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特許7328961多層培養容器観察システム、台車装置および多層培養容器観察装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】多層培養容器観察システム、台車装置および多層培養容器観察装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20230809BHJP
   C12M 1/32 20060101ALI20230809BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
C12M1/00 C
C12M1/32
C12M1/34 A
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020521677
(86)(22)【出願日】2019-01-11
(86)【国際出願番号】 JP2019000621
(87)【国際公開番号】W WO2019230035
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】P 2018103807
(32)【優先日】2018-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000180313
【氏名又は名称】四国計測工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000173692
【氏名又は名称】一般財団法人阪大微生物病研究会
(74)【代理人】
【識別番号】100123984
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 晃伸
(74)【代理人】
【識別番号】100102314
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 阿佐子
(74)【代理人】
【識別番号】100159178
【弁理士】
【氏名又は名称】榛葉 貴宏
(72)【発明者】
【氏名】田辺 広幸
(72)【発明者】
【氏名】河田 康臣
(72)【発明者】
【氏名】小野 和弘
(72)【発明者】
【氏名】松岡 昇治
【審査官】坂崎 恵美子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-092952(JP,A)
【文献】特開2010-029632(JP,A)
【文献】特開2004-344016(JP,A)
【文献】登録実用新案第3168263(JP,U)
【文献】2016-2017 TAITEC-offline総合カタログ,タイテック株式会社,2015年09月01日,p.043
【文献】多層培養器反転装置 WAS-013, 四国計測工業株式会社, [online],2015年12月28日,[2018年7月3日検索],<URL:http://www.yonkei.co.jp/products/industrial/automation/inversion.html>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00
C12M 1/32
C12M 1/34
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のトレイを内蔵する多層培養容器を搭載して移動可能な台車装置と、前記多層培養容器の各トレイの被観察物を観察可能な観察装置と、を有する多層培養容器観察システムであって、
前記台車装置は、
前記多層培養容器の対向する二つの側面の上端から下端までを露出させる側面露出部と、前記台車装置に搭載した前記多層培養容器のずれをガードする枠部とを有する枠体を備え、
前記観察装置は、
前記多層培養容器を搭載した前記台車装置を収容する収容部と、
光学系を有し当該光学系が結像した像を出力する撮像装置と、を備え、
前記収容部に前記多層培養容器を搭載する前記台車装置を収容した場合に、前記側面露出部が、前記撮像装置の光軸上に配置される多層培養容器観察システム。
【請求項2】
請求項1に記載の多層培養容器観察システムであって、
前記多層培養容器を保持してハンドリングする操作装置をさらに有し、
前記台車装置は、
車輪を有する台車と、
前記台車の上に前記台車と着脱自在に搭載され、前記多層培養容器を前記台車に固定する固定部材と、を有し、
前記操作装置は、前記固定部材ごと前記多層培養容器を保持しハンドリングする、多層培養容器観察システム。
【請求項3】
請求項1または2に記載の多層培養容器観察システムにおいて、
前記撮像装置に対向して設けられており、前記撮像装置に向けて光を照射する照明装置をさらに有し、
前記収容部に前記多層培養容器を搭載する前記台車を収容した場合に、前記多層培養容器を間に挟んで、前記撮像装置、前記多層培養容器、および前記照明装置が同一の光軸上に配置される多層培養容器観察システム。
【請求項4】
請求項3に記載の多層培養容器観察システムにおいて、
前記撮像装置および前記照明装置を第1方向および第2方向に駆動させる駆動部をさらに有し、
前記台車は、複数の前記多層培養容器を前記第1方向に並列して搭載可能な搭載スペースを有している多層培養容器観察システム。
【請求項5】
請求項3または4に記載の多層培養容器観察システムにおいて、
前記撮像装置および前記照明装置の光軸が、前記多層培養容器のトレイの底面に対して40~50°の範囲の角度で交差するように、前記撮像装置および前記照明装置が配置されている多層培養容器観察システム。
【請求項6】
複数のトレイを内蔵する多層培養容器を搭載して搬送するために用いられ、当該多層培養容器の各トレイの被観察物を観察可能な観察装置に収納される台車装置であって、
車輪を有する台車と、
前記台車の上に前記台車と着脱自在に搭載され、前記多層培養容器を前記台車に固定する固定部材とを有し、
前記固定部材は、複数のトレイを内蔵する多層培養容器を固定する枠体を備え、
前記枠体は、前記多層培養容器の対向する二つの側面の上端から下端までを露出させる側面露出部と、前記台車装置に搭載した前記多層培養容器のずれをガードする枠部とを有する台車装置。
【請求項7】
請求項6に記載の台車装置において、前記枠体を複数組備える台車装置。
【請求項8】
前記多層培養容器を搭載した、請求項6または7に記載の台車装置を収容する収容部と、光学系を有し当該光学系が結像した像を出力する撮像装置と、を備える多層培養容器観察装置であって、
前記収容部に前記多層培養容器を搭載する前記台車装置を収容した場合に、前記側面露出部が、前記撮像装置の光軸上に配置される多層培養容器観察装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のトレイを内蔵する多層培養容器における被観察物を観察するための多層培養容器観察システム、台車装置および多層培養容器観察装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のトレイを内蔵する多層培養容器における被観察物(培養物)を観察するための多層培養容器観察装置が知られている。このような多層培養容器観察装置において、各トレイにおける培養細胞の状態を観察するために、多層培養容器を間に挟んで、光学観察手段を上斜め向き、照明手段を下斜め向きに対向させて、光学観察手段と多層培養容器と照明手段とを同一の光軸上に配置した培養容器観察装置が知られている(たとえば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第4049263号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、多層培養容器の被観察物を培養容器観察装置で観察する場合に、作業者が、台車で複数の多層培養容器を培養容器観察装置の近くまで運び、台車から培養液が入っている多層培養容器を降ろし、その後、培養容器観察装置の観察位置である台座に多層培養容器を置いて、多層培養容器における被観察物を観察する必要があった。特に、複数の多層培養容器において被観察物を観察する場合には、培養液が入った多層培養容器を1つずつ載せ降ろしする作業が必要となり、作業者の労力が増大してしまうという問題があった。また、作業者が手作業で多層培養容器を取り扱うため、多層培養容器内の培地に不必要な衝撃を与えてしまったり、多層培養容器を不必要に触ることで多層培養容器を破損してしまい汚染が生じてしまう場合もあった。
【0005】
本発明は、作業者が多層培養容器における被観察物を容易に観察することが可能な多層培養容器観察システム、台車装置および多層培養容器観察装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る培養容器観察システムは、複数のトレイを内蔵する多層培養容器を搭載して移動可能な台車装置と、前記多層培養容器の各トレイの被観察物を観察可能な観察装置と、を有する多層培養容器観察システムであって、前記台車装置は、前記多層培養容器の対向する二つの側面の上端から下端までを露出させる側面露出部と、前記台車装置に搭載した前記多層培養容器のずれをガードする枠部とを有する枠体を備え、前記観察装置は、前記多層培養容器を搭載した前記台車装置を収容する収容部と、光学系を有し当該光学系が結像した像を出力する撮像装置と、を備え、前記収容部に前記多層培養容器を搭載する前記台車装置を収容した場合に、前記側面露出部が、前記撮像装置の光軸上に配置される。
上記培養容器観察システムにおいて、前記多層培養容器を保持してハンドリングする操作装置をさらに有し、前記台車装置は、車輪を有する台車と、前記台車の上に前記台車と着脱自在に搭載され、前記多層培養容器を前記台車に固定する固定部材と、を有し、前記操作装置は、前記固定部材ごと前記多層培養容器を保持しハンドリングするように構成することができる。
上記培養容器観察システムにおいて、前記撮像装置に対向して設けられており、前記撮像装置に向けて光を照射する照明装置をさらに有し、前記収容部に前記多層培養容器を搭載する前記台車を収容した場合に、前記多層培養容器を間に挟んで、前記撮像装置、前記多層培養容器、および前記照明装置が同一の光軸上に配置されるように構成することができる。
上記培養容器観察装置システムにおいて、前記撮像装置および前記照明装置を第1方向および第2方向に駆動させる駆動部をさらに有し、前記台車は、複数の前記多層培養容器を前記第1方向に並列して搭載可能な搭載スペースを有しているように構成することができる。
上記多層培養容器観察システムにおいて、前記撮像装置および前記照明装置の光軸が、前記多層培養容器のトレイの底面に対して40~50°の範囲の角度で交差するように、前記撮像装置および前記照明装置が配置されているように構成することができる。
【0007】
本発明に係る台車装置は、複数のトレイを内蔵する多層培養容器を搭載して搬送するために用いられ、多層培養容器の各トレイの被観察物を観察可能な観察装置に収納される台車装置であって、車輪を有する台車と、前記台車の上に前記台車と着脱自在に搭載され、前記多層培養容器を前記台車に固定する固定部材とを有し、前記固定部材は、複数のトレイを内蔵する多層培養容器を固定する枠体を備え、前記枠体は、前記多層培養容器の対向する二つの側面の上端から下端までを露出させる側面露出部と、前記台車装置に搭載した前記多層培養容器のずれをガードする枠部とを有する。
上記台車装置において、前記枠体を複数組備える構成することができる。
【0008】
本発明に係る多層培養容器観察装置は、前記多層培養容器を搭載した上記台車装置を収容する収容部と、光学系を有し当該光学系が結像した像を出力する撮像装置と、を備える多層培養容器観察装置であって、前記収容部に前記多層培養容器を搭載する前記台車装置を収容した場合に、前記側面露出部が、前記撮像装置の光軸上に配置される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、作業者が多層培養容器の被観察物を容易に観察することが可能な多層培養容器観察システム、台車装置および多層培養容器観察装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態に係る多層培養容器を説明するための図である。
図2】多層培養容器における各トレイへの液体の分配方法を説明するための図である。
図3】第1実施形態に係る多層培養容器観察システムを示す斜視図である。
図4】本実施形態に係る台車装置を示す斜視図である。
図5】本実施形態に係る台車装置の観察状態を例示する斜視図である。
図6】(A)は本実施形態に係る横枠部材を示す図であり、(B)は横枠部材を取り付ける前の台車装置を示す図であり、(C)は横枠部材を取り付けた台車装置を示す図である。
図7】本実施形態に係る多層培養観察装置を示すブロック図である。
図8】撮像装置と多層培養容器と照明装置との位置関係を説明するための図である。
図9】多層培養容器操作装置を説明するための斜視図である。
図10】多層培養容器操作装置を示すブロック図である。
図11】固定部材の被係止部と多層培養容器操作装置の係止部材との関係を説明するための図である。
図12】多層培養容器を多層培養容器操作装置のアームに仮固定した状態を示す斜視図である。
図13】回転軸X1を中心とする回転部の回転動作の一例を示す図である。
図14】回転軸X2を中心とする回転部の回転動作および回転軸X1およびX2を中心とする回転部の回転動作の一例を示す図である。
図15】多層培養容器操作装置の振盪部を突出させた状態を示す斜視図である。
図16】振盪動作におけるアームと挿通孔との関係を説明するための図である。
図17】第3実施形態に係る多層培養容器操作装置を説明するためのブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本実施形態に係る多層培養容器観察システム1について説明する。本実施形態に係る多層培養容器観察システム1は、細胞培養等に利用される多層培養容器30における培養細胞を観察するためのシステムである。そこで、まず、本実施形態に係る多層培養容器30について説明する。図1は、本実施形態に係る多層培養容器30を説明するための図であり、多層培養容器30を示す断面図である。多層培養容器30は、細胞を大量に培養するために、図1に示すように、複数のトレイ31が積層された構成となっている。多層培養容器30で細胞を培養する場合、たとえば図2(A)に示すように、ベントキャップ32が下側となるように多層培養容器30を90°ほど傾ける。そして、ベントキャップ32とポンプとを接続し、ポンプにより多層培養容器30内に細胞を播種した培養液を導入する。次いで、図2(B)に示すように、多層培養容器30を直立に戻すと、多層培養容器30の各トレイ31に培養液が分配され、各トレイ31で細胞培養が行われることとなる。
【0012】
≪第1実施形態≫
このような多層培養容器30における培養細胞を観察するために、本実施形態に係る多層培養容器観察システム1は、図3に示すように、多層培養容器観察装置10と、台車装置20とを有する。なお、図3は、多層培養容器観察システム1を示す斜視図であり、多層培養容器30を搭載した台車装置20を、観察位置である多層培養容器観察装置10の内部まで移動させている状態を示している。以下に、各構成について説明する。
【0013】
図4は、本実施形態に係る台車装置20を説明するための斜視図である。台車装置20は、図4(A)に示すように、車輪22を有する台車21と、多層培養容器30を台車21に固定する固定部材23とから構成される。また、台車装置20において、台車21と固定部材23とは着脱自在になっている。具体的には、台車21に対して固定部材23を上に(Z軸正方向)持ち上げることで、図4(B)に示すように、固定部材23を台車21から取り外すことができる。また、反対に、固定部材23を台車21の上に置くことで、固定部材23を台車21に取り付けることができる。なお、台車21と固定部材23とは互いに嵌合する嵌合部(不図示)をそれぞれ有しており、これにより、台車21と固定部材23とは上下方向(Z軸方向)のみに着脱自在となっており、水平方向(XY軸方向)においては固定されている。その結果、台車装置20の移動中に、固定部材23が台車21から落下することを防止することができる。
【0014】
固定部材23は、図4に示すように、複数の多層培養容器30を並列に配置した状態で、当該複数の多層培養容器30を同時に固定可能となっている。なお、本実施形態では、最大で4つの多層培養容器30が搭載できるように台車装置20が構成されているが、この構成に限定されず、最大で1~3の多層培養容器30を搭載できるように台車装置20を構成してもよいし、あるいは5以上の多層培養容器30を搭載できるように台車装置20を構成することもできる。
【0015】
固定部材23は、図4(A)に示すように、多層培養容器30が載置される台座24と、多層培養容器30が水平方向(XY軸方向)にずれないように多層培養容器30の4つの長辺をガードする枠部材25と、枠部材25に係止し、多層培養容器30を回転させた場合に、多層培養容器30が上方向(Z軸方向)から飛び出ないようにガードする留め部材26とを有している。たとえば、作業者は、台座24の上であり、かつ、枠部材25の枠内に、多層培養容器30を置き、その後、多層培養容器30の上側を留め部材26で押さえるようにして、留め部材26と枠部材25とを係止させることで、多層培養容器30を固定部材23に固定させることができる。
【0016】
また、図5は、本実施形態に係る台車装置20の観察状態を例示する斜視図であり、図6は、横枠部材251の着脱方法を説明するための図である。図4に示す台車装置20において、ネジなどの留め具29を緩めることで(あるいは留め具29を外すことで)、図5に示すように、枠部材25の一部を構成する一対の横枠部材251を固定部材23から取り外すことができる。これにより、台車装置20の側面の一部が上端から下端まで露出する側面露出部を有することとなり、多層培養容器観察装置10により多層培養容器30での培養状況を観察する場合に、横枠部材251が邪魔で多層培養容器30が観察できないことを有効に防止することができる。なお、後述する多層培養容器操作装置40を用いて多層培養容器30を操作する場合は、安全のため、図6(A)~(C)に示すように、横枠部材251の溝部を留め具29に掛けて、留め具29を締め付けることで、一対の横枠部材251を固定部材23に取り付けることが好ましい。このように、一対の横枠部材251は枠部材25に自在に着脱可能となっている。
【0017】
なお、横枠部材251は、枠部材25に取り付けることで、図4に示すように、多層培養容器30を固定することができるが、仮に、横枠部材251を枠部材25に取り付けていなくても残りの枠部材25(多層培養容器30の積層方向に延在する枠部材25)が多層培養容器30の四隅を固定しているため、多層培養容器観察装置10により多層培養容器30の培養組織を観察する際に、多層培養容器30が台車装置20から落下することを有効に防止することができるようになっている。
【0018】
次に、本実施形態に係る多層培養容器観察装置10について説明する。図7は、本実施形態に係る多層培養容器観察装置10を示すブロック図である。図3および図7に示すように、多層培養容器観察装置10は、撮像装置11と、照明装置12と、第1~第4フレーム111,112,121,122と、駆動部13と、収容部14と、タッチパネル部15と、制御部16と、ファン17とを有する。
【0019】
撮像装置11は、レンズを有し、多層培養容器30の各トレイ31の底面に焦点を合わせ、各トレイ31の底面に付着する培養細胞を撮像するためのカメラである。撮像装置11は、カメラであれば特に限定されないが、ズームレンズを搭載し、各トレイ31の像を異なる倍率で撮像できることが好適である。また、本実施形態において、撮像装置11は、X軸方向に延伸する第1フレーム111に係合しており、駆動部13により、撮像装置11を第1フレーム111に沿ってX軸方向に移動させることができる。また、第1フレーム111は、Z軸方向に延伸する第2フレーム112と係合しており、駆動部13により、第1フレーム111を第2フレーム112に沿ってZ軸方向に移動させることができ、それに伴い、撮像装置11もZ軸方向に移動させることができる。このように、撮像装置11は、駆動部13により、第1フレーム111および第2フレーム112に沿って、2次元方向(XZ軸方向)に移動することができる。なお、駆動部13は、電力モーターおよび/またはエアシリンダーを備えており、これにより、各フレーム111~114を駆動させることができる。
【0020】
照明装置12は撮像装置11に向けて光を照射する照明装置である。照明装置12も特に限定されないが、たとえば光源がLEDのものを使用することができる。また、本実施形態において、照明装置12は、第3フレーム121に係合しており、駆動部13により、照明装置12を、第3フレーム121に沿ってX軸方向に移動させることができる。また、第3フレーム121は、第4フレーム122と係合しており、駆動部13により、第3フレーム121を第4フレーム122に沿ってZ軸方向に移動させることで、それに伴い、照明装置12もZ軸方向に移動させることができる。このように、照明装置12は、撮像装置11と同様に、駆動部13により、第3フレーム121および第4フレーム122に沿って、2次元方向(XZ軸方向)に移動することができる。
【0021】
また、本実施形態において、多層培養容器30を搭載する台車装置20が収容部14に収容されている場合には、図8に示すように、多層培養容器30を間に挟んで、撮像装置11と照明装置12とが対向するように配置される。そのため、図3に示す例において、撮像装置11が、多層培養容器30の右側(Y軸正方向側)に配置されている場合には、照明装置12は、多層培養容器30の左側(Y軸負方向側)に配置されることとなる。なお、図8は、撮像装置と多層培養容器と照明装置との位置関係を説明するための図である。
【0022】
撮像装置11と照明装置12とは、図8に示すように、多層培養容器30を斜めに通過する同一の光軸L上に配置されることが好適であり、撮像装置11が斜め上を向き、照明装置12が斜め下を向くように設定されることが好適である。また、撮像装置11および照明装置12の向きはそれぞれ調整することができるが、間にあるトレイ31の底面に対して、光軸Lが略45°の角度(たとえば40~50°の角度)で交差するように、撮像装置11および照明装置12の向きを調整することが好ましい。
【0023】
また、本実施形態において、多層培養容器30を搭載する台車装置20を収容部14に収容する場合には、図5に示すように、枠部材25から横枠部材251を取り外して、台車装置20が収容部14に収容される。枠部材25から横枠部材251を取り外すことで、撮像装置11と照明装置12との光軸上に横枠部材251が存在しなくなるため、多層培養容器30の各層の培養状況を好適に観察することが可能となる。
【0024】
駆動部13は、撮像装置11および照明装置12を2次元方向(XZ軸方向)に移動させる。特に、本実施形態において、駆動部13は、撮像装置11と照明装置12とが同一の光軸L上に配置され、かつ、撮像装置11と照明装置12との相対位置が変わらないように、撮像装置11と照明装置12とを同じ方向に同じ距離だけ移動させる。たとえば、本実施形態では、後述するように、作業者がタッチパネル部15を操作して観察したいトレイ31の位置を指示することができ、たとえば作業者がタッチパネル部15を操作してX軸正方向に5mm移動させることを指示した場合には、駆動部13は、撮像装置11を第1フレーム111に沿ってX軸正方向に5mm移動するように駆動するとともに、照明装置12を第3フレーム121をX軸正方向に5mm移動するように駆動する。また、駆動部13は、撮像装置11および照明装置12を上下方向(Z方向)に移動することで異なる層(段)のトレイ31を観察することができ、また、撮像装置11および照明装置12を左右方向(X方向)に移動させることで異なる多層培養容器30を観察することができる。
【0025】
収容部14は、多層培養容器30を搭載した台車装置20を収容するための空間である。収容部14は、台車装置20を所定の観察位置に固定するための固定具を備えており、これにより、台車装置20を収容部14の観察位置に固定し、撮像装置11で多層培養容器30の各トレイ31の培養細胞を撮像することができる。また、収容部14の入り口には、扉141が取り付けられている。
【0026】
タッチパネル部15は、作業者が指示を入力する入力部として機能するとともに、撮像装置11が撮像した画像を表示する表示部としても機能する。本実施形態では、タッチパネル部15のディスプレイの表示領域が入力用と撮像画像表示用とに分割されており、撮像画像表示用の表示領域において撮像画像が表示されるとともに、入力用の表示領域において作業者が指示するためのボタン(アイコン)が表示されている。作業者は、入力用の表示領域に表示されたボタン(アイコン)を押すことで、撮像装置11が撮像する位置などを指示することが可能となっている。
【0027】
制御部16は、プログラムが格納されたROM(Read Only Memory)と、ROMに格納されたプログラムを実行するCPU(Central Processing Unit)と、アクセス可能な記憶装置として機能するRAM(Random Access Memory)と、を備える。制御部16は、予め記憶したプログラムに基づいて、撮像装置11が撮像した撮像画像をタッチパネル部15に表示したり、タッチパネル部15に入力された作業者の指示に基づいて駆動部13に駆動命令を出力する。また、制御部16の上方にはファン17が設けられている。ファン17は、制御部16に対して吸引を行うように設置されており、これにより、制御部16を冷却することができる。本実施形態に係る多層培養容器観察装置10は、培養に適した比較的高い温度(たとえば37℃)で使用されることが多いため、ファン17を設置することで、制御部16が熱で故障してしまうことを低減することができる。
【0028】
以上のように、第1実施形態に係る多層培養容器観察システムでは、台車装置20に多層培養容器30を搭載したまま、各多層培養容器30の各トレイ31における培養細胞を観察することができるため、従来のように、多層培養容器30を1つずつ専用の観察位置(台座)に載せ替える必要がなく、作業者の労力を低減することができるとともに、多層培養容器30内の培地に不必要な衝撃を与えてしまったり、多層培養容器30を不必要に触ってしまうことを防止することができる。また、本実施形態に係る多層培養容器観察システム1では、1台の台車装置20に複数の多層培養容器30を並行して搭載することができるため、複数の多層培養容器30の各トレイ31における培養細胞を一度に観察することもできる。
【0029】
≪第2実施形態≫
次に、第2実施形態に係る多層培養容器観察システム1aについて説明する。第2実施形態に係る多層培養容器観察システム1aでは、第1実施形態に係る多層培養容器観察システム1の構成に加えて、多層培養容器30を操作(ハンドリング)するための多層培養容器操作装置40を有する。
【0030】
すなわち、第2実施形態では、多層培養容器操作装置40を用いて多層培養容器30に細胞を播種した培養液を導入し、多層培養容器30を一定期間培養した後に、多層培養容器観察装置10を用いて培養した細胞を観察する一連の作業を、多層培養容器30を台車装置20に搭載したまま行うことができるシステムを構成としている。以下において、多層培養容器操作装置40について説明する。
【0031】
多層培養容器操作装置40は、多層培養容器30を操作するための装置(マニピュレーター)である。ここで、図9は、多層培養容器操作装置40を示す斜視図であり、図10は、多層培養容器操作装置40を示すブロック図である。図10に示すように、多層培養容器操作装置40は、回転部41と、回転駆動部42と、振盪部43と、振盪駆動部44と、駆動制御部45と、操作部46と、アーム駆動部47と、一対のアーム48と、本体49とを備える。駆動制御部45は、多層培養容器30に細胞を播種した培養液を導入する培養液導入処理、多層培養容器30から培養液を回収する培養液回収処理、多層培養容器30にトリプシン液を導入するトリプシン導入処理、多層培養容器30を振盪させる細胞剥離処理、多層培養容器30からトリプシン液を回収するトリプシン液回収処理など、多層培養容器30を操作するための操作プログラムを予め記憶しており、当該操作プログラムに基づいて、回転駆動部42および振盪駆動部44を駆動させる。具体的には、駆動制御部45は、当該プログラムに基づいて、回転駆動部42の動作を制御することで、回転駆動部42に回転部41を回転動作させるとともに、振盪駆動部44の動作を制御することで、振盪駆動部44に振盪部43を振盪動作させる。なお、本実施形態において、回転駆動部42および振盪駆動部44は、電力モーターを有しており、電力の供給を受けて、回転部41および振盪部43を駆動させる。
【0032】
図9に示すように、回転部41は、多層培養容器30を保持する保持部材として機能する一対の係止部材411を有する。係止部材411は、回転部41の両側面に固定されており、図10および図11(A)~(C)に示すように、凹部412を備えている。また、凹部412は、テーパ部413と溝部414とを有し、後述するように、固定部材23がアーム48により上方に移動された場合に、図11(B)に示すように、固定部材23の被係止部28に係止し、アーム48とともに、固定部材23を挟持して回転部41に固定することができる。図11(A),(B)は、被係止部28と係止部材411との関係を説明するための図であり、図11(C)は係止部材411の拡大図である。なお、本実施形態において、固定部材23の被係止部28は、図4(A)に示すように、枠部材25のうち多層培養容器30の側面を多層培養容器30の配列方向に延伸する部分に連続して形成されており、長さW1を有する薄板状の部材となっている。
【0033】
また、多層培養容器操作装置40は、多層培養容器30の支持部材として機能する一対のアーム48を備える。一対のアーム48は、図12に示すように、固定部材23に設けられた2つの挿通孔27にそれぞれ挿通可能となっている。図12は、多層培養容器30をアーム48に仮固定した状態を示す斜視図である。一対のアーム48はアーム駆動部47により上下方向(Z軸方向)に移動可能となっており、アーム駆動部47は、駆動制御部45の指示に基づいて、2本のアーム48が固定部材23の挿通孔27に挿通できる高さ位置まで、アーム48をZ軸方向に駆動させる。これにより、作業者は、台車装置20を本体49に向けて移動させて、固定部材23の2つの挿通孔27に、2本のアーム48を挿通させることができる。また、アーム48の先端部の側面にはクランプ481が収納されており、アーム48が挿通孔27を挿通すると、挿通孔27を通過したアーム48の先端部の側面からクランプ481が突出する。そして、駆動制御部45は、固定部材23の2つの挿通孔27に2本のアーム48が挿通された状態で、アーム駆動部47にアーム48を上方(Z軸正方向)に駆動させることで、多層培養容器30を回転部41の位置まで持ち上げる。これにより、図11(B)に示すように、回転部41の係止部材411と固定部材23の被係止部28とが係止し、固定部材23が一対の係止部材411および一対のアーム48により回転部41に挟持されることで、多層培養容器30が固定部材23ごと回転部41に固定される。なお、本実施形態において、アーム駆動部47は、電力モーターまたはエアシリンダーにより一対のアーム48を駆動させることができる。
【0034】
そして、駆動制御部45は、図9の符号RおよびPに示すように、回転駆動部42に、回転軸X1,X2の2軸を中心として、回転部41を回転させる回転動作を行わせる。なお、回転軸X1は、図9に示すように、X軸方向に延伸する回転軸であり、これにより、回転部41および回転部41に保持された多層培養容器30をロール方向Rに回転させることができる。また、回転軸X2は、Y軸方向に延伸する回転軸であり、これにより、回転部41および回転部41に保持された多層培養容器30をピッチ方向Pに回転させることができる。なお、回転動作において、ロール方向Rの回転は、±180°未満の範囲で可能であり、本実施形態においては、±120°の範囲で回転部41をロール方向Rに回転させることができる。また、ピッチ方向Pの回転も、±180°未満の範囲で可能であり、本実施形態においては、±30°の範囲で回転部41をロール方向Rに回転させることができる。なお、本実施形態において、回転駆動部42は、回転部41を回転軸X1で回転させる電力モーターおよび/またはエアシリンダーと、回転部41を回転軸X2で回転させる電力モーターおよび/またはエアシリンダーとを備えており、これにより、回転部41を2軸で回転させることができる。
【0035】
ここで、図13は、回転軸X1を中心とした回転駆動部42による回転部41(多層培養容器30)の回転動作の一例を示す図であり、図13(A)は、回転部41が多層培養容器30を持ち上げた状態(基準位置)を示している。たとえば、回転駆動部42は、回転部41(多層培養容器30)を、図13(A)に示す基準位置から、図13(B)に示すように、回転軸X1を中心として左方向に90°回転させることができる。また、回転駆動部42は、回転部41(多層培養容器30)を、図13(C)に示すように、回転軸X1を中心として基準位置から左方向に100°回転させることもできるし、図13(D)に示すように、回転軸X1を中心として基準位置から左方向に120°回転させることもできる。このように、回転駆動部42は、回転部41(多層培養容器30)を、回転軸X1を中心として基準位置から±0~120°の範囲でロール方向Rに回転させることができる。
【0036】
また、図14は、回転軸X2を中心とした回転部41(多層培養容器30)の回転動作、および、回転軸X1およびX2の2軸での回転部41(多層培養容器30)の回転動作の一例を示す図である。回転駆動部42は、図14(A)に示す基準位置から、回転部41(多層培養容器30)を回転軸X2を中心としてピッチ方向Pに回転させることができる。たとえば、図14(B)に示す例では、回転部41(多層培養容器30)の上方が前方(X軸負方向)に傾くように、回転部41(多層培養容器30)を、回転軸X2を中心として20°回転させている。また、また、回転駆動部42は、回転部41(多層培養容器30)の下方が前方(X軸負方向)に傾くように、回転部41(多層培養容器30)を回転軸X2を中心として回転させることもできる。このように、回転駆動部42は、回転部41(多層培養容器30)を、回転軸X2を中心として基準位置から±0~30°の範囲でピッチ方向Pに回転させることができる。
【0037】
また、回転駆動部42は、図14(C),(D)に示すように、回転部41(多層培養容器30)を、回転軸X1を中心としてロール方向Rに回転させるとともに、回転軸X2を中心としてピッチ方向Pに回転させることができる。たとえば、図14(C)に示す図では、回転部41(多層培養容器30)を、回転軸X1を中心として左方向に100°回転させるとともに、回転部41(多層培養容器30)の上方が前方(X軸負方向)に傾くように、回転軸X2を中心として20°回転させている。さらに、図14(D)に示す例では、回転部41(多層培養容器30)を、回転軸X1を中心として左方向に120°回転させるとともに、回転部41(多層培養容器30)の上方が前方(X軸負方向)に傾くように、回転軸X2を中心として20°回転させている。
【0038】
さらに、回転駆動部42は、回転部41(多層培養容器30)を回転軸X1または回転軸X2を中心として往復回転させる揺動動作を行うこともできる。たとえば、回転駆動部42は、回転部41(多層培養容器30)を回転軸X1を中心としてロール方向Rに±120°の範囲で往復回転させることで、回転軸X1を中心とした揺動動作を行うことができる。また、回転駆動部42は、回転部41(多層培養容器30)を回転軸X2を中心として、回転部41(多層培養容器30)の上方を前方(X軸負方向)に傾けた後に、回転部41(多層培養容器30)の下方を前方(X軸負方向)に傾くように、ピッチ方向Pに±20°の範囲で往復回転させることで、回転軸X2を中心とした揺動動作を行うこともできる。
【0039】
振盪部43は、後述する振盪動作を行わない場合には、多層培養容器操作装置40の本体49内部に収容されており、振盪動作を行う場合に、前記駆動制御部45の制御に基づいて、図15に示すように、振盪駆動部44により、本体49の外側へと突出される。なお、図15は、多層培養容器操作装置40において振盪部43を突出させた状態を示す斜視図である。振盪部43は、固定部材23ごと多層培養容器30を載置可能な広さの上面431を有しており、固定部材23ごと多層培養容器30を上面431に置いて水平方向の振盪動作を行うことができる。また、振盪部43は、台車21と同様に、固定部材23と嵌合するための嵌合部(不図示)を有しており、これにより、固定部材23と上下方向(Z軸方向)において着脱自在となっているが、水平方向(XY軸方向)においては固定部材23の動きを制限し、固定部材23が振盪部43から落下してしまうことを防止している。なお、振盪駆動部44は、水平方向(XY軸方向)への振盪動作であれば振盪部43にどのような振盪動作も行わせることができる。たとえば、振盪駆動部44は、左右方向の振盪動作(Y軸方向での往復動作)、前後方向の振盪動作(X軸方向での往復動作)あるいは8の字方向の振盪動作(X軸方向およびY軸方向とを組み合わせた振盪動作)などの種々の振盪動作を振盪部43に行わせることができる。
【0040】
本実施形態において、駆動制御部45は、回転部41による回転動作に続いて、振盪部43による振盪動作を行わせることができる。この場合、駆動制御部45は、回転部41による回転動作が終了すると、アーム駆動部47を制御して一対のアーム48を下方(Z軸負方向)に駆動させ、固定部材23ごと多層培養容器30が振盪部43の上面431に置かれるように動作させる。そして、駆動制御部45は、振盪駆動部44を制御して、振盪部43に多層培養容器30を振盪させる振盪動作を行わせる。なお、本実施形態において、アーム48は本体49に収納されることなく突出したままで振盪動作が行われる。本実施形態では、図16に示すように、挿通孔27の内幅W3が、アーム48の外幅W2と振盪部43の振盪幅との合計よりも広く設計されているため、アーム48を挿通孔27に挿通した状態で振盪動作を行うことができる。なお、振盪動作時においてクランプ481はアーム48内に収納される。また、図16は、振盪動作におけるアーム48と挿通孔27との関係を説明するための図である。
【0041】
また、駆動制御部45は、振盪部43による振盪動作に続けて、回転部41による回転動作を行わせることができる。この場合、駆動制御部45は、振盪部43による振盪動作が終了すると、アーム駆動部47を制御して一対のアーム48を上方(Z軸正方向)に駆動させ、固定部材23ごと多層培養容器30を上に持ち上げるように動作させる。そして、駆動制御部45は、振盪駆動部44を制御して振盪部43を本体49の内部に収容した後、回転駆動部42を制御して、回転部41に回転動作を行わせる。
【0042】
上述したように、多層培養容器30を搭載する台車装置20を多層培養容器操作装置40で操作する場合には、図4に示すように、枠部材25に横枠部材251を取り付けることが好ましい。これにより、より安全に、多層培養容器30を多層培養容器操作装置40で操作することが可能となる。
【0043】
操作部46は、作業者が指示を入力するための装置であり、たとえばタッチパネルを備える構成とすることができる。作業者は、操作部46を操作することで、駆動制御部45が予め記憶しているプログラムの開始、一時停止、終了などの指示を駆動制御部45に伝達し、回転部41や振盪部43の動作を開始、一時停止、終了などさせることができる。また、作業者は、操作部46を操作することで、駆動制御部45に新たなプログラムを記憶させたり、記憶しているプログラムを一部変更させたりすることもできる。たとえば、作業者は、操作部46を操作することで、培養液を多層培養容器30から回収する培養液回収処理において、回転部41の回転軸X1の傾斜角度を100°から120°に変更することなどができる。
【0044】
このように、本実施形態に係る多層培養容器操作装置40では、台車装置20から多層培養容器30を固定した固定部材23を持ち上げて保持し、多層培養容器30の回転動作および振盪動作を行うことで、細胞を播種した培養液の多層培養容器30への導入、さらに細胞培養後は、培養液の回収、トリプシン液の多層培養容器30への導入、細胞剥離処理、および細胞剥離後のトリプシン液の回収の一連の処理を、作業者が多層培養容器30に触れることなく行うことができる。特に、従来では、多層培養容器30にトリプシン液を導入した後に、作業者が手作業で多層培養容器30を多層培養容器操作装置から一度降ろして、専用の振盪器に載せ替え、専用の振盪器で多層培養容器30を振盪させた後に、さらに作業者が手作業で多層培養容器30を再度、多層培養容器操作装置に載せて、トリプシン液の回収処理を行っていた。そのため、細胞培養処理における作業者の労力が増大してしまうという問題があった。また、作業者が手作業を行うことにより、作業にばらつきが生じる場合や、作業者が不必要に多層培養容器30に触れることで多層培養容器を破損してしまい汚染が生じてしまうという問題もあった。これに対して、本実施形態に係る多層培養容器操作装置40では、上記一連の処理を、作業者が多層培養容器30に触れることなく行うことができるため、上記のような問題を解決することができる。
【0045】
そして、第2実施形態に係る多層培養容器観察システム1aでは、多層培養容器操作装置40を備えることで、多層培養容器30への培養液の導入から、細胞培養、培養細胞の観察、培養細胞の回収までの一連の処理を、作業者が多層培養容器30に触れることなく行うことができる。すなわち、作業者は、多層培養容器操作装置40を用いて多層培養容器30に細胞を播種した培養液を導入し、その後、多層培養容器操作装置40から多層培養容器30を台車装置20に直接戻し、そのまま、台車装置20により多層培養容器30を培養室等に移動させることができる。さらに、作業者は、培養した細胞を観察するために、台車装置20に搭載した多層培養容器30を多層培養容器観察装置10の収容部14内まで移動させて、多層培養容器30を台車装置20に搭載したまま、多層培養容器観察装置10を用いて培養細胞を観察することができる。さらに、作業者は、観察の結果、細胞培養が完了したと判断した場合には、多層培養容器30を多層培養容器操作装置40に保持させて、多層培養容器操作装置40により、培養液の回収処理、トリプシン液の導入処理、細胞剥離処理、トリプシン液の回収処理を行うことができる。
【0046】
以上のように、第2実施形態に係る多層培養容器観察システム1aでは、多層培養容器30を作業者が触れることなく、多層培養容器30の操作と観察とが行えるため、作業者が、多層培養容器30に触れることなく、細胞を播種した培養液の多層培養容器30への導入から、細胞培養、培養細胞の観察、および培養した細胞の回収までの一連の作業を行うことができる。これにより、大量の細胞培養における、作業者の労力を低減することができるとともに、多層培養容器30内の培地に不必要な衝撃を与えてしまったり、多層培養容器30を不必要に触ってしまうことにより、培養細胞に対して悪影響を与えてしまうことを有効に防止することができる。
【0047】
≪第3実施形態≫
第3実施形態に係る多層培養容器観察システム1bでは、多層培養容器操作装置40aが振盪部43および振盪駆動部44を備えていない点で、第2実施形態に係る多層培養容器観察システム1aと主に相違する。以下では、第2実施形態と同様の構成については、同じ符号を付し、説明を省略する。
図17は、本実施形態に係る多層培養容器操作装置40aを示すブロック図である。図17に示すように、多層培養容器操作装置40aは、回転部41と、回転駆動部42と、駆動制御部45と、操作部46と、アーム駆動部47と、一対のアーム48と、本体49とを備える。駆動制御部45は、多層培養容器30に細胞を播種した培養液を導入する培養液導入処理、多層培養容器30から培養液を回収する培養液回収処理、多層培養容器30にトリプシン液を導入するトリプシン導入処理、多層培養容器30を振盪させる細胞剥離処理、多層培養容器30からトリプシン液を回収するトリプシン液回収処理など、多層培養容器30を操作するための操作プログラムを予め記憶している。
回転駆動部42は、回転部41を回転軸X1を中心に回転させる第1の電力モーターと、回転部41を回転軸X2を中心に回転させる第2の電力モーターとを備えている。
【0048】
細胞剥離処理は、回転部41により多層培養容器30を第1回転軸または第2回転軸を中心として第1の方向(たとえば右方向)および第2の方向(たとえば左方向)に多層培養容器30を往復揺動させることにより行うよう、操作プログラムにプログラムされている。操作プログラムは、第1の方向への回転動作から第2の方向への回転動作へ切り替わる際および第2の方向への回転動作から第1の方向への回転動作へ切り替わる際に、指定された時間、多層培養容器30の移動を停止させる停止モードを備えている。
停止モードを備えることにより、容器内の液体の移動よりも早い速度で揺動動作を行っても、回転動作の方向切り換え時に揺動動作を指定時間だけ停止させることで、容器内の液体を容器の側面(側壁)に確実に衝突させることが可能となる。細胞剥離処理を効果的に行うためには、容器を高速に揺動させることが重要であるが、容器を高速に揺動させた際に生じる液体の移動の遅れ(タイムラグ)の課題を解消することが可能である。
【0049】
操作プログラムは、トリプシン液回収処理の前に、トレイ31の側面に付着した細胞を回収する動作を実行する。トレイ31が第1~第4の側面を備えた長方形のトレイである場合、第1の側面、第2の側面、第3の側面および第4の側面の順に、前記トリプシン液がぶつかるように回転部41を操作する。このような操作をすることにより、トレイ31の側面に付着した細胞をトリプシン液内に回収してからトリプシン液回収処理を行うことが可能となる。
【0050】
以上で説明した第3実施形態に係る多層培養容器操作装置40aによっても、第2実施形態と同様の効果が奏される。
また、第3実施形態は、振盪部43を備えずとも細胞剥離処理を行うことが可能であり、装置構成が簡易であることから製造コストを下げることができる。
さらには、停止モードを備えることにより、容器を高速に揺動させた際に生じる液体の移動の遅れ(タイムラグ)の課題を解消することが可能である。
【0051】
以上、本発明の好ましい実施形態例について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態の記載に限定されるものではない。上記実施形態例には様々な変更・改良を加えることが可能であり、そのような変更または改良を加えた形態のものも本発明の技術的範囲に含まれる。
【0052】
たとえば、上述した実施形態では、多層培養容器観察装置10がタッチパネル部15を備える構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、多層培養容器観察装置10は、作業者の指示を入力する入力部と、撮像装置11が撮像した画像を表示する表示部とを、個別に備える構成とすることもできる。
【0053】
また、上述した実施形態では、多層培養容器観察システム1~1bまたは多層培養容器観察装置10を培養細胞を観察に用いる構成を例示したが、この構成に限定されず、多層培養容器観察システム1~1bまたは多層培養容器観察装置10を培養した微生物の観察に用いる構成とすることもできる。
【0054】
さらに、上述した実施形態に加えて、多層培養容器観察装置10は、下記の構成を備えることもできる。
すなわち、多層培養容器観察装置10は、駆動部13がエアシリンダーにより構成されている場合には、当該エアシリンダーの圧力を監視する圧力センサを備える構成とすることができる。そして、圧力センサによりエアシリンダーのエア圧力を監視することで、エアシリンダーの故障を検知することができる。
また、制御部16は、駆動部13の動作回数をカウントする構成とすることもできる。そして、制御部16は、駆動部13の動作回数に基づいて、駆動部13を構成する電力モータやエアシリンダーの交換時期を予測する構成とすることができる。
加えて、制御部16は、駆動部13の動作時間を積算する構成とすることもできる。そして、制御部16は、駆動部13の動作時間に基づいて、AC/DC電源やバッテリー、ファン17などの交換時期を予測する構成とすることもできる。
【0055】
さらに、上述した第2、第3実施形態に加えて、多層培養容器操作装置40,40aは、下記の構成を備えることもできる。
すなわち、多層培養容器操作装置40,40aは、回転駆動部42およびアーム駆動部47がエアシリンダーにより構成されている場合には、当該エアシリンダーの圧力を監視する圧力センサを備える構成とすることができる。そして、圧力センサによりエアシリンダーのエア圧力を監視することで、エアシリンダーの故障を検知することができる。
また、多層培養容器操作装置40,40aは、エリアセンサを備える構成とすることができる。そして、エリアセンサにより多層培養容器操作装置40,40aの周辺、特に、回転部41の周辺への人の立ち入りを常時監視することで、安全性を向上させることができる。
さらに、駆動制御部45は、回転部41、振盪部43、またはアーム48の動作回数をカウントする構成とすることもできる。そして、駆動制御部45は、回転部41、振盪部43、またはアーム48の動作回数に基づいて、回転駆動部42、振盪駆動部44、アーム駆動部47を構成する電力モータやエアシリンダーの交換時期を予測する構成とすることができる。
加えて、駆動制御部45は、回転部41、振盪部43、またはアーム48の動作時間を積算する構成とすることもできる。そして、駆動制御部45は、回転部41、振盪部43、またはアーム48の動作時間に基づいて、AC/DC電源やバッテリー、ファンなどの交換時期を予測する構成とすることもできる。
【0056】
さらに、上述した実施形態では、台車装置20において、一組の横枠部材251を有する構成を例示したが、この構成に限定されず、たとえば、横枠部材251を複数組備える構成としてもよい。
【符号の説明】
【0057】
1,1a,1b…多層培養容器観察システム
10…多層培養容器観察装置
11…撮像装置
111…第1フレーム
112…第2フレーム
12…照明装置
121…第3フレーム
122…第4フレーム
13…駆動部
14…収容部
141…扉
15…タッチパネル部
16…制御部
17…ファン
20…台車装置
21…台車
22…車輪
23…固定部材
24…台座
25…枠部材
251…横枠部材
26…留め部材
27…挿通孔
28…被係止部
29…留め具
30…多層培養容器
31…トレイ
32…ベントキャップ
40,40a…多層培養容器操作装置
41…回転部
411…係止部材
412…凹部
413…テーパー部
414…溝部
42…回転駆動部
43…振盪部
431…上面
44…振盪駆動部
45…駆動制御部
46…操作部
47…アーム駆動部
48…アーム
481…クランプ
49…本体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17