(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】自動のリング精紡設備及びリング精紡設備を自動で運転する方法
(51)【国際特許分類】
D01H 13/14 20060101AFI20230809BHJP
D01H 13/32 20060101ALI20230809BHJP
B65H 63/00 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
D01H13/14
D01H13/32
B65H63/00 Z
(21)【出願番号】P 2020566843
(86)(22)【出願日】2019-05-27
(86)【国際出願番号】 CH2019000017
(87)【国際公開番号】W WO2019227242
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-25
(32)【優先日】2018-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(32)【優先日】2018-08-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CH
(73)【特許権者】
【識別番号】503169552
【氏名又は名称】ウステル・テヒノロジーズ・アクチエンゲゼルシヤフト
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100191835
【氏名又は名称】中村 真介
(74)【代理人】
【識別番号】100208258
【氏名又は名称】鈴木 友子
(74)【代理人】
【識別番号】100221981
【氏名又は名称】石田 大成
(72)【発明者】
【氏名】アルクホントポウロス・ヴァシレイオス
(72)【発明者】
【氏名】ナラヤナン・ジファクマー
(72)【発明者】
【氏名】シュミット・ペーター
(72)【発明者】
【氏名】エッギマン・クルト
(72)【発明者】
【氏名】ガイター・パウル
【審査官】住永 知毅
(56)【参考文献】
【文献】実開昭58-117449(JP,U)
【文献】特開2017-053047(JP,A)
【文献】特開2016-194187(JP,A)
【文献】特開2017-002415(JP,A)
【文献】特開昭64-040628(JP,A)
【文献】特開平07-048739(JP,A)
【文献】特表平06-506507(JP,A)
【文献】特表平05-507529(JP,A)
【文献】特開昭61-178375(JP,A)
【文献】特開平02-289134(JP,A)
【文献】特開2011-020837(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01H1/00-17/02
B65H67/06
B65H63/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糸(92)を精紡するための複数の精紡部(21)を有するリング精紡機(2)と糸(92)を巻き返すための複数の巻取部(31)を有する巻取機(3)とを備えるリング精紡設備(1)を自動で運転する方法であって、
複数の精紡部(21)のうちの1つで糸を精紡し、コップ(91)に巻き取り、
精紡部(21)について、コップ(91)へと巻き取る間の精紡部(21)の運転についての特性パラメータの値を求め、精紡データとして保存し、
精紡データをコップ(91)に対応付け、
コップ(91)を精紡部(21)から取り外し、
取り外された後の複数の
巻取部(31)のうちの1つへのコップ(91)の供給について自動で決定するとき、コップ(91)に対応付けられた精紡データを考慮する、方法において、
精紡データに含まれる、精紡部(21)の運転についての特性パラメータは、リングトラベラ回転数を含み、
コップ(91)の巻取り時点の識別子と精紡部(21)の識別子とをコップ(91)に自動で対応付けし、
コップ(91)の巻取り時点の識別子と精紡部(21)の識別子とに基づいて、精紡データをコップ(91)に自動で対応付ける
ことを特徴とする、リング精紡設備を自動で運転する方法。
【請求項2】
精紡データと、コップ(91)の巻取り時点の識別子と、精紡部(21)の識別子とを、リレーショナルデータベースに保存し、
コップ(91)の巻取り時点の識別子と、精紡部(21)の識別子とを、リレーショナルデータベースにおいて、コップ(91)に対応付けられる精紡データを識別するためのキーとして用いる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
コップ(91)に識別キャリアを対応付け、
識別キャリアの識別データをリレーショナルデータベースに保存し、
コップ(91)の巻取り時点の識別子と、精紡部(21)の識別子とを、リレーショナルデータベースにおいて、コップ(91)に対応付けられる精紡データと識別キャリアの識別データとの両方を識別するためのキーとして用いる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
以下の複数の問合わせ、
・コップ(91)が巻取部(31)のうちの1つに供給されるか?
・どの巻取部(31)にコップ(91)が供給されるか?
・いつコップ(91)が巻取部(31)のうちの1つに供給されるか?
のうちの少なくとも1つについて決定を行う、請求項1から3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
それぞれ相互に類似した精紡データの少なくとも2つのクラスを形成し、
少なくとも2つのクラスのそれぞれについて決定を行い、決定の結果をそれぞれのクラスに対応付けし、
コップ(91)を、保存された精紡データに応じて、少なくとも2つのクラスのうちの1つのクラスに分類し、
取り外された後で、該当するクラスに対応付けられた結果に応じて、コップ(91)を扱う、請求項1から4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
精紡部(21)の運転についての特性パラメータは、さらに、時間単位あたりの糸切れの数と空気温度と空気湿度との少なくともいずれか1つを含む、請求項1から5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
自動のリング精紡設備(1)であって、
糸(92)を精紡し、それぞれコップ(91)へと糸(92)を巻き取るための複数の精紡部(21)を有するリング精紡機(2)と、
精紡測定量を測定するための精紡部(21)のそれぞれに設けられた精紡センサ(41)と、コップ(91)に巻き取る間に精紡センサ(41)から精紡測定量を受信し、そこから精紡部(21)の運転についての特性パラメータの値を求め、精紡データとして保存するように構成された、精紡センサ(41)に接続された精紡監視制御ユニット(43)とを有する、精紡部(21)の運転を監視するための精紡監視システム(4)と、
精紡部(21)からコップ(91)を取り外すための取外し装置と、
取り外されたそれぞれのコップ(91)から糸パッケージ(93)へと糸(92)を巻き返すための、複数の巻取部(31)を有する巻取機(3)と、
取外し装置により取り外されたコップ(91)を巻取部(31)に供給するための、供給制御ユニット(33)によって制御される供給システムと、
コップ(91)に精紡データを対応付けするための対応付けシステムと、
を備え、
供給制御ユニット(33)は、精紡監視制御ユニット(43)に接続されているとともに、
巻取部(31)のうちの1つへのそれぞれのコップ(91)の供給に関する決定を、対応付けシステムによってそれぞれのコップ(91)に対応付けられた精紡データを考慮して行うように構成されている、自動のリング精紡設備(1)において、
精紡監視制御ユニット(43)が、精紡部(21)の運転についての特性パラメータの値としてリングトラベラ回転数を求めて、精紡データとして保存するように構成されていて、
対応付けシステムが、
それぞれのコップ(91)の巻取り時点の識別子と、それぞれのコップ(91)が巻き取られた精紡部(21)の識別子とを、それぞれのコップ(91)に対応付けし、精紡データを、それぞれのコップ(91)に、それぞれのコップ(91)の巻取り時点の識別子と精紡部(21)の識別子とに基づいて対応付ける
ように構成されている
ことを特徴とする、自動のリング精紡設備(1)。
【請求項8】
対応付けシステムが、リレーショナルデータベースを含み、
リレーショナルデータベースは、
精紡データと、コップ(91)の巻取り時点の識別子と、精紡部(21)の識別子とを保存し、コップ(91)の巻取り時点の識別子と精紡部(21)の識別子とを、コップ(91)に対応付けられた精紡データを識別するためのキーとして用いる
ように構成されている
、請求項7に記載の自動のリング精紡設備(1)。
【請求項9】
対応付けシステムが、
コップ(91)に識別
キャリアを対応付け、
識別キャリアの識別データをリレーショナルデータベースに保存し、
リレーショナルデータベースにおいて、コップ(91)の巻取り時点の識別子と精紡部(21)の識別子とを、コップ(91)に対応付けられる精紡データと識別キャリアの識別データとの両方を識別するためのキーとして使用する
ように構成されている、請求項8に記載の自動のリング精紡設備(1)。
【請求項10】
精紡監視制御ユニット(43)が、
精紡部(21)の運転についての特性パラメータの値として、さらに、時間単位あたりの糸切れの数と空気温度と空気湿度との少なくともいずれか1つを求める
ように構成されている、請求項7から9のいずれか1項に記載の自動のリング精紡設備(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング精紡の分野にある。本発明は、独立請求項による自動のリング精紡設備及びリング精紡設備を自動で運転する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リング精紡設備は、通常、リング精紡機と巻取機とを有する。
【0003】
リング精紡機は、複数の精紡部を有する。各精紡部において、粗糸が、粗糸ボビンから引き出され、延伸され、撚られ(精紡され)、糸としてコップ(糸パッケージ)へと巻き取られる。精紡部の運転を監視する、例えば糸切れ又は「低速スピンドル」(つまり設定された機械回転数より下回る独自の回転数で作動するスピンドル)を検出するシステムが知られている。そのような精紡監視システムは、典型的には、それぞれのリングトラベラ(例えば米国特許4222657号明細書)又は糸(例えば国際公開第2014/022189号)の回転速度を測定する。前者のカテゴリには、リング精紡最適化システムUSTER(R) SENTINELが属し、これは、冊子“USTER(R) SENTINEL-The ring spinning optimization system”,Uster Technologies AG,2016に記載されている。リング精紡最適化システムUSTER(R) SENTINELは、コップ作製レポートを作成し、コップ作製レポートには、とりわけコップの長手軸線に沿った位置に依存する、糸切れの平均的な数及び平均的な回転速度がグラフ表示されている。コップ作製レポートは、モニタ上でオペレータに出力される。
【0004】
コップは、その作製後、リング精紡機から巻取機に運ばれる。巻取機内に位置するコップに、コップが作製された精紡部を対応付けることを可能にするコップ追跡システムが知られている。この対応付けは、例えばコップ巻管(例えば米国特許第4660370号明細書)又はコップを運ぶボビン皿(キャディ)(例えば独国特許出願公開第4209203号明細書)上の識別キャリアを用いて行うことができる。
【0005】
巻取機は、多数の巻取部を有する。各巻取部において、複数のコップが順次綾巻パッケージへと巻き返される。巻返しには、効率的に運んで使用することができる大きな糸パッケージを製造する目的がある。巻き返される間、糸の特性が監視され、予め設定された品質基準と比較される。品質基準が満たされないとき、エラーを含んだ箇所を糸から除去することができる。その目的のために、例えば国際公開第2012/051730号において、いわゆる糸クリアラシステムが知られている。
【0006】
独国特許出願公開第4306095号明細書は、ネットワーク化された精紡工場設備を制御する方法及び装置を開示している。精紡工場設備には、リング精紡機と、リング精紡機に対応付けられた自動操作装置と、糸クリアラを有する、リング精紡機に連結された巻取機とが含まれる。精紡工場設備には、コップ追跡システムが備え付けられている。精紡工場設備の最適化のために、情報が交換される。自動操作装置は、操作演算を行うだけでなく、精紡部の状況及び個々のコップにおける糸切れに関する情報の収集も行う。巻取機又は巻取機の糸クリアラは、コップ追跡システムを介して、リング精紡機の特定のスピンドルが不良の糸を終始生産することを確認することができる。
【0007】
欧州特許出願公開第3305953号明細書は、精紡機を有する糸巻取システム及び自動の巻取機を開示している。精紡機には、精紡情報を作成する監視装置と、精紡情報を巻取機に送信する送信ユニットとが設けられている。巻取機には、精紡情報を受信する受信ユニットと、受信ユニットによって受信される精紡情報に基づいて巻取機の動作を制御する制御装置とが設けられている。
【0008】
独国特許出願公開第102015004305号明細書は、少なくとも1つのリング精紡機と少なくとも1つの巻取機とからなる複合システムを運転する方法に関する。それぞれコップへと巻かれた糸全長が求められ、巻取部へのコップの供給は、求められた糸全長に依存して行われる。巻取部にコップを分配するとき、コップにおける糸切れを考慮することができ、これにより糸継ぎが綾巻きパッケージに均一に分配される。
【0009】
独国特許出願第19918780号明細書は、リング精紡機をテストステーションに接続することを提案する。このテストステーションでは、糸が毛羽立ちについて自動でチェックされ、コップが、テスト結果に応じて自動で選別される。ゆえに、同一の1つの最終製品には、毛羽立ちの差がない糸を有するコップのみが使用される。
【0010】
欧州特許出願公開第0392278号明細書によれば、ボビンキャリア上でコップが移送装置を通過する。移送装置は、少なくとも1つのリング精紡機と少なくとも1つの巻取機とを接続する。移送装置の領域では、コップを装着したボビンキャリアに、様々な糸品質に関するデータが対応付けられる。一緒に混ざって送られた、様々な品質を有するコップは、コード化され、移送装置の後方で巻取機の対応する領域に引き渡される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】米国特許4222657号明細書
【文献】国際公開第2014/022189号
【文献】米国特許第4660370号明細書
【文献】独国特許出願公開第4209203号明細書
【文献】国際公開第2012/051730号
【文献】独国特許出願公開第4306095号明細書
【文献】欧州特許出願公開第3305953号明細書
【文献】独国特許出願公開第102015004305号明細書
【文献】独国特許出願第19918780号明細書
【文献】欧州特許出願公開第0392278号明細書
【非特許文献】
【0012】
【文献】“USTER(R) SENTINEL-The ring spinning optimization system”,Uster Technologies AG,2016
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の課題は、自動のリング精紡設備の生産性及び又は費用対効果を向上させることである。別の課題は、リング精紡設備によって製造される糸パッケージの品質を高めることである。さらに、繊維製造工程においてリング精紡設備の下流側で品質コストを削減することも1つの課題である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
これらの課題及び他の課題は、独立請求項に定義されたような方法及び自動のリング精紡設備によって解決される。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0015】
本発明は、精紡の間の、特にコップへと巻き取る間の精紡部の運転についての特性パラメータの値を求め、値をコップに自動で対応付け、巻取部のうちの1つへのコップの供給に関する自動の決定に際して考慮するという思想に基づいている。自動の対応付けは、コップの巻取り時点の識別子と、コップが巻き取られた精紡部の識別子とに基づいて行われる。その製造又は巻取りの間に問題が生じたコップは、そうすると、巻き返す前に選別することができる。コップは、不良品として取り除く又はより低い品質の糸パッケージへと巻き返すことができる。
【0016】
本発明に係る方法は、糸を精紡するための複数の精紡部を有するリング精紡機と糸を巻き返すための複数の巻取部を有する巻取機とを備えるリング精紡設備を自動で運転するために用いられる。精紡部のうちの1つで糸が精紡され、コップに巻き取られる。精紡部について、コップへと巻き取る間の精紡部の運転についての特性パラメータの値が求められ、精紡データとして保存される。精紡データは、コップに対応付けられる。コップは、精紡部から取り外される。取り外された後の巻取部のうちの1つへのコップの供給について自動で決定するとき、コップに対応付けられた精紡データが考慮される。コップの巻取り時点の識別子と精紡部の識別子とがコップに自動で対応付けられる。コップの巻取り時点の識別子と精紡部の識別子とに基づいて、精紡データがコップに自動で対応付けられる。
【0017】
一実施形態では、精紡データと、コップの巻取り時点の識別子と、精紡部の識別子とが、リレーショナルデータベースに保存される。コップの巻取り時点の識別子と、精紡部の識別子とは、リレーショナルデータベースにおいて、コップに対応付けられる精紡データを識別するためのキーとして用いられる。この場合、コップに識別キャリアを対応付け、識別キャリアの識別データをリレーショナルデータベースに保存し、コップの巻取り時点の識別子と、精紡部の識別子とを、リレーショナルデータベースにおいて、コップに対応付けられる精紡データと識別キャリアの識別データとの両方を識別するためのキーとして用いることができる。好適には、第1のコップの後で第1のコップと同一の精紡部で巻き取られた後続の複数のコップについては、第1のコップの供給についての決定が、後続のコップについて、精紡データを考慮することなく行われる。
【0018】
一実施形態では、以下の複数の問合わせ、
・コップが巻取部のうちの1つに供給されるか?
・どの巻取部にコップが供給されるか?
・いつコップが巻取部のうちの1つに供給されるか?
のうちの少なくとも1つについて決定が行われる。
【0019】
一実施形態では、コップが、取り外された後で選別され、少なくとも待機時間の間には巻取部のいずれにも供給されない。
【0020】
一実施形態では、それぞれ相互に類似した精紡データの少なくとも2つのクラスが形成される。少なくとも2つのクラスのそれぞれについて決定が行われ、決定の結果がそれぞれのクラスに対応付けられる。コップは、保存された精紡データに応じて、少なくとも2つのクラスのうちの1つに分類される。取り外された後で、該当するクラスに対応付けられた結果に応じて、コップが扱われる。好適には、巻取部のそれぞれで、糸がコップから糸パッケージへと巻き返され、同一のクラスに分類されたコップが、コップに巻き取られた糸が単一の糸パッケージへと巻き返されるように、巻取部のうちの1つに時間的に相前後して供給される。この場合、同一のクラスに分類されたコップは、取り外された後で、コップが巻取部に供給される前に、一時保管することができる。
【0021】
一実施形態では、精紡データに含まれる、精紡部の運転についての特性パラメータが、以下の、時間単位あたりの糸切れの数、リングトラベラ回転数、空気温度、空気湿度から選択される。
【0022】
本発明に係る自動のリング精紡設備は、糸を精紡し、それぞれコップへと糸を巻き取るための複数の精紡部を有するリング精紡機を備える。リング精紡設備は、さらに、精紡測定量を測定するための精紡部のそれぞれに設けられた精紡センサと、コップに巻き取る間に精紡部の精紡センサから精紡測定量の値を受信し、そこから精紡部の運転についての特性パラメータの値を求め、精紡データとして保存するように構成された、精紡センサに接続された精紡監視制御ユニットとを有する、精紡部の運転を監視するための精紡監視システムを備える。リング精紡設備は、精紡部からコップを取り外するための取外し装置を備える。精紡設備は、さらに、それぞれのコップから糸パッケージへと糸を巻き返すための、複数の巻取部を有する巻取機を備える。さらに、リング精紡設備は、取外し装置により取り外されたコップを巻取部に供給するための、供給制御ユニットによって制御される供給システムと、付属のコップに精紡データを対応付けるための対応付けシステムとを備える。供給制御ユニットは、精紡監視制御ユニットに接続されているとともに、巻取部のうちの1つへのそれぞれのコップの供給に関する決定を、対応付けシステムによってコップに対応付けられた精紡データを考慮して行うように構成されている。対応付けシステムが、コップの巻取り時点の識別子と、コップが巻き取られた精紡部の識別子とを、コップに対応付けし、精紡データを、コップに、コップの巻取り時点の識別子と精紡部の識別子とに基づいて対応付けるように構成されている。
【0023】
一実施形態では、対応付けシステムが、リレーショナルデータベースを含む。リレーショナルデータベースは、精紡データと、コップの巻取り時点の識別子と、精紡部の識別子とを保存し、コップの巻取り時点の識別子と精紡部の識別子とを、コップに対応付けられる精紡データを識別するためのキーとして用いるように構成されている。対応付けシステムは、コップに識別キャリアを対応付け、識別キャリアの識別データをリレーショナルデータベースに保存し、リレーショナルデータベースにおいて、コップの巻取り時点の識別子と精紡部の識別子とを、コップに対応付けられる精紡データと識別キャリアの識別データとの両方を識別するためのキーとして使用するように構成することができる。対応付けシステムは、好適には、第1のコップの後で第1のコップと同一の精紡部で巻き取られた後続の複数のコップについては、第1のコップの供給についての決定を、後続のコップについて、精紡データを考慮することなく行うように構成されている。
【0024】
一実施形態では、リング精紡設備は、付加的に、供給制御ユニットによって選別され、少なくとも待機時間の間に精紡部のいずれにも供給されないコップを収容するための選別ステーション備える。
【0025】
一実施形態では、精紡監視制御ユニットが、精紡部の運転についての特性パラメータの値を、以下の、時間単位あたりの糸切れの数、リングトラベラ回転数、空気温度、空気湿度から求めて、精紡データとして保存するように構成されている。
【0026】
本発明によって、製造又は巻取りの間に問題が生じたコップを選別することができる。ゆえに、巻取機における糸クリアラによる切断が節減され、これにより、巻取機の効率ひいては最終的に自動のリング精紡設備の総生産性が向上させられる。本発明は、糸欠陥が糸パッケージに至るおそれも低下させる。したがって、本発明は、自動のリング精紡設備によって製造された糸パッケージの品質を高める。本発明は、さらに、複数の様々な品質クラスの糸パッケージを的確に製造する可能性を提供し、この場合、糸パッケージは、1つの品質クラス内では均一の品質レベルを有する。品質クラスに応じて、糸パッケージを、様々な後の利用目的のためにそれぞれ異なる価格で販売することができ、これにより、リング精紡設備の費用対効果が高められる。繊維製造工程でリング精紡設備の下流側では、均一の品質を有する糸パッケージの使用によって、品質コストが削減される。というのも、糸パッケージの後続処理では(例えば織物工場又は編物工場で)あまり問題が生じず、最終繊維製品は、欠陥やばらつきをあまり有しないからである。
【0027】
以下、図面に基づいて本発明を詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図2】本発明に係る方法の一実施形態の一部をフローチャートに基づいて示す。
【
図3】本発明に係る方法の一実施形態の一部を概略的な線図に基づいて示す。
【
図4】本発明に係る方法の一実施形態の一部を概略的な線図に基づいて示す。
【
図5】本発明に係る方法の一実施形態の一部を概略的な線図に基づいて示す。
【
図6】本発明に係る方法の一実施形態の一部をフローチャートに基づいて示す。
【
図7】本発明に係る方法で使用するためのリレーショナルデータベースを表として概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は、本発明に係る自動のリング精紡設備1を略示する。リング精紡設備1は、リング精紡機2と巻取機3とを有する。
【0030】
リング精紡機2は、多数の精紡部21を有する。各精紡部21において、公知のリング精紡法によって、粗糸から糸が精紡され、いわゆるコップ91に巻き取られる。リング精紡機2には、精紡部21の運転を監視する、例えば糸切れ又は「低速スピンドル」を検出する精紡監視システム4が備え付けられている。精紡監視システム4は、精紡部21のそれぞれに精紡センサ41を有する。精紡センサ41は、精紡測定量を測定する。各精紡センサ41は、有線接続された又は無線の第1のデータライン42を介して、精紡監視制御ユニット43に接続されている。精紡センサ41は、第1のデータライン42を介して、精紡測定量の値を精紡監視制御ユニット43へ送信する。精紡監視制御ユニット43は、値を受信する。精紡監視制御ユニット43は、それらの値から、コップ91の巻取り中の少なくとも2つの異なる時間において、精紡部21の運転についての特性パラメータの値を求め、求められた値を、精紡データとして保存する。精紡部21の運転についての特性パラメータの例は、時間単位あたりの糸切れの数、リングトラベラ回転数、空気温度及び空気湿度である。
【0031】
同時に作製された満管のコップ91は、リング精紡機2から同時に取り外される(「ドッフィングされる」)。そのために、リング精紡設備1には、取外し装置が備え付けられているが、取外し装置は、図面を簡単にするために示されていない。取り外された後で、コップ91は、巻取機3に運ばれる。これは、
図1に破線の矢印22で示唆されている。
【0032】
巻取機3は、多数の巻取ユニット31を有する。各巻取ユニット31では、糸92が、複数のコップ91から順次糸パッケージ93、例えば綾巻きパッケージへと巻き返される。巻取機3には、糸92の特性を監視する糸監視システム5を備え付けることができる。糸監視システム5は、巻取部のそれぞれに糸センサ51を有する。糸センサ51は、有線接続された又は無線の第2データライン52を介して糸監視制御ユニット53に接続されている。糸監視システム5は、例えば糸クリアラシステムとして構成されてよく、この場合、各糸センサ51に、糸切断ユニットを対応付けることができ、糸切断ユニットは、許容されない糸欠陥を糸92から除去する。
【0033】
通常のケースでは、コップ91は、リング精紡機2から取り外された後で、自動的に巻取部31のうちの1つに供給される。これは、
図1において破線の矢印34で示唆されている。巻取部31へのコップ91の供給は、供給制御ユニット33によって制御される自動の供給システムによって行われる。供給制御ユニット33は、独立したユニットであってよい、又は巻取機3の制御ユニットと一致してよい。
【0034】
供給制御ユニット33は、精紡監視制御ユニット43に接続されている。接続は、有線接続された又は無線の第3のデータライン62を介して行うことができる。
図1の実施例では、第3のデータライン62に沿って別の3つの装置45,6,55が位置し、装置45,6,55は、第3のデータライン62を介して伝送されたデータを受信し、必要に応じて処理し、さらに送信する。これらの装置45,6,55は、本発明にとって必須ではなく、以下に簡単に説明するにとどめる。
【0035】
一実施形態では、リング精紡設備1は、中央制御兼評価装置6を有する。中央制御兼評価装置6は、第3のデータライン62を介して、精紡監視制御ユニット43と糸監視制御ユニット53とに接続されている。中央制御兼評価装置6は、精紡監視制御ユニット43及び/又は糸監視制御ユニット53からのデータを受信し、データを処理し、リング精紡設備1又はその一部を制御するかつ/又は情報をオペレータに出力する。そのために、中央制御兼評価装置6は、好適には、入力ユニット及び/又は出力ユニットに接続されていて、入力ユニット及び/又は出力ユニットを介して、オペレータが入力を行う又は出力を受信することができる。
図1の実施例では、中央制御兼評価装置6と無線通信を行うモバイル機器61、例えば携帯電話が入出力ユニットとして図示されている。代替的に又は付加的に、例えばコンピュータキーボードなどのそれ自体公知の他の入力ユニットと、例えばコンピュータモニタなどの出力ユニットとを使用することができる。
【0036】
一実施形態では、リング精紡設備1は、1つ又は複数のリング精紡機2に複数の精紡監視システム4を有し、精紡監視システム4の精紡監視制御ユニット43は、精紡エキスパートシステム45に接続されている。精紡エキスパートシステム45は、精紡監視制御ユニット43からデータを受信し、処理し、適切な形で出力するとともに、精紡監視制御ユニット43を制御するように構成されている。精紡エキスパートシステム45自体は、中央制御兼評価装置6に接続されている。
【0037】
一実施形態では、リング精紡設備1は、1つ又は複数の巻取機3に複数の糸監視システム5を有し、糸監視システム5の糸監視制御ユニット53は、糸エキスパートシステム55に接続されている。糸エキスパートシステム55は、糸監視制御ユニット53からデータを受信し、処理し、適切な形で出力するとともに、糸監視制御ユニット53を制御するように構成されている。糸エキスパートシステム55自体は、中央制御兼評価装置6に接続されている。
【0038】
本発明に係るリング精紡設備1は、付属のコップ91に精紡データを対応付ける(独立したユニットとして図示されていない)対応付けシステムを有する。ここで
図7に基づいて、対応付けの1つの可能性について説明する。対応付けシステムは、リレーショナルデータベースを含むことができる。リレーショナルデータベースは、
図7に表700として略示されている。対応付けシステムは、コップ91に、コップ91の巻取り時点の識別子と、コップ91が作製された精紡部21の識別子とを対応付ける。コップ91の巻取り時点の識別子は、例えばいわゆるドッフィング番号、つまりリング精紡機2からの、同時に作製されたコップ91の取外し(「ドッフィング」)を明確に識別し、これに続くドッフィングごとに1ずつ増加する自然数であり得る。ドッフィング番号は、表700の第1列701にリスト化されている。コップ91が作製された精紡部21の識別は、精紡部番号を用いて行うことができる。精紡部番号は、表700の第2列702にリスト化されている。ドッフィング番号とこれに付属する精紡部番号とが相俟って、表700のそれぞれ1つの行を明確に識別するので、これらの番号は、データベースにおけるいわゆるキーとして用いることができる。これは、
図7において、2つのキー列701,702を囲む枠705によって示唆されている。
【0039】
さらに、対応付けシステムは、コップ91に、識別キャリアを対応付け、同様にリレーショナルデータベースに識別キャリアの識別データを保存する。そのために、対応付けシステムは、コップ追跡システムを有することができる。コップ追跡システムは、それ自体知られていて、ここでは詳細に説明する必要はない。例えば、欧州特許出願公開第3305953号明細書に記載されているように、各コップ91は、RFIDタグが備え付けられたボビン皿上で、リング精紡機2から巻取機3に運ぶことができる。リング精紡機2を退出するとき、RFIDタグに、ドッフィング番号と精紡部番号とを明確に識別する識別データが書き込まれる。識別データは、表700の第3列703に、例えば自然数としてリスト化されていて、これらの識別データのそれぞれが、少なくとも巻取部31に供給する間はコップ91を明確に識別する。
【0040】
最後に、表700の第4列704に、付属の精紡データ、例えば1時間あたりの糸切れ数がリスト化されている。
【0041】
したがって、表700は、以下のように読み取ることができる。ドッフィング0001の間、精紡部001Lでは、1時間あたり0.67の糸切れがあった。そのように作製されたコップは、「14377」で識別されている。
【0042】
ここで
図1に戻る。精紡監視制御ユニット43、精紡エキスパートシステム45、中央制御兼評価装置6、糸エキスパートシステム55、糸監視制御ユニット53、供給制御ユニット33及び/又は他のユニットによって、対応付けシステムの機能を満たすことができる。
【0043】
供給制御ユニット33は、本発明によれば、巻取部31のうちの1つへのそれぞれのコップ91の供給に関する決定が、対応付けシステムによってコップ91に対応付けられた精紡データを考慮してなされるように調整されている。決定は、好適には、以下の問合わせのうちの少なくとも1つについてなされる。
-コップ91が巻取部31のうちの1つに供給される?
コップ91(このコップ91の精紡データは、これが機能の不良な精紡部21で巻き取られたことを示唆する)は、いつか巻取部31に供給されることなく、不良品として選別することができる。そのために、リング精紡設備1は、「不良の」コップが供給される選別ステーション35を有することができる。
-どの巻取部31にコップ91が供給される?
それぞれ異なる精紡データを有するコップ91のクラスは、相互に位置的に分けられる。巻取部31は、複数の、例えば2つのグループに仕分けられる。「より良好な」精紡データを有するコップ91は、巻取部31の第1のグループに供給される一方、「より不良の」精紡データを有するコップ91は、巻取部31の第2のグループに供給される。
-いつコップ91が巻取部31のうちの1つに供給される?
それぞれ異なる精紡データを有するコップ91のクラスは、相互に時間的に分けられる。「より良好な」精紡データを有するコップ91は、「より不良の」の精紡データを有するコップ91とは別の時間で巻き返される。1つ又は複数の選別ステーション35は、後になってから巻き返すように設定されたクラスのコップ91の一時保管に用いることができる。そのように一時保管されたボビン91は、所定の時点で巻取機3に供給される。これは、破線の矢印36で示唆されている。
【0044】
本発明のこれらの側面及び別の側面を、続いて以下に
図2~
図5に基づいて詳説する。
【0045】
一実施形態では、精紡監視制御ユニット43は、個々のコップ91についての精紡データを求める。各コップ91について、精紡データ、ドッフィング番号及び精紡部番号が、リレーショナルデータベース(
図7参照)に保存される。データベースは、精紡監視ユニット43内、精紡エキスパートシステム45内、評価装置6内、糸エキスパートシステム55内、糸監視制御ユニット53内、供給制御ユニット33内、別の演算ユニット内に存在する、又は挙げられた複数のユニットに分散して存在してよい。それぞれ相互に類似する精紡データの2つのクラス、つまり規定通りに機能する精紡部21についての許容される精紡データと、十分には機能しない精紡部21についての許容されない精紡データとが設定される。各コップ91は、コップに対応付けられた精紡データに応じて、2つのクラスのうちの1つに分類される。
図7の例では、1時間あたりの2以下の糸切れ数を有するコップ91を、許容されるものとして分類することができるので、例えば精紡部003Lのドッフィング番号0001を有するコップ91は、許容されない。各コップ91は、RFIDタグが備え付けられたボビン皿上で、リング精紡機2から巻取機3に運ばれる。リング精紡機2から退出するとき、RFIDタグに、ドッフィング番号及び精紡部番号によって明確に識別可能である識別データが書き込まれる。識別データは、同様にリレーショナルデータベース(
図7参照)に保存される。コップ91が巻取機3に到着すると、RFIDタグから識別データが読み出される。データベースから、相応の精紡データが読み出され、その際、ドッフィング番号及び精紡部番号が、精紡データを識別するためのキーとして用いられる。それぞれの精紡データが許容されないと判明すると、ゆえに供給制御ユニット33は、該当する許容されないと分類されたコップ91を、選別ステーション35に供給し、そうでないものは巻取部31のうちの1つに供給する。したがって、許容されると分類された全てのコップ91は、巻取機3で巻き返される一方、許容されないと分類された全てのコップ91は、選別ステーション35に選別される。これにより、糸パッケージ93へと巻き返された糸92の一様に良好な品質が保証されている。空のコップ巻管は、巻取機3から取り出され、
図1に破線の矢印32で示唆されたリング精紡機2に再び供給される。
【0046】
図2は、どのようにして本発明に係る方法の一実施形態においてコップ91の供給に関する決定がなされるかをフローチャートに基づいて示す。この実施形態では、それぞれ相互に類似する精紡データの3つのクラスが設定されている。第1クラスに属するコップ91は、最初に巻き返されるべきである。その後で、第2クラス又は第3クラスに属するコップ91が同時に、しかし巻取部31の異なるグループで巻き返されるべきである。
【0047】
したがって、リング精紡機2から取り外された201コップ91の精紡データは、まずはその精紡データが精紡データの第1クラスに属するか否かがチェックされる202。はいの場合、コップ91は、ちょうどコップ91の需要がある巻取部31のうちのいずれかに供給される211。そこで、コップ91が、糸パッケージ93へと巻き返される212。複数の第1クラスのコップ91が糸パッケージ93へと巻き返されていて、その結果、糸パッケージ93が所定量の糸92を含むとき、この場合、糸パッケージ93は完成していて213、巻取部31から取り出される214。この糸パッケージ93は、第1クラスの糸92だけを含む。糸パッケージ93が完成していない213とき、該当する巻取部31に、別の第1クラスのコップ91が供給される211。
【0048】
取り外されたコップ91の精紡データが第1クラスに属しない202とき、コップ91は、差し当たり選別ステーション35に供給される203。そこでコップ91は、全ての第1クラスのコップ91が巻き返されるまで一時保管される。全ての第1クラスのコップ91が巻き返された後で、巻取機3においてクラス変更が行われる204。そこで選別ステーション35に一時保管されていたコップ91が、再び巻取機3に運ばれる(矢印36)。そのように巻取機3に運ばれたコップ91の精紡データは、したがって、その精紡データが、精紡データの第2クラスに属するか否かチェックされる206。はいの場合、コップ91は、巻取部31の第1グループに属する巻取部31に供給される211。そこで、コップ91は、糸パッケージ93へと巻き返される222。複数の第2クラスのコップ91が糸パッケージ93へと巻き返されたら、その結果、糸パッケージ93は、所定量の糸92を含み、ゆえに糸パッケージ93は完成していて223、巻取部31から取り出される224。糸パッケージ93は、第2クラスの糸92を有する。糸パッケージ93がまだ完成していないとき、該当する巻取部31に、別の第2クラスのコップ91が供給される221。
【0049】
選別ステーション35から巻取機3に運ばれた205コップ91の精紡データが精紡データの第2クラスに属しないとき206、その精紡データは、第3クラスに属する。この場合、コップ91は、巻取部31の第2グループに属する巻取部31に供給される231。そこで、コップ91は、完成233後に第3クラスの糸を有する234糸パッケージ93へと巻き返される232。
【0050】
巻取部31の第1グループ及び第2グループにおける巻返し222,232は、同時に同一の巻取機3で行うことができる(
図5参照)。代替的に、コップ91は、コップ91のそれぞれの精紡データに応じて、第2クラスの糸だけを巻き返す222第1の巻取機に供給する、又は第3クラスの糸だけを巻き返す232第2の巻取機に供給することができる。
【0051】
図2に示された実施形態は、一例に過ぎない。2つ、3つまたは4つ以上のクラスを設定することができる。全てのクラスを同時に又は順次巻き返すことができる。クラスのうちの1つは、後で巻き返されることなく、最終的に不良品として選別することができる。
図3~
図5は、そのような変化形態を示す。これらの図は、概略的な線図に基づいて、どのようにして(図示されていない)コップ91を、本発明に係る方法のそれぞれ異なる3つの実施形態で、巻取部31に供給することができるかを示す。
図3~
図5の線図は、
図1の右下の部分に対応する。参照符号22,34,35,36は、
図3~
図5において、
図1と同様の意味で用いられていて、これらの符号については、
図1の記載にて説明したので、ここでもう一度紹介することはしない。
【0052】
図3の実施形態は、
図1及び
図2の実施形態に広く対応する。コップ91は、精紡部21から取り外された後で巻取機3に運ばれる。これは、矢印22で示唆されている。コップ91に対応付けられた精紡データに応じて、コップ91は、巻取部31又は選別ステーション35のうちの1つに供給される。この実施形態では、差し当たり第1クラスのコップ91だけが巻取部31に供給される(矢印34、
図2:参照符号211)一方、他の全てのボビン91は、選別ステーション35に一時保管される(
図2:参照符号203)。全ての第1クラスのコップ91が巻き返されたら、クラス変更が行われる(
図2:参照204)。選別ステーション35に一時保管されたコップ91は、再び巻取機3に運ばれる。これは、矢印36で示唆されている。したがって、第2クラスのボビン91が巻取部31に供給される等となる(第2クラスのコップ91と第3クラスのコップ91とが同時に巻き返される
図2の実施形態とは相違する)。
【0053】
実際には、第1クラスのコップ91であっても、例えば糸92の端部がこのコップ91に見当たらなかったので、巻取部31のいずれにも供給されないことが起こり得る。この場合、第1クラスのコップ91は、再び巻取機3に運ばれる。これは、矢印37で示唆されていて、ともすると糸端が2度目の又はさらなる試みで見付けられる。第2クラス以下のコップ91が再び巻取機3に運ばれた(矢印36)後で、これらのコップ91で同じことを行うことができる。
【0054】
図4の実施形態では、巻取部31のいずれにも供給されなかった第1クラスではないコップ91が、第1の選別ステーション35.1、第2の選別ステーション35.2又は不良品ステーション38のうちの1つに供給される。第1の選別ステーション35.1では、第2クラスのコップ91が保管され、第2クラスのコップ91は、第1クラスのコップ91が巻き返された後で、再び巻取機3に運ばれ(矢印36.1)、そこで巻き返される。任意選択的な第2の選別ステーション35.2には、第3クラスのコップ91が保管され、第3クラスのコップ91は、第2クラスのコップが巻き返された後で、巻取機3に運ばれ(矢印36.2)、そこで巻き返される。第3クラス以下のコップ用のさらなる(任意選択的で図示されていない)選別ステーションが設けられてよい。不良品ステーション38には、巻き返されない程精紡データが不良であるコップ91が集積される。不良品ステーション38は、選別ステーションの特殊なケースとみなすことができる。本実施形態でも、巻き返されない第1クラスのコップ91の戻しガイド37を設けることができる。
【0055】
図3及び
図4の実施形態では、コップ91の様々なクラスへの仕分けは、経時的に行われる。異なるクラスのコップ91は、同一の巻取部31で巻き返されるが、時間的に相前後して巻き返される。これに対して、
図5は、位置的な仕分けを有する実施形態を示す。異なるクラスのコップ91は、同時ではあるが、巻取部31の異なるグループで巻き返される。その際、例えば第1クラスのコップ91は、第1グループの複数の巻取部31.1のうちの1つの巻取部に供給される一方、第2クラスのコップ91は、第2グループの複数の巻取部31.2のうちの1つの巻取部に供給される。これは、
図2の右下の部分に示された、ただしそこでは第2クラス又は第3クラスのコップ91についての過程に対応する。第2クラスのよりも不良のコップ91は、不良品ステーション38に集積される。前述された実施形態のように、
図5の実施形態でも、3以上のクラスの、それぞれ相互に類似した精紡データを形成することができる。複数のクラスのうちのそれぞれ1つのクラスのコップ91を巻き返す巻取部のグループ31.1,31.2は、1つの巻取機3でそれぞれ位置的に関連するとともに相互に区切られてよい、複数の巻取機3に分配されてよい、又はそれぞれ位置的に関連することなく、1つ又は複数の巻取機3に仮想的に形成されてよい。
【0056】
図6のフローチャートは、本発明に係る方法の一実施形態の一部を示す。ここでは、許容されない精紡データを有するコップ91が一度巻き取られた精紡部21が故障している又は欠陥を有し、将来的に繰り返し許容されない精紡データを有するコップ91が作製されるという推測から出発する。そのような故障した精紡部21の識別子又はその精紡部21の精紡部番号が個別に保存される。
【0057】
リング精紡機2から取り外された601各コップ91について、まずは少なくとも1つの精紡部21が故障した精紡部21として既知であり、保存されているか否か問い合わされる602。いいえの場合、コップ91の精紡データがその許容性についてチェックされる603。精紡データが許容されているとき、コップ91は、巻取部31のうちの1つに供給され604、そこで巻き返される。そうでない場合、コップ91が巻き取られた精紡部21が故障した精紡部21として保存され606、コップ91が不良品として選別される607。
【0058】
これに対して、少なくとも1つの精紡部21が故障した精紡部21として既知であり、保存されている602とき、コップ91が、故障が知られた精紡部21で巻き取られていたか問い合わされる605。はいの場合、コップ91は、精紡データがさらにチェックされることなく、コップ91は、不良品として選別することができる607。これにより、精紡データのチェックのための時間及び演算の労力が節約される。コップ91が、それまで申し分なく機能していた精紡部21で巻き取られていた場合にだけ、コップ91の精紡データが、その許容性についてチェックされる必要がある603。精紡データが許容されないと判明すると、当該する精紡部21が故障した精紡部21として保存され606、コップ91が不良品として選別される607。
【0059】
図6の実施例では、分かりやすくするために、コップ91の選別307が記載されている。選別307に対して付加的に又は代替的に、上述した実施形態において説明したように分類を行うことができる。一度第2クラスの精紡データを有するコップ21が巻き取られた精紡部21は、将来的に繰り返し第2クラスの精紡データを有するコップ21を作製すると推測することができる。第3クラス以下の精紡データ及び精紡部21についても同様の推測を行うことができる。そのような精紡部21からの第2クラス以下のコップ91では、前述された実施形態のうちのいずれかに従った方法を行うことができる。ここでは、そのようなコップ91の精紡データのさらなるチェックが不要であることが重要である。
【0060】
作製される糸の、得ようとする品質と、リング精紡設備1の高い生産性を達成するために、故障した精紡部21をできるだけ迅速に修理することが最重要である。そのために、入出力ユニット61(
図1参照)において、対応する支持をオペレータに出力することができる。代替的に、中央制御兼評価ユニットは、故障した精紡部21の自動の修理を開始させることができる。
【0061】
もちろん、本発明は、前述された実施形態に限定されるものではない。本発明の知識があれば、当業者は、本発明の対象に含まれるさらなる変化形態を作り出すことができるであろう。
なお、本願は、特許請求の範囲に記載の発明に関するものであるが、他の態様として以下も含み得る。
1.糸(92)を精紡するための複数の精紡部(21)を有するリング精紡機(2)と糸(92)を巻き返すための複数の巻取部(31)を有する巻取機(3)とを備えるリング精紡設備(1)を自動で運転する方法であって、
複数の精紡部(21)のうちの1つで糸を精紡し、コップ(91)に巻き取り、
精紡部(21)について、コップ(91)へと巻き取る間の精紡部(21)の運転についての特性パラメータの値を求め、精紡データとして保存し、
精紡データをコップ(91)に対応付け、
コップ(91)を精紡部(21)から取り外し、
取り外された後の複数の巻取部(31)のうちの1つへのコップ(91)の供給について自動で決定するとき、コップ(91)に対応付けられた精紡データを考慮する、方法において、
コップ(91)の巻取り時点の識別子と精紡部(21)の識別子とをコップ(91)に自動で対応付けし、
コップ(91)の巻取り時点の識別子と精紡部(21)の識別子とに基づいて、精紡データをコップ(91)に自動で対応付ける
ことを特徴とする、リング精紡設備を自動で運転する方法。
2.精紡データと、コップ(91)の巻取り時点の識別子と、精紡部(21)の識別子とを、リレーショナルデータベースに保存し、
コップ(91)の巻取り時点の識別子と、精紡部(21)の識別子とを、リレーショナルデータベースにおいて、コップ(91)に対応付けられる精紡データを識別するためのキーとして用いる、上記1に記載の方法。
3.コップ(91)に識別キャリアを対応付け、
識別キャリアの識別データをリレーショナルデータベースに保存し、
コップ(91)の巻取り時点の識別子と、精紡部(21)の識別子とを、リレーショナルデータベースにおいて、コップ(91)に対応付けられる精紡データと識別キャリアの識別データとの両方を識別するためのキーとして用いる、上記2に記載の方法。
4.第1のコップ(91)の後で第1のコップ(91)と同一の精紡部(21)で巻き取られた後続の複数のコップ(91)については、第1のコップ(91)の供給についての決定を、後続のコップ(91)について、精紡データを考慮することなく行う、上記1から3のいずれか1つに記載の方法。
5.以下の複数の問合わせ、
・コップ(91)が巻取部(31)のうちの1つに供給されるか?
・どの巻取部(31)にコップ(91)が供給されるか?
・いつコップ(91)が巻取部(31)のうちの1つに供給されるか?
のうちの少なくとも1つについて決定を行う、上記1から4のいずれか1つに記載の方法。
6.コップ(91)を、取り外された後で選別し、少なくとも待機時間の間に巻取部(31)のいずれにも供給しない、上記1から5のいずれか1つに記載の方法。
7.それぞれ相互に類似した精紡データの少なくとも2つのクラスを形成し、
少なくとも2つのクラスのそれぞれについて決定を行い、決定の結果をそれぞれのクラスに対応付けし、
コップ(91)を、保存された精紡データに応じて、少なくとも2つのクラスのうちの1つのクラスに分類し、
取り外された後で、該当するクラスに対応付けられた結果に応じて、コップ(91)を扱う、上記1から6のいずれか1つに記載の方法。
8.巻取部(31)のそれぞれで、糸(92)をコップ(91)から糸パッケージ(93)へと巻き返し、同一のクラスに分類されたコップ(91)を、コップ(91)に巻き取られた糸(92)が単一の糸パッケージ(93)へと巻き返されるように、巻取部(31)のうちの1つに時間的に相前後して供給する、上記7に記載の方法。
9.同一のクラスに分類されたコップ(91)を、取り外された後で、コップ(91)が巻取部(31)に供給される前に、一時保管する、上記8に記載の方法。
10.精紡データに含まれる、精紡部(21)の運転についての特性パラメータを、以下の、時間単位あたりの糸切れの数、リングトラベラ回転数、空気温度、空気湿度から選択する、上記1から9のいずれか1つに記載の方法。
11.自動のリング精紡設備(1)であって、
糸(92)を精紡し、それぞれコップ(91)へと糸(92)を巻き取るための複数の精紡部(21)を有するリング精紡機(2)と、
精紡測定量を測定するための精紡部(21)のそれぞれに設けられた精紡センサ(41)と、コップ(91)に巻き取る間に精紡部(21)の精紡センサ(41)から精紡測定量の値を受信し、そこから精紡部(21)の運転についての特性パラメータの値を求め、精紡データとして保存するように構成された、精紡センサ(41)に接続された精紡監視制御ユニット(43)とを有する、精紡部(21)の運転を監視するための精紡監視システム(4)と、
精紡部(21)からコップ(91)を取り外すための取外し装置と、
それぞれのコップ(91)から糸パッケージ(93)へと糸(92)を巻き返すための、複数の巻取部(31)を有する巻取機(3)と、
取外し装置から取り外されたコップ(91)を巻取部(31)に供給するための、供給制御ユニット(33)によって制御される供給システムと、
付属のコップ(91)に精紡データを対応付けするための対応付けシステムと、
を備え、
供給制御ユニット(33)は、精紡監視制御ユニット(43)に接続されているとともに、巻取部(31)のうちの1つへのそれぞれのコップ(91)の供給に関する決定を、対応付けシステムによってコップ(91)に対応付けられた精紡データを考慮して行うように構成されている、自動のリング精紡設備(1)において、
対応付けシステムが、
コップ(91)の巻取り時点の識別子と、コップ(91)が巻き取られた精紡部(21)の識別子とを、コップ(91)に対応付けし、精紡データを、コップ(91)に、コップ(91)の巻取り時点の識別子と精紡部(21)の識別子とに基づいて対応付ける
ように構成されている
ことを特徴とする、自動のリング精紡設備(1)。
12.対応付けシステムが、リレーショナルデータベースを含み、
リレーショナルデータベースは、
精紡データと、コップ(91)の巻取り時点の識別子と、精紡部(21)の識別子とを保存し、コップ(91)の巻取り時点の識別子と精紡部(21)の識別子とを、コップ(91)に対応付けられた精紡データを識別するためのキーとして用いる
ように構成されている
、上記11に記載の自動のリング精紡設備(1)。
13.対応付けシステムが、
コップ(91)に識別キャリアを対応付け、
識別キャリアの識別データをリレーショナルデータベースに保存し、
リレーショナルデータベースにおいて、コップ(91)の巻取り時点の識別子と精紡部(21)の識別子とを、コップ(91)に対応付けられる精紡データと識別キャリアの識別データとの両方を識別するためのキーとして使用する
ように構成されている、上記12に記載の自動のリング精紡設備(1)。
14.対応付けシステムは、
第1のコップ(91)の後で第1のコップ(91)と同一の精紡部(21)で巻き取られた後続の複数のコップ(91)については、第1のコップ(91)の供給についての決定を、後続のコップ(91)について、精紡データを考慮することなく行う
ように構成されている、上記11から13のいずれか1つに記載の自動のリング精紡設備(1)。
15.供給制御ユニット(33)によって選別され、少なくとも待機時間の間にいずれの精紡部(31)にも供給されないコップ(91)を収容するための選別ステーション(35,35.1,35.2,38)を付加的に備える、上記11から14のいずれか1つに記載の自動のリング精紡設備(1)。
16.精紡監視制御ユニット(43)が、
精紡部(21)の運転についての特性パラメータの値を、以下の、時間単位あたりの糸切れの数、リングトラベラ回転数、空気温度、空気湿度から求めて、精紡データとして保存する
ように構成されている、上記11から15のいずれか1つに記載の自動のリング精紡設備(1)。
【符号の説明】
【0062】
1 リング精紡設備
2 リング精紡機
21 精紡部
22 リング精紡機から巻取機へのコップの運び
3 巻取機
31.1,31.2 巻取部のグループ
32 巻取機からリング精紡機への空のコップ巻管の供給
33 供給制御ユニット
34 精紡部のうちの1つへのコップの供給
35,35.1,35.2 選別ステーション
36,36.1,36.2 巻取機への一時保管されたコップの供給
37 コップの戻しガイド
38 不良品ステーション
4 精紡監視システム
41 精紡センサ
42 第1のデータライン
43 精紡監視制御ユニット
45 精紡エキスパートシステム
5 糸監視システム
51 糸センサ
52 第2のデータライン
53 糸監視制御ユニット
55 糸エキスパートシステム
6 中央制御兼評価装置
61 モバイル機器
62 第3のデータライン
91 コップ
92 糸
93 糸パッケージ
700 表、リレーショナルデータベースを表す
701 ドッフィング番号を有する表の列
702 精紡部番号を有する表の列
703 識別データを有する表の列
704 精紡データを有する表の列
705 キー列を囲む枠