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7328966プリント回路基板を製造するためのソルダーマスクインキジェットインキ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】プリント回路基板を製造するためのソルダーマスクインキジェットインキ
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/38 20140101AFI20230809BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20230809BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
C09D11/38
B41J2/01 501
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41M5/00 116
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020533661
(86)(22)【出願日】2018-12-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2018084157
(87)【国際公開番号】W WO2019121098
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】17208244.8
(32)【優先日】2017-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593194476
【氏名又は名称】アグフア-ゲヴエルト,ナームローゼ・フエンノートシヤツプ
(73)【特許権者】
【識別番号】319004951
【氏名又は名称】エレクトラ・ポリマー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】トルフ,リタ
(72)【発明者】
【氏名】ロキュフィエ,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ランデルズ,クライブ
(72)【発明者】
【氏名】ウォール,クリストファー
【審査官】川嶋 宏毅
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-006909(JP,A)
【文献】特開2012-067151(JP,A)
【文献】特開2011-026403(JP,A)
【文献】特開2010-059299(JP,A)
【文献】特開2010-231220(JP,A)
【文献】特開平07-263845(JP,A)
【文献】特開2010-006864(JP,A)
【文献】国際公開第2013/015125(WO,A1)
【文献】特表2005-508023(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/30
B41J 2/01
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光開始剤、重合性化合物および難燃剤を含んでなる、放射線硬化型ソルダーマスクインキジェットインキであって、難燃剤が、式II
【化2】
式中、
R6からR9が置換もしくは非置換アリール基を独立して表し、そしてLが芳香族炭素原子を介してホスフェート基に結合した二価の連結基を表す
に従う化学構造を有し、
45℃および1000s-1の剪断速度での前記インジェットインキの粘度が15mPa.s未満であり、
式IIに従う難燃剤が、ビスフェノールA,ビスフェノールAP,ビスフェノールB,ビスフェノールBP,ビスフェノールC,ビスフェノールE,ビスフェノールF,ビスフェノールG,ビスフェノールM,ビスフェノールS,ビスフェノールP,ビスフェノールPH,ビスフェノールTMC,ビスフェノールZおよびレゾルシノールからなる群から選択される二官能性フェノール化合物のジホスフェートエステルである
ことを特徴する、放射線硬化型ソルダーマスクインキジェットインキ。
【請求項2】
難燃剤が、ビスフェノールA,ビスフェノールAP,ビスフェノールB,ビスフェノールBP,ビスフェノールC,ビスフェノールE,ビスフェノールF,ビスフェノールG,ビスフェノールM,ビスフェノールS,ビスフェノールP,ビスフェノールPH,ビスフェノールTMC,ビスフェノールZおよびレゾルシノールからなる群から選択される二官能性フェノール化合物のジホスフェートエステルである請求項1に記載の放射線硬化型ソルダーマスクインキジェットインキ。
【請求項3】
インキジェットインキが、フリーラジカル重合性インキジェットインキまたはカチオン性重合性インキジェットインキである、請求項1または2に記載の放射線硬化型ソルダーマスクインキジェットインキ。
【請求項4】
カチオン性重合性インキジェットインキが、少なくとも1つのエポキシ、少なくとも1つのビニル エーテル、または少なくとも1つのオキセタン基を含むカチオン性重合性化合物を含んでなる請求項3に記載の放射線硬化型ソルダーマスクインキジェットインキ。
【請求項5】
カチオン性重合性化合物が、7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-イルメチル 7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボキシレート、ビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチルエーテル、ポリ[(2-オキシラニル)-1,2-シクロヘキサンジオール]-2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール エーテル、2-(2)ビニルオキシエトキシ-エチル アクリレート、1,4-シクロヘキサン-ジメタノール ジビニル エーテル、トリメチロール-プロパン トリビニル エーテル、トリエチレングリコール ジビニル エーテル、3-エチル-3-[(フェニルメトキシ)メチル]-オキセタンおよびビス[1-エチル(3-オキセタニル)]メチル エーテルからなる群から選択される請求項4に記載の放射線硬化型ソルダーマスクインキジェットインキ。
【請求項6】
フリーラジカル重合性インキジェットインキが、ネオペンチル グリコール ヒドロキシピバレート ジアクリレート、イソボルニル アクリレート、ジプロピレン グリコール ジアクリレート、トリメチロール プロパン トリアクリレート、および2-(ビニルエトキシ)エチルアクリレートからなる群から選択されるラジカル重合性化合物を含んでなる請求項3に記載の放射線硬化型ソルダーマスクインキジェットインキ。
【請求項7】
さらにフェノール樹脂またはヒドロキシスチレン系樹脂を含んでなる請求項1から6のいずれかに記載の放射線硬化型ソルダーマスクンキジェットインキ。
【請求項8】
電子装置を製造する方法であって:
-導電パターンを含む誘電性基板に、請求項1から7のいずれかに定義した放射線硬化型ソルダーマスクインキジェットインキを噴射し;そして
-噴射したソルダーマスクインキジェットを硬化する、
工程を含む前記方法。
【請求項9】
硬化がUV照射を使用して行われる請求項8に記載の方法。
【請求項10】
加熱工程も含んでなる請求項8または9に記載の方法。
【請求項11】
加熱工程が80から250℃の間の温度で行われる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
電子装置がプリント回路基板である請求項8から11のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の技術分野
本発明は、プリント回路板を製造するためのソルダーマスク(solder mask)インキジェットインキおよびインキジェット法に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
インキジェット印刷法は、プリント回路板(PCB)の製法を更に改善するために提唱されてきた。
【0003】
インキジェット印刷法およびインキジェットインキは、例えば特許文献1(Agfa)および特許文献2(Markem-Imaje)では、レジェンド印刷(legend printing)について、そして例えば特許文献3(Agfa)および特許文献4(Agfa)では銅表面上へのエッチレジスト(etch resist)の適用について開示された。
【0004】
このようなインキジェット印刷法は、複雑さを減少させ、廃棄物を最少にすることにより、PCBの製造のコスト効率をより良くする。
【0005】
またソルダーマスクの適用に関して、インキジェット印刷法およびインキジェットインキは、例えば特許文献5(Avecia)および特許文献6(Taiyo In Manufacturing)に開示された。
【0006】
液晶ディスプレイ素子およびプリント回路基板を製造するために使用される難燃剤コーティングは、特許文献7(JNC Corporation)に開示されている。PCB用のコーティングに固体難燃剤添加物の使用は、特許文献8(Fuji Xerox)に開示されている。
【0007】
ソルダーマスクは、PCBの成形加工、組み立ておよび最終使用の期間中に複数の機能を達成する恒久的保護膜コーティングである。
【0008】
ソルダーマスクの主目的の一つは、組み立て工程中にはんだとの相互反応から回路を防護することである。
【0009】
またソルダーマスクは、混入物の集積から、そしてPCBの有効寿命期間中の劣化から、薄板(laminates)、穴およびトレースを防御する。
【0010】
またソルダーマスクは、PCBの構成部品とトレースとの間の既知の誘電性絶縁体としても働く。
【0011】
ソルダーマスクは、プリント回路基板の全体的可燃性を上げるべきではない。
【0012】
UV硬化性インキは、ソルダーマスクインキの設計のために好ましい。
【0013】
フリーラジカル重合性インキは迅速に硬化し、しかも高い架橋度を可能にして、優れた耐薬品性および機械的特性をもたらす。
【0014】
カチオン性硬化型インキは、硬化で収縮性が問題になることはなく、そして熱的後硬化(thermal post cure)と組み合わせた時に、大変良好な熱的、化学的および物理的耐性を提供する。
【0015】
PCBの製造におけるはんだ付け工程中に誘発される高い熱応力に耐えることが可能な、良好な難燃性を有するソルダーマスクインキジェットインキを設計することが未だ必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【文献】欧州特許出願公開第2725075号明細書
【文献】米国特許第7845785号明細書
【文献】欧州特許出願公開第2809735号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3000853号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1543704号明細書
【文献】欧州特許出願公開第1624001号明細書
【文献】米国特許第8273805号明細書
【文献】米国特許第7553891号明細書
【発明の概要】
【0017】
発明の要約
本発明の目的は、PCBを製造するためのソルダーマスクインキジェットインキを提供することであり、ここで特に優れた物理的特性および難燃性を維持しながら、はんだ付け工程中の高い熱応力に耐える高品質なソルダーマスクが製造され得る。
【0018】
本発明の目的は、請求項1に記載のソルダーマスクインキジェットインキにより実現される。
【0019】
本発明のさらなる目的は、今後の記載から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0020】
発明の詳細な説明
定義
例えば一官能性重合性化合物における用語「一官能性」は、重合性化合物が1個の重合性基を含むことを意味する。
【0021】
例えば二官能性重合性化合物における用語「二官能性」は、重合性化合物が2個の重合性基を含むことを意味する。
【0022】
例えば多官能性重合性化合物における用語「多官能性」は、重合性化合物が2個より多くの重合性基を含むことを意味する。
【0023】
「アルキル」という用語は、アルキル基中の炭素原子のそれぞれの数に可能なすべての変形、すなわちメチル、エチル、3個の炭素原子に関して:n-プロピルおよびイソプロピル;4個の炭素原子に関して:n-ブチル、イソブチルおよび第3級-ブチル;5個の炭素原子に関して:n-ペンチル、1,1-ジメチル-プロピル、2,2-ジメチルプロピルおよび2-メチル-ブチル等を意味する。
【0024】
特段の定めがない場合、置換または非置換アルキル基は、好ましくはC1~C6-アルキ
ル基である。
【0025】
特段の定めがない場合、置換または非置換アルケニル基は、好ましくはC2~C6-アルケニル基である。
【0026】
特段の定めがない場合、置換または非置換アルキニル基は、好ましくはC2~C6-アルキニル基である。
【0027】
特段の定めがない場合、置換または非置換アラルキル基は、好ましくは1、2、3個またはそれより多いC1~C6-アルキル基を含むフェニルまたはナフチル基である。
【0028】
特段の定めがない場合、置換または非置換アルカリール基は、好ましくフェニル基またはナフチル基を含むC7~C20-アルキル基である。
【0029】
特段の定めがない場合、置換または非置換アリール基は、好ましくはフェニル基またはナフチル基である。
【0030】
特段の定めがない場合、置換または非置換ヘテロアリール基は、好ましくは1,2または3個の酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子またはそれらの組み合わせにより置換された5-または6-員環である。
【0031】
例えば置換されたアルキル基における「置換された」という用語は、アルキル基が通常そのような基中に存在する原子、すなわち炭素および水素以外の他の原子により置換されることができることを意味する。例えば置換されたアルキル基はハロゲン原子またはチオール基を含むことができる。非置換アルキル基は炭素および水素原子のみを含む。
【0032】
特段の定めがない場合、置換されたアルキル基、置換されたアルケニル基、置換されたアルキニル基、置換されたアラルキル基、置換されたアルカリール基、置換されたアリール基、および置換されたヘテロアリール基は、好ましくはメチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチルおよび第3級-ブチル、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、スルホキシド、スルホン、スルホネートエステル、スルホンアミド、-Cl、-Br、-I、-OH、-SH、-CNおよび-NO2からなる群から選択される1または複数の構成要素により置換される。
【0033】
放射線硬化型ソルダーマスクインキジェットインキ
放射線硬化型ソルダーマスクインキジェットインキは、以下に記載するように光開始剤、重合性化合物および難燃剤を含んでなる。
【0034】
放射線硬化型ソルダーマスクインキジェットインキは、さらに他の重合性化合物、接着促進化合物、着色剤、高分子分散剤、重合阻害剤、または界面活性剤を含んでなることができる。
【0035】
ソルダーマスクインキジェットインキは、電子線(e-beam)で硬化できるが、好ましくはUV照射、より好ましくはUV LEDからのUV光で硬化される。ソルダーマスクインキジェットインキは、このように好ましくはUV硬化型インキジェットインキである。
【0036】
信頼性のある工業用のインキジェット印刷には、放射線硬化型インキジェットインキの粘度は、45℃で20mPa.s以下であることが好ましく、より好ましくは45℃で1から18mPa.sの間であり、そして最も好ましくは45℃で4から14mPa.sの
間である。
【0037】
良好な画質および接着には、放射線硬化型インキジェットインキの表面張力は、25℃で18から70mN/mの範囲が好ましく、より好ましくは25℃で20から40mN/mの範囲である。
【0038】
難燃剤
放射線硬化型ソルダーマスクインキジェットインキは、式Iに従う難燃剤を含んでなり、
【化1】
式中、
1は、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、および置換もしくは非置換アリール基からなる群から独立して選択され;
2は、OR4、水素、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、および置換もしくは非置換アリール基からなる群から選択され;
3は、OR5、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、および置換もしくは非置換アリール基からなる群から選択され;
4およびR5は、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、および置換もしくは非置換アリール基からなる群から選択され;
ただしR1からR5の少なくとも1つは置換もしくは非置換アリールを表す。
【0039】
好適な態様では、R1からR5の少なくとも2つが置換もしくは非置換アリール基により表される。
【0040】
最も好適な態様では、R1からR5が置換もしくは非置換アリール基を表す。
【0041】
本発明による難燃剤は、ホスフェートおよびホスホネートからなる群から選択される2以上の官能基を含んでなることができる。
【0042】
好適な態様では難燃剤の分子量は、好ましくは3000以下、より好ましくは1500以下、そして最も好ましくは1000以下である。
【0043】
特に好適な態様では、本発明による難燃剤はハロゲンを含まない。
【0044】
最も好適な態様では、本発明による難燃剤はヘテロ原子によりさらに置換されない。
【0045】
本発明による別の特に好適な難燃剤は、式IIに従う化学構造を有し、
【化2】
式中、
R6からR9が置換もしくは非置換アリール基を独立して表し、そしてLが芳香族炭素原子を介してホスフェート基に結合した二価の連結基を表す。
【0046】
好ましくは式IIに従う難燃剤が、ビスフェノールA,ビスフェノールAP,ビスフェノールB,ビスフェノールBP,ビスフェノールC,ビスフェノールE,ビスフェノールF,ビスフェノールG,ビスフェノールM,ビスフェノールS,ビスフェノールP,ビスフェノールPH,ビスフェノールTMC,ビスフェノールZおよびレゾルシノールからなる群から選択される二官能性フェノール化合物のジホスフェートエステルである。
【0047】
R6からR9が好ましくはフェニル基を表す。
【0048】
本発明による難燃剤を表1に示すが、これらに限定されない。
【表1-1】
【表1-2】
【0049】
放射線硬化型ソルダーマスクインキジェットインキ中の難燃剤の量は、インキジェットインキの総重量に対して好ましくは0.25重量%から20重量%の間、より好ましくは0.5重量%から15重量%の間、最も好ましくは1重量%から10重量%の間である。
【0050】
前記の難燃剤に加えて、放射線硬化型インキジェットは他の難燃剤を含んでなることができる。
【0051】
重合性化合物
ソルダーマスクインキジェットインキは、カチオン性またはフリーラジカル重合性化合物を含むことができる。
【0052】
フリーラジカル重合性化合物
フリーラジカル重合性化合物はモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーであ
ることができる。モノマーはまた、希釈剤とも呼ばれる。
【0053】
これらのモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーは、異なる程度の官能性を有することができる。一官能性、二官能性、三官能性およびそれより高い官能性モノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーの組み合わせを含む混合物を使用することができる。放射線硬化型インキジェットインキの粘度は、モノマーとオリゴマーとの間の比率を変動させることにより調整することができる。
【0054】
好適な態様では、モノマー、オリゴマーまたはポリマーは、重合性基として少なくとも1個のアクリレート基を含む。
【0055】
好適なモノマーおよびオリゴマーは、欧州特許出願公開第1911814(A)号明細書中の段落[0106]から[0115]に挙げられるものである。
【0056】
好適な態様では、放射線硬化型インキジェットインキは、ビニルエーテル基およびアクリレートまたはメタクリレート基を含むモノマーを含んでなる。そのようなモノマーは、欧州特許出願公開第2848659(A)号明細書の段落[0099]から[0104]に開示されている。ビニルエーテル基およびアクリレート基を含有する特に好適なモノマーは、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル アクリレートである。
【0057】
特に好適な態様では、ソルダーマスクインキジェットインキはネオペンチル グリコール ヒドロキシピバレート ジアクリレート、イソボルニル アクリレート、ジプロピレン グリコール ジアクリレート、トリメチロール プロパン トリアクリレート、および2-(ビニルエトキシ)エチル アクリレートからなる群から選択されるフリーラジカル重合性化合物を含んでなる。
【0058】
カチオン性重合性化合物
カチオン性重合性化合物は、モノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーであることができる。
【0059】
これらのモノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーは、異なる程度の官能性を有することができる。一官能性、二官能性、三官能性およびより高い官能性モノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーを使用することができる。放射線硬化型インキジェットインキの粘度は、モノマーとオリゴマーとの間の比率を変動させることにより調整することができる。
【0060】
好適な態様では、モノマー、オリゴマーまたはポリマーは少なくとも1つのエポキシ、または1つのビニルエーテル、または1つのオキセタン基を重合性基として含む。
【0061】
少なくとも1つのエポキシド基を含有するモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーの例には、脂環式エポキシ化合物、例えばビス-(3,4-エポキシシクロヘキシル)-アジペート,3、4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサン カルボキシレート,ポリ[(2-オキシラニル)-1,2-シクロヘキサンジオール]-2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール エーテル,7-オキサ―ビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボン酸、および7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-イルメチル エステル;ジオール誘導体を含むエーテル誘導体、例えば1,4-ブタンジオール ジグリシジルエーテルおよびネオペンチル グリコール ジグリシジルエーテル;およびグリシジル エーテル、例えばn-ブチル グリシジル エーテル,蒸留ブチル グリシジル エーテル,2-エチルヘキシル グリシジル エーテル,C8-C10脂肪族グリシジル エーテル,C12-C14脂肪族 グリシジル エーテル,o-クレシル グリシジル エーテル,p-三級ブチル フェニル グリシジル エーテル,ノニル フェニル グリシジル エーテル,フェニル グリシジル エーテル,シクロヘキサンジメタノール ジグリシジル エーテル,ポリプロピレン グリコール ジグリシジル エーテル,ポリグリコール ジグリシジル エーテル,ジブロモ ネオペンチル グリコール ジグリシジル エーテル、トリメチルプロパン トリグリシジル エーテル,ヒマシ油トリグリシジル エーテル,プロポキシル化グリセリン トリグリシジル エーテル,ソルビトール ポリグリシジル エーテル,ネオデカン酸のグリシジル エステル;およびグリシジル アミン、例えばエポキシド化メタ―キシレンジアミンを含む。
【0062】
少なくとも1つのビニル エーテル基を含むモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーの例には、ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]1,6-ヘキサンジイルビスカルバメート,ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]イソフタレート,ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル](メチレンジ-4,1-フェニレン)-ビスカルバメート,ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]スクシネート,ビス[4-(ビニルオキシ)ブチル]テレフタレート,2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル アクリレート,ビス[4-(ビニルオキシメチル)シクロヘキシルメチル]グルタレート,1,4-ブタンジオール ジビニル エーテル,1,4-ブタンジオール ビニル エーテル,ブチル ビニル エーテル,tert-ブチル ビニル エーテル,2-クロロエチル ビニル エーテル,1,4-シクロヘキサンジメタノール ジビニル エーテル,1,4-シクロヘキサンジメタノール ビニル エーテル,シクロヘキシル ビニル エーテル,ジ(エチレン グリコール)ジビニル エーテル,ジ(エチレン グリコール)ビニル エーテル,ジエチル ビニル オルトホルメート,ドデシル ビニル エーテル,エチレン グリコール ビニル エーテル,2-エチルヘキシル ビニル エーテル,エチル-1-プロペニル エーテル,エチル ビニル エーテル,イソブチル ビニル エーテル,フェニル ビニル エーテル,プロピル ビニル エーテル,トリス[4-(ビニルオキシ)ブチル]トリメリテートを含む。
【0063】
少なくとも1つのオキセタン基を含むモノマー、オリゴマーまたはプレポリマーの例には、3,3’-オキシビス(メチレン)ビス(3-エチルオキセタン),1,4-ビス(((3-エチルオキセタン-3-イル)メトキシ)メチル)ベンゼン,および3-エチル-3-[(2-エチルヘキシルオキシ)25メチル]オキセタンを含む。好適な態様では、放射線硬化型インキジェットインキは、ビニル エーテル基およびアクリレートまたはメタクリレート基を含むモノマーを含んでなる。そのようなモノマーは、欧州特許出願公開第2848659(A)号明細書の段落[0099]から[0104])に開示されている。ビニル
エーテル基およびアクリレート基を含む特に好適なモノマーは、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル アクリレートである。
【0064】
別の好適な態様では、ソルダーマスクインキジェットインキは、ビス-(3,4-エポキシシクロヘキシル)アジペート,3、4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサン カルボキシレートおよび7-オキサ―ビシクロ[4.1.0]ヘプタン-3-カルボン酸7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-イルメチル エステルからなる群から選択されるカチオン性重合性化合物を含んでなる。
【0065】
接着促進剤
ソルダーマスクインキジェットインキは、接着促進剤、例えば国際公開第2004/028225号パンフレットに開示されたものを含んでなることが好ましい。
【0066】
好適な接着促進剤は、2-カルボキシエチルアクリレートである。
【0067】
フェノール化合物
ソルダーマスクインキジェットインキは、好ましくは少なくとも2つのフェノール基を含んでなるフェノール化合物を含んでなる。フェノール化合物は、2,3,4個またはそれより多くのフェノール基を含んでなることができる。
【0068】
好適なフェノール化合物は、2個のフェノール基を含んでなる。
【0069】
特に好適なフェノール化合物は、式II:
【化3】
の構造を有し、式中、
3およびR4は、水素原子、置換もしくは非置換アルキル基、ヒドロキシル基、および置換もしくは非置換アルコキシ基からなる群から独立して選択され、
Yは、CR56,SO2,SO,S,OおよびCOからなる群から選択され、
5およびR6は、水素原子、置換もしくは非置換アルキル基、置換もしくは非置換アルケニル基、置換もしくは非置換アルキニル基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基、置換もしくは非置換(ヘテロ)アリール基からなる群から独立して選択され、
5およびR6は、5から8員環を形成するために必要な原子を表すことができる。
【0070】
Yは、好ましくはCR56またはSO2であり、R5およびR6は好ましくは水素原子またはアルキル基を表す。
【0071】
別の好適な態様では、フェノール化合物は少なくとも2個のフェノール基を含んでなるポリマーである。好ましくは少なくとも2個のフェノール基を含んでなるポリマーは、分岐またはハイパーブランチ(hyperbranched)ポリマーである。
【0072】
少なくとも2個のフェノール基を含んでなる好適なポリマーは、フェノール樹脂、すなわちノボラックまたはレゾールである。
【0073】
フェノール樹脂は、フェノール化合物とアルデヒドまたはケトンとの反応生成物である。使用できるフェノールは:フェノール、o-クレゾール、p-クレゾール、m-クレゾール、2,4-キシレノール、3,5-キシレノール、または2,5-キシレノールである。使用できるアルデヒドは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドまたはアセトンである。
【0074】
ノボラックの調製に最も広く使用されている方法は、フェノール/クレゾールおよびホルムアルデヒドの酸―触媒型1段階合成であり、これは樹脂の統計的構造を導く(以下の反応スキームを参照されたい)。
【化4】
【0075】
一般に、塩酸、硫酸、p-トルエン硫酸、またはシュウ酸が触媒として使用される。ホルムアルデヒドおよびフェノール/クレゾールの種々の比率は通常、レギュラーノボラック樹脂で採用される。より高いフェノール含量で分岐度が上がり、一方、反応はオルトおよびパラ―位で生じる可能性がある。p-クレゾール含量がより高い樹脂では、メチル基の存在によりパラ―位がブロックされるので、より多くの直鎖ポリマーが得られる。
【0076】
フェノールおよびホルムアルデヒドのノボラックコポリマーは、反応がオルト―およびパラ―位の両方で起こるので高度な分岐を有することになる。粘度を下げるために、高度な分岐および/低分子量が好適である。クレゾールでのノボラックには、m-クレゾールの使用がo-クレゾールおよびp-クレゾールよりも容易に高分子量を与えることができる。
【0077】
フェノール樹脂は塩基性触媒型反応でも調製でき、この反応はレゾールの形成を導く。レゾールは、メチロール基も有するフェノールポリマーである。
【0078】
ソルダーマスクインキジェットインキ中への包含には、ノボラック樹脂のみが高温(>150C)で反応性であることから、十分なインク安定性を得るためにはノボラック樹脂が好適となる。レゾールはすでに低温で反応する可能性があり、そしてメチロール基の存在により、インキジェットインキの良くない耐薬品性を生じる恐れがある。
【0079】
少なくとも2個のフェノール基を有する、より良く定められた分岐ポリマーは、米国特許第5554719号および米国特許出願公開第2005250042号明細書に開示されるような4-ヒドロキシフェニルメチルカルビノールを使用して調製することができる。4-ヒドロキシフェニルメチルカルビノールから調製される、少なくとも2個のフェノール基を有する特に好適な分岐ポリマーは、Du Pont Electronic Polymersにより開発されており、そしてHydrite Chemical Companyから商標PSH-BまたはPB-5(CASRN 166164-76-7)で供給されている。
【0080】
本発明によるフェノール化合物の例を表2に与えるが、これらに限定されない。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【0081】
少なくとも2個のフェノール基を有するポリマーの典型例を表3に与えるが、これらに限定されない。
【表3】
【0082】
フェノール化合物の量は、インキジェットインキの総重量に対して好ましくは0.5重
量%から20重量%の間、より好ましくは1重量%から15重量%の間、最も好ましくは2.5重量%から10重量%の間である。
【0083】
着色剤
ソルダーマスクインキジェットインキは実質的に無色のインキジェットインキであるが、好ましくは放射線硬化型インキジェットは少なくとも1種の着色剤を含む。
【0084】
ソルダーマスクインキジェットインキの着色剤は顔料または染料でよいが、好ましく顔料である。
【0085】
着色顔料はHERBST,Willy et al.著,Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications,第3版.Wiley-VCH,2004.ISBN 3527305769により開示されているものから選ぶことができる。
【0086】
適切な顔料は、国際公開第2008/074548号パンフレットの段落[0128]から[0138]に開示されている。
【0087】
インキジェットインキ中の顔料粒子は、インキジェット印刷装置を通過する、特に吐出ノズルでのインキの自由な流れを可能にするのに十分に小さくなければならない。また最大色濃度のため、ならびに沈降を遅らせるためにも小さい粒子を用いることが望ましい。最も好ましくは平均顔料粒度(average pigment particle size)は150nm以下である。顔料粒子の平均粒度は、好ましくは動的光散乱法の原理に基づきBrookhaven Instruments Particle Sizer BI90plusで測定される。
【0088】
PCBでは、ソルダーマスクは一般に青色または緑色の着色を有する。青色顔料は好ましくはフタロシアニン系の1種である。青色顔料の例は、C.I.Pigment Blue 1,15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、24および60である。
【0089】
緑色顔料は一般に青色と黄色またはオレンジ色顔料との混合物であるか、あるいはハロゲン化フタロシアニン、例えば銅またはニッケル臭素化フタロシアニンのような緑色顔料または染料自体でよい。
【0090】
好適な態様では、着色剤は放射線硬化型インキジェットインキの総重量に基づき0.2重量%~6.0重量%、より好ましくは0.5重量%~2.5重量%の量で存在する。
【0091】
高分子分散剤
放射線硬化型インキジェット中の着色剤が顔料ならば、放射線硬化型インキジェットインキは顔料を分散するために好ましくは分散剤を含み、より好ましくは高分子分散剤を含む。
【0092】
適切な高分子分散剤は2つのモノマーのコポリマーであるが、3,4,5またはさらにそれ以上のモノマーを含むことができる。高分子分散剤の特性は、モノマーの性質およびそれらのポリマー中での分布の双方に依存する。コポリマー分散剤は好ましくは以下のポリマー組成を有する:
―統計的に重合されたモノマー(例えばモノマーAおよびBがABBAABABに重合);
―交互重合化モノマー(例えばモノマーAおよびBがABABABABに重合);
―グラジエント(テーパー型)重合化モノマー(例えばモノマーAおよびBがAAABAABBABBBに重合);
―ブロックコポリマー(例えばモノマーAおよびBがAAAAABBBBBBに重合)、ここで各ブロックのブロック長(2,3,4,5またはそれ以上)が高分子分散剤の分散能に重要となる;
―グラフトコポリマー(グラフトコポリマーは、重合骨格と骨格に付いた重合側鎖からなる);および
―これらポリマーの混合形、例えばブロックグラジエントコポリマー。
【0093】
適切な高分子分散剤は、欧州特許出願公開第1911814(A)号明細書の「分散剤」、より詳細には[0064]から[0070]および[0074]から[0077]に列挙されている。
【0094】
市販の高分子分散剤の例は以下の通りである:
・BYK CHEMIE GMBHから入手可能なDISPERBYK(商標)分散剤;・NOVEONから入手可能なSOLSPERSE(商標)分散剤;
・EVONIKからのTEGO(商標)DISPERS(商標)分散剤;
・MUENZING CHEMIEからのEDAPLAN(商標)分散剤;
・LYONDELLからのETHACRYL(商標)分散剤;
・ISPからのGANEX(商標)分散剤;
・CIBA SPECIALTY CHEMICALS INCからのDISPEX(商標)およびEFKA(商標)分散剤;
・DEUCHEMからのDISPONER(商標)分散剤;および
・JOHNSON POLYMERからのJONCRYL(商標)分散剤。
【0095】
光開始剤および光開始系
放射線硬化型インキジェットインキは、好ましくは少なくとも1つの光開始剤を含むが、複数の光開始剤および/または共開始剤(co-initiator)を含む光開始系を含んでもよい。
【0096】
ソルダーマスクインキジェットインキに使用する重合性化合物に依存して、カチオン性またはフリーラジカル開始剤または開始系、またはそれらの組み合わせを使用することができる。
【0097】
カチオン性開始剤は、適切なモノマー、オリゴマーおよびプレポリマー、例えば少なくとも1つのエポキシ、オキセタンまたはビニル エーテル基を含むようなものの重合を、化学線照射に暴露された時にブレンステッド酸の生成により開始する化学化合物である。
【0098】
フリーラジカル光開始剤は、化学線照射に暴露された時、フリーラジカルの形成によりモノマーおよびオリゴマーの重合を開始する化学化合物である。ノリッシュI型開始剤は励起後に開裂する開始剤であり、即座に開始ラジカルを生じる。ノリッシュII型開始剤は、化学線照射により活性化される光開始剤であり、そして実際の開始フリーラジカルになる第二化合物から水素を引き抜くことによりフリーラジカルを形成する。この第二化合物は重合相乗剤または共開始剤(co-initiator)と呼ばれる。I型およびII型光開始剤の両方が、本発明において単独または組み合わせて使用され得る。
【0099】
適切な光開始剤はCRIVELLO,J.V.,et al.Photoinitiators for Free Radical Cationic and Anionic Photopolymerization.第二版、BRADLEY,G.編集、London,UK:John Wiley and Sons Ltd,1998.p
.276-293に開示されている。
【0100】
カチオン性光開始剤の具体例には、限定するわけではないが以下の化合物またはそれらの組み合わせを含むことができる:場合によりモノ―またはポリ-[4-(フェニルチオジフェニル)]スルホニウム ヘキサフルオロホスフェートまたはヘキサフルオロアンチモネートと組み合わせることができるビス[4-(ジフェニルスルホニオ)-フェニル]スルフィド ビス-ヘキサフルオロホスフェートまたはビス-ヘキサフルオロアンチモネート;ビス[4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ-フェニル]スルフィド ビス-ヘキサフルオロホスフェート;ビス[4-(ジ(4-(2-ヒドロキシエチル)フェニル)スルホニオ)-フェニル]スルフィド ビス-ヘキサフルオロアンチモネート;(η6-2,4-(シクロペンタジエニル)[(1,2,3,4,5,6-η)-(メチルエチル)ベンゼン]-鉄(II) ヘキサフルオロホスフェート;4-イソプロピル-4-メチル ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート;ジフェニルヨードニウム ヘキサフルオロホスフェート;4-イソプロピル-4-メチル ジフェニルヨードニウム テトラキス-(ペンタ-フルオロフェニル)ボレート;ジフェニルヨードニウム テトラキス-(ペンタ-フルオロフェニル)ボレートおよび;2’-ヒドロキシ-2-フェニル-3-トルエンスルホニルオキシ-プロピオフェノン、10-ビフェニル-4-イル-2-イソプロピル-9-オキソ-9H-チオキサンテン-10-イウム ヘキサフルオロホスフェート。
フリーラジカル光開始剤の具体例には、限定するわけではないが以下の化合物またはそれらの組み合わせを含むことができる:ベンゾフェノンおよび置換ベンゾフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシル フェニルケトン、チオキサントン、例えばイソプロピルチオキサントン、2-ヒドロキシ―2-メチル―1-フェニルプロパン―1-オン、2-ベンジル―2-ジメチルアミノ―(4-モルホリノフェニル)ブタン―1-オン、ベンジルジメチルケタール、ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィン オキシド、2,4,6-トリメチルベンゾイル―ジフェニルホスフィン オキシド、2,4,6-トリメトキシベンゾイルジフェニルホスフィン オキシド、2-メチル―1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンまたは5,7-ジヨード-3-ブトキシ-6-フルオロン。
【0101】
適切な市販されているフリーラジカル光開始剤には、CIBA SPECIALTY CHEMICALSから入手可能なIrgacure(商標)184、Irgacure(商標)500、Irgacure(商標)369、Irgacure(商標)1700、Irgacure(商標)651、Irgacure(商標)819、Irgacure(商標)1000、Irgacure(商標)1300、Irgacure(商標)1870、Darocur(商標)1173、Darocur(商標)2959、Darocur(商標)4265およびDarocur(商標)ITX、BASF AGから販売されているLucerin(商標)TPO、LAMBERTIから販売されているEsacure(商標)KT046、Esacure(商標)KIP150、Esacure(商標)KT37およびEsacure(商標)EDB、SPECTRA GROUP Ltdから販売されているH-Nu(商標)470およびH-Nu(商標)470Xを含む。
【0102】
光開始剤、好ましくはフリーラジカル光開始剤は、いわゆる拡散が妨げられらた光開始剤(diffusion hindered photoinitiator)であることができる。拡散が妨げられた光開始剤は、ベンゾフェノンのような一官能性光開始剤よりも硬化したインキ層中で大変低い移動性(mobility)を現わす光開始剤である。光開始剤の移動性を下げるために幾つかの方法を使用することができる。1つの方法は、拡散速度が下がるように光開始剤の分子量を上げることである(例えば高分子光開始剤
)。別の方法は、重合するネットワークに組み込まれるように反応性を上げることである(例えば2,3またはより多くの光開始基(photoinitiating group)を有する多官能性光開始剤および重合性光開始剤)。
【0103】
放射線硬化型インキジェットインキ用の拡散が妨げられた光開始剤は、好ましくは非高分子多官能性光開始剤、オリゴマーまたはポリマー光開始剤および重合性光開始剤からなる群から選択される。最も好ましくは拡散が妨げられた光開始剤は、重合性光開始剤または高分子光開始剤である。
【0104】
好適な拡散が妨げられた光開始剤は、ベンゾインエーテル、ベンジル ケタール、α,αジアルコキシアセトフェノン,α-ヒドロキシアルキルフェノン,αアミノアルキルフェノン,アシルホスフィン オキシド、アシルホスフィン スルフィド、α-ハロケトン,α-ハロスルホンおよびフェニルグリオキサレートからなる群から選択されるノリッシュI型光開始剤から誘導される1もしくは複数の光開始官能基を含む。
【0105】
好適な拡散が妨げられた光開始剤は、ベンゾフェノン、チオキサントン、1,2-ジケトンおよびアントラキノンからなる群から選択されるノリッシュII型開始剤から誘導される1もしくは複数の光開始官能基を含む。
【0106】
また適切な拡散が妨げられた光開始剤は、欧州特許出願公開第2065362(A)号明細書の段階[0074]および[0075]で二官能性および多官能性光開始剤について、段落[0077]から[0080]で高分子光開始剤について、そして段落[0081]から[0083]で重合性光開始剤について開示されているものである。
【0107】
光開始剤の好適な量は、放射線硬化型インキジェットインキの総重量の0.1重量%-20重量%、より好ましくは2重量%―15重量%、そして最も好ましくは3重量%―10重量%である。
【0108】
さらに光感受性を増強するために、放射線硬化型インキジェットはさらに共開始剤を含むことができる。共開始剤の適切な例は、3つのグループに分類できる:1)三級脂肪族アミン、例えばメチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミンおよびN-メチルモルホリン;(2)芳香族アミン、例えばアミルパラジメチル―アミノベンゾエート、2-n-ブトキシエチル―4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)-エチルベンゾエート、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエートおよび2-エチルヘキシル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート;および(3)(メタ)クリル化アミン、例えばジアルキルアミノアルキル(メタ)クリレート(例えばジエチルアミノエチルアクリレート)またはN-モルホリノアルキル-(メタ)クリレート(例えば、N-モルホリノエチル-アクリレート)。好適な共開始剤は、アミノベンゾエートである。
【0109】
1もしくは複数の共開始剤を放射線硬化型インキジェットインキに含む場合、好ましくはこれらの共開始剤は安全性の理由から拡散が妨げられている。
【0110】
拡散が妨げられた共開始剤は、非ポリマーの二―または多官能性共開始剤、オリゴマーまたはポリマー共開始剤、および重合性共開始剤からなる群から選択されることが好ましい。より好ましくは、拡散が妨げられた共開始剤はポリマー共開始剤および重合性共開始剤からなる群から選択される。最も好ましくは、拡散が妨げられた共開始剤は少なくとも1つの(メタ)クリレート基を有する、より好ましくは少なくとも1つのアクリレート基を有する重合性共開始剤である。
【0111】
放射線硬化型インキジェットインキは、好ましくは重合性または高分子三級アミン共開始剤を含む。
【0112】
好適な拡散が妨げられた共開始剤は、欧州特許出願公開第2053101(A)号明細書の段落[0088]および[0097]に開示された重合性共開始剤である。
【0113】
放射線硬化型インキジェットインキは、好ましくは(拡散が妨げられた)共開始剤を、放射線硬化型インキジェットインキの総重量の0.1重量%から20重量%の量で、より好ましくは0.5重量%から15重量%の量で、そして最も好ましくは1重量%から10重量%の量で含む。
【0114】
重合阻害剤
放射線硬化型インキジェットインキは、インキの耐熱性を改善するために少なくとも1つの阻害剤を含むことができる。
【0115】
適切な重合阻害剤は、フェノール型酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定化剤、リン型酸化防止剤、通常は(メタ)クリレートモノマーに使用されるハイドロキノンモノメチル
エーテル、およびハイドロキノン、t-ブチルカテコール、ピロガロール、2,6-ジ-tert.ブチル―4-メチルフェノール(=BHT)およびフェノチアジンも使用することができる。
【0116】
適切な市販の阻害剤は、例えばSumitomo Chemical Co.Ltd.により生産されているSumilizer(商標)GA-80、Sumilizer(商標)GMおよびSumilizer(商標)GS;Rahn AGからのGenorad(商標)16、Genorad(商標)18およびGenorad(商標)22;Ciba Specialty ChemicalsからのIrgastab(商標)UV10およびIrgastab(商標)UV22、Tinuvin(商標)460およびCGS20;Kromachem LtdからのFlorstab(商標)UV範囲(UV-1、UV-2、UV-5およびUV-8);Cytec Solvay GroupからのAdditol(商標)S範囲(S100、S110、S120およびS130)およびPTZである。
【0117】
阻害剤は好ましくは重合阻害剤である。
【0118】
これら重合阻害剤の過剰な添加は硬化速度を下げるので、重合を防止することができる量をブレンド前に決定することが好ましい。重合阻害剤の量は、放射線硬化型インキジェットインキの総重量の5重量%未満が好ましく、より好ましくは3重量%未満である。
【0119】
界面活性剤
放射線硬化型インキジェットは少なくとも1つの界面活性剤を含むことができるが、好ましくは界面活性剤は存在しない。
【0120】
界面活性剤はアニオン性、カチオン性、非イオン性または両イオン性であることができ、そして通常、放射線硬化型インキジェットインキの総重量に基づき1重量%未満の総量で加えられる。
【0121】
適切な界面活性剤は、フッ素化界面活性剤、高級アルコールの脂肪酸塩、エステル塩、高級アルコールのアルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩およびリン酸エステル塩(例えばドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムおよびジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、高級アルコールのエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールの
エチレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物、およびそれらのアセチレングリコールおよびエチレンオキシド付加物(例えばポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、およびAIR PRODUCTS & CHEMICALS INC.から入手可能なSURFYNOL(商標)104、104H、440,465およびTG)を含む。
【0122】
好適な界面活性剤は、フッソ系界面活性剤(例えばフッ素化炭化水素)、およびシリコーン界面活性剤から選択される。シリコーン界面活性剤は好ましくはシロキサンであり、そしてアルコキシル化、ポリエーテル修飾化、ポリエーテル修飾化ヒドロキシ官能性、アミン修飾化、エポキシ修飾化されることができ、および他の修飾またはそれらの組み合わせであることができる。好適なシロキサンはポリマー性、例えばポリジメチルシロキサンである。
【0123】
好適な市販のシリコーン界面活性剤には、BYK ChemieからのBYK(商標)333およびBYK(商標)UV3510およびEvonik IndustriesからのTego Rad 2100を含む。
【0124】
好適な態様では、界面活性剤は重合性化合物である。
【0125】
好適な重合性シリコーン界面活性剤には(メタ)クリレート化シリコーン界面活性剤を含む。最も好ましくは(メタ)クリレート化シリコーン界面活性剤はアクリル化シリコーン界面活性剤であり、なぜならばアクリレートはメタクリレートより反応性が大きいからである。
【0126】
好適な態様では、(メタ)クリレート化シリコーン界面活性剤は、ポリエ-テル修飾化(メタ)クリレート化ポリジメチルシロキサンまたはポリエステル修飾化(メタ)クリレート化ポリジメチルシロキサンである。
【0127】
好ましくは界面活性剤は、放射線硬化型インキジェットインキの総重量に基づき0から3重量%の量で放射線硬化型インキジェットインキ中に存在する。
【0128】
インキジェットインキの調製
顔料を含む(pigmented)放射線硬化型インキジェットインキの調製は、当業者には周知である。好適な調製法は国際公開第2011/069943号パンフレットの段落[0076]から[0085]に開示されている。
【0129】
電子装置の製造
本発明に従い電子装置を製造する方法は:
-導電パターンを含む誘電性基板に、以下に記載する放射線硬化型ソルダーマスクインキジェットインキを噴射し;そして
-噴射したソルダーマスクインキジェットインキを硬化する、
工程を含む。
【0130】
電子装置は好ましくはプリント回路基板である。
【0131】
放射線硬化型ソルダーマスクインキジェットインキは、インキを電子線または紫外線(UV)照射のような化学線照射に暴露することにより硬化することができる。
【0132】
好ましくは、放射線硬化型インキジェットインキはUV照射、より好ましくはUV LED硬化を使用することにより硬化される。
【0133】
この方法は、好ましくは熱処理を含む。熱処理は好ましくは硬化工程後に行われる。
【0134】
好適な態様では、熱処理は80℃から250℃の温度で行われる。温度は好ましくは100℃以上であり、より好ましくは120℃以上である。ソルダーマスクの焦げを防ぐために、温度は好ましくは200℃以下である、より好ましくは160℃以下である。
【0135】
熱処理は一般に15から90分の間で行われる。
【0136】
熱処理の目的は、ソルダーマスクの重合度をさらに上げることである。
【0137】
熱処理中のこのさらなる重合は、ペルオキシド、アゾ化合物、酸無水物、およびフェノール類のようなポリマーの熱硬化を促進するラジカル開始剤、ブロック型熱酸発生剤、ブロック型酸触媒および/または熱硬化性化合物を、ソルダーマスクインキジェットインキに加えることにより加速される。
【0138】
電子装置の誘電性基板は、任意の非導電性材料でよい。基板は一般に紙/樹脂複合体または樹脂/ガラス繊維複合体、セラミック基板、ポリエステルまたはポリイミドである。
【0139】
導電性パターンは一般に、金、銀、パラジウム、ニッケル/金、ニッケル、錫、錫/鉛、アルミニウム、錫/アルミニウム、および銅のような電子装置を調製するために通常使用される金属または合金から作られる。導電性パターンは好ましくは銅から作られる。
【0140】
インキジェット印刷装置
放射線硬化型インキジェットインキは、インキの小液滴を制御された様式でノズルに通して基板に吐出する1もしくは複数のプリントヘッドにより噴射されることができ、この基板はプリントヘッド(1もしくは複数)に対して移動している。
【0141】
インキジェット印刷システムのための好ましいプリントヘッドは圧電ヘッドである。圧電インキジェット印刷は、圧電セラミック変換器に電圧がかけられる時のその動きに基づく。電圧の適用は、プリントヘッド中の圧電セラミック変換器の形を変化させて空隙を作り、次いでそれはインキで満たされる。再び電圧が取り除かれると、セラミックはその最初の形に膨張し、プリントヘッドからインキ滴を吐出する。しかしながら、本発明に従うインキジェット印刷方法は圧電インキジェット印刷に制限されない。他のインキジェットプリントヘッドも使用でき、そして連続型のような種々のタイプを含む。
【0142】
インキジェットプリントヘッドは通常、移動するインキ受容層表面を横切って横方向に前後を走査する。インキジェットプリントヘッドは戻って印刷しないことが多い。二方向印刷は高い面積処理量を得るために好ましい。別の好適な印刷法は「シングルパス印刷法(single pass printing process)」により、この方法は頁幅のインキジェットプリントヘッドまたはインキ受容層表面の幅全体を覆う多数のずらして配置されたインキジェットプリントヘッドを使用することにより行うことができる。シングルパス印刷法では、インキジェットプリントヘッドは、通常は静止したままであり、そしてインキ受容層表面がインキジェットプリントヘッド下を移送される。
【0143】
硬化装置
放射線硬化型組インキジェットインキは、それらを化学線、例えば電子線または紫外線照射に暴露することにより硬化され得る。好ましくは放射線硬化型インキジェットインキは、紫外線照射により、より好ましくはUV LED硬化を使用して硬化される。
【0144】
インキジェット印刷では、硬化手段は、噴射の直後に硬化性液体が硬化放射線に暴露されるように、一緒に移動しているインキジェットプリンターのプリントヘッドと組み合わせて配置されることができる。
【0145】
そのような配置では、UV LEDを除いて、プリントヘッドに接続され、そして一緒に移動する十分に小さい放射線源を備えることは難しい。したがって静止した固定放射線源、例えば、光ファイバーの束または内部反射性の柔軟な管のような、可撓性の放射線伝導手段により放射線源に接続された硬化UV-光線源を使用することになる。
【0146】
あるいはまた、化学線は放射線ヘッド上に鏡を含む鏡の配置により、固定源から放射線ヘッドに供給されることができる。
【0147】
放射線源はまた、硬化される基板上を横切って横に延伸する細長い放射線源でもよい。それは、プリントヘッドにより形成される画像のその次の列が、段階的にまたは連続的にその放射線源の下方を通過するように、プリントヘッドの横断路に隣接することができる。
【0148】
発光の一部が光開始剤または光開始系により吸収可能である限り、高圧もしくは低圧水銀ランプ、冷陰極管、不可視光線、紫外線LED、紫外線レーザーおよび閃光のような任意の紫外線源が放射線源として使用され得る。これらの中で好適な線源は、300から400nmの主要波長を有する比較的波長の長いUV貢献(UV-contribution)を示すものである。具体的には、UV-A光源は、光線の散乱が低いためにより効率的な内部の硬化をもたらすので好ましい。
【0149】
UV照射は一般に以下のようにUV-A、UV-BおよびUV-Cに分類される:
・UV-A:400nmから320nm、
・UV-B:320nmから290nm、
・UV-C:290nmから100nm。
【0150】
好適な態様では、放射線硬化型インキジェットインキはUV LEDにより硬化される。インキジェット印刷装置は、好ましくは360nmより長い波長をもつ1もしくは複数のUV LED、好ましくは380nmより長い波長を持つ1もしくは複数のUV LED、そして最も好適には約395nmの波長をもつUV LEDを含む。
【0151】
さらに異なる波長または照度(illuminance)の2つの光源を連続的にまたは同時に使用してインキ画像を硬化することが可能である。例えば、第1のUV源はとりわけ260nmから200nmの範囲のUV-Cが豊富となるように選択されることができる。次に第2のUV-源は、UV-Aが豊富な、例えば、ガリウムドープランプ、またはUV-AとUV-Bの両方が高い異なるランプであることができる。2種のUV-源の使用は、例えば急速な硬化速度および高い硬化度のような利点を有することが分かった。
【0152】
硬化を促進するために、インキジェット印刷装置はしばしば、1もしくは複数の酸素除去(depletion)ユニットを含む。酸素除去ユニットは、硬化環境内の酸素濃度を低下させるために、調整可能な位置に、および調整可能な不活性ガス濃度で窒素または他の比較的不活性なガス(例えば、CO2)のブランケットを配置する。残留酸素レベルは通常、わずか200ppmに維持されるが、一般には200ppmから1200ppmの範囲である。
【実施例
【0153】
材料
以下の実施例中に使用されるすべての材料は、別記されない限り、ALDRICH
CHEMICAL Co.(ベルギー)およびACROS(ベルギー)のような標準的な入手先から容易に入手可能であった。使用された水は脱イオン水であった。
【0154】
CTFAは、ARKEMAからSartomer(商標)SR531として入手可能な環式トリメチルプロパン ホルマル アクリレートである。
【0155】
ACMOは、RAHNから入手可能なアクリルオキシ モルホリンである。
【0156】
CD420は、ARKEMAからSartomer(商標)CD420として入手可能な一官能性アクリル系モノマーである。
【0157】
TMPTAは、ARKEMAからSartomer(商標)SR351として入手可能なトリエチロールプロパン トリアクリレートである。
【0158】
ITXは、LAMBSON SPECIALTY CHEMICALSからのSpeedcure(商標)ITXであり、イソプロピル チオキサントン異性体の混合物である。
【0159】
TPOは、RAHN AGから供給される2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドである。
【0160】
EPDは、RAHN AGからGenocure(商標)EPDという商標で入手可能なエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエートである。
【0161】
BAPOは、BASFからIrgacure(商標)819として入手可能なビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド光開始剤である。
【0162】
TTA3150は、Jiangsu Tetrachemから入手可能なポリ[(2-オキシラニル)-1,2-シクロヘキサンジオール]-2-エチル-2-(ヒドロキシメチル)-1,3-プロパンジオール エーテルである。
【0163】
2005は、IGM resinから入手可能な7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタ-3-イルメチル7-オキサビシクロ[4.1.0]ヘプタン―3-カルボキシレートである。
【0164】
G22は、Rahn AGから入手可能なGenorad(商標)22である。
【0165】
BL550solは、プロピレンカーボネート中、BL550の20重量%溶液である。
【0166】
BL550は、IGM resinからOmnicat BL550として入手可能である。
【0167】
Tego Rad 2100は、Evonik Industriesからのポリシロキサン アクリレートスリップ剤である。
【0168】
INHIBは、表4による組成を有する重合阻害剤を形成する混合物である。
【表4】
【0169】
Cupferron(商標)ALは、WAKO CHEMICALS LTDからのアルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンである。
【0170】
Ebecryl 1360 AKは、ALLNEXからのポリシロキサン ヘキサアクリレートスリップ剤である。
【0171】
DPGDAは、ジプロピレンジアクリレートであり、ARKEMAからSartomer SR508として入手可能である。
【0172】
VEEAは、日本のNIPPON SHOKUBAIから入手可能な2-(ビニルエトキシ)エチル アクリレートである。
【0173】
Cyanは、SUN CHEMICALSから入手可能なシアン顔料、SUN FAST BLUE 15:4である。
【0174】
Yellowは、BASFからのイエロー顔料のCROMOPHTAL YELLOW
D 1085Jである。
【0175】
Disperbyk 162は分散剤であり、BYK(ALTANA)から入手可能な溶液から沈殿された。
【0176】
FR-01は、CHEMTURAからEmerald NH1という商標で市販されている難燃剤である。
【0177】
FR-02は、LANXESSからDisflamoll DPKという商標で市販されている難燃剤である。
【0178】
FR-05は、CHEMTURAからReofos(登録商標)65という商標で市販されている難燃剤である。
【0179】
FR-09は、ADEKA PALMAROLEからADK STAB FP-600という商標で市販されている難燃剤である。
【0180】
FR-15は、FERROからSanticiser(登録商標)141という商標で市販されている難燃剤である。
【0181】
FR-C01は、CLARIANTからExolit OP560という商標で市販されている難燃剤であり、そして以下の化学構造を有する。
【化5】
【0182】
FR-C02は、LANXESSからDisflamoll TOFという商標で市販されている難燃剤であり、そして以下の化学構造を有する。
【化6】
【0183】
FR-C03は、LANXESSからDisflamoll 4090Nという商標で市販されている難燃剤であり、そして以下の化学構造を有する。
【化7】
【0184】
FR-C04は、KAHLからTBEPという商標で市販されている難燃剤であり、そして以下の化学構造を有する。
【化8】
【0185】
方法
ソルダーマスクインキジェットインキのコーティング/プリント
ソルダーマスクインキジェットインキのUV硬化、接着性、溶剤およびはんだ耐性を評価するために、インキを25μの塗り厚で、ブラッシ済み(brushed)銅フォイル(35μ)上に塗布し、そしてH-バルブ(3回x450mJ)を使用して硬化した。さらにコーティングを150℃で60分間熱硬化した。
【0186】
インキは、UV硬化後に硬化速度について視覚および接触で評価し、そして1(大変乾燥)から5(湿潤)の点数を与えた。インキを最終的特性の接着および溶剤耐性について熱硬化後に評価した。
【0187】
X-ハッチ接着(X-hatch adhesion)
X-ハッチ接着は、ソルダーマスクコーティング中の4×4グリッドパターンをメスを使用して切断することにより測定した。グリッドの断片は、1mm離して切断した。グリッドを切断した後、接着は粘着テープ(Scotch 600)を表面に適用し、そして剥がすことにより評価した。
【0188】
視覚評価は、1(大変良好な接着)から5(大変劣る接着)の範囲の接着品質を生じた。
【0189】
難燃性の評価
硬化したインキジェットインキの難燃性は、垂直燃焼試験により評価した。
【0190】
127mm×25mmのサンプルを一端で垂直位置に保持した。45℃の角度下でバーナー火炎をサンプルの自由末端に10秒間、適用した。火炎を除いた後、火炎燃焼が収まる時間(T1)を測定した。次いで火炎を再度10秒間適用し、そして火炎燃焼が収まる時間(T2)を再度測定した。
【0191】
はんだ耐性の評価
ソルダーマスクインキジェットインキのはんだ耐性を、SOLDER CONNECTIONから入手可能な、“K”等級の63:37錫/鉛のはんだを充填したL&M PRODUCTSから入手可能なSPL600240 Digital Dynamic Solder Pot(デジタルダイナミックはんだ付け槽)を使用して評価した。はんだの温度は260℃に設定した。
【0192】
SOLDER CONNECTIONからのはんだ接着用溶剤(solder flux)SC7560Aを、サンプルの表面(すなわち、銅表面上のソルダーマスクインキジェットインキのコーティング)上に綿球を使用して適用して、ここでX-ハッチ接着試験を行い表面を清浄化した。はんだ接着用溶剤ははんだ付け槽の上に、サンプルを1分間置くことにより乾燥させた。
【0193】
はんだの噴流(wave)を発生させ(created)、そしてサンプルを噴流上に2回通し(5秒/1回)、その後サンプルをすすぎ、そして室温に冷却した。
【0194】
次にソルダーマスクインキジェットインキの銅表面への接着は、冷却したサンプル
上でテープ試験を用いて評価した。3Mからの粘着テープScotch 600をコーティングに適用し、そしてテープをその後直ぐに手で剥がした。
【0195】
視覚評価は、1(大変良好な接着)から5(大変劣る接着)の範囲の接着品質を生じた。
【0196】
粘度
インキの粘度は、Spindle#18を100rpmの速度でBrookfield
DV-II+Pro粘度計を使用して25℃で測定した。
【0197】
工業的インキジェット印刷に関して、25℃でSpindle#18を使用した100rpmでの粘度は、好ましくは3から40mPa.sである。より好ましくは、45℃および1000s-1の剪断速度での粘度は15mPa.s未満である。
【0198】
溶剤耐性
溶剤耐性は、ソルダーマスクの表面を綿球でこすり、塩化メチレン(CH2Cl2)に1分間浸すことにより評価した。次いでコーティングは浮き上がり(lifting)、ふ
くれ(blistering)または剥離について調査し、そして指の爪を使用して引っ掻いてコーティングが軟化しているかどうかを見た。視覚評価後、結果を1(良好)から5(悪い)に採点した。
【0199】
貯蔵安定性
貯蔵安定性は、60℃で7日間貯蔵した後に、ソルダーマスクの25℃での粘度の上昇を測定することにより評価した。
【0200】
シアンおよびイエロー顔料分散物CPDおよびYPDの調製
表5による組成を有する濃縮シアンおよびイエローおよび顔料分散物(それぞれCPDおよびYPD)を調製した。
【表5】
【0201】
CPDおよびYPDは、以下のように調製した:138gの2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル アクリレート、2gの溶液(ジプロピレン グリコール ジアクリレート中に4重量%の4-メトキシフェノール、10重量%の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノールおよび3.6重量%のアルミニウム-N-ニトロソ フェニルヒドロキシル アミンを含む)、200gの溶液(2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチル アクリレート中に30重量%のDisperbyk 162を含む)、および60gのシアン(CPDに)または60gのイエロー(YPDに)を、DISPERLUX(商標)分散機を使用して混合した。撹拌を30分、続行した。容器は、900gの0.4mmイットリウム安定化ジルコニウムビーズ(TOSOH Coからの「高い耐摩耗性ジルコニア粉砕媒体」)を充填したNETZSCH MiniZetaミルにつないだ。混合物をミルで120分間、循環し(45分の滞留時間)、そしてミルの回転速度は約10.4m/sであった。完全な粉砕工程中、ミル中の着色剤は60℃未満の温度に維持された。粉砕後、分散物を容器に入れた。
【0202】
得られた濃縮顔料分散物CPDおよびYPDは、Malvern(商標)ナノ-Sで測定した時、それぞれ80nmおよび131nmの平均粒度を、そして25℃および10s-1の剪断速度でそれぞれ51mPa.sおよび114mPa.sの粘度を現わした。
【実施例1】
【0203】
この実施例は種々の難燃剤が、カチオン性重合性ソルダーマスクインキジェットインキのUV硬化、接着および溶剤耐性に及ぼす効果について具体的に説明する。
【0204】
放射線硬化型インキCOMP-1からCOMP-5およびINV-1からINV-4の調製
比較の放射線硬化型インキCOMP-1からCOMP-5および本発明の放射線硬化型インキジェットインキINV-1からINV-4は、表6に従い調製した。重量の百分率(重量%)は、すべて放射線硬化型インキジェットインキの総重量に基づく。
【表6-1】
【表6-2】
インキの性能は、前記のように試験した。結果を表7に示す。
【表7】
【0205】
表7の結果から、本発明による難燃剤を含んでなる放射線硬化型ソルダーマスクインキジェットインキは、比較の難燃剤を有するものよりも高い硬化速度を有することが明らかである。
【実施例2】
【0206】
この実施例は、難燃剤を含まないインキジェットインキCOMP-1に比べて、FR-2を使用した本発明のソルダーマスクインキジェットインキINV-4の燃焼性の改善を示す。
【0207】
燃焼性は、前記垂直燃焼試験を用いて試験した。
【表8】
【表9】
【0208】
前記表8および9の結果から、本発明の難燃剤を含んでなる本発明のインキジェットインキINV-4は、難燃剤を含まない比較のCOMP-01と比較して低い燃焼性を有することが明らかである。
【実施例3】
【0209】
この実施例は、フリーラジカル重合性ソルダーマスクインキジェットインキの燃焼性に及ぼす種々の難燃剤の効果を具体的に説明する。
【0210】
比較の放射線硬化型インキジェットインキCOMP-06、および本発明の放射線硬化型インキジェットインキINV-05からINV-07を表10に従い調製した。重量百分率(重量%)はすべて放射線硬化型インキジェットインキの総重量に基づく。
【表10】
【0211】
燃焼性は前記のように試験した。結果を表11に与える。
【表11】
【0212】
表11の結果から、本発明の難燃剤を添加することはフリーラジカル重合性ソルダーマ
スクインキジェットインキの燃焼性を改善することが明らかである。本発明のインキジェットインキの他の性質、例えば接着、はんだ耐性等は高レベルに維持された。