(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】多層防曇構成物及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
G02C 7/00 20060101AFI20230809BHJP
A42B 3/24 20060101ALI20230809BHJP
B32B 23/14 20060101ALI20230809BHJP
G02B 1/04 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
G02C7/00
A42B3/24
B32B23/14
G02B1/04
(21)【出願番号】P 2019563758
(86)(22)【出願日】2018-05-15
(86)【国際出願番号】 US2018032667
(87)【国際公開番号】W WO2018213246
(87)【国際公開日】2018-11-22
【審査請求日】2021-04-23
(32)【優先日】2017-05-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】512225379
【氏名又は名称】セラニーズ・インターナショナル・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100129458
【氏名又は名称】梶田 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100196597
【氏名又は名称】横田 晃一
(72)【発明者】
【氏名】パーカー,ケビン
(72)【発明者】
【氏名】マーシャル,ジョアンナ
【審査官】横川 美穂
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-252258(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0079381(US,A1)
【文献】国際公開第2016/028627(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0009056(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0010572(US,A1)
【文献】特表平10-510596(JP,A)
【文献】米国特許第05806102(US,A)
【文献】米国特許第05500953(US,A)
【文献】中国特許出願公開第104977730(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02C 7/00
A42B 3/24
B32B 23/14
G02B 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層防曇構成物であって、
60~95重量%のセルロースアセテート
、及び
トリス-クロロプロピルホスフェートを含有する5~40重量%の可塑剤を含み、対向する主平坦面を有する防曇層
であって、前記防曇層が、セルロースアセテートプロピオネート、及び/又はセルロースプロピオネート、及び/又はジエチルフタレートを実質的に含まない、前記防曇層;
ポリカーボネートを含み、多層防曇構成物を形成する前記防曇層に対して少なくとも部分的に実質的に共平面に配向された対向する主平坦面を有する保護層であって、前記防曇層と前記保護層の間に空隙を画定するように構成されている前記保護層;
並びに
前記多層防曇構成物を通って伸長するコネクタ
であって、前記保護層と同じ組成を有する前記コネクタ;
を含む、前記多層防曇構成物。
【請求項2】
前記防曇層が、ASTM-D1003(2016年版又は同等のもの)によって測定して、10秒より長
い曇り時間
(曇りが形成されるのに要する時間)、及び/又は0.1%~4.0%の範囲のヘーズ値を有する、請求項1に記載の防曇構成物。
【請求項3】
前記防曇層が、ASTM-D1003(2016年版又は同等のもの)によって測定して20秒より長い曇り時間
(曇りが形成されるのに要する時間)、及び0.1%~3.0%の範囲のヘーズ値を有する、請求項1に記載の防曇構成物。
【請求項4】
前記防曇層が、ASTM-D1003(2016年版又は同等のもの)によって測定して30秒より長い曇り時間
(曇りが形成されるのに要する時間)、及び0.1%~2.5%の範囲のヘーズ値を有する、請求項1に記載の防曇構成物。
【請求項6】
多層防曇構成物であって、
60重量%~95重量%のセルロースアセテート、及び
トリス-クロロプロピルホスフェートを含有する5~40重量%の可塑剤を含む防曇層
であって、前記防曇層が、セルロースアセテートプロピオネート、及び/又はセルロースプロピオネート、及び/又はジエチルフタレートを実質的に含まない、前記防曇層;
保護層であって、前記防曇層に対して共平面に配向され、前記防曇層と前記保護層の間に空隙を画定するように前記防曇層に対して離隔されており、ポリカーボネートを含む前記保護層;
前記防曇層及び前記保護層を通って伸長して、その配向を固定するコネクタであって、前記保護層と同じ組成を有する、前記コネクタ;
を含み;
前記防曇層は、ASTM-D1003(2016年版又は同等のもの)によって測定して、10秒より長い曇り時間
(曇りが形成されるのに要する時間)、及び0.1%~4.0%の範囲のヘーズ値を有し;そして
前記保護層は、ASTM-D1003(2016年版又は同等のもの)によって測定して0.1%~4.0%の範囲のヘーズ値を有する、前記多層防曇構成物。
【請求項7】
防曇層を含む多層防曇構成物の製造方法であって、
(a)セルロースアセテート、及び
トリス-クロロプロピルホスフェートを含有する可塑剤、及び溶媒を混合してドープを形成する工程;
(b)前記ドープをキャストして前駆体層を形成する工程;
(c)前駆体フィルムを
、苛性溶液と接触させて処理された層を形成する工程;
(d)前記処理された層を洗浄して洗浄された層を形成する工程;
(e)前記洗浄された層を乾燥させて前記防曇層を形成する工程;
並びに
(f)コネクタを使用して
、ポリカーボネートを含み、対向する主平坦面を有する保護層を
、前記防曇層に取り付けて多層構造を形成する工程;
を含み、
前記防曇層は、60~95重量%のセルロースアセテート、及びトリス-クロロプロピルホスフェートを含有する5~40重量%の可塑剤を含み;前記防曇層は、セルロースアセテートプロピオネート、及び/又はセルロースプロピオネート、及び/又はジエチルフタレートを実質的に含まず;
前記保護層は前記防曇層に対して少なくとも部分的に実質的に共平面に構成され;
前記コネクタは
、前記多層構造を通って伸長
し、
前記保護層と同じ組成を有し;
前記保護層は、前記防曇層と前記保護層の間に空隙を画定するように前記防曇層に対して離隔されている、前記方法。
【請求項8】
防曇層を含む多層防曇構成物の製造方法であって、
(a)セルロースアセテート、及び
トリス-クロロプロピルホスフェートを含有する可塑剤、及び場合によっては酸化防止剤及び/又は熱安定剤を含む
、ペレットを押出して前駆体層を形成する工程;
(b)前記前駆体層を苛性溶液と接触させて処理された層を形成する工程;
(c)前記処理された層を洗浄して洗浄された層を形成する工程;
(d)前記洗浄された層を乾燥させて前記防曇層を形成する工程;
並びに
(e)コネクタを使用して対向する主平坦面を有する保護層を前記防曇層に取り付けて多層構造を形成する工程;
を含み、
前記防曇層は、60~95重量%のセルロースアセテート、及びトリス-クロロプロピルホスフェートを含有する5~40重量%の可塑剤を含み;前記防曇層は、セルロースアセテートプロピオネート、及び/又はセルロースプロピオネート、及び/又はジエチルフタレートを実質的に含まず;
前記保護層は前記防曇層に対して少なくとも部分的に実質的に共平面に構成され
;
前記コネクタは
、前記多層構造を通って伸長
し、
前記保護層と同じ組成を有し;そして
前記保護層は、前記防曇層と前記保護層の間に空隙を画定するように前記防曇層に対して離隔されている、前記方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本出願は2017年5月18日に出願された「多層防曇構成物及びその製造方法」と題された米国特許出願第15/598,855号(その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に関連し、それに対する優先権を主張する。
【0002】
[0002]本発明は、概して多層防曇構成物、及び多層防曇構成物の製造方法に関する。特に、本発明は、セルロースアセテート防曇層(可塑剤の移行が少ない)及び保護層を含む多層防曇構成物に関する。
【背景技術】
【0003】
[0003]フィルムは、透明基材の1つ以上の物理的特性を改善するために、レンズ、ゴーグル、ヘルメット、及びバイザーのような透明基材にしばしば適用される。多層フィルム構成物は、複数の所望の特性の組み合わせを必要とする用途において使用することができる。例えば、1つの層によって改善された構造又は耐久性を提供することができ、他の層によって曇りを抑制することができる。このような層の組み合わせは、改善された強度/耐久性及び防曇特性を有する構成物をもたらす。
【0004】
[0004]多くの防曇フィルムが公知である。例えば、ポリウレタン又はシラン被覆は、防曇特性を付与するために、例えばそれらの水滴の生成を抑止するために、接着剤を用いるか又は用いないで、それらの間を離隔することなく基材に直接的に適用することができる。しかしながら、使用中に、このような層は互いから離隔して、性能及び/又は耐久性の問題を引き起こす可能性がある。
【0005】
[0005]他の従来の防曇フィルムは、一体構造を使用する。これらの防曇フィルムは、セルロースアセテート含有基材を処理して防曇特性を付与することによって形成することができる。セルロースアセテート基材は、通常は、セルロースアセテートと、1種類以上の特定の可塑剤、例えば、ジエチルフタレートのようなフタレートとを組み合わせることによって形成される。
【0006】
[0006]しかしながら、幾つかの可塑剤の使用はしばしば、多層フィルム構成物の他の層、及び/又は、オートバイヘルメットのようなハウジングに対するそれらの配向を固定するために層を通って伸長するピン又はコネクタのような構造部材との適合性の問題を引き起こす。例えば、ジエチルフタレートが可塑剤であり、ピン又はコネクタ(又は場合によっては保護層)が防曇層中のジエチルフタレートと接触する場合には、ジエチルフタレートは、多層構成物を通って伸長するピン又はコネクタの材料を劣化させることがある。幾つかの場合においては、防曇層を通ってピンを伸長させることによって、ピンが防曇フィルムの中央部分(可塑剤の多くが存在し得る)に接触する。この接触は、ピンへの可塑剤の移行をもたらす。幾つかの場合においては、可塑剤が他の層中に移行することもある。この移行は、望ましくないことに劣化を引き起こして、脆性及び亀裂、並びに曇り又は透明性の欠如をもたらす可能性がある。幾つかの場合においては、他の可塑剤、例えば、グリセロールトリベンゾエート、ベンジルベンゾエート、(アセチル)トリエチルシトレートは、多層フィルム構成物の透明度に有害な影響を及ぼす大きな曇りの問題の一因となることがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
[0007]前述の欠点に鑑みて、可塑剤の移行に起因する劣化、脆性、及び曇りが排除されるか、又は最小に抑えられる、保護及び防曇特性を有する多層フィルム構成物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
[0008]一態様においては、本発明は、例えば60重量%~95重量%のセルロースアセテート、及び例えば5~40重量%の可塑剤を含む防曇層と、多層防曇構成物を形成するように防曇層に対して少なくとも部分的に実質的に共平面に(coplanar)配向された好ましくはポリカーボネートを含む保護層とを含む多層防曇構成物に関する。防曇層及び保護層は、それぞれ、対向する主平坦面(major planar surfaces)を有する。防曇構成物は、多層構造を通って伸長するコネクタを更に含み、コネクタは、好ましくは保護層と同じ組成を有する。防曇層及び保護層の構成により、それらの間に空隙を画定することができる。可塑剤は、好ましくはハロアルキルホスフェート、好ましくはクロロアルキルホスフェートである。例としては、トリス-クロロアルキルホスフェート、例えばトリス-クロロプロピルホスフェートが挙げられる。防曇層には、(アセチル)トリエチルシトレート、トリアセチン、トリフェニルホスフェート、ジエチルフタレート、グリセロールトリベンゾエート、ポリエチレングリコール、ジメチルセバケート、アセトフェノン、ベンジルベンゾエート、N-エチル-トルエンスルホンアミド、ジブチルシトレート、ジイソオクチルアジペート、フタレートエステル、ポリオールエステル、及びこれらの混合物からなる群から選択される5重量%未満の可塑剤を含ませることができ、及び/又はセルロースアセテートプロピオネート及び/又はセルロースプロピオネートを実質的に含ませなくてよい。防曇層は、実質的にジエチルフタレートを含ませなくてよい。防曇層は、ASTM-D1003(2016年版、又は同等のもの)によって測定して、10秒より長く、好ましくは20秒より長く、より好ましくは30秒より長い曇り時間(fog time)、及び/又は0.1%~4.0%の範囲のヘーズ値を有し得る。構成物は、好ましくは防曇フィルムと保護フィルムとの間に接着剤層を含まない。防曇構成物中の可塑剤にはトリス-クロロプロピルホスフェートを含ませることができ、防曇層は20秒より長い曇り時間及び0.1%~3.0%の範囲のヘーズ値を有する。防曇構成物中の可塑剤にはトリス-クロロプロピルホスフェートを含ませることができ、防曇層は30秒より長い曇り時間及び0.1%~2.5%の範囲のヘーズ値を有する。
【0009】
[0009]一態様においては、本発明は、防曇層を含む多層防曇構成物の製造方法であって、セルロースアセテート、及びハロアルキルホスフェートを含む可塑剤、並びに溶媒を混合してドープを形成する工程;ドープをキャストして前駆体層を形成する工程;前駆体フィルムを、好ましくは0.5分~20分の範囲の滞留時間及び/又は40℃~100℃の範囲の温度で苛性溶液と接触させて処理された層を形成する工程;処理された層を洗浄して洗浄された層を形成する工程;洗浄された層を乾燥させて防曇層を形成する工程;及び、コネクタを使用して対向する主平坦面を有する保護層を防曇層に取り付けて多層構造を形成する工程;を含む上記方法に関する。保護層は、防曇層に対して少なくとも部分的に実質的に共平面に構成され、コネクタは多層構造を通って伸長する。
【0010】
[0010]一態様においては、本発明は、防曇層を含む多層防曇構成物の製造方法であって、セルロースアセテート、及びハロアルキルホスフェートを含む可塑剤、並びに場合によっては酸化防止剤及び/又は熱安定剤を含むペレットを押出して前駆体層を形成する工程;前駆体層を苛性溶液と接触させて処理された層を形成する工程;処理された層を洗浄して洗浄された層を形成する工程;洗浄された層を乾燥させて防曇層を形成する工程;及び、コネクタを使用して対向する主平坦面を有する保護層を防曇層に取り付けて多層構造を形成する工程;を含む上記方法に関する。保護層は、防曇層に対して少なくとも部分的に実質的に共平面に構成され、コネクタは多層構造を通って伸長する。
【0011】
[0011]下記において、添付の図面を参照して本発明を詳細に記載する。ここで、同様の数字は同様の部品を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】[0012]
図1は、本発明によるバイザーの一態様の斜視図を示す。
【
図2】[0013]
図2は、
図1の態様のコネクタ機構の拡大部分図を示す。
【
図3】[0014]
図3は、
図1の3-3線に沿った
図1のバイザーの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
[0015]保護レンズ用途(例えば、レンズ、シールド、ゴーグル、及びバイザー)において有用な多層フィルム構成物は、しばしば、保護層、及びベース基材に接着又は接続されている曇り抵抗(防曇)層を含む。ここで、防曇層と保護層の間に空隙を画定すると、得られる多層フィルム構成物は、防曇層中に存在する可塑剤によって引き起こされ得る層劣化の最小化又は排除を示すことが見出された。また、特定の防曇配合物を使用すると、前述の劣化を最小にするか又は排除する防曇層が提供されることも見出された。劣化に関連する改善に加えて、本発明の防曇層は、透明度の改善、例えばヘーズ、脆性、例えばクラッキングの減少、及び鹸化性を与える。
【0014】
多層防曇構成物
[0016]本発明の多層防曇構成物は、防曇層及び保護層を含む。防曇層は、セルロース、及び特定の可塑剤、例えば1種類以上の特定の可塑剤から形成され、及び/又はそれらを含む。防曇層及び保護層は、それぞれ対向する主平坦面を有する。保護層の主平坦面は、防曇層に対して(少なくとも部分的に)実質的に共平面に構成又は配向されている。保護層及び防曇層は互いから離隔してもよく、その構成は2つの層の間に空隙を画定する。コネクタ、例えば、1つ以上のコネクタを、多層構造を通って、例えば、防曇層、空隙、及び保護層を通って伸長させることができ、これにより多層防曇構成物が形成される。理論に束縛されるものではないが、2つの層によって画定される空隙は、防曇層と保護層との間に実際には接触がある従来の構成と比較して、可塑剤に対して少なくとも部分的なバリアを提供すると考えられる。防曇層との接触を最小にすることにより、他の成分に対する可塑剤の有害な影響が最小化(又は排除)される。一態様においては、本発明は、上述のように防曇層及び保護層(ポリカーボネートを含む)を含む多層防曇構成物に関し、防曇層は、10秒より長い曇り時間、及び0.1%~4.0%の範囲のヘーズ値を有し、保護層は0.1%~4.0%の範囲のヘーズ値を有する。
【0015】
[0017]通常は、「ヘーズ値」又は「ヘーズ」は、鹸化フィルムのヘーズ値を指す。
[0018]また、本発明においては、防曇層の特定の配合によって、保護層及び/又はコネクタと高度に適合性である防曇層がもたらされる。多くの防曇層製造プロセスにおいては、前駆体層、例えば、それから実際の防曇層が形成されるベースフィルムは、セルロースアセテート及び可塑剤を組み合わせることにより、好ましくはセルロースアセテート、可塑剤、及び溶媒を含むドープを溶液キャストすることによって製造することができる。前駆体層は、使用中に(水をフィルム上に溜まらせるのとは対照的に)多少の水分を防曇層中に浸透させるか又は吸収させる防曇層を形成するのに有効な条件下において、苛性溶液、例えば、水酸化カリウム溶液などの塩基性溶液で処理される。特定の可塑剤とセルロースアセテートとの組み合わせは、防曇層を形成するために使用すると、劣化に関して従来の多層構成物よりも予期しない程に性能に優れた多層防曇構成物を提供することも見出された。可塑剤の分解が軽減されるので、驚くべきことに保護層の透明度もまた改善されると考えられる。更に、本発明の配合物は、保護層の物理的特性、例えばヘーズ、脆性、及びクラッキングを改善することが見出された。対照的に、防曇層において従来の可塑剤/セルロースアセテートの組み合わせを用いる多層構成物、例えば、ジエチルフタレート、グリセリンエステル、及びトリフェニルホスフェートを使用するものは、(1)防曇層からの可塑剤の移行を引き起こして、これにより多層防曇構成物の他の成分の劣化をもたらし;(2)劣った鹸化(これは、得られる防曇特性に有害な影響を与える)をもたらし;及び/又は(3)保護層の物理的特性、例えば、ヘーズ、脆性、及びクラッキングに悪影響を及ぼす。フタレート可塑剤、例えば、ジエチルフタレートは、セルロースアセテートを使用する用途において通常的に使用されることに留意されたい。
【0016】
[0019]一態様においては、可塑剤は、ハロアルキルホスフェート、好ましくはクロロアルキルホスフェートを含む。幾つかの態様においては、可塑剤は、トリス-クロロアルキルホスフェート、例えばトリス-クロロプロピルホスフェートである。
【0017】
[0020]防曇層には、存在させる場合には、少量の分解性可塑剤、例えばフタレート可塑剤;グリセリンエステル可塑剤;及び/又はプロピレンカーボネートを含ませることができる。具体例としては、(アセチル)トリエチルシトレート、トリアセチン、トリフェニルホスフェート、ジエチルフタレート、グリセロールトリベンゾエート、ポリエチレングリコール、ジメチルセバケート、アセトフェノン、ベンジルベンゾエート、N-エチル-トルエンスルホンアミド、ジブチルシトレート、ジイソオクチルアジペート、フタレートエステル、ポリオールエステル、及びそれらの混合物が挙げられる。例えば、防曇層には、5重量%未満、例えば4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、又は2重量%未満の分解性可塑剤を含ませることができる。幾つかの態様においては、防曇層は、分解性可塑剤を実質的に含まず、例えば分解性可塑剤を実質的に有しない。特に、防曇層は、分解性可塑剤を実質的に含まず、例えば、ジエチルフタレート及び/又はグリセロールトリベンゾエートを実質的に含まない。
【0018】
[0021]幾つかの態様においては、防曇層は、1重量%未満、例えば0.5重量%未満、0.1重量%未満、又は0.01重量%未満のセルロースアセテートプロピオネート及び/又はセルロースプロピオネートを含む。
【0019】
[0022]幾つかの場合においては、多層防曇構成物は、本明細書に言及するように離隔されている防曇層及び保護層を含む。防曇層は、ASTM-D1003(2016年版又は同等のもの)によって測定して、10秒より長い曇り時間、及び0.1%~4.0%の範囲のヘーズ値を有し得、保護層は、ASTM-D1003(2016年版又は同等のもの)によって測定して0.1%~4.0%の範囲のヘーズ値を有し得る。更なる範囲及び限界は本明細書に開示する。多層防曇構成物には、(その配向を固定するために)防曇層及び保護層を通って伸長するコネクタを含ませることができる。
[0023]好ましい態様においては、多層防曇構成物は、60重量%~95重量%のセルロースアセテート、及び5~40重量%の可塑剤を含む。
【0020】
防曇層/保護層
[0024]理論に束縛されるものではないが、前駆体層の特定の(苛性)処理は、セルロースアセテートのアセチル置換度を変化、例えば減少させて、その防曇特性を増大させる。特定の苛性処理を使用して本明細書中で議論される特定の成分から形成される前駆体を処理すると、複数の性能特性の非常に望ましい組み合わせを有する独特の防曇構成物が形成される。苛性処理条件、例えば、前駆体フィルムの厚さ及び/又は苛性処理時間に応じて、得られる防曇フィルムの置換度を、フィルム全体にわたって実質的に一定にすることができ、又はフィルムの対向する主平坦面からフィルムの中心の共平面領域(coplanar region)に向かって増加させることができる。このように前駆体フィルムの置換度を変更、例えば低減することにより、防曇構成物の主平坦面近傍の親水性が増大し、水吸収性が増大し、防曇特性が向上する。
【0021】
[0025]一態様においては、防曇層は、対向する主平坦面、及び中央の共平面領域を有する。中央の共平面領域は、対向する主平坦面の間に配置される。幾つかの態様においては、防曇層中のセルロースアセテートは、対向する主平坦面から中央の共平面領域に向かって増加する置換度を有する。すなわち、防曇層は、「減少する置換度勾配」、例えば、防曇層の外側平坦面においてより小さく、防曇層の中心の共平面領域に向かって増加する置換度を有し得る。一態様においては、対向する主平坦面の1以上における置換度は、2.6未満、例えば2.55未満、2.5未満、2.0未満、1.5未満、1.0未満、又は0.5未満である。下限に関しては、対向する主平坦面の1以上における置換度は、少なくとも0.1、例えば少なくとも0.2、少なくとも0.3、又は少なくとも0.5であり得る。一態様においては、対向する主平坦面の1以上における置換度は、実質的にゼロ、例えば0~0.5又は0~0.25である。範囲に関しては、対向する主平坦面の1以上における置換度は、0~2.6、例えば0~2.55、0.1~2.5、0.2~2、又は0.3~1.5の範囲であり得る。幾つかの態様においては、中央の共平面領域における置換度は、2.0~2.6、例えば2.0~2.55、2.1~2.55、2.2~2.55、又は2.3~2.55の範囲である。上限に関しては、中央の共平面領域における置換度は、2.6未満、例えば2.55未満、2.5未満、2.4未満、2.3未満、又は2.2未満であるが、好ましくは少なくとも2.0、例えば少なくとも2.1、又は少なくとも2.3であり得る。防曇層の置換度は、前駆体フィルムの親水性及び防曇層として作用するその能力に影響を与え、より低い置換度は増加する親水性に対応する。増加する親水性により、防曇層における増加した水吸収が可能になり、これはより長く持続する防曇効果を有利に提供する。
【0022】
[0026]幾つかの態様においては、防曇層は、対向する主平坦面、及び対向する主平坦面の間に配置される中央の共平面領域を有し、防曇層中のセルロースアセテートは、防曇構成物の(断面)厚さにわたって実質的に均一であり、場合によっては、防曇層の厚さ全体にわたって0.75以下、0.5以下、又は0.25以下だけ変化する置換度を有する。幾つかの態様においては、防曇層中のセルロースアセテートは、2.6未満、例えば2.55未満、2.5未満、2.45未満、2.3未満、2.0未満、1.75未満、1.5未満、1.0未満、0.75未満、又は0.5未満の置換度を有する。範囲に関しては、セルロースアセテートの置換度は、対向する主平坦面間において0~2.6、例えば0~2.55、0~2.5、0.1~2.55、又は0.1~1の範囲であり得る。一態様においては、中央の共平面領域におけるセルロースアセテートの置換度は、対向する主平坦面の少なくとも1つの置換度と10%以下異なり、例えば5%以下異なる。このような防曇層は、従来のフィルム、例えば、十分に処理されていないフィルムと比較して、低くて実質的に均一な置換度を有する。一態様においては、防曇層は、例えば本明細書で議論する成分を使用して前駆体膜を形成し、次に前駆体膜を苛性溶液で処理することによって製造することができる。前駆体フィルムは、数秒間しか持続させることができない従来の処理と比較して、長期間の間、苛性溶液処理で処理することができる。例えば、苛性溶液処理は、少なくとも5分間、例えば少なくとも7分間、少なくとも10分間、少なくとも12分間、少なくとも15分間、少なくとも17分間、又は少なくとも20分間実施することができる。このような防曇層は、苛性処理工程と特定の前駆体フィルム構成物との組み合わせの結果として、改善された防曇特性及び/又は改善された透明度、例えば曇りの欠如という有益な特性を有する。
【0023】
[0027]前駆体フィルムの厚さは、苛性溶液処理の持続時間及び得られる防曇構成物の特性におけるファクターであり得る。例えば、より薄いフィルムは、より厚いフィルムよりも所望の防曇特性を達成するためにより短い処理期間を要し得る。
【0024】
[0028]幾つかの態様においては、防曇層は、基層、例えば、セルロースアセテート層、ポリカーボネート層、又はポリエチレンテレフタレート層、及び防曇層を含む多層構造を使用する幾つかの従来の防曇フィルムとは異なり、別個の層を含まない。したがって、本多層構成物は、基層への防曇層の接着に関連する問題、例えば使用中に層が最終的に分離すること有益に回避し得る。
【0025】
[0029]防曇層は、一態様においては、60重量%~95重量%、例えば65重量%~90重量%、70重量%~90重量%、又は75重量%~85重量%のセルロースアセテートを含む。下限に関しては、防曇層には、少なくとも60重量%、例えば少なくとも65重量%、少なくとも70重量%、又は少なくとも75重量%のセルロースアセテートを含ませることができる。上限に関しては、防曇層には、95重量%未満、例えば90重量%未満、又は85重量%未満のセルロースアセテートを含ませることができる。
【0026】
[0030]防曇層は、一態様においては、5重量%~40重量%、例えば5重量%~35重量%、10重量%~30重量%、又は15重量%~25重量%の可塑剤を含む。下限に関しては、防曇層には、少なくとも60重量%、例えば少なくとも5重量%、少なくとも10重量%、又は少なくとも15重量%の可塑剤を含ませることができる。上限に関しては、防曇層には、95重量%未満、例えば40重量%未満、35重量%未満、30重量%未満、又は25重量%未満の可塑剤を含ませることができる。
【0027】
[0031]保護層の組成は広範囲に変化させることができ、保護用途において有用であることが公知の多くの化合物が存在する。好ましい態様においては、保護層(及び場合によってはコネクタ)はポリカーボネートを含む。保護層には、幾つかの態様においては、アクリル樹脂、ポリエステル、及び/又はPMMAを含ませることができる。
【0028】
[0032]一態様においては、保護層は、ポリカーボネートのような耐衝撃性プラスチックから作製される。屋内用途のためには保護層は透明であってもよく、屋外用途又は放射線保護のためには、保護層は望ましくない放射線を除去するために着色又は被覆することができる。幾つかの場合においては、保護層の一部又は全部は、空気の流れを可能にするために穿孔するか又は通気孔を形成することができる。
【0029】
[0033]コネクタは広範囲に変化させることができる。好ましくは、コネクタは機械的締着具であり、その例としては、ピン、鋲、ネジ、ステープル等が挙げられる(しかしながらこれらに限定されない)。このようなコネクタは周知であり、商業的に入手できる。幾つかの態様においては、1以上のピンが、防曇層を通り、空隙を通って保護層中に伸長する。ピンが両方の層中に伸長しない態様が考えられる。幾つかの態様においては、コネクタは防曇層と保護層の両方に接触する。一態様においては、構成物は防曇フィルムと保護フィルムとの間に接着剤層を含まない。
【0030】
[0034]防曇層の寸法は、広範囲に変化させることができる。一態様においては、防曇層は、25ミクロン~2500ミクロン、例えば50ミクロン~2000ミクロン、100ミクロン~2500ミクロン、100ミクロン~2000ミクロン、100ミクロン~1500ミクロン、300ミクロン~1500ミクロン、350ミクロン~1400ミクロン、400ミクロン~1400ミクロン、450ミクロン~1300ミクロン、600ミクロン~1150ミクロン、700ミクロン~1000ミクロン、又は750ミクロン~800ミクロンの範囲の厚さを有する。下限に関しては、防曇層の厚さは、25ミクロンよりも大きく、例えば50ミクロンよりも大きく、100ミクロンよりも大きく、300ミクロンよりも大きく、400ミクロンよりも大きく、450ミクロンよりも大きく、600ミクロンよりも大きく、700ミクロンよりも大きく、又は750ミクロンよりも大きくてよい。上限に関しては、防曇層の厚さは、2500ミクロン未満、例えば2000ミクロン未満、1500ミクロン未満、1400ミクロン未満、1300ミクロン未満、1150ミクロン未満、1000ミクロン未満、又は800ミクロン未満であってよい。厚さは、当技術分野において公知の方法、例えば赤外スキャンによって測定することができる。
【0031】
[0035]保護層の寸法は、広範囲に変化させることができる。一態様においては、保護層は、25ミクロン~10000ミクロン、例えば25ミクロン~5000ミクロン、100ミクロン~5000ミクロン、500ミクロン~4000ミクロン、600ミクロン~3000ミクロン、又は600ミクロン~2000ミクロンの範囲の厚さを有する。下限に関しては、防曇層の厚さは、25ミクロンより大きく、例えば50ミクロンより大きく、100ミクロンより大きく、500ミクロンより大きく、又は600ミクロンより大きくてよい。上限に関しては、防曇層の厚さは、10000ミクロン未満、例えば5000ミクロン未満、4000ミクロン未満、3000ミクロン未満、又は2000ミクロン未満であってよい。厚さは、本明細書に言及する方法によって測定することができる。
【0032】
[0036]
図1~
図3は、本発明による多層防曇構成物の複数の態様を示す。
図1において、多層防曇構成物100は防曇層102及び保護層104を含む。防曇層102は本明細書に記載の組成を有していてよく、例えば、セルロースアセテート及び可塑剤を含ませることができ、本明細書に記載のように製造することができる。保護層104は本明細書に記載の組成を有していてよく、例えば、ポリカーボネートを含ませることができ、本明細書に記載のように製造することができる。防曇層102は、(
図3の)対向する主平坦面106及び108を有する。防曇層102は、対向する主平坦面106と108との間に配置されている中央の共平面領域110を有する。保護層104は、対向する平坦面112、114を有する。保護層104の対向する平坦面112、114は、防曇層102と(少なくとも部分的に)実質的に共平面に構成又は配向され、したがって多層構造を形成する。
図3に示すように、保護層104及び防曇層102は、互いに間隔を置いて配置され、2つの層104、102の間に空隙116を形成する。コネクタ118は、多層構造100、例えば防曇層102、空隙116、及び保護層104を通って伸長する。
【0033】
性能特性:
[0037]防曇層は、幾つかの態様においては、10秒より長く、例えば20秒より長く、30秒より長く、40秒より長く、50秒より長く、60秒より長く、又は70秒より長い曇り時間を有する。範囲に関しては、防曇層は、10秒~150秒、例えば20秒~100秒、又は30秒~90秒の範囲の曇り時間を有し得る。一態様においては、曇り時間は、本発明の防曇フィルムを、例えば約50℃に加熱された加熱水のビーカー上に配置し、曇りが(形成される場合には)形成されるのに要する時間を測定することによって求めることができる。試料は、フィルムから所定の距離、例えば約6cmに配置することができる。他の場合には、試験方法EN-166及び/又はEN-168.16(2016年版又は同等のもの)を使用して、曇り時間を測定することができる。
【0034】
[0038]前述の防曇層の配合の結果として、ヘーズ値も予想外に改善される。一態様においては、防曇層は、4%未満、例えば3%未満、2.5%未満、2%未満、1.5%未満、1.2%未満、又は1%未満のヘーズ値、例えばASTM-D1003(2016年版又は同等のもの)のヘーズ値を有する。範囲に関しては、防曇層は、0.1%~4%、例えば0.1%~3.5%、0.1%~3%、0.1%~2%、0.2%~3%、0.3%~2.5%、又は0.6%~1%の範囲のヘーズ値を有し得る。一態様においては、ヘーズはヘーズメータによって測定することができる。一態様においては、ヘーズは、D65/10のヘーズ設定を有するHunter LabsからのUtraScan Pro分析器を使用して、厚さ約0.85mmの、実質的に平行平面の表面(例えば、しわがなく、ほこり、引っ掻き傷、及び粒子がない平坦な表面)を有する適切な寸法の試料を用いて測定することができる。これらのヘーズ値の範囲及び限界は、保護層及び/又は防曇構成物全体に適用することもできる。
【0035】
[0039]一態様においては、防曇は、前述の成分及び鹸化を使用して本明細書で論じられるように生起させる。防曇構成物中の可塑剤にはトリス-クロロプロピルホスフェートを含ませることができ、防曇層は20秒より長い曇り時間及び0.1%~3.0%の範囲のヘーズ値を有する。一態様においては、防曇構成物中の可塑剤にトリス-クロロプロピルホスフェートを含ませることができ、防曇層は30秒より長い曇り時間及び0.1%~2.5%の範囲のヘーズ値を有する。
【0036】
[0040]一態様においては、防曇層(及び/又は保護層)は、1ポンドの荷重下でマイクロファイバー布で擦過した前後にヘーズを測定して求めて、0%~10%、例えば0%~5%、0%~1%、又は0%~0.1%の範囲のヘーズΔを有する。下限に関しては、防曇層は、10%未満、例えば5%未満、1%未満、又は0.1%未満のヘーズΔを有し得る。
【0037】
[0041]一態様においては、防曇層は、5g/m2/日~1000g/m2/日(25℃及び75%相対湿度における)、例えば100g/m2/日~1000g/m2/日、200g/m2/日~1000g/m2/日、又は250g/m2/日~750g/m2/日の範囲の湿分(水)蒸気透過率(MVTR)を有する。下限に関しては、防曇構成物は、100g/m2/日より高く、例えば200g/m2/日より高く、又は250g/m2/日より高い水蒸気透過率を有し得る。上限に関しては、防曇構成物は、1000g/m2/日未満、例えば900g/m2/日未満、又は750g/m2/日未満の水蒸気透過率を有し得る。水蒸気透過率は重量法によって測定することができる。一態様においては、水蒸気透過率は、次のASTM試験標準規格(2016年版又は同等のもの);ASTM-F1249-06、ASTM-E398-03、ASTM-D1434、ASTM-D3079、ASTM-D4279、ASTM-E96、ASTM-E398、ASTM-F1249、ASTM-F2298、又はASTM-F2622の1つに記載されるように測定する。幾つかの場合においては、MVTEは消費者製品の厚さによって左右される。
【0038】
[0042]一態様においては、防曇層は、ISO-178によって測定して20kj/m2~60kj/m2、例えば30kj/m2~50kj/m2の範囲の衝撃強さ(シャルピー衝撃強さ(ノッチ付き))を有する。下限に関しては、防曇構成物は、20kj/m2より大きく、例えば30kj/m2より大きい耐衝撃性を有し得る。上限に関しては、防曇構成物は、60kj/m2未満、例えば50kj/m2未満の耐衝撃性を有し得る。
【0039】
[0043]一態様においては、保護層は脆性の改善を示す。脆性は、ボールベアリングを試験試料に衝突させて、試料を粉砕の程度に関して観察するボールベアリング衝撃試験によって簡単に測定することができる。従来の用途においては、可塑剤の移行は、不十分なボールベアリング衝撃試験結果の一因になる。
【0040】
[0044]保護層は、高い衝撃強さ、シャルピー衝撃強さ(ノッチ付き)を有し得る。保護層の衝撃強さに関する範囲及び限界は、防曇層について上述した範囲と同等であってよい。
【0041】
[0045]一態様においては、防曇層は、ASTM-D1746(2016年版又は同等のもの)によって測定して40%~100%、例えば70%~90%の範囲の透明度を有する。下限に関しては、防曇構成物は、40%より高く、例えば70%より高い透明度を有し得る。上限に関しては、防曇構成物は、100%未満、例えば90%未満の透明度を有し得る。
【0042】
[0046]一態様においては、防曇層は、ISO-EN-123117(2016年版又は同等のもの)によって測定して80%より高く、例えば85%より高く、90%より高く、又は95%より高い光透過率を有する。
【0043】
[0047]一態様においては、防曇層は、EN-1674(2016年版又は同等のもの)によって測定して0.1cd/m2/lx~0.26cd/m2/lx、例えば0.15cd/m2/lx~0.25cd/m2/lxの範囲の光拡散度を有する。下限に関しては、防曇構成物は、0.1cd/m2/lxより高く、例えば0.15cd/m2/lxより高い光拡散度を有し得る。上限に関しては、防曇構成物は、0.26cd/m2/lx未満、例えば0.25cd/m2/lx未満の光拡散度を有し得る。
【0044】
[0048]一態様においては、防曇層は、ASTM-D5423(2016年版又は同等のもの)によって測定して100~200、例えば125~175、又は145~155の範囲の光沢度を有する。下限に関しては、防曇構成物は、100より高く、例えば125より高く、又は145より高い光拡散度を有し得る。上限に関しては、防曇構成物は、200未満、例えば175未満、又は155未満の光拡散度を有し得る。
【0045】
[0049]一態様においては、防曇層は、ASTM-D882(2016年版又は同等のもの)によって測定して40Nmm-2~140Nmm-2、例えば70Nmm-2~110Nmm-2の範囲の引張強さを有する。下限に関しては、防曇構成物は、40Nmm-2より高く、例えば70Nmm-2より高い引張強さを有し得る。上限に関しては、防曇構成物は、140Nmm-2未満、例えば90Nmm-2未満の引張強さを有し得る。
【0046】
[0050]一態様においては、防曇層は、ASTM-D882(2016年版又は同等のもの)によって測定して20%~60%、例えば25%~55%の範囲の伸びを有する。下限に関しては、防曇構成物は、20%より高く、例えば25%より高い伸びを有し得る。上限に関しては、防曇構成物は、60%未満、例えば55%未満の伸びを有し得る。
【0047】
[0051]一態様においては、防曇層は、ASTM-D882によって測定して1400Nmm-2~2400Nmm-2、例えば1600Nmm-2~2200Nmm-2、又は1800Nmm-2~2000Nmm-2の範囲のヤング率を有する。下限に関しては、防曇層は、1400Nmm-2より高く、例えば1600Nmm-2より高く、又は1800Nmm-2より高いヤング率を有し得る。上限に関しては、防曇層は、2400Nmm-2未満、例えば2200Nmm-2未満、又は2000Nmm-2未満のヤング率を有し得る。
【0048】
[0052]防曇層は、幾つかの態様においては、設定数の摩耗サイクル後に、0.025グラム未満、例えば0.020グラム未満、0.012グラム未満、0.010グラム未満、0.008グラム未満、0.006グラム未満、0.004グラム未満、又は0.003グラム未満の重量損失の耐引掻性を有する。範囲に関しては、防曇消費者製品は、0グラムの重量損失~0.025グラムの重量損失、例えば0.00001~0.020グラムの重量損失、0.00001~0.010グラムの重量損失、又は0.00005~0.008グラムの重量損失の範囲の耐引掻性を有し得る。耐引掻性の測定値は、ASTM-D4060(2016年版又は同等のもの)によって求めることができ、摩耗サイクルは、Taber往復摩耗試験機を使用して実施することができる。例えば2000、1500、1000、500、又は200の摩耗サイクルを使用することができる。
【0049】
[0053]一態様においては、防曇層は、5ミクロン未満、例えば4.5ミクロン未満、4ミクロン未満、3ミクロン未満、2.75ミクロン未満、又は2.7ミクロン未満の表面粗さを有する。範囲に関しては、防曇消費者製品は、0~5ミクロン、例えば0.01~4.5ミクロン、0.5~4ミクロン、又は0.5~3ミクロンの範囲の表面粗さを有し得る。表面粗さの測定値は、Mitutoyo Surftest表面粗さゲージ、例えばモデルSJ-210、SJ-310、又はSJ-410を使用することによって求めることができる。
【0050】
[0054]幾つかの態様においては、防曇層は、化学物質、例えば、日焼け止め剤、ローション、及び/又は防虫剤中の化学物質に対して改善された耐性を有する。場合によっては、防曇消費者製品は、3未満、例えば2.5未満、2未満、又は1.5未満の耐化学薬品性等級(Ford Laboratory試験法BI-113-08(2016年版又は同等のもの)にしたがって測定)を有する。範囲に関しては、防曇消費者製品は、0~3、例えば0.01~2.5、0.01~2、又は0.01~1.5ミクロンの範囲の耐化学薬品性を有し得る。一態様においては、防曇消費者製品は布様の皺(cloth impression)を示さない。これらの耐化学薬品性等級については、本明細書中で更に議論する。一態様においては、改善された耐化学薬品性は、防虫剤、ローション、及び/又は日焼け止め剤からなる群より選択される化学薬品に関するものである。
【0051】
[0055]上記の試験方法は、本明細書中に参考として援用される。
[0056]一態様においては、多層防曇構成物はアイウェア用途において使用することができる。アイウェアはレンズを含んでいてよく、レンズは多層防曇構成物を用いることができる。代表的なアイウェアとしては、眼鏡、ゴーグル、及びバイザーが挙げられる。一態様においては、そのようなバイザーを含むヘルメットが企図される。
【0052】
[0057]一態様においては、多層防曇構成物は保護フィルム(保護層とは異なる)を更に含む。保護フィルムは、(防曇層又は保護層の)主平坦面の少なくとも1つに接着することができる。幾つかの場合においては、保護フィルムは、1つの主平坦面のみに接着することができる。保護フィルムは、多層防曇構成物、例えば、その表面を、損傷、例えば、物理的損傷、光に関係する損傷、又は化学的損傷から保護する、非常に低粘着性のフィルムであってよい。使用においては、保護フィルムは、場合によっては好適な基材に施した後に多層防曇構成物から剥離することができる。保護フィルムの具体的な組成は広範囲に変化し得る。幾つかの態様においては、保護フィルムは、ポリエステル、ポリエチレン、及びポリエチレンテレフタレートから選択される保護材料を含む。保護フィルムは、好適な接着剤、例えば、アクリルポリマーを用いて主平坦面の少なくとも1つに接着することができる。
【0053】
[0058]幾つかの場合においては、多層防曇構成物は、1つの主平坦面に付着された接着剤層を含む。一態様においては、多層防曇構成物は、一つの主平坦面に接着された接着剤層、及び他の主平坦面に付着、例えば接着された保護フィルムを含む。接着剤層は、その次にそれに付着された剥離フィルムを有していてよい。多層防曇構成物は、平坦なシート又は巻回シートの形態であってよい。
[0059]一態様においては、防曇層は保護層とは異なる組成を有する。あるいは、防曇層は保護層と同様又は同じ組成を有していてよい。
【0054】
セルロースアセテート:
[0060]セルロースは一般に、無水グルコース単位当たり3個のヒドロキシル基を有する無水グルコース繰り返し単位を含む半合成ポリマーであることが知られている。セルロースアセテートは、セルロースを酢酸で活性化した後にセルロースをエステル化することによって形成することができる。セルロースは、植物由来のバイオマス、トウモロコシ茎葉、サトウキビ茎、バガス及びサトウキビ残渣、イネ及びコムギ藁、農業用草木、硬木、硬木パルプ、軟木、軟木パルプ、コットンリンター、スイッチグラス、バガス、ハーブ、再生紙、古紙、木材チップ、パルプ及び紙屑、廃木材、間伐材、ヤナギ、ポプラ、多年草(例えばMiscanthus科の草)、細菌セルロース、種子外皮(例えば大豆)、トウモロコシ茎、もみ殻、及び他の形態の木材、竹類、大豆皮、靭皮繊維、例えばケナフ、麻、黄麻、及び亜麻、農業副産物、農業廃棄物、家畜の排泄物、微生物、藻類セルロース、海藻、及び二次的又は最終的に植物に由来する全ての他の物質などの数多くのタイプのセルロース材料から得ることができる。このようなセルロース原材料は、好ましくはペレット、チップ、刈取物、シート、摩砕繊維、粉末形態、又はそれらを更なる精製に適したものにする他の形態で加工される。複数の供給源の組み合わせも本発明の意図の範囲内である。
【0055】
[0061]本発明の防曇層の製造において使用するのに適したセルロースエステルは、幾つかの態様においてはC1~C20脂肪族エステル(例えば、アセテート、プロピオネート、又はブチレート)、官能性C1~C20脂肪族エステル(例えば、スクシネート、グルタレート、マレエート)、芳香族エステル(例えば、ベンゾエート又はフタレート)、置換芳香族エステルなど、それらの任意の誘導体、及びそれらの任意の組合せなど(しかしながらこれらに限定されない)のエステル置換基を有していてよい。しかしながら、幾つかの場合においては、セルロースアセテートプロピオネート及び/又はセルロースプロピオネートの含量を有益に制限することができる(セルロースアセテートプロピオネート/セルロースプロピオネートは非常に高コストである可能性がある)。本発明の防曇層の製造において使用するのに適したセルロースエステルは、幾つかの態様においては、約10,000、15,000、25,000、50,000、又は85,000の下限から、約125,000、100,000、又は85,000の上限までの範囲の分子量を有していてよく、分子量は、任意の下限から任意の上限までの範囲であってよく、それらの間の任意の下位集合を包含する。一態様においては、セルロースアセテートの数平均分子量は、40,000amu~100,000amu、例えば50,000amu~80,000amuの範囲であってよい。
【0056】
[0062]防曇層の製造において使用されるセルロースアセテートは、セルロースジアセテート又はセルローストリアセテートであってよい。一態様においては、セルロースアセテートはセルロースジアセテートを含む。一態様においては、防曇層は、存在する場合には少量、例えば5重量%未満、4重量%未満、3重量%未満、2重量%未満、1重量%未満、又は0.5重量%未満のセルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、及び/又はセルロースプロピオネートを含む。幾つかの場合においては、防曇層は、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、及び/又はセルロースプロピオネートを実質的に含まず、例えば、セルローストリアセテート、セルロースアセテートプロピオネート、及び/又はセルロースプロピオネートを含まない。
【0057】
[0063]セルロースアセテートは、セルロースアセテートの置換度の尺度であるアセチル価を有する。アセチル価は、セルロースアセテートの鹸化によって遊離される酢酸の重量パーセントを表す。アセチル価と置換度は直線的に相関している。置換度は、次式:
【0058】
【0059】
に従ってアセチル価から計算することができる。
[0064]防曇層の製造においては、連続フィルム層を一緒に結合し、対向するセルロースアセテート層を一緒に結合するための結合剤として、種々の溶媒及び接着剤を使用することができる。溶媒中のセルロースアセテートの溶解度、及び従って結合能力は、少なくとも部分的にセルロースアセテートのアセチル価によって左右される。アセチル価が減少すると、セルロースアセテートの溶解度は、ケトン、エステル、窒素含有化合物、グリコール、及びエーテル中において向上し得る。アセチル価が増加すると、セルロースアセテートの溶解度は、ハロゲン化炭化水素中において向上し得る。結果として、使用されるセルロースアセテートのアセチル価及び置換度、並びに連続フィルム層を結合するための所望の結合剤は、耐久性で機械的に均一な防曇構成物を形成する能力に影響を及ぼし得る。
【0060】
[0065]セルロースアセテートは、粉末又はフレーク形態、好ましくはフレーク形態で使用して、前駆体フィルムを形成するために溶液キャストプロセスにおいて使用されるドープを形成することができる。他の態様では、粉末又はフレーク形態のセルロースアセテートを配合してペレットに射出成形し、これを前駆体フィルムに押出すことができる。
【0061】
[0066]フレーク形態のセルロースアセテートは、篩分析によって求めて5μm~10mmの平均フレーク寸法を有し得る。フレークは、好ましくは低い湿分含量を有し、場合によっては6重量%未満の水、例えば5重量%未満の水、又は2.5重量%未満の水を含む。範囲に関しては、フレーク形態は、0.01~6重量%の水、例えば0.1~2.5重量%の水、又は0.5~2.45重量%の水を有し得る。混合前に、セルロースアセテートフレークを加熱して湿分を除去することができる。幾つかの態様においては、セルロースアセテートフレークは、2重量%未満、例えば1.5重量%未満、1重量%未満、又は0.2重量%未満の含水量を有するまで乾燥することができ、乾燥は、30~100℃、例えば50~80℃の温度で、1~24時間、例えば5~20時間、又は10~15時間行うことができる。
【0062】
随意的な添加剤:
[0067]防曇層中においてブロッキング防止剤を用いることができる。ブロッキング防止剤は、6ミクロン未満、例えば5ミクロン未満、4ミクロン未満、3ミクロン未満、2ミクロン未満、又は1ミクロン未満の平均粒径を有していてよい。範囲に関しては、ブロッキング防止剤は、望ましくは小さい、例えば0.02ミクロン~6ミクロン、0.02ミクロン~5ミクロン、0.02ミクロン~3ミクロン、0.02ミクロン~1ミクロン、0.05ミクロン~6ミクロン、0.05ミクロン~5ミクロン、0.1ミクロン~5ミクロン、0.1ミクロン~4ミクロン、0.5ミクロン~5ミクロン、0.5ミクロン~4ミクロン、0.5ミクロン~3ミクロン、0.5ミクロン~3ミクロン、1ミクロン~6ミクロン、1ミクロン~5ミクロン、又は1ミクロン~4ミクロンの平均粒径を有する。粒径は、例えば篩別分析により求めることができる。多くの従来の防曇構成物、例えば押出プロセスによって形成されるものは、層間の問題、例えばブロッキング防止剤の使用を必要とする「ガラス結合効果」を起こさない。したがって、従来の押出成形フィルムは、通常はブロッキング防止剤を含有しない。
【0063】
[0068]一態様においては、防曇層は、0.01重量%~10重量%、例えば0.05重量%~5重量%、0.05重量%~1重量%、又は0.05重量%~0.5重量%のブロッキング防止剤を含む。下限に関しては、防曇層には、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.05重量%、又は少なくとも0.07重量%のブロッキング防止剤を含ませることができる。上限に関しては、防曇層には、10重量%未満、例えば7重量%未満、5重量%未満、1重量%未満、又は0.5重量%未満のブロッキング防止剤を含ませることができる。上述した構成要素の成分の更なる詳細は、本明細書において与える。
【0064】
[0069]ブロッキング防止剤は、広範囲に変化させることができる。好ましい態様においては、ブロッキング防止剤は無機化合物を含む。例えば、ブロッキング防止剤には、酸化物、カーボネート、タルク、クレー、カオリン、シリケート、及び/又はホスフェートを含ませることができる。一態様においては、ブロッキング防止剤は、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、二酸化ケイ素、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム、及びこれらの混合物からなる群から選択することができる。一態様においては、ブロッキング防止剤はシリカを含む。幾つかの好適な市販製品としては、Aerosil(登録商標)製品(Evonik Industries AG, ドイツから)が挙げられる。1つの特定の好適な市販製品はAerosil R972である。
【0065】
[0070]幾つかの態様においては、防曇層は、製造プロセス中又は製造プロセス後に防曇層を種々の構成要素から放出させる、例えばキャストバンドから離型することを可能にする離型剤を更に含む。一態様においては、防曇層は、0.01重量%~10重量%、例えば0.05重量%~5重量%、0.05重量%~1重量%、又は0.05重量%~0.5重量%の離型剤を含む。下限に関しては、防曇層には、少なくとも0.01重量%、少なくとも0.05重量%、又は少なくとも0.07重量%の離型剤を含ませることができる。上限に関しては、防曇層には、10重量%未満、例えば7重量%未満、5重量%未満、1重量%未満、又は0.5重量%未満の離型剤を含ませることができる。剥離剤の組成は広範囲に変化させることができ、多くの離型剤が当該技術において公知である。一態様においては、離型剤はステアリン酸を含む。離型剤は、好ましくはドープに添加、例えばその中に混合する。そのような場合においては、離型剤は好ましくはドープ中に溶解する。一態様においては、離型剤は、その上で防曇層がキャストされるキャストバンド上に配置又は注入される。防曇層がキャストバンドから離型される際には、離型剤の一部が防曇層に残留する可能性があり、及び/又は離型剤の一部が(金属への離型剤の誘引力に基づいて)キャストバンドに残留する可能性がある。
【0066】
[0071]幾つかの態様において、防曇層は、製造プロセスからの残留アセトンを含む。例えば、防曇層は、0.01重量%~3重量%、例えば0.05重量%~2重量%、0.05重量%~1重量%、又は0.05重量%~0.5重量%のアセトンを含み得る。下限に関しては、防曇層は、少なくとも0.01重量%、例えば少なくとも0.05重量%、又は少なくとも0.1重量%のアセトンを含み得る。上限に関しては、防曇層は、3重量%未満、例えば2重量%未満、1重量%未満、0.5重量%未満、又は0.1重量%未満のアセトンを含み得る。
【0067】
[0072]幾つかの態様においては、防曇層、及び好ましくは防曇層を形成するために使用されるドープには、1種類以上の追加の添加剤、例えば、粘着付与剤、難燃剤、酸化防止剤、抗菌剤、抗真菌剤、着色剤、顔料、染料、UV安定剤、粘度調整剤、加工添加剤、芳香剤など、及びそれらの任意の組み合わせを更に含ませることができる。添加剤の量は広範囲に変化させることができる。一般的に言えば、1種以上の添加剤は、防曇層の全重量を基準として0.01~10重量%、例えば0.03~2重量%、又は0.1~1重量%の範囲の量で存在させることができる。
【0068】
[0073]一態様においては、UV吸収剤添加剤を防曇層中に含ませることができる。例えば、(UV吸収剤添加剤を有する)防曇層は、UV光が防曇層によって被包された内容物に損傷を与える可能性がある状況において使用することができる。
【0069】
[0074]粘着付与剤は、幾つかの態様においては、本明細書に記載される防曇層の接着特性を増大させることができる。本明細書に記載される防曇層と併せて使用するのに適した粘着剤としては、幾つかの態様においては、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、カルボキシエチルセルロース、アミド、ジアミン、ポリエステル、ポリカーボネート、シリル変性ポリアミド化合物、ポリカルバメート、ウレタン、天然樹脂、天然ロジン、セラック、アクリル酸ポリマー、2-エチルヘキシルアクリレート、アクリル酸エステルポリマー、アクリル酸誘導体ポリマー、アクリル酸ホモポリマー、アクリル酸エステルホモポリマー、ポリ(メチルアクリレート)、ポリ(ブチルアクリレート)、ポリ(2-エチルヘキシルアクリレート)、アクリル酸エステルコポリマー、メタクリル酸誘導体ポリマー、メタクリル酸ホモポリマー、メタクリル酸エステルホモポリマー、ポリ(メチルメタクリレート)、ポリ(ブチルメタクリレート)、ポリ(2-エチルヘキシルメタクリレート)、アクリルアミド-メチル-プロパンスルホネートポリマー、アクリルアミド-メチル-プロパンスルホネート誘導体ポリマー、アクリルアミド-メチル-プロパンスルホネートコポリマー、アクリル酸/アクリルアミド-メチル-プロパンスルホネートコポリマー、ベンジルココジ(ヒドロキシエチル)第四級アミン、ホルムアルデヒドと縮合したp-T-アミル-フェノール、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート、アクリルアミド、N-(ジアルキルアミノアルキル)アクリルアミド、メタクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、メタクリル酸、アクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレートなど、これらの任意の誘導体、及びこれらの任意の組み合わせを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0070】
[0075]本明細書に記載される防曇層と併せて使用するのに適した抗真菌剤としては、幾つかの態様においては、ポリエン抗真菌剤、例えば、ナタマイシン、リモシジン、フィリピン、ニスタチン、アムホテリシンB、カンジシン、及びハマイシン、イミダゾール抗真菌剤、例えば、ミコナゾール(WellSpring Pharmaceutical CorporationからMICATIN(登録商標)として入手できる)、ケトコナゾール(McNeil consumer HealthcareからNIZORAL(登録商標)として商業的に入手できる)、クロトリマゾール(MerckからLOTRAMIN(登録商標)及びLOTORAMIN AF(登録商標)として、及びBayerからCANESTEN(登録商標)として商業的に入手できる)、エコナゾール、オモコナゾール、ビホナゾール、ブトコナゾール、フェンチコナゾール、イソコナゾール、オキシコナゾール、セルタコナゾール(OrthoDematologicsからERTACZO(登録商標)として商業的に入手できる)、スルコナゾール、及びチオコナゾール;トリアゾール抗真菌剤、例えばフルコナゾール、イトラコナゾール、イサブコナゾール、ラブコナゾール、ポサコナゾール、ボリコナゾール、テルコナゾール、及びアルバコナゾール、チアゾール抗真菌剤(例えばアバフンギン)、アリルアミン抗真菌剤(例えばテルビナフィン(Novartis Consumer Health, Inc.からLAMISIL(登録商標)として商業的に入手できる))、ナフチフィン(Merz PharmaceuticalsからNAFTIN(登録商標)として商業的に入手できる)、及びブテナフィン(MerckからLOTRAMIN ULTRA(登録商標)として商業的に入手できる)、エキノカンジン抗真菌剤(例えば、アニデュラファンギン、カスポファンギン、及びマイカファンギン)、ポリゴジアル、安息香酸、シクロピロックス、トルナフテート(例えば、MDS Consumer Care, Inc.からTINACTIN(登録商標)として商業的に入手できる)、ウンデシレン酸、フルシトシン、5-フルオロシトシン、グリセオフルビン、ハロプロギン、及びそれらの任意の組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0071】
[0076]本明細書に記載される防曇層(又は全体としての多層構成物)と組み合わせて使用するのに適した着色剤、顔料、及び染料としては、幾つかの態様においては、植物染料、植物性染料、二酸化チタン、二酸化ケイ素、タルトラジン、E102、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、キナクリドン、ペリレンテトラカルボン酸ジイミド、ジオキサジン、ペリノンジスアゾ顔料、アントラキノン顔料、カーボンブラック、金属粉末、酸化鉄、ウルトラマリン、ニッケルチタネート、ベンゾイミダゾロンオレンジgl、ソルベントオレンジ60、オレンジ染料、炭酸カルシウム、カオリンクレー、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、液体及び/又は顆粒形態のCARTASOL(登録商標)染料(カチオン性染料、Clariant Servicesから入手できる)(例えば、CARTASOLブリリアントイエローK-6G液、CARTASOLイエローK-4GL液、CARTASOLイエローK-GL液、CARTASOLオレンジK-3GL液、CARTASOLスカーレットK-2GL液、CARTASOLレッドK-3BN液、CARTASOLブルーK-5R液、CARTASOLブルーK-RL液、CARTASOLターコイズK-RL液/顆粒、CARTASOLブラウンK-BL液)、FASTUSOL(登録商標)染料(BASFから入手できる助色団)(例えば、イエロー3GL、Fastusol Cブルー74L)など、それらの任意の誘導体、及びそれらの任意の組合せを挙げることができるが、これらに限定されない。。幾つかの態様において、着色剤として二酸化チタンを用いる場合には、二酸化チタンはまた、フィルムの剛性を増加させるようにも機能し得る。一態様においては、溶剤染料を使用することができる。
【0072】
防曇層の製造方法:
[0077]防曇層は、セルロースアセテート、可塑剤、及び溶媒を混合してドープを形成し、ドープをキャスト、例えば溶液キャストして前駆体フィルムを形成することによって製造することができる。本方法には、前駆体フィルムを苛性溶液と接触させて処理されたフィルムを形成する工程を更に含ませることができる。一態様においては、前駆体フィルムの処理は、本明細書において論じるように、前駆体フィルムを部分的に又は完全に鹸化して、それにより所望の(均一又は不均一の)置換度を生成させるように働く。この方法は、処理されたフィルムを洗浄して洗浄されたフィルムを形成する工程、及び洗浄されたフィルムを乾燥させて防曇層を形成する工程を更に含む。洗浄は、幾つかの態様においては、処理されたフィルムの表面上における塩の形成を抑止するか、又は排除する。一態様においては、乾燥はオーブン乾燥によって行われる。一態様においては、乾燥は単に空気乾燥によって行われる。
【0073】
[0078]一態様においては、本方法は、セルロースアセテート、可塑剤、及びアセトンを混合してドープを形成する工程、及びドープをキャスト、例えば溶液キャストして防曇層を形成する工程を含む。得られる防曇層は、アセトン、例えば0.01重量%~3重量%のアセトンを含み得る。
【0074】
[0079]セルロースアセテートフィルムの製造方法は、米国特許第2,232,012号及び第3,528,833号(これらの全体を参照により本明細書に組み込む)に記載されている。一般に、溶液キャスト法は、溶媒、例えばアセトン中に溶解した可塑剤、ブロッキング防止剤、及びセルロースアセテートを含む混合物をキャストすることを含む。混合物の成分及びそれぞれの量は、本明細書で論じる防曇層の特性を決定する。
【0075】
[0080]一態様においては、混合物(ドープ)は、セルロースアセテートを溶媒中に溶解することによって調製することができる。幾つかの態様において、溶媒はアセトンである。一態様においては、溶媒は、エチルラクテート、メチルエチルケトン、及びジクロロメタンからなる群から選択される。アセトン中におけるセルロースアセテートの溶解度を改善するために、セルロースアセテート及びアセトンは、好ましくは第1のミキサーに連続的に加える。次に、混合物を第2及び/又は第3のミキサーに送って、セルロースアセテートをアセトン中に完全に溶解することができる。ミキサーは、直列で使用される連続ミキサーであってよい。幾つかの態様においては、セルロースアセテートの溶解を達成するためには1つのミキサーで十分であり得ることが理解される。他の態様においては、2つ、3つ、又はそれ以上のミキサー(例えば、4つのミキサー、5つのミキサー、又は5つより多いミキサー)を直列又は並列で使用することができる。更に他の態様において、セルロースアセテート、溶媒、及び他の添加剤は、ミキサーを使用しないで1つ以上のブレンダー中で混合することができる。
【0076】
[0081]混合物には、加工添加剤を更に含ませることができる。更に、混合物に着色剤を含ませることができる。可塑剤は、第1のミキサーに直接加えることができ、又は溶媒の少なくとも一部とブレンドした後に第1のミキサーに加えることができる。同様に、着色剤、ブロッキング防止剤、及び/又は加工添加剤は、第1のミキサーに直接加えることができ、又は溶媒の一部と混合した後に第1のミキサーに加えることができる。
【0077】
[0082]セルロースアセテートをアセトン溶媒中に溶解したら、混合物はドープと呼ぶことができる。次に、不純物を除去するためにドープを濾過することができる。幾つかの態様においては、濾過は2段階濾過である。
【0078】
[0083]ドープを溶液キャストする態様においては、セルロースアセテートは一般にフレーク形態で使用される。次に、(フレーク状の)セルロースアセテートをアセトン中に溶解してアセトンドープを形成することができる。可塑剤及びブロッキング防止剤などの追加の成分を、アセトンドープ内に含ませることができる。アセトンドープにはまた、ブロッキング防止剤、ステアリン酸、染料、及び/又は1種類以上の特別な化学物質の1以上を含ませることもできる。次に、これらの成分を上記に記載のように混合する。次に、得られる混合物を濾過することができる。次に、混合物をダイ押出によって連続フィルムにキャストすることができる。フィルムは、ローラーを含む温風乾燥キャビネット内で乾燥させることができる。
【0079】
[0084]一態様においては、セルロースアセテート、可塑剤、及び随意的な添加剤を含む混合物を形成した後、この混合物をフィルムダイ中で溶融押出してシートを形成するか、又は小孔ダイ中で溶融押出してフィラメントを形成し、次にこれをペレタイザーに送ってペレットを形成することができる。溶融押出は、230℃以下、例えば220℃以下、又は210℃以下の温度で実施することができる。230℃より高い温度は、混合物成分、特にセルロースアセテートの不安定化をもたらす可能性がある。溶融押出機は、同時回転スクリューを有する二軸フィーダーであってよく、100~500rpm、例えば150~450rpm、又は250~350rpmのスクリュー速度で運転することができる。シートは、0.5mmと0.6mmの間、例えば0.53~0.54mmの厚さを有し得る。
【0080】
[0085]一態様においては、溶融押出プロセスによって前駆体フィルムを形成する。防曇層の製造方法には、セルロースアセテート及び可塑剤を含むペレットを押出す工程を含ませることができる。この方法は、前駆体フィルムを苛性溶液と接触させて処理されたフィルムを形成する工程を更に含む。この方法には、処理されたフィルムを洗浄して洗浄されたフィルムを形成する工程、及び/又は洗浄されたフィルムを乾燥させて防曇層を形成する工程を更に含ませることができる。
【0081】
[0086]セルロースアセテートの融点を低下させる1つの方法は、溶融押出又は溶液キャストの前に可塑剤及びセルロースアセテートを含む混合物を形成することである。幾つかの態様においては、少なくとも1種の添加剤を可塑剤及びセルロースアセテートと混合してペレット混合物を形成することもできる。セルロースアセテートは、混合物の75~98重量%、例えば80~97.5重量%、又は85~95重量%の量で存在させることができる。重量パーセントは混合物の全重量を基準としており、これには、セルロースアセテート、可塑剤、及び混合物中に含まれる全ての添加剤の重量が含まれる。上記のように、セルロースアセテートはフレーク又は粉末として用意することができる。
【0082】
[0087]ペレット混合物は、フレーク又は粉末形態のセルロースアセテートを、高速ミキサー中で可塑剤と混合することによって形成することができる。幾つかの態様においては、可塑剤は、混合工程中に噴霧分配システムを使用してセルロースアセテートと混合することができる。他の態様においては、可塑剤は、混合工程中に連続的又は断続的にセルロースアセテートに加えることができる。幾つかの態様においては、フレーク形態のセルロースアセテートが好ましい。混合物中に含ませる場合には、添加剤は、混合工程中にセルロースアセテート及び可塑剤と混合することができる。幾つかの態様においては、高速ミキサーは1~2分間運転することができる。幾つかの態様においては、基混合物を調製することができ、次に追加の可塑剤及び/又は添加剤を用いて基混合物を調整することができる。
【0083】
[0088]幾つかの態様においては、押出プロセスを使用して前駆体フィルムを形成する場合には、幾つかの態様においては、酸化防止剤によって、貯蔵、輸送、及び/又は実装中における本明細書に記載の防曇構成物の酸化及び/又は化学的劣化を軽減することができる。本明細書に記載の防曇構成物と併せて使用するのに適した酸化防止剤としては、幾つかの態様においては、アントシアニン、アスコルビン酸、グルタチオン、リポ酸、尿酸、レスベラトロール、フラボノイド、カロテン(例えば、β-カロテン)、カロテノイド、トコフェロール(例えば、α-トコフェロール、β-トコフェロール、γ-トコフェロール、及びδ-トコフェロール)、トコトリエノール、ユビキノール、没食子酸、メラトニン、第2級芳香族アミン、ベンゾフラノン、ヒンダードフェノール、ポリフェノール、ヒンダードアミン、有機リン化合物、チオエステル、ベンゾエート、ラクトン、ヒドロキシルアミンなど、及びそれらの任意の組合せを挙げることができるが、それらに限定されない。一態様においては、酸化防止剤は、ステアリル3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、ビス(2,4-ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、ビスフェノールAプロポキシレートジグリシジルエーテル、9,10-ジヒドロキシ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド、及びそれらの組み合わせからなる群から選択することができる。
【0084】
[0089]幾つかの溶融押出関連の態様においては、粘度調整剤が使用される。本明細書に記載される防曇構成物と併せて使用するのに適した粘度調整剤として、幾つかの態様においては、ポリエチレングリコールなど、及びそれらの任意の組合せを挙げることができるが、それらに限定されず、幾つかの態様においては食品グレードの粘度調整剤であってよい。
【0085】
[0090]苛性処理は、広範囲の方法によって行うことができる。代表的な方法はアルカリ鹸化処理である。例えば、国際特許出願第2008/029801号(本明細書中に参考として援用される)を参照のこと。苛性処理は前駆体フィルムの置換度を変化させ、これにより前駆体フィルムの親水性を増大させ、防曇構成物の防曇特性を改善する。一態様においては、苛性処理は、セルロースアセテートの1以上のアセチル基を、他の置換基、例えば、ヒドロキシル基、カルボニル基、又はカルボン酸基で置換する。
【0086】
[0091]一態様においては、前駆体フィルムを苛性溶液の浴中に浸漬する。他の態様においては、前駆体フィルムは、処理前に、同じか又は異なる組成の1以上の追加のフィルムに結合させる。本明細書に記載されるように、例えばより厚い前駆体フィルムを達成するために、複数の前駆体層を形成して、次に互いの上に積層することができる。次に、積層された前駆体フィルムを苛性溶液で処理することができる。
【0087】
[0092]苛性溶液には任意の好適なアルカリ溶液を含ませることができ、その多くは当技術分野において公知である。苛性溶液は、一態様においては水酸化物水溶液を含む。苛性溶液には、5重量%~20重量%、例えば、5重量%~15重量%、又は7重量%~15重量%のアルカリ溶液を含ませることができる。幾つかの態様においては、苛性溶液は、本明細書で論じられる量で存在する水酸化カリウム溶液を含む。前駆体フィルムの特定の組成と苛性処理との組み合わせによって、本明細書に記載される特徴、例えば多少の水を吸収する能力を有する防曇構成物が有利に与えられる。一態様においては、苛性溶液処理工程は、0.5分~20分、例えば2分~10分の範囲の滞留時間の間行う。下限に関しては、苛性溶液処理工程は、0.5分より長く、例えば2分より長く、又は5分より長い滞留時間の間行うことができる。上限に関しては、苛性溶液処理工程は、20分未満、例えば15分未満、又は10分未満の滞留時間の間行うことができる。
【0088】
[0093]一態様においては、苛性溶液処理工程は、40℃~100℃、例えば45℃~75℃、又は50℃~70℃の範囲の温度で行う。一般的に言えば、より高い処理温度はより速い鹸化をもたらし得る。処理温度は、幾つかの場合においては処理時間に反比例する。下限に関しては、苛性溶液処理工程は、40℃より高く、例えば45℃より高く、50℃より高く、又は65℃より高い温度で行うことができる。上限に関しては、苛性溶液処理工程は、100℃未満、例えば75℃未満、又は70℃未満の温度で行うことができる。
【0089】
[0094]苛性溶液の組成は広範囲に変化させることができる。一態様においては、苛性溶液のモル濃度は、0.1M~25M、例えば、0.1M~17.5M、2M~10M、又は2M~2.5Mである。処理条件、例えば滞留時間、温度、モル濃度、及び苛性溶液の組成の種々の組み合わせが意図される。例えば、好ましい態様においては、苛性溶液は3M水酸化カリウム溶液を含み、処理は60℃で5又は10分間行う。他の態様では、苛性溶液は2.8M水酸化カリウム溶液を含み、処理は72.1℃で20分間行う。
【0090】
[0095]一態様においては、本方法は、鹸化前に前駆体フィルムをアセトンと接触させる工程を含む。理論に束縛されるものではないが、セルロースアセテート前駆体フィルムをアセトンと接触させると、フィルムの細孔が広がり、フィルムの表面が軟化し、及び/又はフィルムがより多孔質になり、これにより改善されたより速い鹸化が有利にもたらされる。
【0091】
[0096]上述したように、本方法は、処理されたフィルムを例えば水で洗浄する工程を更に含む。洗浄工程は任意の好適な技術によって行うことができ、その多くは当該技術において公知である。洗浄工程は、処理されたフィルムの表面を洗浄する。一態様においては、洗浄は、0℃~50℃、例えば20℃~40℃、又は25℃~35℃の範囲の温度で行う。下限に関しては、洗浄は、0℃より高く、例えば20℃より高く、又は25℃より高い温度で行うことができる。上限に関しては、洗浄は、50℃未満、例えば40℃未満、又は35℃未満の温度で行うことができる。
【0092】
[0097]本方法は、洗浄されたフィルムを乾燥させて防曇層を形成する工程を更に含む。乾燥工程は、任意の好適な技術によって行うことができ、その多くは当該技術において公知である。一態様においては、乾燥はオーブン乾燥によって行う。一態様においては、乾燥は、単に周囲条件での空気乾燥によって行う。一態様においては、乾燥は、50℃~120℃、例えば、50℃~100℃、又は60℃~80℃の範囲の温度で行う。下限に関しては、乾燥は、50℃より高く、例えば55℃より高く、又は60℃より高い温度で行うことができる。上限に関しては、洗浄は、120℃未満、例えば100℃未満、又は80℃未満の温度で行うことができる。
【0093】
[0098]一態様においては、本発明は、その一成分として本明細書で論じる多層構成物を含む消費者製品構成物に関する。したがって、幾つかの場合においては、消費者製品構成物は、消費者製品及び多層構成物を含む。一態様においては、多層構成物は消費者製品に取り付ける。取り付けのための方法は広範に変化する。一態様においては、消費者製品は平坦面を有し、多層構成物は平坦面上に配置、例えば取り付ける。
【0094】
[0099]考えられる消費者製品のリストは膨大である。一例として、消費者製品は、レンズ、窓、スクリーン、ガラス構造体、容器、器具、プラスチック、光学装置、及びバイザーからなる群から選択することができる。
【0095】
多層防曇構成物の製造方法:
[0100]一態様においては、本発明は、多層防曇構成物の製造方法に関する。この方法は、セルロースアセテート及び可塑剤並びに溶媒を混合してドープを形成する工程;ドープをキャストして前駆体層を形成する工程;前駆体フィルムを苛性溶液と接触させて処理された層を形成する工程;処理された層を洗浄して洗浄された層を形成する工程;及び洗浄された層を乾燥させて防曇層を形成する工程;を含む。
【0096】
[0101]この方法は更に、1つ又は複数のコネクタを用いて保護層を防曇層に取り付けて多層構造を形成する工程を含む。保護層は、少なくとも部分的に、防曇層に対して実質的に共平面に構成される。1つ又は複数のコネクタは、多層構造を通って伸長する。
【0097】
[0102]一態様においては、本発明は、防曇層を含む防曇構成物の製造方法であって、セルロースアセテート及び可塑剤並びに場合によっては酸化防止剤及び/又は熱安定剤を含むペレットを押出して前駆体層を形成する工程;前駆体層を苛性溶液と接触させて処理された層を形成する工程;処理された層を洗浄して洗浄された層を形成する工程;及び洗浄された層を乾燥させて防曇層を形成する工程;を含む上記方法に関する。この方法は更に、1つ又は複数のコネクタを用いて保護層を防曇層に取り付けて多層構造を形成する工程を含む。保護層は、少なくとも部分的に、防曇層に対して実質的に共平面に構成される。1つ又は複数のコネクタは、多層構造を通って伸長する。
【実施例】
【0098】
[0103]表1a~kに示すようにドープ試料を調製してハンドキャストした。例1~12は本発明の実施例である。残りの例は比較例である。
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
[0104]ドープをキャストしてフィルムに成形した。フィルムを鹸化し、例えば、滞留時間、温度、及び濃度をモニターしながら、水酸化カリウム溶液中に1つずつ浸漬した。当初ヘーズ、鹸化後のヘーズ、及びヘーズΔを測定/計算した。ヘーズはASTM-D1003(2016年版又は同等のもの)に従って測定した。鹸化条件及びヘーズ測定値を表2に示す。
【0108】
【0109】
[0105]表2に示すように、セルロースアセテートと特定の可塑剤との組み合わせは、優れたヘーズ特性(例えば、4未満)を有する生成物を与える。
[0106]適合性は、保護層、例えばポリカーボネートを可塑剤と接触させることによって試験した。例13においては、ポリカーボネートのプラークをTCPPと接触させ、一定時間にわたってモニターした。24時間後、ポリカーボネートのプラークは顕著な効果を示さず、例えばポリカーボネートの分解は観察されなかった。
【0110】
[0107]比較例Hでは、同様のポリカーボネートのプラークをDEPと接触させ、一定時間にわたってモニターした。4時間後、ポリカーボネートのプラークは顕著な変色及び表面損傷を示した。
【0111】
[0108]したがって、表2、及び例14と比較例Hとの比較において示されるように、セルロースアセテートと特定の可塑剤との組合せは、優れたヘーズ特性を有し、ポリカーボネート含有部材、例えばコネクター及び/又はフィルムとの適合性の問題が少ししかないか又はほとんどない生成物を与える。
【0112】
[0109]本発明を詳細に記載したが、本発明の精神及び範囲内の修正は当業者には容易に明らかであろう。本明細書及び/又は添付の特許請求の範囲に記載された本発明の複数の形態、並びに本発明の種々の態様及び種々の特徴の複数の部分を、全体的又は部分的に組み合わせるか又は交換することができることを理解されたい。種々の態様の前述の記載においては、当業者によって理解されるように、他の態様に関する複数の態様を他の態様と適切に組み合わせることができる。更に、当業者であれば、前述の記載は単なる例であり、本発明を限定することは意図しないことを認識するであろう。
本発明の具体的態様は以下のとおりである。
[態様1]
多層防曇構成物であって、
セルロースアセテート及び可塑剤を含み、対向する主平坦面を有する防曇層;
多層防曇構成物を形成する前記防曇層に対して少なくとも部分的に実質的に共平面に配向された対向する主平坦面を有する保護層であって、前記防曇層と前記保護層の間に空隙を画定するように構成されている前記保護層;及び
前記多層防曇構成物を通って伸長するコネクタ;
を含む、前記多層防曇構成物。
[態様2]
前記可塑剤が、ハロアルキルホスフェート、好ましくはトリス-クロロプロピルホスフェートを含む、態様1に記載の防曇構成物。
[態様3]
前記防曇層が、ASTM-D1003(2016年版又は同等のもの)によって測定して、10秒より長く、好ましくは20秒より長く、より好ましくは30秒より長い曇り時間、及び/又は0.1%~4.0%の範囲のヘーズ値を有する、態様1に記載の防曇構成物。
[態様4]
前記可塑剤がトリス-クロロプロピルホスフェートを含み、前記防曇層が、ASTM-D1003(2016年版又は同等のもの)によって測定して20秒より長い曇り時間、及び0.1%~3.0%の範囲のヘーズ値を有する、態様1に記載の防曇構成物。
[態様5]
前記可塑剤がトリス-クロロプロピルホスフェートを含み、前記防曇層が、ASTM-D1003(2016年版又は同等のもの)によって測定して30秒より長い曇り時間、及び0.1%~2.5%の範囲のヘーズ値を有する、態様1に記載の防曇構成物。
[態様6]
前記防曇層が、(アセチル)トリエチルシトレート、トリアセチン、トリフェニルホスフェート、ジエチルフタレート、グリセロールトリベンゾエート、ポリエチレングリコール、ジメチルセバケート、アセトフェノン、ベンジルベンゾエート、N-エチル-トルエンスルホンアミド、ジブチルシトレート、ジイソオクチルアジペート、フタレートエステル、ポリオールエステル、及びそれらの混合物からなる群から選択される5重量%未満の可塑剤を含む、態様1に記載の防曇構成物。
[態様7]
前記防曇層が、セルロースアセテートプロピオネート、及び/又はセルロースプロピオネート、及び/又はジエチルフタレートを実質的に含まない、態様1に記載の防曇構成物。
[態様8]
前記防曇層が、60重量%~95重量%のセルロースアセテート及び5~40重量%の可塑剤を含む、態様1に記載の防曇構成物。
[態様9]
前記コネクタが前記保護層と同じ組成を有する、態様1に記載の防曇構成物。
[態様10]
前記構成物が、前記防曇フィルムと前記保護フィルムとの間に接着剤層を含まない、態様1に記載の防曇構成物。
[態様11]
多層防曇構成物であって、
セルロースアセテート、好ましくは60重量%~95重量%のセルロースアセテート、及び可塑剤、好ましくは5~40重量%の可塑剤を含む防曇層;
保護層であって、前記防曇層に対して共平面に配向され、前記防曇層と前記保護層の間に空隙を画定するように前記防曇層に対して離隔されており、ポリカーボネートを含む前記保護層;
を含み;
前記防曇層は、ASTM-D1003(2016年版又は同等のもの)によって測定して、10秒より長い曇り時間、及び0.1%~4.0%の範囲のヘーズ値を有し;そして
前記保護層は、ASTM-D1003(2016年版又は同等のもの)によって測定して0.1%~4.0%の範囲のヘーズ値を有する、前記多層防曇構成物。
[態様12]
前記防曇層及び前記保護層を通って伸長して、その配向を固定するコネクタを更に含む、態様11に記載の防曇構成物。
[態様13]
前記可塑剤がハロアルキルホスフェートを含む、態様11に記載の防曇構成物。
[態様14]
防曇層を含む多層防曇構成物の製造方法であって、
(a)セルロースアセテート、及び好ましくはハロアルキルホスフェートを含む可塑剤、及び溶媒を混合してドープを形成する工程;
(b)前記ドープをキャストして前駆体層を形成する工程;
(c)前駆体フィルムを、好ましくは0.5分~20分の範囲の滞留時間及び/又は40℃~100℃の範囲の温度で苛性溶液と接触させて処理された層を形成する工程;
(d)前記処理された層を洗浄して洗浄された層を形成する工程;
(e)前記洗浄された層を乾燥させて前記防曇層を形成する工程;及び
(f)コネクタを使用して対向する主平坦面を有する保護層を前記防曇層に取り付けて多層構造を形成する工程;
を含み、
前記保護層は前記防曇層に対して少なくとも部分的に実質的に共平面に構成され;
前記コネクタは前記多層構造を通って伸長する、前記方法。
[態様15]
防曇層を含む多層防曇構成物の製造方法であって、
(a)セルロースアセテート、及び好ましくはハロアルキルホスフェートを含む可塑剤、及び場合によっては酸化防止剤及び/又は熱安定剤を含むペレットを押出して前駆体層を形成する工程;
(b)前記前駆体層を苛性溶液と接触させて処理された層を形成する工程;
(c)前記処理された層を洗浄して洗浄された層を形成する工程;
(d)前記洗浄された層を乾燥させて前記防曇層を形成する工程;及び
(e)コネクタを使用して対向する主平坦面を有する保護層を前記防曇層に取り付けて多層構造を形成する工程;
を含み、
前記保護層は前記防曇層に対して少なくとも部分的に実質的に共平面に構成され;そして
前記コネクタは前記多層構造を通って伸長する、前記方法。