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特許7328963光調節可能眼内レンズ照射システムのための患者インタフェース
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】光調節可能眼内レンズ照射システムのための患者インタフェース
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20230809BHJP
   A61F 2/16 20060101ALI20230809BHJP
   A61B 3/13 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
A61F9/007 200Z
A61F9/007 200C
A61F2/16
A61B3/13
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020528251
(86)(22)【出願日】2018-11-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-15
(86)【国際出願番号】 US2018062407
(87)【国際公開番号】W WO2019104256
(87)【国際公開日】2019-05-31
【審査請求日】2021-11-19
(31)【優先権主張番号】15/822,099
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】519254875
【氏名又は名称】アールエックスサイト インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【弁理士】
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100171675
【弁理士】
【氏名又は名称】丹澤 一成
(72)【発明者】
【氏名】コンディス ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ゴールドシュレガー イリア
【審査官】中尾 麗
(56)【参考文献】
【文献】特表2004-513383(JP,A)
【文献】特表2016-504964(JP,A)
【文献】米国特許第03706304(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0311801(US,A1)
【文献】特表2013-536741(JP,A)
【文献】特表2001-515376(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/007
A61F 2/16
A61B 3/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外線(UV)光ビームを発生するための照射光源と、
前記UV光ビームを患者の眼球の中に移植された光調節可能眼内レンズに向けるための光学システムと、
前記光学システムに結合され、前記光学システムに対して前記眼球を安定化させて前記光調節可能眼内レンズ及び前記UV光ビームの位置調整を実現するための患者インタフェースと、
備え、
前記患者インタフェースは、前記患者の眼球に直接結合するように構成され、
前記光学システムは、対物レンズを含み、前記患者インタフェースは、前記対物レンズと空間的に分離され、
前記対物レンズは、前記患者インタフェースに対して横方向に調節可能であり、
前記光学システムは、前記眼内レンズを照射するために前記UV光ビームを向け、前記光学システムは、半径方向強度プロフィールを得るために、前記UV光ビームを変調し、
前記光調節可能眼内レンズは光開始剤が散在した光重合可能なマクロマーから製作され、
照射する前記UV光ビームの前記半径方向強度プロフィールは対応する半径方向プロフィールで、前記光重合可能なマクロマーの重合を引き起こし、半径方向プロフィールでの重合は、前記光調節可能眼内レンズの形状を変え、従って前記光調節可能眼内レンズの光学特性を変える、光調節可能レンズ照射システム。
【請求項2】
前記患者の頭部に係合するための患者係合フレームを備え、前記患者インタフェースは、前記患者係合フレームに結合される、請求項1に記載の光調節可能レンズ照射システム。
【請求項3】
真空吸引力を生成するための真空ポンプと、
前記真空ポンプを前記患者インタフェースに接続して流体接続によって真空吸引力を伝達するための吸引ホースと、
を備え、
前記患者インタフェースは、前記患者インタフェースの外周上に環状に配置され、前記真空吸引力を前記眼球に加えて前記眼球を安定化させるための弾性スカートを含む、請求項1に記載の光調節可能レンズ照射システム。
【請求項4】
前記患者インタフェースは、突出部、先鋭端部、締結部材、及び強化摩擦部材のうちの少なくとも1つを含むことで、前記眼球の上への機械的係合力を強化するための機械的係合部を備える、請求項1に記載の光調節可能レンズ照射システム。
【請求項5】
前記患者インタフェースは、前記光学システム及び前記患者の前記眼球の両方に結合するための、1部品患者インタフェースである、請求項1に記載の光調節可能レンズ照射システム。
【請求項6】
前記患者インタフェースは2部品患者インタフェースであり、
前記光学システムに結合するように構成された装置ドッキング部と
前記患者の前記眼球に結合するように構成された眼球制御部と、
を含み、
前記装置ドッキング部及び前記眼球制御部は、連結するように構成される、請求項1に記載の光調節可能レンズ照射システム。
【請求項7】
前記眼球制御部は、前記患者インタフェースの前記眼球制御部と前記眼球との間の初期接触が得られた後でオペレータが前記眼球との機械的カップリングを締結するための締結機構を備える、請求項6に記載の光調節可能レンズ照射システム。
【請求項8】
前記照射光源、前記光学システム、及び前記患者インタフェースは、装着型光調節可能レンズ照射システムに組み合わされる、請求項1に記載の光調節可能レンズ照射システム。
【請求項9】
前記装着型光調節可能レンズ照射システムを前記患者の頭部に対して安定させるためのヘッドバンドを備える、請求項8に記載の光調節可能レンズ照射システム。
【請求項10】
前記光学システムは、
前記UV光ビームを前記眼球に向けるための、及び
前記UV光ビームを変調して前記半径方向強度プロフィールを得るための、
デジタルミラーデバイスを備える、請求項1に記載の光調節可能レンズ照射システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本特許明細書は、光調節可能レンズのための照射システムに関する。より詳細には、光調節可能眼内照射システムのための患者インタフェースに関する。
【背景技術】
【0002】
白内障は、多くの場合、老眼で発症する。標準的な治療は、混濁した水晶体を抽出し、これを水晶体嚢の中に人工的な眼内レンズを移植することで置き換えることによる白内障手術を施すことであり、これにより健常視力が回復する。しかしながら、手術完了後、眼内レンズ(IOL)は、変位する、すなわち眼球の水晶体嚢に外科的に移植された位置から離れる場合がある。この移動は、典型的には網膜上のIOL焦点を意図された場所から変える可能性があり、その結果、IOLの光学性能の劣化がもたらされる。さらに、眼球の治癒過程の不確実性、手術前の眼球の測定誤差、及びIOLの選択及び配置の医師過失が、最適でない手術結果の一因にもなる。この光学性能の劣化又は低下は、しばしば手術後に患者が眼鏡を装着する必要があるか否かの違いになるので、手術後の患者満足度の鍵になる要因である。
【0003】
光調節可能眼内レンズ(LAL)はこの問題の解決策を提供する。手術後に患者が医師のもとに戻って、LALが間違った位置にある、変位した、又は最良の選択ではなかったことに起因する、視覚的結果に対する不満を報告する場合、医師は、LAL光学性能を非侵襲的に調節することで患者の不満を軽減することができる。詳細には、医師は、診断プロセスを実行して、LALの光学的性能低下の原因、特性、及び程度を特定することができる。次に、医師は、LALの光学的特性のどんな変更が性能低下を補うかを計算することができる。最後に、医師は、計算した変更をもたらすために、LAL上で照射手順(illumination procedure)を実行することができる。
【0004】
この調節は、光開始剤が散在した光重合可能なマクロマーからLALを製作することにより可能になる。医師がLALに空間的に変調された光源を照射すると、典型的にUV光を照射すると、UVを吸収した光開始剤は、マクロマーの光重合を引き起こす。照射UV光の選択された半径方向強度プロフィールは、対応する半径方向プロフィールでの重合を引き起こす。所定の半径方向プロフィールの光重合は、LALの形状を変えるのでLALの光学特性が変わる。従って、LALに所定の強度プロフィールを照射すると、LALは、LALの移植後の性能低下を補うために医師が計算した最適な光学特性を実現するように変わる。LALシステム及び装置は、同一出願人のJ. Jethmalaniらの米国特許第6,450,642号「Lenses capable of post-fabrication power modification」に記載されており、その開示内容全体は引用により本明細書に組み込まれている。
【0005】
図1A-Dは、この光調節手順の態様を示す。図1Aは、LAL軸がLAL照射システムの光軸と位置合わせされた場合を示し、次に、UV光ビームのビーム強度プロフィールが中心に位置決めされてLALと位置合わせされる。図1Bは、このような位置調整の場合に、UVビームによってLALに引き起こされた形状変化がLAL軸に対して位置合わせされて中心に位置決めされることを示す。
【0006】
図1Cは、LALがLAL照射システムに対して位置合わせされておらず、従ってLAL軸が照射システム軸に正しく位置合わせされていない場合を示す。この場合、UV光ビームの照射ビーム強度プロフィールは、LAL軸に対して中心に位置決めされていない。図1Dは、この正しく位置合わせされていないLALにおいてUV光ビームによって引き起こされた形状変化がLAL軸と正しく位置合わせされないであろうことを示す。このような正しく位置合わせされていない形状変化を有するLALの光学特性及び性能は、医師が計算及び計画したものとは全く異なる可能性がある。一般に、正しく位置合わせされていない形状を備えるLALは、医師が計画した補償を達成しないので患者の不満を軽減しない。この理由から、LAL軸をLAL照射システム軸と位置合わせさせることは、レンズ調節手順の成功に向けて重要であり、LAL照射システムの設計にとって優先度が高い。
【0007】
今日のLAL照射手順において、眼球及びその中のLALは、医師がLALを手動で固定化することでLAL照射システムに位置合わせされる。これは効率的方法であるが、位置合わせは不完全になることがあり、医師の手の僅かな震えが、LALに形成された照射パターンを不鮮明する場合がある。上記の全ての理由で、LAL照射システムとLAL自体との間の良好かつより安定した位置調整に向けたあらゆる改善は、白内障手術の視覚的結果及び患者満足度のさらなる改善をもたらすであろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第6,450,642号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
実施形態において、光調節可能レンズ照射システムは、UV光ビームを発生するための照射光源と、UV光ビームを患者の眼球の中に移植された光調節可能眼内レンズに向けるための光学システムと、光学システムに結合され、光学システムに対して眼球を安定化させて光調節可能眼内レンズ及びUV光ビームの位置調整を実現するための患者インタフェースと、を備える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1A】位置合わせされた光調節プロセスを示す。
図1B】位置合わせされた光調節プロセスを示す。
図1C】正しく位置合わせされていない光調節プロセスを示す。
図1D】正しく位置合わせされていない光調節プロセスを示す。
図2A】光調節可能レンズ照射システムの実施形態を示す。
図2B】光調節可能レンズ照射システムの実施形態を示す。
図2C】光調節可能レンズ照射システムの実施形態を示す。
図3A】光調節可能レンズ照射システムの実施形態を示す。
図3B】光調節可能レンズ照射システムの実施形態を示す。
図3C】光調節可能レンズ照射システムの実施形態を示す。
図4】真空吸引力を用いる患者インタフェースを示す。
図5A】2部品患者インタフェースを示す。
図5B】2部品患者インタフェースを示す。
図6】装着型光調節可能レンズ照射システムの実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の実施形態は、上記の医療ニーズに対処する。詳細には、各実施形態は、移植された光調節可能レンズ(LAL)のLAL照射システムとの位置調整を改善する。
【0012】
各実施形態は、患者の眼球を照射システムと機械的に連結して、結果的にビーム強度プロフィールを患者の眼球の中のLALと位置合わせすることで改善された位置調整を実現する。機械的連結は、実質的にLA照射システム、照射ビーム、及び移植されたLALの間の相対的な位置調整の精度を向上させる。良好に位置合わせされたビームによる光調節手順は、計画されたLAL光学特性変更をより正確に引き起こすので、LAL性能低下をより効率的に補償する。
【0013】
図2A-Cは、光調節可能レンズ照射システム100の実施形態を示し、照射システム100は、UV光ビームを発生する照射光源110と、UV光ビームを患者の眼球1の中に移植された光調節可能眼内レンズ10又は単に光調節可能レンズ(LAL)10に向けるための光学システム120と、光学システム120に結合され、光学システム120に対して眼球1を安定化させて光調節可能眼内レンズ10及びUV光ビームの位置調整を実現するための患者インタフェース130と、を含む。
【0014】
照射光源110は、紫外線波長範囲320-400nmのUV光ビームを発生することができる。例えば、325nmで作動するヘリウム・カドミウム(HeCd)レーザー、又は輝線334及び365nmに対してスペクトルフィルタリングされた水銀(Hg)アークランプは、照射光源110として利用することができる。他の実施形態は、355nmで作動する周波数三倍化レーザーダイオード励起固体YAGレーザー、350-360nmの範囲で作動するアルゴン・イオン・レーザー、放電ランプ、スペクトルフィルターと共に作動する広帯域キセノン:水銀ランプ、又はUV LED、又はLEDアレイを含むことができる。
【0015】
光学システム120は、特にデジタルミラーデバイス(DMD)、液晶ディスプレー(LCD)などの空間光変調器(SLM)、又は可変ミラーを用いて、UV光ビームを変調して半径方向強度プロフィールを得ることができる。
【0016】
一部の実施形態において、光学システム120は、患者に対向する最遠位光学素子としての対物レンズ121を含むことができる。この実施形態において、患者インタフェース130は、光学システム120の対物レンズ121に結合することができる。
【0017】
図2Aは、光調節可能レンズ(LAL)照射システム100の実施形態の側面図を示す。LAL照射システム100の一部の実施形態は、患者係合フレーム131を含むことができる。この患者係合フレーム131は、光学システム120と共有される診断机などの剛体基部上に取り付けることができる。患者は、患者係合フレーム131の顎当て上に自身の顔を載せて、ヘッドバンドに自身の額を押し付けることができる。顎当て及びヘッドバンドからの作用力は、患者の頭部を光学システム120に対して所定位置に置いて固定化することができる。頭部が固定化されると、患者インタフェース130は、前方に移動して係合し、光学システム120に対して眼球1を固定化することができる。
【0018】
図2Bは、患者インタフェース130と眼球1との間の接触領域を少し詳細に示す。光学システム120は、患者係合フレーム131によって固定化された後に患者インタフェース130と患者の眼球1との間に残った最終的な空隙を埋めるために、患者インタフェース130を移動させ得る調節器122を含むことができる。医師は、調節器122を調節して、患者インタフェース130を眼球1の角膜5にドッキングするまで前方に移動させることができる。多くの他の解決策がこのドッキング機能を提供することができ、光学システム120全体が基部に対して移動すること、又は患者インタフェース130が伸縮式、拡張式部材を有すること、又は患者係合フレーム131がそれ自体の調節器122を有することができる。
【0019】
患者インタフェース130は、眼球1の角膜5との明確な光学インタフェースを形成するための最遠位コンタクトレンズ132を含むことができる。このコンタクトレンズ132の硬さは、硬質ガラス又はPMMAレンズから、視力矯正のために角膜5上に装着される使い捨てコンタクトレンズと類似する柔らかいヒドロゲルベースのコンタクトレンズまで様々とすることができる。
【0020】
患者インタフェース130は、軸方向の機械的圧力及び横方向の摩擦力によって眼球1を効果的に固定化することができる弾性スカート133を含むことができる。患者インタフェース130の機械的圧力及び摩擦力は、眼球1の意識的な又は無意識の回転を防ぐことができる。
【0021】
患者の頭部が患者係合フレーム131によって固定化され、眼球1が患者インタフェース130によってさらに固定化又は安定化されると、光学システム120は、高い精度及び位置調整で眼球1の水晶体嚢7内に収容された光調節可能レンズ(LAL)10上にUV光ビームを向けることができる。位置調整は、種々の方法で微調整することができる。患者インタフェース130が眼球1、従ってその内部のLAL10を固定化すると、医師又は自動位置調整システムは、光学システム120の標的システムを横方向に場合によっては軸方向に調節することで、UV光ビームの標的を調節することができる。他の実施形態において、患者インタフェース130は、横方向調節部材を含むことができる。さらに別の実施形態において、患者係合フレーム131は、横方向調節部材を有することができる。
【0022】
図2Cは、LAL照射システム100を斜視図で示す。一部の実施形態において、光学システム120は、医師が患者インタフェース130を眼球1に対して位置合わせしてドッキングするのを助けることができる双眼顕微鏡123又は標的光学系123を含むことができる。双眼顕微鏡123は、様々な標的及び位置調整システムの何らかの組み合わせを有することができる。これは、様々な標的照明光源、眼球固定ライト、並びに、照準線又は標的円などのその光学系内の標的画像を含むことができる。双眼顕微鏡123(標的光学系123)は、アナログ又はビデオ/デジタルとすることができ、さらに1又は2以上のビデオスクリーン又はディスプレイを含むことができる。また、双眼顕微鏡123は、アナログとビデオ/デジタル双眼顕微鏡123とを組み合わせたものとすることができる。これは、それ自体の光学経路を有すること、又は少なくとも部分的に光学システム120の光学経路を共有することができる。これは例えばビームスプリッターによって実現することができる。
【0023】
図3A-Cは、光調節可能レンズ照射システム100の関連した実施形態を示す。このLAL照射システム100は、図2A-Cの実施形態に非常に類似している、患者インタフェース130が光学システム120ではなく患者係合フレーム131に結合又は固定されている点で相違する。一部の実施形態において、患者の頭部が患者係合フレーム131によって固定化された後、調節器122は、患者の眼球1とドッキングするよう患者インタフェース130を進めることができる。この実施形態は、患者係合フレーム131に対して患者の頭部を固定化すると共に患者インタフェース130に対して眼球1及びその中のLAL10を固定化する。患者係合フレーム131は剛体基部を光学システム120と共有するので、患者係合フレーム131に対して光調節可能レンズ10を固定化して安定化させることは、同様に光学システム120に対して光調節可能レンズ10を安定化させる。従って、この実施形態は、同様に、光学システム120から発生したUV光ビームの光調節可能レンズ10に対する高精度の位置調整を可能にする。
【0024】
図4は、LAL照射システム100に、真空吸引力を生成する真空ポンプ142及び流体接続により真空吸引力を伝達するために真空ポンプ142を患者インタフェース130に接続するための吸引ホース144を含めることで、患者インタフェース130と眼球1との間の結合強度及び機械的結合を大きくすることができることを示す。患者インタフェース130は、1又は2以上の環状及び同心溝によって真空吸引力を眼球1に加えて眼球1を安定化させるための、患者インタフェース130の外周上に環状に配置された弾性スカート133を含むことができる。これらの溝は、リングの周りで真空吸引力を均等に分配して環状に分配された力を発生し、眼球1及び患者インタフェース130を一緒に効率的に保持して、それによって眼球1を固定化することができる。
【0025】
他の実施形態において、患者インタフェース130は、眼球1上の機械的係合力を強化するための機械的係合部を含むことができる。機械的係合部は、突出部、先鋭端部、締結部材、又は強化摩擦部材を含むことができる。これらの突出部又は端部は、力を角膜5の又はより周辺の強膜の小さな標的領域に集中させる。これらの突出部は、角膜5を可逆的にくぼませることができ、眼球1の安定化及び固定化が向上する。
【0026】
光調節可能レンズ照射システム100の一部の実施形態において、患者インタフェース130は1部品の患者インタフェース130とすることができる。この1部品患者インタフェース130は、光学システム120及び患者の眼球1の両方に結合することができる。しかしながら、実際には、医師は、時として、ドッキングするために単一ステップで眼球1を1部品患者インタフェース130に位置合わせするのが難しいことを感じる。患者は、時として、患者インタフェースが患者の眼球に向かって移動する際に無意識に反応することがある。調節器122は制限された範囲でのみ患者インタフェース130の位置を調節できるので、医師が移動する眼球に呼応して患者インタフェース130を動かすことは難しい場合がある。また、眼球1の表面は滑りやすく、ドッキングを試みる間に絶えず回転する可能性がある。このような反応は、ドッキングの失敗又は偏心、正しく位置合わせされていないドッキングもたらす場合がある。医師は、時として、患者インタフェース130を上手くドッキングさせるために複数回の試行を行う必要があり、関与する全てによってフラストレーションの原因になる可能性がある。
【0027】
図5A-Bは、2部品の患者インタフェース130の実施形態を示し、これはドッキングの成功率を高めることができる。図示の2部品患者インタフェース130は、ドッキングを2つの段階に分ける。この2部品患者インタフェース130は、光学システム120に結合するように構成された装置ドッキング部134と、患者の眼球1に結合するように構成された眼球制御部135とを含むことができる。装置ドッキング部134及び眼球制御部135は連結して、完全な2部品患者インタフェース130を形成する。
【0028】
実際には、医師は、最初に、装置ドッキング部134を光学システム120の遠位端、例えばその対物レンズ121に取り付けることができる。次に、医師は、引き続き独立的に眼球制御部135を操作して眼球1に位置合わせさせてドッキングさせる。眼球制御部135は光学システム120に結合しないので、これらの操作は、調節器122が1部品患者インタフェース130の位置を調節できることに比べてより広範囲に自由に行うことができる。従って、眼球制御部135のドッキング成功率は非常に高くなる。
【0029】
眼球1へのドッキング後、医師は、ドッキングした眼球制御部135を装置ドッキング部134に向かってゆっくり動かすことができる。十分なケアを終えると、眼球1とのドッキング結合は維持することができ、それによって眼球1及び内部の光調節可能レンズ10を光学システム120の装置ドッキング部134にゆっくり位置合わせすることができる。最後に、眼球制御部135が装置ドッキング部134に対して良好に位置合わせされると、2つの部品は互いにドッキング又は結合して、完全な患者インタフェース130を形成することができる。
【0030】
一部の実施形態において、眼球制御部135は、真空吸引力が強化された図4の実施形態を含むことができる。眼球制御部135が眼球1にドッキングすると、眼球制御部135及び眼球1を結び付けるドッキング力を高めるために真空吸引力を作用させることができる。殺菌要件が使い捨て装置ドッキング部134を選ぶ場合もあるが、一部の実施形態において、装置ドッキング部134は、光学システム120の恒久的部分とすることができる。
【0031】
図5Bは、一部の他の実施形態において、眼球制御部135が、患者インタフェース130の眼球制御部135と眼球1との間の初期接触が得られた後でオペレータが眼球1との機械的カップリングを締結するための締結機構136を含み得ることを示す。締結機構136は、様々な選択肢のうちのいずれかとすることができる。例えば、図示のように、指操作ハンドルで作動する鉗子状のはさみを含むことができる。医師は、指操作ハンドルで力を与えることができ、これは締結機構136を眼球上に押し付けるか又は締結する。
【0032】
図6は、光調節可能レンズ照射システム100の一部の実施形態が非常に小型になり得ることを示す。このコンパクト化の鍵となるコントローラは、この双眼顕微鏡123のサイズがLAL照射システム100全体の外形寸法及び規模を相当にする重要な要因なので、フルサイズの顕微鏡としての双眼顕微鏡123を除外する可能性である。例えば、一実施形態において、双眼顕微鏡123の機能が別個のデジタルカメラ及びディスプレイで果たされる場合、このカメラは非常に小型にでき、LAL照射システム100全体を非常に小型化できる。
【0033】
このような実施形態において、照射光源110、光学システム120、及び患者インタフェース130は、図示の装着型LAL照射システム100に組み合わせることができる。このような装着型LAL照射システム100は、装着型LAL照射システム100を患者の頭部に対して安定させるための患者ヘッドバンド137を含むことができる。
【0034】
本明細書は、多くの具体例、詳細、及び数値範囲を含有するが、これらは、本発明の範囲及び特許請求の範囲の制限としてではなく、むしろ、本発明の特定の実施形態固有の特徴の説明として解釈しなければならない。別々の実施形態の関連で本明細書に説明するある特定の特徴は、単一実施形態において組み合わせて実施することもできる。逆に、単一実施形態の関連で説明する様々な特徴は、別々に又はあらゆる適切な部分組合せで複数の実施形態に実施することもできる。更に、特徴は、特定の組合せで作用し、かつそのようなものとして最初に権利を主張することができるとさえ上述したが、権利主張する組合せに属する1又は2以上の特徴は、場合によっては組合せから除外することができ、権利主張する組合せは、部分組合せ又は部分組合せの変形に向けられる場合がある。
【符号の説明】
【0035】
1 眼球
5 角膜
7 水晶体嚢
10 光調節可能眼内レンズ
100 光調節可能レンズ照射システム
110 照射光源
120 光学システム
121 対物レンズ
122 調節器
130 患者インタフェース
132 コンタクトレンズ
133 弾性スカート
図1A
図1B
図1C
図1D
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図4
図5A
図5B
図6