(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】医療用管状体搬送装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/966 20130101AFI20230809BHJP
A61M 25/01 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
A61F2/966
A61M25/01 500
A61M25/01 510
(21)【出願番号】P 2021508125
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2020001884
(87)【国際公開番号】W WO2020195056
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2019060871
(32)【優先日】2019-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市村 想生
【審査官】石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-271565(JP,A)
【文献】国際公開第2012/132508(WO,A1)
【文献】特表2008-513180(JP,A)
【文献】特表2018-524075(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0158653(US,A1)
【文献】特開2013-183918(JP,A)
【文献】特開2008-86465(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
A61M 25/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用管状体を体内に搬送する装置であって;
医療用管状体が内腔に配置される外側チューブと;
前記外側チューブの近位端部に接続された牽引部材と;
ガイドワイヤが内腔に挿通され、前記外側チューブの内腔と前記医療用管状体の内腔に配置されるとともに、前記外側チューブの近位端より近位側に延在する内側チューブと;
前記外側チューブの近位端部と、前記内側チューブの前記外側チューブの近位端より近位側に延在する部分と、前記牽引部材とが内腔に配置され、前記内側チューブの内腔に前記ガイドワイヤを通すためのガイドワイヤポートが設けられた保護チューブとを有し;
前記保護チューブは、前記外側チューブの近位端よりも近位側かつ前記保護チューブの近位端よりも遠位側の範囲の少なくとも1箇所で、前記保護チューブの内部であって前記内側チューブの外側の空間と前記保護チューブの外側の空間とが繋がっていることを特徴とする医療用管状体搬送装置。
【請求項2】
前記内側チューブの近位端は前記ガイドワイヤポートから離間しており、前記ガイドワイヤポートで前記保護チューブの内部の前記内側チューブの外側の空間と前記保護チューブの外側の空間とが繋がっている請求項1に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項3】
前記ガイドワイヤポートは、前記外側チューブが最も近位側に位置する状態で、前記外側チューブの近位端よりも近位側にあり、
前記外側チューブは、前記保護チューブの内腔に配置された近位端部の少なくとも一部で、外径が広く形成されている請求項1または2に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項4】
前記外側チューブは、近位端部がそれよりも遠位側の部分よりも剛性が低い請求項1~3のいずれか一項に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項5】
前記保護チューブの内腔には、前記牽引部材が内腔に挿通される牽引部材収納チューブが設けられる請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項6】
前記牽引部材収納チューブの遠位端は、前記保護チューブの内部の前記内側チューブの外側の空間と前記保護チューブの外側の空間とが繋がっている箇所よりも遠位側に位置する請求項5に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項7】
前記牽引部材収納チューブは、前記内側チューブに対して、遠近方向の位置が固定されている請求項5または6に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項8】
前記牽引部材収納チューブは、前記保護チューブに対して、遠近方向の位置が固定されている請求項5~7のいずれか一項に記載の医療用管状体搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントなどの医療用管状体を体内に搬送する装置である医療用管状体搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステントに代表される医療用管状体は、胆管や膵管等の消化管、腸骨動脈等の血管等の生体内管腔が狭窄または閉塞することにより生じる様々な疾患を治療するための医療器具である。医療用管状体には、狭窄または閉塞部位等の病変部を内側から拡張し、その管腔内径を維持するために病変部に留置するもの、あるいは、病変部またはその周囲に発生した血栓等を絡め取り体外へ除去し、その病変部における管腔内径を回復させるもの等がある。
【0003】
内視鏡を用いた医療用管状体での治療の一例として、胆管がんで閉塞した胆道において、胆管内から十二指腸側への胆汁の排出(ドレナージ)を行うために、胆道に医療用管状体を留置する方法について以下に説明する。まず、口から十二指腸の胆管の入口(乳頭)まで内視鏡を挿入する。次に、内視鏡を通じて、ガイドワイヤを病変部まで搬送する。さらに、ガイドワイヤに沿って医療用管状体搬送装置を病変部まで搬送する。そして、医療用管状体搬送装置を操作し、医療用管状体を病変部に留置する。
【0004】
医療用管状体搬送装置として、例えば特許文献1には、ガイドワイヤルーメンを有し基端側にガイドワイヤルーメンと連通する基端側開口を有する先端側チューブと、先端側チューブの基端部に先端部が固定された基端側チューブと、先端側チューブの先端側を被包しかつ先端側チューブの基端方向に摺動可能であるステント収納用筒状部材と、ステント収納用筒状部材内に収納されたステントと、ステント収納用筒状部材に一端部が固定され基端側チューブ内を延びる牽引部材とを備える生体器官拡張器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される生体器官拡張器具では、医療用管状体であるステントを、先端側チューブとステント収納用筒状部材の間に配置して病変部まで搬送し、病変部では、ステント収納用筒状部材の基端側に固定された牽引部材を近位側に牽引することで、ステント収納用筒状部材を近位側に移動する。このような操作により、ステント収納用筒状部材からステントを露出させて、病変部でステントを展開して留置することができる。
【0007】
医療用管状体搬送装置では、ステント等の医療用管状体を体内に留置する際、医療用管状体をスムーズに外部に露出させ、展開できることが望ましい。本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、医療用管状体を体内に留置する操作を容易に行うことができる医療用管状体搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決することができた本発明の医療用管状体搬送装置とは、医療用管状体を体内に搬送する装置であって;医療用管状体が内腔に配置される外側チューブと;外側チューブの近位端部に接続された牽引部材と;ガイドワイヤが内腔に挿通され、外側チューブの内腔と医療用管状体の内腔に配置されるとともに、外側チューブの近位端より近位側に延在する内側チューブと;外側チューブの近位端部と、内側チューブの外側チューブの近位端より近位側に延在する部分と、牽引部材とが内腔に配置され、内側チューブの内腔にガイドワイヤを通すためのガイドワイヤポートが設けられた保護チューブとを有し;保護チューブは、外側チューブの近位端よりも近位側かつ保護チューブの近位端よりも遠位側の範囲の少なくとも1箇所で、保護チューブの内部であって内側チューブの外側の空間と保護チューブの外側の空間とが繋がっているところに特徴を有する。
【0009】
本発明の医療用管状体搬送装置は、上記のように構成されることにより、外側チューブを近位側に牽引して医療用管状体を体内に留置する操作を容易に行うことができる。具体的には、外側チューブを近位側に移動させたときに、外側チューブが保護チューブの内腔に収納されるように構成されているため、外側チューブが内視鏡の鉗子チャンネルや鉗子口と接触することによる摩擦抵抗の発生を低減することができ、外側チューブを遠近方向に移動させる際の操作荷重が低減され、医療用管状体を安定して展開できる。また、保護チューブが、外側チューブの近位端よりも近位側かつ保護チューブの近位端よりも遠位側の範囲の少なくとも1箇所で、保護チューブの内部であって内側チューブの外側の空間と保護チューブの外側の空間とが繋がって形成されているため、保護チューブの内部の内側チューブの外側の空間と保護チューブの外側の空間とを繋ぐ部分が通気口として機能し、使用の際に、シャフト部の遠位端部から外側チューブと内側チューブの間に水や生理食塩水を導入して、外側チューブと内側チューブの間の空間および保護チューブと内側チューブの間の空間に存在する空気を抜いて、水や生理食塩水で好適に置換することができる。そのため、外側チューブを近位側に牽引して医療用管状体を体内に留置する際に、外側チューブと内側チューブとの間の摩擦抵抗や外側チューブと保護チューブとの間の摩擦抵抗を低減することができ、外側チューブの操作荷重をさらに低減することができる。医療用管状体搬送装置が血管用である場合は、血管内への空気の混入を防止することもできる。
【0010】
内側チューブの近位端はガイドワイヤポートから離間しており、ガイドワイヤポートで保護チューブの内部の内側チューブの外側の空間と保護チューブの外側の空間とが繋がっていることが好ましい。この場合、ガイドワイヤポートが通気口を兼ねることができ、保護チューブに開ける穴の数を減らすことができる。そのため、保護チューブや外側チューブの内部の汚染リスク、具体的には、内部に血液や消化器からの分泌液が浸入するリスクを減らすことができる。またその結果として、血液や分泌液が内部に侵入することによる医療用管状体搬送装置の操作性の低下を抑制することができる。さらに、保護チューブに開ける穴の数を減らすことで、保護チューブの引張強度の低下を抑えることができる。
【0011】
外側チューブは、保護チューブの内腔に配置された近位端部の少なくとも一部で、外径が広く形成されていることが好ましい。このように外側チューブを形成することにより、外側チューブの近位端部と保護チューブとの隙間間隔を狭めることができる。そのため、外側チューブと内側チューブの間に水や生理食塩水を導入したときに、外側チューブの近位端部と保護チューブの間の隙間から水や生理食塩水が漏洩するのを抑えることができる。
【0012】
外側チューブは、近位端部がそれよりも遠位側の部分よりも剛性が低いことも好ましい。このように外側チューブを形成することにより、外側チューブの剛性が低く形成された近位端部が逆止弁のように機能することができる。そのため、外側チューブと内側チューブの間に水や生理食塩水を導入したときに、外側チューブの近位端部と保護チューブとの隙間を通って水や生理食塩水が漏洩するのを抑えることができる。
【0013】
保護チューブの内腔には、牽引部材が内腔に挿通される牽引部材収納チューブが設けられることが好ましい。牽引部材を牽引部材収納チューブの内腔に挿通することにより、牽引部材の遠近方向への移動操作を行いやすくなる。また、牽引部材が、牽引部材が保護チューブの内部で迷入することや、牽引部材収納チューブ以外の部材に巻き付いたりすることを防ぐことができる。
【0014】
牽引部材収納チューブの遠位端は、保護チューブの内部の内側チューブの外側の空間と保護チューブの外側の空間とが繋がっている箇所よりも遠位側に位置することが好ましい。これにより、外側チューブと内側チューブの間に水や生理食塩水を導入したときに、牽引部材の遠位側の部分の牽引部材収納チューブに収納されない部分の周囲が水や生理食塩水によって満たされやすくなる。そのため、牽引部材を遠近方向に移動させる際の摩擦抵抗が減り、牽引部材をスムーズに移動させやすくなる。
【0015】
牽引部材収納チューブは、内側チューブに対して、遠近方向の位置が固定されていることが好ましい。これにより医療用管状体搬送装置のプッシャビリティが高められ、医療用管状体の病変部への送達性を向上させることができる。また、牽引部材を安定して近位側に牽引しやすくなるため、医療用管状体の展開を容易にすることができる。同様の観点から、牽引部材収納チューブは、保護チューブに対して、遠近方向の位置が固定されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の医療用管状体搬送装置は、外側チューブを近位側に牽引する際の摩擦抵抗が低減され、医療用管状体を体内に留置する操作を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施の形態に係る医療用管状体搬送装置の全体図を表す。
【
図2】
図1に示した医療用管状体搬送装置の外側チューブ、内側チューブおよび保護チューブを含む部分であって、外側チューブの内腔に医療用管状体が収納された状態の平面図を表す。
【
図3】
図2に示した医療用管状体搬送装置の外側チューブ、内側チューブおよび保護チューブを含む部分において、外側チューブを近位側に移動させて医療用管状体を径方向に拡張させた状態の平面図を表す。
【
図4】医療用管状体搬送装置の外側チューブの近位端部と保護チューブの遠位端部とその近傍部分の遠近方向に沿った断面図の一例を表す。
【
図5】医療用管状体搬送装置の保護チューブのガイドワイヤポート近傍の遠近方向に沿った断面図の一例を表す。
【
図6】医療用管状体搬送装置の保護チューブのガイドワイヤポート近傍の遠近方向に沿った断面図の他の一例を表す。
【
図7】医療用管状体搬送装置の保護チューブのガイドワイヤポート近傍の遠近方向に沿った断面図の他の一例を表す。
【
図8】医療用管状体搬送装置の外側チューブの近位端部と保護チューブの遠位端部の遠近方向に沿った断面図の一例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、下記実施の形態に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0019】
図1~
図4を参照して、医療用管状体搬送装置の基本構成について説明する。
図1は、医療用管状体搬送装置の全体平面図を表し、
図2は、
図1に示した医療用管状体搬送装置の部分平面図であって、医療用管状体が搬送装置内に収納された状態の平面図を表し、
図3は、
図2に示した医療用管状体搬送装置において、外側チューブを近位側に移動させ、医療用管状体が搬送装置から露出して径方向に拡張した状態の平面図を表し、
図4は、医療用管状体搬送装置の外側チューブの近位端部と保護チューブの遠位端部とその近傍部分の遠近方向に沿った断面図の一例を表す。
【0020】
医療用管状体搬送装置1は、ステント等の医療用管状体20を体内に搬送する医療用の装置である。医療用管状体搬送装置1は、外側チューブ3と内側チューブ4と保護チューブ5を含む長尺状の装置であり、これらのチューブの延在方向を遠近方向と称する。医療用管状体搬送装置1の近位側とは、医療用管状体搬送装置1の遠近方向に対する使用者の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対方向、すなわち処置対象側の方向を指す。
図1~
図4では、図面の右側が近位側に相当し、図面の左側が遠位側に相当する。また、遠近方向に対する垂直方向を径方向と称する。以下、「医療用管状体搬送装置」を単に「搬送装置」と称する場合がある。
【0021】
搬送装置1は、外側チューブ3と内側チューブ4と保護チューブ5を有する。以下、外側チューブ3と内側チューブ4と保護チューブ5をまとめて「シャフト部」と称する場合がある。搬送装置1は血管や消化管の治療に用いられ、例えば内視鏡を用いた治療の場合は、シャフト部2が内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネル内に挿入され、病変部まで搬送される。搬送装置1は、シャフト部2の近位側に設けられたコントローラー14を操作することにより、外側チューブ3を内側チューブ4と保護チューブ5に対して遠近方向に移動させることができる。
【0022】
外側チューブ3はシャフト部2の遠位部に位置し、外側チューブ3の内腔に医療用管状体20が配置される。外側チューブ3は、内側チューブ4および保護チューブ5に対して遠近方向に移動可能に形成され、
図2は、外側チューブ3が最も遠位側に位置する状態を示しており、
図3は、外側チューブ3が最も近位側に位置する状態を示している。外側チューブ3は、医療用管状体20を病変部まで搬送する際、
図2に示されるように、医療用管状体20がシャフト部2の外側に露出しないように保護する。外側チューブ3はまた、医療用管状体20の搬送の際に医療用管状体20を縮径状態に保持するように機能し、これにより医療用管状体20の病変部への搬送を容易にする。外側チューブ3の遠近方向の長さは、内腔に配置する医療用管状体20の遠近方向の長さに応じて適宜設定することができ、例えば50mm~800mm程度とすることができる。外側チューブ3が遠近方向に移動可能な範囲は、外側チューブ3の内腔に配置される医療用管状体20の遠近方向の長さに応じて適宜設定することができ、医療用管状体20の遠近方向の長さよりも長いことが好ましい。外側チューブ3の外径は、例えば0.5mm~3.5mm程度とすればよい。
【0023】
医療用管状体20としては、代表的にはステントが挙げられる。ステントを用いることにより、胆管等の消化管や血管等の生体内管腔が狭窄または閉塞することによって生じる様々な疾患を治療することができる。医療用管状体20には、1本の線状の金属または高分子材料から形成されたコイル状の医療用管状体、金属チューブや高分子材料からなるチューブをレーザーなどで切り抜き加工した医療用管状体、線状の部材を溶接して組み立てた医療用管状体、複数の線状金属を織って作った医療用管状体等がある。医療用管状体としては、ステント以外にも、ステントグラフト、閉塞具、注入カテーテル、プロテーゼ弁等を用いることもできる。
【0024】
医療用管状体20は、拡張機構の観点から、(i)バルーン表面上に医療用管状体を装着(マウント)して病変部まで搬送し、病変部でバルーンによって医療用管状体を拡張するバルーン拡張型と、(ii)拡張を抑制した状態で医療用管状体を病変部まで搬送し、病変部で拡張を抑制する部材を取り外すことにより自ら拡張する自己拡張型とに分類することができる。搬送装置1は、自己拡張型の医療用管状体を搬送するのに好適に用いられ、外側チューブ3が医療用管状体20の拡張を抑制する部材として機能する。従って、医療用管状体20は、外側チューブ3の内腔に設置された状態においては、径方向に縮小し、長手軸方向に伸びることにより、拡張状態よりも細長い円筒状の形態である縮径状態となる。自己拡張型の医療用管状体は、内部にバルーンを設けなくてもよいことから、バルーン拡張型の医療用管状体に比べて縮径状態の径を小さくすることができる。
【0025】
内側チューブ4は、外側チューブ3の内腔と医療用管状体20の内腔に配置され、外側チューブ3の近位端3Pより近位側に延在する。搬送装置1によって医療用管状体20を体内に搬送する際、医療用管状体20は径方向に対して内側チューブ4と外側チューブ3の間に配置される。内側チューブ4の内腔にはガイドワイヤが挿通される。ガイドワイヤを内側チューブ4の内腔に挿通し、ガイドワイヤに沿ってシャフト部2を移動させることで、シャフト部2の先端を病変部まで送達することができる。内側チューブ4の遠近方向の長さは、例えば800mm~3000mm程度であればよい。内側チューブ4の外径は、例えば0.3mm~3.0mm程度とすればよい。
【0026】
内側チューブ4の遠位端部には先端チップ10が設けられることが好ましい。先端チップ10は内腔を有し、当該内腔が内側チューブ4の内腔と連通していることが好ましい。先端チップ10はシャフト部2の遠位端部を構成し、これにより、シャフト部2を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入して医療用管状体20を病変部に搬送する際に、シャフト部2の先端が生体内管腔を傷つけることを防止することができる。また、先行するガイドワイヤや鉗子チャンネルへのシャフト部2の追従性、病変部へのシャフト部2の先端の送達性を高めることができ、搬送装置1の操作性が向上する。
【0027】
先端チップ10の近位端は、外側チューブ3が最も遠位側に位置する状態で、外側チューブ3の遠位端より近位側に位置することが好ましい。すなわち、先端チップ10の近位端部は外側チューブ3の遠位端部の内腔にあることが好ましい。これにより、シャフト部2を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入して医療用管状体20を病変部に搬送する際に、先端チップ10の屈曲の動きに対して外側チューブ3が追従しやすくなり、医療用管状体20を病変部に搬送する際のシャフト部2の操作性を高めることができる。
【0028】
外側チューブ3の近位側には、外側チューブ3の近位端部を内腔に配置した保護チューブ5が設けられる。保護チューブ5の内腔には、外側チューブ3の近位端部と内側チューブ4が配置され、保護チューブ5は外側チューブ3の近位端3Pより近位側に延在する。外側チューブ3の近位端部とは、外側チューブ3の近位端3Pを含み、近位端3Pから遠位側に所定の長さの部分を意味する。保護チューブ5の近位側には、使用者が搬送装置1を操作するためのコントローラー14が設けられる。保護チューブ5の遠近方向の長さは、例えば500mm~2200mm程度であればよい。保護チューブ5の外径は、例えば0.5mm~3.5mm程度とすればよい。
【0029】
外側チューブ3の近位端部は、外側チューブ3が最も近位側に位置する状態および最も遠位側に位置する状態で、保護チューブ5の内腔に配置される。保護チューブ5の内腔に配置される外側チューブ3の近位端部の遠近方向の長さは、外側チューブ3が最も遠位側に位置する状態で、例えば1mm以上50mm以下であればよい。内側チューブ4は、外側チューブ3の近位端3Pより近位側に延在する部分のうち少なくとも一部が保護チューブ5の内腔に配置され、それよりも遠位側の部分、具体的には保護チューブ5の内腔に配置される外側チューブ3の近位端部と重なる部分も、保護チューブ5の内腔に配置される。
【0030】
保護チューブ5には、内側チューブ4の内腔にガイドワイヤを通すためのガイドワイヤポート6が設けられる。ガイドワイヤポート6は、シャフト部2の内部にガイドワイヤを通すための開口として設けられる。搬送装置1により医療用管状体20を病変部まで搬送する際、ガイドワイヤは通常、内側チューブ4の遠位端(すなわち先端チップ10)を入口としガイドワイヤポート6を出口として、内側チューブ4の内腔に挿通される。この場合、ガイドワイヤポート6は、内側チューブ4の内腔から搬送装置1の外部へとガイドワイヤを出すための開口となる。
【0031】
ガイドワイヤポート6の遠近方向の設置位置は、搬送装置1の型式、すなわちラピッドエクスチェンジ型かオーバーザワイヤ型かに応じて適宜設定すればよい。図面には、シャフト部の遠位端部から近位端部に至る途中までガイドワイヤを挿通するラピッドエクスチェンジ型の医療用管状体搬送装置の構成例が示されているが、本発明は、シャフト部の遠位端部から近位端部にわたってガイドワイヤを挿通するオーバーザワイヤ型の医療用管状体搬送装置にも適用できる。ガイドワイヤポート6は、外側チューブ3が最も近位側に位置する状態で、外側チューブ3の近位端3Pよりも近位側にあることが好ましい。
【0032】
外側チューブ3の近位端部には牽引部材7が接続される。牽引部材7は、外側チューブ3の近位端3Pより近位側に延在し、保護チューブ5の内腔に配置され、コントローラー14に直接または他の部材を介して接続される。コントローラー14を操作することにより、牽引部材7および外側チューブ3を遠近方向に移動させることができる。例えば、
図2に示した状態から牽引部材7を近位側に牽引し、外側チューブ3を内側チューブ4および保護チューブ5に対して近位側に移動させることにより、
図3に示すように医療用管状体20をシャフト部2の外側に露出させ、体内に留置することができる。また、医療用管状体20を露出させる途中に牽引部材7を遠位側に送り、外側チューブ3を内側チューブ4および保護チューブ5に対して遠位側に移動させて、医療用管状体20を再度外側チューブ3の内腔に収納し、医療用管状体20の留置場所の調整を行うことも可能である。なお、牽引部材7を近位側に牽引する操作により、内側チューブ4と保護チューブ5は近位側に移動しない。
【0033】
外側チューブ3の近位端部において、牽引部材7は外側チューブ3の内側面に接続されてもよく、外側チューブ3の外側面に接続されてもよく、外側チューブ3の内側面と外側面の間の周壁部に接続されてもよい。また、外側チューブ3の近位端部を多層構造とし、その層間に牽引部材7の遠位端部を配置し、牽引部材7を外側チューブ3に接続してもよい。牽引部材7の外側チューブ3への接合手段は、接着剤による接着、溶着、嵌合、多層構造からなる外側チューブ3の層間圧着等、公知の接合手段を採用することができる。
【0034】
牽引部材7は、1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。後者の場合、外側チューブ3の周方向の異なる位置に複数設けられることが好ましい。なお、保護チューブ5の外径をより小さく形成する点からは、牽引部材7は1つのみ設けられることが好ましい。
【0035】
搬送装置1は、上記のようにシャフト部2が構成されることにより、外側チューブ3を内側チューブ4および保護チューブ5に対して近位側へ牽引して、医療用管状体20を生体内管腔の所望の位置に精度良く留置することが容易になる。具体的には、外側チューブ3を近位側に移動させたときに、外側チューブ3を保護チューブ5の内腔に収納することができるため、外側チューブ3を遠近方向に移動させる際に、外側チューブ3が内視鏡の鉗子チャンネルや鉗子口と接触することによる摩擦抵抗の発生を低減することができる。そのため、外側チューブ3を遠近方向に移動させる際の操作荷重が低減され、医療用管状体20を安定して展開できる。また、医療用管状体20を展開する際に、保護チューブ5を固定して外側チューブ3のみを牽引部材7を介して近位側に牽引することで、シャフト部2の全体が近位側に移動することを抑制でき、医療用管状体20を所望の位置に精度良く留置することができる。
【0036】
上記のように構成された搬送装置1は、内視鏡の鉗子チャンネルを通してシャフト部2を体内に挿入するに当たり、外側チューブ3と内側チューブ4の間の空間や保護チューブ5と内側チューブ4の間の空間に存在する空気を抜いて、水や生理食塩水で置換することが望ましい。これにより、外側チューブ3を遠近方向に移動させる際に、外側チューブ3と内側チューブ4との間の摩擦抵抗や外側チューブ3と保護チューブ5との間の摩擦抵抗を減らして、外側チューブ3の操作荷重をより低減することができる。また、搬送装置1が血管内に医療用管状体20を搬送するものである場合は、シャフト部2の内部の空気を抜くことで、外側チューブ3を遠近方向に移動させる際に血管内に空気が混入することも防ぐことができる。
【0037】
搬送装置1は、上記のように、外側チューブ3と内側チューブ4の間の空間や保護チューブ5と内側チューブ4の間の空間に存在する空気を抜いて、水や生理食塩水との置換を容易にするために、保護チューブ5に通気口が形成されている。具体的には、保護チューブ5は、外側チューブ3の近位端3Pよりも近位側かつ保護チューブ5の近位端5Pよりも遠位側の範囲の少なくとも1箇所で、保護チューブ5の内部であって内側チューブ4の外側の空間と保護チューブ5の外側の空間とが繋がっている。そして、保護チューブ5の内部の内側チューブ4の外側の空間と保護チューブ5の外側の空間とを繋ぐ部分が、通気口として機能する。
【0038】
上記のように保護チューブ5に通気口が形成されることにより、搬送装置1を使用する際、シャフト部2の遠位端部から外側チューブ3と内側チューブ4の間に水や生理食塩水を導入して、外側チューブ3と内側チューブ4の間の空間および保護チューブ5と内側チューブ4の間の空間に存在する空気を抜いて、水や生理食塩水と置換することができる。
図2に示した搬送装置1では、シャフト部2の先端部から、シリンジ等を用いて、先端チップ10と外側チューブ3の間の空間に水や生理食塩水を導入することで、外側チューブ3と内側チューブ4の間の空間および保護チューブ5と内側チューブ4の間の空間に存在する空気を抜いて、水や生理食塩水と置換することができる。また、搬送装置1の滅菌媒体としてエチレンオキサイドガスのような流体を使用する場合は、保護チューブ5に通気口が形成されることにより、シャフト部2の内部への滅菌媒体の浸透および排出が容易になるため、滅菌効率が向上して、安全性や生産効率を高めることもできる。
【0039】
図5~
図7には、上記のように形成された保護チューブ5の構成例を示した。
図5と
図6では、保護チューブ5のガイドワイヤポート6に通気口9が形成されている。具体的には、内側チューブ4の近位端がガイドワイヤポート6から離間しており、ガイドワイヤポート6で、保護チューブ5の内部の内側チューブ4の外側の空間と保護チューブ5の外側の空間とが繋がっている。なお、内側チューブ4の近位端がガイドワイヤポート6から離間しているとは、ガイドワイヤポート6の縁から内側チューブ4の近位端が離間していることを意味する。
図5では、内側チューブ4の近位端が保護チューブ5の内部にあり、その結果、ガイドワイヤポート6において、保護チューブ5の内部の内側チューブ4の外側の空間と保護チューブ5の外側の空間とが繋がって形成されている。
図6では、内側チューブ4の近位端が保護チューブ5の外部にあり、保護チューブ5のガイドワイヤポート6の縁と内側チューブ4との間で、保護チューブ5の内部の内側チューブ4の外側の空間と保護チューブ5の外側の空間とが繋がって形成されている。
図7では、保護チューブ5のガイドワイヤポート6以外の部分に通気口9が形成されている。具体的には、保護チューブ5のガイドワイヤポート6よりも近位側に形成された通気口9で、保護チューブ5の内部の内側チューブ4の外側の空間と保護チューブ5の外側の空間とが繋がって形成されている。保護チューブ5に形成される通気口は、
図5~
図7に示された構成例に限定されず、例えば保護チューブ5のガイドワイヤポート6よりも遠位側に通気口が形成されてもよい。また、通気口が2つ以上形成されてもよい。
【0040】
保護チューブ5の通気口9は、外側チューブ3が最も遠位側に位置する状態で、外側チューブ3の近位端3Pよりも近位側にあればよく、外側チューブ3が最も近位側に位置する状態で、外側チューブ3の近位端3Pよりも近位側にあることが好ましい。このように通気口9が設けられることにより、外側チューブ3の遠近方向に移動させる際の操作荷重をより低減することができる。一方、通気口9の近位側の位置は、保護チューブ5の近位端5Pより遠位側にあればよいが、外側チューブ3と内側チューブ4の間の空間や保護チューブ5と内側チューブ4の間の空間に存在する空気を水や生理食塩水と置換する際に、通気口9から水や生理食塩水が漏れてコントローラー14が濡れるのを防ぐ点から、通気口9は保護チューブ5の近位端5Pからある程度離れて位置することが好ましく、例えば保護チューブ5の近位端5Pよりもガイドワイヤポート6に近い位置に設けられることが好ましい。
【0041】
図5および
図6に示すように、保護チューブ5の通気口9はガイドワイヤポート6に設けられることが好ましい。ガイドワイヤポート6が通気口9を兼ねることにより、保護チューブ5に開ける穴の数を減らすことができる。そのため、シャフト部2の内部の汚染リスク、具体的には、シャフト部2の内部に血液や消化器からの分泌液が浸入するリスクを減らすことができる。またその結果として、血液や分泌液が内部に侵入することによる搬送装置1の操作性の低下を抑制することができる。さらに、保護チューブ5に開ける穴の数を減らすことで、保護チューブ5の引張強度の低下を抑えることができる。また、保護チューブ5と外側チューブ3の間の空間や保護チューブ5と内側チューブ4の間の空間に存在する空気を水や生理食塩水と置換する際に、保護チューブ5から水や生理食塩水が漏れても、その漏洩箇所を容易に把握することができる。シャフト部2の取り扱い性を考慮すると、
図5に示すように、内側チューブ4の近位端が保護チューブ5の内部にあり、ガイドワイヤポート6において、保護チューブ5の内部の内側チューブ4の外側の空間と保護チューブ5の外側の空間とが繋がっていることが好ましい。
【0042】
シャフト部2を構成する各部材は、樹脂、金属またはこれらの複合材料から構成することができる。またこれらの各材料は、生体適合性を有することが好ましい。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、シリコーン樹脂等の合成樹脂が挙げられる。金属材料としては、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、炭素鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0043】
シャフト部2を構成する外側チューブ3、内側チューブ4、保護チューブ5は、チューブ状に形成されていれば、単層から構成されていてもよく、複数層から構成されていてもよい。これら各チューブは、遠近方向の一部と他部が異なる材料から構成されていてもよく、また遠近方向の一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよい。
【0044】
外側チューブ3、内側チューブ4、保護チューブ5が樹脂と金属の複合材料から構成される場合、当該複合材料としては、樹脂層中に金属線材が配置された構造や、複数の樹脂層の間に金属線材が配置された構造を有するものが挙げられる。金属線材は、例えば、一重または多重のらせん状に配されたり、編組層を形成するものであってもよい。各チューブがこのように構成されていれば、チューブの強度、摺動性、耐キンク性を高めることができる。
【0045】
外側チューブ3は、フッ素系樹脂からなる樹脂層を有することが好ましく、当該フッ素系樹脂としてはPTFEが好ましい。外側チューブ3がこのように構成されることにより、摺動性を高めることができる。特に外側チューブ3の内側面がフッ素系樹脂からなる樹脂層から構成されていることが好ましく、これにより、外側チューブ3と医療用管状体20との摺動性を高めたり、外側チューブ3と内側チューブ4との摺動性を高めることができ、医療用管状体20の体内への留置が容易となる。
【0046】
外側チューブ3は、ポリイミド系樹脂からなる樹脂層を有することも好ましく、これにより外側チューブ3に剛性と可撓性の両方を付与することができる。外側チューブ3の強度を高める点からは、外側チューブ3に金属線材が配置されていることも好ましく、特に外側チューブ3が金属線材からなる編組層を有することが好ましい。例えば、外側チューブ3のうち保護チューブ5の内腔に配置される部分は、外側チューブ3を内側チューブ4および保護チューブ5に対して近位側に移動させる際に、保護チューブ5と内側チューブ4の間の空間に外側チューブ3が変形せずに当該空間の延在方向に沿って真っ直ぐに挿入されることが望ましい。すなわち、外側チューブ3が折れ曲がったり、内腔形状が変化したり、遠近方向に伸縮せずに、保護チューブ5と内側チューブ4の間の空間に外側チューブ3が挿入されることが好ましい。そのような観点から、外側チューブ3のうち少なくとも保護チューブ5の内腔に配置される部分は、ポリイミド系樹脂からなる樹脂層を有することが好ましく、さらに金属線材からなる編組層を有することが好ましい。外側チューブ3のうち保護チューブ5の内腔に配置される部分は、フッ素系樹脂からなる樹脂層を内層とし、ポリイミド系樹脂からなる樹脂層を外層とし、これらの内層と外層の間に金属線材(特にステンレス線材)からなる編組層が設けられることが好ましい。
【0047】
内側チューブ4は、ポリイミド系樹脂からなる樹脂層を有することが好ましい。これにより、内側チューブ4の内腔にガイドワイヤを挿通し、ガイドワイヤに沿ってシャフト部2を体内へ送り込みやすくなる。また、内側チューブ4がポリイミド系樹脂からなる樹脂層を有することにより、内側チューブ4の遠近方向の引張強度の向上が向上し、内側チューブ4が破断しにくくなるととともに、医療用管状体20の展開に必要な軸圧縮抵抗力が向上し、医療用管状体20を安定して展開しやすくなる。
【0048】
内側チューブ4はさらに、金属線材(特にステンレス線材)からなる編組層を有していてもよい。このように内側チューブ4が構成されることにより、内側チューブ4の強度、摺動性、耐キンク性を高めることができる。金属線材からなる編組層は内側チューブ4の遠位側の部分のみに設けられてもよく、これによりシャフト部2をガイドワイヤに沿って体内に送り込む際のプッシャビリティを高めることができる。また、内側チューブ4が金属線材からなる編組層を有することにより、内側チューブ4の遠近方向の引張強度や軸圧縮抵抗力が向上し、医療用管状体20の展開操作が安定化し、より安全に医療用管状体20を展開できるようになる。
【0049】
保護チューブ5は、フッ素系樹脂からなる樹脂層を有することが好ましく、当該フッ素系樹脂としてはPTFEが好ましい。これにより、保護チューブ5の摺動性を高めることができる。特に保護チューブ5の内腔に外側チューブ3が配置される部分において少なくとも、保護チューブ5の内側面がフッ素系樹脂からなる樹脂層から構成されていることが好ましく、これにより保護チューブ5と外側チューブ3との摺動性が高まり、医療用管状体20の体内への留置が容易となる。
【0050】
保護チューブ5は、ポリイミド系樹脂やポリアミド系樹脂等からなる樹脂層を有していてもよく、これにより保護チューブ5の剛性を高め、保護チューブ5に剛性と可撓性の両方を付与することができる。その結果、保護チューブ5が、体腔内の形状に沿って屈曲する可撓性と、病変部まで確実に到達する剛性の両方をバランス良く兼ね備えるものとすることができる。そのため、シャフト部2を内視鏡の鉗子チャンネルを通して体内に挿入する際に、シャフト部2を、鉗子チャンネル内を体腔の形状に沿って押し込むことが容易になる。
【0051】
保護チューブ5は、金属線材(特にステンレス線材)からなる編組層を有していてもよく、これにより、保護チューブ5の強度、摺動性、耐キンク性を高めることができる。例えば、保護チューブ5が樹脂層と金属線材からなる編組層を有する場合は、屈曲時でも保護チューブ5の内腔の形状を維持しやすくなるため、保護チューブ5の内腔に配置される内側チューブ4等のキンクを防止することができ、ガイドワイヤに沿ってシャフト部2を遠近方向に移動させることが容易になる。また、保護チューブ5が金属線材からなる編組層を有することにより、保護チューブ5の内腔形状が維持されやすくなり、外側チューブ3を保護チューブ5内で遠近方向に移動させる際の抵抗を減らすことができる。
【0052】
牽引部材7は、遠近方向に延びる長尺状に形成されたものであればその形状は特に限定されないが、線状物であることが好ましい。これにより保護チューブ5の外径を小さく形成することができる。牽引部材7は、中実状の線状物であっても中空状の線状物であってもよいが、中実状の線状物であることが好ましい。
【0053】
牽引部材7の遠近方向に対する垂直断面形状としては、円形、楕円形、半円形、多角形等が挙げられるが、特に限定されない。牽引部材7は、コイル線状に形成されていてもよい。牽引部材7の外径は、遠近方向に対して一定であってもよく、遠近方向に変化するものであってもよい。後者の場合、例えば、牽引部材7の遠近方向の一部または全部がテーパー状に外径が変化していてもよく、階段状に外径が変化していてもよい。
【0054】
牽引部材7は、金属線材や合成樹脂から形成された糸条から構成されることが好ましい。牽引部材7は、複数の材料からなる複合体であってもよく、例えば金属と合成樹脂の複合体であってもよい。牽引部材7は、金属線材に樹脂がコーティングされた構成であってもよい。なかでも、牽引部材7は金属線材から構成されることが好ましく、ステンレス線材から構成されることがより好ましい。このように牽引部材7が構成されることにより、牽引部材7の強度が高まり、牽引部材7を繰り返し遠近方向へ移動させても牽引部材7が破損しにくくなる。牽引部材7はまた、金属線材の表面にフッ素系樹脂、特にPTFEがコーティングされて構成されていることが好ましい。これにより牽引部材7の摺動性が高められ、医療用管状体20の展開操作が容易になる。
【0055】
先端チップ10は、エラストマー樹脂から構成されることが好ましい。エラストマー樹脂としては、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド系樹脂等が好ましく挙げられ、特にポリアミド系樹脂から構成されることが好ましい。このように先端チップ10が構成されることにより、先端チップ10のガイドワイヤへの追従性とシャフト部2の先端の安全性を高めることができる。
【0056】
外側チューブ3の近位端部と保護チューブ5とはできるだけ水密性を有することが好ましい。例えば、外側チューブ3と保護チューブ5は互いの摺動性を確保するために、外側チューブ3が保護チューブ5の内腔に配置される部分で多少の隙間が形成されていてもよいが、通気口9と比較して、外側チューブ3の近位端部と保護チューブ5の間の水密性ができるだけ確保されることが好ましい。これにより、搬送装置1を使用の際、シャフト部2の遠位端部から外側チューブ3と内側チューブ4の間に水や生理食塩水を導入したときに、外側チューブ3の近位端部と保護チューブ5の間の隙間から水や生理食塩水が漏洩するのを抑えることができる。そのため、外側チューブ3と内側チューブ4の間の空間および保護チューブ5と内側チューブ4の間の空間を、水や生理食塩水で置換することが容易になる。また、シャフト部2を体内に挿入した際に、外側チューブ3の近位端部と保護チューブ5との間の隙間からシャフト部2の内部に体液が浸入することも抑えることができる。
【0057】
上記の観点から、外側チューブ3は、保護チューブ5の内腔に配置された遠位端部の少なくとも一部で、外径が広く形成されていることが好ましい。具体的には、外側チューブ3が最も遠位側に位置する状態で、外側チューブ3は、保護チューブ5の内腔に配置された部分の少なくとも一部で、その遠位側または近位側よりも外径が広く形成されていることが好ましい。このように外側チューブ3が形成されることにより、外側チューブ3の外径が広く形成された部分で保護チューブ5の内側面との隙間間隔が狭まり、外側チューブ3と保護チューブ5との水密性を高めることができる。同様の観点から、保護チューブ5は、内腔に外側チューブ3が配置される近位端部の少なくとも一部で、内径が狭く形成されていることも好ましい。
【0058】
外側チューブ3は遠近方向の一部の範囲のみで外径が広く形成されることが好ましく、具体的には、外側チューブ3が最も遠位側に位置する状態で、外側チューブ3は、保護チューブ5の内腔に配置された部分の一部において外径が広く形成され、他部において外径が狭く形成されていることが好ましい。これにより、外側チューブ3と保護チューブ5との水密性を高めつつ、外側チューブ3と保護チューブ5との摺動性を確保することができる。
【0059】
外側チューブ3の一部の外径を広く形成する方法としては、外側チューブ3の外側面を高さが不均一になるように成形する方法、チューブ部材の層構造の層数を遠近方向の一部で増やす方法、チューブ部材の外側面の一部に厚肉部材を設ける方法などが挙げられる。
【0060】
外側チューブ3は、牽引部材7を外側チューブ3に強固に接続しつつ、外側チューブ3の一部の外径を広く形成することが容易な点から、次のように形成されることが好ましい。すなわち、外側チューブ3を複数層から構成し、その最外層は外側チューブ3の遠近方向の全部には設けられず、外側チューブ3の近位端部の少なくとも一部を含んで設けられ、牽引部材7の遠位端部は当該最外層とその内側の層との間に配されることが好ましい。これにより、牽引部材7を外側チューブ3に強固に接合することができ、かつ外側チューブ3の近位端部で外側チューブ3の外径を広く形成することができる。なお、外側チューブ3の近位端部の最外層は、外側チューブ3の周方向の全体を囲むように設けられてもよく、周方向の一部のみに設けられてもよい。
【0061】
外側チューブ3の近位端部の最外層は、その内側の層と接着剤で接合してもよく、溶着によりその内側の層と接合してもよい。外側チューブ3の近位端部の最外層は熱収縮性を有する樹脂から構成してもよく、この場合は、牽引部材7を簡便かつ強固に外側チューブ3に接合することができる点で好ましい。外側チューブ3が金属から構成される場合は、最外層を金属管から構成し、当該金属管をかしめたり、その内側の層と溶接することによってその内側の層と接合することもできる。
【0062】
外側チューブ3の近位端部と保護チューブ5との隙間間隔は、最も狭い箇所で、150μm以下が好ましく、100μm以下がより好ましく、50μm以下がさらに好ましい。なお、外側チューブ3の近位端部と保護チューブ5との隙間間隔は、外側チューブ3の断面中心と保護チューブ5の断面中心とを一致させた状態で計測し、当該状態における外側チューブ3の外側面と保護チューブ5の内側面との最近接距離を意味する。このように隙間間隔を設定することにより、外側チューブ3の近位端部と保護チューブ5との水密性を確保しやすくなる。一方、当該隙間間隔の下限値は、外側チューブ3と保護チューブ5との摺動性を確保する点から、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましく、15μm以上がさらに好ましい。
【0063】
外側チューブ3の近位端部と保護チューブ5との水密性を高める観点から、外側チューブ3は、近位端部がそれよりも遠位側の部分よりも剛性が低く形成されることも好ましい。これにより、外側チューブ3の剛性が低く形成された近位端部が逆止弁のように機能し、搬送装置1を使用の際、シャフト部2の遠位端部から外側チューブ3と内側チューブ4の間に水や生理食塩水を導入したときに、外側チューブ3の近位端部と保護チューブ5との隙間を通って水や生理食塩水が漏洩するのを抑えることができる。外側チューブ3の近位端部の剛性を低く形成する方法としては、外側チューブ3の近位端部の厚みを薄く形成したり、外側チューブ3の近位端部に低剛性のチューブ部材を取り付けたりする方法が挙げられる。
【0064】
図8には、外側チューブ3の近位端部の構成例を示した。
図8では、外側チューブ3がベースチューブ12と被覆チューブ13を含む層構造を有している。ベースチューブ12は、外側チューブ3が保護チューブ5の内腔に配置される部分に設けられ、外側チューブ3の遠位端まで延在していてもよい。被覆チューブ13はベースチューブ12の径方向の外方に設けられ、外側チューブ3が最も遠位側に位置する状態で、保護チューブ5の内腔に配置される部分の少なくとも一部に設けられる。牽引部材7はベースチューブ12と被覆チューブ13の間に配され、これにより牽引部材7を外側チューブ3に強固に接合することができる。被覆チューブ13の近位端は、外側チューブ3の近位端3Pよりも遠位側に位置することが好ましく、これにより外側チューブ3の近位端部の肉厚を薄くして、剛性を低くすることができる。
図8ではまた、ベースチューブ12の近位端部がそれよりも遠位側の部分よりも肉厚が薄く形成されている。このように外側チューブ3の近位端部を形成することにより、外側チューブ3の近位端部と保護チューブ5との水密性を高めることができる。
【0065】
図4に示されるように、保護チューブ5の内腔には、牽引部材7が内腔に挿通される牽引部材収納チューブ8が設けられることが好ましい。この場合、牽引部材7は、遠位端部が外側チューブ3に接合され、外側チューブ3の近位端3Pよりも近位側の部分の少なくとも一部が、牽引部材収納チューブ8の内腔に挿通されることとなる。牽引部材収納チューブ8の内腔に牽引部材7を挿通することにより、牽引部材7が牽引部材収納チューブ8以外の部材と接触して牽引部材7に応力が加わることや、牽引部材7や他の部材が破損することを防ぐことができ、牽引部材7の遠近方向への移動操作を行いやすくなる。また、牽引部材収納チューブ8の内腔に牽引部材7を収納することで、牽引部材7が保護チューブ5の内部で迷入することや、牽引部材7が牽引部材収納チューブ8以外の部材に巻き付くことや、牽引部材7に極度な撓みが発生することを防止できる。
【0066】
牽引部材収納チューブ8の遠位端8Dは、外側チューブ3が最も近位側に位置する状態で、外側チューブ3の近位端3Pよりも近位側に位置することが好ましい。また、外側チューブ3が最も遠位側に位置する状態で、外側チューブ3の近位端3Pから牽引部材収納チューブ8の遠位端8Dまでの遠近方向の長さは、外側チューブ3の内腔に配置される医療用管状体20の遠近方向の長さよりも長いことが好ましい。
【0067】
牽引部材収納チューブ8の遠位端8Dは、保護チューブ5の内部の内側チューブ4の外側の空間と保護チューブ5の外側の空間とが繋がっている箇所よりも遠位側、すなわち保護チューブ5の通気口9よりも遠位側に位置することが好ましい。これにより、搬送装置1を使用の際、シャフト部2の遠位端部から外側チューブ3と内側チューブ4の間に水や生理食塩水を導入したときに、牽引部材7の遠位側の部分の牽引部材収納チューブ8に収納されない部分の周囲が水や生理食塩水に満たされやすくなる。その結果、牽引部材7を遠近方向に移動させる際に、牽引部材7の遠位側の部分と他の部材との摩擦抵抗が減り、牽引部材7をスムーズに移動させやすくなる。
図5や
図6に示すように保護チューブ5の通気口9がガイドワイヤポート6に設けられる場合は、牽引部材収納チューブ8の遠位端8Dはガイドワイヤポート6よりも遠位側に位置することが好ましい。なお、牽引部材収納チューブ8は保護チューブ5の通気口9よりも近位側に延在し、好ましくは保護チューブ5の近位端5Pまで延在する。牽引部材収納チューブ8は、保護チューブ5の近位端5Pよりも近位側に延在し、コントローラー14まで延びていてもよい。
【0068】
牽引部材収納チューブ8の内径は、牽引部材7の外径の1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましく、1.3倍以上がさらに好ましい。これにより、牽引部材7を遠近方向に移動させる際に、牽引部材7と牽引部材収納チューブ8との間で摩擦抵抗が過度に増大しにくくなる。一方、牽引部材収納チューブ8の内径は、牽引部材7の外径の3.0倍以下が好ましく、2.5倍以下がより好ましく、2.0倍以下がさらに好ましい。これにより、牽引部材収納チューブ8内での牽引部材7の撓みを抑制し、牽引部材7を効率的に牽引することができる。
【0069】
牽引部材収納チューブ8は、樹脂、金属またはこれらの複合材料から構成することができる。これらの各材料の具体例は、上記のシャフト部2の構成材料の説明が参照される。なかでも、牽引部材収納チューブ8は金属から構成されることが好ましく、ステンレスから構成されることがより好ましい。このように牽引部材収納チューブ8が構成されることにより、牽引部材収納チューブ8の耐久性を高めることができ、牽引部材7を牽引部材収納チューブ8の内腔に挿通した状態で遠近方向へ繰り返し移動させても、牽引部材収納チューブ8が破損しにくくなる。また、牽引部材収納チューブ8の外径を小さく形成しても高い剛性を確保しやすくなるため、シャフト部2の全体を細径化することが可能となる。
【0070】
牽引部材収納チューブ8は、内側チューブ4に対して、遠近方向の位置が固定されていることが好ましい。例えば、牽引部材収納チューブ8は、少なくとも一部が、内側チューブ4と接合していることが好ましい。牽引部材収納チューブ8を内側チューブ4に対して遠近方向の位置を固定することにより、シャフト部2のプッシャビリティが高められ、医療用管状体20の病変部への送達性を向上させることができる。また、牽引部材7を安定して近位側に牽引しやすくなるため、医療用管状体20の展開を容易にすることができる。牽引部材収納チューブ8を内側チューブ4に対して遠近方向の位置を固定する方法としては、牽引部材収納チューブ8と内側チューブ4とを接着、溶着、嵌合または螺合する方法、熱収縮性を有する樹脂管へ牽引部材収納チューブ8と内側チューブ4を挿通して樹脂管を熱収縮させる方法、金属管へ牽引部材収納チューブ8と内側チューブ4を挿通して金属管をかしめる方法等が挙げられる。
【0071】
牽引部材収納チューブ8は、保護チューブ5に対して、遠近方向の位置が固定されていることが好ましい。例えば、牽引部材収納チューブ8は、少なくとも一部が、保護チューブ5と接合していることが好ましく、保護チューブ5の近位端部と接合していることがより好ましい。牽引部材収納チューブ8は保護チューブ5と直接的に接合していてもよく、コントローラー14等の他の部材を介して間接的に接合していてもよい。牽引部材収納チューブ8を保護チューブ5に対して遠近方向の位置を固定することにより、シャフト部2のプッシャビリティが高められ、医療用管状体20の病変部への送達性を向上させることができる。また、牽引部材7を安定して近位側に牽引しやすくなるため、医療用管状体20の展開を容易にすることができる。さらに、医療用管状体20の展開時の牽引部材収納チューブ8の遠近方向の移動が抑制されることにより、医療用管状体20を体内に留置する際の位置精度の安定性が向上する。
【0072】
牽引部材収納チューブ8を保護チューブ5に対して遠近方向の位置を固定する方法としては、牽引部材収納チューブ8と保護チューブ5とを接着、溶着、嵌合または螺合する方法、熱収縮性を有する樹脂管へ牽引部材収納チューブ8と保護チューブ5を挿通して樹脂管を熱収縮させる方法、金属管へ牽引部材収納チューブ8と保護チューブ5を挿通して金属管をかしめる方法等が挙げられる。牽引部材収納チューブ8と保護チューブ5とを嵌合する方法として、例えば、牽引部材収納チューブ8の外側面と保護チューブ5の内側面にそれぞれ突起を設け、これらの突起どうしが当接する構造とすることで、牽引部材収納チューブ8の保護チューブ5に対する遠近方向の位置を固定してもよい。あるいは、保護チューブ5をコントローラー14と嵌合し、牽引部材収納チューブ8をコントローラー14に接合することにより、牽引部材収納チューブ8の保護チューブ5に対する遠近方向の位置を固定してもよい。
【0073】
搬送装置1は、外側チューブ3を近位側に移動させた際に、医療用管状体20が外側チューブ3とともに近位側に移動せずに搬送装置1の外方へ展開できるようにするために、医療用管状体20の近位側にストッパー11が設けられることが好ましい(
図2および
図3を参照)。ストッパー11は、内側チューブ4の外側面に設けられることが好ましく、医療用管状体20の近位端より近位側かつ保護チューブ5の遠位端より遠位側に設けられることが好ましい。ストッパー11は、医療用管状体20の近位端に当接させて配置させることがより好ましい。このようにストッパー11を設けることにより、外側チューブ3を近位側に牽引した際に、医療用管状体20をシャフト部2の外側に確実に露出させやすくなる。なお、図面には示されていないが、ストッパー11は、医療用管状体20の内側面と内側チューブ4の外側面の間に、医療用管状体20の内側面と内側チューブ4の外側面に接触するように配置することもできる。
【0074】
ストッパー11の形状は、例えばリング形状とすることができる。ストッパー11の外径は、外側チューブ3の内腔に収納している状態の医療用管状体20の外径と同じかそれより小さいことが好ましい。このようにストッパー11を形成することにより、医療用管状体20が近位側に移動した際に、ストッパー11が医療用管状体20の近位端面や内側面に接触して、医療用管状体20がさらに近位側に移動することを防ぐことができる。
【0075】
ストッパー11は、樹脂、金属またはこれらの複合材料から構成することができる。これらの各材料の具体例は、上記のシャフト部2の構成材料の説明が参照される。なかでも、ストッパー11はエラストマー樹脂から構成されることが好ましく、これによりストッパー11と医療用管状体20が接触した際に、医療用管状体20の変形や損傷を防ぐことができる。エラストマー樹脂としてはポリアミド系樹脂を用いることが好ましく、これによりストッパー11の剛性が高められ、ストッパー11によって医療用管状体20の近位端を支持し、医療用管状体20を効果的に展開することができる。また、ストッパー11の成形加工が容易になるという効果も得られる。
【0076】
シャフト部2には、X線不透過マーカーが設けられてもよい(図示せず)。シャフト部2にX線不透過マーカーを設けることにより、X線透視下において、X線不透過マーカーを目印にして、体内におけるシャフト部2の位置を確認することができる。X線不透過マーカーは、シャフト部2の医療用管状体20が配置された箇所の近傍に設けられることが好ましく、先端チップ10やストッパー11に設けられることが好ましい。X線不透過マーカーを先端チップ10に設けることにより、X線透視下において、シャフト部2の遠位端部の位置を確認することができる。また、X線不透過マーカーをストッパー11に設けることにより、X線透視下において、医療用管状体20の位置や押し出し状態を確認することができる。X線不透過マーカーを設置する数は、1つであってもよく、複数であってもよい。
【0077】
本願は、2019年3月27日に出願された日本国特許出願第2019-060871号に基づく優先権の利益を主張するものである。2019年3月27日に出願された日本国特許出願第2019-060871号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0078】
1:医療用管状体搬送装置
2:シャフト部
3:外側チューブ
4:内側チューブ
5:保護チューブ
6:ガイドワイヤポート
7:牽引部材
8:牽引部材収納チューブ
9:通気口
10:先端チップ
11:ストッパー
12:ベースチューブ
13:被覆チューブ
14:コントローラー
20:医療用管状体