(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】非水性分散剤
(51)【国際特許分類】
C09K 23/52 20220101AFI20230809BHJP
C08G 81/02 20060101ALI20230809BHJP
A01N 25/30 20060101ALI20230809BHJP
A01N 47/36 20060101ALN20230809BHJP
A01P 13/00 20060101ALN20230809BHJP
【FI】
C09K23/52
C08G81/02
A01N25/30
A01N47/36 101C
A01P13/00
(21)【出願番号】P 2020537711
(86)(22)【出願日】2019-02-19
(86)【国際出願番号】 AU2019000020
(87)【国際公開番号】W WO2019161431
(87)【国際公開日】2019-08-29
【審査請求日】2021-12-07
(32)【優先日】2018-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】507213857
【氏名又は名称】インドラマ・ベンチャーズ・オキサイズ・オーストラリア・ピーティーワイ・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,ローワン
(72)【発明者】
【氏名】デュマンスキー,ポール
【審査官】西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-319333(JP,A)
【文献】特開平09-316195(JP,A)
【文献】特表2003-509205(JP,A)
【文献】特開昭60-215651(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 23/00-23/56
C08G 81/00-81/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
疎水性安定化物(“HSE”)の付加物を有効な反応化学量論においてコポリマー上にグラフト化することにより生成する縮合物を含む非水性分散剤(“NAD”)であって、ここでコポリマーは芳香族官能基を有するアンカー部分を含み、前記HSEがポリヒドロキシステアリン酸(“PHSA”)であり、前記コポリマーがスチレン-無水マレイン酸(“SMA”)コポリマーであり、前記PHSAが、前記コポリマーと反応させる前にグリコール、アルカノールアミン、エーテルアミン又はエチレンアミンから選ばれる少なくとも1モルのリンカー基剤との反応を介して修飾されている、非水性分散剤。
【請求項2】
HSEが1000Daより大きい分子量(Mn)を有するPHSAである、請求項1に記載の非水性分散剤。
【請求項3】
縮合物がアニオン性及び/又は酸性である、請求項1に記載の非水性分散剤。
【請求項4】
縮合物が、1:2から8:1までの化学量論比範囲内におけるSMAコポリマーとHSEの付加物の反応により、且つ1,000ないし40,000Daの分子量(Mn)範囲内で、形成される、請求項1に記載の非水性分散剤。
【請求項5】
リンカー基剤が、ポリオキシアルキレン;或いはグリコールアミン;或いはポリエーテルアミン、或いは4-ヒドロキシアニリン、或いはモノエタノールアミン(“MEA”)、モノイソプロパノールアミン(“MIPA”)、エチレンジアミン(“EDA”)、トリエチレンテトラミン(“TETA”)、或いはテトラエチレンペンタミン(“TEPA”)から選ばれる、請求項1に記載の非水性分散剤。
【請求項6】
ポリエーテルアミンが、アミン末端ポリオキシプロピレン、又は主に末端アミンを有するポリエチレングリコール主鎖を有するジアミンから選ばれる、請求項
5に記載の非水性分散剤。
【請求項7】
PHSAが、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド(“HEAA”)、N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド(“HEMAm”)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(“HEA”)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(“HEMA”)、4-ビニルアニリン、4-ビニルフェノール、アリルアルコール又はアリルアミンから選ばれる反応物との反応に従って、修飾され;ここで付加物はエチレン性不飽和末端を有するマクロモノマーである、請求項2に記載の非水性分散剤。
【請求項8】
リンカー基剤がモノエタノールアミンであり、且つここで付加物がPHSA-モノエタノールアミドである、請求項
5に記載の非水性分散剤。
【請求項9】
PHSA-モノエタノールアミド付加物の形成のためにモノエタノールアミンとの反応において用いられるPHSAが、25ないし50mgKOH/gの酸価により決定される1000g/モルより大きい分子量を有する、請求項
8に記載の非水性分散剤。
【請求項10】
縮合物がさらにスルホン酸官能基を含む、請求項1に記載の非水性分散剤。
【請求項11】
スルホン酸官能基がタウリン、イセチオン酸、4-アミノベンゼンスルホン酸、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸又は1-ヒドロキシ-2-プロパンスルホン酸から選ばれる、請求項
10に記載の非水性分散剤。
【請求項12】
スルホン酸官能基がタウリン又はその塩であり、且つここでSMA:PHSA-モノエタノールアミド:タウリンコポリマーが形成される、請求項
11に記載の非水性分散剤。
【請求項13】
SMA:PHSA-モノエタノールアミド:タウリンの化学量論比が1:0.9:0.1である、請求項
12に記載の非水性分散剤。
【請求項14】
SMA:PHSA-モノエタノールアミド:タウリンの化学量論比が0.92:1.00:0.46である、請求項
12に記載の非水性分散剤。
【請求項15】
アルカリ性/塩基性試薬を用いて反応混合物を中和する、請求項
13又は請求項
14に記載の非水性分散剤。
【請求項16】
アルカリ性/塩基性試薬がNaOHである、請求項
15に記載の非水性分散剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は一般的に、得られる調製物の最適性能及び安定性のために安定(robust)且つ有効な分散が重要である場合の液中、特に非水性液中の微粉砕された有害生物防除剤(pesticides)の分散系に関する。興味深い一次調製物(primary formulations)は、CropLife Internationalによって油混和性フロワブル濃厚液(flowable concentrates)(“OF”)そしてさらに特定的に油分散系(“OD”)と称されるもののような、非水性有害生物防除剤組成物である。下記で非水性液中の微粉砕された固体有害生物防除剤の分散系及び分散系の安定性における向上を示すポリヒドロキシステアリン酸(“PHSA”)の縮合生成物誘導体のその中における使用に関連して本発明を記述するのが便利であろう。しかしながら、本発明はPHSA誘導体に制限されると理解されるべきではない。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
非水性液中の微粉砕された有害生物防除剤の安定な分散系を調製しようとする調製者(formulator)が直面する課題は多い。これらの課題は多くの場合に農薬OD調製物を特徴付けるやっかいな保存寿命安定性挙動に関わる。主要な課題の1つは非水性媒体、特に油に基づく媒体中で活性成分を有効に分散させる能力であり、その成功は保存期間に及んで沈降及びシネレシスの予防を助けることにより、OD安定性にとって基本的なものであり、結局それにより最終使用者が容易に調製物を容器から適用容器に移すことを可能にする。
【0003】
非水性液中の固体の微粉砕された有害生物防除剤の安定な分散は、典型的に特別な非水性分散剤(“NAD”)の使用により助長され、それは典型的に1個以上の油溶性(oil-soluble)、脂溶性(lipophilic)又は親油性(oleophilic)部分及び適したアンカー部分を含む。脂溶性部分は外相中に可溶性の傾向があり、それは典型的に外相中に延びて有効な立体的障壁を形成し、一方アンカー部分は分散相上に強く吸着しなければならない。
【0004】
特別な(specialty)分散剤の使用による非水性液中の有害生物防除剤懸濁液の有効な安定化のための重要要素は、間違いなく分散剤のアンカー部分と分散相の親和性又は適合性である。相乗作用の欠如が結局所望の基剤への十分な吸着の欠如、基剤からの分散剤の漸次の脱着及び/又は外相における分散剤の過剰な溶解性を生ずる場合があることは、驚くべきことではない。これらの挙動のいずれかが起こったらば、これは完全な調製された例(complete formulated examples)において凝集、沈降、相分離、ずれ粘稠化又はダイラタンシー及び/又は複雑な関連粘稠化現象(complex associative thickening phenomena)を生ずる傾向があるであろう。
【0005】
しかしながら、非水性液中の有害生物防除剤の分散系を扱う場合、分散剤性能のこの側面を、ほとんどの有害生物防除剤が無機ではなくて有機であり、極性における有意な変動が典型的に小さいものから合理的に大きいものまでの範囲であるという概念と平行して考えるべきである。微粉砕された有害生物防除剤の界面により多くの場合に与えられる低いエネルギー面の故に、分散剤のアンカー部分が非水性系において有効に会合し、最適分散効果を与えるのは困難であり得る。
【0006】
第一に、困難性は典型的な分散剤により用いられる両親媒性から生じ、ここで非水性分散剤の場合、アンカー部分は多くの場合に親水性であろう。低から中程度に(low-to-moderately)極性の有機基剤は熱力学的に非適合性であり、その場合分散剤はあまり吸着しないか又は脱着しないかのいずれかであり、かくして続く分散系又は懸濁液の不安定化の可能性が増し得るというリスクがあることは容易に想像され得る。第二に、分散剤の吸着能力を向上させるために、より適し且つおそらく親水性の低い結合官能基を導入することにより、続く両親媒性における低下はおそらく向上する外相による溶媒和を介して吸着の熱力学的成分を妨げ得る。
【0007】
これらの概念は、調製物が適用前に水中で希釈されるべく設計されるという要件のために、農薬OD調製物においてさらに拡大される。農薬OF型系で用いられる純粋に非水性の系と異なり、この要件を促進するために乳化剤を加えねばならない。しかしながら、この極性の界面活性な添加剤の存在はさらなる不安定化の影響を与え、この場合NAD吸着がアンカー部分の可溶化により影響を受け得るか又はNADも置き換えられることが予測される。これらの出来事は結局NADが脱着するための追加の誘因を与え、その場合続いて得られる有害生物防除剤OD調製物はもはや保存安定性ではないであろう。
【0008】
この問題を克服する可能性のある1つの方法は、相乗剤又は分散相乗剤の使用である。これらの材料は分散相上に吸着し、より適した架橋界面を与え、NADのアンカー部分とのより優れた適合性を与えることを目的とする。しかしながら相乗剤の使用は、開発的及び商業的展望の両方から望ましくない複雑性を増す。
【0009】
あるいはまた、この課題の克服のための別の方法は、アンカー部分が、理想的には一般的な官能基の導入又は広範囲の基剤にわたる吸着有用性を与える場合がある特徴の導入を介して、分散されるべき農薬基剤に関するより大きな特異性を有する高性能高分子NADsを用いることである。優れた有用性を有する高性能高分子NADsは、特に櫛型のものであり:これらの材料は適したアンカー主鎖を含み、その上に多数の安定化側鎖が共有結合している。
【0010】
農薬調製者は進歩した高分子NAD技術を利用できる。適した技術の最高の例は櫛型高分子NADs、Huntsman Corporationから入手可能なTERSPERSE(登録商標) 4890又はLubrizol Corporationから入手可能なSOLSPERSE(登録商標) 13940である。しかしながらこれらの材料のアンカー構造において用いられる化学的性質は、安定且つ普遍的な吸着挙動を与えるが、農薬規制の考えに関して好ましくない。United States Environmental Protection Authority Title 40 Code of Federal Regulations(40 CFR)、特に注目すべきは40 CFR §723.250により与えられるもののような低リスクポリマーの定義(low-risk polymer definitions)である。従って類似の性能を示すが依然として商業的に不利な規制制限の限度内に含まれ且つ工業的な利点又は製造の単純性を念頭に有する類似の高性能NADsの製造のための別の戦略が必要である。
【0011】
従って本発明者らは、低から中程度に極性の有機有害生物防除剤基剤を基本的に補足する(complements)が、分散剤両親媒性への影響及び続く吸着能力に関する影響の故にその使用が直ちに直感的(intuitive)でない比較的疎水性のアンカー構造の有用性を調べた。
【0012】
従って、缶中で(in-can)助剤活性(adjuvancy)を与えるOD調製物の非水性外相により有害生物防除剤のためのより有効な送達ビヒクルを与えることを約束
するOD調製物技術の利用性(accessibility)を向上させる目的で、本発明者らは、概念的に(notionally)両親媒性の低い又は比較的疎水性の非水性分散剤が驚くほど安定した分散性能を示すことを見出した。これは濃厚ミルベース流動学的挙動(millbase concentrate rheological behaviour)における実質的な向上により示され、それは分散剤アンカーと分散相の間の親和性の向上から生ずることが示唆された。この向上は現存する技術と対照的により高いOD調製物安定性を助長するのを助けると思われ、一方これらの材料は非水性分散系の安定化において多くの場合に用いられる他の分散剤と対照的に取り扱いもより容易であり、且つ優れた溶解性を保持する。
【0013】
現存する有限の商業的に入手可能な有害生物防除剤の組の効力は耐性のような問題を介して減少し、より新しいより複雑な技術はバイオアベイラビリティの低下に苦しんでいるので、これのような向上した送達の主題は重要性が増している。
【0014】
本発明は、先行技術において遭遇する問題の少なくとも1つを改善しようとするものである。
【発明の概要】
【0015】
発明の概略
本発明の1つの側面に従い、疎水性安定化物(hydrophobic stabilising entity)(“HSE”)の付加物を有効な反応化学量論においてコポリマー上にグラフト化することにより生成する縮合物を含む非水性分散剤(“NAD”)を提供し、ここでコポリマーは芳香族官能基を有するアンカー部分を含む。
【0016】
本明細書において、当業者は下記で用いられる「縮合物」という用語が付加反応、縮合反応又は置換反応を含むいずれかの反応に続いて得られる生成物を意味することを理解するであろう。
【0017】
「疎水性安定化物」という用語は、適切に疎水性であるか、あるいはまた溶剤又は油適合性の典型的に1000Da又はそれより大きい分子量を有する適した分子量の高分子、オリゴマー性材料又は他の材料を意味し、それは独力で又は適した試薬を用いる反応、縮合若しくは他を介して修飾されると立体的安定化の機構を介して非水性分散性を与えるか又は助長することができることが当業者により理解されるであろう。
【0018】
「コポリマー」という用語は、2種類以上のモノマー種の反応により製造されるポリマーを意味すると理解されるべきである。
【0019】
「マクロモノマー」という用語は、エチレン性二重結合のような、それがモノマーとして働くのを可能にし、かくしてマクロ分子(macromolecule)が重合反応に関与するのを可能にする、少なくとも1個の末端基を有するマクロ分子として理解されるべきである。本明細書で用いられる場合、高分子分散剤の文脈において、水性であっても又は非水性であっても、マクロ分子は典型的に立体的な安定化の機構を介して分散性を助長する安定化物、すなわちポリヒドロキシステアリン酸(“PHSA”)のような疎水性安定化物である。
【0020】
「酸価」という用語は、1グラムの化学物質を中和するのに必要なミリグラムにおける水酸化カリウムの質量を意味すると理解されるべきである。それは調べられるべき試料の代表的な(representative)質量を正確に三角フラスコ中に計り込むことにより決定されるべきである。次いで1:1トルエン:エタノール(v/v)として溶解溶媒を調製し、100mlの体積に仕上げる。これに1%フェノールフタレイン指示薬溶
液の5滴を加え、続いてピンク色の最初の兆候に気づくまで数滴の0.1M KOH(メタノール中)を加える。次いで溶解溶媒を調べられるべき試料と合わせ、溶解を助けるために熱が必要な場合があり、試料が完全に溶解したら標準化0.1M メタノール性KOHを用いて溶液を滴定する。以下の式を用いて酸価を決定する:酸価=(TxMx56.1)/Wであり、式中、TはmLにおける滴定量(titre)であり;Mはメタノール溶液中の標準化KOHのモル濃度であり;そしてWはグラムにおける試料の重量である。従って酸価に関する単位はmg KOH/gである。
【0021】
当業者が理解する通り、1個のポリマー分子の酸官能基の数が既知であるか又は定義され得る場合、「酸価」という用語を用いてポリマーに関する分子量を導く(determine guide)ことができる。すなわちPHSAの場合、一般式はMW=A*56100/AVであり、式中、Aは酸性基の数であり、56,100単位はミリ当量KOH又はmg KOH/モルであり、AYはmg KOH/gである。簡単な再構成(rearrangement)により、分子量近似値をg/モルで得ることができる。
【0022】
HSEは好ましくはポリヒドロキシステアリン酸(“PHSA”)、ポリイソブチレンコハク酸無水物(“PIBSA”)、ポリカプロラクトンなどから選ばれ、ここで特定の分子量範囲を有する付加物の誘導体が生成する。最も好ましくは、HSEは1000Daより大きい分子量を有するPHSAである。
【0023】
有効な反応化学量論におけるコポリマーとの反応の前に、PHSAのようなHSEを好ましくは最初にリンカー基剤との反応を介して修飾し、リンカー基剤はグリコール、アルカノールアミン、エーテルアミン又はエチレンアミンから選ばれる。この方法でHSEをコポリマー上へのグラフト化のために適切に準備することができる。さらに別の好ましい形態において、リンカー基剤はモノエチレングリコール(“MEG”)、ジエチレングリコール(“DEG”)、トリエチレングリコール(“TEG”)、ポリエチレングリコール(“PEG”)又は式HO[-CH2-CH-R-O-]n-HにおいてR=H又はCH3でありn=1-100であるポリオキシアルキレンのようなポリオキシアルキレン;或いはジグリコールアミン(“DGA”)又はトリグリコールアミン(“TGA”)などのようなグリコールアミン;或いはJEFFAMINE(登録商標) Dシリーズ、すなわちアミン末端ポリオキシプロピレン又はJEFFAMINE(登録商標) EDシリーズ、すなわち主にアミン末端を有するポリエチレングリコール主鎖を有するジアミンから選ばれるもののようなポリエーテルアミン或いは4-ヒドロキシアニリン或いはモノエタノールアミン(“MEA”)或いはモノイソプロパノールアミン(“MIPA”)、エチレンジアミン(“EDA”)、トリエチレンテトラミン(“TETA”)或いはテトラエチレンペンタミン(“TEPA”)から選ばれる。最も好ましくは、HSEはPHSAであり、グラフト助長リンカー基剤はMEAであり、ここでHSE付加物はPHSA-モノエタノールアミドである。
【0024】
類似して、ポリイソブチレンコハク酸無水物(“PIBSA”)を含む付加物の誘導体、特にDGA又はTGAのようなグリコールアミン、モノエタノールアミン(“MEA”)、エチレンジアミン或いはJEFFAMINE(登録商標) D又はEDシリーズから選ばれるもののようなポリエーテルアミン或いは4-ヒドロキシアニリンと反応したPIBSAの使用も有利に同じ効果を与える場合がある。ポリカプロラクトンの場合、典型的にカプロラクトンを適した脂肪アルコール又は脂肪アミンと反応させて1000Daより大きい適した分子量を有する生成物を与えることにより付加物の誘導体を形成することができ、それを適したコポリマーに直接グラフト化することができる。
【0025】
別の好ましい形態において、適した条件下におけるPHSAとN-ヒドロキシエチルアクリルアミド(“HEAA”)、N-ヒドロキシエチルメタクリルアミド(“HEMAm
“)、2-ヒドロキシエチルアクリレート(”HEA“)、2-ヒドロキシエチルメタクリレート(”HEMA“)、4-ビニルアニリン、4-ビニルフェノール、2-プロペン-1-オールなどのようなアリルアルコール又は3-アミノ-1-プロペンなどのようなアリルアミンの縮合反応からHSEの付加物を製造し、得られるエチレン性不飽和末端を有するマクロモノマーを形成し、それをスチレン、無水マレイン酸、メタクリル酸又はメチルメタクリレートから選ばれるモノマーと典型的なラジカル重合法を介してさらに共重合させることができる。得られる反応生成物は好ましい態様と構造的に同じではないが、類似の適用性能を示すと予想される。
【0026】
所望のHSE付加物をC6ないしC22飽和ならびにモノ及びポリ不飽和のような単純な脂肪アルコール;ならびにC12ないしC22飽和ならびにモノ及びポリ不飽和のような脂肪アミンで置き換えることを介して類似の適用効果が達成される場合もある。しかしながらそれらの比較的小さい分子量は、不十分な立体的特性の故にHSE置換物としてのそれらの有効性をおそらく減じるであろう。
【0027】
好ましくは、モノエタノールアミンとの予備縮合において用いられるPHSAは、理想的には約25ないし50mg KOH/gの酸価により決定される1000Daより大きい分子量を有するであろう。
【0028】
1つの好ましい形態において、コポリマーのアンカー部分の芳香族官能基はスチレン-無水マレイン酸(“SMA”)コポリマーにより与えられ、好ましいSMAコポリマーは1:1のスチレン:無水マレイン酸比を有するSMA(登録商標)-1000(Polyscope Polymers BV)である。しかしながら2:1のスチレン:無水マレイン酸比を有するSMA(登録商標)-2000(Polyscope Polymers BV);3:1のスチレン:無水マレイン酸比を有するSMA(登録商標)-3000(Polyscope Polymers BV);SMA(登録商標) EF 40、60及び80(Polyscope Polymers BV)からコポリマーを選ぶこともでき、ここでSMAコポリマーをHSEの付加物と反応させて1:1ないし8:1の化学量論比範囲及び1000ないし20000Daの分子量(Mn)範囲における縮合物を形成する。
【0029】
SMAコポリマーの使用が好ましいが、本発明はスチレン、α-メチル-スチレンなどのコポリマーを含む芳香族官能基を有する代替物の使用も目的とし、それらはアクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、メタクリル酸及びメチルメタクリレートと付加物を形成する。
【0030】
最も好ましい形態において、本発明の縮合物は酸性及び/又はアニオン性を有する。向上した性能を生ずる最も好ましいNADは、縮合物が酸性及びアニオン性の両方であり、且つそれが芳香族官能基を有するアンカー部分を含む場合のものである。これは、PHSA-モノエタノールアミド付加物の化学量論をコポリマーの酸当量に基づく化学量論的当量未満に調整することを介して達成され、ここで残る酸性度は適したアルカリ性/塩基性試薬を用いてさらに中和され、必要であれば所望の塩を生成することができる。
【0031】
別の好ましい形態において、反応の化学量論を調整することにより、縮合物はさらにスルホン酸、ホスホン酸又はリン酸官能基を含む。1つの形態において、これはHSEの付加物及び少なくとも1種のスルホネート-、ホスェート-又はホスホネート-保有グラフト剤のコポリマーとの共縮合を介して達成される。より好ましい形態において、PHSA-モノエタノールアミド付加物の化学量論をコポリマーの酸当量に基づく化学量論的当量未満に下げ、スルホン酸、ホスホン酸又はリン酸-保有試薬の共縮合を可能にすることができる。スルホン酸-保有試薬は好ましくはタウリン、イセチオン酸、4-アミノベンゼ
ンスルホン酸、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸又は1-ヒドロキシ-2-プロパンスルホン酸あるいはそれらのそれぞれの塩のいずれかから選ばれる。ホスホン酸又はリン酸保有試薬は好ましくはアミノメチルホスホン酸、アミノエチルホスホン酸、ホスホリルエタノールアミン又はそれらのそれぞれの塩のいずれかから選ばれる。非中和酸保有試薬の使用により得られる縮合物は、後に適したアルカリ性/塩基性試薬を用いて中和され、必要なら所望の塩を生成することができる。
【0032】
別の好ましい形態において、PHSAとHEAAの縮合を介 する上記のマクロモノマー性HSEの使用から、類似して機能性の非グラフト化反応生成物を誘導することもでき、ここでエチレン性不飽和末端をスチレン、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、メタクリル酸、メチルメタクリレート又は2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸から選ばれる適した量のモノマーと典型的なラジカル重合法を介して共重合させることができる。
【0033】
別の好ましい形態において、好ましいPHSA-モノエタノールアミドに関し、これらに限られないが無水マレイン酸など又は2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸などを用いてスチレン又はスチレンの付加物から製造される現存する商業的に入手可能なコポリマー上にHSE付加物を直接グラフト化させる場合がある。
【0034】
芳香族を含む主鎖アンカーにグラフト化された残留量のスルホン酸部分を含む例の開発は、見かけの基剤親和性におけるさらなる向上及びかくして特にやっかいな分散相の安定化の向上を示した。アンカー部分中への残留レベルのアニオン性の導入のためのこの方法は特に実用的であり、それは、分散剤中の過剰のアニオン性の存在は、脂肪族系において用いられる場合に、分散安定性の点でおそらく有益であるとは言え、限界を与え得るからである。これらはほとんど、アニオンの豊富なNADsのグリース様の挙動の可能性の故の限られた溶解性、望ましくない流動学的現象の可能性及び劣った取り扱い特性に関連する。
【0035】
本発明は、特にやっかいな有機有害生物防除剤化学の非水性分散系安定性における顕著な向上を示した。これはOD技術の主流の採用を妨げている産業全体の問題であった全体的な調製物の安定性におけるその後の向上を提供し得るということが前提とされる。本発明の主な利点は、非水性液中の微粉砕された有害生物防除剤の分散系の有意に向上した安定性に関し、それは続いて得られるOD調製物の安定性を向上させる。
【0036】
分散性能における向上は、非水性有害生物防除剤濃厚ミルベース(non-aqueous pesticidal millbase concentrates)の視覚的及び流動学的観察を介して同定された。本開示により記載される好ましい反応生成物の使用を介して達成される重要な向上には、「落下フィルム」主観的チンダル現象評価(“falling film” subjective Tyndall scattering ratings)及び顕微鏡法により観察される可視の凝集における有意な減少;濃厚液安定性における向上、すなわちペースト又はマスタード様外観として現れる異常な不安定化効果の欠如;向上した分散剤性能の指標である流動学的検査により観察される濃厚ミルベースの粘度における一貫した低下が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図の簡単な記述
本発明を容易に理解し、実施するために、ここで付随する図を参照して本発明の態様に言及する。図は例としてのみ提供する。
【
図1】
図1は実施例8Aないし8Mにおいて例示される濃厚ミルベースの流動学的比較を示すグラフである。
【
図2】
図2は
図1の拡大(expanded)又は拡大(zoomed-in)図である。
【
図3】
図3は一次(primary)濃厚ミルベースシリーズAの20倍における顕微鏡写真画像を描いている。
【0038】
発明の詳細な記述
縮合物は、その最も好ましい形態においてPHSA-モノエタノールアミド付加物とスチレン-無水マレイン酸(“SMA”)のコポリマーの間の縮合の反応生成物であり、ここで好ましいコポリマーは1:1のスチレン:無水マレイン酸比及びMn=2100g/モルを有するSMA-1000(Polyscope Polymers BV)である。PHSA-モノエタノールアミド付加物の化学量論は、コポリマーの酸価に基づく化学量論的当量に等しいか又は最も好ましくはそれ未満に減じられている。MEAとの予備縮合において用いられるPHSAは、理想的には約25ないし50mg KOH/gの酸価により決定される1000g/モルより大きい分子量を有するであろう。
【0039】
最も好ましくは、PHSA-モノエタノールアミド付加物の化学量論は、コポリマーの酸価に基づく化学量論的当量未満に減じられ、タウリンとの共縮合を可能にする。
好ましい態様
【0040】
反応物の好ましい構造は以下の通りである:
H-(OA)m-NH
2
(1)
式中:Aはエチレン又はプロピレン基であり、そして;
m=>1である;
【化1】
式中:R
1=C
5-C
30アルキル又はアルキレンであり;
x=>1である;
【化2】
式中:k=1-8であり;
m=1であり;そして
nは1000ないし20,000のコポリマー分子量、Mnを与える数字である;ならびに
【化3】
式中:X=Nであり、n=2であるか;
又はX=Oであり、n=1であり;
R
1=C
2-C
30アルキル又はアルキレン或いは置換又は非置換芳香族基であり、
Y=H又はNaである。
【0041】
1つの好ましい形態において、反応物(1)と反応物(2)の反応から生成する縮合物をさらに反応物(3)のコポリマーと、それぞれ約1:1の化学量論比で反応させ、縮合物を形成する。より好ましくは、反応物(1)はモノエタノールアミンであり、反応物(2)はポリヒドロキシステアリン酸であり、反応物(3)はSMA-1000である。
【0042】
別の好ましい形態において、反応物(1)、反応物(2)及び反応物(4)のω-アミノ又はヒドロキシ-アルキルスルホン酸の反応から生成する縮合物を反応物(3)のコポリマーと、それぞれ約0.9:0.1:1の化学量論的比で反応させて縮合物を形成する。より好ましくは、反応物(1)はモノエタノールアミンであり、反応物(2)はポリヒドロキシステアリン酸であり、反応物(4)は2-アミノエタンスルホン酸であり、反応物(3)はSMA-1000である。
【0043】
さらに別の好ましい形態において、上記の縮合物をNaOHのような適した薬剤を用いてさらに中和する。
【0044】
さらに別の好ましい形態において、反応物(1)、反応物(2)及び反応物(4)のω-アミノ又はヒドロキシ-アルキルスルホン酸のナトリウム塩の反応から生成する縮合物を反応物(3)のコポリマーと、それぞれ約0.9:0.1:1の化学量論的比で反応させて縮合物を形成する。より好ましくは、反応物(1)はモノエタノールアミンであり、反応物(2)はポリヒドロキシステアリン酸であり、反応物(4)は2-アミノエタンスルホン酸ナトリウム塩であり、反応物(3)はSMA-1000である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
実施例
製造
【実施例1】
【0046】
PHSA-モノエタノールアミド付加物(“PHSA-MEA”)
【表1】
【0047】
オーブン中で60℃において予備加熱されたPHSAを窒素雰囲気下で2Lのフランジ
付きフラスコ(flanged flask)中に装入した。温度プローブ及びサーモスタット制御の加熱マントルが供えられたDean-Starkトラップを用いてフラスコを還流プロセスとして組み立てた。次いでフラスコにMEA及びキシレンを装入し、反応混合物を170℃に設定した。酸価が1mg KOH/gより低い値で水平になったら、反応は完了したとみなされた。続いてDean-Starkトラップの内容物を排出させ、溶媒を除去せずに生成物を単離した。
最終的な生成物:暗褐色粘性の液体
反応時間:440分
見積もられるMW:1791.3g/モル
酸価(開始時):28.2mg KOH/g
酸価(最終的):0.72mg KOH/g
固体: 92.6%
単離収量: 1661.81g,96.6%
【実施例2】
【0048】
1:1の化学量論比で反応させたSMA-1000/PHSA-モノエタノールアミド(“DS 11144”)
【表2】
【0049】
温度プローブ、窒素流入口、一般的な入/出口及びサーモスタット制御のホットオイルサーキュレーター(hot oil circulator)が供えられたDean-Starkトラップを用いて還流プロセスとして組み立てられたジャケット付きの1LのRadley’s Reactor Ready Lab Reactorに、実施例1に記載した通りに製造された溶融PHSA-MEA付加物を窒素雰囲気下で装入し、設定温度を50℃に調整した。設定温度に達したら、固体SMA-1000(Polyscope Polymers BV)を反応器中に加えた。反応器中の混合物が不均一になったら、Dean-Starkトラップ及び反応器中にキシレンを加え、反応温度を150℃に調整した。152℃において反応混合物は可溶化されたようであり、設定温度を190℃に上げた。反応混合物を190℃で120分間保ち、反応混合物がより透明になり、マットホワイトからオレンジ色に変わったことが認められた。反応混合物を150℃に冷まし、次いでテトラ-/7-ブチルチタネート触媒(“TnBT”,Tyzor(登録商標) TnBT,Dorf Ketal Chemicals,LLC)を加え、設定温度を205℃に調整した。反応混合物をこの温度で232分間保った。この時間を経て、生成物はわずかに暗くなった。生成物を冷まし、次いで93℃において反応器フラスコから暗褐色、オレンジ色の粘性の液体として単離した。
最終的な生成物:暗褐色、オレンジ色の粘性の液体
反応時間:628分
酸価(開始時):16.8mg KOH/g
酸価(最終的):4.7mg KOH/g
固体: 90.0%
単離収量: 479.8g,89%
FTIR/ATR主要ピーク:2923,2853,1731,1464,1174,7
00cm-1-Bruker Alpha
粘度:測定不可能
【実施例3】
【0050】
1:0.9:0.1の化学量論比で反応させたSMA-1000/PHSA-モノエタノールアミド/タウリン(“DS 11114”)
【表3】
【0051】
温度プローブ、窒素流入口、一般的な入/出口及びサーモスタット制御の加熱マントルが供えられたDean-Starkトラップを用いて還流プロセスとして組み立てられた1Lのフランジ付きフラスコ中に、実施例1に記載した通りに製造された溶融PHSA-MEA付加物を窒素雰囲気下で装入し、温度を60℃に設定した。設定温度に達したら、加熱しながら水中に溶解されたタウリン(Scharlau,AR Grade)を固体SMA-1000と一緒にDean-Stark反応器に装入し、キシレンを用いて洗い入れた。反応温度を150℃に上げ、その温度で90分間保ち、続いてTnBT触媒を加えた。次いで設定温度を205℃に上げ、反応混合物をこの温度で490分間保った。この時間の間に第2の量のTnBT触媒を330分後に加えた。続いて水酸化ナトリウム水溶液を用い、スルホン酸部分を50%モル当量の目的レベルまで部分的に中和し、30分間攪拌した。生成物を冷まし、次いで109℃においてフラスコから暗褐色、オレンジ色の粘性の液体として単離した。
最終的な生成物:暗褐色、オレンジ色の粘性の液体
酸価(開始時):6.64mg KOH/g
酸価(最終的):0.95mg KOH/g
固体: 93.5%
単離収量: 408.47g,80%
FTIR/ATR主要ピーク:2923,2853,1731,1464,1174,700cm-1-Bruker Alpha
粘度:39℃において2762cP-Brookfield,Spindle #3,RPM=30
【実施例4】
【0052】
1:0.9:0.1の化学量論比で反応させ、NaOHを用いてその場で中和したSMA-1000/PHSA-モノエタノールアミド/タウリン(“DS 11145”)
【表4】
【0053】
温度プローブ、窒素流入口、一般的な入/出口及びサーモスタット制御の加熱マントルが供えられたDean-Starkトラップを用いて還流プロセスとして組み立てられた1Lのフランジ付きフラスコ中に、実施例1に記載した通りに製造された溶融PHSA-MEA付加物を窒素雰囲気下で装入し、温度を60℃に設定した。設定温度に達したら、加熱しながら水中に溶解されたタウリンを固体SMA-1000と一緒に反応フラスコ中に装入し、キシレンを用いて洗い入れた。反応混合物の温度を124℃に上げ、それが均一になるまで還流に保った。反応温度を150℃に上げ、その温度で150分間保ち、続いてTnBT触媒を加えた。設定温度を205℃に上げ、反応混合物をこの温度で300分間保った。第2の量の触媒を加え、測定される酸価が水平になるまで205℃の設定点において583分間反応を続けさせた。続いて反応器中にシリンジを介して直接加えられる水酸化ナトリウム水溶液を用い、スルホン酸部分を90%モル当量の目的レベルまで部分的に中和し、193℃で30分間攪拌した。次いで反応混合物を取りおいて冷まし、その後に生成物を108℃において反応器フラスコから暗いオレンジ色の粘性の液体として単離した。
最終的な生成物:暗いオレンジ色の粘性の液体
酸価(開始時):6.60mg KOH/g
酸価(最終的):0.80mg KOH/g
固体: 87.7%
単離収量: 416.00g,89%
FTIR/ATR主要ピーク:2923,2853,1731,1464,1174,700cm-1-Bruker Alpha
粘度:38.5℃において4610cP-Brookfield,Spindle #3,RPM=20
【実施例5】
【0054】
1:0.9:0.1の化学量論比で反応させたSMA-1000/PHSA-モノエタノールアミド/ナトリウムタウレート(“DS 11145”)
【表5】
【0055】
温度プローブ、窒素流入口及び一般的な入/出口が供えられたDean-Starkトラップを用いて還流プロセスとして組み立てられた1Lのフランジ付きフラスコ中に、溶融PHSA-MEA誘導体を窒素雰囲気下で装入し、温度を60℃に設定した。設定温度に達したら、ナトリウムタウレートを固体SMA-1000と一緒に反応器中に装入し、EXXSOL D60を用いて洗い入れた。設定温度を180℃に設定し、反応混合物をこの温度で約9ないし10時間保った。次いで反応混合物を取りおいて冷まし、その後に生成物を約100℃において反応器フラスコから暗いオレンジ色の粘性の液体として単離した。
最終的な生成物:褐色の粘性の液体
酸価(最終的):2.24mg KOH/g
固体: 90.7%
単離収量: 516.2g,92%
【実施例6】
【0056】
0.92:1.00:0.46の化学量論比で反応させ、NaOHを用いてその場で中和したSMA-1000/PHSA-モノエタノールアミド/タウリン(“DS 11146”)
【表6】
【0057】
温度プローブ、窒素流入口、一般的な入/出口及びサーモスタット制御の加熱マントルが供えられたDean-Starkトラップを用いて還流プロセスとして組み立てられた1Lのフランジ付きフラスコを用いた。フラスコに、実施例1に記載した通りに製造された溶融PHSA-MEA付加物を窒素雰囲気下で装入し、温度を60℃に設定した。反応器に熱水中に溶解されたタウリンをスラリとして、固体SMA-1000と一緒に装入し、キシレンを用いて洗い入れた。設定温度は150℃であり、150分間保たれた。TnBT触媒を加え、温度を205℃に設定した。第2の量の触媒を加え、205℃の設定点において610分間反応を続けさせ、その後測定された酸価は水平になった。続いて反応器中にシリンジを介して直接加えられる水酸化ナトリウム水溶液を用い、スルホン酸部分を90%モル当量の目的レベルまで部分的に中和し、205℃で200分間攪拌した。次いで反応混合物を取りおいて冷まし、その後に生成物を約100℃において反応器フラスコから暗褐色オレンジ色の粘性の液体として単離した。
最終的な生成物:暗褐色オレンジ色の粘性の液体
酸価(開始時):9.64mg KOH/g
酸価(最終的):7.40mg KOH/g
固体: 94.5%
単離収量: 384.25g,80%
FTIR/ATR主要ピーク:2923,2853,1731,1464,1174,700cm-1-Bruker Alpha
粘度:50℃において7137cP-Brookfield,Spindle #4,R
PM=50
【実施例7】
【0058】
1:0.9:0.1の化学量論比で反応させたSMA-3000/PHSA-モノエタノールアミド/ナトリウムタウレート(“DS 11224”)
【表7】
【0059】
温度プローブ、窒素流入口及び一般的な入/出口が供えられたDean-Starkトラップを用いて還流プロセスとして組み立てられた1Lのフランジ付きフラスコ中に、溶融PHSA-MEA誘導体を窒素雰囲気下で装入し、温度を60℃に設定した。設定温度に達したら、ナトリウムタウレートを固体SMA-3000と一緒に反応器中に装入し、EXXSOL D60を用いて洗い入れた。設定温度を180℃に設定し、反応混合物をこの温度で約9ないし10時間保った。次いで反応混合物を取りおいて冷まし、その後に生成物を約100℃において反応器フラスコから暗いオレンジ色の粘性の液体として単離した。
最終的な生成物:褐色の粘性の液体
反応時間:780分
酸価(最終的):3.40mg KOH/g
固体: 92.0%
単離収量: 317.1g,90%
粘度:測定せず
【実施例8】
【0060】
適用実施例
NADsの基本的な性能を確証するために、濃厚ミルベースについて表1の通りに評価を行った。適した予備混合容器(pre-mix vessel)にYUBASE 3を加え、続いてNADを加え、次いで活性成分を加えることにより、濃厚ミルベースを調製した。磁気撹拌機を用いて混合物を短時間攪拌し、粗いスラリを形成した。次いで混合物にLaboratory Mini 100 Horizontal Mill(Engineered Mills and Mixers,Inc.)を通過させた。プロセスは、500から1000RPMまでの低い回転速度で運転される粉砕装置中に濃厚液をゆっくり供給することを含み、ここでミルの磨砕室には1から1.6mmまでの直径のガラス又はより好ましくはジルコニウム-シリケート磨砕媒体が全体積容量の60から80%まであらかじめ装填されており、被覆された冷却剤の温度は15から25℃までの外的に制御される温度にあらかじめ設定され、保持された。30から45分までの時間に及んで回転速度を2000から2500RPMまでゆっくり上昇させ、0ないし100 Grind Gauge又は8ないし0 Hegman Gaugeを用いる概算により決定される約5pmの平均(d0.5)粒度を有する濃厚液を与えた。顕微鏡的概算によりさらに粒度分析を決定した。次いで濃厚液を用い、現存する商業的水準を含むNADsを比較し、その詳細を表2及び3において下記に示す。
【表8】
【0061】
【0062】
【0063】
結果の議論
流動学的比較-濃厚ミルベース
関連する水性農業用濃厚懸濁液(“SC”)と良く似て、OD調製物も優先的には濃厚ミルベースの調製を介して調製され得る。SC又はOD調製物が商業的に実現可能であるためには、その濃厚ミルベースは適切に低粘度のものであって有効な粉砕を可能にし、且つ一般に製造非効率又は製造不良にさえ導く傾向がある過剰のチキソトロピー又はダイラタンシーのような流動学的現象がないことが必要である。
【0064】
濃厚ミルベースの低い粘度は、有効な分散剤の性能を反映している傾向があり、ここで前記性能はもちろん有効な磨砕のために重要であるのみでなく、完全な調製された濃厚懸濁液(complete formulated concentrated suspensions)全体の安定化のための柱である。しかしながら、特に農業用OD調製物の場合、適切に低い粘度の濃厚ミルベース又は凝集挙動及び流動学的挙動の観察により決定される時に満足できるほど安定な濃厚ミルベースを得ることは、一般に大変困難であることを本発明者らは見出した。本発明者らは、農薬NAD技術における根本的な欠陥及びそれが生み出す特別な課題が非水性OD調製物の技術の成長を制限してきた重要要素であると主張する。
【0065】
便利なことに、与えられる油/溶剤混合物中における基本的なNAD性能の特性化は、濃厚ミルベースの簡単な視覚的及び流動学的評価により得られ得る(can be approached)。この方法の利点は、多くの場合に濃厚液が乳化剤及び流動学改変剤(rheology modifying agents)のような他の重要調製要素の存在から生ずる有意な複雑性を含まないであろうことである。
【0066】
この場合、濃厚ミルベースの調製から24時間以内に簡単な視覚的評価を行い、続いてその後の週に一般的な再検査を行った。流動学的実験はMalvern Kinexus
Pro Rheometerを介し、25℃の固定温度において、40mmステンレススチール平行プレート幾何学を150μmのギャップにおいて用いて行われた。流動学的実験は、せん断粘度対せん断速度を評価する簡単な流動曲線に限られた。NADの有効性における変動は、粒子-粒子動力学における変化を介して分散系の流動学的特性に影響するであろうと予想され得る。これらの挙動をレオメーターの使用を介し、流動型(flow-type)又は振動測定を介して調べることができる。
【0067】
この場合本発明者らは、植物成長調整剤、チジアズロン(thidiazuron)が欠陥のある技術に帰せられ得る劣った分散剤性能の同じ指標的特徴を一貫して示すことを見出し、それは以前に他の有害生物防除剤活性成分を含むOD調製物の開発を試みる時に観察されていた。しかしながら、おそらく普遍的なNAD性能の評価のためのチジアズロンの重要な有用性は、これらの特徴が容易に観察可能な流動学的異常、特に望ましくないチキソトロピーを伴うことである。これらの変化はより単純な流動評価により容易に定量され、ここでNAD性能における小さい低下でさえ低せん断粘度における桁の増加として容易に観察された。
【0068】
図1及び
図2は、向上したNAD性能と有意に低下したせん断粘度の間の相関性を示す。TERSPERSE(登録商標) 2510、TERSPERSE(登録商標) 4850及びHYPERMER(登録商標) LP-3のような現存する利用可能な技術の使用は不適切な粘度を与え、それは
図3により例示される通り凝集に帰せられ得ることが直ちに明らかである。しかしながらTERSPERSE(登録商標) 2520及びTERSPERSE(登録商標) 4890のような他の利用可能な技術は有効な性能及びチキソトロピーにおける有意な低下を与えてしまう。しかしながら前者は実施例8Eにより例示される通り、時間の関数として悪化し、一方後者はこの及び関連する技術の商業的実行可能性を制限する低リスクポリマーの基準を満たしていない。
【0069】
SMA主鎖の使用を介する両親媒性における相対的な低下に帰せられ得る驚くほど強化されたNAD性能は、実施例8G(DS 11144)により最初に示される。概念的な櫛型グラフトコポリマーは、相対的なアンカー基の類似性の比較に基づき、より従来的なA-B-型分散剤、TERSPERSE(登録商標) 4850に機能的に類似であると予測されるが、それにも関わらずDS11144では低せん断粘度が4分の1ないし5分の1に低下した(reduced by a factor of 4 to 5)。
【0070】
実施例8Hから8Mは、タウリンの共縮合によるさらなる誘導体化を介して達成される顕著な向上を示す。DS1 1114、DS1 1145、DS11146及びDS11124の使用はそれぞれやっかいなチキソトロピーの有効な除去及び水準のTERSPERSE(登録商標) 4890と同等の性能を与える。さらに特定的に、4つのNADsのすべては、この場合もアンカーの化学の単純な比較に基づき、水準のアニオン性NAD、HYPERMER(登録商標) LP-3に機能的に類似であることが予測され、ここでHYPERMER(登録商標) LP-3は顕著により両親媒性であり、且つここで実施例H及び8Iの流動曲線の比較により証明される通り、イオン性は全体的な性能に関して非常に影響力があることが示された。比較的ではあるが、DS111 14、DS11
145、DS1 1146及びDS1 1224は粘度を大体200分の1に低下させ、この場合もSMA主鎖の利用を介する概念的な両親媒性の低下の驚くべき効果を強調している。
【0071】
さらに、実施例8Mにより例示される通り、DS 11224の比較的強い性能はSMA-アンカーの驚くべき有効性をさらに強調し、ここでSMA-1000をSMA-3000に置き換えることによる主鎖スチレン含有率の3倍の増加及び続く両親媒性におけるさらなる低下は有意な性能の損失を与えると予測された。
【0072】
顕微鏡法
上記の通り、流動学的現象は凝集の存在に直接相関し、それは不足した分散剤性能に帰せられる。
【0073】
この相関は、濃厚ミルベースの顕微鏡写真画像を示す
図3により視覚的に観察可能である。顕微鏡写真法は付属カメラシステムが取り付けられたOlympus BX43 Microscopeにより達成された。最初に観察されるべき懸濁液の3ないし4滴を約10mlのYUBASE 3中で希釈することにより濃厚ミルベースを観察した。次いで試料を短時間攪拌し、次いで適した寸法のガラススライド上に注意深く滴下し、カバーガラスで注意深く覆った。
【0074】
それぞれDS 11 114、DS 1 1145、DS 11146及びDS 11224を用いる実施例8H、8J、8L及び8Mの顕微鏡写真は、流動学的評価を支持して、SMAに基づくアンカー部分の驚くべき有効性のおかげの凝集の除去に帰せられ得る材料の性能における相対的な向上を明白に示す。
【0075】
「含む」(comprise)、「含む」(comprises)、「含む」(comprising)、「含む」(include)、「含む」(includes)、「含まれる」(included)又は「含む」(including)という用語が本明細書で用いられる場合、それらは記載され言及される特徴、整数、段階又は成分の存在を規定する(specifying)と解釈されるべきであり、1つ以上の他の特徴、整数、段階、成分又はそれらの群の存在又は追加を排除するべきではない。
【0076】
さらに、明細書中で与えられるいずれの先行技術の参照又は記述も、そのような技術が通常の一般的な知識の一部を構成するか又は構成すると理解されるべきであることの承認と理解されるべきではない。
【0077】
当業者は、本発明の実施において、特定的に例示されたもの以外の材料及び方法を不必要な実験に頼ることなく用いることができると認識するであろう。そのような材料及び方法の当該技術分野において既知のすべての機能的同等事項(functional equivalents)が本発明に含まれることが意図されている。用いられた用語及表現は記述の用語として用いられ、制限の用語として用いられておらず、そのような用語及び表現の使用において、示され、記載されている特徴又はその一部の同等事項を排除する意図はなく、特許請求されている本発明の範囲内で種々の修正が可能であることが認識される。かくして本発明を実施例、好ましい態様及び任意的な特徴により特定的に開示してきたが、当業者は本明細書に開示される概念の修正及び変形に頼ることができ、そのような修正及び変形は、添付の請求項により定義される本発明の範囲内であると考えられることが理解されるべきである。