(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】口腔内適用の治療装置及びこの種の治療装置の操作方法
(51)【国際特許分類】
A61C 19/00 20060101AFI20230809BHJP
A61C 19/06 20060101ALI20230809BHJP
A61F 5/56 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
A61C19/00 M
A61C19/06 Z
A61F5/56
(21)【出願番号】P 2019546375
(86)(22)【出願日】2018-02-26
(86)【国際出願番号】 EP2018054670
(87)【国際公開番号】W WO2018154110
(87)【国際公開日】2018-08-30
【審査請求日】2020-11-25
(31)【優先権主張番号】102017103950.3
(32)【優先日】2017-02-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513322947
【氏名又は名称】ベルク ビアンカ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】ベルク,ビアンカ
(72)【発明者】
【氏名】ケーラー,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ザウアー‐シュペルリング,ゴットハルト
【審査官】中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-519936(JP,A)
【文献】特開2003-290250(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0036286(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0173935(US,A1)
【文献】特開2015-033520(JP,A)
【文献】特開昭52-075893(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0015556(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第102010005359(DE,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0134499(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61C 19/00
A61C 19/06
A61F 5/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
口腔内適用の治療装置の使用下における治療装置(1)
であって、
前記治療装置(1)は、歯ぎしり及び/又は舌突出及び/又はいびきを治療するための口腔内適用の治療装置であって、
‐ユーザの口腔内における圧力負荷事象及び/又は音響事象及び/又は振動事象を検出するように構成された少なくとも一つのセンサ装置(30)、
‐圧力負荷事象及び/又は音響事象及び/又は振動事象が発生する際に当該ユーザを刺激するための少なくとも一つの刺激装置(50)、
‐発生中の圧力負荷事象及び/又は音響事象及び/又は振動事象に応じて前記刺激装置(50)が制御されて及び/又は調節されて操作されるようにする制御及び/又は調節ユニット(40)、
‐エネルギー供給装置、並びに、
‐ユーザの上顎及び/又は下顎の少なくともそれぞれ一つの歯牙(4)に当該治療装置(1)を固定するための少なくとも二つの固定装置(10)、を有しており、
以下のステップ、すなわち、
‐センサ装置(30)によって少なくとも一つの口腔内圧力及び/又は振動事象及び/又は音響事象を検出し、対応するセンサ出力信号を形成するステップ、
‐前記センサ出力信号を、制御及び/又は調節ユニット(40)へ入力信号として入力するステップ、
‐当該制御及び/又は調節ユニット(40)によって前記入力信号を評価し、該入力信号をプリセット可能なトリップ閾値と比較するステップ、
‐当該トリップ閾値を上回った場合に、刺激装置(50)によって刺激を発生させるステップ、
‐プリセット可能な停止閾値を下回った場合に、当該刺激を停止するステップを有し、
‐その際、装置の操作前又は操作中に、少なくとも一つ又は複数のパラメータが以下のグループ、すなわち、
‐当該制御及び/又は調節ユニット(40)の入力信号感度、
‐当該制御及び/又は調節ユニット(40)の出力信号強さ、
‐当該刺激の強度、
‐当該刺激の種類、
‐前記センサ装置(30)の出力信号強さ、
‐トリップ閾値、
‐トリップ頻度、
‐トリップ遅れ、
‐停止閾値、
‐トリップ閾値と停止閾値との間のヒステリシスのうちから選択されて、
プリセットにより決定され得るようにして設定され又は可変的に設定及び/又は調節される
操作方法、を実施するのに適した治療装置。
【請求項2】
a)前記制御及び/又は調節ユニットの当該入力信号感度は、ユーザが、例えば、どちらかといえば華奢な体格を有している場合には増やされ、当該ユーザが、例えば、どちらかといえば頑丈な体格を有している場合には減らされ、及び/又は、
b)前記制御及び/又は調節ユニットの当該出力信号強さ及び/又は前記刺激の当該強度は、当該ユーザが、例えば、どちらかといえば深い眠りにある場合には引き上げられ、当該ユーザが、例えば、どちらかといえば浅い眠りにある場合には引き下げられ、及び/又は、
c)前記センサ装置の当該出力信号強さは、当該ユーザが、例えば、男性である場合には増やされ、当該ユーザが、例えば、女性である場合には引き下げられ、及び/又は、
d)当該トリップ閾値は、当該ユーザが、例えば、どちらかといえば頑丈な体格を有し、ないし、どちらかといえば浅い眠りにある場合には引き上げられ、及び/又は、当該ユーザが、例えば、どちらかといえば華奢な体格を有し、ないし、どちらかといえば深い眠りにある場合には引き下げられ、及び/又は、
e)当該トリップ頻度は、当該ユーザが、例えば、初めて治療を開始する場合には引き上げられ、及び/又は、当該ユーザが、例えば、当該治療の終期にあって、できるだけ持続的な学習成果に達しているはずである場合には引き下げられ、及び/又は、
f)当該トリップ遅れは、当該ユーザが、例えば、当該治療の終期にあって、できるだけ持続的な学習成果に達しているはずである場合には引き上げられ、及び/又は、当該ユーザが、例えば、初めて当該治療を開始する場合には引き下げられ、及び/又は、
g)当該停止閾値は、当該ユーザが、例えば、初めて当該治療を開始する場合には引き上げられ、及び/又は、当該ユーザが、例えば、当該治療の終期にあって、できるだけ持続的な学習成果に達しているはずである場合には引き下げられ、及び/又は、
h)トリップ閾値と停止閾値との間の当該ヒステリシスは、当該ユーザが、例えば、初めて当該治療を開始する、ないし、どちらかといえば深い眠りにある場合には拡大され、及び/又は、当該ユーザが、例えば、当該治療の終期にあって、できるだけ持続的な学習成果に達しているはずである、ないし、どちらかといえば浅い眠りにある場合には縮小されることを特徴とする、請求項1に記載の
治療装置。
【請求項3】
当該一又は複数のパラメータは、当該操作の前又はその間、ユーザの身体パラメータ及び/又は身体特徴に応じて、設定及び/又は調節されることを特徴とする、請求項1又は2に記載の
治療装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1のプリアンブルに記載の口腔内適用の治療装置並びにこの種の治療装置の操作方法に関する。
【背景技術】
【0002】
独国特許出願公開第102010005359号明細書から、歯ぎしり防止用マウスピース並びに当該歯ぎしり防止用マウスピースの製造方法が知られている。この種の歯ぎしり防止用マウスピースは、U字形の断面を描いて、顎弓に沿って連続して延び、顎弓の歯牙に取り付けることのできるピースを有している。該ピースの延びに沿ったすべての自由歯牙端は該ピースによって覆われ、さらに、臼歯に取り付けるための特異な固定装置から形成される歯ぎしり防止用マウスピースが開示される。さらに、例えば、トリップ特性及び刺激強さは固定的にプリセットされている。
【0003】
独国特許出願公開第102004009883号明細書から、顎関節の治療装置が知られている。この種の装置は、液体で満たされたピロー状のクッションを有し、該クッションは、溢流管を介して、互いに連結され、当該クッションの圧力負荷が相異する場合に、顎にかかる力の均衡を達成しようとする。顎関節を治療するためのこの種の装置は、例えば、異常な程度に達している限りでの舌突出又は歯ぎしりを低下抑制するには適していない。
【0004】
米国特許第4976618号明細書から、圧力チューブを有する口腔内センサ装置が知られており、該圧力チューブは、上顎と下顎の歯牙の間に配置されて、その種の圧力信号を外部装置に転送する信号線を有する。当該外部装置は口外に配置されている。さらに、当該外部装置は、例えばイヤホーンとして形成された拡声器と接続されている。この種のセンサ装置は持ち運びが煩わしく、しばしば、当該ユーザに僅かに受け入れられているにすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】独国特許出願公開第102010005359号明細書
【文献】独国特許出願公開第102004009883号明細書
【文献】米国特許第4976618号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、高い装着快適性、並びに、特に、舌突出又は歯ぎしり又はいびきを抑制低減させる高い治療成果を供すると共に、とりわけ、ぴったりと馴染んで、睡眠中にもほとんど煩わしく感じることなく装着可能な口腔内適用の治療装置を開示することである。
【0007】
本発明のさらにもう一つの目的は、この種の口腔内適用の治療装置を特に低コストで容易に製造可能とし、とりわけ、多数のさまざまなユーザに適合し又は当該ユーザの口腔内特徴に容易に適合可能であって、こうして、当該治療装置の少なくとも当該ジオメトリ及び三次元形状の点で、多数のユーザにとって統一的なサイズ及び統一的な三次元形状を定めることのできる治療装置を開示することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的は、請求項1に記載の特徴を有する口腔内適用の治療装置によって達成される。好適な実施形態は従属項に記載したとおりである。
【0009】
本発明によれば、特に歯ぎしり及び/又は舌突出及び/又はいびきを治療するための口腔内適用の治療装置は、
‐ ユーザの上顎及び/又は下顎の少なくともそれぞれ一つの歯牙に当該治療装置を固定するための少なくとも二つの固定装置、
‐ 当該ユーザの口腔内における圧力負荷事象及び/又は音響事象及び/又は振動事象を検出するように形成及び設備された少なくとも一つのセンサ装置、
‐ 圧力負荷事象及び/又は音響事象及び/又は振動事象が発生する際に当該ユーザを刺激するための少なくとも一つの刺激装置、並びに、
‐ 発生中の圧力負荷事象及び/又は音響事象及び/又は振動事象に応じて前記刺激装置が制御されて及び/又は調節されて操作されるようにする制御及び/又は調節ユニット、並びに、
‐ エネルギー供給装置
を有する。
【0010】
当該治療装置は、当該固定装置が、少なくとも一つの柔軟な連結ブリッジによって互いに連結され、当該連結ブリッジは、当該治療装置の規定とおりの使用時に、当該歯牙の歯牙自由端を露出させた態様で歯牙外側面及び/又は歯牙内側面に密接するように設備され形成され、その際、当該治療装置の規定とおりの使用時に、特に、当該治療装置の少なくとも上述したすべての構成要素が口腔内に配置されていることを特徴とする。
【0011】
この種の口腔内適用の治療装置によって、当該上顎又は当該下顎の歯牙は、当該治療装置が、規定とおりの使用時に、いずれの顎に配置されているかに応じ、当該歯牙の自由端が露出したままであることが保証される。このことは、従来の技術に比較して、当該ユーザによって快適であると感じられる。さらに、当該柔軟な連結ブリッジにより、特に、当該固定装置同士相互の間の側方間隔を、広い範囲内で、当該ユーザの当該生理学的口腔諸与条件に適合し得るように設定することが可能となり、こうして、当該治療装置を容易に、例えば、異なったユーザの異なった顎ジオメトリに適合させることができる。
【0012】
さらに、特に、当該連結ブリッジが歯牙外側面に(これは、またも、当該治療装置が上顎に装着される場合に好ましい)、又は、歯牙内側面に(これは、当該治療装置が下顎に装着される場合に好ましい)、好ましくは、プレストレスされて密着されることにより、当該ユーザの口腔内における当該治療装置のぴったりした着座が保証される。加えてさらに、当該治療装置の装着箇所とは無関係に、内側及び/又は外側連結ブリッジを設けたデザインが可能である。
【0013】
痛みに敏感な区域、例えば、当該歯肉の区域への当該柔軟な連結ブリッジのずれ変位は確実に防止されている。
【0014】
さらに、当該連結ブリッジが自由な歯牙外側面に密接することにより、当該ユーザの口腔内における、後方への当該治療装置の意図的な位置ずれは確実に防止されている。当該連結ブリッジが顎の歯牙内側面に密接している場合には、当該治療装置の無意識のうちの前方のへの位置ずれは確実に阻止されている。歯牙外側面及び歯牙内側面に沿った二重連結ブリッジも使用することが可能である。
【0015】
それゆえ、本発明の一つの特別な実施形態が“フリーサイズ”治療装置であり、つまり、少なくとも一つのユニットサイズであるとはいえ、できるだけ多数のユーザの顎又はユーザの口腔に適合するように構成され、当該ユーザの口腔内における当該治療装置の確実なポジショニングへの配慮が達成されている。したがって、本発明による治療装置は、当該製造時にその三次元形状をユーザの顎に個別に適合させる必要なしに、装着可能かつ機能可能であることからして、当該治療装置の低コストの大量生産が可能である。
【0016】
当該治療装置のさらに別の実施形態において、当該固定装置は、キャップ状又は断面がU字形をなすU形ピースとして形成されて、当該治療装置がユーザによって装着される際に、少なくとも一つの歯牙、好ましくは、一つの臼歯を覆う。これに関連して、本発明における“規定とおりの使用”なる用語とは、当該治療装置又はその構成要素が―ユーザによって当該治療装置が正しくかつ意図的に装着される際に、つまり、例えば、当該上顎の歯牙又は当該下顎の歯牙に当該治療装置が取り付けられることにより―それに課された役割を果たすと共にその特性を発揮し得るように設備され形成されていることとして理解されなければならない旨指摘しておくこととする。したがって、規定とおりの使用とは、ユーザの口腔内において取り付けられた状態での当該治療装置の取付使用として理解されることとする。
【0017】
当該治療装置のさらに別の好ましい実施形態において、当該治療装置は少なくとも一つの被覆区域を有し、該被覆区域は規定とおりの使用時に当該ユーザの当該上顎及び当該下顎の歯牙の間に配置され、かつ、少なくとも一つのセンサ装置が該被覆区域に組み込まれている。
【0018】
本発明において、“組み込まれている”とは、当該センサ装置が、当該上顎及び当該下顎の当該歯牙の間に配置された当該被覆区域に埋設されているか、又は、該区域を形成していることとして理解されることとする。同じく、当該センサ装置がこの被覆区域上に又はこの被覆区域下に横たえて固定されていることも思量可能である。
【0019】
この種の配置によって、例えば、当該歯ぎしりによって生ずる類の、例えば、当該ユーザ口腔内の圧力の確実な検出に成功する。
【0020】
本発明のさらに別の実施形態において、当該少なくとも一つのセンサ装置は当該連結ブリッジに組み込まれている。この種の実施形態において、特に、当該連結ブリッジが、例えば、当該下顎の歯牙の内側面に沿って延びている場合には、通例、舌が前方の歯牙を無意識のうちに押圧することによって生ずる舌突出を、容易な形で検出することができる。
【0021】
また、別法として又はさらに加えて、例えば、当該被覆区域の一方に配された第一の圧力センサ装置を、当該被覆区域の他方に配された第二の圧力センサ装置と接続し、及び/又は、さらに、当該制御装置及び/又は調節装置と接続するために、当該連結ブリッジに信号線が組み込まれていてもよい。
【0022】
さらに別の実施形態において、当該制御ユニット及び/又は当該調節ユニット及び/又は当該刺激装置及び/又は当該エネルギー供給装置は、少なくとも一方の固定装置に成形された成形体の内部に組み込まれ又は封入され、特に一体成型されている。
【0023】
刺激装置として適切と考えられるものは、あらゆる種類の適切な刺激装置である。ここでは、特に、振動器、例えば、アンバランスモータ及び/又は圧電振動子を挙げておくこととする。さらに、電気刺激を引き起こす電極も刺激装置として設けられていてもよい。加えてさらに、刺激装置として音源例えばラウドスピーカ等も使用することが可能である。
【0024】
当該治療装置のさらに別の実施形態において、当該成形体は、口蓋ヴォールトに対応して成形され、及び/又は、口蓋ヴォールトに少なくとも部分的に適合し得るようにして形成され、及び/又は、できるだけ多数のさまざまなユーザの平均口蓋に適合するように標準化された口蓋ヴォールトに対応する。
【0025】
上記対策により、当該治療装置の三次元形状全体が同一又は類似している場合にあっても、多数のユーザにとっての本発明による治療装置の装着快適性及び適用可能性は向上されている。
【0026】
当該治療装置のさらに別の実施形態において、当該連結ブリッジは、当該歯牙内側面又は当該歯牙外側面に沿った屈曲性に関して、つまり、例えば、当該連結ブリッジの延びに対して垂直をなす、特に、当該連結ブリッジの前面に対して垂直をなす横軸(Q)まわりよりも、縦軸(H)まわりに柔軟性を有するように形成されている。これによって、ユーザ口腔内における当該治療装置の着座にやや緩みがある場合にも、当該連結ブリッジの不測の垂れ下がり及びそれに起因する当該連結ブリッジによる当該歯肉との不測の接触又は擦れは十分に防止されている。
【0027】
当該治療装置の特別な実施形態において、当該連結ブリッジは、ゴム状の伸長及び/若しくは圧縮可能な材料から形成され、並びに/又は、アコーディオン状の伸長及び/若しくは圧縮を許容するエッジトリムを有する。こうした構成により、当該治療装置を、機械式にややプレストレスされた状態で、当該ユーザの口腔内に装着することが特に容易に可能である。特に、当該連結ブリッジに信号線が設けられていなければ、それは特に好ましい実施形態であり得る。信号線が当該連結ブリッジに通されている場合には、該回線は、言うまでもなく、破損を蒙ることなく、相応した伸長及び圧縮を共にすることができるように形成されていなければならない。
【0028】
当該治療装置のさらに別の実施形態において、当該連結ブリッジは、それが、規定とおりの使用時に、当該歯牙外側面に密接するように設けられている場合には引っ張り弾性を有するように形成され、及び/又は、当該連結ブリッジが、規定とおりの使用時に、当該歯牙内側面に密接するように形成されている場合には圧力弾性、圧縮性を有するように形成されている。
【0029】
上記対策は、それによって口腔内における当該治療装置の定められたとおりの確実な装着が達成されるために、装着快適性の向上と共に、口腔内における圧力及び/又は音響事象及び/又は振動事象のセンシング又は検出の向上に貢献する。
【0030】
さらに、本発明の目的は、口腔内適用の治療装置を使用して、歯ぎしり及び/又は舌突出及び/又はいびきを低下抑制する高い治療効果を達成することのできる治療装置操作方法を開示することである。さらに、本操作方法によって、ユーザ固有の又は適用症固有の要件に対する多数の適合可能性を提供することも本発明の目的である。
【0031】
本発明のさらに別の目的は、調整可能なバイオフィードバックによって個々別々の治療の改善を達成することである。
【0032】
この調整可能性は、例えば、無線伝送を介して、例えば、ソフトウェアによって行うことができる。これは、フレキシブルかつ非侵襲的な調整可能性をもたらす。
【0033】
本発明のさらに別の目的は、当該方法を実施するための治療装置を開示することである。
【0034】
これらの目的は、請求項15に記載の特徴を有する操作方法及び請求項20に記載の治療装置によって達成される。
【0035】
本発明による口腔内適用の治療装置の操作方法は、口腔内適用の治療装置の使用を前提とする。特に、本発明による操作方法は、請求項1から14のいずれか一項に記載の口腔内適用の治療装置の使用を前提とし、かつ、以下のステップ、すなわち、
‐ センサ装置によって少なくとも一つの口腔内圧力及び/又は振動事象及び/又は音響事象を検出し、対応するセンサ出力信号を形成するステップ、
‐ 当該センサ出力信号を、制御及び/又は調節ユニットへ入力信号として入力するステップ、
‐ 当該制御及び/又は調節ユニットによって当該入力信号を評価し、該入力信号をプリセット可能なトリップ閾値と比較するステップ、
‐ 当該トリップ閾値を上回った場合に、刺激装置によって刺激を発生させるステップ、
‐ プリセット可能な停止閾値を下回った場合に、当該刺激を停止するステップ
を有し、
‐ その際、当該装置の当該操作前又は操作中に、少なくとも一つ又は複数のパラメータが以下のグループ、すなわち、
‐ 当該制御及び/又は調節ユニットの入力信号感度、
‐ 当該制御及び/又は調節ユニットの出力信号強さ、
‐ 当該刺激の強度、
‐ 当該刺激の種類、
‐ 当該センサ装置の出力信号強さ、
‐ トリップ閾値、
‐ トリップ頻度、
‐ トリップ遅れ、
‐ 停止閾値、
‐ トリップ閾値と停止閾値との間のヒステリシス
のうちから選択されて、
プリセットにより決定され得るようにして設定され又は可変的に設定及び/又は調節されて治療装置の使用が行われる。
【0036】
本発明による操作方法により、高い治療成果を期待することができる。さらに、本発明による操作方法によれば、特に、当該治療装置の規定とおりの使用時に、当該操作方法の実施に必要ないっさいの構成要素が口腔内に配置されて存在する小型でコンパクトな装置として当該治療装置をデザインすることが可能となる。この種の操作方法は、特別な方途により、歯ぎしり及び/又は舌突出及び/又はいびきを抑止低減すると共にストレス症状及び/又は頭痛及び/又は耳鳴り病状及び/又は上記の望ましくない行為のその他の代表的な併発症状の緩和に適している。
【0037】
さらに、本発明による操作方法により、ユーザ固有の、したがって、当該ユーザの個人的に固有な要件又は、特に、治療されるべき当該障害例えば夜間の歯ぎしり及び/又は舌突出及び/又はいびき等から生ずる適用症固有の要件への数多くの適合を可能にすることができる。
【0038】
それゆえ、本発明による方法の特別な実施形態において、当該パラメータの設定はユーザ固有に行われ、すなわち、生理学的特性又は基本条件―例えば、刺激に対する感度、当該睡眠の深さ、体重、体格―の点で、ユーザ個別に及び/又は適用症固有に、すなわち、治療されるべき障害、例えば、夜間の歯ぎしり、夜間の舌突出及び/又はいびきに応じて行われる。
【0039】
本発明による方法のさらに別の実施形態は、以下、つまり、
a)当該制御及び/又は調節ユニットの当該入力信号感度は、当該患者が、例えば、どちらかといえば華奢な体格を有している場合には増やされ、当該ユーザが、例えば、どちらかといえば頑丈な体格を有している場合には減らされ、及び/又は、
b)当該制御及び/又は調節ユニットの当該出力信号強さ及び/又は当該刺激の当該強度は、当該ユーザが、例えば、どちらかといえば深い眠りにある場合には引き上げられ、当該ユーザが、例えば、どちらかといえば浅い眠りにある場合には引き下げられ、及び/又は、
c)当該センサ装置の当該出力信号強さは、当該ユーザが、例えば、男性である場合には増やされ、当該ユーザが、例えば、女性である場合には引き下げられ、及び/又は、
d)当該トリップ閾値は、当該ユーザが、例えば、どちらかといえば頑丈な体格を有し、ないし、どちらかといえば浅い眠りにある場合には引き上げられ、及び/又は、当該ユーザが、例えば、どちらかといえば華奢な体格を有し、ないし、どちらかといえば深い眠りにある場合には引き下げられ、及び/又は、
e)当該トリップ頻度は、当該ユーザが、例えば、初めて当該治療を開始する場合には引き上げられ、及び/又は、当該ユーザが、例えば、当該治療の終期にあって、できるだけ持続的な学習成果に達しているはずである場合には引き下げられ、及び/又は、
f)当該トリップ遅れは、当該ユーザが、例えば、当該治療の終期にあって、できるだけ持続的な学習成果に達しているはずである場合には引き上げられ、及び/又は、当該ユーザが、例えば、初めて当該治療を開始する場合には引き下げられ、及び/又は、
g)当該停止閾値は、当該ユーザが、例えば、初めて当該治療を開始する場合には引き上げられ、及び/又は、当該ユーザが、例えば、当該治療の終期にあって、できるだけ持続的な学習成果に達しているはずである場合には引き下げられ、及び/又は、
h)トリップ閾値と停止閾値との間の当該ヒステリシスは、当該ユーザが、例えば、初めて当該治療を開始する、ないし、どちらかといえば深い眠りにある場合には拡大され、及び/又は、当該ユーザが、例えば、当該治療の終期にあって、できるだけ持続的な学習成果に達しているはずである、ないし、どちらかといえば浅い眠りにある場合には縮小されることを特徴としている。
【0040】
この場合、当該制御及び/又は調節ユニットの入力信号感度とは、当該制御ユニット及び/又は当該調節ユニットの入力信号感度が相対的に低い場合に、一定の入力信号につき、相対的に低い出力信号が出力され、入力信号感度が相対的に高い場合に、当該同一の一定の入力信号につき、当該制御及び/又は調節ユニットによって相対的に高い出力信号強さが出力されることとして理解されることとする。
【0041】
当該制御及び/又は調節ユニットの出力信号強さとは、当該刺激装置の当該制御に直接の影響を有し、したがって、当該刺激の当該強度に直接の、ただし、必ずしも比例的ではない影響を及ぼす信号強さとして理解されることとする。
【0042】
当該刺激の強度とは、当該刺激の強さとして理解されることとし、その際、さまざまなユーザは一度の同一の刺激の強さを、刺激の強度が異なっているように感ずることがある。通例、当該刺激の強度は次のようにして―つまり、当該ユーザにとって顕著な睡眠障害が生じないか又はわずかに生ずるにすぎないようにして―設定される。
【0043】
当該センサ装置が能動センサ装置、例えば、圧電センサである場合には、その出力信号は、その出力信号強さに関して、当該センサ装置と当該制御ユニット及び/又は調整ユニットとの間に、例えば、適切な減衰器が設けられることによって、影響され得る。
【0044】
トリップ閾値とは、当該制御及び/又は調節ユニットの入力信号の一定の閾値であり、又は、それがプリセットされた値を上回る場合に、それに対応する信号が意味されている。
【0045】
トリップ頻度としては、本発明において、当該トリップ閾値が上回られるたびごとに必ずしも常に刺激が行われる必要はないものと理解されることとする。例えば、当該トリップ閾値の超過が二度目、三度目又はその他の偶然に選択された回数目ごとに生ずる場合にのみ当該刺激の発動が行われるようになされてよい。
【0046】
例えば、ユーザの当該治療の開始時には、当該ユーザの圧力/音響事象/又は振動事象のたびごとに、特にまた、当該ユーザの歯ぎしり事象のたびごとに、刺激による反応が行われるのが好ましい。このようにして形成されたバイオフィードバックにより、できるだけ高い持続的な学習効果を達成すべく、当該適用の経過中に、例えば、連続した複数回の睡眠相の後に、当該事象の発生時の当該刺激の頻度を徐々に減らす必要があろう。例えば、例えば当該適用の数日後及び/又は数週間後及び/又は数箇月後には、もはや歯ぎしり事象のたびごとに反応される必要はないであろう。いずれの事象に対して反応すべきかの選択は、例えば、ランダムジェネレータによって行うことができる。さらにまた、連続した複数の適用の過程で、当該刺激をその強さの点で、つまり、当該ユーザによって感じられる強度の点でも、変化させ、特に、低減させることが可能である。基本的にいずれのユーザも刺激に対して異なって反応するために、個別的に最も成果のある治療設定、つまり、パラメータ選択及び/又はトリップ順序の設定は、当該ユーザしだい又は当該それぞれのユーザの治療に付き添う専門家しだいである。
【0047】
トリップ遅れとは、刺激が当該トリップ閾値の超過後に時間的に遅れて開始されることとして理解されることとする。
【0048】
当該停止閾値とは、それが下回られると、まさに行われつつある刺激が完成されることとなる、当該制御及び/又は調節ユニットの当該入力信号に関するさらに別の限界値である。
【0049】
当該停止閾値とそれよりもやや高い当該トリップ閾値との間には、有意な形でヒステリシスが形成されており、その幅は当該トリップ閾値と当該停止閾値との間で設定することが可能である。このヒステリシスは、例えば、当該ユーザが刺激に対して確かに反応するが、ただしこの反応が、緩慢にしか、治療されるべき当該障害の減少につながらない場合には、より大きく選択することができる。したがって、こうした場合に、当該停止閾値がもっと低ければ、当該障害が緩慢にしか低減しない場合に、もっと長い刺激が行われる。
【0050】
こうした多数の設定可能なパラメータによって、本発明による操作方法を、広い限度内で、当該ユーザ個々人の要件又は治療されるべき障害の障害固有な要件に適合させることが可能である。
【0051】
本発明による操作方法のさらに別の実施形態において、当該一又は複数のパラメータは、当該治療の前及び/又はその間、時間的に不変の値として設定され、又は、当該一又は複数のパラメータは、当該治療の前又はその間、例えば、時間的に又はその他の値に応じて可変の値として、例えば、時間及び/又はその他の値例えばバックグラウンドノズル等の関数として可変的に設定される。
【0052】
本発明による方法のさらに別の実施形態において、当該一又は複数のパラメータは、当該操作の前又はその間、当該ユーザの身体的特徴及び/又は身体パラメータに応じて、例えば、当該ユーザの当該呼吸数、当該体温、当該心拍、当該身体活動例えば睡眠中、及び/又は口腔内でセンシングされた当該圧力、口腔内でセンシングされた当該振動又は口腔内でセンシングされた当該音響に応じて設定される。その際、当該一又は複数のパラメータは、例えば、静的又は可変的に、つまり、当該数値に連続的に適合されて設定及び/又は調節される。
【0053】
以下、本発明を例示的に、当該図面を参照して、詳細に説明する。各図は以下を示す。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【
図1】当該ユーザの顎に取り付けられた状態、したがって、規定とおりの使用状態における口腔内適用の治療装置の第一の実施形態を大幅に簡略化して示す斜視図である。
【
図3】本発明による口腔内適用の治療装置の第二の実施形態の平面図である。
【
図4】本発明による口腔内適用の治療装置の第三の実施形態を大幅に簡略化して示す斜視図である。
【
図5】本発明による口腔内適用の治療装置の第四の実施形態を大幅に簡略化して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0055】
本発明による口腔内適用の治療装置1は、
図1に、その第一の実施形態が非常に簡略化して示されている。
【0056】
図1は、ユーザの顎2に嵌められ若しくは取り付けられた当該治療装置1の斜視図を示す。その際、
図1及び2に示した当該実施例は、当該ユーザの当該上顎に取り付けられた当該治療装置1を示しており、このことは概略的に表された口蓋3によって具体的に示されている。顎2―ここでは、当該上顎―は、歯牙4を有する。特に、前歯4a、犬歯4b及び臼歯4cが概略的に示されている。当該歯牙4は自由端5を有し、その際、当該前歯の自由端5a、当該犬歯の自由端5b及び臼歯の自由端5cが具体的に示されている。当該歯牙4は外側面6と、口蓋3ないし当該口蓋3の口蓋ヴォールトに向かい合う内側面7を有する。
【0057】
歯肉7aが、同じく、概略的に表されている。
【0058】
当該口腔内適用の治療装置1は二つの固定装置10を有し、該固定装置はU字形の断面を有するU字形ピース状に形成され、さらに、少なくとも一つの臼歯4c、好ましくは、複数の臼歯4c上に、該臼歯を包むようにして取り付けられるように形成されている。その際、当該固定装置は少なくとも一つの被覆区域11を有し、該被覆区域は、当該治療装置の規定とおりの使用時に、当該臼歯4cの当該自由端5cを被覆し、こうして、該被覆区域11は、当該治療装置の規定とおりの使用時に、当該ユーザの咬合に際し、当該上顎臼歯と、それに対応する当該下顎臼歯との間の押圧に曝されている。
【0059】
さらに、当該固定装置10は内側被覆区域12を有し、該被覆区域は当該臼歯4cの内側に、つまり、口蓋側に、好ましくは、挟掴するようにして密接している。
【0060】
さらに、当該固定装置は外側被覆区域13を有し、該被覆区域は当該臼歯4cの外側に密接し、こうして、当該被覆区域11、12、13は、クランプの様に少なくとも一つの臼歯を抱囲して、当該治療装置1の固定装置10として機能する。
【0061】
当該固定装置10はそれぞれ、好ましくは対向して、顎半弓の臼歯4c上に着座している。当該固定装置は、少なくとも一つの柔軟な連結ブリッジ14によって、互いに連結され、その際、当該連結ブリッジ14は、規定とおりの使用時に、前歯4a及び、場合により、犬歯4bの当該外側面6(
図1に図示)に沿って延びて、同所に密接し、特にプレストレスされて、同所に密接している。その際、当該連結ブリッジ14は、当該前歯の自由端5a、当該犬歯の自由端5b及び、場合により、当該被覆区域11によって被覆されていない当該臼歯の自由端5cを露出しておく。当該連結ブリッジ14は、さらに、規定とおりの使用時に、できる限り当該歯肉7aとの接触が生じないように配置、形成されている。
【0062】
さらに、当該治療装置1は、例えば、当該固定装置10のいずれか一方と結合あるいは成形されている成形体20を有する。当該成形体20を単に当該固定装置10のいずれか一方と一体に成形し、当該他方の固定装置10が、柔軟な当該連結ブリッジ14を介して、当該成形体20を有する当該固定装置10と相関して、比較的容易に運動し得ることにより、異なったユーザのさまざまな顎ジオメトリへの良好な適合性が達成されるようにするのが好ましい。換言すれば、当該固定装置10同士の間の当該側方間隔を、柔軟な当該連結ブリッジによって、特に、ばね弾性を有する柔軟に形成された当該連結ブリッジによって、広い範囲内で、ユーザの生理学的口腔所与条件に適合させることが可能である。
【0063】
当該ユーザの咬合時に上顎の当該臼歯自由端5cと下顎の臼歯自由端との間に配置され、したがって、押圧に曝されている当該被覆区域11には、センサ装置30が埋設又は配置されている。当該センサ装置30は、例えば、圧力センサ例えば力検出抵抗であってよい。ただし、該センサ装置は、単に、能動型圧力センサとして形成されていてもよく、例えば、力の作用下での歪み時に電圧を供する圧電センサとして形成されていてよい。極めてシンプルなケースにおいて、当該センサ装置30は、単にオン状態及びオフ状態を反映し得る圧力スイッチとして形成されていてもよい。好ましくは、当該センサ装置30は、無論、当該圧力負荷に応じて変化するセンサ信号が生ずるようにして形成されている。こうした変化は比例的に行われても又は、その他の関数に応じ、例えば対数関数的に行われてもよい。
【0064】
単に、当該二つの固定装置10のいずれか一方の被覆区域11に一つのその種の圧力センサ30が設けられれば、基本的に十分である。ただし、例えば、斜めの咬合によって当該顎弓に不均等な荷重が生ずる場合にも、圧力の確実なセンシングを可能とすべく、双方の固定装置10のいずれにもこの種のセンサ装置30を設けるのが好ましい。
【0065】
例えば、それぞれの固定装置10にその種のセンサ装置30が設けられている場合には、当該成形体20の近傍に配置されていないセンサ装置を接続するための相応したセンサ信号線31を設けるのが好ましい。この種の信号線31は、好適には、当該連結ブリッジ14に沿って設けることが可能であり、特に、当該連結ブリッジに埋設されていてよい。
【0066】
当該センサ装置30は、少なくとも一つの当該センサ装置30のセンサ信号を受信して、評価するように設備され形成された制御/調節ユニット40と接続されている。
【0067】
さらに、当該口腔内適用の治療装置は、概略的に示唆した接続線51を介して、当該制御/調節ユニット40によって制御可能な刺激装置50を有する。当該刺激装置50は、例えば、機械的及び/又は電気的刺激装置であってよい。さらに、当該刺激装置は、熱的に作用するか又は音源として作用する刺激装置として形成されていてもよい。機械的に形成された適切な刺激装置として考えられるのは、例えば、アンバランスモータ又は圧電振動子である。電気的に作用する刺激装置として適切として考えられるのは、当該治療装置1の規定とおりの使用時に、例えば、当該歯肉又は口蓋又はユーザの頬肉と接触して、同所に必要に応じ電気刺激を惹起する、例えば、刺激電極である。
【0068】
熱的に作用する刺激装置50は、例えば、発熱素子又は冷却素子、例えば、一定の箇所例えば当該ユーザの口蓋又は歯肉に熱的刺激及び/又は冷却刺激を発生するペルチェ素子であってよい。
【0069】
当該刺激装置50は、言うまでもなく、例えばピー又はブーンという音によって当該ユーザに音響刺激を生ずるべく、音源として形成されていてよい。
【0070】
さらに、当該治療装置1は、必要に応じて使用される場合に、当該刺激装置(単数/複数)及び当該センサ装置の制御/調節ユニットにエネルギーを供給するエネルギー供給装置60を有する。
【0071】
治療装置1の上述した当該実施形態は、例えば、ユーザの睡眠中における無意識の歯ぎしりを検出し、適切な刺激により、特に、バイオフィードバックとそれから生ずる下意識においても行われ得る当該ユーザの学習プロセスに基づいて、当該歯ぎしりが低減され、場合により、当該歯ぎしりが防止されさえするように治療するのに適している。
【0072】
当該治療装置1が無意識のいびき等の防止に使用される場合には、当該センサ装置は、口腔内の音響事象又はその他の振動事象を記録するためのマイクロホンとして形成されていてもよい。
【0073】
同じく、相応したセンサ装置30―例えば、圧力センサ等―を、いわゆる舌突出―したがって、睡眠中における口腔内の特定の箇所例えば歯の内側7への舌の麻痺性圧接―が生ずる箇所に設けることも好適であり得る。この種の舌突出は、時間が経つにつれて、顎内の歯牙4の当該位置が変化するまでに至ることがある。舌突出は、多くの場合、当該筋系統の過働反応及び、場合により、頭痛、頸痛又は当該ユーザのその他の苦訴に至ることがしばしばある。
【0074】
さらに、少なくとも当該固定装置10、当該連結ブリッジ14、当該制御/調節ユニットと当該刺激装置を含めた当該成形体20並びに当該センサ装置30及び場合により存在する信号線31及び当該エネルギー供給装置60は、規定とおりの使用に際し、一切が口腔内に配置されており、したがって、例えばケーブル及び/又はアンテナ及び/又はその他の部品/部材が口から引き出される必要がいっさいないように構成されている。こうしたものが口外へ引き出される場合には、それはユーザにとって非常に不快で、また美的でないと感じられることが少なくない。当該治療装置1の完璧な口腔内配置によって、不適と感じられる従来の技術からする治療装置の当該特性は消失する。
【0075】
当該連結ブリッジ14は、基本的に、任意の断面三次元形状を有していてよい。ただし、当該連結ブリッジ14の断面曲線は、横軸Qまわりよりも、縦軸Hまわりに、撓みの点で、柔軟に形成されているのが特に好ましい。その際、当該縦軸Hは、当該歯肉から当該自由端5aまでの当該歯牙の長手方向延びと略平行をなして配向されていると理解されなければならない。横軸Qは、例えば、歯牙外側面6に対して垂直に、したがって、当該連結ブリッジの外側面70又は当該内側面に対して垂直をなしていると理解されなければならない。重要な点は、軸Q周りの柔軟性とは相違した、当該縦軸H周りの方向の柔軟性(より柔軟な形成)により、当該連結ブリッジ14は垂直方向に安定して形成されて、当該歯牙外側面6に確実に密着していることになるということである。これにより、一方で、口腔内における当該治療装置1の良好な着座が保証される。他方においてまた、当該連結ブリッジ14が、例えば、当該歯肉7aに当たってこすれ、こうして、当該歯肉7aを刺激してしまうことも確実に防止される。こうしたことは当該ユーザによって心地よく感じられると期待される。
【0076】
図2は、
図1に示した当該治療装置1の概略的な平面図を示す。この場合、当該縦軸Hは、当該描図面から垂直に手前に突き出し若しくは奥に突き入るようにして延びる軸として表されている。当該横軸Qは、概略的に、当該連結ブリッジ14の外側面ないし前面70に対して直角をなして延びる軸として表されている。
【0077】
さらに、少なくとも当該前歯及び、場合により、当該犬歯の当該歯牙自由端5は露出したままであることが明白となる。
【0078】
上述したこの種の治療装置1は、上顎にも下顎にも取り付けて使用可能であることは言うまでもない。当該固定装置10の一方(
図2において、右側に示した当該固定装置10)は、当該他方の固定装置10並びに当該成形体20と、単に当該連結ブリッジ14によって結合されているにすぎず、これによって、概略的に示唆した双方向矢印80による、当該他方の固定装置10に対する当該第一の固定装置10の容易な可動性がもたらされる。これにより、当該ユーザのさまざまに相異する顎ジオメトリに当該治療装置を容易な方途により適合させることが可能である。
【0079】
上記によって、特に、本発明による治療装置1を標準治療装置として大量の個数で製造する可能性が切り開かれることとなるが、それは、当該治療装置の当該構造デザインの帰結として、この種の治療装置を具体的な所与条件、特に、患者の口腔内の幾何形状的諸与条件に個別に適合させることが可能だからである。したがって、諸与条件がさまざまに相異する多数のユーザに適用可能とすべく、単に一つ又は少なくとも若干の異なった基本サイズの形でこの種の治療装置を製造することが可能である。
【0080】
さらに、異なった臼歯幅への適合が達成されると共に確実な着座が保証され得るようにすべく、必要に応じ、当該被覆区域12及び13を互いに柔軟に対向し得るか、又は、変形し得るように形成することも有意であり得る。これは、例えば、当該固定装置10に、スプリングブラケット100又は、例えば、変形可能な金属ストリップが設けられていれば実現可能である。
【0081】
ちなみに、当該治療装置、少なくとも当該固定装置10、当該連結ブリッジ14及び当該成形体20の材料として、医学的に無害なプラスチックが好適であることが実証されている。この種の治療装置1は、例えば、深絞り法(どちらかといえば、小ロット生産向け)によるか、又は、射出成形によって製造可能である。
【0082】
当該治療装置1の射出成形に適した構造デザインは、特に、大量生産に適している。特に、当該センサ装置、信号線、当該制御/調節ユニット、当該刺激ユニット、エネルギー供給装置等は射出成形法によって当該治療装置1に一体成形され又は別途方法で埋設されている。当該治療装置1を形成するため、又は、その他の構成要素を封入するために思量可能な材料としては、例えば、医学的に無害なシリコン、プラスチック及び/又は軟質プラスチックが適切なものとして考えられる。
【0083】
図3は、本発明による治療装置1の第二の実施形態を示す。これは、基本的に、当該治療装置1の規定とおりの使用時に、当該連結ブリッジ14が、例えば、前歯及び/犬歯4a、4bの内側面7に―それらの歯牙の自由端5a、5bを露出させた態様で、特に、プレストレスされ、強く押し付けられて―密接している点で、前述した実施形態と相違している。下顎への当該治療装置1の適用に特に適したこの種のデザインにおいて、舌が内側から当該歯牙を押圧する際に、例えば、舌突出を検出するために、好適には、センサ装置30が当該連結ブリッジ14に統合されていてよい。
【0084】
加えてさらに、下顎に当該治療装置1が取り付けられるケースにおいて、当該連結ブリッジ14を当該歯牙の内側面に沿わせることは好適であるが、それは、噛み合わせ時に、当該下側歯牙の外側面への当該上側歯牙の生理学的に正常な過蓋咬合が生ずるからである。したがって、当該連結ブリッジ14は、当該噛み合わせにとって支障とならない領域にある。同じことは、反対に、当該治療装置1が上顎に適用されるケースにも当てはまる。同所において、規定とおりの使用時に、当該連結ブリッジ14を当該上顎の自由な外側面に沿わせることは、噛み合わせ時に当該連結ブリッジ14が当該上顎の歯牙と当該下顎の当該前歯ないし犬歯との間に達することを防止するのに特に好適である。
【0085】
本発明による治療装置により、いわゆるバイオフィードバックの効果を基礎として、優れた学習効果ないし治療成果を期待することのできる治療装置を、容易な方法で、創出することができる。本発明による治療装置は、容易な方法で、さまざまな適応症(歯ぎしり、舌突出及び/又はいびき等)に適合させることが可能である。
【0086】
特に好ましい実施例において、当該治療装置1は調整/設定可能なシステムとして、特に、当該刺激及びトリップ感度及び、さらに以下、本発明による操作方法において述べるようなその他のパラメータを、ユーザ個別に、又は、異なった適応症において、当該適用に応じて個別に適合させることのできる調節式バイオフィードバックシステムとして構成することができる。
【0087】
上述した当該治療装置は、特に、大量生産に適し、大部分の当該ユーザにぴったり、又は、容易に適合可能であるとはいえ、本発明の基礎をなす当該思想は、言うまでもなく、当該ユーザ又は当該適用分野に合わせて個別に製造された治療装置にも転用され、それらに直ちに当てはめることが可能である。
【0088】
本発明のさらに別の実施形態において、付加的に、例えば、当該歯ぎしり、舌突出又はいびきの当該頻度及び当該強さそして、実施された刺激に対する当該ユーザの当該反応を記録すべく、記憶素子が設けられていてよい。そのために、さらに加えて、当該読み取り装置例えばブルートゥースインタフェース、赤外線インタフェース等が設けられていてよいことは言うまでもない。
【0089】
さらに、当該刺激を、当該ユーザの一定の身体パラメータ又は身体特性又は身体特徴に応じて、調節及び/又は制御することが可能である。この種のケースにおいて、例えば、当該体温、当該呼吸数、当該血圧、当該心拍等のために当該センサを設けること、又は、該センサを、当該制御/調節ユニットと有線又は無線で接続して、当該制御/調節ユニットの当該制御量を処理することのできる外部センサとして設けることは、無論、本発明の範囲に属する。
【0090】
図4は、本発明による治療装置1の第三の実施形態を示す。当該治療装置のこの実施形態は、上述した実施形態にも存在する多数の同一の部品・部材/機能を有する。その限りで、同一の部品/部材には同一の符号が付されている。上述した当該説明は、この場合、この実施形態にも適宜当てはまる。
【0091】
当該治療装置1の当該ユーザの口蓋を解放しておくべく、本実施形態は、当該制御/調節ユニット40、刺激装置50並びに当該エネルギー供給装置60を当該固定装置10の当該内側被覆区域12に埋設することを提案する。この場合、例えば、各々の固定装置10の各々の内側被覆区域12にそれぞれ一つの制御/調節ユニット40、一つの刺激装置50並びに一つのエネルギー供給装置60が配置されていてよい。こうしたケースにおいて、各々の側の面、つまり、当該治療装置1の当該左右の面は自立的に操作可能である。当該左側面と当該右側面との間の連結は行わないで済むために、当該連結ブリッジ14には信号線31が埋設される必要はない。
【0092】
図4に示した当該実施形態において、当該刺激装置50の制御/調節ユニット40並びに当該エネルギー供給装置60からなるシステムは当該内側被覆区域12に埋設され、つまり、当該ユーザの舌に対向してあるいは当該ユーザの口蓋に対向して埋設されている。
【0093】
同様に、当該構成要素40、50、60は、無論、当該外側被覆区域13、つまり、頬側において、当該ユーザの顎の当該外側区域に埋設されていてもよい。
【0094】
こうした対策によって、舌にとって、あるいは、当該口蓋区域内に、当該ユーザにとって比較的高い自由空間が生じ、これが快適に感じられることが多い。
【0095】
図5は概略的に、本発明による治療装置のさらに別の実施形態を示す。
図5に示した実施形態による当該治療装置1は、信号線31が当該連結ブリッジ14に埋設された一実施態様を示す。刺激装置50は、例えば、当該第一の固定装置10の当該内側被覆区域12に埋設されている。エネルギー供給装置60及び制御/調節ユニット40は、例えば、当該第二の固定装置10の当該外側被覆区域13に配置されている。明示的に説明したシステム配置態様の他に、その他のあらゆる態様も思量可能であることは言うまでもない。したがって、例えば、当該刺激装置50は、一貫して、固定装置10の当該外側被覆区域に配置されていてもよく、他方で、当該制御/調節ユニット40並びに当該エネルギー供給装置60は当該他方の固定装置10の内側被覆区域12に配置又は埋設されていてよい。これらの当該実施態様は、異なった患者のそれぞれの必要性に適合させることができる。外側被覆区域13への当該構成要素40/50/60の配置は、例えば、当該歯列間の隙間にほとんど余裕のない非常に狭い顎弓を有する患者に特に適している。
【0096】
さらに、
図5に示した当該治療装置1の実施形態は、口蓋に物体が密接していることを不快に感ずる患者/ユーザに特に適している。
【0097】
さらに、
図5には、当該治療装置のさらに別のオプショナルな補助装備が図示されているが、これは、例えば、
図1、2、3及び4に図示説明したすべての実施形態にも適用可能であることは言うまでもない。ただし、この補助装備は、同所、つまり、当該図面1、2、3及び4には図示されていない。
【0098】
上記補助装備は、別法として又はさらに加えて、第一の補強装置101並びにさらに別の第二の補強装置102に関する。補強装置101及び102と称されるこれらの装置は、例えば、塑性変形可能なワイヤ又は断面が円形以外に形成された屈曲バーであってよく、これらは、当該治療装置1の対応する当該区域の当該キャリア材料中に埋設され、したがって、当該ユーザの身体とできるだけ直接に接触しないようになされている。当該第一の補強装置101は、例えば、ワイヤ又はその他の形の補強装置にしたがってフラットワイヤであって、当該連結ブリッジ14の延びに沿って、当該信号線31(設けられている限りで)に隣接して延びている。この補強装置101は、当該患者が容易に一定の形に曲げることができ、こうして、それ自体相対的にフレキシブルに形成された当該連結ブリッジ14にある程度の剛性を付与すると共に、それによって、当該治療装置1の全体を当該個別の条件(当該ユーザの当該顎弓の半径)に適合させ、適切に、曲げ調整されることができる。
【0099】
当該第二の補強装置102も基本的に同様に機能する。これらは、同じく塑性変形可能な装置、例えば、丸形ワイヤ又はフラットワイヤであってよく、当該固定装置10の広さ/幅は、これらのワイヤの助けを得て、当該固定装置10の塑性曲げによって調整可能であり、こうして、当該ユーザの当該臼歯への当該治療装置1の挟掴固定の改善を達成することができる。当該補強装置102は、固定装置10ごとに複数が設けられていてもよく、例えば、一方は、当該センサ装置から見て、当該前歯に近い位置に設けられ、他方は当該後方臼歯に近い位置に設けられ、こうして、当該固定装置10がその長手方向延びの全体にわたってその形状の点でユーザの当該個別条件にさらに良好に適合し得るようにすることができる。
【0100】
したがって、これらの補助的解決法(補強装置101及び102)によって、当該ユーザの当該個々の必要性への当該治療装置1の適合改善が可能である。さらに、当該治療装置1全体の当該剛性が改善される結果として、当該フィット性がさらに改善されて、当該歯牙上に当該治療装置が良好に着座保持されることになる。当該連結ブリッジ14に埋設するために適したフラットワイヤは、例えば、60mmから85mmまでの長さ、1.5mmから3mmまでの高さ及び0.2mmから0.5mmまでの厚さを有する。
【0101】
場合により、補強装置101として、当該中継線31のための塑性屈曲可能なキャリアを設け、こうして、当該補強装置101と当該中継線31とが、当該治療装置1の当該キャリア材料(例えばシリコン)に埋設される前に、曲げによる塑性変形可能な単一の部品/部材として形成されているのも好適であり得る。
【0102】
同じく、当該固定装置10への埋設用に設けられた当該補強装置102を、当該治療装置1の当該キャリア材料に埋設する前に、すでに他の部品/部材例えば当該センサ装置と機械的に結合し、こうして、埋設プロセスを簡易化することも考えられ得る。この対策は、当該治療装置1の製造の簡易化を表す。
【0103】
当該フィット性をさらに改善するため、別法として又は上記対策にさらに加えて、当該ユーザが歯科医のもとで、又は、当該ユーザ自身が、いわゆるライニングシリコンをU字形の当該固定装置10の下に組み込んで、この“ライニングシリコン”を当該歯形、特に、当該ユーザの当該歯冠形状に(例えば、“噛み合わせ”によって)適合させることも行われてよい。これによって、当該固定装置10がその上に、点状のみならず、面状に載設される床を形成することができ、こうして、当該個別のフィット性をさらに改善することが可能である。場合により、後から個々の患者に適合された“ライニングシリコン”を、接着又はその他の適切な方法で、U形に形成された当該固定装置10内の下側面と結合することも有用である。
【符号の説明】
【0104】
1 治療装置
2 顎
3 口蓋
4 歯牙
4a 前歯
4b 犬歯
4c 臼歯
5 自由端
5a 前歯の自由端
5b 犬歯の自由端
5c 臼歯の自由端
6 外側面
7 内側面
7a 歯肉
10 固定装置
11 被覆区域
12 内側被覆区域
13 外側被覆区域
14 連結ブリッジ
20 成形体
30 センサ装置
31 信号線
40 制御/調節ユニット
50 刺激装置
51 接続線
60 エネルギー供給装置
70 外側面/前面
80 双方向矢印
100 スプリングブラケット
101 第一の補強装置
102 第二の補強装置
H 縦軸
Q 横軸