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特許7328965低温での靱性が改善された多峰性エチレン系ポリマーを有する組成物
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  • 特許-低温での靱性が改善された多峰性エチレン系ポリマーを有する組成物 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】低温での靱性が改善された多峰性エチレン系ポリマーを有する組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/08 20060101AFI20230809BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20230809BHJP
   C08F 210/16 20060101ALI20230809BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
C08L23/08
B32B27/32 E
C08F210/16
C08J5/18 CES
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020533064
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-03-11
(86)【国際出願番号】 US2018066581
(87)【国際公開番号】W WO2019133400
(87)【国際公開日】2019-07-04
【審査請求日】2021-12-06
(31)【優先権主張番号】62/610,398
(32)【優先日】2017-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】オーナー-デリルマンリ、ディデム
(72)【発明者】
【氏名】リン、イーチャン
(72)【発明者】
【氏名】デミロール、メフメト
(72)【発明者】
【氏名】イ、ジョンユン
(72)【発明者】
【氏名】ガレスピー、ディビット ティー.
【審査官】常見 優
(56)【参考文献】
【文献】特表2011-511096(JP,A)
【文献】特開2001-026684(JP,A)
【文献】特表2017-519080(JP,A)
【文献】特表2016-504442(JP,A)
【文献】特表2020-517767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/16
C08K 3/00- 13/08
B32B 1/00- 43/00
C08F 6/00-246/00
C08F301/00
C08J 5/00- 5/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー組成物であって、
ASTM D792に従って測定したとき、0.900~0.930g/ccの密度と、荷重2.16kgおよび温度190℃でASTM D1238に従って測定したとき、0.1~10.0g/10分のメルトインデックス(I)と、を有する少なくとも1つの多峰性エチレン系ポリマーを含み、前記多峰性エチレン系ポリマーが、第1のエチレン系成分と、第2のエチレン系成分と、第3のエチレン系成分と、を含み、前記第1のエチレン系成分、前記第2のエチレン系成分、および前記第3のエチレン系成分の各々が、エチレンモノマーと少なくとも1つのC~C12αオレフィンコモノマーとの重合反応生成物であり、
前記第1のエチレン系成分が、0.855~0.900g/ccの密度と、128,000g/mol~363,000g/molの重量平均分子量(Mw(GPC))と、を有し、前記多峰性エチレン系ポリマーが、少なくとも20重量%の前記第1のエチレン系成分を含み、
前記第2のエチレン系成分が、前記第1のエチレン系成分の密度超~0.930g/cc未満の密度と、88,500g/mol~363,000g/molの重量平均分子量(Mw(GPC))と、を有し、
前記第3のエチレン系成分が、前記第2のエチレン系成分の密度を超える密度を有する、ポリマー組成物。
【請求項2】
前記多峰性エチレン系ポリマーが、20~50重量%の前記第1のエチレン系成分、10~40重量%の前記第2のエチレン系成分、および25~60重量%の前記第3のエチレン系成分を含む、請求項1に記載のポリマー組成物。
【請求項3】
前記多峰性エチレン系ポリマーのメルトインデックス(I)が、0.5~5.0g/10分であり、前記多峰性エチレン系ポリマーの密度が、0.905~0.930g/ccである、請求項1または2に記載のポリマー組成物。
【請求項4】
前記多峰性エチレン系ポリマーが、8~15のI10/I値を有し、I10が、荷重10kgおよび温度190℃でASTM D1238に従って測定される、請求項1~3のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項5】
前記第1のエチレン系成分の密度が、0.870~0.900g/ccであり、前記第1のエチレン系成分のメルトインデックス(I)が、0.02~0.15g/10分である、請求項1~4のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項6】
前記第2のエチレン系成分の密度が、0.900~0.920g/ccであり、前記第2のエチレン系成分のメルトインデックス(I)が、0.2~1.0g/10分である、請求項1~5のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項7】
前記第3のエチレン系成分の密度が、0.940~0.960g/ccであり、前記第3のエチレン系成分のメルトインデックス(I)が、25~2000g/10分である、請求項1~6のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項8】
前記多峰性エチレン系ポリマーが、22%を超える結晶化溶出分別(CEF)重量分率と、この際、前記CEF重量分率が、0.2℃ずつの段階的な温度増加による20.0℃~T 臨界 (T )における各温度(T)での重量分率(wt cef (T))のCEF-SCBD(CEF-短鎖分岐分布)プロットの下の領域として計算され、
20℃~T臨界(T)の温度範囲で130,000g/molを超える重量平均分子量(Mw(CEF))と、を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項9】
前記ポリマー組成物が、0.916~0.935g/ccの密度、ならびに荷重2.16kgおよび温度190℃でASTM D1238に従って測定したとき、0.1~10.0g/10分のメルトインデックス(I)を有する少なくとも1つの低密度ポリエチレン(LDPE)をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項10】
前記多峰性エチレン系ポリマーが、少なくとも4.3の分子量分布(Mw(GPC)/Mn(GPC))を有する、請求項1~9のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項11】
前記多峰性エチレン系ポリマーが、35~50重量%の前記第3のエチレン系成分を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のポリマー組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含むフィルムであって、前記フィルムが、温度-20℃および厚さ1ミルで、0.3Jを超える計装化ダート衝撃(IDI)を有するインフレーションフィルムである、フィルム。
【請求項13】
コア層と、前記コア層の反対側に配設された少なくとも2つのスキン層と、を含む多層フィルムであって、
前記コア層および前記スキン層のうちの1つ以上が、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー組成物を含み、
前記スキン層のうちの1つ以上が、0.916~0.935g/ccの密度、ならびに荷重2.16kgおよび温度190℃でASTM D1238に従って測定したとき、0.1~10.0g/10分のメルトインデックス(I)を有する少なくとも1つの低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、
前記多層フィルムが、インフレーションフィルムまたはキャストフィルムである、多層フィルム。
【請求項14】
前記コア層と前記スキン層との間に配設されたサブスキン層をさらに含み、前記サブスキン層が、請求項1~11のいずれか一項に記載のポリマー組成物およびLDPEを含む、請求項12に記載の多層フィルム。
【請求項15】
前記多層フィルムが、厚さ2ミルで、少なくとも0.60Jの-20℃での計装化ダート衝撃(IDI)総エネルギーを有するインフレーションフィルムである、請求項14に記載の物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本出願は、2017年12月26日に出願された米国仮特許出願第62/610,398号の優先権を主張するものであり、該仮特許出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0002】
本開示の実施形態は、概して、エチレン系ポリマー組成物に関し、より具体的には、例えば、冷凍食品包装用途で使用するための、低温で優れた物理特性(例えば、靱性)をもたらす多峰性エチレン系ポリマーを含む組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
インフレーションフィルムまたはキャストフィルムを含み得る単層および多層ポリマーフィルムでは、氷点下(すなわち0℃以下)の温度などの様々な温度条件においてフィルムが靱性を示すことは有益である。しかしながら、低温で十分な強度を有するポリマーフィルムを得ることは、多くの場合困難である。
【発明の概要】
【0004】
したがって、低温(すなわち、0℃以下)での性能が改善された多峰性エチレン系ポリマー組成物に対する継続的なニーズが存在している。本発明の多峰性エチレン系ポリマーは、これらのニーズを満たし、従来の二峰性または単峰性のポリエチレン組成物よりも優れた低温性能(例えば、ダート強度、セカント係数)を示し表す。
【0005】
本開示の少なくとも1つの実施形態によれば、ポリマー組成物が提供される。組成物は、少なくとも1つの多峰性エチレン系ポリマーを含む。全体として、多峰性エチレン系ポリマーは、0.900~0.930グラム/立方センチメートル(g/cc)の密度、ならびに2.16キログラム(kg)の荷重および摂氏190度(℃)の温度でASTM D1238に従って測定したとき、0.1~10.0グラム/10分(g/10分)のメルトインデックス(I)を有する。多峰性エチレン系ポリマーは、3つのエチレン系成分を含み、これらの成分は、エチレンモノマーと少なくとも1つのC~C12α-オレフィンコモノマーとの重合反応生成物である。
【0006】
第1のエチレン系成分は、0.855~0.900g/ccの密度および128,000g/mol~363,000g/molの重量平均分子量(Mw(GPC))を有する。第2のエチレン系成分は、第1のエチレン系成分の密度を超え、かつ0.930g/cc未満の密度、および88,500g/mol~363,000g/molの重量平均分子量(Mw(GPC))を有する。第3のエチレン系成分は、第2のエチレン系成分の密度を超える密度を有する。
【0007】
加えて、他の実施形態によれば、低密度ポリエチレン(LDPE)成分を含むポリマー組成物が提供される。
【0008】
最後に、他の実施形態によれば、該ポリマー組成物を含む単層フィルム、多層フィルム、および物品が提供される。
【0009】
これらのおよび他の実施形態は、以下の発明を実施するための形態においてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
本開示の特定の実施形態の以下の詳細な説明は、以下の図面と併せて読むと最もよく理解することができ、これらの図面では、同様の構造体が同様の参照番号で示される。
【0011】
図1】発明ポリマー5および比較ポリマー3についての結晶化溶出分別(CEF)重量%分率対温度を示すグラフ図である。
図2】以下に記載の数値デコンボリューションプロセスについての初期パラメータを推定するために使用される、発明ポリマー2の短鎖分岐分布(SCBD)溶出プロファイルおよび分子量分布(MWD)プロットを並べて示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ここで、本出願の特定の実施形態について説明する。しかしながら、本開示は異なる形態で具体化されてもよく、本開示に記載される実施形態に限定されると解釈されるべきではない。むしろ、これらの実施形態は、この開示が徹底的かつ完全であり、本主題の範囲を当業者に十分に伝えるように提供される。
【0013】
定義
「ポリマー」という用語は、同一または異なるタイプのモノマーにかかわらず、モノマーを重合することにより調製されるポリマー化合物を指す。したがって、ポリマーという総称は、1つのタイプのみのモノマーから調製されるポリマーを指すために通常用いられる「ホモポリマー」という用語、ならびに2つ以上の異なるモノマーから調製されるポリマーを指す「コポリマー」を包含する。本明細書で使用される場合、「インターポリマー」という用語は、少なくとも2つの異なるタイプのモノマーの重合によって調製されるポリマーを指す。したがって、総称であるインターポリマーは、コポリマー、およびターポリマーなどの、3つ以上の異なるタイプのモノマーから調製されたポリマーを含む。
【0014】
本明細書で使用される場合、「多峰性」とは、異なる密度および重量平均分子量を有する少なくとも3つのポリマー副成分を有することを特徴とすることができ、任意選択で、異なるメルトインデックス値も有することもできる組成物を意味する。一実施形態では、多峰性は、分子量分布を示すゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)のクロマトグラムにおいて、少なくとも3つのはっきりと区別できるピークを有することによって定義され得る。別の実施形態では、多峰性は、短鎖分岐分布を示す結晶化溶出分別(CEF)クロマトグラムにおいて、少なくとも3つのはっきりと区別できるピークを有することによって定義され得る。多峰性は、3つのピークを有する樹脂および4つ以上のピークを有する樹脂を含む。
【0015】
「三峰性ポリマー」という用語は、3つの主要成分である、第1のエチレン系ポリマー成分、第2のエチレン系ポリマー成分、および第3のエチレン系ポリマー成分、を有する多峰性エチレン系ポリマーを意味する。
【0016】
本明細書で使用される場合、「溶液重合反応器」は、溶液重合を実行する容器であり、ここで、エチレンモノマーおよび少なくともC~C12αオレフィンコモノマーが、触媒を含有する非反応性溶媒中に溶解された後で共重合する。溶液重合プロセスでは、水素を利用し得るが、全ての溶液重合プロセスで必要であるわけではない。
【0017】
「ポリエチレン」または「エチレン系ポリマー」は、エチレンモノマー由来の50モル%超の単位を含むポリマーを意味するものとする。これには、エチレン系ホモポリマーまたはコポリマー(2つ以上のコモノマー由来の単位を意味する)が含まれる。当該技術分野において既知のポリエチレンの一般的な形態には、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、超低密度ポリエチレン(ULDPE)、超超低密度ポリエチレン(VLDPE)、直鎖状と実質的に直鎖状との両方の低密度樹脂を含むシングルサイト触媒直鎖状低密度ポリエチレン(m-LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、ならびに高密度ポリエチレン(HDPE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0018】
「エチレン系成分」、例えば、「第1のエチレン系成分」、「第2のエチレン系成分」、または「第3のエチレン系成分」は、多峰性または三峰性ポリマーの副成分を指し、各副成分は、エチレンモノマーおよびC~C12α-オレフィンコモノマーを含むエチレンインターポリマーである。
【0019】
また、「LDPE」という用語は、「高圧エチレンポリマー」、または「高度分岐ポリエチレン」を指し得、ポリマーが、過酸化物(例えば、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第4,599,392号を参照)などの、フリーラジカル開始剤を使用して、14,500psi(100MPa)超の圧力で、オートクレーブまたは管状反応器内で、部分的または完全にホモ重合または共重合されることを意味するように定義される。LDPE樹脂は、典型的には、0.916~0.935g/ccの範囲の密度を有する。
【0020】
「LLDPE」という用語には、チーグラー・ナッタ触媒系を使用して作製された樹脂、およびシングルサイト触媒を使用して作製された樹脂が含まれ、ビスメタロセン触媒(「m-LLDPE」と称されることもある)、ホスフィンイミン、拘束幾何触媒、およびポストメタロセン分子触媒を使用して作製された樹脂が含まれるが、これらに限定されず、ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒(多価アリールオキシエーテル触媒とも称される)が含まれるが、これらに限定されない。LLDPEには、直鎖状、実質的に直鎖状、または不均一なエチレン系コポリマーまたはホモポリマーが含まれる。LLDPEには、LDPEよりも少ない長鎖分岐が含有され、米国特許第5,272,236号、米国特許第5,278,272号、米国特許第5,582,923号、および米国特許第5,733,155号でさらに定義される実質的に直鎖状のエチレンポリマーと、米国特許第3,645,992号におけるものなどの均一分岐直鎖状エチレンポリマー組成物と、米国特許第4,076,698号に開示されるプロセスに従って調製されたものなどの不均一分岐エチレンポリマーと、それらのブレンド(米国特許第3,914,342号または米国特許第5,854,045号に開示されるものなど)と、が含まれる。LLDPE樹脂は、当該技術分野において既知である任意のタイプの反応器または反応器構成を使用して、気相、液相、もしくはスラリー重合、またはそれらの任意の組み合わせによって作製され得る。
【0021】
「多層構造」とは、2つ以上の層を有する任意の構造を意味する。例えば、多層構造(例えば、フィルム)は、2つ、3つ、4つ、5つ、またはそれ以上の層を有し得る。多層構造は、文字で示される層を有するとして説明され得る。例えば、コア層B、ならびに2つの外部層AおよびCを有する3層構造は、A/B/Cとして示されてもよい。同様に、2つのコア層BおよびC、ならびに2つの外部層AおよびDを有する構造は、A/B/C/Dとして示される。いくつかの実施形態において、本発明の多層フィルムは、11層まで含む。
【0022】
次に、本開示のポリマー組成物の実施形態を詳細に参照すると、これらの組成物は、任意選択のLDPE成分を有する少なくとも1つの多峰性エチレン系ポリマーを含む。
【0023】
前述のように、多峰性エチレン系ポリマーは、ASTM D792に従って測定された0.900~0.930g/ccの密度を有し得る。また、多峰性エチレン系ポリマーは、0.1~10.0g/10分のメルトインデックスを有し得る。さらなる実施形態では、エチレン系ポリマーは、0.905~0.930g/cc、または0.910~0.930g/cc、または0.915~0.930g/ccの密度を有し得る。さらに、多峰性エチレン系ポリマーは、0.1~5.0g/10分、または0.2~5.0g/10分、または0.5~5.0g/10分、または0.5~1.0g/10分のメルトインデックスを有し得る。加えて、多峰性エチレン系ポリマーは、8~15のI10/I値を有しており、I10は、荷重10kgおよび温度190℃でASTM D1238に従って測定される。さらなる実施形態では、多峰性エチレン系ポリマーは、8~12、または9~11のI10/Iを有する。
【0024】
多峰性エチレン系ポリマーは、エチレンモノマーと少なくとも1つのC~C12αオレフィンコモノマーとの重合反応生成物を含む。別の実施形態では、C~C12αオレフィンコモノマーは、より好ましくは3~8個の炭素原子を有し得る。例示的なα-オレフィンコモノマーとしては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、および4-メチル-1-ペンテンが挙げられるが、これらに限定されない。1つ以上のα-オレフィンコモノマーは、プロピレン、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテンからなる群から、または代替形態では、1-ブテン、1-ヘキセン、および1-オクテン、ならびにさらに1-ヘキセンおよび1-オクテンからなる群から選択され得る。
【0025】
多峰性エチレン系ポリマーには、エチレンモノマーおよびC~C12αオレフィンコモノマーの様々な組み込みレベルが企図される。例えば、多峰性エチレン系ポリマーは、少なくとも50モル%のエチレンモノマー、または少なくとも60モル%のエチレンモノマー、または少なくとも70モル%のエチレンモノマー、または少なくとも80モル%のエチレンモノマー、または少なくとも90モル%のエチレンモノマーを含み得る。逆に、多峰性エチレン系ポリマーは、50モル%未満のC~C12αオレフィンコモノマーを含み得る。さらなる実施形態では、多峰性エチレン系ポリマーは、2~40モル%のC~C12αオレフィンコモノマー、または2~30モル%のC~C12αオレフィンコモノマー、または2~20モル%のC~C12αオレフィンコモノマー、または2~10モル%のC~C12αオレフィンコモノマーを含み得る。
【0026】
さらなる実施形態では、多峰性エチレン系ポリマーは、少なくとも4.3のMWD(M/M)を有し得る。さらなる実施形態では、MWDは、4.3~12、または4.3~10、または4.3~9である。
【0027】
ポリマー組成物またはブレンド内の多峰性エチレン系ポリマーおよびLDPEには、様々な量が企図される。いくつかの実施形態では、ポリマー組成物は、60~95重量%の多峰性エチレン系ポリマー、または70~90重量%の多峰性エチレン系ポリマー、または75~85重量%の多峰性エチレン系ポリマーを含む。さらに、他の実施形態では、ポリマー組成物は、5~40重量%のLDPE、または10~30重量%のLDPE、または15~20モル%のLDPE含む。
【0028】
多峰性エチレン系ポリマーは、少なくとも3つのエチレン系成分を含み、これらの各成分は、エチレンモノマーと少なくとも1つのC~C12α-オレフィンコモノマーとの重合反応生成物である。
【0029】
第1のエチレン系成分は、約0.855~0.900g/ccの密度、および128,000g/mol~363,000g/molの重量平均分子量(Mw(GPC))を有する。一実施形態では、第1のエチレン系成分は、0.01~0.2g/10分のメルトインデックス(I)、および少なくとも1モル%のコモノマー組み込みを有する。エチレン系成分(例えば、第1、第2、第3などのエチレン系成分)についての密度は、上記で提供した等式から計算される。別の実施形態では、第1のエチレン系成分は、0.870~0.900g/cc、または0.875~0.900g/cc、または0.880~0.900g/ccの密度を有する。さらに、いくつかの実施形態では、第1のエチレン系成分のメルトインデックスは、0.02~0.15g/10分、または0.03~0.15g/10分である。
【0030】
さらに、さらなる実施形態では、第1のエチレン系成分は、175,000~325,000g/mol、または180,000~310,000g/mol、または190,000~300,000g/mol、または190,000~270,000g/molのMw(GPC)を有し得る。加えて、第1のエチレン系成分は、75,000~150,000g/mol、または85,000~135,000g/molのMn(GPC)を有し得る。他の実施形態では、第1のエチレン系成分は、1.5~2.5、または2.0~2.5のMWD(Mw(GPC)/Mn(GPC))を有し得る。
【0031】
第1のエチレン系成分には、C~C12αオレフィンコモノマーの組み込みの様々な添加量が企図される。例えば、第1のエチレン系成分は、1~30モル%のC~C12αオレフィンコモノマー、または2~20モル%のC~C12αオレフィンコモノマー、または3~20モル%のC~C12αオレフィンコモノマーを有し得る。
【0032】
第2のエチレン系成分は、第1のエチレン系成分の密度を超えるおよび0.930g/cc未満の密度、ならびに88,500g/mol~363,000g/molの重量平均分子量w(GPC)を有する。一実施形態では、第2のエチレン系成分は、0.01~2.0g/10分のメルトインデックス、および少なくとも1.0モル%のC~C12αオレフィンコモノマーの組み込みを有する。いくつかの実施形態では、第2のエチレン系成分の密度は、0.890~0.930g/cc、または0.900~0.920g/cc、または0.905~0.915g/ccである。さらに、いくつかの実施形態では、第2のエチレン系成分のメルトインデックスは、0.02~1.9g/10分、または0.03~1.8g/10分、または0.2~1.0g/10分である。
【0033】
さらに、さらなる実施形態では、第2のエチレン系成分は、100,000~150,000g/mol、または110,000~140,000g/molのMw(GPC)、および50,000~70,000g/molのMn(GPC)を有し得る。他の実施形態では、第2のエチレン系成分は、1.5~2.5、または1.8~2.5のMWD(Mw(GPC)/Mn(GPC))を有し得る。
【0034】
また、第2のエチレン系成分は、C~C12αオレフィンコモノマー組み込みの様々なレベルを有することが企図される。一実施形態では、第2のエチレン系成分は、第1のエチレン系成分よりも低いC~C12αオレフィンコモノマーの組み込みを有し得る。例えば、第2のエチレン系成分は、1~30モル%のC~C12αオレフィンコモノマー、または2~20モル%のC~C12αオレフィンコモノマー、または3~20モル%のC~C12αオレフィンコモノマーを有し得る。
【0035】
第3のエチレン系成分は、第2のエチレン系成分の密度を超える密度を有する。いくつかの実施形態では、第3のエチレン系成分の密度は、0.930~0.980g/cc、または0.930~0.960g/cc、または0.940~0.960g/ccである。さらに、いくつかの実施形態では、第3のエチレン系成分は、5.0g/10分を超える、または25~2000g/10分のメルトインデックス(I)を有する。
【0036】
さらに、さらなる実施形態では、第3のエチレン系成分は、75,000g/mol未満、または60,000g/mol未満のMw(GPC)を有し得る。さらなる実施形態では、第3のエチレン系成分は、10,000~60,000g/molのMw(GPC)を有し得る。加えて、第3のエチレン系成分は、15,000g/mol未満、または10,000g/mol未満のMw(GPC)を有し得る。さらなる実施形態では、第3のエチレン系成分は、5,000~50,000g/mol、または5,000~30,000g/molのMn(GPC)を有し得る。他の実施形態では、第3のエチレン系成分は、少なくとも2.0、または2.0~5.0、または2.0~4.5のMWD(Mw(GPC)/Mn(GPC))を有し得る。
【0037】
多峰性エチレン系ポリマー中の各成分の量は、用途または使用に基づいて調整され得る。例えば、低温用途(例えば0℃未満)および多峰性エチレン系ポリマーがより高温(例えば、40℃を超える温度)にさらされる用途では、特性のバランスが異なることが望ましい場合がある。いくつかの実施形態では、多峰性エチレン系ポリマーは、20~50重量%の第1のエチレン系成分、または25~45重量%の第1のエチレン系成分を含む。加えて、いくつかの実施形態では、多峰性エチレン系ポリマーは、10~40重量%の第2のエチレン系成分、または13~35重量%の第2のエチレン系成分を含む。さらに、いくつかの実施形態では、多峰性エチレン系ポリマーは、25~60重量%の第3のエチレン系成分、または35~50重量%の第3のエチレン系成分を含む。
【0038】
任意選択で、多峰性エチレン系ポリマーは、LDPE成分を含む。さらなる実施形態では、LDPEは、2.16kgの荷重および190℃の温度でASTM D1238に従って測定したとき、0.1~10.0g/10分のメルトインデックス、および0.916~0.935g/ccの密度を有し得る。別の実施形態では、LDPEは、0.916~0.925g/ccの密度を有し得る。さらに別の実施形態では、LDPEは、0.1~5.0g/10分、または0.5~5.0g/10分、または0.5~2.0g/10分のメルトインデックスを有し得る。
【0039】
さらに、LDPEは、3.5~10の分子量分布(MWD)を有しており、MWDは、Mw(GPC)/Mn(GPC)として定義され、Mw(GPC)は、重量平均分子量であり、Mn(GPC)は、数平均分子量であり、その両方が、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。さらに、LDPEは、5~9のMWDを有し得る。
【0040】
さらなる実施形態では、多峰性エチレン系ポリマーは、22%を超える結晶化溶出分別(CEF)の重量分率、および20℃~T臨界(T)の温度範囲で、130,000g/molを超える重量平均分子量(Mw(CEF))を有する。理論に束縛されるものではないが、この温度範囲内のCEF重量分率とMw(CEF)とのこの組み合わせは、より低密度の第1のエチレン系成分の存在がより多いことを示し得る。さらなる実施形態では、多峰性エチレン系ポリマーは、23%を超える、または25%を超えるCEF重量分率および20℃~T臨界(T)の温度範囲で130,000g/molを超えるMw(CEF)を有し得る。
【0041】
様々な重合プロセスの実施形態が、多峰性エチレン系ポリマーを生成するために適していると考えられる。1つ以上の実施形態では、多峰性エチレン系ポリマーは、二重反応器システムにおける溶液重合プロセスを通して生成される。これらの二重溶液重合反応器は、従来の反応器、例えば、ループ反応器、等温反応器、断熱反応器、および並列、直列、およびこれらの任意の組み合わせの連続撹拌槽反応器であり得る。一実施形態では、多峰性エチレン系ポリマーは、直列構成の2つのループ反応器で生成され得、第1の溶液重合反応器の温度は、115~200℃、例えば135~165℃の範囲にあり、第2の溶液重合反応器の温度は、150~215℃、例えば185~212℃の範囲内にある。溶液重合プロセスでは、エチレンモノマー、1つ以上のC~C12αオレフィンコモノマー、溶剤、1つ以上の触媒系、および任意選択で水素は、二重溶液重合反応器(すなわち、第1および第2の溶液重合反応器)に連続的に供給され得る。
【0042】
様々な触媒が好適であると考えられる。これらの触媒については、チーグラー・ナッタ触媒、クロム触媒、メタロセン触媒、ポストメタロセン触媒、拘束幾何錯体(CGC)触媒、ホスフィンイミン触媒、またはビス(ビフェニルフェノキシ)触媒が挙げられるが、これらに限定されない。CGC触媒の詳細および例は、米国特許第5,272,236号、同第5,278,272号、同第6,812,289号、および国際公開第93/08221号において提供され、これら全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒の詳細および例は、米国特許第6,869,904号、同第7,030,256号、同第8,101,696号、同第8,058,373号、同第9,029,487号において提供され、これら全て、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。溶液重合反応器内で利用される触媒は、第1のエチレン系成分、第2のエチレン系成分、および第3のエチレン系成分に異なる特性を付与するために変化し得る。例えば、溶液重合反応器内で異なる触媒を使用して、第1、第2、および第3のエチレン系成分の密度、メルトインデックス、コモノマー組み込みなどを変化させることが企図される。理論に束縛されるものではないが、第1、第2、および第3のエチレン系成分についてのこれらのパラメータを変化させると、多峰性エチレン系ポリマーが靱性と加工性との望ましい組み合わせを有することが可能になり得る。
【0043】
1つ以上の実施形態では、第1の溶液重合反応器、第2の溶液重合反応器、またはその両方は、2つの触媒を含み得る。特定の実施形態では、第1の溶液重合反応器は2つの触媒を含み得、第1の溶液重合反応器の下流にある第2の溶液重合反応器は1つの触媒を含む。第1の溶液重合反応器の2つの触媒は均一触媒であるのに対して、第2の溶液重合反応器の触媒は均一触媒、不均一触媒、またはその両方を含むことができる。均一で、シングルサイトと称されることが多い触媒は、通常、個別の分子構造を有する有機金属化合物であり、インターポリマーが作製される場合に、狭い分子量分布および狭い組成分布を有するポリマーを作成するために使用される。均一触媒を、溶液プロセスで溶解されるか、またはスラリーまたは気相などの粒子形成プロセスで使用するために支持され得る。不均一触媒は、個別の化合物ではなく、むしろ、金属化合物と前駆体との反応混合物を得て、錯体を形成し、この錯体が、粒子のいくつかの形態上に複数の活性サイトを有する。通常、不均一触媒を介して生成されたポリマーは、より広い分子量分布を示し、インターポリマーの場合に、均一触媒よりも広い組成分布を示す。例示的な実施形態では、第1の反応器内の触媒は、第1の反応器環境内で異なる反応性比を有する異なる均一触媒であり得る。
【0044】
ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒は、均一触媒の一例である。均一触媒の他の例としては、拘束幾何触媒が挙げられる。不均一触媒の例としては、溶液プロセスの高い重合温度で特に有用である不均一チーグラー・ナッタ触媒が挙げられ得る。そのようなチーグラー・ナッタ触媒の例は、有機マグネシウム化合物、ハロゲン化アルキルもしくはハロゲン化アルミニウム、または塩化水素、および遷移金属化合物から誘導されたものである。そのような触媒の例は、米国特許第4,314,912号(Lowery Jr.ら)、同第4,547,475号(Glassら)、および同第4,612,300号(Coleman,III)に記載されており、それらの教示は参照により本明細書に組み入れられる。
【0045】
特に好適な有機マグネシウム化合物としては、例えば、マグネシウムジアルキルおよびマグネシウムジアリールなどの炭化水素可溶性ジヒドロカルビルマグネシウムが挙げられる。例示的な好適なマグネシウムジアルキルとしては、特に、n-ブチル-secブチルマグネシウム、ジイソプロピルマグネシウム、ジ-n-ヘキシルマグネシウム、イソプロピル-n-ブチル-マグネシウム、エチル-n-ヘキシルマグネシウム、エチル-n-ブチルマグネシウム、ジ-n-オクチルマグネシウムなどが挙げられ、アルキルが1~20個の炭素原子を有する。例示的な好適なマグネシウムジアリールとしては、ジフェニルマグネシウム、ジベンジルマグネシウム、およびジトリルマグネシウムが挙げられる。好適な有機マグネシウム化合物としては、アルキルおよびアリールマグネシウムアルコキシドならびにアリールオキシド、ならびにアリールおよびアルキルマグネシウムハロゲン化物が挙げられ、ハロゲンを含まない有機マグネシウム化合物がより望ましい。
【0046】
ビス(ビフェニルフェノキシ)触媒は、ビス(ビフェニルフェノキシ)プロ触媒、共触媒、およびさらなる任意選択の成分を含む多成分触媒系である。ビス(ビフェニルフェノキシ)プロ触媒は、式(I)による金属-配位子錯体を含み得る。
【化1】
【0047】
式(I)では、Mは、チタン、ジルコニウム、またはハフニウムから選択される金属であり、この金属は、+2、+3、または+4の形式酸化状態にあり、nは0、1、または2であり、nが1であるとき、Xは、単座配位子または二座配位子であり、nが2であるとき、各Xは、単座配位子であり、同じかまたは異なり、金属-配位子錯体は、全体的に電荷中性であり、Oは、O(酸素原子)であり、各Zは、-O-、-S-、-N(R)-、または-P(R)-から独立的に選択され、Lは、(C~C40)ヒドロカルビレンまたは(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンであり、ここで、(C~C40)ヒドロカルビレンは式(I)の2つのZ基を連結している1炭素原子から10炭素原子のリンカー骨格(Lが結合している)を含む部分を有するか、または(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンは、式(I)の2つのZ基を連結する1原子から10原子のリンカー骨格を含む部分を有し、ここで、(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンの1原子から10原子のリンカー骨格の1から10原子の各々は、独立して炭素原子またはヘテロ原子であり、ここで、各ヘテロ原子は、独立してO、S、S(O)、S(O)、Si(R、Ge(R、P(R)、またはN(R)であり、ここで、独立して、各Rは、(C~C30)ヒドロカルビルまたは(C~C30)ヘテロヒドロカルビルであり、RおよびRは、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、および式(II)、式(III)、または式(IV)を有するラジカルからなる群から独立的に選択される。
【化2】
【0048】
式(II)、(III)、および(IV)では、R31~35、R41~48、またはR51~59の各々は(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、または-Hから独立的に選択され、提供されたRまたはRのうちの少なくとも1つが、式(II)、式(III)、または式(IV)を有するラジカルである。
【0049】
式(I)では、R2~4、R5~7、およびR9~16の各々は、(C~C40)ヒドロカルビル、(C~C40)ヘテロヒドロカルビル、-Si(R、-Ge(R、-P(R、-N(R、-OR、-SR、-NO、-CN、-CF、RS(O)-、RS(O)-、(RC=N-、RC(O)O-、ROC(O)-、RC(O)N(R)-、(RNC(O)-、ハロゲン、および-Hから独立的に選択される。
【0050】
そこで、触媒系の具体的な実施形態を説明する。本開示の触媒系は、異なる形態で実施されてもよく、本開示に記載される特定の実施形態に限定されると解釈されるべきではないことを理解されたい。むしろ、実施形態は、本開示が、徹底的かつ完全となり、また主題の範囲を当業者に完全に伝えるように、提供される。
【0051】
「独立的に選択される」という用語は、R、R、R、R、およびRなどのR基が、同一であっても異なっていてもよいこと(例えば、R、R、R、R、およびRは、全てが置換アルキルであってもよく、またはRおよびRは、置換アルキルであってもよく、Rは、アリールであってもよい、など)を示すために本明細書で使用される。単数形の使用には、複数形の使用が含まれ、またその逆も同様である(例えば、ヘキサン溶媒は、複数のヘキサンを含む)。命名されたR基は、一般に、当該技術分野においてその名称を有するR基に対応すると認識されている構造を有するであろう。これらの定義は、当業者に既知の定義を補足し、例示することを意図したものであり、排除するものではない。
【0052】
「プロ触媒」という用語は、活性化剤と組み合わせたときに触媒活性を有する化合物を指す。「活性化剤」という用語は、プロ触媒を触媒的に活性な触媒に転換するようにプロ触媒と化学的に反応する化合物を指す。本明細書で使用される場合、「共触媒」および「活性剤」という用語は、相互交換可能な用語である。
【0053】
ある特定の炭素原子含有化学基を記載するために使用される場合、「(C-C)」の形態を有する括弧付きの表現は、化学基の非置換形態がxおよびyを含めてx個の炭素原子からy個の炭素原子までを有することを意味する。例えば、(C~C40)アルキルは、その非置換形態において1~40個の炭素原子を有するアルキル基である。いくつかの実施形態および一般構造において、ある特定の化学基は、Rなどの1つ以上の置換基によって置換してもよい。括弧付きの「(C~C)」を使用して定義される、化学基のR置換バージョンは、任意の基Rの同一性に応じてy個超の炭素原子を含有し得る。例えば、「Rがフェニル(-C)である厳密に1つの基Rで置換された(C~C40)アルキル」は、7~46個の炭素原子を含有し得る。したがって、一般に、括弧付きの「(C-C)」を使用して定義される化学基が1つ以上の炭素原子含有置換基Rによって置換されるとき、化学基の炭素原子の最小および最大合計数は、xとyとの両方に、すべての炭素原子含有置換基R由来の炭素原子の合計数を加えることによって、決定される。
【0054】
いくつかの実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体の化学基(例えば、X、Rなど)の各々は、R置換基を有しない非置換であり得る。他の実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体の化学基のうちの少なくとも1つは独立して、1つまたは2つ以上のRを含有し得る。いくつかの実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体の化学基中のRの合計は、20個を超えない。いくつかの実施形態では、化学基中のRの合計は、10個を超えない。例えば、各R1~5が2つのRで置換された場合、次に、XおよびZをRで置換することはできない。別の実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体の化学基中のRの合計は、5つのRを超えない場合がある。2つまたは3つ以上のRが式(I)の金属-配位子錯体の同じ化学基に結合している場合、各Rは独立して、同一もしくは異なる炭素原子またはヘテロ原子に結合しており、化学基の過置換を含み得る。
【0055】
「置換」という用語は、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子またはヘテロ原子に結合した少なくとも1個の水素原子(-H)が置換基(例えばR)によって置き換えられることを意味する。「過置換」という用語は、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子またはヘテロ原子に結合したすべての水素原子(H)が置換基(例えばR)によって置き換えられることを意味する。「多置換」という用語は、対応する非置換化合物または官能基の炭素原子またはヘテロ原子に結合した、少なくとも2個の、ただし、すべてよりは少ない水素原子が置換基によって置き換えられることを意味する。
【0056】
「-H」という用語は、別の原子に共有結合している水素または水素ラジカルを意味する。「水素」および「-H」は、交換可能であり、明記されていない限り、同一の意味を有する。
【0057】
「(C~C40)ヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子を有する炭化水素ラジカルを意味し、「(C~C40)ヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子を有する炭化水素ジラジカルを意味し、ここで、各炭化水素ラジカルおよび各炭化水素ジラジカルは、芳香族または非芳香族、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖、環式(単環式および多環式、二環式を含む縮合および非縮合多環式を含み、3個以上の炭素原子)または非環式であり、かつ、1つ以上のRによって置換されているか、または置換されていない。
【0058】
本開示では、(C~C40)ヒドロカルビルは、非置換もしくは置換の(C~C40)アルキル、(C~C40)シクロアルキル、(C~C20)シクロアルキル-(C~C20)アルキレン、(C~C40)アリール、または(C~C20)アリール-(C~C20)アルキレンであり得る。いくつかの実施形態では、上記の(C~C40)ヒドロカルビル基の各々は、最大20個の炭素原子(すなわち、(C~C20)ヒドロカルビル)、他の実施形態では、最大12個の炭素原子を有する。
【0059】
「(C~C40)アルキル」および「(C~C18)アルキル」という用語は、それぞれ、1~40個の炭素原子または1~18個の炭素原子を有する飽和直鎖または分岐炭化水素ラジカルを意味し、ラジカルは、非置換であるか、または1つ以上のRにより置換されている。非置換(C~C40)アルキルの例は、非置換(C~C20)アルキル、非置換(C~C10)アルキル、非置換(C~C)アルキル、メチル、エチル、1-プロピル、2-プロピル、1-ブチル、2-ブチル、2-メチルプロピル、1,1-ジメチルエチル、1-ペンチル、1-ヘキシル、1-ヘプチル、1-ノニル、および1-デシルである。置換(C~C40)アルキルの例は、置換(C~C20)アルキル、置換(C~C10)アルキル、トリフルオロメチル、および[C45]アルキルである。「[C45]アルキル」(角括弧付き)という用語は、置換基を含むラジカル中に最大45個の炭素原子が存在することを意味し、例えば、それぞれ、(C~C)アルキルである1つのRによって置換された(C27~C40)アルキルである。各(C-C)アルキルは、メチル、トリフルオロメチル、エチル、1-プロピル、1-メチルエチル、または1,1-ジメチルエチルであることができる。
【0060】
「(C~C40)アリール」という用語は、6~40個の炭素原子の非置換または置換(1つ以上のRによる)単環式、二環式、または三環式芳香族炭化水素ラジカルを意味し、そのうち少なくとも6~14個の炭素原子は、芳香環炭素原子であり、単環式、二環、または三環式ラジカルは、それぞれ1個、2個、または3個の環を含み、1個の環は、芳香族であり、2個または3個の環は、独立して縮合または非縮合であり、2個または3個の環の少なくとも1つは、芳香族である。非置換(C~C40)アリールの例は、非置換(C~C20)アリール、非置換(C~C18)アリール、2-(C~C)アルキル-フェニル、2,4-ビス(C~C)アルキル-フェニル、フェニル、フルオレニル、テトラヒドロフルオレニル、インダセニル、ヘキサヒドロインダセニル、インデニル、ジヒドロインデニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、およびフェナントレンである。置換(C~C40)アリールの例は、置換(C~C20)アリール、置換(C~C18)アリール、2,4-ビス[(C20)アルキル]-フェニル、ポリフルオロフェニル、ペンタフルオロフェニル、およびフルオレン-9-オン-1-イルである。
【0061】
「(C~C40)シクロアルキル」という用語は、非置換であるかまたは1つ以上のRで置換されている、3~40個の炭素原子の飽和環式炭化水素ラジカルを意味する。他のシクロアルキル基(例えば(C~C)シクロアルキル)は、x~y個の炭素原子を有し、非置換であるか、または1つ以上のRで置換されているかのいずれかであると同様な様式で定義される。非置換(C-C40)シクロアルキルの例は、非置換(C-C20)シクロアルキル、非置換(C-C10)シクロアルキル、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、およびシクロデシルである。置換(C-C40)シクロアルキルの例は、置換(C-C20)シクロアルキル、置換(C-C10)シクロアルキル、シクロペンタノン-2-イル、および1-フルオロシクロヘキシルである。
【0062】
(C~C40)ヒドロカルビレンの例としては、非置換または置換の(C~C40)アリーレン、(C~C40)シクロアルキレン、および(C~C40)アルキレン(例えば(C~C20)アルキレン)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ジラジカルは、同一の炭素原子(例えば、-CH-)であるかまたは隣接する炭素原子上(すなわち、1,2-ジラジカル)にあるか、または1個、2個、または2個以上の介在する炭素原子によって離間されている(例えば、1,3-ジラジカル、1,4-ジラジカルなど)。一部のジラジカルには、α、ω-ジラジカルが含まれる。α,ω-ジラジカルは、ラジカル炭素間に最大の炭素骨格間隔を有するジラジカルである。(C-C20)アルキレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、エタン-1,2-ジイル(すなわち-CHCH)、プロパン-1,3-ジイル(すなわち-CHCHCH-)、2-メチルプロパン-1,3-ジイル(すなわち-CHCH(CH)CH-)が挙げられる。(C~C40)アリーレンα,ω-ジラジカルのいくつかの例としては、フェニル-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、またはナフタレン-3,7-ジイルが挙げられる。
【0063】
「(C~C40)アルキレン」という用語は、非置換または1つ以上のRで置換された炭素数1~40の飽和直鎖または分岐鎖のジラジカル(即ち、ラジカルが環原子ではない)を意味する。非置換(C~C40)アルキレンの例は、非置換(C~C20)アルキレンであり、非置換-CHCH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-(CH-、-CHC*HCH、および-(CHC*(H)(CH)を含み、「C*」は、水素原子が、第二級もしくは第三級アルキルラジカルを形成するために除去される炭素原子を示す。置換(C~C40)アルキレンの例は、置換(C~C20)アルキレン、-CF-、-C(O)-、および-(CH14C(CH(CH-(即ち、6,6-ジメチル置換ノルマル-1,20-エイコシレン)である。上記のように、2つのRは一緒になって、(C~C18)アルキレンを形成することができるため、置換(C~C40)アルキレンの例としては、1,2-ビス(メチレン)シクロペンタン、1,2-ビス(メチレン)シクロヘキサン、2,3-ビス(メチレン)-7,7-ジメチル-ビシクロ[2.2.1]ヘプタン、および2,3-ビス(メチレン)ビシクロ[2.2.2]オクタンが挙げられる。
【0064】
「(C~C40)シクロアルキレン」という用語は、非置換であるか、または1つ以上のRで置換されている、3~40個の炭素原子の環式ジラジカル(即ち、ラジカルが環原子上にある)を意味する。
【0065】
「ヘテロ原子」という用語は、水素または炭素以外の原子を指す。1個または2個以上のヘテロ原子を含有する基の例としては、O、S、S(O)、S(O)、Si(R、P(R)、N(R)、-N=C(R、-Ge(R-、または-Si(R)-が挙げられ、各Rおよび各Rは、非置換(C-C18)ヒドロカルビルまたは-Hであり、各Rは非置換(C-C18)ヒドロカルビルである。「ヘテロ炭化水素」という用語は、1個以上の炭素原子がヘテロ原子で置換されている分子または分子骨格を指す。「(C~C40)ヘテロヒドロカルビル」という用語は、1~40個の炭素原子を有するヘテロ炭化水素ラジカルを意味し、「(C~C40)ヘテロヒドロカルビレン」という用語は、1~40個の炭素原子を有するヘテロ炭化水素ジラジカルを意味し、各ヘテロ炭化水素は、1つ以上のヘテロ原子を有する。ヘテロヒドロカルビルのラジカルは、炭素原子またはヘテロ原子上に存在し、ヘテロヒドロカルビルのジラジカルは、(1)1つまたは2つの炭素原子、(2)1つまたは2つのヘテロ原子、または(3)炭素原子とヘテロ原子上に存在し得る。(C~C40)ヘテロヒドロカルビルおよび(C~C40)ヘテロヒドロカルビレンは各々、非置換または(1つ以上のRによって)置換、芳香族または非芳香族、飽和または不飽和、直鎖または分岐鎖、環式(単環式および多環式、縮合および非縮合多環式を含む)または非環式であってもよい。
【0066】
(C~C40)ヘテロヒドロカルビルは、非置換であってもよく、または置換されてもよい。(C~C40)ヘテロヒドロカルビルの非限定的な例としては、(C~C40)ヘテロアルキル、(C~C40)ヒドロカルビル-O-、(C~C40)ヒドロカルビル-S-、(C~C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C~C40)ヒドロカルビル-S(O)-、(C~C40)ヒドロカルビル-Si(R-、(C~C40)ヒドロカルビル-N(R)-、(C~C40)ヒドロカルビル-P(R)-、(C~C40)ヘテロシクロアルキル、(C~C19)ヘテロシクロアルキル-(C~C20)アルキレン、(C~C20)シクロアルキル-(C~C19)ヘテロアルキレン、(C~C19)ヘテロシクロアルキル-(C~C20)ヘテロアルキレン、(C~C50)ヘテロアリール、(C~C19)ヘテロアリール-(C~C20)アルキレン、(C~C20)アリール-(C~C19)ヘテロアルキレン、または(C~C19)ヘテロアリール-(C~C20)ヘテロアルキレンが挙げられる。
【0067】
「(C~C40)ヘテロアリール」という用語は、1~40個の総炭素原子および1~10個のヘテロ原子を有する非置換または置換(1つ以上のRによる)単環式、二環式、または三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルを意味し、単環式、二環式、または三環式のラジカルは、それぞれ1個、2個、または3個の環を含み、2個または3個の環は、独立して縮合または非縮合であり、2個または3個の環のうちの少なくとも1つは、ヘテロ芳香族である。他のヘテロアリール基(例えば、(C~C12)ヘテロアリールなどの一般的な(C~C)ヘテロアリール)は、x~y個の炭素原子(1~12個の炭素原子など)を有し、かつ非置換または1つ以上のRで置換されているものと類似した様式で定義される。単環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、5員環または6員環である。5員環は、5マイナスh個の炭素原子を有し、ここで、hは、ヘテロ原子数であり、1、2、または3であり得、各ヘテロ原子は、O、S、N、またはPであり得る。5員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、ピロール-1-イル、ピロール-2-イル、フラン-3-イル、チオフェン-2-イル、ピラゾール-1-イル、イソキサゾール-2-イル、イソチアゾール-5-イル、イミダゾール-2-イル、オキサゾール-4-イル、チアゾール-2-イル、1,2,4-トリアゾール-1-イル、1,3,4-オキサジアゾール-2-イル、1,3,4-チアジアゾール-2-イル、テトラゾール-1-イル、テトラゾール-2-イル、およびテトラゾール-5-イルが挙げられる。6員環は、6マイナスh個の炭素原子を有し、ここで、hは、ヘテロ原子数であり、1または2であり得、ヘテロ原子は、NまたはPであり得る。6員環ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例は、ピリジン-2-イル、ピリミジン-2-イル、およびピラジン-2-イルである。二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは、縮合5,6-または6,6-環系であり得る。縮合5,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、インドール-1-イル、およびベンズイミダゾール-1-イルが挙げられる。縮合6,6-環系二環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルの例としては、キノリン-2-イル、およびイソキノリン-1-イルが挙げられる。三環式ヘテロ芳香族炭化水素ラジカルは縮合5,6,5-、5,6,6-、6,5,6-、または6,6,6-環系であり得る。縮合5,6,5-環系の例としては、1,7-ジヒドロピロロ[3,2-f]インドール-1-イルが挙げられる。縮合5,6,6-環系の例としては、1H-ベンゾ[f]インドール-1-イルが挙げられる。縮合6,5,6-環系の例は、9H-カルバゾール-9-イルである。縮合6,6,6-環系の例としては、アクリジン-9-イルである。
【0068】
前述のヘテロアルキルは、(C~C40)の炭素原子またはそれより少ない炭素原子およびヘテロ原子のうちの1個以上を含有する飽和直鎖または分岐鎖ラジカルであり得る。同様に、ヘテロアルキレンは、1~50個の炭素原子および1個以上のヘテロ原子を含む飽和直鎖または分岐鎖ジラジカルであってもよい。上記で定義したように、ヘテロ原子としては、Si(R、Ge(R、Si(R、Ge(R、P(R、P(R)、N(R、N(R)、N、O、OR、S、SR、S(O)、およびS(O)が挙げられ得、ヘテロアルキルおよびヘテロアルキレン基の各々は、非置換または1つ以上のRによって置換されている。
【0069】
非置換(C~C40)ヘテロシクロアルキルの例としては、非置換(C~C20)ヘテロシクロアルキル、非置換(C~C10)ヘテロシクロアルキル、アジリジン-1-イル、オキセタン-2-イル、テトラヒドロフラン-3-イル、ピロリジン-1-イル、テトラヒドロチオフェン-S,S-ジオキシド-2-イル、モルホリン-4-イル、1,4-ジオキサン-2-イル、ヘキサヒドロアゼピン-4-イル、3-オキサ-シクロオクチル、5-チオ-シクロノニル、および2-アザ-シクロデシルが挙げられる。
【0070】
「ハロゲン原子」または「ハロゲン」という用語は、フッ素原子(F)、塩素原子(Cl)、臭素原子(Br)、またはヨウ素原子(I)のラジカルを意味する。「ハロゲン化物」という用語は、フッ化物(F)、塩化物(Cl)、臭化物(Br)、またはヨウ化物(I)のハロゲン原子のアニオン形態を意味する。
【0071】
「飽和」という用語は、炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、ならびに(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素、炭素-リン、および炭素-ケイ素二重結合を欠くことを意味する。飽和化学基が1つ以上の置換基Rで置換されている場合、1つ以上の二重および/または三重結合は、任意選択で、置換基R中に存在してもしなくてもよい。「不飽和」という用語は、1つ以上の炭素-炭素二重結合、炭素-炭素三重結合、および(ヘテロ原子含有基において)炭素-窒素、炭素-リン、および炭素-ケイ素二重結合を含有し、存在する場合、R置換基中に存在し得るか、または存在する場合、(ヘテロ)芳香族環中に存在し得る任意のそのような二重結合を含まないことを意味する。
【0072】
いくつかの実施形態では、式(I)の金属-配位子錯体を含む触媒系は、オレフィン重合反応の金属系触媒を活性化するための当該技術分野において既知の任意の技術によって触媒的に活性にされ得る。例えば、式(I)の金属-配位子錯体を含むものは、錯体を活性化共触媒と接触させるか、または錯体を活性化共触媒と組み合わせることによって、触媒的に活性にされ得る。本明細書に使用するのに好適な活性化共触媒として、アルキルアルミニウム、ポリマーまたはオリゴマーアルモキサン(アルミノキサンとしても知られる)、中性ルイス酸、および非ポリマー性、非配位性のイオン形成化合物が挙げられる(酸化条件下でのそのような化合物の使用を含む)。好適な活性化技術は、バルク電気分解である。前述の活性化共触媒および技術のうちの1つ以上の組み合わせもまた企図される。「アルキルアルミニウム」という用語は、モノアルキルアルミニウムジヒドリドもしくはモノアルキルアルミニウムジハライド、ジアルキルアルミニウムヒドリドもしくはジアルキルアルミニウムハライド、またはトリアルキルアルミニウムを意味する。ポリマーアルモキサンまたはオリゴマーアルモキサンの例としては、メチルアルモキサン、トリイソブチルアルミニウム修飾メチルアルモキサン、およびイソブチルアルモキサンが挙げられる。
【0073】
ルイス酸活性剤(助触媒)は、本明細書に記載されるように、1~3個の(C~C20)ヒドロカルビル置換基を含有する第13族金属化合物を含む。一実施形態では、第13族金属化合物は、トリ((C~C20)ヒドロカルビル)置換アルミニウムまたはトリ((C~C20)ヒドロカルビル)-ホウ素化合物である。他の実施形態では、第13族金属化合物は、トリ(ヒドロカルビル)置換アルミニウム、トリ(ヒドロカルビル)-ホウ素化合物、トリ((C~C10)アルキル)アルミニウム、トリ((C~C18)アリール)ホウ素化合物、およびそれらのハロゲン化(過ハロゲン化を含む)誘導体である。さらなる実施形態では、第13族金属化合物は、トリス(フルオロ置換フェニル)ボラン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランである。いくつかの実施形態では、活性化共触媒は、テトラキス((C~C20)ヒドロカルビルボレート(例えば、トリチルテトラフルオロボレート)またはトリ((C~C20)ヒドロカルビル)アンモニウムテトラ((C~C20)ヒドロカルビル)ボラン(例えば、ビス(オクタデシル)メチルアンモニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボラン)である。本明細書で使用される場合、「アンモニウム」という用語は、((C~C20)ヒドロカルビル)、((C~C20)ヒドロカルビル)N(H)、((C~C20)ヒドロカルビル)N(H) 、(C~C20)ヒドロカルビルN(H) 、またはN(H) である窒素カチオンを意味し、各(C~C20)ヒドロカルビルは、2つ以上存在する場合、同じであっても、異なっていてもよい。
【0074】
中性ルイス酸活性剤(共触媒)の組み合わせとしては、トリ((C~C)アルキル)アルミニウムとハロゲン化トリ((C~C18)アリール)ホウ素化合物、特に、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとの組み合わせを含む混合物が挙げられる。他の実施形態は、そのような中性ルイス酸混合物とポリマーまたはオリゴマーアルモキサンとの組み合わせ、および単一の中性ルイス酸、特にトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランとポリマーまたはオリゴマーアルモキサンとの組み合わせである。(金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)[例えば(第4族金属-配位子錯体):(トリス(ペンタフルオロ-フェニルボラン):(アルモキサン)]のモルの数の比は、1:1:1~1:10:30であり、他の実施形態では1:1:1.5~1:5:10である。
【0075】
式(I)の金属-配位子錯体を含む触媒系を活性化して、1つ以上の助触媒、例えば、カチオン形成助触媒、強ルイス酸、またはそれらの組み合わせを組み合わせることによって、活性触媒組成物を形成することができる。好適な活性化助触媒としては、ポリマーまたはオリゴマーのアルミノキサン、特にメチルアルミノキサン、ならびに不活性で相溶性のある非配位イオン形成化合物が挙げられる。例示的な好適な共触媒としては、変性メチルアルミノキサン(MMAO)、ビス(水素化タローアルキル)メチルテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート(1)アミン、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0076】
いくつかの実施形態において、前述の活性化共触媒のうちの1つ以上は、互いに組み合わせて使用される。特に好ましい組み合わせは、トリ((C~C)ヒドロカルビル)アルミニウム、トリ((C~C)ヒドロカルビル)ボラン、またはホウ酸アンモニウムとオリゴマーもしくはポリマーアルモキサン化合物との混合物である。式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数と活性化助触媒のうちの1つ以上の総モル数との比は、1:10,000-100:1である。いくつかの実施形態では、この比は、少なくとも1:5000であり、他のいくつかの実施形態では少なくとも1:1000、および10:1以下であり、さらにいくつかの他の実施形態では、1:1以下である。アルモキサン単独を活性化助触媒として使用する場合、好ましくは、使用されるアルモキサンのモル数は、式(I)の金属-配位子錯体のモル数の少なくとも100倍である。トリス(ペンタフルオロフェニル)ボランを単独で活性化助触媒として使用する場合、他のいくつかの実施形態では、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル数に対して用いられるトリス(ペンタフルオロフェニル)ボランのモル数を、0.5:1~10:1、1:1~6:1、または1:1~5:1とする。残存する活性化助触媒は、一般に、式(I)の1つ以上の金属-配位子錯体の総モル量に等しいおよそのモル量で用いられる。
【0077】
様々な溶媒、例えば芳香族およびパラフィン溶媒が企図される。例示的な溶媒としては、イソパラフィンが挙げられるが、それに限定されない。例えば、そのようなイソパラフィン溶媒は、ExxonMobil ChemicalからISOPAR Eの名称で市販されている。
【0078】
反応性比は、エチレンと重合プロセスにおける重合触媒を有するC~C12αオレフィンコモノマーとの間の重合速度(すなわち、選択性)で得られた差によって決定される。重合触媒に対する立体相互作用は、C~C12αオレフィンなどのαオレフィンよりも選択的に、エチレンの重合をもたらす(すなわち、触媒は、αオレフィンの存在下で、優先的にエチレンを重合する)と考えられている。再度、理論に束縛されるものではないが、そのような立体相互作用は、式(I)の金属-配位子錯体によって、またはそれから調製された均一触媒に、触媒によってα-オレフィンがそうすることが可能となるよりも、エチレンがMに実質的により容易に接近することを可能にする高次構造を取るか、またはより容易に反応性高次構造を取るか、またはその両方であると考えられている。
【0079】
挿入された最後のモノマーの属性が後続のモノマーの挿入速度を決定付けるランダムコポリマーには、末端共重合モデルが用いられる。このモデルでは、このタイプの挿入反応:
【数1】
式中、Cは触媒を表し、Mはモノマーiを表し、kijは以下の速度式を有する速度定数である。
【数2】
【0080】
反応媒体中のコモノマーのモル分率(i=2)は、次の等式によって定義される。
【数3】
【0081】
George Odian,Principles of Polymerization,Second Edition,John Wiley and Sons,1970に開示されているように、コモノマー組成の簡単な等式を次のように導出すことができる。
【数4】
【0082】
この等式から、ポリマー中のコモノマーのモル分率は、反応媒体中のコモノマーのモル分率、および挿入速度定数に関して次のように定義された2つの温度依存反応性比にのみ依存する。
【数5】
【0083】
このモデルでも、ポリマー組成は、反応器内の温度依存反応性比およびコモノマーモル分率のみの関数である。逆になったコモノマーまたはモノマーの挿入が発生し得る場合、または2つを超えるモノマーの共重合の場合にも同じことが言える。
【0084】
前述のモデルで使用するための反応性比は、周知の理論手法を使用して予測するか、または実際の重合データから経験的に導出され得る。好適な理論手法は、例えば、B.G.Kyle,Chemical and Process Thermodynamics,Third Addition,Prentice-Hall,1999 and in Redlich-Kwong-Soave(RKS)Equation of State,Chemical Engineering Science,1972,pp.1197-1203に開示されている。市販のソフトウェアプログラムを使用して、経験的に導出されたデータからの反応性比の導出を支援してもよい。そのようなソフトウェアの一例は、Aspen Technology,Inc.,Ten Canal Park,Cambridge,MA 02141-2201 USAからのAspen Plusである。
【0085】
上記のように、LDPEおよび多峰性エチレン系ポリマーを含む本発明の組成物の実施形態は、フィルムに組み込まれ得る。これらのフィルムは、インフレーションフィルムまたはキャストフィルムプロセスによって生成された単層または多層フィルムであり得る。これらのフィルムは、例えば、冷凍食品包装、工業用および消費者用包装材料、建設用フィルム、発泡フィルムなどを含む様々な物品に組み込むことができる。
【0086】
任意選択で、これらのフィルムは、1つ以上の添加剤をさらに含み得る。添加剤としては、帯電防止剤、色増強剤、染料、潤滑剤、充填剤(例えば、TiOまたはCaCO)、乳白剤、核剤、加工助剤、顔料、一次酸化防止剤、二次酸化防止剤、UV安定剤、粘着防止剤、スリップ剤、粘着付与剤、難燃剤、抗菌剤、臭気低減剤、抗かび剤、およびそれらの組み合わせが挙げられるが、これらに限定されない。
【0087】
前述のように、多峰性エチレン系ポリマーは、コア層、およびコア層の反対側に配設された少なくとも2つのスキン層を含む多層フィルム中に含まれ得る。一実施形態では、多峰性エチレン系ポリマーは、多層フィルムの少なくとも1つの層に含まれ得る。別の実施形態では、コア層は、多峰性エチレン系ポリマーを含み得る。さらなる実施形態では、コア層およびスキン層のうちの1つ以上は、多峰性エチレン系ポリマーを含み得る。
【0088】
加えて、多層フィルムは、2.16kgの荷重および190℃の温度でASTM D1238に従って測定したとき、0.916~0.935g/ccの密度および0.1~10.0g/10分のメルトインデックス(I)を有する少なくとも1つの低密度ポリエチレン(LDPE)も含み得る。別の実施形態では、LDPEは、0.916~0.925g/ccの密度を有し得る。さらに別の実施形態では、LDPEは、約0.2~5g/10分、または0.5~2.0g/10分のIメルトインデックスを有し得る。さらに、LDPEは、3.5~10の分子量分布(MWD)を有し得、ここで、MWDはMw(GPC)/Mn(GPC)として定義され、Mw(GPC)は重量平均分子量であり、Mn(GPC)は数平均分子量であり、どちらもゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって決定される。さらに、LDPEは、5~9のMWDを有し得る。
【0089】
一実施形態では、スキン層のうちの1つ以上は、LDPEを単独で、または多峰性エチレン系ポリマーとのブレンド中に含み得る。
【0090】
さらに、多層フィルムはまた、コア層とスキン層との間に配設されたサブスキン層も含み得る。いくつかの実施形態では、サブスキン層のうちの1つ以上は、多峰性エチレン系ポリマーを含み得る。さらなる実施形態では、サブスキン層のうちの1つ以上は、多峰性エチレン系ポリマーおよびLDPEを含み得る。
【0091】
フィルム層のうちの1つ以上中に多峰性エチレン系ポリマーとLDPEとのブレンドを含む単層または多層フィルムについては、各成分の様々な量が企図される。いくつかの実施形態では、フィルム層は、60~95重量%の多峰性エチレン系ポリマー、または70~90重量%の多峰性エチレン系ポリマー、または75~85重量%の多峰性エチレン系ポリマーを含む。さらに、他の実施形態では、フィルム層は、5~40重量%のLDPE、または10~30重量%のLDPE、または15~20重量%のLDPEを含む。
【0092】
多層フィルムの追加の層のうちの1つ以上は、少なくとも1つのポリアミド、プロピレン系ポリマー、エチレン系ポリマー、エチレンビニルアセテート(EVA)、エチレンビニルアルコール(EVOH)、ポリアミド、エチレンアクリル酸(EAA)、およびエチレン無水マレイン酸(EMA)を独立して含み得る。
【0093】
前述のように、本発明のフィルムは、より低温での特性が改善されたことを示し、それにより本発明の多峰性エチレン系ポリマーを冷凍食品包装用途に望ましいものにしている。例えば、本発明の多峰性エチレン系ポリマーを含む単層フィルムは、-20℃、厚さ1ミルで少なくとも0.30J、または場合によっては、少なくとも-20℃、厚さ1ミルで少なくとも少なくとも0.30Jの計装化ダート(IDI)の総エネルギーを示し得る。さらに、本発明の多峰性エチレン系ポリマーを含む多層フィルムは、-20℃、厚さ2ミルで少なくとも0.60JのIDI総エネルギーを示し得る。
【0094】
試験方法
試験方法は、以下を含む。
【0095】
メルトインデックス(I)および(I10
多峰性エチレン系ポリマーのメルトインデックス(I)値を、ASTM D1238に従って、190℃、2.16kgで測定した。同様に、多峰性エチレン系ポリマーのメルトインデックス(I10)値を、ASTM D1238に従って、190℃、10kgで測定した。値を、10分あたりに溶出したグラムに対応する、g/10分で報告する。第1のエチレン系成分、第2のエチレン系成分、および第3のエチレン系成分のメルトインデックス(I)の値を、等式30および下記の方法論に従って計算した。
【0096】
密度
多峰性エチレン系ポリマーの密度測定を、ASTM D792、方法Bに従って行った。第1および第2のエチレン系成分については、密度の値を、等式28および下記の方法論を使用して得た。第3のエチレン系成分については、密度値を等式29を使用して計算した。
【0097】
従来のゲル浸透クロマトグラフィー(従来のGPC)
クロマトグラフィーシステムは、内部IR5赤外線検出器(IR5)を装備したPolymerChar GPC-IR(スペイン、バレンシア)高温GPCクロマトグラフで構成されている。オートサンプラーオーブンコンパートメントを160℃に設定し、カラムコンパートメントを150℃に設定した。カラムは、4つのAgilent「Mixed A」30cm20ミクロンカラムを使用した。使用したクロマトグラフィー溶媒は、1,2,4-トリクロロベンゼンであり、200ppmのブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を含有していた。溶媒源は、窒素注入された。使用した注入体積は200マイクロリットルであり、流量は1.0ミリリットル/分であった。
【0098】
580~8,400,000g/molの範囲の分子量を有する少なくとも20個の狭い分子量分布のポリスチレン標準によって、GPCカラムセットの較正を実行し、個々の分子量間が少なくとも10離れている6つの「カクテル」混合物中に配置した。標準は、Agilent Technologiesから購入した。ポリスチレン標準を、1,000,000g/mol以上の分子量に対して、50ミリリットルの溶媒中0.025グラム、および1,000,000g/mol未満の分子量に対して、50ミリリットルの溶媒中0.05グラムで調製した。ポリスチレン標準を、80℃で30分間、静かに撹拌しながら溶解した。ポリスチレン標準のピーク分子量を、等式6を使用してエチレン系ポリマー分子量に変換した。(Williams and Ward,J.Polym.Sci.,Polym.Let.,6,621(1968)に記載の通り):
ポリエチレン=A×(Mポリスチレン (等式6)
式中、Mは分子量であり、Aは0.4315の値を有し、Bは1.0に等しい。
【0099】
五次多項式を使用して、それぞれのエチレン系ポリマー等価較正点に適合する。NIST標準NBS1475が52,000g/molの分子量で得られるように、Aに対してわずかな調整(約0.39~0.44)を行い、カラム分解能およびバンドの広がり効果を補正した。
【0100】
GPCカラムセットの合計プレートカウントは、(50ミリリットルのTCB中0.04gで調製され、穏やかに撹拌しながら20分間溶解された)Eicosaneで行った。プレートカウント(式7)および対称性(式8)を、200マイクロリットル注入で以下の式に従って測定した:
【数6】
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大の高さであり、1/2高さはピーク最大値の1/2の高さである。
【数7】
式中、RVはミリリットルでの保持体積であり、ピーク幅はミリリットルであり、ピーク最大値はピークの最大位置であり、1/10の高さはピーク最大値の1/10の高さであり、リアピークはピーク最大値よりも後の保持体積でのピークテールを指し、フロントピークはピーク最大値よりも前の保持体積でのピークフロントを指す。クロマトグラフィーシステムのプレート計数は22,000超であるべきであり、対称性は0.98~1.22であるべきである。
【0101】
試料はPolymerChar「Instrument Control」ソフトウェアを用いて半自動で調製された:2mg/mlを試料の標的重量とし、PolymerChar高温オートサンプラーを介して、予め窒素をスパージしたセプタキャップ付バイアルに溶媒(200ppmのBHTを含有)を添加した。試料を、「低速」振盪下、160℃で3時間溶解させた。
【0102】
n(GPC)、Mw(GPC)、およびMz(GPC)の計算は、PolymerChar GPC-IRクロマトグラフの内部IR5検出器(測定チャネル)を使用して、等式4~6に従って、PolymerCharのGPCOne(商標)ソフトウェア、各々の等間隔のデータ収集点i(IR)でベースラインを差し引いたIRクロマトグラム、および等式6の点i(Mポリエチレン、i、g/mol)の狭い標準較正曲線から得たエチレン系ポリマー相当分子量を使用した、GPC結果に基づいた。続いて、エチレン系ポリマー試料についてのGPC分子量分布(GPC-MWD)プロット(wtGPC(lgMW)対lgMWプロット、ここで、wtGPC(lgMW)は、分子量lgMWによるエチレン系ポリマー分子の重量分率)を得た。分子量はg/molで、wtGPC(lgMW)は等式9に従う。
【数8】
【0103】
数平均分子量Mn(GPC)、重量平均分子量Mw(GPC)、およびz平均分子量Mz(GPC)は、以下の等式で計算することができる。
【数9】
【0104】
経時的な偏差を監視するために、PolymerChar GPC-IRシステムで制御されたマイクロポンプを介して各試料に流量マーカー(デカン)を導入した。この流量マーカー(FM)を使用して、試料におけるのそれぞれのデカンピークのRV(RV(FM試料))を、狭い標準較正におけるデカンピークのRV(RV(FM較正))と整列させることによって、各試料のポンプ流量(流量(公称))を直線的に補正した。次に、デカンマーカーピークのいかなる時間変化も、試験全体の流量(流量(実効))の線形シフトに関すると仮定した。流量マーカーピークのRV測定の最高精度を促進するために、最小二乗フィッティングルーチンを使用して、流量マーカー濃度クロマトグラムのピークを二次方程式に適合させる。次に、二次方程式の一次導関数を使用して、真のピーク位置を求める。流量マーカーピークに基づいてシステムを較正した後、実効流量(狭い標準較正についての)を、等式13のように計算する。流量マーカーピークの処理は、PolymerChar GPCOne(商標)ソフトウェアにより行われた。許容可能な流量を、実効流量が公称流量の0.5%以内になるように補正した。
流量実効=流量公称×(RV(FM較正済み)/RV(FM試料))(等式13)
【0105】
IR5 GPCコモノマー含有量(GPC-CC)プロット
IR5検出器比演算の較正を、既知の短鎖分岐(SCB)周波数(基準材料のコモノマー含有量は、参照により本明細書に組み込まれている、例えば米国特許第5,292,845号(カワサキら)、およびJ.C.RandallによるRev.Macromol.Chem.Phys、C29、201-317に記載されている技術による13C NMR分析を使用して決定する)の少なくとも10のエチレン系ポリマー標準(エチレン系ポリマーホモポリマーおよびエチレン/オクテンコポリマー)を使用して、ホモポリマー(0SCB/総炭素数1000個)から約50SCB/総炭素数1000個までの範囲で実行し、総炭素数は、骨格内の炭素と分岐内の炭素との合計に等しい。各標準は、GPCによって測定するとき、36,000g/モル~126,000g/モルの重量平均分子量を有し、2.0~2.5の分子量分布を有していた。通常のコポリマー標準の特性および測定値を、表Aに示す。
【表1】
【0106】
「IR5メチルチャネルセンサーのベースライン減算領域応答」と「IR5測定チャネルセンサーのベースライン減算領域応答」との「IR5領域比(または「IR5メチルチャネル領域/IR5測定チャネル領域」)」(PolymerCharによって供給された標準フィルタおよびフィルタホイール:Part Number IR5_FWM01は、GPC-IR機器の一部として含まれていた)を、「コポリマー」標準の各々について計算した。重量%コモノマー対「IR5領域比」の線形適合を、以下の等式14の形態で構築した。
重量%コモノマー=A+[A(IR5メチルチャネル領域/IR5測定値tチャネル領域)](等式14)
【0107】
したがって、GPC-CC(GPC-コモノマー含有量)プロット(重量%コモノマー対lgMW)を得ることができる。各クロマトグラフスライスで決定された分子量を介してコモノマーの終端(メチル)との有意なスペクトルオーバーラップがある場合、重量%コモノマーデータの末端基補正を、終端メカニズムの知識を介して行うことができる。
【0108】
結晶化溶出分別(CEF)
コモノマー分布分析は、通常、短鎖分岐分布(SCBD)とも呼ばれ、この分布を、IR(IR-4またはIR-5)検出器(PolymerChar、スペイン)および2角度光散乱検出器モデル2040(精密検出器、現在Agilent Technologies)を装備した結晶化溶出分別(CEF)(PolymerChar、スペイン)(参照により本明細書に組み込まれている、Monrabalら、Macromol.Symp.257、71-79(2007))で測定した。600ppmの酸化防止剤ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)を有する蒸留済みのオルト-ジクロロベンゼン(ODCB)を溶媒として使用した。Nパージ可能なオートサンプラーについては、BHTを添加しなかった。検出器オーブン内のIR検出器のすぐ前に、GPCガードカラム(20ミクロン、または10ミクロン、50×7.5mm)(Agilent Technologies)を設置する。試料調製は、160℃で2時間の振盪下で、4mg/ml(特に指示がない限り)でオートサンプラーによって行う。注入体積は、300μLである。CEFの温度プロファイルは、3℃/分で110℃~30℃での結晶化、30℃で5分間の熱平衡、3℃/分で30℃~140℃での溶出である。結晶化中の流速は、0.052ml/分であった。溶出中の流速は、0.50ml/分である。データは、1データポイント/秒で収集した。
【0109】
CEFカラムは、Dow Chemical Companyにより、125μm±6%のガラスビーズ(MO-SCI Specialty Products)が詰められ、1/8インチのステンレスチューブと共に使用する。ガラスビーズは、Dow Chemical Companyからの要望により、MO-SCI Specialtyにより酸洗浄されている。カラム容量は、2.06mlである。カラム温度較正を、ODCB中のNIST標準参照物質直鎖エチレン系ポリマー1475a(1.0mg/ml)とエイコサン(2mg/ml)との混合物を使用して実行した。NIST直鎖エチレン系ポリマー1475aが101.0℃でピーク温度を有し、エイコサンが30.0℃のピーク温度を有するように、溶出加熱速度を調整することにより、温度を較正する。CEFカラムの分解能を、NIST直鎖エチレン系ポリマー1475a(1.0mg/ml)とヘキサコンタン(Fluka、purum≧97.0%、1mg/ml)との混合物で計算した。ヘキサコンタンとNISTエチレン系ポリマー1475aとのベースライン分離を達成した。ヘキサコンタンの領域(35.0~67.0℃)対NIST1475aの領域67.0~110.0℃は、50対50であり、35.0℃未満の溶解分画の量は1.8重量%未満である。CEFカラム分解能を、等式15に定義する:
【数10】
ここで、1/2高さの幅を温度で測定し、分解能は少なくとも6.0である。
【0110】
CEF機器には、Agilent(カリフォルニア州サンタクララ)モデル2040 2角度光散乱検出器が装備されており、光散乱を、既知の分子量(約120,000g/mol)の既知のホモポリマーエチレン系ポリマー標準による90度信号チャネルを使用して較正した。また、IR(赤外線)検出器を、質量応答について較正した。各溶出ポイントの分子量(Mw(CEF))を、適切な信号対雑音の区域における溶出温度の関数として計算した。領域計算(それぞれのIR領域で除算し、それぞれの検出器定数で因数分解した、90度光散乱信号の総領域を表す)を使用して、溶出温度の領域にわたる重量平均分子量を評価し、CEF-MWプロット(Mw(CEF)対温度曲線)を得た。領域計算は、連続的な計算よりも信号対雑音の本質的な利点を有する。IRおよびLS(光散乱)信号のどちらも、通常のクロマトグラフィー積分技術に従って、これらのベースライン信号レベルから除算した。
【0111】
「臨界温度(T臨界)」の計算、臨界温度(20℃~T臨界のCEF分率のMw(CEF))以下の温度範囲におけるポリマーの重量分率および重量平均分子量を、以下のように得た。
【0112】
0.2℃ずつの段階的な温度増加による20.0℃~119.9℃の各温度(T)での重量分率(wtCEF(T))を使用してCEF-SCBD(CEF-短鎖分岐分布)プロットを得る。
【数11】
【0113】
臨界温度を、以下の等式に従って、樹脂の密度(g/cc)によって定義する。
臨界(℃)=1108.1(℃ cc/g)×密度(g/cc)-952.1(℃)(等式17)
【0114】
20℃~T臨界のCEF重量分率を、CEF-SCBDから以下のように計算する。
【数12】
【0115】
同様に、20℃から臨界温度以下の分率の重量平均分子量(20℃~T臨界のCEF分率のMw(CEF))を、20℃~T臨界のIR検出器応答の合計で除算し、較正済みの検出器定数で因数分解した90度光散乱応答の合計の領域比として計算した。分子量の計算および較正を、GPCOne(登録商標)ソフトウェアで実行した。
【0116】
二変量データの数値デコンボリューション
二変量データの数値デコンボリューションを使用して、第1のエチレン系成分、第2のエチレン系成分、および第3のエチレン系成分の密度、分子量、ならびにメルトインデックス(I)を得る。CEF-SCBD(CEFからのwtCEF(T)対温度(T)プロット)とGPC-MWD(従来のGPCからのwtGPC(lgMW))対lgMWプロット)とを組み合わせたデータの数値デコンボリューションを、Microsoft Excel(登録商標)Solver(2013)を使用して実行した。CEF-SCBDについては、計算した重量分率(wtsum、CEF(T))対CEFセクションに記載の方法を使用して得た温度(T)データ(約23~120℃の範囲内)を、約200の等間隔のデータポイントに抑えて、適切な反復速度と温度分解能とのバランスを取った。単一または一連の(成分ごとに最大3つのピーク)指数修正ガウス分布(等式19)を合計して、各成分(wtC、CEF(T))を表し、これらの成分を合計して、総重量(wtsum、CEF(T))を等式20A~Dに示すように、任意の温度(T)で得た。
【数13】
式中、Cは、成分(C=1、2、または3)を意味し、Pは、ピーク(P=1、2、または3)を意味し、a0、C、Pは、第Cの成分の第Pのピークについてのクロマトグラフィー領域(℃)であり、a1、C、Pは、第Cの成分の第Pのピークについてのピーク中心(℃)であり、a2、C、Pは、第Cの成分の第Pのピークについてのピーク幅(℃)であり、a3、C、Pは、第Cの成分の第Pのピークについてのピークテーリング(℃)であり、Tは溶出温度(℃)である。単一の場合には、指数修正ガウス分布を使用して、成分のCEF-SCBD、yT、C、2=yT、C、3=0を表す。2つの場合には、指数修正ガウス分布を使用して、成分のCEF-SCBD、yT、C、3=0のみを表す。
【数14】
【0117】
CEF-SCBDデコンボリューションからの各成分の重量分率(wfC、CEF)は、以下の等式によって表現することができ、
【数15】
式中、wfC1、CEFは、CEF-SCBDデコンボリューションから得た第1のエチレン系成分の重量分率であり、wfC2、CEFは、CEF-SCBDデコンボリューションから得た第2のエチレン系成分の重量分率であり、wfC3、CEFは、CEF-SCBDデコンボリューションから得た第3のエチレン系成分の重量分率であり、分率の合計を1.00に正規化する。
【0118】
GPC-MWDについては、従来のGPCの記載セクションで得たMWDを、2.00~7.00の0.01lg(MW/(g/mol))の増分で同じスプレッドシートの中にインポートした(合計501データポイント)。重量平均分子量Mw、標的、および2.0の多分散性(M/M)を有するFlory-Schulz分布を、以下の等式に示す。
【数16】
lg(Mi+1/(g/mol))-lg(M/(g/mol))=0.01(等式24)
式中、wtF-S、iは、lg(M/(g/mol))(Mはg/mol)での分子の重量分率であり、iは、GPC-MWDプロット上の各データポイントを表すための0~500の範囲の整数であり、対応するlg(M/(g/mol))は、2+0.01×iである。
【0119】
その後、Flory-Schulz分布を、各lg(M/(g/mol))での連続正規分布の合計を使用して拡大する。lg(M/(g/mol))にピーク値を有する正規分布の重量分率を、元のFlory-Schulz分布と同じに保つ。拡大したFlory-Schulz分布曲線は、以下の等式のように記載することができる。
【数17】
式中、wtGPC(lg(M/(g/mol))は、lg(M/(g/mol))での分子の重量分率であり、jは、0~500の範囲の整数であり、σは、正規分布の標準偏差である。したがって、3つの成分全てについての分子量分布曲線は、以下の等式で表現することができる。数平均分子量(Mn(GPC))、重量平均分子量(Mw(GPC))、およびMWD(Mw(GPC)/Mn(GPC))は、拡大したFlory-Schulz分布から計算することができる。
【数18】
式中、σは、正規分布幅パラメータであり、添え字C1、C2、およびC3は、それぞれ第1、第2、および第3のエチレン系成分を表す。wfC1、GPC、wfC2、GPC、およびwfC3 GPCは、それぞれGPC-MWDからの第1、第2、および第3のエチレン系成分の重量分率である。
【0120】
CEF-SCBDおよびGPC-MWDからの対になる成分(第1のエチレン系成分(C1)、第2のエチレン系成分(C2)、および第3のエチレン系成分(C3))の各々は、等式27A~Eに示すように、それぞれの技術に対する等価質量と見なされる。
wfC1、CEF+wfC2、CEF+wfC3、CEF=1.00(等式27A)
wfC1、GPC+wfC2、GPC+wfC3、GPC=1.00(等式27B)
wfC1、CEF=wfC1、GPC(等式27C)
wfC2、CEF=wfC2、GPC(等式27D)
wfC2、CEF=wfC2、GPC(等式27E)
【0121】
触媒効率および反応器マスバランスを含むプロセスならびに触媒データは、各成分の相対重量生成の初期推定に活用することができる。あるいは、各成分についての重量分率の初期推定は、多峰性エチレン系ポリマーのCEF-SCBDまたはGPC-MWDプロットの部分領域を統合する、特に、定義されたピークまたはピーク変曲点を有する可視領域に留意することによって比較することができる。例えば、CEF-SCBD曲線における各成分についてのピーク領域は、十分に離れている場合、図2に示すようにピーク間の垂直線をドロップすることによって推定することができる。分子量の順序と分子量の初期推定値との関連付けは、CEF-SCBDおよびCEF-MWプロットの関連する成分領域のピーク位置から得ることができ、図2に示すように、GPC-CC測定値との一致が見込めるはずである。場合によっては、ピーク領域および組成の初期割当てを、開始点としての多峰性GPC-MWDから得て、CEF-SCBDおよびCEF-MWプロット下で検証することができる。
【0122】
CEF-SCBDにおける各成分についてのピーク幅およびテーリングの初期推定は、表Aに先に提示したようなものなどの、一連の標準シングルサイト試料を使用したピーク幅対温度の較正から得ることができる。
【0123】
Microsoft Excel(登録商標)Solverは、wtsum、GPC(lgM)と測定したGPC-MWDとの間の残差の2乗の合計と、wtsum、CEF(T)と測定したCEF-SCBDとの間の残差の2乗の合計との組み合わせを最小化するようにプログラムされている(ここで、2つの観測された分布のサンプリング幅および領域を、互いに正規化する)。GPC-MWDおよびCEF-SCBDの適合には、これらが同時に収束するため、等しく重み付けされる。CEF-SCBDにおける重量分率およびピーク幅についての初期推定値、ならびに各成分についての分子量ターゲットは、Microsoft Excel(商標登録)Solverを使用して、本明細書に記載するように開始する。
【0124】
CEFにおけるピーク形状を歪ませる共結晶化の影響を、指数修正ガウス(EMG)ピークフィットを使用すること、極端な場合には、単一の成分を記載するために合計した複数(最大3)のEMGピークを使用すること、によって補償する。シングルサイト触媒を介して生成した成分は、単一のEMGピークによってモデル化することができる。チーグラー・ナッタ触媒を介して生成した成分は、1つ、2つ、または3つのEMGピーク、またはCEF-SCBDプロット上の非常に高密度、非常に低分子量のターゲットのチーグラー・ナッタ成分に十分な低温向きの長いテ-ルを持つ単一のEMGピークによってモデル化することができる。全ての場合では、単一の拡大したFlory-Schulz分布(等式26A~C)を、CEF-SCBDモデル(等式27A~E)からのEMG成分のうちの1つ以上の関連する合計として割り当てられた重量分率と共に使用する。
【0125】
GPCデコンボリューションは、シングルサイト触媒を介して作製された第1および第2のエチレン系成分について、等式26A、26Bの正規分布幅パラメータ(σC1またはσC2)で0.000~0.170(約2.00~2.33の対応する多分散性)に制約されている。等式22のMw、標的は、この特定の反応スキームから最小になることが標的であるため、これらの場合では、第3のエチレン-エチレン系成分について最小になるように制約されている。あらゆる可能な場合に、定義によって最小になるように制約されているのではなく、組み合わせた樹脂の反応器内ブレンドの所望の性能標的に応じることに留意されたい。第1のエチレン系成分および第2のエチレン系成分の2つの重量平均分子量(Mw、標的)のランク付け(予備推定)を、CEF-MWプロット(Mw(CEF)対温度曲線)からのMw(CEF)によって、第1および第2のエチレン系成分のピークがCEF-SCBDプロットで観察された温度(wtCEF(T)対温度曲線)で観察する。したがって、3つの成分についての分子量の順序は、よく知られている。反応器のマスバランスは、第3のエチレン系成分の等式26Cのパーセント質量(Wf)を得るか、あるいは、CEFおよびGPCについての既知の分布モデルの強度に応じて、等式26Dを使用してデコンボリューションから計算することができ、総重量分率が合計で1にならなければならない(等式27A~E)。
【0126】
一般に、約20ソルバー反復は、通常、Excel(登録商標)を使用した解において良好な収束に達することがわかった。CEF-MWプロットによるピーク対測定された分子量の順序と、GPC-CCを介して測定された観測されたコモノマー重量%測定値に不一致がある場合、次に、反復が測定値間で一貫した解への収束で進行するように、Excelにおける反復開始点(温度またはlgMW)を変更するか、もしくは幅およびテール係数をわずかに変更することによって、データを調整する必要があるか、または測定の分解能を上げる必要があるか、または追加のピークをCEF-SCBDに追加して、個々の成分の溶出ピーク形状をより良好に近似する場合がある。そのような成分は、個々に調製する場合、いくつかのEMG分布を介して事前にモデル化することができる。図2は、ピーク分離に関してCEF-SCBDの高分解能およびGPC-MWDの低分解能を示しており、LSとIRとの比演算方法と重量分率を使用して測定された順序は、組み合わせた解において優れた反復収束を可能にする。この場合、より高密度の種(第3のエチレン系成分)は、2つのEMGピークの合計によってモデル化することができ、30℃での最低密度のピーク(これは溶解分画に起因する)は、2つの別個に分離されたEMGピークの合計によってモデル化することができ、中央の各成分は、単一のEMGピークからモデル化することができる。
【0127】
加えて、CEF-MWの予測されたMw(CEF)応答は、各成分のGPC-MWDによる重量平均分子量に、CEF-SCBDプロットに沿った各ポイントでの各成分の観測された重量分率を乗算することを使用して作成することができる。予測されたMw(CEF)は、CEF-MWプロットにおいて測定されたMw(CEF)と一致している必要がある。一連の既知のコポリマー標準に基づいて、溶出温度の関数としてコモノマー組み込みをプロットすることにより、GPC-CCプロットは、CEF-MWおよびCEF-SCBDプロットからの個々の成分の測定されたMw(CEF)およびコモノマー組み込みを使用して予測することもできる。予測されたGPC-CCプロットは、測定されたGPC-CCと一致している必要がある。
【0128】
CEF-SCBDデータについてのピーク温度と密度との相関を、約1g/10分メルトインデックス(I)、またはGPCによる約105,000g/molの公称重量平均分子量、およびGPCによる2.3未満の多分散性(またはMWD)のシングルサイト触媒から重合した一連の直鎖エチレン系ポリマー標準樹脂を使用して得る。既知のコモノマー含有量、密度、および0.87~0.96g/ccの密度範囲内の分子量の標準樹脂を少なくとも10個使用する。ピーク温度および密度のデータを五次多項式曲線に当てはめて、較正曲線を得る。
【0129】
ピーク幅およびピークテールとピーク温度との相関を、上記の樹脂のピーク幅およびピークテールと温度とを直線で適合することによって同様に得て、これは、デコンボリューションプロセスにおける初期推定に非常に役立つ。
【0130】
第1のエチレン系成分および第2のエチレン系成分は、CEF-SCBDデコンボリューションプロットから直接本明細書に提示される発明樹脂において、35℃~90℃の溶出温度の最初の2つのピークとして留意した。「粗密度」(密度)を、ピーク温度と密度との較正曲線を使用して、これらの観測されたピーク位置から計算した。密度(g/cc)を、等式28を使用することにより、分子量(g/mol)の寄与を説明する密度(g/cc)に補正した。
密度=密度-0.254g/cc×[lg(Mw(GPC)/(g/mol))-5.02](等式28)
式中、Mw(GPC)は、GPC-MWDからデコンボリューションされた単一成分の重量平均分子量である。
【0131】
第3のエチレン系成分の密度を、樹脂の既知の密度、第1のエチレン系成分の密度、第2のエチレン系成分の密度、および以下の等式29に従って、各成分の重量分率に基づいて計算することができる。
【数19】
【0132】
各エチレン系成分のメルトインデックス(I)は、以下の等式によってこれらの重量平均分子量から推定することができる。
lg(I/(g/10分))=-3.759×lg(Mw(GPC)/(g/mol))+18.9(等式30)
式中、Mw(GPC)は、GPC-MWD曲線からデコンボリューションされた単一成分の重量平均分子量(g/mol)であり、Iは、メルトインデックス(g/10分)である。長鎖分岐の量によって係数が変化し得ることに留意されたい。
【0133】
さらに、生成物組成の決定については、同じ反応器条件による単一の触媒を有する単一の反応器の直接サンプリング、直列二重反応器構成に対する第1の反応器サンプリング、または並列二重反応器構成に対する両方の反応器のサンプリングを使用して、特に、サンプリングポイントを過ぎると反応が効果的に停止することを提供する多峰性エチレン系ポリマーの各個々の成分の密度、メルトインデックス(I)、GPC-MWD、およびCEF-SCBDの決定を補助する。これにより、第1と第2のエチレン系成分のピーク位置を3つの成分の混合物から適切に決定することができない場合に、より良好に確認することが可能になる。
【0134】
オンライン光散乱を備え、SCBDと分子量を表す二変量空間で同様の較正を採用し、密度との関係を較正するPolymerChar CFCユニット(スペイン、バレンシア)などのGPC-TREFにおける分析的クロス分別による直接的な調査と定量を使用して、特に初期推定について、または特にMWDとSCBDの両方の空間における種の高共結晶化または低分解能/識別を生成し得る場合に、各成分の量を測定するか、またはより正確に識別する。(Development of an Automated Cross-Fractionation Apparatus(TREF-GPC) for a Full Characterization of the Bivariate Distribution of Polyolefins.Polyolefin Characterization.Macromolecular Symposia、Volume 257、2007、Pages 13-28.A.Ortin、B.Monrabal、J.Sancho-Tello)適切な分解能を、lgMWと温度空間の両方において得なければならず、検証は、両方の直接組成比演算、例えばIR-5および光散乱分子量測定を通して行うべきである。Characterization of Chemical Composition along the Molar Mass Distribution in Polyolefin Copolymers by GPC Using a Modern Filter-Based IR Detector.Polyolefin Characterization-ICPC 2012 Macromolecular Symposia Volume 330、2013、Pages 63-80、A.Ortin、J.Montesinos、E.Lopez、P.del Hierro、B.Monrabal、J.R.Torres-Lapasio、M.C.Garcia-Alvarez-Coque.を参照すること。成分のデコンボリューションは、一連のシングルサイト樹脂および樹脂ブレンドによって検証された同様の組の等式および類似の較正を使用しなければならない。
【0135】
計装化ダート衝撃
フィルムについての計装化ダート衝撃(IDI)試験は、ASTM D7192に基づいており、この試験を、フィルムの耐衝撃性を特性決定するために使用する。直径12.7mmの半球状プローブ(タップ)を有するストライカーが重力下で落下し、クランプ固定した円形フィルム(直径76mm)に衝撃が加わり破損する。少なくとも13mmの材料をクランプ固定するために、試料サイズは直径89mm超である必要がある。タップには、衝撃事象全体対時間に対する負荷を測定する圧電ロードセルが装備されている。衝突直前の落下ストライカーの速度を、ストライカーがフィルムと接触したときに光学検出器を通過するフラグによって記録する。ストライカーの変位履歴を、ストライカーの衝撃速度、時間、および測定された荷重およびストライカーの総質量から算出される加速度から計算する。
【0136】
CEAST9350衝撃試験機を採用して、IDIを測定することができる。この機材には、-70℃まで試験片を冷却したり、150℃まで試験片を加熱したりすることができる環境チャンバ(試験チャンバ)が取り付けられている。タップの構成材料は、コーティングされた鋼である。使用する衝撃部材の通常の総質量は約29kgであり、使用する通常の衝撃速度は3.33m/sである。フィルム試験片を、-20℃および0℃の冷凍庫内で少なくとも5時間調整する。加えて、試料を、試験チャンバ内(試験温度まで予冷却する)で、移送後および試験前に少なくとも15分間平衡化する。プローブがフィルムサンプルに当たった後に移動した最大変位は50mmである。50mmの後、ストライカーを、クランプに当たらないように緩衝ユニットによって減速する。
【0137】
各フィルム試料の5つの試験片を試験する。50mmの変位の前に5つの試験片全てが破壊された場合、衝撃-靱性(IDI総エネルギー)を、荷重-変位曲線の下の領域によって計算し、平均値を報告する。5つの試験片のうちのいずれか1つが50mmの変位で破壊されない場合、破壊されていないフィルムの総数を記録する。例えば、3つの試験片が破壊されない場合、結果を3Nとして記録する。
【0138】
割線弾性係数
フィルムMD(機械方向)1%割線弾性係数を、ASTM D882によって、20インチ/分のクロスヘッド速度で決定した。試験片の幅は1インチであり、初期グリップの間隔は4インチである。報告された1%割線弾性係数値は、5つの測定値の平均であった。
【実施例
【0139】
以下の実施例は、本開示の特徴を説明するものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0140】
使用される市販のポリマー
以下の実施例で使用するポリマーを、表1に提供する。
【表2】
【0141】
表1および図1を参照すると、本発明のポリマー5と比較ポリマー3の両方が、0.926g/ccの同じ密度を有しており、その結果74.1℃の同じT臨界を有していた。20℃~T臨界値74.1℃(図1の直線で反映)の温度範囲では、CEF重量分率を、これらの温度範囲内の曲線の下の領域として計算する。図1のy軸は、20.0℃~119.9℃の各温度(x軸)での重量分率であり、0.2℃ずつの段階的な温度増加を伴う。比較ポリマー3については、CEF重量分率が11.3%であるのに対して、本発明のポリマー5は、37.7%のCEF重量分率を有している。これは、本発明のポリマー5において、低密度の第1のエチレン系成分の割合が高いことを示している。
【0142】
以下の表2および表3には、多峰性の本発明のポリマー発明1~発明5の第1、第2、および第3のエチレン系成分の密度、メルトインデックス、および重量パーセントを列挙している。
【0143】
表2~表3:多峰性の本発明のポリマー発明1~発明5のエチレン系成分。
【表3】
【表4】
【0144】
表1を参照すると、比較ポリマー1~2は、第1の反応器内に第1の触媒系、第2の反応器内に第2の触媒系を有する二重ループ反応器システムにおいて、溶液重合を介して調製した二峰性エチレン-オクテンコポリマーであった。比較ポリマー1および2は、それぞれWO/2015/200743からの本発明の第1の組成物6および4と相関している。
【0145】
本発明のポリマー発明1~発明5および比較ポリマーの比較3を、以下のプロセスに従って、表4に報告されている反応条件に基づいて調製した。反応器構成は、二重直列反応器操作であった。
【0146】
二重直列反応器構成では、第1の重合反応器からの流出液(溶媒、モノマー、コモノマー、水素、触媒成分、および溶解ポリマーを含有する)は、第1の反応器から流出し、第2の反応器への他の供給物とは別々に第2の反応器に添加される。反応器タイプは、液体充填済みで断熱の連続撹拌槽型反応器(CSTR)、または熱が除去された連続撹拌槽型反応器(CSTR)を模倣した液体充填済みで非断熱の等温循環ループ反応器である。最終的な反応器流出物(二重直列用の第2の反応器流出物)は、好適な試薬(水)を添加しておよびそれとの反応により失活させる区間に流入する。この反応器出口位置では、ポリマーの安定化のために他の添加剤を注入する。
【0147】
触媒の失活および添加剤の添加に続いて、反応器流出物は、ポリマーが非ポリマー流から除去される脱揮発システムに入った。非ポリマー流を、システムから除去した。単離されたポリマー溶融物をペレット化して収集した。
【0148】
全ての原材料(モノマーならびにコモノマー)およびプロセス溶媒(狭い沸点範囲の高純度パラフィン溶媒、ISOPAR E)を、反応環境に導入する前に、分子ふるいで精製した。水素を高純度グレードとして加圧して供給し、それ以上精製はしなかった。反応器モノマー供給流を、機械的圧縮機を介して反応圧力を超える圧力まで加圧した。溶媒供給物を、ポンプを介して反応圧力を超えるまで加圧した。コモノマー供給物を、ポンプを介して反応圧力を超えるまで加圧した。個々の触媒成分を、精製された溶媒で特定の成分濃度まで手動でバッチ希釈し、反応圧力を超えるまで加圧した。すべての反応供給流量を、質量流量計で測定し、計測ポンプで独立して制御した。
【0149】
全ての新鮮な溶媒、モノマー、コモノマー、水素、および触媒成分供給物を独立して制御することによって利用した。供給流が熱交換器を通過することによって、各反応器への新鮮な総供給流(溶媒、モノマー、および水素)を温度制御した。各重合反応器への新鮮な総供給物を、1つ以上の場所において反応器に注入した。触媒成分を、他の供給物とは別々に重合反応器に注入した。CSTR反応器内の撹拌機またはループ反応器内の一連の静的混合要素は、反応物質の連続混合を担った。油浴(CSTR反応器用)および熱交換器(ループ反応器用)は、反応器温度制御の微調整を提供した。
【0150】
各反応器内の単一の一次触媒(例えば、比較3)を利用する反応器については、1つの一次触媒成分をコンピュータ制御して、個々の反応器モノマー変換率を指定した標的に維持した。一次触媒反応器用の共触媒成分を、計算した指定のモル比に基づいて、一次触媒成分に供給した。1つの反応器内の二重一次触媒(例えば、発明1~5)を利用する反応器については、2つの計算変数である(1)一次触媒1および一次触媒2の総質量流量と、(2)両方の一次触媒の総質量流量のうちの一次触媒1の質量分率と、を制御する。両方の一次触媒の総質量流量をコンピュータ制御して、個々の反応器のモノマー転化率を指定した標的に維持した。一次触媒1の質量分率を制御して、その個々の反応器内の各触媒が生成したポリマーの相対質量分率を維持した。二重一次触媒を利用している反応器用の共触媒成分を、両方の一次触媒成分の合計に対する計算した指定のモル比に基づいて供給した。
【0151】
発明1~発明5については、二重直列反応器システムは、2つの液体充填済みで断熱の連続撹拌槽反応器(CSTR)からなる。比較ポリマー3(比較3)は、第1の反応器内に第1の触媒系、および第2の反応器に第2の触媒系、を有する二重ループ反応器システムにおいて、溶液重合を介して調製した二峰性エチレン-オクテンコポリマーであった。発明の第1の組成物7を生成するために、WO/2015/200743に開示されている同様の条件下で調製した。二重直列反応器システムは、2つの液体充填済みで非断熱の等温循環ループ反応器からなっていた。
【表5-1】
【表5-2】
【0152】
本発明のポリマー1~5を作製するための触媒Aおよび触媒Bの式を以下に示す。
【化3】
【0153】
触媒C、チーグラー・ナッタ触媒。不均一チーグラー・ナッタ型の触媒プレミックスを、米国特許第4,612,300号に従って、ある体積のISOPAR E、ISOPAR E中の無水塩化マグネシウムのスラリー、ヘプタン中のEtAlClの溶液、およびヘプタン中のTi(O-iPr)の溶液を逐次的に添加することによって、実質的に調製して、濃度0.20Mのマグネシウムおよび比率40/12.5/3のMg/Al/Tiを含有する組成物を得た。この組成物のアリコートをISOPAR-Eでさらに希釈して、スラリー中の最終濃度500ppmのTiを得た。重合反応器に供給しながら、および重合反応器に入れる前に、触媒プレミックスを、表4で指定したAlとTiとのモル比において、トリエチルアルミニウム(EtAl)の希釈液と接触させて活性触媒を得た。共触媒組成物を以下の表5に列挙する。
【表6】
【0154】
多層インフレーションフィルム
1ミルのインフレーションフィルムを、3層のDr.Collinインフレーションフィルムラインを使用して作製する。このラインは、溝付き供給ゾーンを備えた3つの25:1L/D単軸スクリュー押出機で構成されている。スクリュー径は、内層25mm、コア層30mm、外層25mmである。環状ダイは直径60mmであり、二重リップエアリング冷却システムを使用する。ダイリップの間隙は2mmであり、ブローアップ比(BUR)は2.5である。平坦幅はおよそ23~24cmである。霜線の高さは5.5インチである。総吐出量は9kg/時(各押出機ごとに3kg/時)である。溶融温度は210~220℃であり、ダイ温度を210℃に設定する。同じポリマー組成物の樹脂を、3つ全ての押出機内に同時に供給して、単層フィルムを作製する。表6に、単層フィルムの組成物を列挙している。
【表7】
【0155】
一般に、低温IDIの総エネルギーは、樹脂密度の関数と見なされる。樹脂密度が低いほど、材料がより柔らかく、より強靱であるため、IDIの総エネルギーが高くなる。表6の結果を参照すると、同様の密度、例えば比較フィルム1(密度0.916g/cc)対発明フィルム1~3(密度0.916~0.917g/cc)、比較フィルム2(密度0.919g/cc)対発明フィルム4(密度0.918g/cc)、または比較フィルム3(密度0.926g/cc)対発明フィルム5(密度0.926g/cc)では、発明フィルムは、-20℃、同様の密度でより高いIDI総エネルギーを示した。加えて、全ての本発明のフィルムは、厚さ1ミル、-20℃で、0.30Jを超えるIDI総エネルギーを示した。全ての本発明のフィルムは、以下の等式に従った。
【0156】
-20℃でのIDI総エネルギー(J)>-6.67(J・cc/g)×ポリマー密度(g/cc)+6.41(J)(等式31)
【0157】
多層インフレーションフィルム
2ミルの多層インフレーションフィルムを、5層のLabTechインフレーションフィルムラインを使用して作製した。ラインは、5つの単軸押出機で構成されていた。2つの外部押出機(押出機Aおよび押出機E)の直径は25mmであり、3つのコア押出機(押出機B、押出機C、および押出機D)の直径は20mmであった。5つ全ての押出機のL/D比は30/1であった。環状ダイは直径75mmであり、二重リップエアリング冷却システムを使用した。ダイリップの間隙は2mmで、ブローアップ比(BUR)は2.5であった。霜線の高さは11インチであり、総吐出量は35ポンド/時であった。溶融温度は230℃であり、ダイ温度を225℃に設定した。各層の組成物は、以下の表7に含まれている。
【0158】
AGILITY(商標)1001は、ミシガン州ミッドランドのダウケミカルカンパニーから市販されているLDPEであり、0.920g/ccの密度、0.65g/10分のメルトインデックス(I)、および6.6のMWD(Mw(GPC)/Mn(GPC))を有する。DOWLEX(商標)2045Gは、ミシガン州ミッドランドのダウケミカルカンパニーから市販されているLLDPEであり、0.920g/ccの密度、は1.0g/10分のメルトインデックス(I)を有する。
【表8】
【0159】
表7の結果を参照すると、本発明(多層)のフィルムの発明6は、-20℃と0℃の両方で、比較例(比較4および比較5)よりも良好な靱性を示す。例えば、本発明のフィルム発明6では、-20℃でのIDI総エネルギーは0.72Jである。発明6の-20℃でのこのIDI総エネルギーは、比較多層フィルムの比較4および比較5についての-20℃でのIDI総エネルギーをはるかに超えている。さらに、この強化された靱性は、0℃で本発明のフィルムと比較フィルムとのIDI総エネルギーを比較するときにも維持される。例えば、本発明のフィルムの発明6の3つの試料(5つのうち)は、0℃で破壊されなかった。これは、0℃以下の温度にさらされる冷凍食品用途における本発明のフィルムの発明6の有効性を示している。対照的に、これらのIDI総エネルギーを0℃で決定し、それぞれ0.33Jおよび1.20Jを記録したとき、比較フィルムの比較4と比較5は両方とも5回全て破壊された(すなわち、5つの試料全てが各々について破壊された)。
【0160】
添付の特許請求の範囲に定義される本開示の範囲から逸脱することなく、修正および変更が可能であることは明らかであろう。より具体的には、本開示のいくつかの態様は、本明細書において好ましいまたは特に有利であると確認されているが、本開示は、必ずしもこれらの態様に限定されないことが企図される。
なお、本発明は以下の態様を含みうる。
[1]ポリマー組成物であって、
ASTM D792に従って測定したとき、0.900~0.930g/ccの密度と、荷重2.16kgおよび温度190℃でASTM D1238に従って測定したとき、0.1~10.0g/10分のメルトインデックス(I )と、を有する少なくとも1つの多峰性エチレン系ポリマーを含み、前記多峰性エチレン系ポリマーが、第1のエチレン系成分と、第2のエチレン系成分と、第3のエチレン系成分と、を含み、前記第1のエチレン系成分、前記第2のエチレン系成分、および前記第3のエチレン系成分の各々が、エチレンモノマーと少なくとも1つのC ~C 12 αオレフィンコモノマーとの重合反応生成物であり、
前記第1のエチレン系成分が、0.855~0.900g/ccの密度と、128,000g/mol~363,000g/molの重量平均分子量(M w(GPC) )と、を有し、前記多峰性エチレン系ポリマーが、少なくとも20重量%の前記第1のエチレン系成分を含み、
前記第2のエチレン系成分が、前記第1のエチレン系成分の密度超~0.930g/cc未満の密度と、88,500g/mol~363,000g/molの重量平均分子量(M w(GPC) )と、を有し、
前記第3のエチレン系成分が、前記第2のエチレン系成分の密度を超える密度を有する、ポリマー組成物。
[2]前記多峰性エチレン系ポリマーが、20~50重量%の前記第1のエチレン系成分、10~40重量%の前記第2のエチレン系成分、および25~60重量%の前記第3のエチレン系成分を含む、上記[1]に記載のポリマー組成物。
[3]前記多峰性エチレン系ポリマーのメルトインデックス(I )が、0.5~5.0g/10分であり、前記多峰性エチレン系ポリマーの密度が、0.905~0.930g/ccである、上記[1]または[2]に記載のポリマー組成物。
[4]前記多峰性エチレン系ポリマーが、8~15のI 10 /I 値を有し、I 10 が、荷重10kgおよび温度190℃でASTM D1238に従って測定される、上記[1]~[3]のいずれかに記載のポリマー組成物。
[5]前記第1のエチレン系成分の密度が、0.870~0.900g/ccであり、前記第1のエチレン系成分のメルトインデックス(I )が、0.02~0.15g/10分である、上記[1]~[4]のいずれかに記載のポリマー組成物。
[6]前記第2のエチレン系成分の密度が、0.900~0.920g/ccであり、前記第2のエチレン系成分のメルトインデックス(I )が、0.2~1.0g/10分である、上記[1]~[5]のいずれかに記載のポリマー組成物。
[7]前記第3のエチレン系成分の密度が、0.940~0.960g/ccであり、前記第3のエチレン系成分のメルトインデックス(I )が、25~2000g/10分である、上記[1]~[6]のいずれかに記載のポリマー組成物。
[8]前記多峰性エチレン系ポリマーが、22%を超える結晶化溶出分別(CEF)重量分率と、20℃~T 臨界 (T )の温度範囲で130,000g/molを超える重量平均分子量(M w(CEF) )と、を有する、上記[1]~[7]のいずれかに記載のポリマー組成物。
[9]前記ポリマー組成物が、0.916~0.935g/ccの密度、ならびに荷重2.16kgおよび温度190℃でASTM D1238に従って測定したとき、0.1~10.0g/10分のメルトインデックス(I )を有する少なくとも1つの低密度ポリエチレン(LDPE)をさらに含む、上記[1]~[8]のいずれかに記載のポリマー組成物。
[10]前記多峰性エチレン系ポリマーが、少なくとも4.3、または好ましくは4.3~12の分子量分布(M w(GPC) /M n(GPC) )を有する、上記[1]~[9]のいずれかに記載のポリマー組成物。
[11]前記多峰性エチレン系ポリマーが、35~50重量%の前記第3のエチレン系成分を含む、上記[1]~[10]のいずれかに記載のポリマー組成物。
[12]上記[1]~[11]のいずれかに記載のポリマー組成物を含むフィルムであって、前記フィルムが、温度-20℃および厚さ1ミルで、0.3Jを超える計装化ダート衝撃(IDI)を有するインフレーションフィルムである、フィルム。
[13]コア層と、前記コア層の反対側に配設された少なくとも2つのスキン層と、を含む多層フィルムであって、
前記コア層および前記スキン層のうちの1つ以上が、上記[1]~[11]のいずれかに記載のポリマー組成物を含み、
前記スキン層のうちの1つ以上が、0.916~0.935g/ccの密度、ならびに荷重2.16kgおよび温度190℃でASTM D1238に従って測定したとき、0.1~10.0g/10分のメルトインデックス(I )を有する少なくとも1つの低密度ポリエチレン(LDPE)を含み、
前記多層フィルムが、インフレーションフィルムまたはキャストフィルムである、多層フィルム。
[14]前記コア層と前記スキン層との間に配設されたサブスキン層をさらに含み、前記サブスキン層が、上記[1]~[11]のいずれかに記載のポリマー組成物およびLDPEを含む、上記[12]に記載の多層フィルム。
[15]前記多層フィルムが、厚さ2ミルで、少なくとも0.60Jの-20℃での計装化ダート衝撃(IDI)総エネルギーを有するインフレーションフィルムである、上記[14]に記載の物品。
図1
図2