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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】医療用管状体搬送装置
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/966 20130101AFI20230809BHJP
   A61M 25/01 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
A61F2/966
A61M25/01 510
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021511130
(86)(22)【出願日】2020-01-21
(86)【国際出願番号】 JP2020001908
(87)【国際公開番号】W WO2020202715
(87)【国際公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-11-17
(31)【優先権主張番号】P 2019068429
(32)【優先日】2019-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】市村 想生
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 健太郎
【審査官】石田 智樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-271565(JP,A)
【文献】特表2005-535364(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0132026(US,A1)
【文献】特開2010-233934(JP,A)
【文献】国際公開第02/00288(WO,A1)
【文献】特表2017-529894(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/966
A61M 25/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用管状体を体内に搬送する装置であって;
医療用管状体が内腔に配置される外側チューブと;
前記外側チューブの近位端部に接続され、前記外側チューブの近位端より近位側に延在する線状牽引部材と;
前記外側チューブの内腔と前記医療用管状体の内腔に配置されるとともに、前記外側チューブの近位端より近位側に延在する内側チューブと;
前記外側チューブの近位端部と、前記内側チューブの前記外側チューブの近位端より近位側に延在する部分と、前記線状牽引部材とが内腔に配置された保護チューブとを有し;
前記保護チューブの内腔には、前記線状牽引部材と前記内側チューブとを拘束する保持部材が設けられ、前記保持部材が前記線状牽引部材に対して遠近方向に移動可能に形成されていることを特徴とする医療用管状体搬送装置。
【請求項2】
医療用管状体を体内に搬送する装置であって;
医療用管状体が内腔に配置される外側チューブと;
前記外側チューブの近位端部に接続され、前記外側チューブの近位端より近位側に延在する線状牽引部材と;
前記外側チューブの内腔と前記医療用管状体の内腔に配置されるとともに、前記外側チューブの近位端より近位側に延在する内側チューブと;
前記外側チューブの近位端部と、前記内側チューブの前記外側チューブの近位端より近位側に延在する部分と、前記線状牽引部材とが内腔に配置された保護チューブとを有し;
前記保護チューブの内腔には、前記線状牽引部材と前記内側チューブとを拘束する保持部材が設けられ、前記保持部材の遠近方向の長さが縮小可能であることを特徴とする医療用管状体搬送装置。
【請求項3】
前記保持部材は複数設けられている請求項1または2に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項4】
前記複数の保持部材の遠近方向の離間間隔は10mm以上50mm以下である請求項3に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項5】
前記保持部材は、近位側または遠位側から見て、単環状に形成されている請求項1~4のいずれか一項に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項6】
前記単環状に形成された保持部材の無負荷時の内径は、前記線状牽引部材の外径と前記内側チューブの外径の和よりも小さい請求項5に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項7】
前記保持部材は前記線状牽引部材および前記内側チューブに対して遠近方向に移動可能に形成されている請求項1~6のいずれか一項に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項8】
前記保持部材の遠近方向の長さは1mm以上10mm以下である請求項1~7のいずれか一項に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項9】
前記保護チューブの内腔には、前記線状牽引部材が内腔に挿通されている牽引部材収納チューブが設けられ、
前記保持部材は、前記外側チューブの近位端より近位側かつ前記牽引部材収納チューブの遠位端より遠位側に配置されている請求項1~8のいずれか一項に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項10】
前記保持部材は、前記外側チューブが最も遠位側にある状態で、前記外側チューブの近位端と前記牽引部材収納チューブの遠位端との中間点から20mm以内に配置されている請求項9に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項11】
前記保持部材は、前記外側チューブが最も遠位側にある状態で、前記牽引部材収納チューブの遠位端から遠位側に20mm以内に配置されている請求項9または10に記載の医療用管状体搬送装置。
【請求項12】
前記保持部材は、前記外側チューブが最も遠位側にある状態で、前記外側チューブの近位端から近位側に20mm以内に配置されている請求項1~11のいずれか一項に記載の医療用管状体搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステントなどの医療用管状体を体内に搬送する装置である医療用管状体搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ステントに代表される医療用管状体は、胆管や膵管等の消化管、腸骨動脈等の血管等の生体内管腔が狭窄または閉塞することにより生じる様々な疾患を治療するための医療器具である。医療用管状体には、狭窄または閉塞部位等の病変部を内側から拡張し、その管腔内径を維持するために病変部に留置するもの、あるいは、病変部またはその周囲に発生した血栓等を絡め取り体外へ除去し、その病変部における管腔内径を回復させるもの等がある。
【0003】
内視鏡を用いた医療用管状体での治療の一例として、胆管がんで閉塞した胆道において、胆管内から十二指腸側への胆汁の排出(ドレナージ)を行うために、胆道に医療用管状体を留置する方法について以下に説明する。まず、口から十二指腸の胆管の入口(乳頭)まで内視鏡を挿入する。次に、内視鏡を通じて、ガイドワイヤを病変部まで搬送する。さらに、ガイドワイヤに沿って医療用管状体搬送装置を病変部まで搬送する。そして、医療用管状体搬送装置を操作し、医療用管状体を病変部に留置する。
【0004】
医療用管状体搬送装置として、例えば特許文献1には、ガイドワイヤルーメンを有する先端側チューブと、先端側チューブの基端部に先端部が固定された基端側チューブと、先端側チューブの先端側を被包しかつ先端側チューブの基端方向に摺動可能であるステント収納用筒状部材と、ステント収納用筒状部材内に収納されたステントと、ステント収納用筒状部材に一端部が固定され基端側チューブ内を延びる牽引部材とを備える生体器官拡張器具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2006-271565号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示される生体器官拡張器具では、医療用管状体であるステントを、先端側チューブとステント収納用筒状部材の間に配置して病変部まで搬送し、病変部でステント収納用筒状部材の基端側に固定された牽引部材を近位側に牽引することで、ステント収納用筒状部材からステントを露出させて、病変部でステントを展開して留置することができる。ところで、特許文献1の生体器官拡張器具は牽引部材がワイヤから構成されており、このような牽引部材を備えた生体器官拡張器具は、医療用管状体を病変部まで搬送する際に体腔内を屈曲しながら進行することにより、ワイヤ状の牽引部材が先端側チューブに巻き付いたり、医療用管状体を展開させるために牽引部材を近位側に引く際に、先端側チューブと牽引部材との間に屈曲差が生じて牽引部材が先端側チューブ等と強く接触して、牽引抵抗が大きくなるおそれがある。その結果、医療用管状体を体内に留置する際に、牽引部材を好適に牽引できなくなるおそれがある。
【0007】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、線状牽引部材を備えた医療用管状体搬送装置であって、医療用管状体を体内に挿入して病変部まで搬送する際に線状牽引部材が内部で巻き付きにくく、また医療用管状体を体内に留置する際に線状牽引部材の牽引操作を好適に行うことができる医療用管状体搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決することができた本発明の医療用管状体搬送装置とは、医療用管状体を体内に搬送する装置であって;医療用管状体が内腔に配置される外側チューブと;外側チューブの近位端部に接続され、外側チューブの近位端より近位側に延在する線状牽引部材と;外側チューブの内腔と医療用管状体の内腔に配置されるとともに、外側チューブの近位端より近位側に延在する内側チューブと;外側チューブの近位端部と、内側チューブの外側チューブの近位端より近位側に延在する部分と、線状牽引部材とが内腔に配置された保護チューブとを有し;保護チューブの内腔には、線状牽引部材と内側チューブとを拘束する保持部材が設けられ、保持部材が線状牽引部材に対して遠近方向に移動可能に形成されているところに特徴を有する。本発明の医療用管状体搬送装置は、保持部材が、遠近方向の長さが縮小可能であるものであってもよい。
【0009】
本発明の医療用管状体搬送装置は、線状牽引部材と内側チューブとを拘束する保持部材が設けられているため、搬送装置を体内に挿入して医療用管状体を病変部に搬送する際、線状牽引部材が内側チューブに巻き付くことを抑えることができ、また手元側からのトルク伝達性を高めることができる。医療用管状体を体内に留置するために線状牽引部材を近位側に引く際は、保持部材によって線状牽引部材と内側チューブとの屈曲差が広がることを抑えることができるため、線状牽引部材を好適に牽引することができる。なお、「屈曲差」とは、2つ以上の部材どうしの屈曲径が異なることを意味する。
【0010】
保持部材は複数設けられていることが好ましい。保持部材を複数設けることにより、線状牽引部材の内側チューブへの巻き付きを防止したり、線状牽引部材と内側チューブとの屈曲差が広がることを抑えつつ、保持部材と線状牽引部材との接触抵抗の増大を抑えることができる。
【0011】
保持部材が複数設けられる場合、複数の保持部材の遠近方向の離間間隔は10mm以上50mm以下であることが好ましい。複数の保持部材の遠近方向の離間間隔を50mm以下とすることにより、線状牽引部材の内側チューブへの巻き付きを防止しやすくなり、また線状牽引部材を近位側に引く際に、線状牽引部材と内側チューブとの屈曲差が広がることを抑えやすくなる。一方、複数の保持部材の遠近方向の離間間隔を10mm以上とすることにより、線状牽引部材を近位側に引く際に、保持部材と線状牽引部材との接触抵抗の増大を抑えることができる。
【0012】
保持部材は、近位側または遠位側から見て、単環状に形成されていることが好ましい。保持部材を単環状に形成することにより、遠近方向に対する垂直断面で、線状牽引部材と内側チューブをコンパクトにまとめることができ、保護チューブの外径を小さく形成することができる。
【0013】
単環状に形成された保持部材の無負荷時の内径は、線状牽引部材の外径と内側チューブの外径の和よりも小さいことが好ましい。このように保持部材が形成されていれば、線状牽引部材の牽引操作を行わない状態で、保持部材を線状牽引部材および内側チューブの所定の位置に保持することが容易になる。そのため、搬送装置を体内に挿入して医療用管状体を病変部に搬送する際、線状牽引部材と内側チューブに対して保持部材が初期の位置に維持されやすくなり、保持部材を設けることの効果が好適に発揮されやすくなる。
【0014】
保持部材は、線状牽引部材および内側チューブに対して遠近方向に移動可能に形成されていることが好ましい。これにより、線状牽引部材をよりスムーズに近位側に牽引することができる。
【0015】
保持部材の遠近方向の長さは1mm以上10mm以下であることが好ましい。保持部材をこのような大きさで形成することにより、保持部材の強度を確保しやすくなり、また線状牽引部材を近位側に引く際に、保持部材と線状牽引部材との接触抵抗を抑えることができる。
【0016】
保護チューブの内腔には、線状牽引部材が内腔に挿通されている牽引部材収納チューブが設けられ、保持部材は、外側チューブの近位端より近位側かつ牽引部材収納チューブの遠位端より遠位側に配置されていることが好ましい。牽引部材収納チューブの内腔に線状牽引部材を挿通することにより、線状牽引部材が保持部材によって内側チューブと拘束されない部分で、線状牽引部材が保護チューブの内部で迷入することや、線状牽引部材が牽引部材収納チューブ以外の部材に巻き付くことや、線状牽引部材に極度な撓みが発生することを防ぐことができる。
【0017】
保持部材は、外側チューブが最も遠位側にある状態で、外側チューブの近位端と牽引部材収納チューブの遠位端との中間点から20mm以内に配置されていることが好ましい。このように保持部材を配置することにより、線状牽引部材の内側チューブへの巻き付きをより防止しやすくなり、手元側からのトルク伝達性をより高めることができる。
【0018】
保持部材は、外側チューブが最も遠位側にある状態で、牽引部材収納チューブの遠位端から遠位側に20mm以内に配置されていることも好ましい。このように保持部材を配置することにより、線状牽引部材を近位側に引く際の抵抗の増大を抑えることができ、また、線状牽引部材が牽引部材収納チューブに安定して収納されやすくなる。
【0019】
保持部材は、外側チューブが最も遠位側にある状態で、外側チューブの近位端から近位側に20mm以内に配置されていることも好ましい。このように保持部材を配置することにより、線状牽引部材を近位側に引く際の抵抗の増大を抑えることができ、また、線状牽引部材が外側チューブの近位端部の所定の位置に安定して接続されやすくなる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の医療用管状体搬送装置は、線状牽引部材と内側チューブとを拘束する保持部材が設けられているため、搬送装置を体内に挿入して医療用管状体を病変部に搬送する際、線状牽引部材が内側チューブに巻き付くことを抑えることができる。医療用管状体を体内に留置するために線状牽引部材を近位側に引く際は、保持部材によって線状牽引部材と内側チューブとの屈曲差が広がることを抑えることができるため、線状牽引部材を好適に牽引することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明の実施の形態に係る医療用管状体搬送装置の全体図を表す。
図2図1に示した医療用管状体搬送装置の外側チューブ、内側チューブおよび保護チューブを含む部分であって、外側チューブの内腔に医療用管状体が収納された状態の平面図を表す。
図3図2に示した医療用管状体搬送装置の外側チューブ、内側チューブおよび保護チューブを含む部分において、外側チューブを近位側に移動させて医療用管状体を径方向に拡張させた状態の平面図を表す。
図4】医療用管状体搬送装置の外側チューブの近位端部とその近傍部分の遠近方向に沿った部分断面図の一例を表し、図4(a)は、外側チューブが最も遠位側に位置する状態が示されており、図4(b)は、線状牽引部材を近位側に牽引して、外側チューブを近位側に移動させた状態が示されている。
図5】医療用管状体搬送装置の外側チューブの近位端部とその近傍部分の遠近方向に沿った部分断面図の他の一例を表し、図5(a)は、外側チューブが最も遠位側に位置する状態が示されており、図5(b)は、線状牽引部材を近位側に牽引して、外側チューブを近位側に移動させた状態が示されている。
図6】医療用管状体搬送装置の内側チューブ、保護チューブ、線状牽引部材を含む部分の径方向の断面図の一例を表す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、下記実施の形態に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施の形態によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、各図面において、便宜上、ハッチングや部材符号等を省略する場合もあるが、かかる場合、明細書や他の図面を参照するものとする。また、図面における種々部材の寸法は、本発明の特徴の理解に資することを優先しているため、実際の寸法とは異なる場合がある。
【0023】
図1図3を参照して、医療用管状体搬送装置の基本構成について説明する。図1は、医療用管状体搬送装置の全体平面図を表し、図2は、図1に示した医療用管状体搬送装置の部分平面図であって、医療用管状体が搬送装置内に収納された状態の平面図を表し、図3は、図2に示した医療用管状体搬送装置において、外側チューブを近位側に移動させ、医療用管状体が搬送装置から露出して径方向に拡張した状態の平面図を表す。
【0024】
医療用管状体搬送装置1は、ステント等の医療用管状体20を体内に搬送する医療用の装置である。医療用管状体搬送装置1は、外側チューブ3と内側チューブ4と保護チューブ5を含む長尺状の装置であり、これらのチューブの延在方向を遠近方向と称する。医療用管状体搬送装置1の近位側とは、医療用管状体搬送装置1の遠近方向に対する使用者の手元側を指し、遠位側とは近位側の反対方向、すなわち処置対象側の方向を指す。図1図3では、図面の右側が近位側に相当し、図面の左側が遠位側に相当する。また、遠近方向に対する垂直方向を径方向と称する。以下、「医療用管状体搬送装置」を単に「搬送装置」と称する場合がある。
【0025】
搬送装置1は、外側チューブ3と内側チューブ4と保護チューブ5を有する。以下、外側チューブと内側チューブと保護チューブをまとめて「シャフト部」と称する場合がある。搬送装置1は血管や消化管の治療に用いられ、例えば内視鏡を用いた治療の場合は、シャフト部2が内視鏡の鉗子口から鉗子チャンネル内に挿入され、病変部まで搬送される。搬送装置1は、シャフト部2の近位側に設けられたコントローラー12を操作することにより、外側チューブ3を内側チューブ4と保護チューブ5に対して遠近方向に移動させることができる。
【0026】
外側チューブ3はシャフト部2の遠位部に位置し、外側チューブ3の内腔に医療用管状体20が配置される。外側チューブ3は、内側チューブ4および保護チューブ5に対して遠近方向に移動可能に形成され、図2は、外側チューブ3が最も遠位側に位置する状態を示しており、図3は、外側チューブ3が最も近位側に位置する状態を示している。外側チューブ3は、医療用管状体20を病変部まで搬送する際、図2に示されるように、医療用管状体20がシャフト部2の外側に露出しないように保護する。外側チューブ3はまた、医療用管状体20の搬送の際に医療用管状体20を縮径状態に保持するように機能し、これにより医療用管状体20の病変部への搬送を容易にする。外側チューブ3の遠近方向の長さは、内腔に配置する医療用管状体20の遠近方向の長さに応じて適宜設定することができ、例えば50mm~800mm程度とすることができる。外側チューブ3が遠近方向に移動可能な範囲は、外側チューブ3の内腔に配置される医療用管状体20の遠近方向の長さに応じて適宜設定することができ、医療用管状体20の遠近方向の長さよりも長いことが好ましい。外側チューブ3の外径は、例えば0.5mm~3.5mm程度とすればよい。
【0027】
医療用管状体20としては、代表的にはステントが挙げられる。ステントを用いることにより、胆管等の消化管や血管等の生体内管腔が狭窄または閉塞することによって生じる様々な疾患を治療することができる。医療用管状体20には、1本の線状の金属または高分子材料から形成されたコイル状の医療用管状体、金属チューブや高分子材料からなるチューブをレーザーなどで切り抜き加工した医療用管状体、線状の部材を溶接して組み立てた医療用管状体、複数の線状金属を織って作った医療用管状体等がある。医療用管状体としては、ステント以外にも、ステントグラフト、閉塞具、注入カテーテル、プロテーゼ弁等を用いることもできる。
【0028】
医療用管状体20は、拡張機構の観点から、(i)バルーン表面上に医療用管状体を装着(マウント)して病変部まで搬送し、病変部でバルーンによって医療用管状体を拡張するバルーン拡張型と、(ii)拡張を抑制した状態で医療用管状体を病変部まで搬送し、病変部で拡張を抑制する部材を取り外すことにより自ら拡張する自己拡張型とに分類することができる。搬送装置1は、自己拡張型の医療用管状体を搬送するのに好適に用いられ、外側チューブ3が医療用管状体20の拡張を抑制する部材として機能する。従って、医療用管状体20は、外側チューブ3の内腔に設置された状態においては、径方向に縮小し、長手軸方向に伸びることにより、拡張状態よりも細長い円筒状の形態である縮径状態となる。自己拡張型の医療用管状体は、内部にバルーンを設けなくてもよいことから、バルーン拡張型の医療用管状体に比べて縮径状態の径を小さくすることができる。
【0029】
内側チューブ4は、外側チューブ3の内腔と医療用管状体20の内腔に配置され、外側チューブ3の近位端3Pより近位側に延在する。搬送装置1によって医療用管状体20を体内に搬送する際、医療用管状体20は径方向に対して内側チューブ4と外側チューブ3の間に配置される。内側チューブ4の内腔にはガイドワイヤが挿通される。ガイドワイヤを内側チューブ4の内腔に挿通し、ガイドワイヤに沿ってシャフト部2を移動させることで、シャフト部2の先端を病変部まで送達することができる。内側チューブ4の遠近方向の長さは、例えば200mm~3000mm程度であればよい。内側チューブ4の外径は、例えば0.3mm~3.0mm程度とすればよい。
【0030】
外側チューブ3の近位側には、外側チューブ3の近位端部を内腔に配置した保護チューブ5が設けられる。保護チューブ5の内腔には、外側チューブ3の近位端部と内側チューブ4が配置され、保護チューブ5は外側チューブ3の近位端3Pより近位側に延在する。外側チューブ3の近位端部とは、外側チューブ3の近位端3Pを含み、当該近位端から遠位側に所定の長さの部分を意味する。保護チューブ5の近位側には、使用者が搬送装置1を操作するためのコントローラー12が設けられる。保護チューブ5の遠近方向の長さは、例えば150mm~2200mm程度であればよい。保護チューブ5の外径は、例えば0.5mm~3.5mm程度とすればよい。
【0031】
外側チューブ3の近位端部は、外側チューブ3が最も近位側に位置する状態および最も遠位側に位置する状態で、保護チューブ5の内腔に配置される。保護チューブ5の内腔に配置される外側チューブ3の近位端部の遠近方向の長さは、外側チューブ3が最も遠位側に位置する状態で、例えば1mm以上50mm以下であればよい。内側チューブ4は、外側チューブ3の近位端3Pより近位側に延在する部分のうち少なくとも一部が保護チューブ5の内腔に配置され、それよりも遠位側の部分、具体的には保護チューブ5の内腔に配置される外側チューブ3の近位端部と重なる部分も、保護チューブ5の内腔に配置される。
【0032】
保護チューブ5には、内側チューブ4の内腔にガイドワイヤを通すためのガイドワイヤポート6が設けられることが好ましい。ガイドワイヤポート6は、搬送装置1において、内側チューブ4の内腔に挿通されるガイドワイヤの近位側の入口となる。ガイドワイヤポート6の遠近方向の設置位置は、搬送装置1の型式、すなわちラピッドエクスチェンジ型かオーバーザワイヤ型かに応じて適宜設定すればよい。図面には、シャフト部の遠位端部から近位端部に至る途中までガイドワイヤを挿通するラピッドエクスチェンジ型の医療用管状体搬送装置の構成例が示されているが、本発明は、シャフト部の遠位端部から近位端部にわたってガイドワイヤを挿通するオーバーザワイヤ型の医療用管状体搬送装置にも適用できる。ガイドワイヤポート6は、外側チューブ3が最も近位側に位置する状態で、外側チューブ3の近位端3Pよりも近位側にあることが好ましい。
【0033】
外側チューブ3の近位端部には線状牽引部材7が接続される。線状牽引部材7は、外側チューブ3の近位端3Pより近位側に延在し、保護チューブ5の内腔に配置され、コントローラー12に直接または他の部材を介して接続される。コントローラー12を操作することにより、線状牽引部材7および外側チューブ3を遠近方向に移動させることができる。例えば、図2に示した状態から線状牽引部材7を近位側に牽引し、外側チューブ3を内側チューブ4および保護チューブ5に対して近位側に移動させることにより、図3に示すように医療用管状体20をシャフト部2の外側に露出させ、体内に留置することができる。また、医療用管状体20を露出させる途中に線状牽引部材7を遠位側に送り、外側チューブ3を内側チューブ4および保護チューブ5に対して遠位側に移動させて、医療用管状体20を再度外側チューブ3の内腔に収納し、医療用管状体20の留置場所の調整を行うことも可能である。牽引部材7を線状に形成することにより、保護チューブ5の外径を小さく形成することができる。なお、線状牽引部材7を近位側に牽引する操作により、内側チューブ4と保護チューブ5は近位側に移動しない。
【0034】
線状牽引部材7の遠近方向の長さは、例えば150mm~2300mm程度であればよい。線状牽引部材7の外径は、例えば0.1mm~1.5mm程度とすればよい。これにより、線状牽引部材7の強度を確保しつつ、線状牽引部材7の外径を小さくして、保護チューブ5の外径を小さく形成することができる。なお、内側チューブ4の外径は線状牽引部材7の外径よりも大きいことが好ましい。内側チューブ4の外径は、例えば、線状牽引部材7の外径の1.5倍以上が好ましく、2倍以上がより好ましく、2.5倍以上がさらに好ましく、また10倍以下が好ましく、8倍以下がより好ましく、7倍以下がさらに好ましい。
【0035】
線状牽引部材7は、1本のみ設けられてもよく、複数本設けられてもよい。後者の場合、外側チューブ3の周方向の異なる位置に複数本設けられることが好ましい。なお、保護チューブ5の外径をより小さく形成する点からは、線状牽引部材7は1本のみ設けられることが好ましい。
【0036】
外側チューブ3の近位端部において、線状牽引部材7は外側チューブ3の内側面に接続してもよく、外側チューブ3の外側面に接続してもよく、外側チューブ3の内側面と外側面の間の周壁部に接続してもよい。また、外側チューブ3の近位端部を多層構造とし、その層間に線状牽引部材7の遠位端部を配置し、線状牽引部材7を外側チューブ3に接続してもよい。線状牽引部材7の外側チューブ3への接合手段は、接着剤による接着、溶着、嵌合、多層構造からなる外側チューブ3の層間圧着等、公知の接合手段を採用することができる。
【0037】
シャフト部2を構成する各部材は、樹脂、金属またはこれらの複合材料から構成することができる。またこれらの各材料は、生体適合性を有することが好ましい。樹脂材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂、ナイロン等のポリアミド系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のポリエステル系樹脂、PEEK等の芳香族ポリエーテルケトン系樹脂、ポリエーテルポリアミド系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、PTFE、PFA、ETFE等のフッ素系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、シリコーン樹脂等の合成樹脂が挙げられる。金属材料としては、SUS304、SUS316等のステンレス鋼、炭素鋼、白金、ニッケル、コバルト、クロム、チタン、タングステン、金、Ni-Ti合金、Co-Cr合金、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0038】
シャフト部2を構成する外側チューブ3、内側チューブ4、保護チューブ5は、チューブ状に形成されていれば、単層から構成されていてもよく、複数層から構成されていてもよい。これら各チューブは、遠近方向の一部と他部が異なる材料から構成されていてもよく、また遠近方向の一部が単層から構成されており、他部が複数層から構成されていてもよい。これら各チューブは、遠近方向の垂直断面の外縁形状および内縁形状が基本的に略円形であることが好ましい。
【0039】
外側チューブ3、内側チューブ4、保護チューブ5が樹脂と金属の複合材料から構成される場合、当該複合材料としては、樹脂層中に金属線材が配置された構造や、複数の樹脂層の間に金属線材が配置された構造を有するものが挙げられる。金属線材は、例えば、一重または多重のらせん状に配されたり、編組層を形成するものであってもよい。各チューブがこのように構成されていれば、各チューブの強度、摺動性、耐キンク性を高めることができる。
【0040】
外側チューブ3は、フッ素系樹脂からなる樹脂層を有することが好ましく、当該フッ素系樹脂としてはPTFEが好ましい。外側チューブ3がこのように構成されていることにより、摺動性を高めることができる。特に外側チューブ3の内側面がフッ素系樹脂からなる樹脂層から構成されていることが好ましく、これにより、外側チューブ3と医療用管状体20との摺動性を高めたり、外側チューブ3と内側チューブ4との摺動性を高めることができ、医療用管状体20の体内への留置が容易となる。
【0041】
外側チューブ3は、ポリイミド系樹脂からなる樹脂層を有することも好ましく、これにより外側チューブ3に剛性と可撓性の両方を付与することができる。外側チューブ3の強度を高める点からは、外側チューブ3に金属線材が配置されていることも好ましく、特に外側チューブ3が金属線材からなる編組層を有することが好ましい。例えば、外側チューブ3のうち保護チューブ5の内腔に配置される部分は、外側チューブ3を内側チューブ4および保護チューブ5に対して近位側に移動させる際に、保護チューブ5と内側チューブ4の間の空間に外側チューブ3が変形せずに当該空間の延在方向に沿って真っ直ぐに挿入されることが望ましい。すなわち、外側チューブ3が折れ曲がったり、内腔形状が変化したり、遠近方向に伸縮せずに、保護チューブ5と内側チューブ4の間の空間に外側チューブ3が挿入されることが好ましい。そのような観点から、外側チューブ3のうち少なくとも保護チューブ5の内腔に配置される部分は、ポリイミド系樹脂からなる樹脂層を有することが好ましく、さらに金属線材からなる編組層を有することが好ましい。外側チューブ3のうち保護チューブ5の内腔に配置される部分は、フッ素系樹脂からなる樹脂層を内層とし、ポリイミド系樹脂からなる樹脂層を外層とし、これらの内層と外層の間に金属線材(特にステンレス線材)からなる編組層が設けられることが好ましい。
【0042】
内側チューブ4は、ポリイミド系樹脂からなる樹脂層を有することが好ましい。これにより、内側チューブ4の内腔にガイドワイヤを挿通し、ガイドワイヤに沿ってシャフト部2を体内へ送り込みやすくなる。また、内側チューブ4がポリイミド系樹脂からなる樹脂層を有することにより、内側チューブ4の遠近方向の引張強度の向上が向上し、内側チューブ4が破断しにくくなるととともに、医療用管状体20の展開に必要な軸圧縮抵抗力が向上し、医療用管状体20を安定して展開しやすくなる。
【0043】
内側チューブ4はさらに、金属線材(特にステンレス線材)からなる編組層を有していてもよい。このように内側チューブ4が構成されることにより、内側チューブ4の強度、摺動性、耐キンク性を高めることができる。金属線材からなる編組層は内側チューブ4の遠位側の部分のみに設けられてもよく、これによりシャフト部2をガイドワイヤに沿って体内に送り込む際のプッシャビリティを高めることができる。また、内側チューブ4が金属線材からなる編組層を有することにより、内側チューブ4の遠近方向の引張強度や軸圧縮抵抗力が向上し、医療用管状体20の展開操作が安定化し、より安全に医療用管状体20を展開できるようになる。
【0044】
保護チューブ5は、フッ素系樹脂からなる樹脂層を有することが好ましく、当該フッ素系樹脂としてはPTFEが好ましい。これにより、保護チューブ5の摺動性を高めることができる。特に保護チューブ5の内腔に外側チューブ3が配置される部分において少なくとも、保護チューブ5の内側面がフッ素系樹脂からなる樹脂層から構成されていることが好ましく、これにより保護チューブ5と外側チューブ3との摺動性が高まり、医療用管状体20の体内への留置が容易となる。
【0045】
保護チューブ5は、ポリイミド系樹脂やポリアミド系樹脂等からなる樹脂層を有していてもよく、これにより保護チューブ5の剛性を高め、保護チューブ5に剛性と可撓性の両方を付与することができる。その結果、保護チューブ5が、体腔内の形状に沿って屈曲する可撓性と、病変部まで確実に到達する剛性の両方をバランス良く兼ね備えるものとすることができる。そのため、シャフト部2を内視鏡の鉗子チャンネルを通して体内に挿入する際に、シャフト部2を、鉗子チャンネル内を体腔の形状に沿って押し込むことが容易になる。
【0046】
保護チューブ5は、金属線材(特にステンレス線材)からなる編組層を有していてもよく、これにより、保護チューブ5の強度、摺動性、耐キンク性を高めることができる。例えば、保護チューブ5が樹脂層と金属線材からなる編組層を有する場合は、屈曲時でも保護チューブ5の内腔の形状を維持しやすくなるため、保護チューブ5の内腔に配置される内側チューブ4等のキンクを防止することができ、ガイドワイヤに沿ってシャフト部2を遠近方向に移動させることが容易になる。また、保護チューブ5が金属線材からなる編組層を有することにより、保護チューブ5の内腔形状が維持されやすくなり、外側チューブ3を保護チューブ5内で遠近方向に移動させる際の抵抗を減らすことができる。
【0047】
線状牽引部材7は、金属線材や合成樹脂から形成された糸条を用いることができる。線状牽引部材7は、複数の材料からなる複合体であってもよく、例えば金属と合成樹脂の複合体であってもよい。線状牽引部材7は金属線材から構成されることが好ましく、ステンレス線材から構成されることがより好ましい。このように線状牽引部材7が構成されることにより、線状牽引部材7の強度が高まり、線状牽引部材7を繰り返し遠近方向へ移動させても線状牽引部材7が破損しにくくなる。線状牽引部材7はまた、金属線材に樹脂がコーティングされた構成であってもよい。特に線状牽引部材7は、金属線材の表面にフッ素系樹脂、特にPTFEがコーティングされて構成されていることが好ましく、これにより線状牽引部材7の摺動性を高めることができ、医療用管状体20の展開操作が容易になる。線状牽引部材7は、遠近方向に対する垂直断面形状が略円形であることが好ましい。
【0048】
搬送装置1は、上記のようにシャフト部2が構成されることにより、線状牽引部材7を牽引して外側チューブ3を近位側へ移動させて、医療用管状体20を体腔内の所望の位置に精度良く留置することが容易になる。具体的には、外側チューブ3を内側チューブ4と保護チューブ5に対して近位側に移動させたときに、外側チューブ3を保護チューブ5の内腔に収納することができるため、外側チューブ3を遠近方向に移動させる際に、外側チューブ3が内視鏡の鉗子チャンネルや鉗子口と接触することによる摩擦抵抗の発生を低減することができる。そのため、外側チューブ3を遠近方向に移動させる際の操作荷重が低減され、医療用管状体20を安定して展開できる。また、医療用管状体20を展開する際に、保護チューブ5を固定して外側チューブ3のみを線状牽引部材7を介して近位側に牽引することで、シャフト部2の全体が近位側に移動することを抑制でき、医療用管状体20を所望の位置に精度良く留置することができる。
【0049】
ところで、上記のように構成された搬送装置1では、シャフト部2を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入して医療用管状体20を病変部まで搬送する際、シャフト部2が体腔内を屈曲しながら進行することにより、線状牽引部材7が内側チューブ4に巻き付くおそれがある。線状牽引部材7が内側チューブ4に巻き付いてしまった場合、シャフト部2の先端を病変部まで送達した後、線状牽引部材7を近位側に引いて医療用管状体20を展開させようとすると、線状牽引部材7を近位側にスムーズに引くことができなくなる。また、線状牽引部材7が内側チューブ4に巻き付かない場合でも、シャフト部2が屈曲した部分では、線状牽引部材7を近位側に引くと、当該屈曲部分で線状牽引部材7がより直線的に延びるようになるため、内側チューブ4と線状牽引部材7の間および保護チューブ5と線状牽引部材7の間に屈曲差が生じ、線状牽引部材7が保護チューブ5や内側チューブ4に強く接触しやすくなる。そのため、線状牽引部材7を近位側に引くほど、線状牽引部材7の摩擦抵抗が大きくなりやすくなる。また、線状牽引部材7は、線状に形成されることにより、シャフト部2の外径を小さくできるという利点があるものの、線状牽引部材7を保護チューブ5の内腔に単に内側チューブ4と並べて配置するだけでは、手元側からの操作に対するトルク伝達性に劣るという問題もある。
【0050】
そこで搬送装置1では、保護チューブ5の内腔に、線状牽引部材7と内側チューブ4とを拘束する保持部材9を設けている。保持部材9は、図4に示すように、線状牽引部材7に対して遠近方向に移動可能に形成されているか、図5に示すように、保持部材9の遠近方向の長さが縮小可能であるように形成されている。図4および図5は、外側チューブ3の近位端部とその近傍部分の遠近方向に沿った一部断面図を表しており、保持部材9は側面から見た状態を示している。図4(a)および図5(a)は、外側チューブ3が最も遠位側に位置する状態が示されており、図4(b)および図5(b)は、線状牽引部材7を近位側に牽引して、外側チューブ3を近位側に移動させた状態が示されている。
【0051】
搬送装置1は、上記のように線状牽引部材7と内側チューブ4とを拘束する保持部材9が設けられることにより、シャフト部2を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入して医療用管状体20を病変部まで搬送する際、線状牽引部材7が内側チューブ4に巻き付くことを抑えることができ、また線状牽引部材7が内側チューブ4に巻き付きにくいため、手元側からのトルク伝達性を高めることができる。医療用管状体20を展開させるために線状牽引部材7を近位側に引く際には、保持部材9によって線状牽引部材7と内側チューブ4との屈曲差が広がることを抑えることができるため、線状牽引部材7を近位側に好適に牽引することが可能となる。また、保持部材9は、線状牽引部材7に対して遠近方向に移動可能、または、遠近方向に縮小可能に形成されているため、線状牽引部材7を内側チューブ4に対して近位側に移動させることが可能となり、線状牽引部材7を牽引して外側チューブ3を近位側に移動させたときに、保持部材9を、外側チューブ3の近位端3Pより近位側の空間にコンパクトに収納することができる。
【0052】
保持部材9は、径方向に対して線状牽引部材7と内側チューブ4が互いに動ける範囲を制限するように、線状牽引部材7と内側チューブ4とを拘束する。保持部材9は、例えば、近位側または遠位側から見て、線状牽引部材7と内側チューブ4の両方が通る開口を有するように形成されたり、線状牽引部材7が通る開口と内側チューブ4が通る開口をそれぞれ有するように形成されればよい。これらの開口は、径方向に対して線状牽引部材7や内側チューブ4の動ける範囲が制限される限り、開口の縁の一部が途切れていてもよい。図4および図5では、保持部材9は、近位側または遠位側から見て、単環状に形成されており、単環の開口部分に線状牽引部材7と内側チューブ4が挿通されている。
【0053】
保持部材9は、線状牽引部材7が内側チューブ4に対して遠近方向に移動することができるように、線状牽引部材7と内側チューブ4を拘束する。図4では、保持部材9が環状に形成され、保持部材9が線状牽引部材7と内側チューブ4の両方に対して非固定とされている。これにより、保持部材9が線状牽引部材7と内側チューブ4の両方に対して遠近方向に移動可能となっている。なお、保持部材9は、少なくとも線状牽引部材7に対して非固定とされていればよく、これにより線状牽引部材7を近位側に牽引することが可能となるとともに、線状牽引部材7が内側チューブ4に対して遠近方向に対して移動可能となる。
【0054】
図5では、保持部材9が遠近方向に縮小可能となっているが、この場合は、保持部材9が、線状牽引部材7と内側チューブ4に固定されていてもよく、線状牽引部材7に固定され内側チューブ4に対して非固定となっていてもよく、内側チューブ4に固定され線状牽引部材7に対して非固定となっていてもよく、線状牽引部材7と内側チューブ4の両方に対して非固定となっていてもよい。保持部材9が線状牽引部材7に固定される場合、保持部材9の遠位端部が線状牽引部材7に固定されることが好ましい。保持部材9が内側チューブ4に固定される場合、保持部材9の近位端部が内側チューブ4に固定されることが好ましい。
【0055】
図5では、保持部材9がコイル状に形成され、線状牽引部材7を近位側に引いたときに、保持部材9に遠近方向に縮む力が加わることにより、保持部材9が遠近方向に対して縮小可能となっている。保持部材9は、次のいずれかの作用の組み合わせにより、遠近方向に縮むことができる:(i)保持部材9が外側チューブ3の近位端3Pと接し、外側チューブ3によって近位側へ押される;(ii)保持部材9が後述する牽引部材収納チューブ8の遠位端8Dと接し、牽引部材収納チューブ8によって保持部材9の近位端の位置が固定される;(iii)保持部材9の遠位端部が線状牽引部材7に固定され、線状牽引部材7によって近位側に引っ張られる;(iv)保持部材9の近位端部が内側チューブ4に固定されて、内側チューブ4によって保持部材9の近位端の位置が固定される。これらいずれの場合も、線状牽引部材7が内側チューブ4に対して遠近方向に対して移動可能となる。なお、遠近方向に縮小可能な保持部材9は、コイル状に形成されたものに限定されず、例えば編組状、蛇腹状等に形成されたものであってもよい。
【0056】
保持部材9は、樹脂、金属またはこれらの複合材料から構成することができる。これらの各材料の具体例は、上記のシャフト部2の構成材料の説明が参照される。
【0057】
保持部材9は、例えばエラストマー樹脂からなる樹脂層を有することが好ましい。エラストマー樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等が好ましく挙げられ、特にポリアミド系樹脂が好ましい。これにより、保持部材9が弾性変形可能となり、線状牽引部材7の牽引操作を行わない状態で、保持部材9を線状牽引部材7および内側チューブ4の所定の位置に保持することが容易になる。そのため、シャフト部2を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入して医療用管状体20を病変部に搬送する際、線状牽引部材7と内側チューブ4に対して保持部材9が初期の位置に維持されやすくなり、保持部材9を設けることの効果が好適に発揮されやすくなる。
【0058】
保持部材9はまた、摺動性の高い樹脂層を有することも好ましく、このような樹脂としては、ポリオレフィン系樹脂やフッ素系樹脂が好ましく挙げられ、ポリオレフィン系樹脂がより好ましい。保持部材9がこのような樹脂層を有していれば、線状牽引部材7を内側チューブ4に対して近位側に引く際、線状牽引部材7や内側チューブ4と保持部材9との間の摩擦抵抗が低減し、線状牽引部材7の牽引操作が容易になる。
【0059】
保持部材9は、エラストマー樹脂層と高摺動性樹脂層を有することが好ましく、エラストマー樹脂層が高摺動性樹脂層で挟まれた複層構造を有することがより好ましい。保持部材9は、例えば、ポリアミド系樹脂からなる樹脂層がポリオレフィン系樹脂からなる樹脂層で挟まれた複層構造を有することが好ましい。
【0060】
保持部材9は、外側チューブ3の近位端3Pより近位側に設けられ、内側チューブ4および線状牽引部材7と直接接触可能に設けられることが好ましい。保持部材9はまた、後述する牽引部材収納チューブ8の遠位端8Dよりも遠位側に設けられることが好ましい。
【0061】
保持部材9は、1つのみ設けられてもよく、複数設けられてもよい。なお、線状牽引部材7の内側チューブ4への巻き付きを防止し、線状牽引部材7を近位側に引く際の線状牽引部材7と内側チューブ4との屈曲差が広がることを抑える観点からは、保持部材9は、線状牽引部材7の遠近方向の広い範囲に設けられることが好ましいが、この場合、線状牽引部材7を近位側に引く際の抵抗が増大するおそれがある。従って、そのような観点から、保持部材9は複数設けられることが好ましい。詳細には、保持部材9は、遠近方向に離間して複数設けられることが好ましい。このように保持部材9を設けることにより、保持部材9によって、線状牽引部材7の内側チューブ4への巻き付きを防止したり、線状牽引部材7と内側チューブ4との屈曲差が広がることを抑えつつ、保持部材9と線状牽引部材7との接触抵抗の増大を抑えることができる。特に、図4に示すように、保持部材9が遠近方向に縮小しないものである場合は、保持部材9をこのように複数設けることが好ましい。
【0062】
保持部材9を複数設ける場合、保持部材9の遠近方向の離間間隔は10mm以上50mm以下であることが好ましい。具体的には、搬送装置1の使用前やシャフト部2を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入する前において、複数の保持部材9がこのような間隔で配置されていることが好ましい。複数の保持部材9の遠近方向の離間間隔を50mm以下とすることにより、シャフト部2を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入して進行させる際に、線状牽引部材7の内側チューブ4への巻き付きを防止しやすくなり、また線状牽引部材7を近位側に引く際に、線状牽引部材7と内側チューブ4との屈曲差が広がることを抑えやすくなる。一方、複数の保持部材9の遠近方向の離間間隔を10mm以上とすることにより、線状牽引部材7を近位側に引く際に、保持部材9と線状牽引部材7との接触抵抗の増大を抑えることができる。複数の保持部材9の遠近方向の離間間隔は、15mm以上がより好ましく、20mm以上がさらに好ましく、また45mm以下がより好ましく、40mm以下がさらに好ましい。
【0063】
保持部材9の遠近方向の長さは1mm以上10mm以下であることが好ましい。特に、図4に示すように、保持部材9が遠近方向に縮小しないものである場合は、保持部材9をこのような大きさで形成することが好ましい。保持部材9の遠近方向の大きさを1mm以上とすることで、保持部材9の強度を確保しやすくなり、保持部材9の遠近方向の大きさを10mm以下とすることで、線状牽引部材7を近位側に引く際の抵抗を抑えることができる。保持部材9の遠近方向の長さは、2mm以上がより好ましく、3mm以上がさらに好ましく、また8mm以下がより好ましく、7mm以下がさらに好ましい。
【0064】
保持部材9を複数設ける場合は、複数の保持部材9を遠近方向に配置するピッチが、内側チューブ4の外径の5倍以上100倍以下となることも好ましい。具体的には、搬送装置1の使用前やシャフト部2を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入する前において、複数の保持部材9がこのようなピッチで配置されていることが好ましい。これにより、シャフト部2を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入して進行させる際に、線状牽引部材7の内側チューブ4への巻き付きを防止しやすくなり、手元側からのトルク伝達性を高めることができる。複数の保持部材9の遠近方向の配置ピッチは、内側チューブ4の外径の10倍以上であることがより好ましく、20倍以上がさらに好ましく、また85倍以下がより好ましく、50倍以下がさらに好ましい。
【0065】
図5に示すように遠近方向に縮小可能な保持部材9の場合は、保持部材9は1つのみ設けてもよく、複数設けてもよい。保持部材9を複数設ける場合は、上記に説明したように、複数の保持部材9の遠近方向の離間間隔は10mm以上50mm以下とすることが好ましいが、当該離間間隔は10mm未満であってもよい。遠近方向に縮小可能な保持部材9の遠近方向の長さは、上記に説明したように1mm以上10mm以下であってもよいが、遠近方向の長さが10mmを超えるものであってもよい。
【0066】
保持部材9は、より小さい力で線状牽引部材7を近位側に牽引できる点から、図4に示すように、線状牽引部材7に対して遠近方向に移動可能であるものが好ましく、線状牽引部材7を近位側に牽引したときに遠近方向に縮小しないものがより好ましい。また、よりスムーズに線状牽引部材7を近位側に牽引することができる点から、保持部材9は、線状牽引部材7と内側チューブ4の両方に対して遠近方向に移動可能であることがより好ましい。すなわち、保持部材9は、線状牽引部材7と内側チューブ4の両方に対して非固定であることがより好ましい。
【0067】
保持部材9は、図6に示すように、近位側または遠位側から見て、単環状に形成されていることが好ましい。単環状の保持部材9が線状牽引部材7と内側チューブ4を一緒に拘束することにより、遠近方向に対する垂直断面で、線状牽引部材7と内側チューブ4をコンパクトにまとめることができ、保護チューブ5の外径を小さく形成することができる。また、保持部材9と線状牽引部材7との接触面積を小さくすることができるため、線状牽引部材7を近位側に引く際の接触抵抗の増大を抑えることができる。さらに、保持部材9を周方向に同一形状に形成することによって保持部材9の向きの選択性をなくすことができるため、搬送装置1の組立作業が容易になり生産効率を高めることもできる。
【0068】
単環状に形成された保持部材9は弾性変形可能であることが好ましい。これにより、線状牽引部材7の遠近方向への移動を可能にしつつ、保持部材9によって線状牽引部材7と内側チューブ4を好適に保持しやすくなる。
【0069】
単環状に形成された保持部材9の無負荷時の内径は、線状牽引部材7の外径と内側チューブ4の外径の和と近い値であることが好ましい。例えば、単環状の保持部材9の無負荷時の内径は、線状牽引部材7の外径と内側チューブ4の外径の和の0.85倍以上が好ましく、0.90倍以上がより好ましく、0.95倍以上がさらに好ましく、また1.30倍以下が好ましく、1.20倍以下がより好ましく、1.10倍以下がさらに好ましい。これにより、線状牽引部材7の遠近方向への移動を可能にしつつ、保持部材9によって線状牽引部材7と内側チューブ4を好適に保持しやすくなる。なお、無負荷時の保持部材9の形状は、搬送装置1から保持部材9のみを取り出して負荷をかけずに置いたときの形状を意味し、通常は略円形に形成されることが好ましい。
【0070】
単環状に形成された保持部材9の無負荷時の内径は、線状牽引部材7の外径と内側チューブ4の外径の和よりも小さいことが好ましい。例えば、単環状の保持部材9は、近位側または遠位側から見て、無負荷時に略円形に形成され、線状牽引部材7と内側チューブ4を内挿してこれらを保持したときに非円形(例えば、長円形)となることが好ましい。そして、単環状の保持部材9の無負荷時の円形の内径をD1とし、線状牽引部材7の外径をD2とし、内側チューブ4の外径をD3としたとき、D1<D2+D3の関係を有することが好ましい。このように保持部材9が形成されていれば、線状牽引部材7を遠近方向に移動する操作を行わない状態で、保持部材9を線状牽引部材7および内側チューブ4の所定の位置に保持することが容易になる。そのため、シャフト部2を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入して医療用管状体20を病変部に搬送する際、線状牽引部材7と内側チューブ4に対して保持部材9が初期の位置に維持されやすくなり、保持部材9を設けることの効果が好適に発揮されやすくなる。
【0071】
保持部材9は、線状牽引部材7を内側チューブ4に対して遠近方向に移動させる操作を行うまで、線状牽引部材7および/または内側チューブ4に仮留めされていることも好ましい。この場合も、シャフト部2を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入して医療用管状体20を病変部に搬送する際、線状牽引部材7と内側チューブ4に対して保持部材9が初期の位置に維持されやすくなり、保持部材9を設けることの効果が好適に発揮されやすくなる。保持部材9の線状牽引部材7および/または内側チューブ4への仮留めは、例えば、接着力の弱い接着剤で保持部材9を線状牽引部材7および/または内側チューブ4へ接着することにより行うことができる。
【0072】
保護チューブ5の内腔には、線状牽引部材7が内腔に挿通される牽引部材収納チューブ8が設けられることが好ましい。この場合、線状牽引部材7は、遠位端部が外側チューブ3に接合され、外側チューブ3の近位端3Pよりも近位側の部分の少なくとも一部が、牽引部材収納チューブ8の内腔に挿通されることとなる。牽引部材収納チューブ8の内腔に線状牽引部材7を挿通することにより、線状牽引部材7が保持部材9によって内側チューブ4と拘束されない部分で、線状牽引部材7が保護チューブ5の内部で迷入することや、線状牽引部材7が牽引部材収納チューブ8以外の部材に巻き付くことや、線状牽引部材7に極度な撓みが発生することを防ぐことができる。
【0073】
牽引部材収納チューブ8の遠位端8Dは、外側チューブ3が最も近位側に位置する状態で、外側チューブ3の近位端3Pより近位側にあることが好ましい。一方、牽引部材収納チューブ8の近位側の部分については、牽引部材収納チューブ8は保護チューブ5の近位端5Pまで延在することが好ましく、保護チューブ5の近位端5Pよりも近位側に延在し、コントローラー12まで延びていてもよい。
【0074】
牽引部材収納チューブ8が設けられる場合、保持部材9は、外側チューブ3の近位端3Pより近位側かつ牽引部材収納チューブ8の遠位端8Dより遠位側に配置されることが好ましい。これにより、線状牽引部材7が牽引部材収納チューブ8の内腔に収納されない部分で、保持部材9によって線状牽引部材7が内側チューブ4に巻き付くことが抑えられ、また線状牽引部材7を近位側に引く際に、線状牽引部材7と内側チューブ4との屈曲差が広がることを抑えることができる。なお、保持部材9は、外側チューブ3が最も遠位側に位置する状態で、外側チューブ3の近位端3Pより近位側かつ牽引部材収納チューブ8の遠位端8Dより遠位側に設けられることが好ましく、線状牽引部材7を近位側に引いて外側チューブ3が最も近位側に位置する状態においても、保持部材9は、外側チューブ3の近位端3Pより近位側かつ牽引部材収納チューブ8の遠位端8Dより遠位側にあることが好ましい。
【0075】
外側チューブ3が最も遠位側に位置する状態で、外側チューブ3の近位端3Pから牽引部材収納チューブ8の遠位端8Dまでの遠近方向の長さと保持部材9の遠近方向の長さとの差は、外側チューブ3の内腔に配置される医療用管状体20の遠近方向の長さよりも長いことが好ましい。これにより、線状牽引部材7を近位側に牽引した際に、医療用管状体20をシャフト部2の外側に確実に露出させやすくなる。なお、ここで説明した保持部材9の遠近方向の長さとは、保持部材9が複数ある場合はその合計長さを意味し、保持部材9が遠近方向に縮小可能である場合、遠近方向に縮小した状態での遠近方向の長さを意味する。
【0076】
牽引部材収納チューブ8が設けられる場合、保持部材9は、外側チューブ3が最も遠位側にある状態で、外側チューブ3の近位端3Pと牽引部材収納チューブ8の遠位端8Dの間の中間点から20mm以内に配置されることが好ましく、10mm以内がより好ましく、5mm以内がさらに好ましい。これにより、シャフト部2を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入して進行させる際に、線状牽引部材7の内側チューブ4への巻き付きをより防止しやすくなり、手元側からのトルク伝達性をより高めることができる。
【0077】
保持部材9は、外側チューブ3が最も遠位側にある状態で、外側チューブ3の近位端3Pの近傍に配置されることも好ましい。例えば、保持部材9は、外側チューブ3の近位端3Pから近位側に20mm以内に配置されることが好ましく、10mm以内がより好ましく、5mm以内がさらに好ましい。外側チューブ3の近位端3Pの近傍で線状牽引部材7が内側チューブ4に巻き付くと、線状牽引部材7を近位側に引く際の抵抗が大きく増大するところ、このように保持部材9を配置することにより、線状牽引部材7を近位側に引く際の抵抗の増大を抑えることができる。また、このように保持部材9を配置することにより、線状牽引部材7が外側チューブ3の近位端部の所定の位置に安定して接続されやすくなる。
【0078】
保持部材9は、外側チューブ3が最も遠位側にある状態で、牽引部材収納チューブ8の遠位端8Dの近傍に配置されることも好ましい。例えば、保持部材9は、牽引部材収納チューブ8の遠位端8Dから遠位側に20mm以内に配置されることが好ましく、10mm以内がより好ましく、5mm以内がさらに好ましい。牽引部材収納チューブ8の遠位端8Dの近傍で線状牽引部材7が内側チューブ4に巻き付くと、線状牽引部材7を近位側に引く際の抵抗が大きく増大するところ、このように保持部材9を配置することにより、線状牽引部材7を近位側に引く際の抵抗の増大を抑えることができる。また、このように保持部材9を配置することにより、線状牽引部材7が牽引部材収納チューブ8に安定して収納されやすくなる。
【0079】
牽引部材収納チューブ8の内径は、線状牽引部材7の外径の1.1倍以上が好ましく、1.2倍以上がより好ましく、1.3倍以上がさらに好ましい。これにより、線状牽引部材7を遠近方向に移動させる際に、線状牽引部材7と牽引部材収納チューブ8との間で摩擦抵抗が過度に増大しにくくなる。一方、牽引部材収納チューブ8の内径は、線状牽引部材7の外径の3.0倍以下が好ましく、2.5倍以下がより好ましく、2.0倍以下がさらに好ましい。これにより、牽引部材収納チューブ8内での線状牽引部材7の撓みを抑制し、線状牽引部材7を効率的に牽引することができる。
【0080】
牽引部材収納チューブ8は、樹脂、金属またはこれらの複合材料から構成することができる。これらの各材料の具体例は、上記のシャフト部2の構成材料の説明が参照される。なかでも、牽引部材収納チューブ8は金属から構成されることが好ましく、ステンレスから構成されることがより好ましい。このように牽引部材収納チューブ8が構成されることにより、牽引部材収納チューブ8の耐久性を高めることができ、線状牽引部材7を牽引部材収納チューブ8の内腔に挿通した状態で遠近方向へ繰り返し移動させても、牽引部材収納チューブ8が破損しにくくなる。また、牽引部材収納チューブ8の外径を小さく形成しても高い剛性を確保しやすくなるため、シャフト部2の全体を細径化することが可能となる。
【0081】
牽引部材収納チューブ8は、内側チューブ4に対して、遠近方向の位置が固定されていることが好ましい。例えば、牽引部材収納チューブ8は、少なくとも一部が、内側チューブ4と接合していることが好ましい。牽引部材収納チューブ8を内側チューブ4に対して遠近方向の位置を固定することにより、シャフト部2のプッシャビリティが高められ、医療用管状体20の病変部への送達性を向上させることができる。また、線状牽引部材7を安定して近位側に牽引しやすくなるため、医療用管状体20の展開を容易にすることができる。牽引部材収納チューブ8を内側チューブ4に対して遠近方向の位置を固定する方法としては、牽引部材収納チューブ8と内側チューブ4とを接着、溶着、嵌合または螺合する方法、熱収縮性を有する樹脂管へ牽引部材収納チューブ8と内側チューブ4を挿通して樹脂管を熱収縮させる方法、金属管へ牽引部材収納チューブ8と内側チューブ4を挿通して金属管をかしめる方法等が挙げられる。
【0082】
牽引部材収納チューブ8は、保護チューブ5に対して、遠近方向の位置が固定されていることが好ましい。例えば、牽引部材収納チューブ8は、少なくとも一部が、保護チューブ5と接合していることが好ましく、保護チューブ5の近位端部と接合していることがより好ましい。牽引部材収納チューブ8は保護チューブ5と直接的に接合していてもよく、コントローラー12等の他の部材を介して間接的に接合していてもよい。牽引部材収納チューブ8を保護チューブ5に対して遠近方向の位置を固定することにより、シャフト部2のプッシャビリティが高められ、医療用管状体20の病変部への送達性を向上させることができる。また、線状牽引部材7を安定して近位側に牽引しやすくなるため、医療用管状体20の展開を容易にすることができる。さらに、医療用管状体20の展開時の牽引部材収納チューブ8の遠近方向の移動が抑制されることにより、医療用管状体20を体内に留置する際の位置精度の安定性が向上する。
【0083】
牽引部材収納チューブ8を保護チューブ5に対して遠近方向の位置を固定する方法としては、牽引部材収納チューブ8と保護チューブ5とを接着、溶着、嵌合または螺合する方法、熱収縮性を有する樹脂管へ牽引部材収納チューブ8と保護チューブ5を挿通して樹脂管を熱収縮させる方法、金属管へ牽引部材収納チューブ8と保護チューブ5を挿通して金属管をかしめる方法等が挙げられる。牽引部材収納チューブ8と保護チューブ5とを嵌合する方法として、例えば、牽引部材収納チューブ8の外側面と保護チューブ5の内側面にそれぞれ突起を設け、これらの突起どうしが当接する構造とすることで、牽引部材収納チューブ8の保護チューブ5に対する遠近方向の位置を固定してもよい。あるいは、保護チューブ5をコントローラー12と嵌合し、牽引部材収納チューブ8をコントローラー12に接合することにより、牽引部材収納チューブ8の保護チューブ5に対する遠近方向の位置を固定してもよい。
【0084】
搬送装置1は、内側チューブ4の遠位端部に先端チップ10が設けられることが好ましい(図1図3を参照)。先端チップ10は内腔を有し、当該内腔が内側チューブ4の内腔と連通していることが好ましい。先端チップ10は、外側チューブ3が最も遠位側に位置する状態で、シャフト部2の遠位端部を構成し、これにより、シャフト部2を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入して医療用管状体20を病変部に搬送する際に、シャフト部2の先端が生体内管腔を傷つけることを防止することができる。また、先行するガイドワイヤや鉗子チャンネルへのシャフト部2の追従性、病変部へのシャフト部2の先端の送達性を高めることができ、搬送装置1の操作性が向上する。
【0085】
先端チップ10の近位端は、外側チューブ3が最も遠位側に位置する状態で、外側チューブ3の遠位端より近位側に位置することが好ましい。すなわち、先端チップ10の近位端部は外側チューブ3の遠位端部の内腔にあることが好ましい。これにより、シャフト部2を内視鏡の鉗子チャンネルに挿入して医療用管状体20を病変部に搬送する際に、先端チップ10の屈曲の動きに対して外側チューブ3が追従しやすくなり、医療用管状体20を病変部に搬送する際のシャフト部2の操作性を高めることができる。
【0086】
先端チップ10は、樹脂、金属またはこれらの複合材料から構成することができる。これらの各材料の具体例は、上記のシャフト部2の構成材料の説明が参照される。なかでも、先端チップ10は、エラストマー樹脂から構成されることが好ましい。エラストマー樹脂としては、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂等が好ましく挙げられ、特にポリアミド系樹脂から構成されることが好ましい。このように先端チップ10が構成されることにより、先端チップ10のガイドワイヤへの追従性とシャフト部2の先端の安全性を高めることができる。
【0087】
搬送装置1は、外側チューブ3を近位側に移動させた際に、医療用管状体20が外側チューブ3とともに近位側に移動せずに搬送装置1の外方へ展開できるようにするために、医療用管状体20の近位側にストッパー11が設けられることが好ましい。ストッパー11は、内側チューブ4の外側面に設けられることが好ましく、医療用管状体20の近位端より近位側かつ保護チューブ5の遠位端より遠位側に設けられることが好ましい。ストッパー11は、医療用管状体20の近位端に当接させて配置させることがより好ましい。このようにストッパー11を設けることにより、外側チューブ3を近位側に牽引した際に、医療用管状体20をシャフト部2の外側に確実に露出させやすくなる。なお、図面には示されていないが、ストッパー11は、医療用管状体20の内側面と内側チューブ4の外側面の間に、医療用管状体20の内側面と内側チューブ4の外側面に接触するように配置することもできる。
【0088】
ストッパー11の形状は、例えばリング形状とすることができる。ストッパー11の外径は、外側チューブ3の内腔に収納している状態の医療用管状体20の外径と同じかそれより小さいことが好ましい。このようにストッパー11を形成することにより、医療用管状体20が近位側に移動した際に、ストッパー11が医療用管状体20の近位端面や内側面に接触して、医療用管状体20がさらに近位側に移動することを防ぐことができる。
【0089】
ストッパー11は、樹脂、金属またはこれらの複合材料から構成することができる。これらの各材料の具体例は、上記のシャフト部2の構成材料の説明が参照される。なかでも、ストッパー11はエラストマー樹脂から構成されることが好ましく、これによりストッパー11と医療用管状体20が接触した際に、医療用管状体20の変形や損傷を防ぐことができる。エラストマー樹脂としてはポリアミド系樹脂を用いることが好ましく、これによりストッパー11の剛性が高められ、ストッパー11によって医療用管状体20の近位端を支持し、医療用管状体20を効果的に展開することができる。また、ストッパー11の成形加工が容易になるという効果も得られる。
【0090】
シャフト部2には、X線不透過マーカーが設けられてもよい(図示せず)。シャフト部2にX線不透過マーカー設けることにより、X線透視下において、X線不透過マーカーを目印にして、体内におけるシャフト部2の位置を確認することができる。X線不透過マーカーは、シャフト部2の医療用管状体20が配置された箇所の近傍に設けられることが好ましく、先端チップ10やストッパー11に設けることが好ましい。X線不透過マーカーを先端チップ10に設けることにより、X線透視下において、シャフト部2の遠位端部を確認することができる。また、X線不透過マーカーをストッパー11に設けることにより、X線透視下において、医療用管状体20の位置や押し出し状態を確認することができる。X線不透過マーカーを設置する数は、1つであってもよく、複数であってもよい。
【0091】
本願は、2019年3月29日に出願された日本国特許出願第2019-068429号に基づく優先権の利益を主張するものである。2019年3月29日に出願された日本国特許出願第2019-068429号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【符号の説明】
【0092】
1:医療用管状体搬送装置
2:シャフト部
3:外側チューブ
4:内側チューブ
5:保護チューブ
6:ガイドワイヤポート
7:線状牽引部材
8:牽引部材収納チューブ
9:保持部材
10:先端チップ
11:ストッパー
12:コントローラー
20:医療用管状体
図1
図2
図3
図4
図5
図6