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特許7328897定量噴射型エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品の使用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】定量噴射型エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品の使用方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 9/04 20060101AFI20230809BHJP
   B65D 83/14 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
B05B9/04
B65D83/14
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019559182
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(86)【国際出願番号】 JP2018045763
(87)【国際公開番号】W WO2019117216
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-04-16
(31)【優先権主張番号】P 2017238441
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000100539
【氏名又は名称】アース製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】延原 健二
【審査官】伊藤 寿美
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-222267(JP,A)
【文献】特開2012-115792(JP,A)
【文献】特開2001-293402(JP,A)
【文献】特開2010-100342(JP,A)
【文献】国際公開第2011/065413(WO,A1)
【文献】特開2011-219132(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0032617(US,A1)
【文献】特表2015-521638(JP,A)
【文献】特開2007-031479(JP,A)
【文献】特開2001-302445(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 1/00- 1/36,
9/00- 9/047
B65D 83/00,
83/08-83/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原液および噴射剤を含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、前記エアゾール容器に取り付けられた定量噴射用エアゾールバルブとを備え、
1回あたりの噴射量が1~3mLであり、
普通騒音計におけるA特性での噴射音の10秒間の等価騒音レベルが62dB以上であり、
普通騒音計におけるA特性での噴射音の最大騒音レベルが78dB以上であり、
前記等価騒音レベル(L Aeq )とバックグラウンドの騒音レベルとの差は、15dB以上である、定量噴射型エアゾール製品。
【請求項2】
請求項記載の定量噴射型エアゾール製品を用いて、普通騒音計におけるA特性での噴射音の10秒間の等価騒音レベルが62dB以上となり、普通騒音計におけるA特性での噴射音の最大騒音レベルが78dB以上となり、かつ、前記等価騒音レベル(L Aeq )とバックグラウンドの騒音レベルとの差が、15dB以上となるよう噴射音を発生させる、定量噴射型エアゾール製品の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、定量噴射型エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品の使用方法に関する。より詳細には、本発明は、噴射時においてエアゾール組成物が充分に噴射されていることを使用者が実感でき、過剰使用を抑止できる定量噴射型エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、定量噴射型エアゾール製品は、一回の押下で一定量の薬剤を噴射することができるため、手軽かつ便利であり、所望の効果が得ることができる点から開発が進められている。また、流通している定量噴射型エアゾール製品は、一回当たりの吐出量が少量(たとえば好適には0.2~0.9mL程度)である(たとえば特許文献1を参照)。そのため、エアゾール製品の寸法を小さくすることができるため、手軽かつ便利である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2011-63576号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のエアゾール製品は、噴射時に、充分に噴射していることを使用者が実感しにくい。そのため、このようなエアゾール製品は、必要回数以上に噴射することにより過剰使用されやすい。
【0005】
本発明は、このような従来の問題に鑑みてなされたものであり、噴射時にエアゾール組成物が充分に噴射されていることを使用者が実感でき、過剰使用を抑止できる定量噴射型エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品の使用方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、鋭意検討した結果、噴射後の所定時間(たとえば10秒間)において変動する騒音の時間平均値(等価騒音レベル)に着目し、このような等価騒音レベルが一定以上である場合に、使用者が、噴射時にエアゾール組成物が充分に噴射されていることを実感でき、これにより、適正回数を噴射することができ、過剰使用を抑止できることを見出し、本発明を完成させた。また、本発明者は、エアゾール装置に特殊な機構(たとえば噴射音を増大させるような共鳴機構)を設けなくても、噴射量を特定の範囲に調整し、上記騒音レベルの範囲を達成すれば、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成させた。
【0007】
すなわち、上記課題を解決する本発明の定量噴射型エアゾール製品は、原液および噴射剤を含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、前記エアゾール容器に取り付けられた定量噴射用エアゾールバルブとを備え、1回あたりの噴射量が1~3mLであり、普通騒音計におけるA特性での噴射音の10秒間の等価騒音レベルが62dB以上である、定量噴射型エアゾール製品である。
【0008】
また、上記課題を解決する本発明の定量噴射型エアゾール製品の使用方法は、上記定量噴射型エアゾール製品を用いて、普通騒音計におけるA特性での噴射音の10秒間の等価騒音レベルが62dB以上となるよう噴射音を発生させる、定量噴射型エアゾール製品の使用方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、噴射時にエアゾール組成物が充分に噴射されていることを使用者が実感できるため、過剰使用による薬剤や溶剤等を過剰に環境中にまき散らすことがなく、所望の効果を得ることができる定量噴射型エアゾール製品および定量噴射型エアゾール製品の使用方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<定量噴射型エアゾール製品>
本発明の一実施形態の定量噴射型エアゾール製品(以下、単にエアゾール製品ともいう)は、原液および噴射剤を含むエアゾール組成物が充填されたエアゾール容器と、エアゾール容器に取り付けられた定量噴射用エアゾールバルブ(以下、単にエアゾールバルブともいう)と、エアゾールバルブを介してエアゾール容器に取り付けられる噴射部材とを備える。エアゾール製品は、1回あたりの噴射量が1~3mLであり、普通騒音計におけるA特性での噴射音の10秒間の等価騒音レベルが62dB以上である。以下、それぞれについて説明する。なお、以下の説明は例示であり、エアゾール容器、エアゾールバルブおよび噴射部材は、適宜設計変更され得る。
【0011】
(エアゾール容器)
エアゾール容器は、エアゾール組成物を加圧充填するための耐圧容器である。エアゾール容器は、内部にエアゾール組成物が充填される空間が形成された概略筒状の容器である。エアゾール容器の上部には開口が設けられている。開口は、後述するエアゾールバルブによって密封される。
【0012】
エアゾール容器の材質は特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール容器は、耐圧性を有する各種金属製、樹脂製、ガラス製等であってもよい。
【0013】
(エアゾール組成物)
エアゾール組成物は、エアゾール製品の内容物であり、原液および噴射剤を含む。
【0014】
・原液
原液は、噴射剤とともにエアゾール組成物を構成し得る成分である。原液は、エアゾール組成物が調製される際に、エアゾール容器に充填される。原液は、有効成分を含むことができる。有効成分とは、たとえば、殺虫成分、殺菌成分(防黴成分)、消臭成分、芳香成分等である。
【0015】
殺虫成分の種類は、特に限定されない。殺虫成分は、対象害虫の種類に合わせて適宜選択され得る。殺虫成分は、たとえば、ピレトリン、アレスリン、フタルスリン、レスメトリン、フラメトリン、フェノトリン、ペルメトリン、エムペントリン、プラレトリン、シフェノトリン、イミプロトリン、トランスフルトリン、メトフルトリン、シフルトリン、プロフルトリン等のピレスロイド系化合物、フェニトロチオン、ジクロルボス、クロルピリホスメチル、ダイアジノン、フェンチオン等の有機リン系化合物、カルバリル、プロポクスル等のカーバメイト系化合物、メトプレン、ピリプロキシフェン、メトキサジアゾン、フィプロニル、アミドフルメト等の殺虫性化合物等である。また、上記殺虫成分は2以上の殺虫成分を組み合わせて使用してもよい。
【0016】
殺菌成分(防黴成分)の種類は、特に限定されない。殺菌成分(防黴成分)は、たとえば、イソプロピルメチルフェノール、トリクロサン、チモール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン、銀イオン等である。
【0017】
消臭成分の種類は、特に限定されない。消臭成分は、たとえば、メタクリル酸ラウリル、茶抽出物、植物ポリフェノール等である。
【0018】
有効成分が含有される場合、有効成分の含有量は、有効成分の効果(たとえば、殺虫成分であれば殺虫効果(ノックダウン効果等))を示す含有量であればよく、有効成分の含有量の上限は特に限定されない。有効成分の含有量は、特に限定されないが、たとえば、エアゾール組成物中に0.01質量/容量%(w/v%)以上であることが好ましく、0.1質量/容量%(w/v%)以上であることがより好ましい。有効成分が殺虫成分である場合には、殺虫成分の含有量は、エアゾール組成物中に0.01質量/容量%(w/v%)以上であることが好ましく、0.1質量/容量%(w/v%)以上であることがより好ましい。上記の配合量であれば、充分な殺虫効果が得られ得る。
【0019】
原液は、溶剤が配合されてもよい。溶剤は、たとえば殺虫成分等の有効成分を均一に配合するために好適に含有される。一例を挙げると、溶剤は、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール、グリセリン、エチレングリコール等の多価アルコール、直鎖、分岐鎖または環状のパラフィン類、灯油等の石油類、水;ミリスチン酸イソプロピル、ラウリン酸ヘキシル等のエステル類等である。
【0020】
溶剤の含有量は、有効成分1質量部に対して0.5質量部以上であることが好ましく、1質量部以上であることがより好ましい。また、溶剤の含有量は、有効成分1質量部に対して1000質量部以下であることが好ましく、500質量部以下であることがより好ましい。上記範囲内であれば、原液は、有効成分を均一に配合しやすい。
【0021】
原液には、上記有効成分のほか、非イオン、陰イオンまたは陽イオン界面活性剤、ブチルヒドロキシトルエン等の抗酸化剤;クエン酸、アスコルビン酸等の安定化剤;タルク、珪酸等の無機粉体、香料、色素等の任意成分が適宜含有されてもよい。
【0022】
・噴射剤
噴射剤は、上記原液を噴射するための媒体であり、原液とともにエアゾール容器に加圧充填される。噴射剤は特に限定されない。一例を挙げると、噴射剤は、ハイドロフルオロオレフィン、ジメチルエーテル(DME)、液化石油ガス(LPG)等である。なお、上記噴射剤は、2以上の噴射剤を組み合わせて使用してもよい。
【0023】
ハイドロフルオロオレフィンは、ハイドロフルオロプロペンが例示される。具体的には、ハイドロフルオロプロペンは、1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、2,3,3-トリフルオロプロペン、3,3,3-トリフルオロプロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン等が例示される。1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペンは、(E)-1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン等が例示される。
【0024】
なお、本実施形態のエアゾール組成物は、上記噴射剤に加えて、エアゾール組成物の圧力を調整するために、炭酸ガス、窒素ガス、圧縮空気、酸素ガス等の圧縮ガスが併用されてもよい。
【0025】
エアゾール組成物の原液と噴射剤の配合割合(体積比)は1:99~25:75であることが好ましく、3:97~25:75であることがより好ましく、3:97~20:80であることがさらに好ましい。このような体積比とすることで、エアゾール製品は、吐出時の噴射音の10秒間の等価騒音レベルが62dB以上となるよう調整しやすく、その結果、噴射時にエアゾール組成物が充分に噴射されていることを使用者が実感できる。
【0026】
(エアゾールバルブ)
エアゾールバルブは、エアゾール容器内に充填されたエアゾール組成物を取り出すための機構であり、エアゾール容器の開口を閉止する。また、本実施形態のエアゾールバルブは、エアゾール容器から取り出されたエアゾール組成物を一時的に貯留するための定量室が形成されている。定量室の容積は、1回の噴射によって噴射されるエアゾール組成物の容量に相当する。本実施形態の定量室の容積は、1~3mLである。
【0027】
エアゾールバルブは、噴射部材が使用者により操作されることによりエアゾールバルブの定量室の内部と外部との連通および遮断を切り替えるための開閉部材と、開閉部材が取り付けられるハウジングと、ハウジングをエアゾール容器の所定の位置に保持するためのマウント部材を備える。また、開閉部材は、噴射部材と連動して上下に摺動するステムを含む。ステムの摺動によりエアゾール組成物の連通(噴射状態)および遮断(非噴射状態)が切り替えられる。エアゾールバルブには、エアゾール容器からエアゾール組成物を取り込むためのハウジング孔と、取り込まれたエアゾール組成物を噴射部材に送るためのステム孔とが形成されている。ハウジング孔は、ハウジングに形成されている。ステム孔は、ステムに形成されている。ハウジング孔からステム孔までの経路は、エアゾール組成物が通過する内部通路を構成する。
【0028】
ステムは、エアゾールバルブに取り付けられる部位であり、エアゾールバルブに取り込まれたエアゾール組成物を、噴射ボタンに送るための内部通路が形成されている。内部通路は、ステムラバーによって適宜開閉される。
【0029】
原液および噴射剤が充填された状態において、25℃におけるエアゾールバルブの内圧は、0.3MPa以上であることが好ましく、0.4MPa以上であることがより好ましい。また、25℃におけるエアゾールバルブの内圧は、0.7MPa以下であることが好ましく、0.6MPa以下であることがより好ましい。このような範囲にエアゾールバルブの内圧を調整することで、エアゾール製品は、吐出時の噴射音の10秒間の等価騒音レベルが62dB以上となるよう調整しやすく、その結果、噴射時にエアゾール組成物が充分に噴射されていることを使用者がより実感できる。なお、エアゾールバルブの内圧が0.3MPa未満である場合、エアゾール製品は、噴射音が小さくなりやすく、使用者に実感されにくい。また、エアゾールバルブの内圧が0.3MPa未満である場合、エアゾール組成物は、噴射後に、噴口から液ダレする可能性がある。一方、エアゾールバルブの内圧が0.7MPaを超える場合、エアゾール組成物は、エアゾール容器から漏洩する可能性がある。なお、エアゾールバルブの内圧は、たとえば25℃でWGA-710C計装用コンディショナ((株)共和電業製)に取り付けたPGM-10KE小型圧力センサ((株)共和電業製)をエアゾールバルブに接続することにより測定することができる。
【0030】
(噴射部材)
噴射部材は、エアゾール容器から取り込まれた原液を、噴射剤とともに噴射するための部材である。噴射部材には、エアゾール組成物を噴射するための噴口が形成されている。噴口の数、寸法、形状および断面積は、後述する等価騒音レベル(LAeq)が62dB以上となるように、必要に応じて適宜選択され得る。そのため、本実施形態のエアゾール製品は、等価騒音レベル(LAeq)が62dB以上となる範囲において、種々の噴口が形成された噴射部材を採用し得る。
【0031】
噴口の数、寸法および形状は特に限定されない。一例を挙げると、噴口の数は、1個であってもよく、2個以上であってもよい。また、噴口の寸法(噴口直径)は、0.2mm以上であることが好ましく、0.3mm以上であることがより好ましく、0.5mm以上であることがさらに好ましい。また、噴口直径は、4.5mm以下であることが好ましく、3.5mm以下であることがより好ましく、2.5mm以下であることがさらに好ましい。噴口の形状(断面形状)は、円形、楕円形、角形、各種不定形であってもよい。
【0032】
また、噴口の総断面積(総開口面積)は特に限定されない。総断面積は、後述する等価騒音レベル(LAeq)が62dB以上となるように、必要に応じて適宜調整される。一例を挙げると、総断面積は、0.2mm2以上であることが好ましく、0.3mm2以上であることがより好ましい。また、総断面積は、4.0mm2以下であることが好ましく、3.5mm2以下であることがより好ましい。なお、本実施形態において、「総断面積」とは、噴口の断面積(開口面積)の合計面積である。すなわち、噴口が1個である場合、総断面積は、噴口の断面積そのものであり、噴口が2個以上である場合、総断面積は、すべての噴口の断面積の和である。
【0033】
噴射部材内の噴射通路の長さは特に限定されない。噴射通路の長さは、後述する等価騒音レベル(LAeq)が62dB以上となるように、必要に応じて適宜調整される。一例を挙げると、噴射通路の長さは、10mm以上であることが好ましい。また、噴射通路の長さは、50mm以下であることが好ましく、40mm以下であることがより好ましい。なお、本実施形態において、「噴射通路の長さ」とは、ステム先端から噴口までの長さである。
【0034】
本実施形態のエアゾール製品は、使用者によって噴射ボタンが操作されることにより、ステム機構およびエアゾールバルブが作動し、エアゾールバルブの定量室内と外部とが連通する。これにより、エアゾールバルブの定量室内のエアゾール組成物は、エアゾールバルブの定量室内と外部との圧力差に従って一定量が取り出され、噴射部材の噴口から噴射される。
【0035】
本実施形態のエアゾール製品は、1回あたりの噴射量が1~3mLとなるよう調整されている。1回あたりの噴射量は、1.0mL以上であればよい。また、1回あたりの噴射量は、3.0mL以下であればよく、2.5mL以下であることが好ましい。1回あたりの噴射量が1.0mL未満である場合、噴射されたエアゾール組成物は、噴射音が小さくなりやすく、使用者に実感されにくい。一方、1回あたりの噴射量が3.0mLを超える場合、エアゾール製品は、定量室の設計が困難になりやすい。
【0036】
エアゾール製品全体の説明に戻り、本実施形態のエアゾール製品は、普通騒音計におけるA特性での噴射音の10秒間の等価騒音レベル(LAeq)が62dB以上である。等価騒音レベル(LAeq)は、62dB以上となるよう調整されていればよく、64dB以上であることが好ましく、67dB以上であることがより好ましい。なお、等価騒音レベル(LAeq)の上限は特に限定されない。噴射時の騒音の観点から、等価騒音レベル(LAeq)は、90dB以下であることが好ましい。等価騒音レベル(LAeq)が62dB以上である場合、使用者は、エアゾール組成物が充分に噴射されていることを実感できる。そのため、使用者は、必要回数以上に噴射することが抑止され得る。なお、等価騒音レベル(LAeq)は、時間的に変動する場合の騒音レベルを定量的に把握するための数値であり、JIS Z8731-1999に基づき、ある一定の測定時間内(本実施形態では10秒間)における変動騒音の平均2乗音圧に等しい平均2乗音圧を与える連続定常音の騒音レベルとして定義される。等価騒音レベル(LAeq)の値が小さいほど、騒音が少なく静かであるといえる。また、A特性とは、騒音計による測定につかわれる人間の聴覚を考慮した周波数の重み付け特性をいう。本実施形態の等価騒音レベル(LAeq)は、たとえば、普通騒音計NL-21(リオン(株)製)にて、エアゾール製品の噴口の真横10cmの距離から、A特性にて測定することにより算出することができる。また、本実施形態の等価騒音レベル(LAeq)は、バックグラウンドの等価騒音レベル(LAeq)が36dBである場合の騒音レベルである。本実施形態のエアゾール製品は、上記等価騒音レベル(LAeq)を達成していることにより、通常使用される場面(たとえば、静かな居室等。この場合のバックグラウンドは、35~37dB程度である)において、充分に、使用者に使用していることが実感できる。
【0037】
本実施形態において、等価騒音レベル(LAeq)とバックグラウンドの騒音レベルとの差は、15dB以上であることが好ましく、20dB以上であることがより好ましい。等価騒音レベル(LAeq)とバックグラウンドの騒音レベルとの差が15dB以上であることにより、使用者は、使用場所によらず、エアゾール組成物が充分に噴射されていることを実感できる。
【0038】
また、本実施形態のエアゾール製品は、普通騒音計におけるA特性での噴射音の最大騒音レベル(LAmax)が78dB以上であることが好ましく、80dB以上であることがより好ましい。なお、最大騒音レベル(LAmax)の上限は特に限定されない。噴射時の騒音の観点から、最大騒音レベル(LAmax)は、100dB以下であることが好ましい。なお、最大騒音レベル(LAmax)は、実測時間内の騒音レベルの最大値を表す。本実施形態の最大騒音レベル(LAmax)は、たとえば、普通騒音計NL-21(リオン(株)製)にて、エアゾール製品の噴口の真横10cmの距離から、A特性にて測定することにより算出することができる。また、本実施形態の最大騒音レベル(LAmax)は、バックグラウンドの最大騒音レベル(LAmax)が36.8dBである場合の騒音レベルである。
【0039】
なお、本実施形態のエアゾール製品は、上記した原液と噴射剤との配合割合を特定し、1回あたりの噴射量を1~3mLとなるよう調整し、かつ、普通騒音計におけるA特性での噴射音の10秒間の等価騒音レベル(LAeq)が62dB以上となるよう調整されることにより、エアゾール組成物が充分に噴射されていることを使用者が実感できる。1回あたりの噴射量を上記範囲内に調整する方法や、等価騒音レベル(LAeq)を調整する方法は特に限定されない。また、等価騒音レベル(LAeq)は、上記1回あたりの噴射量を調整する方法のほか、25℃におけるエアゾールバルブの内圧を調整したり、原液と噴射剤との配合割合を調整したり、噴射部材の数や寸法、形状等を調整することにより、適宜調整し得る。
【0040】
本実施形態のエアゾール製品の製造方法は特に限定されない。一例を挙げると、エアゾール製品は、エアゾール容器に原液を充填し、エアゾールバルブによってエアゾール容器の開口を閉止し、噴射部材の噴口またはステムを介して噴射剤を加圧充填することによって製造することができる。
【0041】
以上、本実施形態のエアゾール製品は、1回あたりの噴射量、および、等価騒音レベル(LAeq)が所定の範囲内に調整されていることにより、噴射時にエアゾール組成物が充分に噴射されていることを使用者が実感でき、過剰使用を抑止することができる。
【0042】
<定量噴射型エアゾール製品の使用方法>
本発明の一実施形態の定量噴射型エアゾール製品の使用方法は、上記した定量噴射型エアゾール製品を用いて、普通騒音計におけるA特性での噴射音の10秒間の等価騒音レベル(LAeq)が62dB以上となるよう噴射音を発生させる方法である。このような方法によれば、噴射時にエアゾール組成物が充分に噴射されていることを使用者が実感でき、過剰使用を抑止することができる。なお、本実施形態の定量噴射型エアゾール製品の使用方法が実施される際の等価騒音レベル(LAeq)は、バックグラウンドの等価騒音レベル(LAeq)が36dBである場合の騒音レベルである。
【実施例
【0043】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。本発明は、これら実施例に何ら限定されない。なお、特に制限のない限り、「%」は「質量%」を意味し、「部」は「質量部」を意味する。
【0044】
使用したエアゾール製品の詳細を以下に示す。
エアゾール製品1:噴射部材(噴口径φ0.6mm、開口面積0.28mm2、噴口の断面形状が円形の噴口1個、噴射通路の長さ10.8mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量1.0mL)
エアゾール製品2:噴射部材(噴口径φ1.0mm、開口面積0.79mm2、噴口の断面形状が円形の噴口1個、噴射通路の長さ18.6mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量1.0mL)
エアゾール製品3:噴射部材(噴口径φ1.6mm、開口面積2.01mm2、噴口の断面形状が円形の噴口1個、噴射通路の長さ18.6mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量1.0mL)
エアゾール製品4:噴射部材(噴口径φ2.0mm、開口面積3.14mm2、噴口の断面形状が円形の噴口1個、噴射通路の長さ18.6mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量1.0mL)
エアゾール製品5:噴射部材(噴口径φ1.8mm、開口面積2.54mm2、噴口の断面形状が円形の噴口1個、噴射通路の長さ36mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量1.0mL)
エアゾール製品6:噴射部材(噴口径φ1.0mm、総開口面積2.36mm2、噴口の断面形状が円形の噴口3個、噴射通路の長さ36mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量1.0mL)
エアゾール製品7:噴射部材(噴口径φ0.5mm、総開口面積1.57mm2、噴口の断面形状が円形の噴口8個、噴射通路の長さ36mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量1.0mL)
エアゾール製品8:噴射部材(噴口径φ0.6mm、開口面積0.28mm2、噴口の断面形状が円形の噴口1個、噴射通路の長さ10.8mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量2.2mL)
エアゾール製品9:噴射部材(噴口径φ1.0mm、開口面積0.79mm2、噴口の断面形状が円形の噴口1個、噴射通路の長さ18.6mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量2.2mL)
エアゾール製品10:噴射部材(噴口径φ1.6mm、開口面積2.01mm2、噴口の断面形状が円形の噴口1個、噴射通路の長さ18.6mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量2.2mL)
エアゾール製品11:噴射部材(噴口径φ2.0mm、開口面積3.14mm2、噴口の断面形状が円形の噴口1個、噴射通路の長さ18.6mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量2.2mL)
エアゾール製品12:噴射部材(噴口径φ1.8mm、開口面積2.54mm2、噴口の断面形状が円形の噴口1個、噴射通路の長さ36mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量2.2mL)
エアゾール製品13:噴射部材(噴口径φ1.0mm、総開口面積2.36mm2、噴口の断面形状が円形の噴口3個、噴射通路の長さ36mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量2.2mL)
エアゾール製品14:噴射部材(噴口径φ0.5mm、総開口面積1.57mm2、噴口の断面形状が円形の噴口8個、噴射通路の長さ36mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量2.2mL)
エアゾール製品15:噴射部材(噴口径φ0.6mm、開口面積0.28mm2、噴口の断面形状が円形の噴口1個、噴射通路の長さ10.8mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量0.2mL)
エアゾール製品16:噴射部材(噴口径φ1.0mm、開口面積0.79mm2、噴口の断面形状が円形の噴口1個、噴射通路の長さ18.6mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量0.2mL)
エアゾール製品17:噴射部材(噴口径φ1.6mm、開口面積2.01mm2、噴口の断面形状が円形の噴口1個、噴射通路の長さ18.6mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量0.2mL)
エアゾール製品18:噴射部材(噴口径φ2.0mm、開口面積3.14mm2、噴口の断面形状が円形の噴口1個、噴射通路の長さ18.6mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量0.2mL)
エアゾール製品19:噴射部材(噴口径φ1.8mm、開口面積2.54mm2、噴口の断面形状が円形の噴口1個、噴射通路の長さ36mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量0.2mL)
エアゾール製品20:噴射部材(噴口径φ1.0mm、総開口面積2.36mm2、噴口の断面形状が円形の噴口3個、噴射通路の長さ36mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量0.2mL)
エアゾール製品21:噴射部材(噴口径φ0.5mm、総開口面積1.57mm2、噴口の断面形状が円形の噴口8個、噴射通路の長さ36mm)、エアゾールバルブ(定量室の容量0.2mL)
【0045】
<騒音レベルと過剰使用防止効果との関係について>
(実施例1)
トランスフルトリンを25w/v%となるようにイソプロピルアルコール(IPA)に溶解し、原液を調製した。得られた原液を、容量287mLのエアゾール容器に100mL充填し、エアゾールバルブを取り付けた後、原液と噴射剤との配合割合(体積比)が6.4/93.6となるよう噴射剤(液化石油ガス 飽和蒸気圧:0.29MPa(25℃))を加圧充填し、噴射部材を取り付け、エアゾール製品を作製した(エアゾールバルブ、噴射部材はエアゾール製品7を用いた)。エアゾールバルブの内圧(25℃)は0.36MPaであった。なお、バルブの内圧は、25℃でWGA-710C計装用コンディショナ((株)共和電業)に取り付けたPGM-10KE小型圧力センサ((株)共和電業)をエアゾールバルブに接続することにより測定した。
【0046】
(実施例2)
エアゾールバルブ、噴射部材としてエアゾール製品14を使用し、実施例1で作製した原液と噴射剤との配合割合(体積比)が6.4/93.6となるよう噴射剤(液化石油ガス 飽和蒸気圧:0.49MPa(25℃))を加圧充填した以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール製品を調製した。
【0047】
(比較例1)
トランスフルトリンを50w/v%となるようにIPAに溶解し、原液を調製した。エアゾールバルブ、噴射部材としてエアゾール製品15を使用し、得られた原液と噴射剤との配合割合(体積比)が10/90となるよう噴射剤(液化石油ガス 飽和蒸気圧:0.49MPa(25℃))を加圧充填した以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール製品を調製した。
【0048】
(実施例5、9、68)
後述する表2または表3に記載の原液処方、噴射剤の種類およびガス圧、バルブ内圧、使用したエアゾール製品の種類(エアゾール製品1~21のいずれか)を変更した以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール製品を調製した。
【0049】
実施例1、2、5、9、68および比較例1において得られたエアゾール製品について、以下の評価方法により、過剰使用防止効果を確認した。また、それぞれのエアゾール製品に関して、噴射時の10秒間の等価騒音レベル(LAeq)(以下、本実施例において単に「等価騒音レベル」という。)および最大騒音レベル(LAmax)を測定した。試験は、いずれも25℃で行った。
【0050】
(騒音レベルの確認方法)
普通騒音計NL-21(リオン(株)製)にて、エアゾール製品の噴口の真横10cmの距離から、A特性にて、等価騒音レベル(LAeq)および最大騒音レベル(LAmax)を測定した。測定時における、バックグラウンドの等価騒音レベル(LAeq)が36dB、バックグラウンドの最大騒音レベル(LAmax)が36.8dBであった。結果を表1に示す。
【0051】
(過剰使用防止効果の確認方法)
それぞれのエアゾール製品を有効成分としてトランスフルトリンを含んだ定量噴射型エアゾールとして8畳の室内(バックグラウンドの等価騒音レベル(LAeq)が36dB)において使用させ、室内に充分に噴射されたと実感できるまで噴射させた。1回の噴射で使用実感が得られない使用者には繰り返しエアゾール組成物を噴射させ、室内に充分に噴射されたと感じるまでの噴射回数を調べた。結果を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1に示されるように、実施例1、2、5、9、68のエアゾール製品は、多くの試験者において、1回の噴射で、エアゾール組成物が室内に充分に噴射されていることを実感することができた。一方、比較例1のエアゾール製品は、エアゾール組成物が室内に充分に噴射されていることを実感するために、3~4回の噴射を要した試験者がおり、室内に充分に噴射されていることを実感するための平均噴射回数が2回であった。これらの結果より、等価騒音レベル(LAeq)が62dB以上である場合(実施例1、2、5、9、68)において、エアゾール組成物が充分に噴射されていることを使用者が実感できたことが示された。
【0054】
<種々のエアゾール製品における騒音レベルと過剰使用防止効果の確認>
(実施例1~91、比較例1~28)
表1に記載の原液処方、噴射剤の種類およびガス圧、バルブ内圧、使用したエアゾール製品の種類(エアゾール製品1~21)を変更した以外は、実施例1と同様の方法により、エアゾール製品を調製し、等価騒音レベル(LAeq)(dB)および最大騒音レベル(LAmax)(dB)を測定した。等価騒音レベル(LAeq)(dB)の結果を表2に示す。最大騒音レベル(LAmax)(dB)の結果を表3に示す。なお、表2および表3において、LPGは液化石油ガス、IPAはイソプロピルアルコール、IPMはミリスチン酸イソプロピル、DMEはジメチルエーテルを表す。
【0055】
【表2】
【0056】
【表3】
【0057】
表2および表3に示されるように、実施例1~91のエアゾール製品は、1回あたりの噴射量が1.0~3.0mLであり、かつ、等価騒音レベル(LAeq)が62dB以上であった。そのため、実施例1~91のエアゾール製品は、種々のエアゾール組成物や噴射部材を用いた場合であっても、表1に関連して説明したように、試験者によって充分に噴射されていることを実感でき、過剰使用防止できると考えられた。また、これらの傾向は、最大騒音レベル(LAmax)を参照した場合も、同様であった。一方、比較例1~28のうち、比較例1、3、5~8、10~24および26~28のエアゾール製品は、等価騒音レベル(LAeq)が62dB未満であったため、試験者によって充分に噴射されていることが実感されにくく、過剰使用されやすいと考えられた。また、比較例2、4、9および25のエアゾール製品は、等価騒音レベル(LAeq)が62dB以上であったが、1回あたりの噴射量が1.0~3.0mLの範囲外であったため、試験者によって充分に噴射されていることが実感されにくく、過剰使用されやすかった。したがって、試験者において充分に噴射されていることが実感されるためには、単に等価騒音レベル(LAeq)が62dB以上であるかだけでなく、1回あたりの噴射量が1.0~3.0mLに調整されていることも重要であることが示された。