STEP5:yes)、暖房運転から給湯運転に移行し(STEP6)、図4の暖房運転中処理を終了する。このSTEP6では、三方弁29を図3(b)の暖房運転の状態から、図3(a)の給湯運転の状態へと切り換える。その後、給湯運転の停止要請があると、給湯運転から暖房運転に復帰し、再び図4の暖房運転中処理を実行する。
【0043】
これに対して、給湯運転の要請がない場合は(STEP5:no)、STEP1へと戻り、バーナ3の燃焼量(加熱量)を制御し、続いて、熱媒の往き温度が停止温度以上であるか否かを判断する(STEP2)。そして、熱媒の往き温度が停止温度以上であった場合は(STEP2:yes)、以下のような温度変動緩和処理を実行する(STEP7)。
【0044】
図5は、本実施例の温度変動緩和処理のフローチャートである。温度変動緩和処理を開始すると、まず、燃料ガスの供給を遮断することでバーナ3での燃焼を停止する(STEP8)。続いて、往き温度センサ25で検知される熱媒の往き温度が第1所定温度以上であるか否かを判断する(STEP9)。この第1所定温度は、停止温度よりも高い温度に設定されており、本実施例では90度に設定されている。
【0045】
熱媒の往き温度が第1所定温度未満である場合は(STEP9:no)、次に、戻り温度センサ24で検知される熱媒の戻り温度が第2所定温度以上であるか否かを判断する(STEP10)。この第2所定温度は、第1所定温度や停止温度よりも低い温度に設定されており、本実施例では80度に設定されている。
【0046】
熱媒の戻り温度が第2所定温度未満である場合は(STEP10:no)、STEP8でバーナ3での燃焼を停止してから所定時間(例えば120秒)が経過したか否かを判断する(STEP11)。未だ所定時間が経過していない場合は(STEP11:no)、STEP9へと戻り、熱媒の往き温度が第1所定温度以上であるか否かの判断(STEP9)、および熱媒の戻り温度が第2所定時間以上であるか否かの判断(STEP10)を繰り返す。
【0047】
そして、熱媒の往き温度が第1所定温度未満であり、且つ、熱媒の戻り温度が第2所定温度未満であるまま、バーナ3での燃焼の停止から所定時間が経過した場合は(STEP11:yes)、熱媒の往き温度が目標温度よりも低下したか否かを判断する(STEP12)。前述したように熱媒の目標温度は、暖房用リモコン42で設定された暖房温度に基づいて決定しており、熱媒の往き温度が目標温度以上である場合は(STEP12:no)、目標温度よりも低下するまで待機状態となる。
【0048】
その後、熱媒の往き温度が目標温度よりも低下した場合は(STEP12:yes)、バーナ3での燃焼を再開して(STEP13)、図5の温度変動緩和処理を終了し、図4の暖房運転中処理に復帰する。そして、暖房運転中処理では、温度変動緩和処理(STEP7)から復帰すると、STEP1へと戻り、バーナ3の燃焼量(加熱量)を制御する。
【0049】
これに対して、図5の温度変動緩和処理において、バーナ3での燃焼の停止から所定時間が経過する以前に、熱媒の往き温度が第1所定温度(90度)以上であった場合や(STEP9:yes)、熱媒の戻り温度が第2所定温度(80度)以上であった場合は(STEP10:yes)、三方弁29を中間状態へと移動させる(STEP14)。
【0050】
前述したように暖房運転の実行中に暖房端末(床暖房50)側で熱媒の流量が絞られると、循環する熱媒の総流量の減少に伴って熱媒の温度が急上昇し、バーナ3での燃焼を停止した後も、後沸きによって熱媒の温度が上昇してオーバーシュートが発生することがあり、局所的に高温になった熱媒が循環することにより、往き温度センサ25で検知される往き温度の上昇や、戻り温度センサ24で検知される戻り温度の上昇となって表れる。逆に言えば、暖房運転の実行中にバーナ3での燃焼を停止しているにもかかわらず、熱媒の往き温度や戻り温度が上昇するのであれば、暖房端末側で熱媒の流量が絞られて、循環する熱媒の総流量が減少し、後沸きで局所的に熱媒が高温となっている可能性が高い。
【0051】
尚、こうした暖房運転の実行中にバーナ3での燃焼を停止した状態で熱媒の温度が上昇する状況は、3つの床暖房50a~50cの全てで切換弁52を閉じて差圧弁66の開放によって最低流量の熱媒が循環する場合だけでなく、例えば、3つの床暖房50a~50cのうち2つで切換弁52を閉じた場合に、残り1つの床暖房50に熱媒が循環することで差圧弁66が開放しなくても、循環する熱媒の総流量は大きく減少するので、同様の状況が起こり得る。
【0052】
図6は、本実施例の三方弁29の中間状態を示した断面図である。図示されるように三方弁29の中間状態では、移動軸63を図3(a)の給湯運転の状態と図3(b)の暖房運転の状態との中間で停止させることにより、分岐通路27および端末側戻り通路22aの両方を開いて、開度が略同一の状態となる。この状態において、循環ポンプ23の作動によって第1熱交換器15から流出した熱媒は、給湯熱交換器28を通るルート(給湯回路)と、暖房端末を通るルート(暖房回路)との両方に振り分けられて循環可能となる。このため、暖房端末側で熱媒の流量が絞られていても、熱媒が給湯回路を流れることによって、循環する熱媒の総流量を確保することができる。尚、三方弁29の中間状態では、分岐通路27とポンプ側戻り通路22bとが連通しているので、圧力差が生じることはなく、差圧弁66は閉弁状態になっている。
【0053】
こうして三方弁29を中間状態にすると、復帰条件が成立したか否かを判断する(STEP15)。本実施例では、復帰条件として、熱媒の往き温度が目標温度よりも低下して安定し、且つ、熱媒の戻り温度も安定していることが設定されている。未だ復帰条件が成立していない場合は(STEP15:no)、復帰条件が成立するまで待機状態となる。
【0054】
その後、復帰条件が成立した場合は(STEP15:yes)、復帰処理を行って(STEP16)、図5の温度変動緩和処理を終了し、図4の暖房運転中処理に復帰する。このSTEP16では、三方弁29を図6の中間状態から、図3(b)の暖房運転の状態へと移動させた後、バーナ3での燃焼を再開する。
【0055】
図7は、暖房運転の実行中に暖房端末側で熱媒の流量が絞られたことにより、熱媒の温度が変動する様子を示した説明図である。図7のグラフでは、横軸に時間、縦軸に熱媒の温度を取って、熱媒の往き温度の変化が実線で示されており、熱媒の戻り温度の変化が破線で示されている。
【0056】
まず、図7(a)には、比較として、本実施例とは異なり三方弁29を暖房運転の状態のままとする場合が示されている。図示した例では、暖房運転の実行中に暖房端末(床暖房50)側で熱媒の流れが完全に遮断され、差圧弁66の開放によって熱媒の循環が保持されるものの、循環する熱媒の総流量が大きく減少する。このとき、バーナ3での燃焼量(加熱量)が維持されることにより、第1熱交換器15から流出する熱媒の往き温度が急上昇し、停止温度Taに達するとバーナ3での燃焼を停止(消火)するものの、後沸きによって往き温度は上昇してオーバーシュートが発生する。
【0057】
また、総流量が減少しつつも局所的に高温になった熱媒が循環することで、第2熱交換器16に流入する熱媒の戻り温度は、往き温度に遅れて上昇する。前述したように本実施例の第1熱交換器15にはオーバーヒートスイッチ26が設けられており、第2熱交換器16に流入する前の時点で熱媒の戻り温度がオーバーヒートスイッチ26の作動温度Tbを超えていると、その熱媒が第2熱交換器16を経て少ない流量で時間をかけて第1熱交換器15を通過する際にオーバーヒートスイッチ26が作動する可能性が高くなる。
【0058】
そして、熱媒の往き温度は、燃焼ユニット4の余熱が消費されることによって、一旦は下降に転じるものの、局所的に高温になって先に送り出された熱媒が循環し、高温を保ったまま第1熱交換器15へと戻ることにより、熱媒の往き温度が再び上昇する。この影響は、熱媒の戻り温度にも遅れて表れるため、熱媒の往き温度および戻り温度は交互に上昇と下降とを繰り返し、なかなか安定しない。
【0059】
これに対して、図7(b)には、本実施例で三方弁29を中間状態に移動させる場合が示されている。図7(b)においても、暖房運転の実行中に暖房端末(床暖房50)側で熱媒の流れが遮断されて循環する熱媒の総流量が大きく減少することにより、熱媒の往き温度が急上昇し、停止温度Taに達してバーナ3での燃焼を停止(消火)した後も、後沸きによって往き温度が上昇してオーバーシュートが発生するところまでは、図7(a)と同様である。
【0060】
ただし、図7(b)では、熱媒の戻り温度が第2所定温度T2以上になったことに基づき、三方弁29を暖房運転の状態から中間状態に移動させる。こうして端末側戻り通路22a(暖房回路)の開度を減少させつつ、分岐通路27(給湯回路)の開度を増大させれば、暖房端末側で熱媒の流れが遮断されていても、給湯回路を流れる熱媒の流量が増える。これにより、循環する熱媒の総流量が確保されることから、局所的に高温となっていた熱媒が拡散し、図7(a)に比べて、熱媒の往き温度および戻り温度の変動が速やかに緩和され、循環する熱媒の温度が安定するまでの時間が短くなる。
【0061】
また、図7(b)では、熱媒の戻り温度がオーバーヒートスイッチ26の作動温度Tbを超えている期間が、図7(a)に比べて大幅に短縮されているため、オーバーヒートスイッチ26が高温の熱媒に晒される時間が短く、オーバーヒートスイッチ26が作動する可能性が低くなる。
【0062】
以上に説明したように本実施例の暖房給湯装置1では、暖房運転の実行中に熱媒の往き温度が停止温度(87度)に達してバーナ3での燃焼を停止した状態で、熱媒の往き温度が第1所定温度(90度)以上になるか、あるいは熱媒の戻り温度が第2所定温度(80度)以上になると、三方弁29を中間状態に移動させるようになっている。バーナ3での燃焼を停止しているにもかかわらず、熱媒の温度が上昇する場合には、暖房端末側で熱媒の流量が絞られて、循環する熱媒の総流量が大きく減少し、後沸きで局所的に熱媒が高温となっていることが疑われる。そこで、三方弁29を暖房運転の状態から中間状態に移動させて分岐通路27(給湯回路)の開度を増大すれば、給湯回路を流れる熱媒の流量が増すことにより、循環する熱媒の総流量を確保することができるので、局所的に高温となっていた熱媒が拡散し、三方弁29を移動させない場合に比べて、熱媒の温度の変動が速やかに緩和され、熱媒の温度が安定するまでの時間を短縮することが可能となる。
【0063】
また、バーナ3での燃焼を停止した後の燃焼ユニット4の余熱による後沸きの影響は、まず第1熱交換器15から流出する熱媒の往き温度に顕著に現れるため、往き温度が停止温度よりも高い第1所定温度以上になったことに基づいて、三方弁29で分岐通路27(給湯回路)の開度を増大させることにより、熱媒の温度の上昇(オーバーシュート)を迅速に抑制することが可能となる。
【0064】
加えて、局所的に高温となった熱媒が循環するのに伴って、第2熱交換器16に流入する熱媒の戻り温度も上昇し、オーバーヒートスイッチ26の作動温度(97度)を超えるような高温の熱媒が少ない流量で時間をかけて第2熱交換器16を経て第1熱交換器15に流入すると、オーバーヒートスイッチ26が作動する可能性が高まるだけでなく、第2熱交換器16や第1熱交換器15が損傷するリスクも高まる。そこで、熱媒の戻り温度が作動温度に達するよりも前に、第2所定温度以上になったことに基づき、三方弁29で分岐通路27(給湯回路)の開度を増大させることにより、第2熱交換器16に流入する熱媒の総流量を確保すれば、オーバーヒートスイッチ26が作動する可能性を低減すると共に、第2熱交換器16や第1熱交換器15が損傷するリスクを低減することができる。
【0065】
さらに、分岐通路27(給湯回路)の開度を増大させることで、循環する熱媒の総流量を確保し、熱媒の温度の変動を速やかに緩和する観点からは、三方弁29を給湯運転の状態に移動させる方が有利となる。ただし、前述したように、暖房運転の実行中にバーナ3での燃焼を停止した状態で熱媒の温度が上昇する状況は、暖房端末(床暖房50)側で熱媒の流れを完全に遮断した場合だけでなく、例えば、3つの床暖房50a~50cのうち2つで切換弁52を閉じ、残り1つの床暖房50に熱媒が循環する場合にも起こり得る。この場合に、三方弁29を給湯運転の状態に移動させると、暖房端末に熱媒が振り分けられなくなってしまう。そこで、三方弁29を給湯運転の状態ではなく、本実施例のように中間状態に移動させることで、暖房端末に熱媒を循環させて暖房運転を継続しながら、上述のように熱媒の温度の変動を速やかに緩和することが可能となる。
【0066】
以上、本実施例の暖房給湯装置1について説明したが、本発明は上記の実施例に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。
【0067】
例えば、前述した実施例では、端末側戻り通路22a(暖房回路)の開度、および分岐通路27(給湯回路)の開度を三方弁29で切り換えることで、共通の熱媒を振り分ける分配比を変更するようになっていた。しかし、分配比を変更する手段は、三方弁29に限られず、暖房回路を開閉(開度を変更)する暖房開閉弁と、給湯回路を開閉(開度を変更)する給湯開閉弁とを設けておいてもよい。この場合、暖房運転では、暖房開閉弁を開いて、給湯開閉弁を閉じておくこととして、暖房運転の実行中にバーナ3での燃焼を停止した状態で、熱媒の往き温度が第1所定温度以上になるか、あるいは熱媒の戻り温度が第2所定温度以上になると、給湯開閉弁を開くようにしてもよい。ただし、前述した実施例のように三方弁29を用いれば、給湯回路の開度を増大させるのと連動して、暖房回路の開度を減少させることができる。
【0068】
また、前述した実施例では、暖房運転の実行中にバーナ3での燃焼を停止した状態で、熱媒の温度が上昇すると、三方弁29を暖房運転の状態から中間状態に移動させ、端末側戻り通路22a(暖房回路)の開度と、分岐通路27(給湯回路)の開度とを略同一にするようになっていた。しかし、三方弁29を移動させる位置は中間状態に限られず、暖房運転の状態よりも給湯回路の開度を増大させるようになっていればよい。例えば、給湯回路の開度を暖房回路の開度よりも大きくすれば、暖房端末側で熱媒の流量が絞られていても、循環する熱媒の総流量を確保するのに有利となる。一方、給湯回路の開度を暖房回路の開度よりも小さくすれば、暖房運転を継続したり熱効率の低下を抑制したりするのに有利となる。
【0069】
また、暖房回路の開度と給湯回路の開度との割合を複数段階(例えば、7:3、5:5、3:7)の中から三方弁29で切り換え可能として、熱媒の往き温度が第1所定温度以上になるか、あるいは熱媒の戻り温度が第2所定温度以上になると、その温度に応じて給湯回路の開度を選択してもよく、熱媒の温度が高いほど給湯回路の開度を大きくしてもよい。
【0070】
また、前述した実施例では、暖房運転のみを実行中(暖房回路の開度と給湯回路の開度との割合が10:0の場合)に暖房端末側で熱媒の流量が絞られ、循環する熱媒の総流量が大きく減少する状況を想定していた。しかし、暖房運転と共に給湯運転を行う同時運転においても本発明を適用することが可能である。例えば、同時運転として暖房回路の開度と給湯回路の開度との割合が8:2の場合には、暖房端末側で熱媒の流量が絞られると、循環する熱媒の総流量が大きく減少することがある。そこで、バーナ3での燃焼を停止した後も熱媒の温度が上昇することに基づいて、給湯回路の開度を増大させるようにすれば、熱媒の温度の変動を速やかに緩和することができる。
【0071】
また、前述した実施例では、三方弁29に差圧弁66が設けられていた。しかし、差圧弁66は必須ではなく、差圧弁66が設けられていない場合にも、本発明を好適に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0072】
1…暖房給湯装置、 2…ハウジング、 3…バーナ、
4…燃焼ユニット、 5…燃焼ファン、 6…合流部、
7…空気供給路、 8…ガス供給路、 9…ゼロガバナ、
11…点火プラグ、 12…フレームロッド、 13…逆止弁、
15…第1熱交換器、 16…第2熱交換器、 17…排気ダクト、
18…排気口、 19…給気口、 21…往き通路、
22…戻り通路、 23…循環ポンプ、 24…戻り温度センサ、
25…往き温度センサ、 26…オーバーヒートスイッチ、
27…分岐通路、 28…給湯熱交換器、 29…三方弁、
30…給水通路、 31…出湯通路、 32…水量センサ、
33…水量サーボ、 34…給水温度センサ、
35…給湯熱交出口温度センサ、 36…バイパス通路、
37…バイパスサーボ、 38…出湯温度センサ、 40…コントローラ、
41…給湯用リモコン、 42…暖房用リモコン、 50…床暖房、
51…パイプ、 52…切換弁、 60…弁室、
61…給湯側弁体、 62…暖房側弁体、 63…移動軸、
64…駆動モータ、 65…接続通路、 66…差圧弁、
67…弁体、 68…弁座、 69…閉弁バネ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7