(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】センタレス円柱研削装置
(51)【国際特許分類】
B24B 5/18 20060101AFI20230809BHJP
B24B 41/02 20060101ALI20230809BHJP
B24B 55/04 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
B24B5/18 Z
B24B41/02
B24B55/04 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2020086948
(22)【出願日】2020-05-18
【審査請求日】2021-03-25
(32)【優先日】2019-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】520173875
【氏名又は名称】チューディン ウルス
【氏名又は名称原語表記】Tschudin Urs
【住所又は居所原語表記】Bachtelenstrasse 79 2540 Grenchen Switzerland
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】チューディン ウルス
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-216518(JP,A)
【文献】特開2007-050457(JP,A)
【文献】特開2007-190616(JP,A)
【文献】特開2015-205376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0148288(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 5/18
B24B 55/04
B24B 41/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
任意の被加工物のスルーフィードおよびプランジ研削のためのセンタレス円柱研削装置(100)であって、
回転軸(12)を中心にして回転することができる研削ホイール(11)を備える研削主軸台(10)と、回転軸(22)を中心にして回転することができる調整ホイール(21)を備える調整ホイール主軸台(20)と、キャリッジトラック(30)上のキャリッジ(31)とがその上に取り付けられた装置土台(40)と、
前記研削主軸台(10)と前記調整ホイール主軸台(20)との間に実質的に配置可能であり、前記キャリッジトラック(30)上の前記キャリッジ(31)によって移動可能な被加工物支持体(32)と、を備え、
前記センタレス円柱研削装置は、
前記研削主軸台(10)のための第1の駆動可能な位置決め軸X
Sと、前記調整ホイール主軸台(20)のための第2の駆動可能な位置決め軸X
Rと、前記キャリッジトラック(30)上の前記キャリッジ(31)のための、前記位置決め軸X
SおよびX
Rの少なくとも一方に直角に延びるさらなる駆動可能な位置決め軸Y
Wとを備え、
前記研削主軸台(10)および前記調整ホイール主軸台(20)は、装置土台(40)の第1の領域(41)に配置され、前記キャリッジトラック(30)は、前記装置土台(40)の第2の領域(42)に少なくとも部分的に配置され、
前記装置土台(40)の前記第2の領域(42)の前記位置決め軸X
S
およびX
R
に沿った両側に前記第1の領域(41)が配置され、
前記第2の領域(42)は、前記第1の領域(41)よりも前記位置決め軸Y
W
に平行な方向に、少なくとも該方向における前記キャリッジトラック(30)の長さにわたって前方に突出し、
突出した前記第2の領域(42)の前記位置決め軸X
S
およびX
R
に沿った両側に、オペレータにとってより良好な、前記研削ホイール(11)および前記調整ホイール(21)へのアクセスが容易になる空きスペースがもたらされ、
前記キャリッジトラック(30)は、前記キャリッジ(31)を前記研削ホイール(11)と前記調整ホイール(21)との間に形成される加工領域の外へと移動させることができるところまで前記第2の領域(42)上を前方に突出し、
前記第2の領域(42)は、移動するか固定されているかにかかわらず、前記第1の領域(41)よりも前記位置決め軸Y
W
の方向に沿って後方に突出することがないことを特徴とするセンタレス円柱研削装置(100)。
【請求項2】
前記位置決め軸X
SおよびX
Rの少なくとも一方に平行な前記装置土台(40)の前記第2の領域(42)の広がりは、前記位置決め軸Y
Wに平行な前記キャリッジトラック(30)の中心軸(33)に関して、実質的に対称である、請求項
1に記載のセンタレス円柱研削装置(100)。
【請求項3】
前記位置決め軸Y
Wに平行に延びる前記装置土台(40)の前記第2の領域(42)の片側から他方側へと移動させることができる、可動であり特に枢動可能である操作パネル(50)を備える、請求項1
または2に記載のセンタレス円柱研削装置(100)。
【請求項4】
装てん用位置から保護位置へと移動可能であり、前記保護位置において、前記装置土台(40)の前記第1の領域(41)から出発して前記装置土台(40)の前記第2の領域(42)を少なくとも部分的に囲む第1のカバー(60)を備える、請求項1~
3のいずれか一項に記載のセンタレス円柱研削装置(100)。
【請求項5】
前記第1のカバー(60)は、前記装置土台(40)の前記第2の領域(42)によって形成される表面に対して垂直に移動可能である、請求項
4に記載のセンタレス円柱研削装置(100)。
【請求項6】
前記第1のカバー(60)は、前記保護位置において、前記装置土台(40)の前記第2の領域(42)から遠ざかる方を向いた側で、少なくとも部分的に開いている、請求項
4または5に記載のセンタレス円柱研削装置(100)。
【請求項7】
前記第1のカバー(60)は、少なくともセクションで少なくとも部分的に透明である、請求項
4~6のいずれか一項に記載のセンタレス円柱研削装置(100)。
【請求項8】
前記第1のカバー(60)の保護位置において、保護領域がアクセスされているか否かを検出する検出ユニットを備える、請求項
4~7のいずれか一項に記載のセンタレス円柱研削装置(100)。
【請求項9】
少なくとも前記装置土台(40)の前記第2の領域(42)をスキャン領域としてカバーして、該スキャン領域がアクセスされているか否かを検出する3Dスキャナを備える、請求項1~
3のいずれか一項に記載のセンタレス円柱研削装置(100)。
【請求項10】
前記第1のカバー(60)は、前記装てん用位置において前記被加工物支持体(32)を超えて突出することが実質的にない、請求項
4~8のいずれか一項に記載のセンタレス円柱研削装置(100)。
【請求項11】
アクセス位置から保護位置へと移動可能であり、前記装置土台(40)の前記第1の領域(41)を少なくとも部分的に囲む第2のカバー(70)を備える、請求項1~
10のいずれか一項に記載のセンタレス円柱研削装置(100)。
【請求項12】
前記第2のカバー(70)は、折り畳み可能である、請求項
11に記載のセンタレス円柱研削装置(100)。
【請求項13】
前記装置土台(40)の前記第2の領域(42)は、前記装置土台(40)の前記第1の領域(41)へと移動可能である、請求項1~
12のいずれか一項に記載のセンタレス円柱研削装置(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の冒頭部分に記載の任意の被加工物のスルーフィードおよびプランジ研削のためのセンタレス円柱研削装置に関し、これは、例えば欧州特許出願公開第1 330 336号に記載されている。スルーフィードおよびプランジ研削という用語の代わりに、スループットまたは長手方向研削、あるいは横断研削などの他の用語も文献で使用されている。
【背景技術】
【0002】
センタレス円柱研削装置は、加工対象の被加工物が機械または装置に摩擦によって固定されるのではなく、むしろ支持体(被加工物支持体)上に固定されずに乗せられる点で、他の円柱研削方法から相違する。センタレス研削は、他の円柱研削方法と比べて、より高い生産精度およびより高い生産性を可能にする。
【0003】
センタレス円柱研削装置の一般的な設計は、一般に、軸(XS)内を駆動される研削ホイールを備えた研削主軸台と、軸(XR)内をやはり駆動される調整ホイールを備えた調整ホイール主軸台とを有する。この目的のために機能する被加工物支持体またはサポートプレートが、2つの主軸台の間で装置土台にしっかりと固定される。研削主軸台および調整ホイール主軸台のためのドレッシング装置が、通常は、外側に取り付けられ、追加の被駆動軸(X’およびY’ならびにX’’およびY’’)によってそれぞれの主軸台に対して移動可能である。これらの設計は、最大6つという多数の被駆動位置決め軸が存在し、結果としてこれらの装置がきわめて高価になるという欠点を有する。
【0004】
対照的に、欧州特許出願公開第1 330 336号が、位置決め軸が3つだけであるセンタレス円柱研削装置を提案している。これは、研削主軸台および調整ホイール主軸台を調整するための被駆動位置決め軸XS(または、US)およびXRと、キャリッジトラック上の被加工物支持体を有するキャリッジのための軸XRに直交して延びる別の被駆動位置決め軸YWとを備えた上述のセンタレス円柱研削装置の場合に、キャリッジがキャリッジトラック上を安全ハウジングの外部の位置へと移動可能であり、キャリッジが内部または外部で作用するドレッシング装置を選択的に装備することにより、促進される。
【0005】
しかしながら、位置決め軸の数に関係なく、先行技術からの既知のセンタレス円柱研削装置においては、被加工物の実際の処理が行われる装置土台の領域が、キャリッジトラックが突出する装置土台の領域を横切るアクセスのための距離に離れて位置し、したがってキャリッジトラックが突出する装置土台の領域を、アクセスのために横切らなければならないことが一般的である。これにより、研削ホイールおよび/または調整ホイールの交換、ならびにこの領域に配置された構成要素へのアクセスが、全般的にさらに困難になる。しかしながら、キャリッジの通り道が突出している装置土台の領域への横からのアクセスも、延在の範囲によってやはり妨げられ、したがってアクセスは、他の空間的制約にかかわらず、実質的に正面からの介入に限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明の目的は、この先行技術から出発して、研削主軸台および調整ホイール主軸台が配置された装置土台の領域、ならびにキャリッジトラックが突出し、あるいは少なくとも部分的に配置される装置土台の領域へのアクセス性が改善されるように、センタレス円柱研削装置をさらに発展させることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題は、請求項1の特徴によって解決される。本発明のさらなる好都合な構成が、従属請求項から生じる。
【0008】
本発明によれば、任意の被加工物のスルーフィードおよびプランジ研削のための全般的なセンタレス円柱研削装置であって、回転軸を中心にして回転することができる研削ホイールを備える研削主軸台のための第1の駆動可能な位置決め軸XSと、回転軸を中心にして回転することができる調整ホイールを備える調整ホイール主軸台のための第2の駆動可能な位置決め軸XRと、実質的に研削主軸台と調整ホイール主軸台との間に配置可能な被加工物支持体とを備えており、位置決め軸XSおよびXRの少なくとも一方に直角に延びるさらなる駆動可能な位置決め軸YWが、被加工物支持体を移動させることができるキャリッジトラック上のキャリッジのために取り付けられ、研削主軸台および調整ホイール主軸台は、装置土台の第1の領域に配置され、キャリッジトラックは、装置土台の第2の領域に少なくとも部分的に配置され、装置土台の第2の領域は、位置決め軸YWに平行な方向の広がりが、装置土台の第1の領域と比べて小さい、センタレス円柱研削装置が提供される。
【0009】
位置決め軸XSおよび位置決め軸XRは、多くの場合、互いに平行に延び、研削ホイールの回転軸および調整ホイールの回転軸はそれぞれ、それぞれの位置決め軸XSおよびXRに直交して配置される。しかしながら、これに代えて、位置決め軸XSは、位置決め軸XRに対して傾けて配置されてもよい。この傾きおよび「X」に関する座標方向に対する偏差により、この位置決め軸を、より良い区別のために、位置決め軸USと称してもよい。しかしながら、簡単にするために、どちらの配置も位置決め軸XSに包含される。位置決め軸XSが位置決め軸XRに対して傾けられる場合に、研削ホイールの回転軸を、位置決め軸XSに直交して配置することができるが、これは必須ではない。しかしながら、位置決め軸YWは、そのような場合に、位置決め軸XSまたはXRの一方、好ましくは位置決め軸XRに直交して配置される。
【0010】
基本的な利点は、装置土台の第2の領域の広がりが小さいことで、少なくとも1つの空きスペースがもたらされ、したがって例えばオペレータにとってより良好なアクセスが容易になることである。換言すると、突出部が、装置土台の第1の領域から始まり、位置決め軸YWの方向に、装置土台の第2の領域として形成される。
【0011】
キャリッジトラックは、このキャリッジトラックに取り付けられ、加工のために用意された被加工物支持体を備えるキャリッジが、移動の終わりの位置においてキャリッジトラックを過ぎて研削ホイールと調整ホイールとの間に形成された加工領域へと充分に突出するならば、装置土台のこの第2の領域にのみ位置することができる。しかしながら、代案として、特には前記キャリッジトラックに取り付けられ、被加工物支持体または被加工物支持体上に位置した被加工物を備えるキャリッジが、キャリッジトラックを過ぎては突出しない場合に、可能な移動経路を延ばすためにキャリッジトラックは装置土台の第2の領域へと延びてもよい。しかしながら、この場合、キャリッジトラックは、少なくとも部分的に、すなわち加工領域から遠ざかる方を向いた端部において、装置土台の第2の領域へと延びる。
【0012】
好ましくは、空きスペースは、装置土台の第1の領域に隣接する装置土台の第2の領域の両側に、広がりが小さいことによって形成される。両側の空きスペースゆえに、とりわけ研削ホイールおよび調整ホイールに関して、アクセス性が向上する。
【0013】
好ましくは、装置土台の第2の領域は、装置土台の第1の領域から出発して、位置決め軸YWに平行な方向に、少なくともこの方向における被加工物支持体の長さにわたって延びる。したがって、位置決め軸YWの方向に装置土台の第2の領域内を延びるキャリッジトラックの長さ、すなわちこの方向における装置土台の第2の領域の最小長さは、少なくとも被加工物支持体を加工領域の外へと完全に移動させることができる長さに相当する。したがって、加工領域に介入することなく、被加工物を取り外して、被加工物支持体上に再び配置することができる。
【0014】
本発明の一構成において、装置土台の第2の領域の広がりは、位置決め軸YWに平行なキャリッジトラックの中心軸に関して、位置決め軸XSおよびXRの少なくとも一方に平行に実質的に対称である。これにより、バランスの取れたアクセスが両側において促進される。両側に等しく存在するアクセス性は、所与の空間状況に対する装置の設置の柔軟性を高め、人により、例えば左利きまたは右利きの人々による操作にとって有利な側をアクセスのために選択することができるため、操作員に関する人間工学的利点を提供することができる。これにより、「実質的に対称」という表現は、装置土台の第2の領域の基本的な形態に関連し、例えば切り替えパネルによって形成される突起または切り欠きなどの小さな輪郭の偏差は、両側からのアクセスに関して無視できる。
【0015】
好ましくは、センタレス円柱研削装置は、位置決め軸YWに平行に延びる装置土台の前記第2の領域の片側から他方側へと移動させることができる可動であり、特には枢動可能である操作パネルを備える。これにより、操作パネルを柔軟に配置することが可能になる。これにより、操作パネルをオペレータ側へと移動させることができる。操作パネルを介した操作が意図されない場合、オペレータは、操作パネルに邪魔されることがないように、パネルを例えば動作の範囲の外へと移動させることができる。
【0016】
本発明の一実施形態において、センタレス円柱研削装置は、装てん用位置から保護位置へと移動可能であり、保護位置において装置土台の第1の領域から出発して装置土台の第2の領域を少なくとも部分的に囲む第1のカバーを有する。
【0017】
装てん用位置において、第1のカバーは、カバーが被加工物支持体へと被加工物を配置するために装置土台の第2の領域を解放し、あるいは少なくとも保護位置と比べてアクセスの可能性を大きくする位置に位置する。装てん用位置は、被加工物支持体への被加工物の配置のための使用に限られず、被加工物の取り外しや、装置土台の第1の領域の構成要素へのアクセスにも使用することができる。装てん用位置とは対照的に、装置土台の第2の領域へのアクセスは、第1のカバーが保護位置にあるときに制限され、あるいは完全に防止される。
【0018】
カバーは、連続的であるように設計される必要はなく、代わりに、個々のカバーセクションから形成されてもよい。これにより、例えば重要な安全ゾーンにのみカバーセクションが設けられるという点で、材料費を抑える可能性が存在する。さらに、カバーセクションまたは全体としての第1のカバーは、格子またはケージのような特性を有してもよい。個々のカバーセクションは、好ましくは、互いに独立して装てん用位置または保護位置へと移動可能であってよい。第1のカバーまたは個々のカバーセクションの移動は、手動で実行されても、駆動されてもよく、特には、例えば被加工物支持体が加工領域から出て装置土台の第2の領域へと移動した後の第1のカバーの装てん用位置への自動移動など、プロセスの状態に応じて自動的に駆動されてよい。
【0019】
特には、第1のカバーは、装置土台の第2の領域によって形成される表面に対して垂直に移動可能である。第1のカバーは、装置土台に隣接し、床へと向けられた側壁の方向に、省スペースなやり方で案内することができる。第1のカバーは、特に好ましくは、側壁に対して内側に案内され、すなわち少なくとも部分的に側壁へと格納可能であるように構成される。第1のカバーを、この方法によって保護することができる。さらに、側壁は、直接接触領域の可動な構成要素を最小限に抑え、したがって衝突または巻き込みのリスクを最小限に抑えることによって、オペレータを保護するようにも機能することができる。
【0020】
1つの構成において、第1のカバーは、保護位置において、装置土台の第2の領域から遠ざかる方を向いた側で、少なくとも部分的に開いている。換言すると、開口領域が、装置土台の第2の領域によって形成される表面の反対側に形成される。このようにして、第1のカバーの設計を簡略化することができる。しかしながら、開口領域は、たとえ第1のカバーが移動できなくなった場合でも、例えばそのような場合に修理作業のために使用することができるアクセスの可能性も提供する。しかしながら、開口領域は、好ましくは、少なくとも危険な領域へのアクセスをより困難にし、あるいは従来からの基準に従ってそのようなアクセスを防止するために、例えば充分な高さの位置に配置される。
【0021】
好ましくは、第1のカバーは、少なくともセクションで少なくとも部分的に透明である。これにより、装置土台の第2の領域の少なくとも一部の領域を眺めることができ、したがって目視検査が可能になり、さらには/あるいは監視、文書化、などのための光学部品を、やはり第1のカバーによって保護しつつ使用することが可能になる。
【0022】
一実施形態において、センタレス円柱研削装置は、第1のカバーの保護位置において、保護領域がアクセスされているかどうかを検出する検出ユニットを有する。対応する検出信号を、危険信号を発生させるために使用することができ、さらには/あるいは危険な状況に対抗すべく装置を停止させるために使用することができる。検出ユニットによって監視される保護領域は、保護位置のカバーによって形成される領域よりも小さくてよい。例えば、第1のカバーは高さを有することができ、その高さゆえに、下方に位置するリスク領域へのアクセスがよりよく防止される。検出ユニットによって監視される保護領域は、この例において、単に例えば下方に位置するリスク領域に限定される。しきい値の設定に応じて、検出信号への反応が変化してもよく、例えば距離センサを用いる場合に、音響および/または視覚警告信号が検出信号の存在において最初に発せられ、臨界距離を下回ると装置が停止させられる。
【0023】
一実施形態において、センタレス円柱研削装置は、少なくとも装置土台の保護位置の領域をカバーする3D検出ユニットを備える。物体がスキャン領域に進入するとすぐに、警告信号が生成され、さらには/あるいは危険な状況に対処するために装置が停止させられる。
【0024】
好ましくは、装てん用位置において、第1のカバーは、実質的に被加工物支持体上に突出しない。これにより、被加工物支持体へのおおむね自由なアクセスが容易になる。したがって、「実質的に」という表現は、オペレータの人間工学または把持アームなどのハンドリング構成要素による直接のアクセスに影響を及ぼす妨害の輪郭が、被加工物の装てんまたは取り出しのための装てん用位置の第1のカバーによって形成されることがないと理解されるべきである。
【0025】
好ましくは、センタレス円柱研削装置は、アクセス位置から保護位置へと移動可能であり、装置土台の第1の領域を少なくとも部分的に囲む第2のカバーを備える。アクセス位置において、研削主軸台および調整ホイール主軸台などの装置土台の第1の領域に配置された構成要素にアクセスすることが可能であり、これは、例えば研削ホイールまたは調整ホイールを交換するために必要である。第2のカバーの保護位置は、リスク状況が発生する領域へのアクセスを防止し、あるいは少なくとも制限する。
【0026】
特には、装置土台の第1の領域は、保護位置にある第2カバーによって外部からのアクセスに対して完全に閉じられる。一変種においては、装置土台の第1の領域と装置土台の第2の領域との間の遷移の領域において保護位置の第2のカバーに開口部が残り、この開口部は、加工領域に出入りし、あるいは第1の領域から第2の領域へと移動し、もしくはその反対に移動するキャリッジまたは被加工物支持体の移動を容易にする。開口部は、他の介入を防止し、あるいはそのような可能性を少なくとも低減するために、できる限り小さいことが好ましく、したがって、特には開口部を通って移動することができるキャリッジ上に位置した被加工物表面上の被加工物の寸法に合わせられる。
【0027】
本発明の一実施形態において、第2のカバーは折り畳み可能である。これにより、第2のカバーの簡単で頑丈な設計が容易になる。
【0028】
第1および第2のカバーを、別個のカバーとして設計する必要はない。あるいは、第1のカバーが第2のカバーの一部を形成してもよく、逆もまた可能である。すでに述べた利点を備えた第1のカバーの実施形態は、カバーの空間的割り当てに関係なく、第2のカバーに相応に移転可能であり、逆もまた可能である。
【0029】
本発明の一実施形態において、装置土台の第2の領域は、装置土台の第1の領域へと移動可能である。したがって、装置土台の第2の領域によって形成される突出部の長さを、調整することが可能である。したがって、例えば加工に関してキャリッジの移動経路が短い場合や、機械の不使用または少なくとも装置土台の第2の領域の不使用の場合に、使われない長さを、空きスペースを提供するために使用することができる。装置土台の第2の領域を第1の領域を通って移動させ、位置に応じて両側に突出部を形成できることで、両側からの装備を可能にすることができる。
【0030】
本発明の特徴および機能は、図面を参照して典型的な実施形態によって以下でさらに説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】センタレス円柱研削装置を斜め上方から見た斜視図であり、処理要素および位置決め要素と、装置土台の第1および第2の領域への区分とを示している。
【
図2】センタレス円柱研削装置を斜め上方から見た斜視図であり、可動な操作パネルの実施形態としての枢動可能な操作パネルを示している。
【
図3】センタレス円柱研削装置を斜め上方から見た斜視図であり、装置土台の第2の領域によって形成される表面に垂直に移動することができる第1のカバーの一実施形態としての装置土台において案内される第1のカバーを示している。
【
図4】センタレス円柱研削装置の斜め上方からの斜視図であり、アクセス位置から保護位置へと移動可能であり、装置土台の第1の領域を少なくとも部分的に囲む第2のカバーの一実施形態としての第2のカバーを示している。
【
図5】センタレス円柱研削装置の斜め上方からの斜視図であり、装置土台の第2の領域が装置土台の第1の領域へと移動可能である実施形態を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図はそれぞれ、説明される事実に不可欠な構成要素を示している。簡単にするために、他ですでに示された構成要素は、たとえセンタレス円柱研削装置に含まれており、あるいは少なくとも含まれてよいとしても、必ずしも再度は示されない。
【0033】
図1によるセンタレス円柱研削装置100は、第1の被駆動位置決め軸X
S内を移動可能な研削主軸台10上の研削ホイール11を備える。調整ホイール主軸台20上の調整ホイール21が、第2の被駆動位置決め軸X
R内を移動可能である。これにより、位置決め軸X
Sは、位置決め軸X
Rに平行に延びる。位置決め軸X
SおよびX
Rは、研削ホイール11および調整ホイール21のそれぞれの回転軸12、22に直交して配置される。被加工物用の被加工物支持体32が、研削主軸台10と調整ホイール主軸台20との間に配置される。被加工物支持体32は、キャリッジ31上に配置され、キャリッジ31は、被駆動位置決め軸Y
W内で、軸X
SおよびX
Rに直交するキャリッジトラック30上を移動可能である。被加工物支持体32を、キャリッジ31によって、研削ホイール11および調整ホイール21の危険領域の外へと移動させることができる。研削ホイール11および/または調整ホイール21のための少なくとも1つのドレッシングツールを備えるドレッシング装置(ここでは図示せず)、ならびに/あるいは冷却剤供給部が、キャリッジ31上に配置されてもよい。
【0034】
研削主軸台10、調整ホイール主軸台20、およびキャリッジトラック30上のキャリッジ31は、好ましくは、好ましくは熱安定性の天然花こう岩から製作される装置土台40上に取り付けられる。これにより、研削主軸台10および調整ホイール主軸台20が、装置土台40の第1の領域41に配置される一方で、キャリッジトラック30は、少なくとも部分的に装置土台40の第2の領域42へと突出する。装置土台40の第1の領域41および第2の領域42は、装置土台40の第2の領域42の位置決め軸Y
Wに平行な方向の広がりが、装置土台40の第1の領域41と比べて小さいという点で区別可能である。換言すると、装置土台40の第2の領域42は、装置土台40の第1の領域41から始まり、位置決め軸Y
Wの方向に延びる突出部を形成する。
図1に示されるように、装置土台40の第2の領域42のおかげで、均一な幅の装置土台を備えたセンタレス円柱研削装置と比較して、装置の個々の構成要素へのより良好なアクセスを促進する広い空きスペースが、両側にもたらされる。
【0035】
図1に示される構成において、キャリッジトラック30は、被加工物支持体32を備えたキャリッジ31を研削ホイール11と調整ホイール21との間に形成される加工領域の外へと移動させることができる所まで、装置土台40の第2の領域42へと突出する。第2のカバー70(
図4)を使用する場合、キャリッジ31および/または被加工物支持体32を、好ましくは、キャリッジトラック30によって、第2のカバー70の加工領域とは反対側の位置へと移動させることができる。したがって、装置土台40の第2の領域42は、位置決め軸Y
Wの方向に、キャリッジ31または被加工物支持体32のそれぞれの必要な移動のためのキャリッジトラック30の収容を容易にする最小限の長さを有する。装置土台40の第2の領域42を最小限の長さを超えて延ばすと、結果として生じる表面を、例えば
図2に示される枢動可能な操作パネル50などの他の構成要素を配置するために使用し、さらには/あるいは置き場として使用する機会がもたらされる。
【0036】
装置土台40の第2の領域42が、キャリッジトラック30の中心軸33に対して、位置決め軸XSおよびXRに平行な方向に対称に広がっているため、オペレータが操作またはアクセスのための好ましい方向に関する位置を自由に選択できるように、等しく良好なアクセス性が両側からもたらされる。
【0037】
図2に示される可動な操作パネル50の配置は、広がりの少なさゆえに、装置土台40の第2の領域42によってもたらされる空きスペースの2面の使用を支援する。操作パネル50を、枢動アーム51によって枢支軸52を中心にして、操作プロセスのためにオペレータのそれぞれの好ましい側へと移動させることができる。しかしながら、これに加えて、操作パネル50を、更新または修理の作業のために、この目的のために提供された作業スペースから移動させることも可能である。
【0038】
図3による第1のカバー60の構成において、第1のカバー60は、装置土台40によって形成される表面に対して垂直に移動する。第1のカバー60は、装置土台40の第2の領域42の側壁および位置決め軸Y
Wの方向において第2の領域42に面する装置土台40の第1の領域41の側壁の内側に延在する。
図3に示される第1のカバー60の位置は、第1のカバー60によって取り囲まれる領域へのアクセスの可能性が制限される保護位置に相当する。保護位置において、ここでの第1のカバー60は、装置土台40から遠い側において開いている。換言すると、取り囲まれた領域を完全に包囲することなく、横方向の保護を提供する。これにより、例えば、操作パネル50の枢動アーム51を第1のカバー60内の装置土台40の第2の領域42に配置することができ、第1のカバー60が保護位置へと移動しても操作パネル50は依然として利用可能である。さらに、保護位置における第1のカバーの高さに応じて、オペレータによる意図的な干渉が、少なくとも偶発的な干渉を充分に防止しつつ、依然として提供され、さらには/あるいは少なくとも視覚的な制御の可能性が提供される。
【0039】
第1のカバー60に加えて、第2のカバー70も
図4において提供される。ここで、第1のカバー60は、第1のカバー60が完全に装置土台40内へと移動した装てん用位置に示されている。したがって、第1のカバー60は、妨害の輪郭を形成しない。
【0040】
ここで、第2のカバー70は、保護位置に示されており、第1の枢支軸71および第2の枢支軸72を中心にして折り畳むことができるように設計されている。この位置において、第2のカバー60は、装置土台40の第1の領域41内の研削ホイール11を有する研削主軸台10および調整ホイール21を有する調整ホイール主軸台20を、装置土台40によって形成される表面に対して垂直であり、位置決め軸XSおよびXRに平行に延びている2つの側面、および第1の領域41から遠い側においてこれらの側面の間に形成された表面から包囲する。第2のカバー70のセクションを、例えば装置土台40の第1の領域41の第2の領域42とは反対側の後壁など、他のシステム構成要素によって形成してもよい。
【0041】
さらに、第2のカバー70は、装置土台の第2の領域42に面する側面に開口部73を提供する。キャリッジ31および被加工物を含む被加工物支持体32は、第2のカバーが保護位置にあるときも、開口部73を通って装置土台40の第1の領域41と第2の領域42との間を移動することができる。開口部73は、開口部73が開口部73を通るキャリッジまたは被加工物支持体の移動のためだけに開かれるように、閉鎖可能であってよい。
【0042】
図5が、装置土台40の斜視図を示しており、装置土台40の第2の領域42は、位置決め軸Y
Wに平行な移動方向43にて、装置土台40の第1の領域41内に移動可能であり、さらには/あるいは装置土台40の第1の領域41を通って移動可能である。この描写が、第2の領域が後方に突出するまでの移動方向43の第1の領域41を通る第2の領域42の移動に関するとしても、センタレス円柱研削装置100は、第2の領域42が対応する移動によって後方への突出部を形成することがないようなやり方で設計されてもよい。この目的のために、第2の領域42を短くすることができ、さらには/あるいは第1の領域41は、第2の領域42のための凹部を有することができる。
【0043】
本発明は、上述の実施形態に限定されない。投影がここでは矩形として示されている場合でも、遷移は半径、テーパ、などを有することができる。枢支軸を中心にして枢動することができる枢動アームを使用する代わりに、操作パネルをガイド内で装置土台に沿って移動させることも可能である。枢動アームを設ける場合、枢動アームは、上方から始まるように設計されてもよい。