(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】フリーリフトピストン付の水平ガス圧縮機
(51)【国際特許分類】
F04B 39/00 20060101AFI20230809BHJP
【FI】
F04B39/00 107
(21)【出願番号】P 2020555044
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 RO2019000016
(87)【国際公開番号】W WO2020013722
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-02-21
(32)【優先日】2018-06-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】RO
(73)【特許権者】
【識別番号】520384806
【氏名又は名称】コンプレッサー・ポンプ・インダストリアル・エスアールエル
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100117640
【氏名又は名称】小野 達己
(72)【発明者】
【氏名】プロダン,マリアン
【審査官】中村 大輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-153563(JP,A)
【文献】特開2017-020500(JP,A)
【文献】特開昭62-067262(JP,A)
【文献】特開2005-265152(JP,A)
【文献】特開昭62-020967(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0074259(US,A1)
【文献】国際公開第2014/139565(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/00-39/16
F04B 23/00-23/14
F04B 25/00-37/20
F04B 41/00-41/06
F04B 53/00-53/22
F02F 1/00- 3/28
F02M 59/02
F02M 59/10
F16J 1/00- 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピストン(11)を有するフリーリフトピストン付の往復ガス水平圧縮機であって、クランクケース(29)、クランクシャフト(28)、クロスヘッド(26)、ディスタンスピース(23)、シリンダ(8)、
前記シリンダ(8)の内面に設けられたシリンダライナ(6)、ピストンロッド(7)、オイルワイパーケース(24)、補助ガスケース(20)、メインガスケース(1)、いくつかの吸引バルブ(14)、およびいくつかの排出バルブ(18)を含む、往復ガス水平圧縮機において、前記ピストン(11)は、いくつかの真っ直ぐな端部と、いくつかの傾斜した圧縮室(m),(k)であって、傾斜したシリンダヘッド要素(32)からのゾーン(n)と傾斜したシリンダヘッド要素(33)からのゾーン(p)と共に、ガス圧縮及びピストン(11)の交互の移動によるフリーリフトのために前記シリンダ(8)の各端部に1つずつ、前記シリンダ(8)内に2つの傾斜したガス圧縮室を形成する、圧縮室(m),(k)とを有し、いくつかの永久磁石(30)が前記ピストン(11)の下部に2つ以上の列で固定され、いくつかの永久磁石(31)が前記シリンダライナ(6)の下で前記シリンダ(8)内に固定され、永久磁石(30)で生成された領域に対して対向し、摩擦無しでまたは低摩擦で、フリーリフト及びスライド効果を同時に発生させる磁界を有することを特徴とする、往復ガス水平圧縮機。
【請求項2】
請求項1に記載の往復ガス水平圧縮機において、シリンダ(8)は両端にいくつかの傾斜した圧縮室であって、ピストン(11)内への2つの傾斜した圧縮室(m),(k)とシリンダヘッド(17)に固定された傾斜したシリンダヘッド要素(32)と、反対側の端部でシリンダヘッド(2)に固定されたシリンダヘッド要素(33)とで形成され、それぞれゾーン(n),(p)である、圧縮室を有することを特徴とする、往復ガス水平圧縮機。
【請求項3】
請求項1または2に記載の往復ガス水平圧縮機において、前記ピストン(11)は、傾斜面を有する2つのガイドブッシュ(5,12)がピストンロッド(7)上に取り付けられて、いくつかのシリンダヘッド(2),(17)に属するいくつかのシリンダヘッド要素(32),(33)の傾斜面(n),(p)と共に、ストロークの終端におけるクリアランスの制限内で、2つの前記シリンダヘッド(2),(17)からのエリア(n),(p)に対して、前記ピストン(11)のフリーリフトを可能にする2つのガス圧縮室をそれぞれ形成することを特徴とする、往復ガス水平圧縮機。
【請求項4】
請求項1乃至3に記載の往復ガス水平圧縮機において、シリンダ(8)は、ピストン端部からの傾斜した圧縮室(m),(k)と同様の傾斜角を有する、傾斜したエリア(n),(k)を有する1つのシリンダヘッドを両端に有し、前記ピストン(11)のストロークの各終端におけるクリアランスを保持することを特徴とする、往復ガス水平圧縮機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製油所、石油化学、化学工業からのガスを圧縮するための産業用途、貯蔵、圧縮、メタンガス輸送、または空気圧縮などで使用されるシリンダおよびフリーフロート(free floating)ピストンを備えた水平ガス圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
水平ピストン圧縮機の製造の一般的な解決策としては、特に以下に関連する解決策が知られている。
2014年9月18日に公開されたHowden Thomassen Compressors BVに属する特許番号WO2014139565A1には、そこに記載されたフリーリフト(free lifting)ピストンを備えてガスピロー上をスライドする往復水平圧縮機の技術的な解決策を含んだ特許が含まれている。
【0003】
発明者がProdan Marianであり、2017年6月30日にBOPI 6/2017で公開されたCompressor PumpIndustrialの特許出願A201500959は、傾斜したヘッドピストンを備えた往復水平圧縮機に関している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
WO2014139565A1の特許の不利な点:
圧縮室からの高温ガスから来る、ガスピロー(gas pillow)として使用されるガスは、冷却されることなくピストンのノズルを通過し、吸引部からの冷たいガスと混合することによって他方の圧縮室に到達する。吸引された低温ガスは、吸引された低温ガスがガスピローからの高温ガスと混合されることにより吸引温度が上昇する。
【0005】
ガスピローからの高温ガスは、ガスピローノズルから排出されるときに、ライダー(rider)リングエリアに追加の熱を提供し、低温ガス吸引サイクルから吸引ガスへの放熱を防ぎ、グラファイトテフロン(登録商標)または他の材料で作られたライダーリングのレベルにおける温度を上昇させ、ライダーリングの摩耗率を上昇させる。
【0006】
ピストンの下部にあるガス出口の孔は、ライダーリングと交差しており、ピストン上に延びるように取り付けられた単一の部品で作られている場合、ガスピロー状態を実現できるという、複雑な解決策である。
【0007】
ガスピローを実現するために作られたピストンの下部にある、バルブを有するまたは有さない吸引オリフィス、およびバルブを有するまたは有さない排出オリフィスおよび/またはオリフィスは、ガス中に存在する混入物質で簡単に詰まる可能性があり、ガスピローを実現できないという効果がある。
【0008】
ピストンの内部に入る混入物質は、圧縮機をシャットダウンし、ピストンサブアセンブリを完全に取り外すことによってのみ清掃されることができる。
ガスピローを実現するガスの積層の条件は、形状におけるミクロンの狂いと接触する表面の相互条件の達成を含み、この発明が言及する中規模および大規模のプロセスガス圧縮機では実際に達成することは不可能な条件である。
【0009】
ガスピローを実現するために、各ライダーリングに1つのオリフィスが設けられている場合に圧縮機の流れからのガスの損失はかなりのものになり、2つの孔によって達成されるガスピローの大きさが小さいことにより、運搬能力の観点から、2つの孔はいかなるピストンサイズにも適合することができないことも、各ライダーリングにより多くのオリフィスを有するガスピローオプションの達成について言及されており、これにより、より高いデビット(debit)ロスとなる。
【0010】
圧縮段階および吸引圧力から排出圧力への圧力の増加による長さストロークに沿ったガス圧力の変化は、ピストン内の脈動およびガス圧力の変化となり、これにより、ガスピローを達成するためのピストンの底部におけるガスの排出圧力は、ガス条件の積層を維持する際の不連続となり、ストローク長にかけてのピストンとシリンダライナとの間のガスピローの脈動が達成され、およびフリーリフト効果の脈動が低下する。
【0011】
特許出願番号A201500959の不利な点:
傾斜した圧縮室内に真っ直ぐな端部を有するフリーリフトピストンを可能にする、傾斜した圧縮室を有するピストンを備えた水平圧縮機の製造を可能にしていない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によって解決された課題は、真っ直ぐなヘッドのために、古典的な形式の真っ直ぐなヘッドピストンについて、既存の圧縮機または新たな圧縮機に適応可能な、最小限の構造的改良で傾斜した圧縮室内でフリーリフトされる、真っ直ぐな端部および傾斜した圧縮室を有する複動式のシリンダおよびピストンを備えた水平ガス圧縮機の製造に関する。
【0013】
本発明による、フリーリフトピストン付水平ガスピストン圧縮機は、ピストンの両端に1つずつ、ストレートヘッドピストン及び傾斜圧縮室と、既存のシリンダに取り付けられた頂部が傾斜したシリンダヘッドと、ピストンおよびシリンダに、永久磁石サポートで構成されてシリンダ内部の長さストローク上、及び、磁気ピロー上でピストンを追加的にガイドして摩耗を含む重量及び摩擦力を低減させる領域を追加的に装備させることとを共に用いることにより、上述の欠点を解消する。
【0014】
フリーリフトピストン付水平ガス圧縮機には、以下の利点がある。
真っ直ぐなピストンヘッドと傾斜した圧縮室および磁気ピローを備えた圧縮機の建設的な解決策は、圧縮機の用途や大きさに関係なく、簡単に言えば、重量、摩擦、摩耗を低減させ、ピストンの真っ直ぐな頂部形状を保つ。
【0015】
圧縮機内のピストン及びピストンロッドのフリーリフトは、通常の動作条件下ではガス混入物質の影響を受けない。
圧縮機内のピストン及びピストンロッドのフリーリフトは、排出から吸入までの追加の流量損失を含まない。
【0016】
圧縮機内のピストンのフリーリフトは、ピストンヘッドの傾斜面に圧力を直接作用し、磁気ピロー上をスライドすることによって行われる。
ピストンをフリーリフトするためにピストンを加圧する必要がない。
【0017】
吸引ガスは排出ガスによって加熱されない。
圧縮機内のピストンのフリーリフトは、既存のまたは新規に設計された圧縮機の動作条件及び寸法に従って設計されることができ、傾斜した圧縮室及び/または磁気ピローと一緒にまたは個別にフリーリフトピストンの解決策を共に用いる可能性を有している。
【0018】
ピストンの全長、ライダーリング及びピストンリングの既存の位置および寸法は維持され、これには、シリンダ内のピストンとバルブオリフィスとの相対位置によって与えられる既存の制限が含まれ、それらの相対的な位置を変更する必要はなく、圧縮室をピストンヘッド内で傾斜させることを可能にすることを維持する。
【0019】
選択された構成のいずれかで、必要性および/または改装がより適用しやすい技術仕様の条件に応じて、フリーリフト効果を同時にまたは個別に実現する可能性を有して、磁気ピローを導入することにより、シリンダライナ内のピストンが、低摩擦で、ストロークの全長にわたってスライドする可能性を拡大させる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】フリーリフトピストン付水平ガス圧縮機の断面図を示す。
【
図2】永久磁石を備えた、傾斜したヘッドと傾斜した圧縮室とを有する水平ガス圧縮機のシリンダ断面図を示す。
【
図3】永久磁石を備えた、ピストン及びシリンダライナの断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下を示す
図1乃至3を参照して、本発明の例を説明する。
水平圧縮機ガスピストン圧縮機は、クランクシャフト(28)が取り付けられたクランクケース(29)、ボルト(25)を介してクロスヘッド(26)に固定されたコネクティングロッド(27)を含み、クロスヘッドボディ(23)内にピストンロッド(7)をいくつかの離れた部分(22,21)とシリンダボディ(8)との中に交互に駆動させる。クランクケースからのオイルの分離は、オイルワイパーケース(24)を介して行われ、圧縮室のガスシールは、補助ガスパッキン(20)とメインガスパッキン(1)とを介して行われる。圧縮ガスの吸引及び排出は、いくつかのバルブカバー(15,19)に固定された一部のバルブ(14,18)を介して行われる。円筒形ライナ(6)を含むシリンダ圧縮機(8)は、シリンダヘッド(17)に取り付けられたシリンダヘッドエレメント(32)の領域(n)およびシリンダヘッド(2)に取り付けられたシリンダヘッドエレメント(33)のゾーン(p)と同じ角度および同じ平面の直線端と傾斜した圧縮室(k),(m)とが設けられたいくつかのガイドブッシング(5,12)を備えた改良ピストン(11)を直線的かつ交互に移動させ、それを通してピストン(11)がストローク長さでフリーリフトされる。ピストン(11)は、ピストンナット(13)を介してピストンロッド(8)に取り付けられ、ピストン(11)のいくつかのチャネルに配置されているいくつかのライダーリング(10)を備えており、ストローク長に沿った、ガス圧縮およびシリンダ(8)に入るピストン(11)のシールのため、ピストン(11)のいくつかのチャネルに配置されたシリンダライナ(6)およびいくつかのピストンセグメント(9)と直接接触させることなく、ピストン(11)及びピストンロッド(7)の取り付けを確実にする。
【0022】
追加のフリーリフト効果と摩擦が低下した運動を実現するために、ピストン(11)に固定されているいくつかの磁石(30)とシリンダ(8)の外径かつシリンダライナー(6)の下部に固定されているいくつかの磁石(31)とが用いられている。
【0023】
ガスの吸引は、シリンダ(8)内のピストン(11)の長さストロークに沿っていくつかのバルブ(14)を介して行われ、ピストン(11)の戻りストロークでガスが圧縮され、いくつかの排出バルブ(18)が開いているとき、ストロークの終わりまで傾斜した室内のガス圧の作用によってフリーリフトされる。フリーリフト動作は、同時に行われ、シリンダヘッド(17)からシリンダ(8)のヘッド内へのガス吸引が行われると、ピストン(11)の交互の動きにおける各圧縮シーケンスでの現在のおよび交互の効果を有して、ピストン(11)のダブルストロークのときとは対称的に行われ、ピストン(11)とシリンダヘッド(2)及びシリンダヘッド要素(33)との間のガスの圧縮、及びそれぞれ、いくつかの吸引バルブ(14)を通るピストン(11)の戻りストロークにおけるガスの吸引およびピストン(11)とシリンダヘッド(17)およびシリンダヘッド要素(32)との間のガスの圧縮と同時に行われる。
【0024】
上記の発明は、開示された例だけに限定されるものではなく、それぞれ、単気筒を備えた水平圧縮機のみに限定されない。このソリューションは、多くのシリンダを備えた水平圧縮機にも適用されてもよい。