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特許7328898アゾ化合物又はその塩、並びにこれを含む偏光素子、偏光板、及び表示装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】アゾ化合物又はその塩、並びにこれを含む偏光素子、偏光板、及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20230809BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20230809BHJP
   C09B 43/124 20060101ALI20230809BHJP
   C09B 35/26 20060101ALN20230809BHJP
   C09B 31/16 20060101ALN20230809BHJP
【FI】
G02B5/30
G02F1/1335 510
C09B43/124 CSP
C09B35/26 CLA
C09B31/16
【請求項の数】 34
(21)【出願番号】P 2019560996
(86)(22)【出願日】2018-12-11
(86)【国際出願番号】 JP2018045483
(87)【国際公開番号】W WO2019124161
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-08-25
(31)【優先権主張番号】P 2017245658
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2017245659
(32)【優先日】2017-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018131965
(32)【優先日】2018-07-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】望月 典明
(72)【発明者】
【氏名】服部 由侑
(72)【発明者】
【氏名】樋下田 貴大
(72)【発明者】
【氏名】中村 光則
【審査官】藤田 雅也
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-160076(JP,A)
【文献】特開平10-158551(JP,A)
【文献】特開平10-158560(JP,A)
【文献】米国特許第02606897(US,A)
【文献】国際公開第2013/046686(WO,A1)
【文献】特開昭64-60677(JP,A)
【文献】国際公開第2016/186183(WO,A1)
【文献】特表2010-502806(JP,A)
【文献】特開2009-155364(JP,A)
【文献】特開2001-2631(JP,A)
【文献】特開2017-58630(JP,A)
【文献】特開2008-120868(JP,A)
【文献】特開2007-302801(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09B 43/124
C09B 31/16
C09B 35/26
G02B 5/30
G02F 1/1335
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩を含む偏光素子:
【化1】

式中、Ay及びAyは各々独立に、置換基を有してもよいナフチル基、又は置換基を有してもよいフェニル基であり、s、tは各々独立に0又は1であり、かつ、s又はtのいずれかは1であり、Ry~Ryは各々独立に水素原子又は置換基を表す。
【請求項2】
Ay及びAyの少なくとも1つは置換基を有してもよいフェニル基である、請求項1に記載の偏光素子。
【請求項3】
上記置換基を有してもよいフェニル基が、スルホ基、カルボキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、炭素数1~4のアルキル置換アミノ基、及び炭素数1~4のアルキル置換アシルアミノ基からなる群から選択される少なくとも1以上の置換基を有する請求項2に記載の偏光素子。
【請求項4】
上記置換基を有してもよいフェニル基が、スルホ基、カルボキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1以上の置換基を有する、請求項3に記載の偏光素子。
【請求項5】
上記置換基を有してもよいフェニル基が、下記式(2)で表される、請求項2~4のいずれか一項に記載の偏光素子:
【化2】

式中、Ry又はRy10のいずれか一方はスルホ基、カルボキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基であり、他方は水素原子、スルホ基、カルボキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、炭素数1~4のアルキル置換アミノ基、又は炭素数1~4のアルキル置換アシルアミノ基であり、式中の*は、上記式(1)の末端アミド基のNH部位との結合位置を示す。
【請求項6】
Ry又はRy10のいずれか一方がスルホ基又はカルボキシ基であり、他方が水素原子、スルホ基、カルボキシ基、メチル基、又はメトキシ基である、請求項5に記載の偏光素子。
【請求項7】
Ay及びAyは各々独立に置換基を有してもよいフェニル基である、請求項2~6のいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項8】
Ay及びAyが、それぞれカルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基を1つずつ置換基として有するフェニル基及びトリアゾール基を置換基として有するフェニル基であることを除く、請求項7に記載の偏光素子。
【請求項9】
Ay及びAyの少なくとも1つは置換基を有してもよいナフチル基である、請求項1~6のいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項10】
上記置換基を有してもよいナフチル基が、ヒドロキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基、及びスルホ基からなる群から選択される置換基を有してもよいナフチル基である、請求項9に記載の偏光素子。
【請求項11】
Ay及びAyが、各々独立に、ヒドロキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基、及びスルホ基からなる群から選択される置換基を有してもよいナフチル基である、請求項10に記載の偏光素子。
【請求項12】
上記置換基を有してもよいナフチル基が、下記式(3)で表される、請求項9~11のいずれか一項に記載の偏光素子:
【化3】

式中、Ry11は水素原子、ヒドロキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基、又はスルホ基であり、kは1~3の整数であり、式中の*は、上記式(1)の末端アミド基のNH部位との結合位置を示し、なお、Ry11及びスルホ基の置換位置は、上記式(1)の末端アミド基のNH部位との結合位置が置換する箇所以外であれば、ナフタレン環上の任意の位置に置換できる。
【請求項13】
上記式(3)において、Ry11が水素原子であり、kが2である、請求項12に記載の偏光素子。
【請求項14】
Ry、Ry、Ry、Ryが、各々独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基であり、Ry~Ryが、各々独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基である、請求項1~13のいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項15】
Ry~Ryが各々独立に、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、3-スルホプロポキシ基からなる群から選択される基である、請求項14に記載の偏光素子。
【請求項16】
前記式(1)が下記式(4)で表される、請求項1~15のいずれか一項に記載の偏光素子:
【化4】

式中、Ay、Ay、Ry~Ry、s及びtはそれぞれ上記式(1)と同じ意味を示す。
【請求項17】
さらに、前記式(1)以外の構造を有する有機染料を1種類以上含む請求項1~16のいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項18】
式(5)で表されるアゾ化合物又はその塩及び/又は式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩を含む請求項17に記載の偏光素子。
【化5】

式中、Arは置換基を有するフェニル基又は置換基を有するナフチル基を示し、Rr~Rrは各々独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基を示し、Drはアゾ基またはアミド基を示し、jは0又は1を示し、Xrは置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアゾ基、置換基を有していても良いベンゾイル基、又は、置換基を有していても良いベンゾイルアミノ基を示し;
【化6】

式中、Agは置換基を有するフェニル基又は置換基を有するナフチル基を示し、Bg、Cgは、各々独立に、下記式(7)又は式(8)で表され、いずれか一方が式(7)で表され、Xgは、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアゾ基、置換基を有していても良いベンゾイル基、又は置換基を有していても良いベンゾイルアミノ基を示し:
【化7】

式中、Rgは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基を示し、pは0~2の整数を示し;
【化8】

式中、RgおよびRgは各々独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基を示す。
【請求項19】
上記式(5)で表されるアゾ化合物又はその塩と上記式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩の両方を含む、請求項18に記載の偏光素子。
【請求項20】
上記式(6)におけるCgが上記式(7)で表される、請求項18又は19に記載の偏光素子。
【請求項21】
上記式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩が下記式(9)で表されるアゾ化合物又はその塩である、請求項20に記載の偏光素子:
【化9】

式中、Agは置換基を有するフェニル基又は置換基を有するナフチル基を示し、Rg、Rgは各々独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基を示し、Xgは置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアゾ基、置換基を有していても良いベンゾイル基、又は、置換基を有していても良いベンゾイルアミノ基を示し、p、pは各々独立に0~2の整数を示す。
【請求項22】
上記式(9)に記載のp及びpが、それぞれ1又は2である、請求項21に記載の偏光素子。
【請求項23】
上記式(5)のXrが置換基を有していても良いフェニルアミノ基である、請求項18~22のいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項24】
上記式(6)に記載のXgまたは上記式()に記載のXgが置換基を有していても良いフェニルアミノ基である、請求項18~23のいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項25】
上記偏光素子2枚を、各々の吸収軸方向が互いに平行になるように重ねて測定して求められる420nm~480nmの各波長の平均透過率と、520nm~590nmの各波長の平均透過率との差が絶対値として2.5%以下であり、かつ、520nm~590nmの各波長の平均透過率と、600nm~640nmの各波長の平均透過率との差が絶対値として3.0%以下である、請求項1~24のいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項26】
JIS Z 8781-4:2013に従い、自然光の透過率測定時に求められるa*値およびb*値の絶対値が、
上記偏光素子単体で、ともに1.0以下(-1.0≦a*-s≦1.0、-1.0≦b*-s≦1.0)であり、
上記偏光素子2枚を、各々の吸収軸方向が互いに平行になるように重ねて配置した状態で、ともに2.0以下(-2.0≦a*-p≦2.0、-2.0≦b*-p≦2.0)である、
請求項1~25のいずれか一項に記載の偏光素子(a*-sは単体でのa*値を示し、b*-sは単体でのb*値を示し、a*-pは平行位でのa*値を示し、b*-pは平行位でのb*を示す)。
【請求項27】
上記偏光素子の視感度補正後の単体透過率が、35%~45%であり、
上記偏光素子2枚を、各々の吸収軸方向が互いに平行になるように重ねて配置した状態で求められる520nm~590nmの各波長の平均透過率が28%~45%である、
請求項1~26のいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項28】
上記偏光素子2枚を、各々の吸収軸方向が互いに直交するように重ねて配置した状態で求められる透過率において、
420nm~480nmの各波長の平均透過率と、520nm~590nmの各波長の平均透過率との差が絶対値として1.0%以下であり、かつ、520nm~590nmの各波長の平均透過率と、600nm~640nmの各波長の平均透過率との差が絶対値として1.0%以下である、請求項1~27のいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項29】
波長帯域420nm~480nm、520nm~590nm、および600nm~640nmの各波長における各波長の直交位透過率が1%以下、又は偏光度が97%以上である、請求項1~28のいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項30】
上記偏光素子2枚を、各々の吸収軸方向が互いに直交するように重ねて配置した状態で、JIS Z 8781-4:2013に従い、自然光の透過率測定時に求められるa*値およびb*値の絶対値がいずれも2.0以下(-2.0≦a*-c≦2.0、-2.0≦b*-c≦2.0)である、請求項1~29のいずれか一項に記載の偏光素子(a*-cは直交位でのa*値を示し、b*-cは直交位でのb*を示す)。
【請求項31】
上記偏光素子がポリビニルアルコール系樹脂フィルムを基材として含む、請求項1~30のいずれか一項に記載の偏光素子。
【請求項32】
請求項1~31のいずれか一項に記載の偏光素子と、上記偏光素子の片面又は両面に設けられた透明保護層とを備える偏光板。
【請求項33】
請求項1~31のいずれか一項に記載の偏光素子又は請求項32に記載の偏光板を備えるニュートラルグレー偏光板。
【請求項34】
請求項1~31のいずれか一項に記載の偏光素子又は請求項32若しくは33に記載の偏光板を備える表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なアゾ化合物又はその塩、並びにこれを含む偏光素子、偏光板、及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光の透過・遮へい機能を有する偏光板は、光のスイッチング機能を有する液晶とともに液晶ディスプレイ(Liquid Crystal Display:LCD)等の表示装置の基本的な構成要素である。このLCDの適用分野も初期の頃の電卓及び時計等の小型機器から、ノートパソコン、ワープロ、液晶プロジェクター、液晶テレビ、カーナビゲーション、及び屋内外の計測機器等が挙げられる。また偏光機能を有するレンズへの適用も可能であり、視認性の向上したサングラスや、近年では3Dテレビなどに対応する偏光メガネなどへの応用がなされている。以上のような偏光板の用途が広範囲に広がっているため、使用条件も低温~高温、低湿度~高湿度、低光量~高光量の幅広い条件で使用されることから、高い偏光性能かつ高い耐久性を有する偏光板が求められている。
【0003】
偏光素子は一般に、延伸配向したポリビニルアルコール又はその誘導体のフィルムあるいはポリ塩化ビニルフィルムの脱塩酸又はポリビニルアルコール系フィルムの脱水によりポリエンを生成して配向せしめたポリエン系のフィルムなどの基材に、ヨウ素や二色性染料を吸着配向させることにより製造されている。この偏光素子に接着剤層を介してトリアセチルセルロースなどからなる保護フィルムを貼合して得られる偏光板は、液晶表示装置などに用いられる。二色性色素としてヨウ素を用いた偏光板はヨウ素系偏光板と呼ばれ、一方、二色性色素として二色性染料、例えば二色性を有するアゾ化合物を用いた偏光板は染料系偏光板と呼ばれる。これらのうち染料系偏光板は、高耐熱性、高湿熱耐久性、および高安定性を有し、又、色素の配合による色の選択性が高いという特徴がある一方で、同じ偏光度を有するヨウ素系偏光板と比較して透過率およびコントラストが低いという問題があった。このため高い耐久性を維持し、色の選択性が多様であることに加え、より高い透過率で、高い偏光特性を有する偏光素子が望まれている。
【0004】
近年まで液晶ディスプレイの画像の鮮明性を上げるために高い輝度で画像表示していた。そのようなディスプレイを搭載していたハイブリッドカーやモバイル端末などではバッテリーの駆動時間を長くしたいという要求が出てきたため、液晶ディスプレイメーカーが消費電力を下げるために輝度を落としても画像の明るさ、色の鮮明さを維持できるような偏光板が求められてきた。
【0005】
しかし、高分子フィルムに数種の染料を吸着・配向させてなる偏光素子において、可視光領域の波長領域における特定波長の光漏れ(色漏れ)があると、偏光素子を液晶パネルに装着した際、暗状態において液晶表示の色相が変わってしまうことがある。そこで、偏光素子を液晶表示装置に装着したとき、暗状態において特定波長の色漏れによる液晶表示の変色を防止するためには、高分子フィルムに数種の染料を染色又は含有させた中性色の偏光素子において、可視光領域の波長領域における直交位の透過率(直交位透過率)を一様に低くしなければならない。また、車載液晶ディスプレイでは、夏の車の中では高温高湿環境となることから過酷な環境であっても偏光度変化のない偏光板も求められている。以前は偏光性能が良好でニュートラルグレーを呈するヨウ素系偏光板が使用されていた。しかし、ヨウ素系偏光板は前述のとおり耐光性、耐熱性、耐湿熱性が十分でないという問題がある。この問題を解決するため、二色性染料を数種類染色又は含有した染料系ニュートラルグレー偏光板が使用されるようになってきた。染料系ニュートラルグレー偏光板は、一般的には光の三原色である赤・青・黄の染料を組み合わせて使用する。しかし、前述のとおり染料系ニュートラルグレー偏光板の偏光性能は十分ではない。そこで三原色ごとに偏光性能が良好な二色性染料の開発が必要であった。
【0006】
染料系の特徴は、前述のとおり光の三原色の成分を制御するために、それに対応する各々独立した染料を染色又は含有することである。近年の液晶ディスプレイパネルに用いられる光源は冷陰極管方式又はLED方式などがあるが、そこから発せられる光源波長は方式によって異なり、同じ方式でもパネル製造各社によって異なる場合が多い。そこで偏光性能が良好な二色性染料を開発する上で、特に光源の波長に合致する吸収波長をもつ二色性染料の設計が重要である。
【0007】
上記のような染料系偏光素子の製造に用いられる染料としては、例えば特許文献20、16、13、21、22などに記載されている水溶性アゾ化合物が挙げられる。
【0008】
色の選択性が多様である染料系偏光板であっても、これまでの偏光素子は、2枚の偏光素子の吸収軸方向が互いに平行な位置関係(以下、「平行位」とも称する。)になるように重ねて配置して白色を示す際(以下、「白表示時」又は「明表示時」とも称する。)に、白色が黄色味を帯びた白色を呈するという問題があった。この白色が黄色味を帯びるという問題を改善するため、黄色味を抑えて作製された偏光素子であっても、これまでの偏光板は、2枚の偏光素子を吸収軸方向が互いに直交する位置関係(以下、「直交位」とも称する。)になるように重ねて配置して黒色を示す際(以下、「黒表示時」又は「暗表示時」とも称する。)、黒色が青色に呈色するという問題があった。そのため、白表示時に無彩色の白色を示し、黒表示時に黒色を示す偏光板が求められていた。特に、白表示時に高品位な白を有する偏光板、通称、ペーパーホワイトな偏光板を得ることは難しかった。偏光板が無彩色であるためには、平行位や直交位において各波長の透過率が波長によらずほぼ一定の値であることが必要であるが、そういった偏光板を得ることが、これまでは出来ていなかった。
【0009】
白表示時と黒表示時の色相が異なる理由としては、平行位と直交位とで透過率の波長依存性が同じではなく、特に、可視光領域にわたって各波長の透過率が一定でないことに起因する。さらに、二色性が可視光領域にわたり一定でないことも無彩色偏光板の実現が難しい要因の1つである。ヨウ素系偏光板を例にして説明すると、ポリビニルアルコール(以下、「PVA」とも称する。)を基材とし、二色性色素としてヨウ素を用いたヨウ素系偏光板は、一般的に、480nmおよび600nmを中心とした吸収を有する。480nmの吸収は、ポリヨウ素I とPVAとの錯体、600nmの吸収はポリヨウ素I とPVAとの錯体に起因すると言われている。各波長における偏光度(二色性)は、ポリヨウ素I とPVAとの錯体に基づく偏光度(二色性)の方が、ポリヨウ素I とPVAとの錯体に基づく偏光度(二色性)よりも高い。つまり、直交位の透過率を各波長において一定にしようとすると、平行位の透過率が480nmと比べて600nmの方が高くなり、白表示時に白色が黄色く着色する現象が起こってしまっていた。逆に、平行位の各波長の透過率を一定にしようとすると、直交位の透過率が480nmと比べて600nmの方が低くなるため、黒表示時に黒色が青色に着色してしまっていた。白表示時に白色が黄色を呈している場合、一般的に劣化が進んだような印象を与えるため好ましいとは言えない。又、黒表示時に青い色が抜ける場合、明瞭な黒でないため高級感がないような印象を与える。又、ヨウ素系偏光板では、主に視感度の高い550nm付近には、その波長に基づく錯体がないために、色相の制御が難しい。
【0010】
このように、各波長の偏光度(二色性)が一定でないために、偏光度の波長依存性が生じてしまっていた。又、ヨウ素とPVAによる錯体による吸収である480nmと600nmの2つの二色性色素しかないため、ヨウ素とPVAからなるヨウ素系偏光板では色相の調整も出来なかった。ヨウ素系偏光板の色相を改善する方法は、特許文献1や特許文献2に記載されている。特許文献1には、ニュートラル係数を算出し、絶対値が0~3である偏光板が記載されている。特許文献2には、410nm~750nmにおける各波長の透過率をその平均値の±30%以内にし、ヨウ素に加えて、直接染料、反応染料、又は酸性染料を添加して着色調整してなる偏光膜が記載されている。又、特許文献3のように無彩色の染色系偏光板の技術も開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開2002-169024号公報
【文献】特開平10-133016号公報
【文献】WO2014/162635号公報
【文献】特開平8-291259号公報
【文献】特開2002-275381号公報
【文献】WO2015/152026号公報
【文献】特開平1-161202号公報
【文献】特開平1-172907号公報
【文献】特開平1-183602号公報
【文献】特開平1-248105号公報
【文献】特開平1-265205号公報
【文献】特公平7-92531号公報
【文献】特開2009-132794号公報
【文献】WO2006/057214号公報
【文献】特開平11-218611号公報
【文献】特開2001-033627号公報
【文献】特開2004-251962号公報
【文献】特開平8-291259号公報
【文献】特開2008-065222号公報
【文献】特開平3-12606号公報
【文献】特開2001-240762号公報
【文献】特開2001-108828号公報
【文献】特開昭60-156759号公報
【0012】
【文献】機能性色素の応用((株)CMC出版、第1刷発行版、入江正浩監修、第98~100頁)
【文献】染料化学;細田豊著、技報堂 出版、1957
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的の一つは、優れた偏光性能及び耐湿性・耐熱性・耐光性を有する高性能な偏光板を提供することにある。さらに、本発明の他の目的は、高分子フィルムに2種類以上の二色性染料を吸着・配向せしめてなるニュートラルグレーを呈する偏光板であって、可視光領域の波長領域における直交位の色もれがなく、優れた偏光性能及び耐湿性、耐熱性、耐光性を有する高性能な偏光板を提供することにある。
さらなる目的は車載液晶ディスプレイ用の染料系ニュートラルグレー偏光板であり、明るさと偏光性能、耐久性及び耐光性のいずれもが良好である高性能な偏光板を提供することにある。
【0014】
また、特許文献1の偏光板は、例えばその実施例1から分かるように、ニュートラル係数(Np)が低くても、JIS Z 8729から求められる平行位の色相が、a*値が-1.67、かつ、b*値が3.51であることから、白表示時に黄緑色を呈していることが分かる。又、直交位の色相はa*値が0.69ではあるが、b*値が-3.40であることから、黒表示が青色を呈している偏光板になってしまっている。又、特許文献2の偏光膜は、偏光膜1枚のみを用いて測定されたUCS色空間におけるa値およびb値を絶対値2以下にして得られるものであり、偏光膜を2枚重ねた際の白表示時および黒表示時の両方の色相において同時に無彩色を表現できるものではなかった。又、特許文献2の偏光膜の単体透過率の平均値は、実施例1で31.95%、実施例2で31.41%であり、低い値を示していた。このように、特許文献2の偏光膜は透過率が低いため、高透過率および高コントラストを求められる分野、特に、液晶表示装置および有機エレクトロルミネッセンスなどの分野では十分な性能を有するものではなかった。さらに、特許文献2の偏光膜は、主たる二色性色素としてヨウ素を用いていることから、耐久性試験後、特に、湿熱耐久性試験(例えば、85℃、相対湿度85%の環境)後に色変化が大きく、耐久性が劣っていた。
【0015】
一方、染料系偏光板は、耐久性に優れているが、波長依存性が平行位と直交位で異なることは、ヨウ素系偏光板と同様である。平行位および直交位で同じ色相を示す二色性を示すアゾ化合物はほぼ皆無であり、存在したとしても二色性(偏光特性)は低い。二色性を有するアゾ化合物の種類によっては、白表示時の白色が黄色を呈し、黒表示時の黒色が青色を呈するなど、直交位および平行位で波長依存性が全く異なるアゾ化合物も存在する。又、光の明暗によっても人の色の感受性が異なるため、仮に、染料系偏光板の色補正をするとしても、直交位から平行位にわたって偏光をコントロールすることにより発生する光の明暗のそれぞれに適した色補正が必要である。無彩色偏光板は、平行位および直交位のそれぞれにおいて、透過率が各波長でほぼ一定の値であり波長依存性がない状態でなければ達成することができない。さらに、高透過率および高コントラストを有する偏光素子を得るためには、一定の透過率を平行位および直交位で同時に満たすことに加えて、各波長の偏光度(二色比)が高く、かつ、一定である必要がある。アゾ化合物1種を偏光素子に応用した場合でも、直交位と平行位とで透過率の波長依存性が異なるにも関わらず、2種以上のアゾ化合物を配合して一定の各波長の透過率を達成するためには、1種ずつの平行位と直交位の透過率を考慮し、2種以上の二色比の関係を精密に制御しなければならない。
【0016】
一方で、たとえ平行位と直交位の透過率と二色比の関係を精密に制御し、各波長の透過率をそれぞれにおいて一定に出来たとしても、高透過率かつ高コントラストを実現することは未だ出来ていなかった。つまり、高透過率又は高偏光度になればなるほど無彩色とすることが困難であり、高透過率又は高偏光度な無彩色な偏光板は達成できていなかった。高透過率かつ/又は高コントラストな無彩色偏光板を得ることは非常に難しく、単に色の三原色の二色性色素を適用すれば達成しうるものではない。特に、平行位における一定の各波長の透過率および高い二色性を同時に実現することは非常に困難を極める。白は僅かに色が入るだけでも、高品位な白を表現できない。又、明状態である時の白は、輝度が高く、感度も高いため、特に重要である。よって、偏光素子として、白表示時に高品位な紙のような無彩色の白色を示し、黒表示時に無彩色の黒色を示すとともに、視感度補正後の単体透過率で35%以上および高偏光度を有する偏光素子が求められている。特許文献3においても白表示時および黒表示時に無彩色な偏光板が記載されているが、さらなる性能の向上が望まれている。
【0017】
従って、本発明の目的の一つは、高透過率および高偏光度を有するとともに、白表示時および黒表示時の両方において無彩色であり、特に白表示時には高品位な白色を呈する高性能な無彩色偏光素子並びにこれを用いた無彩色偏光板および液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明者らは、かかる目的を達成すべく鋭意研究を進めた結果、特定のアゾ化合物又はその塩を含有する偏光素子及び偏光板が、優れた偏光性能、耐湿性、耐熱性、耐光性等を有することを見出し、本発明を完成した。
【0019】
さらに本発明者は、式(5)、式(6)、及び式(1)のアゾ化合物の配合によって、二色性に波長依存性がなく、平行位と直交位のそれぞれにおいて無彩色であり、かつ、これまでより高い偏光度を有する偏光素子を作製しうることを見出した。本発明者は、高い透過率であっても可視光領域における波長非依存性を達成しうることを初めて見出し、高品位な紙のような品位の白色、通称、ペーパーホワイトを実現し得るより高い偏光度を有する偏光素子を開発した。
【0020】
すなわち、本発明は、以下の発明1~35に関する。
発明1
式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩:
【化1】

式中、Ay及びAyは各々独立に、置換基を有してもよいナフチル基、又は置換基を有してもよいフェニル基であり、s、tは各々独立に0又は1であり、かつ、s又はtのいずれかは1であり、Ry~Ryは各々独立に水素原子又は置換基を表す。
発明2
Ay及びAyの少なくとも1つは置換基を有してもよいフェニル基である、発明1に記載のアゾ化合物又はその塩。
発明3
上記置換基を有してもよいフェニル基が、スルホ基、カルボキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、炭素数1~4のアルキル置換アミノ基、及び炭素数1~4のアルキル置換アシルアミノ基からなる群から選択される少なくとも1以上の置換基を有する発明2に記載のアゾ化合物又はその塩。
発明4
上記置換基を有してもよいフェニル基が、スルホ基、カルボキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基からなる群から選択される少なくとも1以上の置換基を有する、発明3に記載のアゾ化合物又はその塩。
発明5
上記置換基を有してもよいフェニル基が、下記式(2)で表される、発明2~4のいずれか一項に記載のアゾ化合物又はその塩:
【化2】

式中、Ry又はRy10のいずれか一方はスルホ基、カルボキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基であり、他方は水素原子、スルホ基、カルボキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、炭素数1~4のアルキル置換アミノ基、又は炭素数1~4のアルキル置換アシルアミノ基であり、式中の*は、上記式(1)の末端アミド基のNH部位との結合位置を示す。
発明6
Ry又はRy10のいずれか一方がスルホ基又はカルボキシ基であり、他方が水素原子、スルホ基、カルボキシ基、メチル基、又はメトキシ基である、発明5に記載のアゾ化合物又はその塩。
発明7
Ay及びAyは各々独立に置換基を有してもよいフェニル基である、発明2~6のいずれか一項に記載のアゾ化合物又はその塩。
発明8
Ay及びAyが、それぞれカルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基を1つずつ置換基として有するフェニル基及びトリアゾール基を置換基として有するフェニル基であることを除く、発明7に記載のアゾ化合物又はその塩。
発明9
Ay及びAyの少なくとも1つは置換基を有してもよいナフチル基である、発明1~6のいずれか一項に記載のアゾ化合物又はその塩。
発明10
上記置換基を有してもよいナフチル基が、ヒドロキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基、及びスルホ基からなる群から選択される置換基を有してもよいナフチル基である、発明9に記載のアゾ化合物又はその塩。
発明11
Ay及びAyが、各々独立に、ヒドロキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基、及びスルホ基からなる群から選択される置換基を有してもよいナフチル基である、発明10に記載のアゾ化合物又はその塩。
発明12
上記置換基を有してもよいナフチル基が、下記式(3)で表される、発明9~11のいずれか一項に記載のアゾ化合物又はその塩:
【化3】

式中、Ry11は水素原子、ヒドロキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基、又はスルホ基であり、kは1~3の整数であり、式中の*は、上記式(1)の末端アミド基のNH部位との結合位置を示す。なお、Ry11及びスルホ基の置換位置は、上記式(1)の末端アミド基のNH部位との結合位置が置換する箇所以外であれば、ナフタレン環上の任意の位置に置換できる
発明13
上記式(3)において、Ry11が水素原子であり、kが2である、発明12に記載のアゾ化合物又はその塩。
発明14
Ry、Ry、Ry、Ryが、各々独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基であり、Ry~Ryが、各々独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基である、発明1~13のいずれか一項に記載のアゾ化合物又はその塩。
発明15
Ry~Ryが各々独立に、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、3-スルホプロポキシ基からなる群から選択される基である、発明14に記載のアゾ化合物又はその塩。
発明16
前記式(1)が下記式(4)で表される、発明1~15のいずれか一項に記載のアゾ化合物又はその塩:
【化4】

式中、Ay、Ay、Ry~Ry、s及びtはそれぞれ上記式(1)と同じ意味を示す。
発明17
発明1~16のいずれか一項に記載のアゾ化合物又はその塩を含む偏光素子。
発明18
さらに、前記式(1)以外の構造を有する有機染料を1種類以上含む発明17に記載の偏光素子。
発明19
式(5)で表されるアゾ化合物又はその塩及び/又は式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩を含む発明18に記載の偏光素子。
【化5】

式中、Arは置換基を有するフェニル基又は置換基を有するナフチル基を示し、Rr~Rrは各々独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基を示し、Drはアゾ基またはアミド基を示し、jは0又は1を示し、Xrは置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアゾ基、置換基を有していても良いベンゾイル基、又は、置換基を有していても良いベンゾイルアミノ基を示し;
【化6】

式中、Agは置換基を有するフェニル基又は置換基を有するナフチル基を示し、Bg、Cgは、各々独立に、下記式(7)又は式(8)で表され、いずれか一方が式(7)で表され、Xgは、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアゾ基、置換基を有していても良いベンゾイル基、又は置換基を有していても良いベンゾイルアミノ基を示し:
【化7】

式中、Rgは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基を示し、pは0~2の整数を示し;
【化8】

式中、RgおよびRgは各々独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基を示す。
発明20
上記式(5)で表されるアゾ化合物又はその塩と上記式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩の両方を含む、発明19に記載の偏光素子。
発明21
上記式(6)におけるCgが上記式(7)で表される、発明19又は20に記載の偏光素子。
発明22
上記式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩が下記式(9)で表されるアゾ化合物又はその塩である、発明21に記載の偏光素子:
【化9】

式中、Agは置換基を有するフェニル基又は置換基を有するナフチル基を示し、Rg、Rgは各々独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基を示し、Xgは置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアゾ基、置換基を有していても良いベンゾイル基、又は、置換基を有していても良いベンゾイルアミノ基を示し、p、pは各々独立に0~2の整数を示す。
発明23
上記式(9)に記載のp及びpが、それぞれ1又は2である、発明22に記載の偏光素子。
発明24
上記式(5)のXrが置換基を有していても良いフェニルアミノ基である、発明19~23のいずれか一項に記載の偏光素子。
発明25
上記式(6)に記載のXgまたは上記式(8)に記載のXgが置換基を有していても良いフェニルアミノ基である、発明19~24のいずれか一項に記載の偏光素子。
発明26
上記偏光素子2枚を、各々の吸収軸方向が互いに平行になるように重ねて測定して求められる420nm~480nmの各波長の平均透過率と、520nm~590nmの各波長の平均透過率との差が絶対値として2.5%以下であり、かつ、520nm~590nmの各波長の平均透過率と、600nm~640nmの各波長の平均透過率との差が絶対値として3.0%以下である、発明17~25のいずれか一項に記載の偏光素子。
発明27
JIS Z 8781-4:2013に従い、自然光の透過率測定時に求められるa*値およびb*値の絶対値が、
上記偏光素子単体で、ともに1.0以下(-1.0≦a*-s≦1.0、-1.0≦b*-s≦1.0)であり、
上記偏光素子2枚を、各々の吸収軸方向が互いに平行になるように重ねて配置した状態で、ともに2.0以下(-2.0≦a*-p≦2.0、-2.0≦b*-p≦2.0)である、
発明17~26のいずれか一項に記載の偏光素子(a*-sは単体でのa*値を示し、b*-sは単体でのb*値を示し、a*-pは平行位でのa*値を示し、b*-pは平行位でのb*を示す)。
発明28
上記偏光素子の視感度補正後の単体透過率が、35%~45%であり、
上記偏光素子2枚を、各々の吸収軸方向が互いに平行になるように重ねて配置した状態で求められる520nm~590nmの各波長の平均透過率が28%~45%である、
発明17~27のいずれか一項に記載の偏光素子。
発明29
上記偏光素子2枚を、各々の吸収軸方向が互いに直交するように重ねて配置した状態で求められる透過率において、
420nm~480nmの各波長の平均透過率と、520nm~590nmの各波長の平均透過率との差が絶対値として1.0%以下であり、かつ、520nm~590nmの各波長の平均透過率と、600nm~640nmの各波長の平均透過率との差が絶対値として1.0%以下である、発明17~28のいずれか一項に記載の偏光素子。
発明30
波長帯域420nm~480nm、520nm~590nm、および600nm~640nmの各波長における各波長の直交位透過率が1%以下、又は偏光度が97%以上である、発明17~29のいずれか一項に記載の偏光素子。
発明31
上記偏光素子2枚を、各々の吸収軸方向が互いに直交するように重ねて配置した状態で、JIS Z 8781-4:2013に従い、自然光の透過率測定時に求められるa*値およびb*値の絶対値がいずれも2.0以下(-2.0≦a*-c≦2.0、-2.0≦b*-c≦2.0)である、発明17~30のいずれか一項に記載の偏光素子(a*-cは直交位でのa*値を示し、b*-cは直交位でのb*を示す)。
発明32
上記偏光素子がポリビニルアルコール系樹脂フィルムを基材として含む、発明17~31のいずれか一項に記載の偏光素子。
発明33
発明17~32のいずれか一項に記載の偏光素子と、上記偏光素子の片面又は両面に設けられた透明保護層とを備える偏光板。
発明34
発明17~32のいずれか一項に記載の偏光素子又は発明33に記載の偏光板を備えるニュートラルグレー偏光板。
発明35
発明17~32のいずれか一項に記載の偏光素子又は発明33若しくは34に記載の偏光板を備える表示装置。
【発明の効果】
【0021】
本発明のアゾ化合物又はその塩は、偏光素子用の染料として有用である。そしてこれらの化合物を含有する偏光素子は、ヨウ素を用いた偏光素子に匹敵する高い偏光性能を有し、且つ耐久性にも優れる。そのため、各種液晶表示体及び液晶プロジェクター用、又、高い偏光性能と耐久性を必要とする車載用途、各種環境で用いられる工業計器類の表示用途に好適である。
【0022】
一態様において、本発明は、高透過率および高偏光度を有するとともに、白表示時には高品位な白色を呈する高性能な無彩色偏光素子であり、特に該偏光素子は白表示時および黒表示時の両方において無彩色であり、並びにこれを用いた無彩色偏光板および表示装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本願明細書及び特許請求の範囲において、明確に遊離形態を表すものである場合を除き、「アゾ化合物又はその塩」を単に「アゾ化合物」という語を称することもある。
【0024】
本願明細書及び特許請求の範囲において、低級アルキル基、低級アルコキシ基、及び低級アルキルアミノ基の「低級」は炭素数が1~4、好ましくは1~3であることを示す。又、本願明細書において、「置換基」には、便宜上、水素原子が含まれる。「置換基を有してもよい」とは、置換基を有していない場合も含まれることを意味する。例えば、「置換基を有してもよいフェニル基」は、非置換の単なるフェニル基と、置換基を有するフェニル基を含む。
【0025】
「低級(炭素数1~4の)脂肪族炭化水素基」としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、n-ブチル基等の直鎖アルキル基、sec-ブチル基、tert―ブチル基等の分鎖アルキル基、ビニル基等の不飽和炭化水素基等が挙げられる。
【0026】
「低級(炭素数1~4の)アルコキシ基」としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、n-ブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基等が挙げられる。
【0027】
「アリールオキシ基」としては、例えば、フェノキシ基、ナフトキシ基等が挙げられる。
【0028】
<アゾ化合物>
本発明のアゾ化合物は、上記式(1)で表される。
【0029】
上記式(1)について説明する。上記式(1)中、Ay及びAyは各々独立に、置換基を有してもよいナフチル基、又は置換基を有してもよいフェニル基であり、s及びtは各々独立に0又は1であり、かつ、s又はtのいずれかは1であり、Ry~Ryは各々独立に水素原子又は置換基を表す。
【0030】
一態様において、Ay又はAyのいずれかは置換基を有してもよいナフチル基である。
【0031】
一態様において、Ay及びAyが、各々独立に、置換基を有してもよいナフチル基であり、好ましくは、各々独立に、ヒドロキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基及びスルホ基からなる群から選択される置換基を有してもよいナフチル基である。
【0032】
一態様において、Ay及びAyは、各々独立に、置換基を有してもよいフェニル基である。
【0033】
一態様において、本発明のアゾ化合物又はその塩は、Ay及びAyがそれぞれ、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基を1つずつ置換基として有するフェニル基及びトリアゾール基を置換基として有するフェニル基であることを除く。
【0034】
上記置換基を有してもよいフェニル基における置換基としては、特に限定はないが、例えば、置換基を有してもよい炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数1~4のアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、ヒドロキシ基、スルホ基、カルボキシ基、置換又は非置換のアミノ基、アミド基等が挙げられ、置換基を有してもよい炭素数1~4のアルコキシ基、スルホ基、及びカルボキシ基からなる群から選択される置換基が好ましい。
【0035】
上記「置換又は非置換のアミノ基」としては、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、モノフェニルアミノ基、モノナフチルアミノ基等のモノ置換アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のジ置換アミノ基が挙げられる。また、これら置換アミノ基はさらに置換基を有しても良い。
【0036】
上記置換基を有しても良い炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数1~4のアルコキシ基における「置換基」としては、特に制限はなく、例えば、ヒドロキシ基、スルホ基、カルボキシ基、置換又は非置換のアミノ基、アミド基等が挙げられる。置換基を有してもよいアリールオキシ基における「置換基」、置換アミノ基がさらに有しても良い「置換基」としては、特に制限はなく、例えば、置換基を有していても良い炭素数1~4の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0037】
上記式(1)におけるAy及びAyは、より好ましくは、スルホ基、カルボキシ基、スルホ基を有する低級アルコキシ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、低級アルキル置換アミノ基、及び低級アルキル置換アシルアミノ基からなる群から選択される1以上の置換基を有するフェニル基である。
【0038】
上記式(1)におけるAy及びAyの一方又は両方は、スルホ基、カルボキシ基、及びスルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基から選択される置換基を少なくとも1つ有するフェニル基であることが好ましく、該フェニル基は、水素原子、スルホ基、カルボキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、アミノ基、炭素数1~4のアルキル置換アミノ基、又は炭素数1~4のアルキル置換アシルアミノ基をさらに有してもよい。
【0039】
該フェニル基が置換基を2つ以上有する場合は、それら置換基の少なくとも1つがスルホ基、又はカルボキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基であり、他の置換基が、スルホ基、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、スルホ基を有する低級アルコキシ基、カルボキシ基、クロロ基、ブロモ基、ニトロ基、アミノ基、低級アルキル置換アミノ基、又は低級アルキル置換アシルアミノ基であることが好ましい。他の置換基は、より好ましくは、スルホ基、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、カルボキシ基、スルホエトキシ基、スルホプロポキシ基、スルホブトキシ基、クロロ基、ニトロ基、又はアミノ基であり、さらに好ましくはスルホ基、カルボキシ基、水素原子、メチル基、メトキシ基、スルホエトキシ基、スルホプロポキシ基、又はスルホブトキシ基であり、特に好ましくはスルホ基、カルボキシ基、水素原子、メチル基、メトキシ基、スルホブトキシ基である。
【0040】
上記置換基を有してもよいフェニル基における置換位置は特に限定されないが、好ましくは、2位のみ、4位のみ、2位と6位の組合せ、2位と4位の組合せ、3位と5位の組合せが好ましく、特に好ましくは、2位のみ、4位のみ、2位と4位の組合せ、又は3位と5位の組合せである。なお、2位のみ、4位のみとは、2位又は4位のみに水素原子以外の置換基を1つ有することを意味する。
【0041】
上記置換基を有するフェニル基は、好ましくは上記式(2)で表される。
【0042】
上記式(2)中、Ry又はRy10のいずれか一方はスルホ基、カルボキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基であり、他方は水素原子、スルホ基、カルボキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、ハロゲン原子、ニトロ基、アミノ基、炭素数1~4のアルキル置換アミノ基、又は炭素数1~4のアルキル置換アシルアミノ基である。また、式中の*は、上記式(1)の末端アミド基のNH部位との結合位置を示す。
【0043】
好ましくは、Ry又はRy10の一方がスルホ基又はカルボキシ基であり、他方が水素原子、スルホ基、カルボキシ基、メチル基、又はメトキシ基である。
【0044】
上記置換基を有してもよいナフチル基におけるナフチル基としては、1-ナフチル基、2-ナフチル基が挙げられるが、2-ナフチル基であることが好ましい。
【0045】
上記置換基を有してもよいナフチル基における置換基としては、特に限定はないが、例えば、置換基を有してもよい炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数1~4のアルコキシ基、置換基を有してもよいアリールオキシ基、ヒドロキシ基、スルホ基、カルボキシ基、置換又は非置換のアミノ基、アミド基等が挙げられ、置換基を有してもよい炭素数1~4のアルコキシ基、スルホ基であることが好ましい。
【0046】
上記「置換又は非置換のアミノ基」としては、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、エチルアミノ基、n-プロピルアミノ基、n-ブチルアミノ基、モノフェニルアミノ基、モノナフチルアミノ基等のモノ置換アミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基等のジ置換アミノ基が挙げられる。また、これら置換アミノ基はさらに置換基を有しても良い。
【0047】
上記置換基を有しても良い炭素数1~4の脂肪族炭化水素基、置換基を有してもよい炭素数1~4のアルコキシ基における「置換基」としては、特に制限はなく、例えば、ヒドロキシ基、スルホ基、カルボキシ基、置換又は非置換のアミノ基、アミド基等が挙げられる。置換基を有してもよいアリールオキシ基における「置換基」、置換アミノ基がさらに有しても良い「置換基」としては、特に制限はなく、例えば、置換基を有していても良い炭素数1~4の脂肪族炭化水素基が挙げられる。
【0048】
上記置換基を有してもよいナフチル基は、ヒドロキシ基、スルホ基を有する低級アルコキシ基、及びスルホ基からなる群から選択される1以上の置換基を有してもよいナフチル基であることがより好ましい。
【0049】
上記置換基を有してもよいナフチル基は、さらに好ましくは、上記式(3)に表されるナフチル基である。
【0050】
上記式(3)中、Ry11は水素原子、ヒドロキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基、又はスルホ基であり、kは1~3の整数である。また、式中の*は、上記式(1)の末端アミド基のNH部位との結合位置を示す。なお、Ry11及びスルホ基の置換位置は、上記式(1)の末端アミド基のNH部位との結合位置が置換する箇所以外であれば、ナフタレン環上の任意の位置に置換できる。
【0051】
前記式(3)において、Ry11は水素原子であることが好ましく、kは2であることが好ましい。
【0052】
上記式(3)において、スルホ基の位置はナフタレン環のいずれのベンゼン核に有していてもよい。スルホ基を有する低級アルコキシ基としては、直鎖アルコキシ基が好ましく、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端が好ましい。スルホ基を有する低級アルコキシ基は、より好ましくは3-スルホプロポキシ基、及び4-スルホブトキシ基である。ナフチル基が有する置換基の位置は特に限定されないが、アゾ基の置換位置を2位とした場合、置換基が2個の場合は4位と8位、5位と7位、又は6位と8位の組み合わせが好ましく、置換基が3個の場合は3位と5位と7位、3位と6位と8位が好ましい。
【0053】
上記式(1)中、Ry~Ryは各々独立に水素原子又は置換基を表す。置換基としては特に制限はないが、上記、置換基を有してもよいフェニル基の項又は置換基を有してもよいナフチル基の項で記載した内容と同じでよい。
【0054】
好ましくは、上記式(1)におけるRy、Ry、Ry、Ryは、各々独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基である。Ry~Ryは、各々独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基であることが好ましい。より好ましくは、Ry~Ryは各々独立に、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、3-スルホプロポキシ基、又は4-スルホブトキシ基であり、さらに好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、又は3-スルホプロポキシ基である。Ry~Ryの置換位置としては、ウレイド骨格の位置を1位として好ましくは、2位のみ、5位のみ、2位と6位の組合せ、2位と5位の組合せ、3位と5位の組合せが好ましく、さらに好ましくは、2位のみ、5位のみ、2位と5位の組合せである。なお、2位のみ、5位のみは、2位又は5位のみに水素原子以外の置換基を1つ有することを示す。
【0055】
上記式(1)におけるs及びtは、いずれも0の場合は偏光特性が低下するため好ましくない。
【0056】
式(1)で表されるアゾ化合物は、上記式(4)で表されることが好ましい。
【0057】
上記式(4)におけるAy、Ay、Ry~Ry、s及びtはそれぞれ式(1)と同じ意味を示す。
【0058】
一態様において、好ましくは、前記式(4)中、Ay及びAyが、各々独立に、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、カルボキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、スルホ基、置換又は非置換のアミノ基、及びアミド基からなる群から選択される置換基を有してもよいフェニル基であり、s及びtは各々独立に0又は1であって、かつ、s又はtのいずれかは1であり、Ry、Ry、Ry、及びRyが、各々独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、Ry~Ryが、各々独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基である。より好ましくは、Ay及びAyが、各々独立に、カルボキシ基、ハロゲン基、及びスルホ基からなる群から選択される置換基を有してもよいフェニル基であり、s及びtは各々独立に0又は1であって、かつ、s又はtのいずれかは1であり、Ry、Ry、Ry、及びRyが、各々独立に水素原子、メチル基、又はメトキシ基であり、Ry~Ryが、各々独立に、水素原子、メチル基、メトキシ基、又は3-スルホプロポキシ基である。さらに好ましくは、Ay及びAyが、各々独立に、4-スルホフェニル基、4-カルボキシフェニル基、4-クロロ-4カルボキシフェニル基、又は2,4-ジスルホフェニル基であり、s及びtは各々独立に0又は1であって、かつ、s又はtのいずれかは1であり、Ry、Ry、Ry、及びRyが、各々独立に水素原子、メチル基、又はメトキシ基であり、Ry~Ryが、各々独立に、水素原子、メチル基、メトキシ基、又は3-スルホプロポキシ基である。特に好ましくは、Ay及びAyが、各々、4-スルホフェニル基と4-カルボキシフェニル基の組合せ、4-カルボキシフェニル基と4-クロロ-3-カルボキシフェニル基の組合せ、4-スルホフェニル基と4-クロロ-3-カルボキシフェニル基の組合せ、又は4-カルボキシフェニル基と2,4-ジスルホフェニル基の組合せのいずれかであり、s及びtは各々独立に0又は1であって、かつ、s又はtのいずれかは1であり、Ry、Ry、Ry、及びRyが、各々独立に水素原子、メチル基、又はメトキシ基であり、Ry~Ryが、各々独立に、水素原子、メチル基、メトキシ基、又は3-スルホプロポキシ基である。
【0059】
一態様において、好ましくは、前記式(4)中、Ay及びAyが、各々独立に、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基及びスルホ基からなる群から選択される置換基を有してもよいナフチル基、又は、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、カルボキシ基、ハロゲン基、ニトロ基、スルホ基、置換又は非置換のアミノ基、アミド基を有してもよいフェニル基であり、Ay又はAyのいずれかはスルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基及びスルホ基からなる群から選択される置換基を有してもよいナフチル基であり、s及びtは各々独立に0又は1であって、かつ、s又はtのいずれかは1であり、Ry、Ry、Ry、及びRyが、各々独立に水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、Ry~Ryが、各々独立に、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基である。より好ましくは、Ay及びAyが、各々独立に、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基及びスルホ基からなる群から選択される置換基を有してもよいナフチル基、又は、カルボキシ基、ハロゲン基、及びスルホ基からなる群から選択される置換基を有してもよいフェニル基であり、Ay及び又はAyのいずれかはスルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基及びスルホ基からなる群から選択される置換基を有してもよいナフチル基であり、s及びtは各々独立に0又は1であって、かつ、s又はtのいずれかは1であり、Ry、Ry、Ry、及びRyが、各々独立に水素原子、メチル基、又はメトキシ基であり、Ry~Ryが、各々独立に、水素原子、メチル基、メトキシ基、又は3-スルホプロポキシ基である。さらに好ましくは、Ay及びAyが、各々独立に、3-スルホプロポキシ基及びスルホ基からなる群から選択される置換基を有してもよいナフチル基であり、s及びtは各々独立に0又は1であって、かつ、s又はtのいずれかは1であり、Ry、Ry、Ry、及びRyが、各々独立に水素原子、メチル基、又はメトキシ基であり、Ry~Ryが、各々独立に、水素原子、メチル基、メトキシ基、又は3-スルホプロポキシ基である。特に好ましくは、Ay及びAyが、各々、6,8-ジスルホナフタレン又は6-スルホ-8-(3-スルホプロポキシ)ナフタレンであり、s及びtは各々独立に0又は1であって、かつ、s又はtのいずれかは1であり、Ry、Ry、Ry、及びRyが、各々独立に水素原子、メチル基、又はメトキシ基であり、Ry~Ryが、各々独立に、水素原子、メチル基、メトキシ基、又は3-スルホプロポキシ基である。極めて好ましくは、Ay及びAyが、各々、6,8-ジスルホナフタレン又は6-スルホ-8-(3-スルホプロポキシ)ナフタレンであり、s及びtは各々1であって、Ry、Ry、Ry、及びRyが、各々独立に水素原子、メチル基、又はメトキシ基であり、Ry~Ryが、各々独立に、水素原子、メチル基、メトキシ基、又は3-スルホプロポキシ基である。
【0060】
次に、式(1)で表されるアゾ化合物の具体例を以下に挙げる。なお、式中のスルホ基、カルボキシ基、及びヒドロキシ基は遊離酸の形で表す。
【0061】
まず、Ay及びAyが置換基を有してもよいフェニル基であるアゾ化合物の具体例を以下に挙げる。
【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【化18】

【化19】

【化20】

【化21】

【化22】
【0062】
次に、Ay及びAyの少なくとも1つが置換基を有してもよいナフチル基であるアゾ化合物の具体例を以下に挙げる。
【化23】

【化24】

【化25】

【化26】

【化27】

【化28】

【化29】

【化30】

【化31】

【化32】

【化33】

【化34】

【化35】

【化36】

【化37】

【化38】

【化39】

【0063】
上記式(1)で表されるアゾ化合物は、遊離酸の形態であっても、塩の形態であってもよい。そのような塩としてはリチウム塩、ナトリウム塩、及びカリウム塩のようなアルカリ金属塩、アンモニウム塩、並びにアミン塩等の有機塩が挙げられ、好ましくはナトリウム塩である。
【0064】
上記式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩は、非特許文献2に記載されるような通常のアゾ染料の製法に従い、ジアゾ化、カップリングを行い、特許文献13に記載されるようなウレイド化剤と反応させることにより製造することができる。
【0065】
具体的な製造方法の例としては、下記式(A)で示されるような置換基を有するアニリン類を特許文献18と同様の方法により下記式(B)で示される酸クロライドと反応させ、続いて還元反応を実施し、下記式(C)で示されるアミノベンゾイルアニリン類を得る。
【化40】
【0066】
上記各式中、Ay、Ry、Ryはそれぞれ上記式(1)におけるものと同じ意味を表す。
【0067】
次いで、上記式(C)で示される置換基を有するアミノベンゾイルアニリン類を非特許文献2と同様の方法によりジアゾ化し、下記式(D)のアニリン類とカップリングさせ、下記式(E)で示されるモノアゾアミノ化合物を得る。
【化41】
【0068】
上記各式中、Ay、Ry~Ryは上記式(1)におけるものと同じ意味を表す。
【0069】
続いて下記式(F)で示されるような置換基を有するアニリン類を特許文献1と同様の方法により下記式(G)で示される酸クロライドと反応させ、続いて還元反応を実施し、下記式(H)で示されるアミノベンゾイルアニリン類を得る。
【化42】
【0070】
上記各式中、Ay、Ry及びRyはそれぞれ上記式(1)におけるものと同じ意味を表す。
【0071】
次いで、上記式(H)で示される置換基を有するアミノベンゾイルアニリン類を非特許文献2と同様の方法によりジアゾ化し、下記式(I)のアニリン類とカップリングさせ、下記式(J)で示されるモノアゾアミノ化合物を得る。
【化43】
【0072】
上記各式中、Ay、Ry~Ryは上記式(1)におけるものと同じ意味を表す。
【0073】
上記式(1)においてsとtがそれぞれ1である化合物を得る為には、モノアゾアミノ化合物(E)とモノアゾアミノ化合物(J)をウレイド化剤であるクロロギ酸フェニルと反応させる。
【0074】
上記式(1)においてsが1、tが0である化合物を得る為には、下記式(K)で示される置換基を有するアニリン類を非特許文献2と同様の方法によりジアゾ化し、上記式(I)のアニリン類とカップリングさせ、下記式(L)で示されるモノアゾアミノ化合物を得る。
【化44】
【0075】
上記各式中、Ay、Ry及びRyはそれぞれ上記式(1)におけるものと同じ意味を表す。
【0076】
次いで、上記モノアゾアミノ化合物(E)と上記モノアゾアミノ化合物(L)を、ウレイド化剤であるクロロギ酸フェニルと反応させることにより上記式(1)のアゾ化合物が得られる。
【0077】
上記式(1)においてsが0、tが1である上記式(1)のアゾ化合物を得る為には、下記式(M)で示される置換基を有するアニリン類を非特許文献2と同様の方法によりジアゾ化し、上記式(D)のアニリン類とカップリングさせ、下記式(N)で示されるモノアゾアミノ化合物を得る。
【化45】
【0078】
上記各式中、Ay、Ry、Ryはそれぞれ上記式(1)におけるものと同じ意味を表す。
【0079】
上記式(M)中、Ayは上記式(1)におけるものと同じ意味を表す。上記式(N)中、Ay、Ry~Ryは上記式(1)におけるものと同じ意味を表す。
【0080】
次いで、上記モノアゾアミノ化合物(J)と上記モノアゾアミノ化合物(N)を、ウレイド化剤であるクロロギ酸フェニルと反応させることにより上記式(1)のアゾ化合物が得られる。
【0081】
上記ジアゾ化工程は、ジアゾ成分の塩酸、硫酸などの鉱酸水溶液又はけん濁液に亜硝酸ナトリウムなどの亜硝酸塩を混合するという順法によるか、あるいはジアゾ成分の中性もしくは弱アルカリ性の水溶液に亜硝酸塩を加えておき、これと鉱酸を混合するという逆法によって行われる。ジアゾ化の温度は、-10~40℃が適当である。また、アニリン類とのカップリング工程は塩酸、酢酸などの酸性水溶液と上記各ジアゾ液を混合し、温度が-10~40℃でpH2~7の酸性条件で行われることが好ましい。
【0082】
カップリングして得られたモノアゾアミノ化合物(E)、モノアゾアミノ化合物(J)、モノアゾ化合物(L)、及びモノアゾ化合物(N)は酸析や塩析により析出させ濾過して取り出すか、溶液又は懸濁液のまま次の工程へ進むこともできる。ジアゾニウム塩が難溶性で懸濁液となっている場合は濾過し、プレスケーキとして次のカップリング工程で使うこともできる。
【0083】
クロロギ酸フェニルを用いたウレイド化反応の具体的な条件は、特許文献13の第57頁で示される製法により、温度が10~90℃、pH3~11が好ましく、さらに好ましくは20~80℃、pH4~10、特に好ましくは、20~70℃、pH6~9である。ウレイド化剤としては、クロロギ酸フェニルの他、ホスゲン、トリホスゲン、クロロギ酸エチル、クロロギ酸ブチル、クロロギ酸イソブチル、クロロギ酸4-ニトロフェニル、クロロギ酸4-フルオロフェニル、クロロギ酸4-クロロフェニル、クロロギ酸4-ブロモフェニル、炭酸ジフェニル、炭酸ビス(2-メトキシフェニル)、炭酸ビス(ペンタフルオロフェニル)、炭酸ビス(4-ニトロフェニル)、及び1,1´-カルボニルジイミダゾールを用いることができるがこれらに限定されない。ウレイド化剤は、好ましくは、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸4-ニトロフェニル、クロロギ酸4-クロロフェニル、炭酸ジフェニル、炭酸ビス(4-ニトロフェニル)であり、より好ましくは、クロロギ酸フェニル、クロロギ酸4-ニトロフェニルである。
【0084】
ウレイド化反応終了後、得られた式(1)のアゾ化合物を、塩析により析出させ濾過して取り出す。精製が必要な場合には、塩析を繰り返すか又は有機溶媒を使用して水中から析出させればよい。精製に使用する有機溶媒としては、例えばメタノール、エタノール等のアルコール類、アセトン等のケトン類等の水溶性有機溶媒が挙げられる。
【0085】
式(1)で表されるアゾ化合物を合成するための出発原料であるAy-NH及びAy-NHで示される芳香族アミン類は、ナフチルアミン類又はアニリン類である。
【0086】
アニリン類としては、4-アミノベンゼンスルホン酸、3-アミノベンゼンスルホン酸、2-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノ安息香酸、2-アミノ-5-メチルベンゼンスルホン酸、2-アミノ-5-エチルベンゼンスルホン酸、2-アミノ-5-プロピルベンゼンスルホン酸、2-アミノ-5-ブチルベンゼンスルホン酸、4-アミノ-3-メチルベンゼンスルホン酸、4-アミノ-3-エチルベンゼンスルホン酸、4-アミノ-3-プロピルベンゼンスルホン酸、4-アミノ-3-ブチルベンゼンスルホン酸、2-アミノ-5-メトキシベンゼンスルホン酸、2-アミノ-5-エトキシベンゼンスルホン酸、2-アミノ-5-プロポキシベンゼンスルホン酸、2-アミノ-5-ブトキシベンゼンスルホン酸、4-アミノ-3-メトキシベンゼンスルホン酸、4-アミノ-3-エトキシベンゼンスルホン酸、4-アミノ-3-プロポキシベンゼンスルホン酸、4-アミノ-3-ブトキシベンゼンスルホン酸、2-アミノ-4-スルホ安息香酸、2-アミノ-5-スルホ安息香酸、4-アミノ-3-スルホ安息香酸、5-アミノ-2-クロロ安息香酸、5-アミノイソフタル酸、2-アミノ-5-クロロベンゼンスルホン酸、2-アミノ-5-ブロモベンゼンスルホン酸、2-アミノ-5-ニトロベンゼンスルホン酸、2,5-ジアミノベンゼンスルホン酸、2-アミノ-5-ジメチルアミノベンゼンスルホン酸、2-アミノ-5-ジエチルアミノベンゼンスルホン酸、5-アセトアミド-2-アミノベンゼンスルホン酸、4-アミノベンゼン-1,3-ジスルホン酸、2-アミノベンゼン-1,4-ジスルホン酸、4-アミノ-2-メチルベンゼンスルホン酸、2-(4-アミノフェノキシ)エタン-1-スルホン酸、3-(4-アミノフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸、4-(4-アミノフェノキシ)ブタン-1-スルホン酸、2-(3-アミノフェノキシ)エタン-1-スルホン酸、3-(3-アミノフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸、4-(3-アミノフェノキシ)ブタン-1-スルホン酸、2-アミノ-5-(2-スルホエトキシ)ベンゼンスルホン酸、2-アミノ-5-(3-スルホプロポキシ)ベンゼンスルホン酸、2-アミノ-5-(4-スルホブトキシ)ベンゼンスルホン酸、2-アミノ-5-(2-スルホエトキシ)安息香酸、2-アミノ-5-(3-スルホプロポキシ)安息香酸、2-アミノ-5-(4-スルホブトキシ)安息香酸、4-アミノ-3-(2-スルホエトキシ)ベンゼンスルホン酸、4-アミノ-3-(3-スルホプロポキシ)ベンゼンスルホン酸、4-アミノ-3-(4-スルホブトキシ)ベンゼンスルホン酸、4-アミノ-3-(2-スルホエトキシ)安息香酸、4-アミノ-3-(3-スルホプロポキシ)安息香酸、4-アミノ-3-(4-スルホブトキシ)安息香酸、2-(4-アミノ-3-メチルフェノキシ)エタン-1-スルホン酸、3-(4-アミノ-3-メチルフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸、4-(4-アミノ-3-メチルフェノキシ)ブタン-1-スルホン酸、2-(4-アミノ-3-エチルフェノキシ)エタン-1-スルホン酸、3-(4-アミノ-3-エチルフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸、4-(4-アミノ-3-エチルフェノキシ)ブタン-1-スルホン酸、2-(4-アミノ-3-プロピルフェノキシ)エタン-1-スルホン酸、3-(4-アミノ-3-プロピルフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸、4-(4-アミノ-3-プロピルフェノキシ)ブタン-1-スルホン酸、2-(4-アミノ-3-ブチルフェノキシ)エタン-1-スルホン酸、3-(4-アミノ-3-ブチルフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸、4-(4-アミノ-3-ブチルフェノキシ)ブタン-1-スルホン酸、2-(4-アミノ-3-メトキシフェノキシ)エタン-1-スルホン酸、3-(4-アミノ-3-メトキシフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸、4-(4-アミノ-3-メトキシフェノキシ)ブタン-1-スルホン酸、2-(4-アミノ-3-エトキシフェノキシ)エタン-1-スルホン酸、3-(4-アミノ-3-エトキシフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸、4-(4-アミノ-3-エトキシフェノキシ)ブタン-1-スルホン酸、2-(4-アミノ-3-プロポキシフェノキシ)エタン-1-スルホン酸、3-(4-アミノ-3-プロポキシフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸、4-(4-アミノ-3-プロポキシフェノキシ)ブタン-1-スルホン酸、2-(4-アミノ-3-ブトキシフェノキシ)エタン-1-スルホン酸、3-(4-アミノ-3-ブトキシフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸、4-(4-アミノ-3-ブトキシフェノキシ)ブタン-1-スルホン酸、等が挙げられる。これらの芳香族アミン類はアミノ基が保護されていても良い。保護基としては、例えばω-メタンスルホン基が挙げられる。
【0087】
ナフチルアミン類としては、水素原子、ヒドロキシ基、スルホ基を有する低級アルコキシ基、及びスルホ基からなる群から選択される1以上を有するナフチルアミン類を用いることが好ましい。ナフチルアミン類としては、例えば、4-アミノナフタレンスルホン酸、7-アミノナフタレン-3-スルホン酸、1-アミノナフタレン-6-スルホン酸、1-アミノナフタレン-7-スルホン酸、7-アミノナフタレン-1,3-ジスルホン酸、6-アミノナフタレン-1,3-ジスルホン酸、7-アミノナフタレン-1,5-ジスルホン酸、7-アミノナフタレン-1,3,6-トリスルホン酸等が挙げられる。7-アミノナフタレン-3-スルホン酸、6-アミノナフタレン-1,3-ジスルホン酸、7-アミノナフタレン-1,4-ジスルホン酸、7-アミノナフタレン-1,5-ジスルホン酸、2-アミノ-8-ヒドロキシ-ナフタレン-6-スルホン酸、3-アミノ-8-ヒドロキシナフタレン-6-スルホン酸、1-アミノナフタレン-3,6,8-トリスルホン酸、2-アミノ-5-ヒドロキシナフタレン-1,7-ジスルホン酸、1-アミノナフタレン-3,8-ジスルホン酸等が好ましい。
【0088】
スルホ基及びスルホ基を有する低級アルコキシ基を有するナフチルアミン類としては、例えば、7-アミノ-3-(3-スルホプロポキシ)ナフタレン-1-スルホン酸、7-アミノ-3-(4-スルホブトキシ)ナフタレン-1-スルホン酸、7-アミノ-4-(3-スルホプロポキシ)ナフタレン-2-スルホン酸、7-アミノ-4-(4-スルホブトキシ)ナフタレン-2-スルホン酸、6-アミノ-4-(3-スルホプロポキシ)ナフタレン-2-スルホン酸、6-アミノ-4-(4-スルホブトキシ)ナフタレン-2-スルホン酸、2-アミノ-5-(3-スルホプロポキシ)ナフタレン-1,7-ジスルホン酸、6-アミノ-4-(3-スルホプロポキシ)ナフタレン-2,7-ジスルホン酸、7-アミノ-3-(3-スルホプロポキシ)ナフタレン-1,5-ジスルホン酸などが挙げられる。
【0089】
1次カップラである芳香族アミン類(D)及び(I)としては、アニリン、2-メチルアニリン、2-エチルアニリン、2-プロピルアニリン、2-ブチルアニリン、3-メチルアニリン、3-エチルアニリン、3-プロピルアニリン、3-ブチルアニリン、2,5-ジメチルアニリン、2,5-ジエチルアニリン、2-メトキシアニリン、2-エトキシアニリン、2-プロポキシアニリン、2-ブトキシアニリン、3-メトキシアニリン、3-エトキシアニリン、3-プロポキシアニリン、3-ブトキシアニリン、2-メトキシ-5-メチルアニリン、2,5-ジメトキシアニリン、3,5-ジメチルアニリン、2,6-ジメチルアニリン、3,5-ジメトキシアニリン、3-(2-アミノ-4-メチルフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸、3-(2-アミノフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸、4-(2-アミノ-4-メチルフェノキシ)ブタン-1-スルホン酸、4-(2-アミノフェノキシ)ブタン-1-スルホン酸、2-(2-アミノ-4-メチルフェノキシ)エタン―1-スルホン酸、2-(2-アミノフェノキシ)エタン-1-スルホン酸、3-(3-アミノ-4-メチルフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸、3-(3-アミノフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸、4-(3-アミノ-4-メチルフェノキシ)ブタン-1-スルホン酸、4-(3-アミノフェノキシ)ブタン-1-スルホン酸、2-(3-アミノ-4-メチルフェノキシ)エタン-1-スルホン酸、2-(3-アミノフェノキシ)エタン-1-スルホン酸、3-(2-アミノ-4-メトキシフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸、4-(2-アミノ-4-メトキシフェノキシ)ブタン-1-スルホン酸、2-(2-アミノ-4-メトキシフェノキシ)エタン―1-スルホン酸、3-(3-アミノ-4-メトキシフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸、4-(3-アミノ-4-メトキシフェノキシ)ブタン-1-スルホン酸、2-(3-アミノ-4-メトキシフェノキシ)エタン-1-スルホン酸、3-(2-アミノ-4-エトキシフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸、4-(2-アミノ-4-エトキシフェノキシ)ブタン-1-スルホン酸、2-(2-アミノ-4-エトキシフェノキシ)エタン―1-スルホン酸、3-(3-アミノ-4-エトキシフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸、4-(3-アミノ-4-エトキシフェノキシ)ブタン-1-スルホン酸、2-(3-アミノ-4-エトキシフェノキシ)エタン-1-スルホン酸等が挙げられる。これらの芳香族アミン類はアミノ基が保護されていてもよい。保護基としては、例えばω-メタンスルホン基が挙げられる。
【0090】
酸クロライド(B)及び(G)としては、4-ニトロベンゾイルクロライド、3-メチル-4-ニトロベンゾイルクロライド、2-メチル-4-ニトロベンゾイルクロライド、3-エチル-4-ニトロベンゾイルクロライド、2-エチル-4-ニトロベンゾイルクロライド、3-プロピル-4-ニトロベンゾイルクロライド、2-プロピル-4-ニトロベンゾイルクロライド、3-ブチル-4-ニトロベンゾイルクロライド、2-ブチル-4-ニトロベンゾイルクロライド、3-メトキシ-4-ニトロベンゾイルクロライド、3-エトキシ-4-ニトロベンゾイルクロライド、3-プロポキシ-4-ニトロベンゾイルクロライド、3-ブトキシ-4-ニトロベンゾイルクロライド、2-メトキシ-4-ニトロベンゾイルクロライド、2-エトキシ-4-ニトロベンゾイルクロライド、2-プロポキシ-4-ニトロベンゾイルクロライド、2-ブトキシ-4-ニトロベンゾイルクロライド等が挙げられる。
【0091】
<偏光素子>
本発明の偏光素子は、式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩及び基材を含む。
【0092】
一態様において、本発明の偏光素子は、ニュートラルグレー偏光素子及びカラー偏光素子のいずれでもあり得、好ましくはニュートラルグレー偏光素子である。ここで、「ニュートラルグレー」は、2枚の偏光素子をその配向方向が互いに直交するように重ね合せた状態(以下、「直交位」とも称する。)で、可視光領域の波長領域における特定波長の光漏れ(色漏れ)が少ないことを意味する。
【0093】
本発明の偏光素子は、二色性染料として式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩を1種単独又は複数種類の組合せを含み、必要に応じてその他の有機染料を1種以上さらに含むことができる。その他の有機染料は、特に制限されないが、式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩の吸収波長領域と異なる波長領域に吸収特性を有する染料であって二色性の高いものが好ましい。その他の有機染料としては、例えば、C.I.Direct Red 2、C.I.Direct Red 31、C.I.Direct Red 79、C.I.Direct Red 81、C.I.Direct Red 247、C.I.Direct Violet 9、C.I.Direct Blue 202、C.I.Direct Green 80、及びC.I.Direct Green 59、並びに特許文献20、16、13、21~23に記載された染料等が代表例として挙げられるが、目的に応じて特許文献20、16、13、21~23に記載されているような偏光板用に開発された染料を用いることが好ましい。これらの有機染料は、遊離酸、アルカリ金属塩(例えばNa塩、K塩、Li塩)、アンモニウム塩、又はアミン類の塩として用いられる。
【0094】
他の有機染料を併用する場合、目的とする偏光素子が、ニュートラルグレーの偏光素子、液晶プロジェクター用カラー偏光素子、その他のカラー偏光素子であるかにより、それぞれ配合する有機染料の種類は異なる。その配合割合は特に限定されるものではないが、一般的には、式(1)のアゾ化合物又はその塩1質量部に対して、他の有機染料の少なくとも1種以上の合計を0.01~100質量部の範囲で用いるのが好ましく、0.1~10質量部の範囲がより好ましい。
【0095】
目的とする偏光素子がニュートラルグレー色の偏光素子である場合、得られる偏光素子の可視光領域の波長領域において、偏光素子の吸収軸を直交にした時に色漏れが少なくなるように、併用されるその他の有機染料の種類及び配合割合が調整されることによって、一般的にニュートラルグレー色と言われる偏光素子を得ることが出来る。
【0096】
目的とする偏光素子がカラー偏光素子である場合、得られる偏光素子の特定波長帯域において高い単板平均光透過率を有し、直交位の平均光透過率が低くなるように、例えば、特定の波長帯域において39%以上の単板平均光透過率と、0.4%以下の直交位の平均光透過率を有するように、併用されるその他の有機染料の種類及び配合割合の調整が行われる。
【0097】
本発明の偏光素子は、式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩と、必要に応じて他の染料とを含む二色性染料を、基材(例えば、高分子フィルム)に公知の方法で含有させ配向させる、液晶と共に混合させる、又は塗工方法により配向させることにより製造することができる。
【0098】
一態様において、本発明に係る偏光素子は、上記式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩に加えて、上記式(5)で表されるアゾ化合物又はその塩及び/又は上記式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩を含む。
【0099】
一態様において、本発明の偏光素子は、上記式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩に加えて、上記式(5)及び/又は上記式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩の両方を含むことにより、従来の無彩色偏光板よりも高い透過率および高い偏光度を有しつつも、白表示時に高品位な紙のような白色、通称、ペーパーホワイトを実現し、黒表示時に無彩色の黒色、特に高級感のある明瞭な黒色を実現でき、かつ、従来の染料系偏光板よりも高いコントラストを有する偏光板を実現することが出来る。
【0100】
上記式(5)で表されるアゾ化合物について説明する。
【0101】
上記式(5)中、Arは置換基を有するフェニル基又は置換基を有するナフチル基を示し、Rr~Rrは各々独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を示し、Drはアゾ基またはアミド基を示し、jは0又は1を示し、Xrは置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアゾ基、置換基を有していても良いベンゾイル基、又は置換基を有していても良いベンゾイルアミノ基を示す。
【0102】
上記置換基を有するフェニル基又は置換基を有するナフチル基について説明する。Arが置換基を有するフェニル基である場合、その置換基としてスルホ基又はカルボキシ基を少なくとも1つ有することが好ましい。該フェニル基が置換基を2つ以上有する場合は、それら置換基の少なくとも1つがスルホ基又はカルボキシ基であり、他方の置換基としては、スルホ基、カルボキシ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、スルホ基を有する低級アルコキシ基、ニトロ基、ベンゾイル基、アミノ基、アセチルアミノ基、又は低級アルキルアミノ基置換アミノ基が好ましく、他方の置換基は、より好ましくは、スルホ基、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、カルボキシ基、ニトロ基、ベンゾイル基、又はアミノ基であり、特に好ましくはスルホ基、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、ベンゾイル基、又はカルボキシ基である。上記スルホ基を有する低級アルコキシ基としては、直鎖アルコキシ基が好ましく、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端が好ましく、より好ましくは3-スルホプロポキシ基および4-スルホブトキシ基であるが、特に好ましくは3-スルホプロポキシ基である。該フェニル基が有するスルホ基の数は1又は2が好ましく、置換位置については特に限定はしないが、アゾ基またはアミド基の置換位置を1位とした場合、4位のみ、2位と4位の組合せ、および3位と5位の組合せが好ましい。
【0103】
上記Arが置換基を有するナフチル基である場合、置換基としてスルホ基、ヒドロキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基の少なくとも1つ有することが好ましく、置換基を2つ以上有する場合は、それら置換基の少なくとも1つがスルホ基であり、他方の置換基としては、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基が好ましい。スルホ基を有する低級アルコキシ基としては、直鎖アルコキシ基が好ましく、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端が好ましく、より好ましくは3-スルホプロポキシ基および4-スルホブトキシ基であるが、特に好ましくは3-スルホプロポキシ基である。スルホ基の数が2の場合、ナフチル基上のスルホ基の位置は、アゾ基またはアミド基の置換位置が2位とした場合、4位と8位の組合せ、および6位と8位の組合せが好ましく、6位と8位の組合せがより好ましい。ナフチル基が有するスルホ基の数が3の場合、スルホ基の置換位置として好ましくは3位と6位と8位の組合せが特に好ましい。
【0104】
上記Rr~Rrは各々独立に、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を示す。Rr~Rrは各々独立に、好ましくは水素原子、低級アルキル基、又は低級アルコキシ基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、又はメトキシ基である。スルホ基を有する低級アルコキシ基としては、直鎖アルコキシ基が好ましく、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端が好ましく、より好ましくは3-スルホプロポキシ基および4-スルホブトキシ基であるが、特に好ましくは3-スルホプロポキシ基である。
【0105】
上記jは0又は1を示す。jが0の場合、色の制御が容易になり、JIS Z 8781-4:2013により、自然光の透過率測定時に求められるa*値およびb*値の絶対値が、偏光素子2枚を、各々の吸収軸方向が互いに平行になるように重ねて配置した状態で、絶対値として、ともに2.0以下(-2.0≦a*-p≦2.0、-2.0≦b*-p≦2.0)に調整しやすいため、色の調整のための好ましい一つの形態である。jが1の場合、高い偏光度を示すため、高性能化のためには好ましい形態の一つである。jが1の時、Drはアゾ基またはアミド基を示すが、Drがアミド基の時、高い偏光性能を示すため特に好ましい。
【0106】
上記Xrは、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアゾ基、置換基を有していても良いベンゾイル基、又は置換基を有していても良いベンゾイルアミノ基を示す。置換基を有していても良いアミノ基は、好ましくは水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、スルホ基、アミノ基、および低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1つ又は2つの置換基を有するアミノ基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、アミノ基、および低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1つ又は2つの置換基を有するアミノ基である。置換基を有していても良いフェニルアミノ基は、好ましくは、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、スルホ基、アミノ基、および低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1つ又は2つの置換基を有するフェニルアミノ基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、メトキシ基、スルホ基、およびアミノ基からなる群から選択される1つ又は2つの置換基を有するフェニルアミノ基である。置換基を有していても良いベンゾイル基は、好ましくは、水素原子、ヒドロキシ基、スルホ基、アミノ基、およびカルボキシエチルアミノ基からなる群から選択される1つを有するベンゾイル基である。置換基を有してもよいベンゾイルアミノ基は、好ましくは、水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、およびカルボキシエチルアミノ基からなる群から選択される1つを有するベンゾイルアミノ基である。置換基を有していても良いフェニルアゾ基は、好ましくは、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、アミノ基およびカルボキシエチルアミノ基からなる群から選択される1~3つを有するフェニルアゾ基である。Xrは、好ましくは、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いベンゾイルアミノ基、および置換基を有していても良いフェニルアミノ基であり、より好ましくは、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアミノ基である。置換基の位置は特に限定されないが、Xrがフェニル基を有する基の場合、置換基の1つが、式(5)に示されるナフタレン骨格と間接的に結合する結合位置に対してp位に置換していることが特に好ましく、具体的な例として、フェニルアミノ基の場合、アミノ基に対してp位に置換基があることが好ましい。
【0107】
上記式(5)で示されるアゾ化合物を得る方法としては、特許文献4~6等に記載されている方法が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0108】
上記式(5)で示されるアゾ化合物のさらなる具体例を、遊離酸の形式で以下に示す。
【化46】

【化47】

【化48】

【化49】

【化50】

【化51】

【化52】

【化53】

【化54】

【化55】

【化56】
【0109】
次に、上記式(6)の化合物について説明をする。
【0110】
上記式(6)において、Agは置換基を有するフェニル基又は置換基を有するナフチル基を示す。Agが置換基を有するフェニル基である場合、置換基としてスルホ基又はカルボキシ基を少なくとも1つ有することが好ましい。該フェニル基が置換基を2つ以上有する場合は、それら置換基の少なくとも1つがスルホ基又はカルボキシ基であり、他方の置換基が、スルホ基、カルボキシ基、低級アルキル基、低級アルコキシ基、スルホ基を有する低級アルコキシ基、ニトロ基、アミノ基、アセチルアミノ基、又は低級アルキルアミノ基置換アミノ基であることが好ましい。他方の置換基は、より好ましくは、スルホ基、メチル基、エチル基、メトキシ基、エトキシ基、カルボキシ基、ニトロ基、又はアミノ基であり、特に好ましくはスルホ基、メチル基、メトキシ基、エトキシ基、又はカルボキシ基である。スルホ基を有する低級アルコキシ基としては、直鎖アルコキシ基が好ましく、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端が好ましく、より好ましくは3-スルホプロポキシ基および4-スルホブトキシ基であり、特に好ましくは3-スルホプロポキシ基である。該フェニル基が有する置換基の数は1又は2が好ましく、置換位置は特に限定されないが、アゾ基の位置を1位とした場合、4位のみ、2位と4位の組合せ、および3位と5位の組合せが好ましい。Agが置換基を有するナフチル基である場合、置換基としてスルホ基を少なくとも1つ有することが好ましい。該ナフチル基が置換基を2つ以上有する場合は、それら置換基の少なくとも1つがスルホ基、ヒドロキシ基、スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基であり、その他の置換基としては、スルホ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基が好ましい。該ナフチル基は、置換基として2つ以上のスルホ基を有することが特に好ましい。スルホ基を有する低級アルコキシ基としては、直鎖アルコキシ基が好ましく、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端が好ましく、より好ましくは3-スルホプロポキシ基および4-スルホブトキシ基であるが、特に好ましくは3-スルホプロポキシ基である。該ナフチル基が有するスルホ基の数が2である場合、スルホ基の置換位置はアゾ基の位置を2位とした場合、好ましくは4位と8位の組合せ、および6位と8位の組合せが好ましく、6位と8位の組合せがより好ましい。ナフチル基が有するスルホ基の数が3である場合、スルホ基の置換位置は好ましくはアゾ基の置換位置を2位とした場合、3位と6位と8位の組合せである。
【0111】
上記式(6)におけるBgおよびCgは、各々独立に、上記式(7)又は上記式(8)で表されるが、BgおよびCgのいずれか一方は上記式(7)で表される。
【0112】
上記式(7)において、Rgは水素原子、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、又はスルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基を示し、好ましくは、水素原子、炭素数1~4のアルキル基、又は炭素数1~4のアルコキシ基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、又はメトキシ基である。特に好ましいRgは、水素原子又はメトキシ基であることが良い。スルホ基を有する炭素数1~4のアルコキシ基としては、直鎖アルコキシ基が好ましく、スルホ基の置換位置はアルコキシ基末端が好ましく、より好ましくは3-スルホプロポキシ基および4-スルホブトキシ基であり、特に好ましくは3-スルホプロポキシ基である。式(7)において、Rgの置換位置は、Ag側に置換されているアゾ基を1位として、2位又は3位が好ましく、より好ましくは3位である。pは0~2の整数を示す。スルホ基がある場合(pが1又は2)には、そのスルホ基の置換位置は6位又は7位が良く、好ましくは6位が良い。
【0113】
上記式(8)において、RgおよびRgは各々独立に水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基を示し、好ましくは水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、又はスルホ基を有する低級アルコキシ基であり、より好ましくは水素原子、メチル基、メトキシ基、3-スルホプロポキシ基、又は、4-スルホプロポキシ基である。Rg又はRgの置換位置としては、上記式(6)におけるAg側に置換されているアゾ基を1位として2位のみ、5位のみ、2位および5位、3位および5位、2位および6位、又は、3位および6位の組合せが適用できるが、好ましくは、2位のみ、5位のみ、2位および5位が良い。なお、2位のみ、5位のみは、2位又は5位のみに水素原子以外の置換基を1つ有することを示す。
【0114】
上記式(6)におけるXgは、置換基を有していても良いアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアミノ基、置換基を有していても良いフェニルアゾ基、置換基を有していても良いベンゾイル基、又は置換基を有していても良いベンゾイルアミノ基を示す。Xgは、好ましくは、置換基を有していても良いアミノ基又は置換基を有していても良いフェニルアミノ基であり、より好ましくは置換基を有していても良いフェニルアミノ基である。置換基を有していても良いアミノ基は、好ましくは、水素原子、メチル基、メトキシ基、スルホ基、アミノ基、および低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1つ又は2つを有するアミノ基であり、さらに好ましくは水素原子、メチル基、スルホ基を1つ又は2つ有するアミノ基である。置換基を有していても良いフェニルアミノ基は、好ましくは、水素原子、低級アルキル基、低級アルコキシ基、スルホ基、アミノ基、および低級アルキルアミノ基からなる群から選択される1つ又は2つの置換基を有するフェニルアミノ基であり、より好ましくは、水素原子、メチル基、メトキシ基、スルホ基、およびアミノ基からなる群から選択される1つ又は2つの置換基を有するフェニルアミノ基である。フェニルアゾ基は、好ましくは、水素原子、ヒドロキシ基、炭素数1~4のアルキル基、炭素数1~4のアルコキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基およびカルボキシエチルアミノ基からなる群から選択される1~3つを有するフェニルアゾ基である。置換基を有してもよいベンゾイル基は、好ましくは、水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、およびカルボキシエチルアミノ基からなる群から選択される1つの置換基を有するベンゾイル基である。置換基を有していても良いベンゾイルアミノ基は、好ましくは、水素原子、ヒドロキシ基、アミノ基、およびカルボキシエチルアミノ基からなる群から選択される1つの置換基を有するベンゾイルアミノ基である。置換基の位置は特に限定されないが、Xgがフェニル基を有する基の場合、置換基の1つが、式(6)に示されるナフタレン骨格と間接的に結合する結合位置に対してp位であることが特に好ましく、具体的な例として、フェニルアミノ基の場合、アミノ基に対してp位に置換基があることが好ましい。
【0115】
上記式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩は、上記式(9)で表されるアゾ化合物又はその塩である場合、特に性能が向上するために好ましい。
【0116】
上記式(9)中、Agは式(6)中のAgと同じ意味を示す。Rg及びRgは各々独立に式(7)中のRgと同じ意味を示す。Xgは式(6)中のXgと同じ意味を示す。pおよびpは各々独立に式(7)中のpと同じ意味を示す。特に、p及びpはそれぞれ独立に1又は2であることが、偏光特性を向上させるために好ましい。
【0117】
上記偏光素子において、上記式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩の含有量は、上記式(5)のアゾ化合物の含有量100質量部に対して、0.01~5000質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~3000質量部であり、10~1000質量部であり、40~400質量部であることがさらに好ましい。
【0118】
上記式(6)で示されるアゾ化合物又はその塩は、例えば特許文献7~特許文献12等に記載される方法により合成することができるが、これらに限定されない。
【0119】
上記式(6)で表されるアゾ化合物の具体例としては、例えば、C.I.Direct Blue 34、C.I.Direct Blue 69、C.I.Direct Blue 70、C.I.Direct Blue 71、C.I.Direct Blue 72、C.I.Direct Blue 75、C.I.Direct Blue 78、C.I.Direct Blue 81、C.I.Direct Blue 82、C.I.Direct Blue 83、C.I.Direct Blue 186、C.I.Direct Blue 258、Benzo Fast Chrome Blue FG(C.I.34225)、Benzo Fast Blue BN(C.I.34120)、C.I.Direct Green 51、等のアゾ化合物が挙げられる。
【0120】
以下に、上記式(6)で表されるアゾ化合物の具体例を、遊離酸の形式で示す。
【化57】

【化58】

【化59】

【化60】

【化61】
【0121】
上記偏光素子において、上記式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩の含有量は、式(5)のアゾ化合物の含有量100質量部に対して、0.01~300質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1~200質量部であり、30~200質量部であることがさらに好ましい。
【0122】
上記式(1)で表されるアゾ化合物は、特に400~500nmの透過率に影響を与える。偏光素子において、400~500nmの短波長側の透過率と偏光度(二色性)は、黒表示時の青抜けや白表示時の白色の黄色化に影響を与える。式(1)で表されるアゾ化合物は、偏光素子の平行位における短波長側の透過率の低下を抑えつつも、400~500nmの偏光特性(二色性)を向上させ、白表示時の黄色っぽさと黒表示時の青色の抜けをさらに低下させることができる。偏光素子は、式(1)で表されるアゾ化合物をさらに含有することにより、視感度補正後の単体透過率が35~45%の範囲において、単体でより無彩色性を示し、白表示時により高品位な紙のような白色を表現し、さらに偏光度が向上するため好ましい。
【0123】
上記式(1)、式(5)、及び式(6)で表されるアゾ化合物は、それぞれ遊離形態であっても、塩の形態であってもよい。塩は、例えば、リチウム塩、ナトリウム塩、およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、又は、アンモニウム塩やアルキルアミン塩などの有機塩であり得る。塩は、好ましくは、ナトリウム塩である。
【0124】
上記偏光素子は、式(1)、並びに、式(5)及び/又は式(6)で表されるアゾ化合物を含むことにより、視感度補正後の透過率、及び偏光度において、高い透過率を有しながら高い偏光度を有することが可能となる。更に、上記偏光素子は、後述する好ましい範囲の色度であるa*値およびb*値、視感度補正後の単体透過率、および特定波長帯域における平均透過率等の性能を有することができる。例えば、フィルム単体での透過率において、各波長の透過率を一定に出来る。さらに、平行位において透過率を一定に出来、すなわち平行位において無彩色を提供できる。さらに、直交位においても同時に透過率を一定にすることが出来、すなわち無彩色な色相を提供できる。このことから、本願の偏光素子が式(1)、並びに、式(5)及び/又は式(6)で表されるアゾ化合物を含むことにより、高透過率で高コントラスト、即ち高偏光度な偏光素子を提供できるだけでなく、無彩色な色相も兼ね備えた偏光素子を提供できる。
【0125】
上記偏光素子における上記アゾ化合物の配合比は、上述した各アゾ化合物の含有量において、透過率および色度が後述する好ましい範囲になるようにさらに調整されていることが好適である。偏光素子の性能は、偏光素子における各アゾ化合物の配合比のみならず、アゾ化合物を吸着させる基材の膨潤度や延伸倍率、染色時間、染色温度、染色時のpH、塩の影響等の様々な要因により変化する。このため、各アゾ化合物の配合比は、基材の膨潤度、染色時の温度、時間、pH、塩の種類、塩の濃度、さらには延伸倍率に応じて決定することができる。
【0126】
(基材)
上記基材は、二色性色素、特にアゾ化合物を吸着し得る親水性高分子を製膜して得られるフィルム等であることが好ましい。親水性高分子は特に限定されないが、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂、アミロース系樹脂、デンプン系樹脂、セルロース系樹脂、およびポリアクリル酸塩系樹脂などである。親水性高分子は、二色性色素の染色性、加工性および架橋性などの観点からポリビニルアルコール系樹脂およびその誘導体であることが最も好ましい。基材に、アゾ化合物又はその塩を吸着させ、延伸等の配向処理を適用することによって、偏光素子を作製することができる。
【0127】
(視感度補正後の透過率)
上記視感度補正後の透過率は、JIS Z 8722:2009に従って求められる、人間の目の視感度に補正された透過率である。補正するために用いる各波長の透過率の測定は、測定試料(例えば、偏光素子又は偏光板)について、C光源(2度視野)を用いて400~700nmの各波長について、5nm又は10nmごとに分光透過率を測定し、これをJIS Z 8722:2009に従って視感度に補正することで求めることができる。視感度補正後の透過率は、偏光素子、または偏光板を単体で測定した場合の視感度補正後の単体透過率、偏光素子、または偏光板を2枚用いて各々の吸収軸を平行にした時の透過率を視感度に補正した場合の視感度補正後の平行位透過率、偏光素子、または偏光板2枚用いて各々の吸収軸を直交にした時の透過率を視感度に補正した場合の視感度補正後の直交位透過率がある。
【0128】
(I)2つの波長帯域の平均透過率の差
上記偏光素子は、特定の波長帯域間の平均透過率の差が所定の値以下であることが好ましい。平均透過率は、特定の波長帯域における各波長の透過率の平均値である。
【0129】
波長帯域420nm~480nm、520nm~590nm、および600nm~640nmは、JIS Z 8781-4:2013において色を示す際に計算で用いる等色関数に基づく主な波長帯域である。具体的には、JIS Z 8781-4:2013の元になるJIS Z 8701のXYZ等色関数において、600nmを最大値とするx(λ)、550nmを最大値とするy(λ)、455nmを最大値とするz(λ)のそれぞれの最大値を100としたとき、20以上となる値を示すそれぞれの波長が、420nm~480nm、520nm~590nm、および600nm~640nmの各波長帯域である。
【0130】
上記偏光素子は、偏光素子2枚を吸収軸方向が平行になるように重ねて配置した状態(明表示時、又は、白表示時)について各波長で測定して得られる透過率を、各波長の「平行位透過率」とも称する。また、○nmから△nmの各波長の平均透過率を「AT○-△」とも称する。本発明の偏光素子の各波長の平行位透過率について、AT420-480とAT520-590との差が絶対値として2.5%以下であることが好ましく、より好ましくは1.8%以下、さらに好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1.0%以下である。さらに、各波長の平行位透過率について、AT520-590とAT600-640との差が絶対値として3.0%以下であることが好ましく、より好ましくは2.0%以下、さらに好ましくは1.5%以下、特に好ましくは1.0%以下である。このような偏光素子は、平行位で高品位な紙のような白色を表示することができる。
【0131】
さらに、偏光素子2枚を吸収軸方向が直交になるように重ねて配置した状態(黒表示時、又は、暗表示時)について各波長で測定して得られる透過率を、各波長の「直交位透過率」とも称する。本発明の偏光素子の各波長の直交位透過率について、AT420-480とAT520-590との差が絶対値として、1.0%以下であり、かつ、AT520-590とAT600-640との差が絶対値として1.0%以下であることが好ましい。このような偏光素子は、直交位で無彩色な黒色を表示することができる。さらに、直交位透過率について、AT420-480とAT520-590との差が絶対値として0.6%以下であることが好ましく、より好ましくは0.3%以下、さらに好ましくは0.1%以下である。直交位透過率について、AT520-590とAT600-640との差が絶対値として1.0%以下が好ましく、より好ましくは0.6%以下、さらに好ましくは0.3%以下、特に好ましくは0.1%である。
【0132】
さらに、波長帯域380nm~420nm、480nm~520nm、および640nm~780nmの各々における単体透過率、平行位透過率、および直交位透過率のそれぞれの各波長の平均透過率は、上記波長帯域420nm~480nm、520nm~590nm、600nm~640nmにおける平均透過率が上述したように調整されている場合には、偏光素子の色相への影響は大きくないものの、ある程度調整されていることが好ましい。各波長の単体透過率について、AT380-420とAT420-480との差が絶対値として15%以下であることが好ましく、AT480-520とAT420-480との差が絶対値として15%以下、AT480-520とAT520-590と差が絶対値として15%以下、AT640-780とAT600-640との差が絶対値として20%以下であることが好ましい。
【0133】
(II)視感度補正後の単体透過率
上記偏光素子は、視感度補正後の単体透過率が35%~66%であることが好ましい。視感度補正後の単体透過率は、測定試料(例えば、偏光素子又は偏光板)1枚について、JIS Z 8722:2009に従って視感度に補正した透過率である。偏光板の性能としては、透過率がより高いものが求められるが、視感度補正後の単体透過率が35%~60%であれば表示装置に用いても、違和感なく明るさを表現できる。透過率が高いほど偏光度は下がる傾向にあるため、偏光度とのバランスの観点からは、視感度補正後の単体透過率は、37%~50%であることがより好ましく、さらに好ましくは38%~50%であり、38%~45%であることが極めて好ましい。視感度補正後の単体透過率が65%を超えると偏光度が低下する場合があるが、偏光素子の明るい透過率、又は、特定の偏光性能やコントラストを求める場合には、視感度補正後の単体透過率が65%を超えてもよい。
【0134】
(III)特定波長帯域における平均透過率
偏光素子は、平行位で測定されたAT520-590が25%~50%であることが良い。このような偏光素子は、表示装置に設けた際に、明るく、輝度の高い明瞭な表示装置とすることができる。520nm~590nmの波長帯域の各波長の透過率は、JIS Z 8781-4:2013において色を示す際に計算で用いる等色関数に基づく主な波長帯域の1つである。特に、520nm~590nmの各波長帯域は、等色関数に基づく最も視感度の高い波長帯域であり、この範囲における透過率が、目視で確認できる透過率と近い。このため、520nm~590nmの波長帯域の各波長の透過率を調整することが非常に重要である。平行位で測定されたAT520-590は、より好ましくは28%~45%であり、さらに好ましくは30%~40%である。さらに、このときの偏光素子の偏光度は、80%~100%であることで良いが、好ましくは90%~100%、より好ましくは97%~100%であり、さらに好ましくは99%以上であり、特に好ましくは99.5%以上である。偏光度は、高い方が好ましいが、偏光度と透過率との関係において、明るさを重視するか、偏光度(又はコントラスト)を重視するかにより、適した透過率および偏光度に調整することができる。
【0135】
(色度a*値およびb*値)
色度a*値およびb*値は、JIS Z 8781-4:2013により、自然光の透過率測定時に求められる値である。JIS Z 8781-4:2013に定められる物体色の表示方法は、国際照明委員会(略称:CIE)が定める物体色の表示方法に相当する。色度a*値およびb*値の測定は、測定試料(例えば、偏光素子又は偏光板)に自然光を照射して行われる。なお、以下において、測定試料1枚について求められる色度a*値およびb*値はa*-sおよびb*-s、測定試料2枚をその吸収軸方向が互いに平行となるように配置した状態(白表示時)について求められる色度a*値およびb*値はa*-pおよびb*-p、測定試料2枚をその吸収軸方向が互いに直交するように配置した状態(黒表示時)について求められる色度a*値およびb*値はa*-cおよびb*-cと示す。
【0136】
上記偏光素子は、a*-sおよびb*-sの絶対値の各々が1.0以下であることが好ましく、a*-pおよびb*-pの絶対値の各々が2.0以下であることが好ましい。このような偏光素子は、単体で中性色であり、白表示時に高品位な白色を表示することができる。偏光素子のa*-pおよびb*-pの絶対値は、より好ましくは1.5以下であり、さらに好ましくは1.0以下である。さらに、偏光素子は、a*-cおよびb*-cの絶対値の各々が2.0以下であることが好ましく、1.0以下であることがより好ましい。このような偏光素子は、黒表示時に無彩色の黒色を表示することができる。色度a*値およびb*値の絶対値に0.5の差があるだけでも人間は色の違いを知覚でき、人によっては色の違いを大きく感じることがある。このため、偏光素子において、これらの値を制御することは非常に重要である。特に、a*-p、b*-p、a*-c、およびb*-cの絶対値の値が、各々、1.0以下である場合には、白表示時の白色および黒表示時の黒色にその他の色がほぼ確認できない、良好な偏光板が得られる。平行位で無彩色性、すなわち高品位な紙のような白色を実現し、かつ、直交位で無彩色な高級感ある明瞭な黒色を実現することができる。ただし、表示装置の黒色を与える色相の影響はその限りでなく、そもそも光が無い(暗い)状態では、色相を有していても黒く見える。そのため、偏光度が高い場合、つまり各波長の直交位透過率が低い場合には偏光素子は、a*-cおよびb*-cの絶対値の各々2.0以下でなくとも黒を与えることが出来る。我々の検討の結果、波長帯域420nm~480nm、520nm~590nm、および600nm~640nmの各波長における直交位透過率が1%以下又は偏光度は約97%以上の時、a*-cおよびb*-cの絶対値に関わらず視感的に黒を与えることが出来るため好ましいことを見出した。波長帯域420nm~480nm、520nm~590nm、および600nm~640nmの各波長における直交位透過率が0.6%以下又は偏光度98%以上の時により黒を視感的に与えることが出来るためより好ましく、直交位透過率が0.3%以下又は偏光度99%以上の時に特に好ましい。
【0137】
以上のことから、偏光素子2枚を吸収軸方向が直交になるように重ねて配置した時、その色相が黒を与えることが出来るための好ましい方法は、以下の1)~3)のいずれかを満たすことで達成する。
1)偏光素子2枚を吸収軸方向が直交になるように重ねて配置した状態(黒表示時、又は、暗表示時)について測定して得られる各波長の透過率(以下、「直交位透過率」とも称する。)について、AT420-480とAT520-590との差が絶対値として1.0%以下であり、かつ、AT520-590とAT600-640との差が絶対値として1.0%以下である
2)a*-cおよびb*-cの各々の絶対値が2.0以下である
3)波長帯域420nm~480nm、520nm~590nm、および600nm~640nmの各波長における直交位透過率が1%以下又は偏光度が約97%以上。
【0138】
本発明に係る偏光素子は、高コントラストおよび高透過率を有しながら、単体での無彩色性と高偏光度を有する。さらに、本発明の偏光素子は、白表示時に高品位な紙のような白色(ペーパーホワイト)を表現することができ、黒表示時に無彩色な黒色、特に高級感ある明瞭な黒色を表現することができる。これまでは、このような高透過率と無彩色性を兼ね備えた偏光素子は存在していなかった。本発明の偏光素子は、さらに、高耐久性であり、特に高温および高湿度に対する耐久性を有する。
【0139】
又、本発明に係る偏光素子は、700nm以上の波長の光の吸収が一般的に用いられるヨウ素系偏光板や特許文献3に比べて少ないため、太陽光などの光を照射しても発熱が少ないという利点がある。例えば、屋外等で液晶ディスプレイを使用する場合には、太陽光が液晶ディスプレイに照射され、その結果、偏光素子にも照射される。太陽光は、700nm以上の波長の光も有し、発熱効果を有する近赤外線を含む。例えば、特公平02-061988号公報の実施例3に記載されるようなアゾ化合物を用いた偏光素子は波長700nm付近の近赤外の光を吸収するために、若干発熱するが、本発明の偏光素子は、近赤外線の吸収が極めて少ないため、屋外で太陽光に暴露されても発熱が少ない。本発明の偏光素子は、発熱が少ないことにより、劣化も少ない点で優れている。
【0140】
(偏光素子の作製方法)
以下、ポリビニルアルコール系樹脂製の基材にアゾ化合物を吸着させて作製する場合を例に、具体的な偏光素子の作製方法を説明する。なお、本発明に係る偏光素子の製造方法は、以下の製法に限定されるものではない。
【0141】
(原反フィルムの準備)
原反フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂を製膜することにより作製することができる。ポリビニルアルコール系樹脂は、特に限定されず、市販のものを用いてもよいし、公知の方法で合成されたものを用いてもよい。ポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化することにより得ることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルおよびこれと共重合可能な他の単量体の共重合体などが例示される。酢酸ビニルに共重合する他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、および不飽和スルホン酸類等が挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂のケン化度は、通常85~100モル%程度であることが好ましく、より好ましくは95モル%以上である。ポリビニルアルコール系樹脂は、さらに変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性したポリビニルホルマールやポリビニルアセタールなども使用できる。又、ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、粘度平均重合度を意味し、当該技術分野において周知の手法によって求めることができ、通常1,000~10,000程度が好ましく、より好ましくは重合度1,500~6,000程度である。
【0142】
上記ポリビニルアルコール系樹脂を製膜する方法は特に限定されるものでなく、公知の方法で製膜することができる。この場合、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムには、可塑剤としてグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、低分子量ポリエチレングリコールなどが含有されていてもよい。可塑剤の量はフィルム全量中に好ましくは5~20質量%であり、より好ましくは8~15質量%である。原反フィルムの膜厚は特に限定されないが、例えば、5μm~150μm程度、好ましくは10μm~100μm程度である。
【0143】
(膨潤工程)
以上により得られた原反フィルムに、膨潤処理を施す。膨潤処理は20~50℃の溶液に、原反フィルムを30秒から10分間浸漬させることにより行うことが好ましい。溶液は水が好ましい。延伸倍率は、1.00~1.50倍に調整することが好ましく、1.10~1.35倍に調整することがより好ましい。偏光素子を製造する時間を短縮する場合には、後述する染色処理時にも原反フィルムが膨潤するため膨潤処理を省略することもできる。
【0144】
(染色工程)
染色工程では、原反フィルムを膨潤処理して得られた樹脂フィルムにアゾ化合物を吸着および含浸させる。膨潤工程を省略した場合には、染色工程において原反フィルムの膨潤処理を同時に行うことができる。アゾ化合物を吸着および含浸させる処理は、樹脂フィルムに着色する工程であるため、染色工程としている。
【0145】
染色工程において用いるアゾ化合物としては、式(1)で表されるアゾ化合物又はその塩を用い、さらに任意に式(5)及び/又は式(6)で表されるアゾ化合物又はその塩、及び/又は、非特許文献1などで例示される二色性染料であるアゾ化合物を、本願の偏光素子の性能が損なわれない程度に用いて色を調整してもよい。これらのアゾ化合物は遊離酸の形態で用いるほか、当該化合物の塩を用いてもよい。そのような塩は、例えばリチウム塩、ナトリウム塩、およびカリウム塩などのアルカリ金属塩、又は、アンモニウム塩やアルキルアミン塩などの有機塩であり、好ましくは、ナトリウム塩である。
【0146】
染色工程は、色素を樹脂フィルムに吸着および含浸させる方法であれば特に限定されないが、例えば、樹脂フィルムを染色溶液に浸漬させることにより行うことが好ましく、樹脂フィルムに染色溶液を塗布することによって行うこともできる。染色溶液中の各アゾ化合物は、例えば、0.001~10質量%の範囲内で調整することができる。この工程での溶液温度は、5~60℃が好ましく、20~50℃がより好ましく、35~50℃が特に好ましい。溶液に浸漬する時間は適度に調節できるが、30秒から20分で調節するのが好ましく、1~10分がより好ましい。
【0147】
染色溶液は、アゾ化合物に加え、染色助剤を必要に応じてさらに含んでいてもよい。染色助剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、無水硫酸ナトリウム、およびトリポリリン酸ナトリウム等が挙げられる。染色助剤の含有量は、染料の染色性による時間および温度によって任意の濃度で調整できるが、それぞれの含有量としては、染色溶液中に0.01~5質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましい。
【0148】
(洗浄工程1)
染色工程後、次の工程に入る前に洗浄工程(以下、「洗浄工程1」とも称する。)を行うことができる。染浄工程1は、染色工程で樹脂フィルムの表面に付着した染色溶液を洗浄する工程である。洗浄工程1を行うことによって、次に処理する液中に染料が移行するのを抑制することができる。洗浄工程1では、洗浄液として一般的には水が用いられる。洗浄方法は、洗浄液に浸漬することが好ましいが、洗浄液を樹脂フィルムに塗布することによって洗浄することもできる。洗浄の時間は、特に限定されないが、好ましくは1~300秒、より好ましくは1~60秒である。洗浄工程1での洗浄液の温度は、樹脂フィルムを構成する材料(例えば、親水性高分子、ここではポリビニルアルコール系樹脂)が溶解しない温度であることが必要となる。一般的には5~40℃で洗浄処理される。ただし、洗浄工程1の工程がなくとも、性能には問題は出ないため、洗浄工程は省略することもできる。
【0149】
(架橋剤および/又は耐水化剤を含有させる工程)
染色工程又は洗浄工程1の後、架橋剤および/又は耐水化剤を含有させる工程を行うことができる。樹脂フィルムに架橋剤および/又は耐水化剤を含有させる方法は、処理溶液に浸漬することが好ましいが、処理溶液を樹脂フィルムに塗布又は塗工してもよい。処理溶液は、架橋剤および/又は耐水化剤を少なくとも1種と、溶媒とを含む。この工程での処理溶液の温度は、5~70℃が好ましく、5~50℃がより好ましい。この工程での処理時間は30秒~6分が好ましく、1~5分がより好ましい。
【0150】
架橋剤としては、例えば、ホウ酸、ホウ砂又はホウ酸アンモニウムなどのホウ素化合物、グリオキザール又はグルタルアルデヒド等の多価アルデヒド、ビウレット型、イソシアヌレート型又はブロック型等の多価イソシアネート系化合物、チタニウムオキシサルフェイト等のチタニウム系化合物等を用いることができるが、他にもエチレングリコールグリシジルエーテル、ポリアミドエピクロルヒドリン等を用いることができる。耐水化剤としては、過酸化コハク酸、過硫酸アンモニウム、過塩素酸カルシウム、ベンゾインエチルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、塩化アンモニウム又は塩化マグネシウム等が挙げられるが、好ましくはホウ酸が用いられる。架橋剤および/又は耐水化剤のための溶媒としては、水が好ましいが限定されるものではない。架橋剤および/又は耐水化剤の含有濃度は、その種類に応じて当業者が適宜決定することができるが、ホウ酸を例にして示すと処理溶液中に濃度0.1~6.0質量%が好ましく、1.0~4.0質量%がより好ましい。ただし、架橋剤および/又は耐水化剤を含有させることが必須でなく、時間を短縮したい場合には、架橋処理又は耐水化処理が不必要な場合には、この処理工程を省略してもよい。
【0151】
(延伸工程)
染色工程、洗浄工程1、又は架橋剤および/又は耐水化剤を含有させる工程を行った後に、延伸工程を行う。延伸工程は、樹脂フィルムを1軸に延伸することにより行う。延伸方法は湿式延伸法又は乾式延伸法のいずれでもよい。延伸倍率は、3倍以上であることが好ましく、より好ましくは4~8倍であり、特に好ましくは5~7倍である。
【0152】
湿式延伸法の場合には、水、水溶性有機溶剤、又はその混合溶液中で樹脂フィルムを延伸することが好ましい。架橋剤および/又は耐水化剤を少なくとも1種含有する溶液中に浸漬しながら延伸処理を行うことが好ましい。架橋剤および耐水化剤としては、架橋剤および/又は耐水化剤を含有させる工程について上述したのと同じものを用いることができる。延伸工程での架橋剤および/又は耐水化剤の溶液中の濃度は、例えば、0.5~15質量%が好ましく、2.0~8.0質量%がより好ましい。延伸温度は40~60℃で処理することが好ましく、45~58℃がより好ましい。延伸時間は通常30秒~20分であるが、2~5分がより好ましい。湿式延伸工程は1段で延伸することができるが、2段以上の多段延伸により行うこともできる。
【0153】
乾式延伸法の場合には、延伸加熱媒体が空気媒体の場合には、空気媒体の温度が常温から180℃で樹脂フィルムを延伸するのが好ましい。又、湿度は20~95%RHの雰囲気中とすることが好ましい。加熱方法としては、例えば、ロール間ゾーン延伸法、ロール加熱延伸法、圧延伸法、および赤外線加熱延伸法等が挙げられるが、その延伸方法は限定されるものではない。延伸工程は1段で延伸することもできるが、2段以上の多段延伸により行うこともできる。
【0154】
(洗浄工程2)
延伸工程を行った後には、樹脂フィルム表面に架橋剤および/又は耐水化剤の析出、又は異物が付着することがあるため、樹脂フィルム表面を洗浄する洗浄工程(以下、「洗浄工程2」とも称する)を行うことができる。洗浄時間は1秒~5分が好ましい。洗浄方法は、樹脂フィルムを洗浄液に浸漬することが好ましいが、溶液を樹脂フィルムに塗布又は塗工によって洗浄することもできる。洗浄液としては、水が好ましい。1段で洗浄処理することもできるし、2段以上の多段処理をすることもできる。洗浄工程の溶液温度は、特に限定されないが通常5~50℃、好ましくは10~40℃である。
【0155】
ここまでの処理工程で用いる処理液又はその溶媒としては、水の他、例えば、ジメチルスルホキシド、N-メチルピロリドン、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール又はトリメチロールプロパン等のアルコール類、エチレンジアミンおよびジエチレントリアミン等のアミン類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。処理液又はその溶媒は、最も好ましくは水である。又、これらの処理液又はその溶媒は、1種単独で用いることもできるが、2種以上の混合物を用いることもできる。
【0156】
(乾燥工程)
延伸工程又は洗浄工程2の後には、樹脂フィルムの乾燥工程を行う。乾燥処理は、自然乾燥により行うことができるが、より乾燥効率を高めるためにはロールによる圧縮やエアーナイフ、又は吸水ロール等による表面の水分除去等により行うことができ、および/又は送風乾燥により行うこともできる。乾燥処理温度としては、20~100℃で乾燥処理することが好ましく、60~100℃で乾燥処理することがより好ましい。乾燥処理時間は例えば30秒~20分であるが、5~10分であることが好ましい。
【0157】
偏光素子の作製方法では、膨潤工程における基材の膨潤度、染色工程における各アゾ化合物の配合比、染色溶液の温度、pH、塩化ナトリウムや芒硝、トリポリリン酸ナトリウム等の塩の種類やその濃度、および染色時間、並びに延伸工程における延伸倍率は、偏光素子が以下の(i)~(v)の条件の少なくとも1つを満たすように調整することが好適であり、(vi)および(vii)の条件をさらに満たすように調整することがより好適である。
(i)平行位透過率について、AT420-480とAT520-590との差が絶対値として2.5%以下となり、AT520-590とAT600-640との差が絶対値として3.0%以下となる。
(ii)直交位透過率について、AT420-480とAT520-590との差が絶対値として1.0%以下となり、AT520-590とAT600-640との差が絶対値として1.0%以下となる。
(iii)視感度補正後の単体透過率が35%~45%となる。
(iv)a*値およびb*値の絶対値の各々が、偏光素子単体でともに1.0以下となり、平行位でともに2.0以下となる。
(v)直交位で測定されたa*値およびb*値の絶対値の各々が、ともに2以下となる。
(vi)平行位透過率について、AT520-590が28~45%となる。
(vii)各波長の単体透過率、または直交位透過率において、AT380-420とAT420-480との差が絶対値として15%以下、AT480-520とAT420-480との差が絶対値として15%以下、AT480-520とAT520-590と差が絶対値として15%以下、および/又はAT640-780とAT600-640との差が絶対値として20%以下となる。
【0158】
以上の方法により、式(5)及び/又は式(6)、並びに、式(1)で表されるアゾ化合物の組合せを少なくとも含む偏光素子を製造することができる。かかる偏光素子は、従来の偏光素子より高い透過率および高い偏光度を有しながらも、偏光素子2枚を吸収軸方向が平行になるように重ねて配置した際に高品位な紙のような白色を表現でき、かつ、単体で中性色(ニュートラルグレー)を有する色相である。さらに、偏光素子は、偏光素子2枚を吸収軸方向が直交になるように重ねて配置した際に、高級感のある無彩色な黒を示す。又、偏光素子は、高温および高湿度に対して耐久性が高い。
【0159】
<偏光板>
本発明の偏光板は、上記本発明の偏光素子を備えるため、優れた偏光性能及び耐湿性・耐熱性・耐光性を有する。
【0160】
本発明に係る偏光板は、偏光素子と、該偏光素子の片面又は両面に設けられた透明保護層とを備える。透明保護層は、偏光素子の耐水性や取扱性の向上等を目的として設けられる。
【0161】
上記透明保護層は、透明物質を用いて形成された保護フィルムである。保護フィルムは、偏光素子の形状を維持できる層形状を有するフィルムであり、透明性や機械的強度、熱安定性、水分遮蔽性等に優れるプラスチック等が好ましい。これと同等な層を形成することで同等な機能を設けることでもよい。保護フィルムを構成するプラスチックの一例としては、ポリエステル系樹脂、アセテート系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、及び四フッ化エチレン/六フッ化プロピレン系共重合体等のフッ素系樹脂等の熱可塑性樹脂、アクリル系、ウレタン系、アクリルウレタン系、エポキシ系およびシリコーン系等の熱硬化性樹脂又は紫外線硬化性樹脂などから得られるフィルムが挙げられ、これらのうちポリオレフィン系樹脂としては、非晶性ポリオレフィン系樹脂であってノルボルネ系モノマー又は多環状ノルボルネン系モノマーのような環状ポリオレフィンの重合単位を有する樹脂が挙げられる。一般的に、保護フィルムをラミネートした後に偏光素子の性能を阻害しない保護フィルムを選択することが好ましく、そのような保護フィルムとして、セルロースアセテート系樹脂よりなるトリアセチルセルロース(TAC)およびノルボルネンが特に好ましい。又、保護フィルムは、本発明の効果を損なわない限り、ハードコート処理や反射防止処理、スティッキングの防止や拡散、アンチグレア等を目的とした処理などを施したものであってもよい。透明保護層の厚さは通常10~200μmであることが好ましい。
【0162】
上記偏光板は、上記偏光素子と上記透明保護層を貼り合わせるための接着剤層をさらに備えることが好ましい。接着剤層を構成する接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール系接着剤、ウレタンエマルジョン系接着剤、アクリル系接着剤、及びポリエステルーイソシアネート系接着剤などが挙げられ、ポリビニルアルコール系接着剤が好適である。
【0163】
ポリビニルアルコール系接着剤として、例えば、ゴーセノールNH-26(日本合成社製)およびエクセバールRS-2117(クラレ社製)等が挙げられるが、これに限定されるものではない。接着剤には、架橋剤および/又は耐水化剤を添加することができる。ポリビニルアルコール系接着剤としては、無水マレイン酸-イソブチレン共重合体を用いることが好ましく、必要により架橋剤を混合した接着剤を用いることができる。無水マレイン酸-イソブチレン共重合体としては、例えば、イソバン#18(クラレ社製)、イソバン#04(クラレ社製)、アンモニア変性イソバン#104(クラレ社製)、アンモニア変性イソバン#110(クラレ社製)、イミド化イソバン#304(クラレ社製)、およびイミド化イソバン#310(クラレ社製)等が挙げられる。その際の架橋剤には水溶性多価エポキシ化合物を用いることができる。水溶性多価エポキシ化合物としては、例えば、デナコールEX-521(ナガセケムテック社製)およびテトラット-C(三井ガス化学社製)等が挙げられる。又、ポリビニルアルコール系樹脂以外の接着剤として、ウレタン系、アクリル系、エポキシ系といった公知の接着剤を用いることも出来る。特に、アセトアセチル基変性されたポリビニルアルコールを用いることが好ましく、さらにはその架橋剤として、多価アルデヒドを用いることが好ましい。又、接着剤の接着力の向上又は耐水性の向上を目的として、亜鉛化合物、塩化物、およびヨウ化物等の添加物を単独で又は同時に0.1~10質量%程度の濃度で含有させることもできる。接着剤への添加物は、特に限定されず、当業者が適宜選択することができる。透明保護層と偏光素子とを接着剤で貼り合せた後、適切な温度で乾燥又は熱処理を行うことによって偏光板を得ることができる。
【0164】
偏光素子または偏光板は、その透明保護層又はフィルムの露出面に、AR層(反射防止層)、防眩層、およびハードコート層等の公知の各種機能性層を備えていてもよい。この各種機能性を有する層を作製するには塗工方法が好ましいが、その機能を有するフィルムを接着剤又は粘着剤を介して貼合せることもできる。
【0165】
上記ハードコート層としては、例えばアクリル系やポリシロキサン系のハードコート層やウレタン系の保護層等が挙げられる。また、上記AR層により、透過率のさらなる向上が期待できる。AR層は、例えば二酸化珪素、酸化チタン等の物質を蒸着又はスパッタリング処理によって形成することができ、またフッ素系物質を薄く塗布することにより形成することができる。
【0166】
偏光素子または偏光板は場合によって、例えば液晶、有機エレクトロルミネッセンス(通称、OLED又はOEL)等の表示装置に貼り合わせる場合、後に非露出面となる透明保護層又はフィルムの表面に視野角改善および/又はコントラスト改善のための各種機能性層、輝度向上性を有する層又はフィルムを設けることもできる。各種機能性層は、例えば、位相差を制御する層又はフィルムである(以下、「位相差板」とも称する)。位相差板を貼付することにより、本発明の偏光板を楕円偏光板として使用することもできる。偏光板は、これらのフィルムや表示装置に、粘着剤により貼り合わされることが好ましい。
【0167】
液晶表示装置においては、液晶セルの入射側又は出射側のいずれか一方又は両方に本発明の偏光板が配置される。偏光板は液晶セルに接触していても、接触していなくてもよいが、耐久性の観点から、接触していない方が好ましい。液晶セルの出射側において、偏光板が液晶セルに接触している場合、液晶セルを偏光板の支持体とすることができる。偏光板が液晶セルに接触していない場合、液晶セル以外の支持体が設けられた偏光板を使用することが好ましい。また、耐久性の観点からすると、液晶セルの入射側及び出射側の両方に偏光板が配置されることが好ましく、さらに偏光板の偏光板面を液晶セル側に、支持体面を光源側に配置することが好ましい。なお、液晶セルの入射側とは、光源側のことであり、反対側を出射側という。
【0168】
液晶表示装置に備えられる液晶セルは、例えばアクティブマトリクス型であり、電極及びTFTが形成された透明基板と対向電極が形成された透明基板との間に液晶を封入して形成されるものであることが好ましい。冷陰極管ランプ又は白色LED等の光源から放射された光は、偏光板を通過し、ついで液晶セル、カラーフィルター、さらに偏光板を通過し表示画面上に投影される。
【0169】
上記偏光板は、用途に応じてニュートラルグレー偏光板及びカラー偏光板のいずれであってもよい。
【0170】
上記ニュートラルグレー偏光板は、中性色を有し、可視光領域の偏光領域において直交位の色漏れが少なく、偏光性能に優れ、さらに高温高湿状態でも変色や偏光性能の低下が抑制され、耐久性が高いため、車載用表示装置又は屋外表示用表示装置に好適である。本発明の偏光板を用いる表示装置としては、例えば、OLEDや液晶表示装置が挙げられるが、特に液晶表示装置に好適に用いることが出来る。
【0171】
上記液晶表示装置は、本発明の偏光板が明るさと優れた偏光性能並びに偏光性及び耐光性を有するため、車内や屋外等の高温、高湿状態でも変色や偏光性能の低下を起こし難く、信頼性が高い。
【0172】
車載用表示装置又は屋外表示用表示装置のカラー偏光板に使用される偏光素子は、ニュートラルグレー偏光板と同様に、偏光板に必要に応じて保護層又はAR層及び支持体等が設けられていてもよい。支持体付カラー偏光板は、例えば、支持体平面部に透明な接着(粘着)剤を塗布し、ついでこの塗布面に偏光板を貼付することにより得られる。又は、偏光板に透明な接着(粘着)剤を塗布し、ついでこの塗布面に支持体を貼付してもよい。接着(粘着)剤は、例えばアクリル酸エステル系のものが好ましい。なお、この偏光板を楕円偏光板として使用する場合、位相差板付き偏光板の位相差板側を支持体に貼付して偏光板/位相差板/支持体の積層順とするのが通常であるが、位相差板のない側を支持体に貼付して位相差板/偏光板/支持体の積層順としてもよい。
【0173】
車載用又は屋外表示用ニュートラルグレー偏光板は、偏光素子と透明保護層に加えて、透過率をより向上させるためにAR層を備えることが好ましく、AR層と透明樹脂などの支持体との両方を貼付したAR層及び支持体付き偏光板はより好ましい。AR層は、偏光板の片面又は両面に設けることができる。支持体は、偏光板の片面に設けることが好ましく、偏光板に直接設けられていてもよく、支持体にAR層が設けられていてもよい。AR層及び支持体付き偏光板は、AR層/偏光板/AR層を設けた支持体をこの順に備えることが好ましい。支持体は偏光板を貼付するための平面部を有しているものが好ましく、また光学用途であるため、透明基板であることが好ましい。透明基板としては、大きく分けて無機基板と有機基板があり、ソーダガラス、ホウ珪酸ガラス、水晶基板、サファイヤ基板、及びスピネル基板等の無機基板、並びにアクリル、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、及びシクロオレフィンポリマー等の有機基板が挙げられるが、有機基板が好ましい。透明基板の厚さや大きさは所望のサイズでよい。
【0174】
上記カラー偏光板は、偏光性能に優れ、高温高湿状態でも変色や偏光性能の低下を起こしにくいため、液晶プロジェクター用、及び車載用や屋外表示用等の表示装置用に好適である。
【0175】
液晶プロジェクター用カラー偏光板は、明るさと優れた偏光性能を有しており、該偏光板の必要波長帯域(A.超高圧水銀ランプを用いた場合;青色チャンネル用420~500nm、緑色チャンネル500~580nm、赤色チャンネル600~680nm、B.3原色LEDランプを用いた場合のピーク波長;青色チャンネル用430~450nm、緑色チャンネル520~535nm、赤色チャンネル620~635nm)における、各波長の単板平均光透過率が39%以上、各波長の直交位の平均光透過率が0.4%以下で、より好ましくは該偏光板の必要波長帯域における各波長の単板平均光透過率が41%以上、直交位の各波長の平均光透過率が0.3%以下、より好ましくは0.2%以下である。さらに好ましくは、該偏光板の必要波長帯域における各波長の単板平均光透過率が42%以上、直交位の各波長の平均光透過率が0.1%以下である。
【0176】
なお、単板平均透過率は、AR層及び透明ガラス板等の支持体を設けていない1枚の偏光板(以下、単に「偏光板」とも称する)に自然光を入射したときの特定波長領域における透過率の平均値である。直交位の平均透過率は、2枚の偏光板をその配向方向が互いに直交するように重ね合せた状態で自然光を入射したときの特定波長領域における光線透過率の平均値である。
【0177】
一態様において、本発明に係る偏光板は、高い透過率および高い偏光度を有しながらも無彩色性を実現することができ、特に、白表示時に高品位な紙のような白色を表現でき、かつ、黒表示時にニュートラルな黒色を表現し得る、高耐久性の偏光板である。
【0178】
<表示装置>
本発明の単体、平行位、または、さらに直交位においても波長依存性がなく、各波長の透過率がほぼ一定である偏光素子又は偏光板は、単体、平行位、または、さらに直交位の各状態で用いても、その色相が変化しないことから表示装置の表示色の再現性を高めるために好適に用いることが出来る。その特性を利用し、必要に応じて保護層又は機能層およびガラス、水晶、サファイア等の透明な支持体等を設け、液晶プロジェクター、電卓、時計、ノートパソコン、ワープロ、液晶テレビ、偏光レンズ、偏光メガネ、カーナビゲーション、および屋内外の計測器や表示器等に好適に適用される。
【0179】
一態様において、本発明の偏光素子又は偏光板は、液晶表示装置、例えば、反射型液晶表示装置、半透過液晶表示装置、および透過型液晶表示装置に特に好適に用いることが出来、バックライトがない状態でも色補正が不要で、かつ周囲光でも高い色再現性を高めることが出来る。これまでの偏光板は、コントラストが高い場合、平行位で短波長の透過率が低い偏光板であったため、周囲光(自然光)において平行位で黄色く色づいてしまっていた。そのため、バックライトやカラーフィルターで色を補正する必要があったが、その一方で、平行位を色補正をすると直交位で青くなってしまうなどの問題が生じていた。そういった周囲光で表示する場合でも(バックライトを用いなくても)偏光素子、または偏光板の色付がないために色再現性が高く、並びに、周囲光で表示する場合とバックライトを用いて表示する場合とで色の変化がないという利点を活かして、液晶表示装置、例えば、反射型液晶表示装置、半透過液晶表示装置、および透過型液晶表示装置に好適に用いられる。本特性を活かして特に反射型液晶表示装置、半透過液晶表示装置に好適に用いることが出来る。つまり、本発明の偏光素子又は偏光板を用いた液晶表示装置は、高品位な紙のような白色およびニュートラルな黒色を表現することができる。さらに、該液晶表示装置は、高耐久性を有し信頼性が高く、長期的に高コントラストで、かつ、高い色再現性を有する液晶表示装置になる。液晶表示装置以外でも有機エレクトロルミネッセンス等に周囲光の反射防止を目的として本願の偏光素子、または偏光板は好適に用いられる。
【実施例
【0180】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、これらは例示的なものであって、本発明を何ら限定するものではない。例中にある%及び部は、特にことわらないかぎり質量基準である。
【0181】
<<実施例A>>
【0182】
(実施例A1:式(1-A4)のアゾ化合物の合成)
4-アミノ-ベンゼンスルホン酸17.3部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、4-ニトロベンゾイルクロライド18.6部を加え、40~60℃で6時間撹拌した。続いて、鉄粉を10.0g、35%塩酸を13部加え80℃で5時間撹拌し反応を完結させ、鉄粉除去後ろ過し、下記式(1-A4-1)で示されるアミノベンゾイルアミノベンゼン化合物23.4部を得た。
【化62】
【0183】
得られたアミノベンゾイルアミノベンゼン化合物(1-A4-1)23.4部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、亜硝酸ナトリウム5.5部を加え10~30℃で35%塩酸25.1部を加え、10~30℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。
そこへ、3-(2-アミノ-4-メチルフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸19.7部を加え20~30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(1-A4-2)で示されるモノアゾアミノ化合物30.7部を得た。
【化63】
【0184】
得られたモノアゾアミノ化合物(1-A4-2)30.7部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、クロロギ酸フェニル9.1部を50~70℃で6時間撹拌しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して上記式(1-A4)で示されるウレイド化合物10.0部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は423nmであった。
【0185】
(実施例A2:式(1-A11)のアゾ化合物の合成)
4-アミノ-ベンゼンスルホン酸17.3部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、3-メチル-4-ニトロベンゾイルクロライド20.0部を加え、40~60℃で6時間撹拌した。続いて、鉄粉を10.0g、35%塩酸を13部加え80℃で5時間撹拌し反応を完結させ、鉄粉除去後ろ過し、下記式(1-A11-1)で示されるアミノベンゾイルアミノベンゼン化合物24.5部を得た。
【化64】
【0186】
得られたアミノベンゾイルアミノベンゼン化合物(1-A11-1)24.5部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、亜硝酸ナトリウム5.5部を加え10~30℃で35%塩酸25.1部を加え、10~30℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。
そこへ、2-メトキシ-5-メチルアニリン11.0部を加え20~30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(1-A11-2)で示されるモノアゾアミノ化合物25.5部を得た。
【化65】
【0187】
得られたモノアゾアミノ化合物(1-A11-2)25.5部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、クロロギ酸フェニル9.1部を50~70℃で6時間撹拌しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して上記式(1-A11)で示されるウレイド化合物10.0部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は423nmであった。
【0188】
(実施例A3:式(1-A26)のアゾ化合物の合成)
4-アミノ-ベンゼンスルホン酸17.3部に代えて、4-アミノ安息香酸13.7部を用いた以外は実施例A1と同様にして上記式(1-A26)で示されるウレイド化合物10.0部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は425nmであった。
【0189】
(実施例A4:式(1-A36)のアゾ化合物の合成)
4-アミノ-ベンゼンスルホン酸17.3部に代えて、5-アミノ-2-クロロ安息香酸17.2部を用いた以外は実施例A1と同様にして上記式(1-A36)で示されるウレイド化合物9.2部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は419nmであった。
【0190】
(実施例A5:式(1-A71)のアゾ化合物の合成)
実施例A1と同様の方法で得られたアミノベンゾイルアミノベンゼン化合物(1-A4-1)23.4部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、亜硝酸ナトリウム5.5部を加え10~30℃で35%塩酸25.1部を加え、10~30℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。
そこへ2-メトキシ-5-メチルアニリン11.0部を加え20~30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(1-A71-L2)で示されるモノアゾアミノ化合物24.7部を得た。
【化66】
【0191】
5-アミノ-2-クロロ安息香酸17.2部を水300部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、4-ニトロベンゾイルクロライド18.6部を加え、40~60℃で6時間撹拌した。続いて、鉄粉を10.0g、35%塩酸を13部加え80℃で5時間撹拌し反応を完結させ、鉄粉除去後ろ過し、下記式(1-A71-R1)で示されるアミノベンゾイルアミノベンゼン化合物23.3部を得た。
【化67】
【0192】
得られたアミノベンゾイルアミノベンゼン化合物(1-A71-R1)23.3部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、亜硝酸ナトリウム5.5部を加え10~30℃で35%塩酸25.1部を加え、10~30℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。
そこへ、3-(2-アミノ-4-メチルフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸19.7部を加え20~30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(1-A71-R2)で示されるモノアゾアミノ化合物30.6部を得た。
【化68】
【0193】
得られたモノアゾアミノ化合物(1-A71-L2)23.3部とモノアゾアミノ化合物(1-A71-R2)30.6部を水600部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、クロロギ酸フェニル8.7部を50~70℃で8時間撹拌しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して上記式(1-A71)で示されるウレイド化合物10.8部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は424nmであった。
【0194】
(実施例A6:式(1-A100)のアゾ化合物の合成)
4-アミノベンゼン-1,3-ジスルホン酸25.3部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、4-ニトロベンゾイルクロライド18.6部を加え、40~60℃で6時間撹拌した。続いて、鉄粉を10.0g、35%塩酸を13部加え80℃で5時間撹拌し反応を完結させ、鉄粉除去後ろ過し、下記式(1-A100-L1)で示されるアミノベンゾイルアミノベンゼン化合物29.8部を得た。
【化69】
【0195】
得られたアミノベンゾイルアミノベンゼン化合物(1-A100-L1)29.8部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、亜硝酸ナトリウム5.5部を加え10~30℃で35%塩酸25.1部を加え、10~30℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。
そこへ、2,5-ジメチルアニリン9.7部を加え20~30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(1-A100-L2)で示されるモノアゾアミノ化合物28.3部を得た。
【化70】
【0196】
4-アミノ安息香酸11.0部を水300部に加え、冷却し10℃以下で35%塩酸25.0部を加え、次に亜硝酸ナトリウム5.5部を加え5~10℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。
そこへ2-メトキシ-5-メチルアニリン11.0部を加え10~30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(1-A100-R)で示されるモノアゾアミノ化合物16.0部を得た。
【化71】
【0197】
得られたモノアゾアミノ化合物(1-A100-L2)28.3部とモノアゾアミノ化合物(1-A100-R)16.0部を水600部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、クロロギ酸フェニル8.7部を50~70℃で8時間撹拌しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して上記式(1-A100)で示されるウレイド化合物8.9部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は424nmであった。
【0198】
(実施例A7~A12:偏光素子の作製)
実施例A1~A6で得られた上記式(1-A4)、(1-A11)、(1-A26)、(1-A36)、(1-A71)、(1-A100)の各々のアゾ化合物の0.03%及び芒硝0.1%の濃度とした45℃の水溶液(染浴)に、厚さ75μmのポリビニルアルコールを4分間浸漬した。このフィルムを3%ホウ酸水溶液中50℃で5倍に延伸し、緊張状態を保ったまま水洗、乾燥して偏光素子を得た。得られた偏光素子の極大吸収波長及び偏光率を表A1に示す。表A1の通り、これらの化合物を用いて作製した偏光素子は、いずれも高い偏光率を有していた。
【0199】
偏光素子の極大吸収波長の測定及び偏光率の算出は、分光光度計(日立製作所製 U-4100)を用いて測定した偏光入射時の各波長の偏光入射時の平行位透過率(Ky)及び各波長の偏光入射時の直交位透過率(Kz)を用いて算出した。ここで、各波長の偏光入射時の平行位透過率(Ky)とは、絶対偏光子(偏光度99.99%の偏光板)の吸収軸と偏光素子の吸収軸を平行にセットして測定した透過率であり、各波長の偏光入射時の直交位透過率(Kz)とは、絶対偏光子の吸収軸と偏光素子の吸収軸を直交にセットして測定した透過率を示す。
各波長の各波長の偏光入射時の平行位透過率及び各波長の偏光入射時の直交位透過率は、380~780nmにおいて、1nm間隔で測定した。それぞれ測定した値を用いて、下記式(I)より各波長の偏光率を算出し、380~780nmにおいて最も高い各波長の偏光入射時の偏光率と、その極大吸収波長(nm)を得た。

各波長の偏光入射時の偏光率(%)
=[(Ky-Kz)/(Ky+Kz)]×100 (I)
【0200】
【表A1】
【0201】
(比較例AB1:偏光素子の作製)
式(1-A4)の化合物に代えてC.I.Direct Orange 39を用いた以外は、実施例A7と同様に偏光素子を作製した。
【0202】
(比較例AB2:偏光素子の作製)
式(1-A4)の化合物に代えてC.I.Direct Yellow 44を用いた以外は、実施例A7と同様に偏光素子を作製した。
【0203】
画像の質を表す1つの指標として、白表示と黒表示での輝度の差を示すコントラストがある。実施例A7~A12、比較例AB1、AB2で得られた偏光素子の極大吸収波長におけるコントラストを表A2に示す。
ここで、コントラストは、各波長の偏光入射時の平行位透過率と各波長の偏光入射時の直交位透過率の比(コントラスト=極大吸収波長での各波長の偏光入射時の平行位透過率(Ky)/極大吸収波長での各波長の偏光入射時の直交位透過率(Kz))を示し、この値が大きいほど偏光板の偏光性能が優れていることを表す。なお、偏光性能の評価は、偏光素子の極大吸収波長の平行位透過率が等しくなるようにサンプルを作製し、比較を行った。
表A2に示した通り、実施例A7~A12の偏光素子はいずれも比較例AB1及びAB2の偏光素子と比較して高いコントラストを有していた。
【表A2】
【0204】
(実施例A13:ニュートラルグレー偏光板の作製)
実施例A3で得られた式(1-A26)の化合物を0.1%、C.I.Direct Red 81を0.2%、C.I.Direct Blue 274を0.05%及び芒硝0.1%の濃度とした45℃の水溶液を染浴として用いた以外は実施例A6と同様にして偏光素子を作製した。得られた偏光素子の380~700nmにおける各波長の単板平均透過率は42%、各波長の直交位の平均透過率は0.02%であり、高い偏光度を有していた。
この偏光素子の両面にポリビニルアルコール水溶液の接着剤を介してトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム:富士フィルム社製:商品名TD-80U)をラミネートし、粘着剤を用いてAR層を設けた支持体を貼付して、TAC/偏光素子/TAC/AR支持体がこの順に積層された偏光板(ニュートラルグレー偏光板)を得た。
【0205】
(実施例A14:ニュートラルグレー偏光板の作製)
実施例A4で得られた式(1-A36)の化合物を0.1%、C.I.Direct Red 81を0.2%、C.I.Direct Blue 274を0.05%及び芒硝0.1%の濃度とした45℃の水溶液を染浴として用いた以外は実施例A6と同様にして偏光素子を作製した。得られた偏光素子の380~700nmにおける各波長の単板平均透過率は42%、各波長の直交位の平均透過率は0.02%であり、高い偏光度を有していた。
この偏光素子の両面にポリビニルアルコール水溶液の接着剤を介してトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム:富士フィルム社製:商品名TD-80U)をラミネートし、粘着剤を用いてAR層を設けた支持体を貼付して、TAC/偏光素子/TAC/AR支持体がこの順に積層された偏光板(ニュートラルグレー偏光板)を得た。
【0206】
(実施例A15:ニュートラルグレー偏光板の作製)
実施例A6で得られた式(1-A100)の化合物を0.1%、C.I.Direct Red 81を0.2%、C.I.Direct Blue 274を0.05%及び芒硝0.1%の濃度とした45℃の水溶液を染浴として用いた以外は実施例A6と同様にして偏光素子を作製した。得られた偏光素子の380~700nmにおける各波長の単板平均透過率は42%、各波長の直交位の平均透過率は0.02%であり、高い偏光度を有していた。
この偏光素子の両面にポリビニルアルコール水溶液の接着剤を介してトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム:富士フィルム社製:商品名TD-80U)をラミネートし、粘着剤を用いてAR層を設けた支持体を貼付して、TAC/偏光素子/TAC/AR支持体がこの順に積層された偏光板(ニュートラルグレー偏光板)を得た。
【0207】
実施例A13~A15で得られたニュートラルグレー偏光板は、80℃、90%RHの条件下で400時間経過後も各波長の単板平均透過率に変化がなく、高温且つ高湿の状態でも長時間にわたる耐久性を示した。さらに、実施例A13~A15のニュートラルグレー偏光板は、キセノン耐光試験で200時間経過後でも各波長の単板平均透過率に変化がなく、光への長時間暴露に対する耐光性も優れていた。これらの結果から、実施例A13~A15のニュートラルグレー偏光板はいずれも優れた偏光性能を有し、かつ、耐湿性・耐熱性・耐光性を有する高性能な偏光板であることが示された。
【0208】
<<実施例B>>
【0209】
(実施例B1:式(1-B24)のアゾ化合物の合成)
7-アミノナフタレン-1,3-ジスルホン酸30.3部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、4-ニトロベンゾイルクロライド20.5部を加え、40~60℃で6時間撹拌した。続いて、鉄粉を15.0g、35%塩酸を13部加え80℃で5時間撹拌し反応を完結させ、鉄粉除去後ろ過し、下記式(1-B24-1)で示されるアミノベンゾイルアミノナフタレン化合物33.9部を得た
【化72】
【0210】
得られたアミノベンゾイルアミノナフタレン化合物(1-B24-1)33.9部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、亜硝酸ナトリウム5.5部を加え10~30℃で35%塩酸25.1部を加え、10~30℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。
そこへ2-メトキシ-5-メチルアニリン11.0部を加え20~30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(1-B24-2)で示されるモノアゾアミノ化合物32.1部を得た。
【化73】
【0211】
得られたモノアゾアミノ化合物(1-B24-2)32.1部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、クロロギ酸フェニル9.1部を50~70℃で6時間撹拌しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して上記式(1-B24)で示されるウレイド化合物10.0部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は424nmであった。
【0212】
(実施例B2:式(1-B26)のアゾ化合物の合成)
実施例B1と同様の方法で得られたられたアミノベンゾイルアミノナフタレン化合物(1-B24-1)33.9部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、亜硝酸ナトリウム5.5部を加え10~30℃で35%塩酸25.1部を加え、10~30℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。そこへ2-メトキシアニリン9.9部を加え20~30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(1-B26-2)で示されるモノアゾアミノ化合物22.3部を得た。
【化74】
【0213】
得られたモノアゾアミノ化合物(1-B26-2)22.3部を水300部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、クロロギ酸フェニル6.3部を50~70℃で6時間撹拌しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して上記式(1-B26)で示されるウレイド化合物6.7部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は413nmであった。
【0214】
(実施例B3:式(1-B29)のアゾ化合物の合成)
実施例B1と同様の方法で得られたられたアミノベンゾイルアミノナフタレン化合物(1-B24-1)33.9部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、亜硝酸ナトリウム5.5部を加え10~30℃で35%塩酸25.1部を加え、10~30℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。
そこへ3-(2-アミノ-4-メチルフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸19.7部を加え20~30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(1-B29-2)で示されるモノアゾアミノ化合物38.2部を得た。
【化75】
【0215】
得られたモノアゾアミノ化合物(1-B29-2)38.2部を水300部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、クロロギ酸フェニル8.8部を50~70℃で6時間撹拌しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して上記式(1-B29)で示されるウレイド化合物11.5部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は424nmであった。
【0216】
(実施例B4:式(1-B57)のアゾ化合物の合成)
7-アミノナフタレン-1,3-ジスルホン酸28.4部を水400部に加え、35%塩酸を29.3部加え、亜硝酸ナトリウムを6.5部加え、10~30℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。
そこへ2-メトキシアニリン11.6部を加え20~30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(1-B57-R)で示されるモノアゾアミノ化合物31.3部を得た。
【化76】
【0217】
得られたモノアゾアミノ化合物(1-B57-R)31.3部と上記式(1-B24-2)で示されるモノアゾアミノ化合物32.1部を水600部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、クロロギ酸フェニル8.7部を50~70℃で8時間撹拌しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して上記式(1-B57)で示されるウレイド化合物12.7部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は421nmであった。
【0218】
(実施例B5:式(1-B62)のアゾ化合物の合成)
上記式(1-B24-2)で示されるモノアゾアミノ化合物32.1部に代えて、上記式(1-B29-2)で示されるモノアゾアミノ化合物37.8部を用いた以外は、実施例B4と同様にして上記式(1-B62)で示されるウレイド化合物14.0部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は423nmであった。
【0219】
(実施例B6:式(1-B63)のアゾ化合物の合成)
7-アミノナフタレン-1,3-ジスルホン酸30.3部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、3-メトキシ-4-ニトロベンゾイルクロライド21.6部を加え、40~60℃で6時間撹拌した。続いて、鉄粉を15.0g、35%塩酸を13部加え80℃で5時間撹拌し反応を完結させ、鉄粉除去後ろ過し、下記式(1-B63-L1)で示されるアミノベンゾイルアミノナフタレン化合物36.2部を得た。
【化77】
【0220】
得られたアミノベンゾイルアミノナフタレン化合物(1-B63-L1)36.2部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、亜硝酸ナトリウム5.5部を加え10~30℃で35%塩酸25.1部を加え、10~30℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。
そこへ3-(2-アミノ-4-メチルフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸19.7部を加え20~30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(1-B63-L2)で示されるモノアゾアミノ化合物39.7部を得た。
【化78】
【0221】
得られたモノアゾアミノ化合物(1-B63-L2)39.7部と上記式(1-B57-R)で示されるモノアゾアミノ化合物31.3部を水600部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、クロロギ酸フェニル8.7部を50~70℃で8時間撹拌しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して上記式(1-B63)で示されるウレイド化合物14.2部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は429nmであった。
【0222】
(実施例B7:式(1-B64)のアゾ化合物の合成)
3-メトキシ-4-ニトロベンゾイルクロライド21.6部に代えて、3-メチル-4-ニトロベンゾイルクロライド20.0部を用いた以外は、実施例B6と同様にして上記式(1-B64)で示されるウレイド化合物13.5部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は422nmであった。
【0223】
(実施例B8:式(1-B94)のアゾ化合物の合成)
上記式(1-A100-R)で示されるモノアゾアミノ化合物16.0部と上記式(1-B24-2)で示されるモノアゾアミノ化合物32.1部を水600部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、クロロギ酸フェニル8.7部を50~70℃で8時間撹拌しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して上記式(1-B94)で示されるウレイド化合物9.6部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は423nmであった。
【0224】
(実施例B9:式(1-B98)のアゾ化合物の合成)
5-アミノ-2-クロロ安息香酸13.7部を水300部に加え、冷却し10℃以下で35%塩酸25.0部を加え、次に亜硝酸ナトリウム5.5部を加え5~10℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。
そこへ、2,5-ジメチルアニリン9.7部を加え10~30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(1-B98-R)で示されるモノアゾアミノ化合物17.0部を得た。
【化79】
【0225】
得られたモノアゾアミノ化合物(1-B98-R)17.0部と上記式(1-B29-2)で示されるモノアゾアミノ化合物38.2部を水600部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、クロロギ酸フェニル8.7部を50~70℃で8時間撹拌しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して上記式(1-B98)で示されるウレイド化合物11.0部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は418nmであった。
【0226】
(実施例B10:式(1-B100)のアゾ化合物の合成)
2,5-ジメチルアニリン9.7部に代えて、3-(2-アミノ-4-メチルフェノキシ)プロパン-1-スルホン酸19.7部を用いた以外は、実施例B9と同様にして上記式(1-B100)で示されるウレイド化合物14.0部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は424nmであった。
【0227】
(実施例B11:式(1-B102)のアゾ化合物の合成)
上記式(1-B24-1)で示されるアミノベンゾイルアミノナフタレン化合物33.9部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、亜硝酸ナトリウム5.5部を加え10~30℃で35%塩酸25.1部を加え、10~30℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。
そこへ、2,5-ジメチルアニリン9.6部を加え20~30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(1-B102-L2)で示されるモノアゾアミノ化合物31.1部を得た。
【化80】
【0228】
得られたモノアゾアミノ化合物(1-B102-L2)31.1部と下記式(1-B102-R)で示されるモノアゾアミノ化合物24.0部を水600部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、クロロギ酸フェニル8.7部を50~70℃で8時間撹拌しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して上記式(1-B102)で示されるウレイド化合物11.0部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は415nmであった。
【化81】
【0229】
(実施例B12:式(B-117)のアゾ化合物の合成)
7-アミノナフタレン-1,3-ジスルホン酸30.3部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、3-メチル-4-ニトロベンゾイルクロライド20.0部を加え、40~60℃で6時間撹拌した。続いて、鉄粉を15.0g、35%塩酸を13部加え80℃で5時間撹拌し反応を完結させ、鉄粉除去後ろ過し、下記式(B-117-L1)で示されるアミノベンゾイルアミノナフタレン化合物34.9部を得た
【化82】
【0230】
得られたアミノベンゾイルアミノナフタレン化合物(B-117-L1)34.9部を水400部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、亜硝酸ナトリウム5.5部を加え10~30℃で35%塩酸25.1部を加え、10~30℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。
そこへ2-メトキシ-5-メチルアニリン11.0部を加え20~30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(B-117-L2)で示されるモノアゾアミノ化合物32.1部を得た。
【化83】
【0231】
3-アミノ安息香酸11.0部を水300部に加え、冷却し10℃以下で35%塩酸25.0部を加え、次に亜硝酸ナトリウム5.5部を加え5~10℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。
そこへ2-メトキシ-5-メチルアニリン11.0部を加え10~30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(B-117-R)で示されるモノアゾアミノ化合物16.0部を得た。
【化84】
【0232】
得られたモノアゾアミノ化合物(B-117-L2)32.1部と得られたモノアゾアミノ化合物(B-117-R)16.0部を水600部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、クロロギ酸フェニル8.7部を50~70℃で8時間撹拌しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して上記式(B-117)で示されるウレイド化合物11.0部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は422nmであった。
【0233】
(実施例B13:式(B-122)のアゾ化合物の合成)
7-アミノナフタレン-1,3-ジスルホン酸28.4部を水400部に加え、35%塩酸を29.3部加え、亜硝酸ナトリウムを6.5部加え、10~30℃で1時間撹拌し、ジアゾ化した。
そこへ2-メトキシ-5-メチルアニリン11.6部を加え20~30℃で攪拌しながら、炭酸ナトリウムを加えてpH3とし、さらに攪拌してカップリング反応を完結させ、濾過し、下記式(B-122-R)で示されるモノアゾアミノ化合物25.3部を得た。
【化85】
【0234】
得られたモノアゾアミノ化合物(B-122-R)25.3部と上記式(1-A71-L2)で示されるモノアゾアミノ化合物24.7部を水600部に加え、水酸化ナトリウムで溶解し、クロロギ酸フェニル8.7部を50~70℃で8時間撹拌しウレイド化した。塩化ナトリウムで塩析し、ろ過して上記式(B-122)で示されるウレイド化合物10.0部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は425nmであった。
【0235】
(実施例B14:式(1-B37)のアゾ化合物の合成)
7-アミノナフタレン-1,3-ジスルホン酸30.3部に代えて、6-アミノ-4-(3-スルホプロポキシ)ナフタレン-2-スルホン酸36.1部を用いた以外は実施例B1と同様にして上記式(1-B37)で示されるウレイド化合物12.0部を得た。この化合物の20%ピリジン水溶液中の極大吸収波長は425nmであった。
【0236】
(実施例B15~B28:偏光素子の作製)
実施例A7~A12で用いた式(1)の各々のアゾ化合物に代えて、実施例B1~B14で得られた上記式(1-B24)、(1-B26)、(1-B29)、(1-B57)、(1-B62)、(1-B63)、(1-B64)、(1-B94)、(1-B98)、(1-B100)、(1-B102)、(B-117)、(B-122)、(1-B37)の各々のアゾ化合物を用いた以外は、実施例A7~A12と同様にして偏光素子を得た。得られた偏光素子の極大吸収波長及び偏光率は表B1に示す。表B1の通り、これらの化合物を用いて作製した偏光素子は、いずれも高い偏光率を有していた。
【表B1】
【0237】
表A2と同様に、実施例B15~B28、比較例AB1、AB2で得られた偏光素子の極大吸収波長におけるコントラストを表B2に示す。表B2に示した通り、実施例B15~B28の偏光素子はいずれも比較例AB1及びAB2の偏光素子と比較して高いコントラストを有していた。
【表B2】
【0238】
(実施例B29:ニュートラルグレー偏光板の作製)
実施例B1で得られた式(1-B24)の化合物を0.1%、C.I.Direct Red 81を0.2%、C.I.Direct Blue 274を0.05%及び芒硝0.1%の濃度とした45℃の水溶液を染浴として用いた以外は実施例B15と同様にして偏光素子を作製した。得られた偏光素子の380~700nmにおける各波長の単板平均透過率は42%、各波長の直交位の平均透過率は0.02%であり、高い偏光度を有していた。
この偏光素子の両面にポリビニルアルコール水溶液の接着剤を介してトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム:富士フィルム社製:商品名TD-80U)をラミネートし、粘着剤を用いてAR層を設けた支持体を貼付して、TAC/偏光素子/TAC/AR支持体がこの順に積層された偏光板(ニュートラルグレー偏光板)を得た。
【0239】
(実施例B30:ニュートラルグレー偏光板の作製)
実施例B3で得られた式(1-B29)の化合物を0.1%、C.I.Direct Red 81を0.2%、C.I.Direct Blue 274を0.05%及び芒硝0.1%の濃度とした45℃の水溶液を用いた以外は実施例B13と同様にして偏光素子を作製した。得られた偏光素子の380~700nmにおける各波長の単板平均透過率は42%、各波長の直交位の平均透過率は0.02%であり、高い偏光度を有していた。
この偏光素子の両面にポリビニルアルコール水溶液の接着剤を介してトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム:富士フィルム社製:商品名TD-80U)をラミネートし、粘着剤を用いてAR層を設けた支持体を貼付して、TAC/偏光素子/TAC/AR支持体がこの順に積層された偏光板(ニュートラルグレー偏光板)を得た。
【0240】
(実施例B31:ニュートラルグレー偏光板の作製)
実施例B7で得られた式(1-B64)の化合物を0.1%、C.I.Direct Red 81を0.2%、C.I.Direct Blue 274を0.05%及び芒硝0.1%の濃度とした45℃の水溶液を用いた以外は実施例B13と同様にして偏光素子を作製した。得られた偏光素子の380~700nmにおける各波長の単板平均透過率は42%、各波長の直交位の平均透過率は0.02%であり、高い偏光度を有していた。
この偏光素子の両面にポリビニルアルコール水溶液の接着剤を介してトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム:富士フィルム社製:商品名TD-80U)をラミネートし、粘着剤を用いてAR層を設けた支持体を貼付して、TAC/偏光素子/TAC/AR支持体がこの順に積層された偏光板(ニュートラルグレー偏光板)を得た。
【0241】
(実施例B32:ニュートラルグレー偏光板の作製)
実施例B10で得られた式(1-B100)の化合物を0.1%、C.I.Direct Red 81を0.2%、C.I.Direct Blue 274を0.05%及び芒硝0.1%の濃度とした45℃の水溶液を用いた以外は実施例B13と同様にして偏光素子を作製した。得られた偏光素子の380~700nmにおける各波長の単板平均透過率は42%、各波長の直交位の平均透過率は0.02%であり、高い偏光度を有していた。
この偏光素子の両面にポリビニルアルコール水溶液の接着剤を介してトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム:富士フィルム社製:商品名TD-80U)をラミネートし、粘着剤を用いてAR層を設けた支持体を貼付して、TAC/偏光素子/TAC/AR支持体がこの順に積層された偏光板(ニュートラルグレー偏光板)を得た。
【0242】
(実施例B33:ニュートラルグレー偏光板の作製)
実施例B12で得られた式(1-B117)の化合物を0.1%、C.I.Direct Red 81を0.2%、C.I.Direct Blue 274を0.05%及び芒硝0.1%の濃度とした45℃の水溶液を用いた以外は実施例B13と同様にして偏光素子を作製した。得られた偏光素子の380~700nmにおける各波長の単板平均透過率は42%、各波長の直交位の平均透過率は0.02%であり、高い偏光度を有していた。
この偏光素子の両面にポリビニルアルコール水溶液の接着剤を介してトリアセチルセルロースフィルム(TACフィルム:富士フィルム社製:商品名TD-80U)をラミネートし、粘着剤を用いてAR層を設けた支持体を貼付して、TAC/偏光素子/TAC/AR支持体がこの順に積層された偏光板(ニュートラルグレー偏光板)を得た。
【0243】
実施例B29~B33で得られたニュートラルグレー偏光板は、80℃、90%RHの条件下で400時間経過後も各波長の単板平均透過率に変化がなく、高温且つ高湿の状態でも長時間にわたる耐久性を示した。さらに、実施例B29~B33のニュートラルグレー偏光板は、キセノン耐光試験で200時間経過後でも各波長の単板平均透過率に変化がなく、光への長時間暴露に対する耐光性も優れていた。これらの結果から、実施例B29~B33のニュートラルグレー偏光板はいずれも優れた偏光性能を有し、かつ、耐湿性・耐熱性・耐光性を有する高性能な偏光板であることが示された。
【0244】
<<実施例C>>
【0245】
[実施例C1]
ケン化度99%以上のポリビニルアルコールフィルム(クラレ社製 VF-PE#6000)を40℃の温水に3分浸漬し、膨潤処理を適用し延伸倍率を1.30倍とした。水を1500質量部、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量部、式(5)の化合物である式(5-1)の化合物を0.3質量部、式(6)の化合物である式(6-3)の化合物を0.8質量部、式(1)の化合物である式(1-B150)の化合物を0.55質量部含有した45℃の染色液に、膨潤したフィルムを2分30秒間浸漬して、フィルムにアゾ化合物を含有させた。得られたフィルムをホウ酸(Societa Chimica Larderello s.p.a.社製)20g/lを含有した40℃の水溶液に1分浸漬した。浸漬後のフィルムを、5.0倍に延伸しながら、ホウ酸30.0g/lを含有した50℃の水溶液中で5分間の延伸処理を行った。得られたフィルムを、その緊張状態を保ちつつ、25℃の水に20秒間浸漬させることにより洗浄処理した。洗浄後のフィルムを70℃で9分間乾燥させ、偏光素子を得た。この偏光素子に対して、ポリビニルアルコール(日本酢ビポバール社製 NH-26)を4%で水に溶解したものを接着剤として用いて、アルカリ処理したトリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム社製 ZRD-60)をラミネートして偏光板を得た。得られた偏光板は上記偏光素子が有していた光学性能、特に各波長の単体透過率、色相、偏光度等を維持していた。この偏光板を実施例C1の測定試料とした。
【0246】
[実施例C2]
膨潤したフィルムを、水を1500質量部、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量部、式(5-1)の化合物を0.08質量部、式(6-10)の化合物を0.26質量部、式(1-B150)の化合物を0.28質量部含有した45℃の染色液に7分間処理し、アゾ化合物を含有させた以外は実施例C1と同様にして偏光板を作製した。
【0247】
[実施例C3]
膨潤したフィルムを、水を1500質量部、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量部、式(5-4)の化合物を0.04質量部、式(6-10)の化合物を0.13質量部、式(1-B150)の化合物を0.10質量部含有した45℃の染色液に8分30秒間処理し、アゾ化合物を含有させた以外は実施例C1と同様にして偏光板を作製した。
【0248】
[実施例C4]
膨潤したフィルムを、水を1500質量部、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量部、式(5-14)の化合物を0.04量部、式(6-4)の化合物を0.14質量部、式(1-B150)の化合物を0.10質量部含有した45℃の染色液に10分間処理し、アゾ化合物を含有させた以外は実施例C1と同様にして偏光板を作製した。
【0249】
[実施例C5]
膨潤したフィルムを、水を1500質量部、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量部、式(5-36)の化合物を0.04質量部、式(6-10)の化合物を0.12質量部、式(1-B150)の化合物を0.10質量部含有した45℃の染色液に8分30秒間処理し、アゾ化合物を含有させた以外は実施例C1と同様にして偏光板を作製した。
【0250】
[実施例C6]
膨潤したフィルムを、水を1500質量部、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量部、式(5-41)の化合物を0.04質量部、式(6-17)の化合物を0.12質量部、式(1-B150)の化合物を0.14質量部含有した45℃の染色液に9分間処理し、アゾ化合物を含有させた以外は実施例C1と同様にして偏光板を作製した。
【0251】
[実施例C7]
膨潤したフィルムを、水を1500質量部、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量部、式(5)の構造を有する化合物として特許文献14(特許第4825235号) 実施例1の化合物を0.13質量部、式(6-17)の化合物を0.26質量部、式(1-B150)の化合物を0.31質量部含有した45℃の染色液に7分30秒間処理し、アゾ化合物を含有させた以外は実施例C1と同様にして偏光板を作製した。
【0252】
[実施例C8]
膨潤したフィルムを、水を1500質量部、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量部、式(5-1)の化合物を0.08質量部、式(6-10)の化合物を0.30質量部、式(1-B69)の化合物を0.34質量部含有した45℃の染色液に8分15秒間処理し、アゾ化合物を含有させた以外は実施例C1と同様にして偏光板を作製した。
【0253】
[実施例C9]
膨潤したフィルムを、水を1500質量部、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量部、式(5-28)の化合物を0.27質量部、式(6-10)の化合物を0.37質量部、式(1-B69)の化合物を0.29質量部含有した45℃の染色液に8分15秒間処理し、アゾ化合物を含有させた以外は実施例C1と同様にして偏光板を作製した。
【0254】
[実施例C10]
膨潤したフィルムを、水を1500質量部、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量部、式(5-28)の化合物を0.13質量部、式(6-10)の化合物を0.21質量部、式(1-B69)の化合物を0.21質量部含有した45℃の染色液に3分間処理し、アゾ化合物を含有させた以外は実施例C1と同様にして偏光板を作製した。
【0255】
[実施例C11]
膨潤したフィルムを、染色液浸漬する時間を1分15秒間処理し、アゾ化合物を含有させた以外は実施例C1と同様にして偏光板を作製した。
【0256】
[実施例C12]
膨潤したフィルムを、水を1500質量部、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量部、式(5-22)の化合物を0.16質量部、式(6-10)の化合物を0.26質量部、式(1-B69)の化合物を0.27質量部含有した45℃の染色液に7分間処理し、アゾ化合物を含有させた以外は実施例C1と同様にして偏光板を作製した。
【0257】
[実施例C13]
膨潤したフィルムを、水を1500質量部、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量部、式(5-26)の化合物を0.61質量部、式(6-10)の化合物を0.30質量部、式(1-B69)の化合物を0.3質量部含有した45℃の染色液に8分15秒間処理し、アゾ化合物を含有させた以外は実施例C1と同様にして偏光板を作製した。
【0258】
[実施例C14]
膨潤したフィルムを、水を1500質量部、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量部、式(5-7)の化合物を0.15質量部、式(6-25)の化合物を0.27質量部、式(1-B69)の化合物を0.27質量部含有した45℃の染色液に9分30秒間処理し、アゾ化合物を含有させた以外は実施例C1と同様にして偏光板を作製した。
【0259】
[実施例C15]
膨潤したフィルムを、水を1500質量部、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量部、式(5)の構造を有するアゾ化合物としてC.I.Direct Red 117を0.04質量部、式(6-17)の化合物を0.24質量部、式(1-A19)の化合物を0.11質量部含有した45℃の染色液に4分40秒間処理し、アゾ化合物を含有させた以外は実施例C1と同様にして偏光板を作製した。
【0260】
[実施例C16]
膨潤したフィルムを、水を1500質量部、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量部、式(5-28)の化合物を0.21質量部、式(6-17)の化合物を0.29質量部、式(1-A115)の化合物を0.29質量部含有した45℃の染色液に6分10秒間処理し、アゾ化合物を含有させた以外は実施例C1と同様にして偏光板を作製した。
【化86】
【0261】
[実施例C17]
膨潤したフィルムを、水を1500質量部、トリポリリン酸ナトリウムを1.5質量部、式(5-22)の化合物を0.20質量部、式(6-17)の化合物を0.30質量部、式(1-A74)の化合物を0.30質量部含有した45℃の染色液に7分15秒間処理し、アゾ化合物を含有させた以外は実施例C1と同様にして偏光板を作製した。
【0262】
[比較例C1]
一般的な染料系偏光板として、ニュートラルグレー色を有するポラテクノ社製の高透過率染料系偏光板SHC-115を入手し、測定試料とした。
【0263】
[比較例C2]
一般的な染料系偏光板として、ニュートラルグレー色の、高コントラストを有するポラテクノ社製の染料系偏光板SHC-128を入手し、測定試料とした。
【0264】
[比較例C3]
染料系偏光板に関する特許文献15の実施例1の通りに、偏光板を作製した。
【0265】
[比較例C4]
染料系偏光板に関する特許文献16の実施例3の通りに、偏光板を作製した。
【0266】
[比較例C5]
染料系偏光板に関する特許文献17の実施例1の通りに、偏光板を作製した。
【0267】
[比較例C6]
染料系偏光板に関する特許文献18の実施例15 No.1の通りに、偏光板を作製した。
【0268】
[比較例C7~C12]
特許文献19の比較例1の製法に従い、ただし、ヨウ素含有時間を、比較例C7において5分30秒間、比較例C8において4分45秒間、比較例C9において4分15秒間、比較例C10において3分30秒間、比較例C11において4分間、及び、比較例C12において5分15秒間とし、ヨウ素系偏光板、即ちアゾ化合物を含まない偏光板を作製し、測定試料とした。
【0269】
[比較例C13]
平行位においてペーパーホワイト色を示すポラテクノ社製のヨウ素系偏光板SKW-18245Pを入手し、測定試料とした。
【0270】
[評価]
実施例C1~C17および比較例C1~C13で得られた測定試料の評価を次のようにして行った。
(a)各波長の単体透過率Ts、各波長の平行位透過率Tp、および各波長の直交位透過率Tc
各測定試料の各波長の単体透過率Ts、各波長の平行位透過率Tp、および各波長の直交位透過率Tcを、分光光度計(日立製作所社製“U-4100”)を用いて測定した。ここで、各波長の単体透過率Tsは、測定試料を1枚で測定した際の各波長の透過率である。各波長の平行位透過率Tpは、2枚の測定試料をその吸収軸方向が平行となるように重ね合せて測定した各波長の分光透過率である。各波長の直交位透過率Tcは、2枚の偏光板をその吸収軸が直交するように重ね合せて測定した分光透過率である。測定は、400~700nmの波長にわたって行った。測定によって得られた結果より求めた平行位透過率Tpおよび直交位透過率Tcの各々の420~480nmにおける各波長の平均値、520~590nmにおける各波長の平均値、および600~640nmにおける各波長の平均値を表C1に示す。
【0271】
(b)視感度補正後の単体透過率Ys、視感度補正後の平行位透過率Yp、および視感度補正後の直交位透過率Yc
各測定試料の視感度補正後の単体透過率Ys(%)、視感度補正後の平行位透過率Yp(%)、および視感度補正後の直交位透過率Yc(%)をそれぞれ求めた。視感度補正後の単体透過率Ys(%)、視感度補正後の平行位透過率Yp(%)、および視感度補正後の直交位透過率Yc(%)は、400~700nmの波長領域で、所定波長間隔dλ(ここでは5nm)おきに求めた上記各波長の単体透過率Ts、各波長の平行位透過率Tp、および各波長の直交位透過率Tcのそれぞれについて、JIS Z 8722:2009に従って視感度に補正した透過率である。具体的には、上記各波長の単体透過率Ts、各波長の平行位透過率Tp、および各波長の直交位透過率Tcを、下記式(V~VII)に代入して、それぞれ算出した。なお、下記式(V~VII)中、Pλは標準光(C光源)の分光分布を表し、yλは2度視野等色関数を表す。結果を表C1に示す。
【数1】
【0272】
(c)コントラスト
同一の測定試料を2枚用いて測定される視感度補正後の平行位透過率と直視感度補正後の交位透過率との比(Yp/Yc)を算出することにより、コントラストを求めた。結果を表C1に示す。
【0273】
【表C1】
【0274】
(d)2つの波長帯域の各波長の平均透過率の差の絶対値
表C2には、各測定試料の各波長の平行位透過率Tpおよび各波長の直交位透過率Tcの各々の520~590nmにおける各波長の平均値と420~480nmにおける各波長の平均値との差の絶対値を示し、および520~590nmにおける各波長の平均値と600~640nmにおける各波長の平均値との差の絶対値を示す。
【表C2】
【0275】
表C1および表C2に示されるように、実施例C1~C17の測定試料の各波長の平行位透過率Tpは、520~590nmにおける各波長の平均値が30%以上であり、高い透過率を有していた。さらに、各波長の平行位透過率Tpは、420~480nmにおける各波長の平均値と、520~590nmにおける各波長の平均値との差が絶対値として2.5%以下であり、かつ、520~590nmにおける各波長の平均値と、590~640nmにおける各波長の平均値との差が絶対値として3.0%以下であり、両者ともに非常に低い値であった。又、各波長の直交位透過率Tcは、420~480nmにおける各波長の平均値と、520~590nmの各波長の平均値との差が絶対値として1.0%以下であり、かつ、520~590nmの各波長の平均透過率と、600~640nmにおける各波長の平均値との差が絶対値として1.0%以下であり、両者ともに非常に低い値であった。よって、実施例C1~C17で得られた測定試料は、各波長の平均透過率がほぼ一定であることが示された。
一方、比較例C1~C6は、表C2に示される各波長の平行位透過率Tpの上記波長帯域間の平均値の差の絶対値、および、各波長の直交位透過率Tcの上記波長帯域間の平均値の差の絶対値のうちの少なくともいずれかが高い値を示した。
【0276】
(e)視感度補正後の偏光度ρy
各測定試料の視感度補正後の偏光度ρyを、以下の式に、視感度補正後の平行位透過率Ypおよび視感度補正後の直交位透過率Ycを代入して求めた。その結果を表C3に示す。

ρy={(Yp-Yc)/(Yp+Yc)}1/2×100 式(VIII)
【0277】
(f)色度a*値およびb*値
各測定試料について、JIS Z 8781-4:2013に従って、各波長の単体透過率Ts測定時、各波長の平行位透過率Tp測定時および各波長の直交位透過率Tc測定時の各々における色度a*値およびb*値を測定した。測定には、上記の分光光度計を使用し、透過色、反射色共に室外側から入射して測定した。光源には、C光源を用いた。結果を表C3に示す。ここで、a*-sおよびb*-s、a*-pおよびb*-p並びにa*-cおよびb*-cは、各々単体透過率Ts、平行位透過率Tpおよび直交位透過率Tcの測定時における色度a*値およびb*値にそれぞれ対応する。
【0278】
(g)色の観察
各測定試料について、白色の光源の上に、同一の測定試料を、平行位と直交位のそれぞれの状態で2枚重ね、その際に観察された色を調査した。観察は、10人の観察者が目視により行い、最も多く観察された色を表C3に示す。なお、表C3中、平行位の色は、同一試料2枚を、その吸収軸方向が互いに平行となるように重ねた状態(白表示時)での色を意味し、直交位の色は同一試料2枚を、その吸収軸方向が互いに直交するように重ねた状態(黒表示時)での色を意味する。基本的に、偏光色は、平行位の色は「白」であり、直交位の色は「黒」ではあるが、実施例では、例えば、黄色味を帯びた白を「黄」、青紫色を帯びた黒を「青紫」と示す。
【0279】
【表C3】
【0280】
表C3に示されるように、実施例C1~C17の測定試料は、視感度補正後の単体透過率において35%以上を有していた。また、実施例C1~C17の測定試料は、白と黒とを十分に表現できることが分かった。特に、視感度補正単体透過率が40~42%の時には99%以上の高い偏光度を有していた。さらに、実施例C1~C15及びC17の測定試料は、a*-s、b*-s、a*-p各々の絶対値は1.0以下であり、b*-pの絶対値は2.0以下であり、非常に低い値を示していた。実施例C1~C17の測定試料は、目視で観察した場合にも、平行位で高品位な紙のような白色を表現していた。又、波長帯域420nm~480nm、520nm~590nm、および600nm~640nmの各波長における直交位透過率が1%以下又は偏光度は約97%以上であることから黒色を表現していた。一方、比較例C1~C12は、a*-s、b*-s、a*-p、b*-p、a*-cおよびb*-cの少なくともいずれかが高い値を示していた。
【0281】
以上より、本発明の偏光素子は、高い単体透過率および平行位透過率を維持しつつも、平行位で高品位な紙のような白色を表現でき、かつ、単体で着色のない高品位な中性色(ニュートラルグレー)を有する色相であることが示された。さらに、本発明の偏光素子は、高い透過率を維持し、平行位で無彩色性を発現していることに加えて、高い偏光度も兼ね備えていることが分かる。さらに、本発明の偏光素子は、直交位でも、高級感のある無彩色な黒を示す偏光素子を得ることが可能になっていることが分かる。
【0282】
(h)耐久性試験
実施例C1~C17および比較例C7~C13の測定試料を、85℃、相対湿度85%RHの環境に240時間に適用した。その結果、実施例C1~C17の測定試料は透過率や色相の変化は見られなかった。これに対し、比較例C7~C13の視感度補正後の単体透過率は2%以上上昇し、偏光度が10%以上低下し、b*-cは-10より低くなり、見た目の色として著しく青色に変化し、特に2枚の測定試料を直交位に配置した場合(黒表示時)には大いに青色を呈色した。したがって、実施例C1~C17は高い耐久性を有していることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0283】
本発明の偏光板は、従来の偏光板よりも高コントラストかつ高耐久性の偏光板であり、高耐久が要求される車載ディスプレイ、液晶プロジェクター、OLED等で好適に用いる事ができる。従来の偏光板で問題となっていた耐久性と高精細化に要求される高コントラストの両立が本発明によって可能となる。
【0284】
一態様において、本発明に係る偏光素子は、高透過率および高偏光度を有するとともに、白表示時および黒表示時の両方において無彩色であり、特に白表示時には高品位な白色を呈する高性能な無彩色偏光素子並びにこれを用いた無彩色偏光板および液晶表示装置であり、極めて有用である。