(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】電磁鋼板およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20230809BHJP
C21D 8/12 20060101ALI20230809BHJP
H01F 1/147 20060101ALI20230809BHJP
C22C 38/34 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
C22C38/00 303U
C21D8/12 A
H01F1/147 183
C22C38/34
(21)【出願番号】P 2021531297
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(86)【国際出願番号】 KR2019016385
(87)【国際公開番号】W WO2020111740
(87)【国際公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-05-31
(31)【優先権主張番号】10-2018-0153081
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】522492576
【氏名又は名称】ポスコ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン ジョン
【審査官】鈴木 葉子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/102328(WO,A1)
【文献】特開2011-157603(JP,A)
【文献】特開2000-104143(JP,A)
【文献】特開2018-066061(JP,A)
【文献】特開2018-053346(JP,A)
【文献】特開平05-186832(JP,A)
【文献】特開2018-066036(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0125986(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第107245564(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 8/12, 9/46
H01F 1/12- 1/38, 1/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁鋼板基材、および
前記電磁鋼板基材の表面から内部方向に存在するスケール層を含み、
スケール層の厚さは1~100nmであり、
前記電磁鋼板基材は重量%で、C:0.1%以下、Si:6.0%以下、P:0.5%以下、S:0.005%以下、Mn:1.0%以下、Al:2.0%以下、N:0.005%以下、Ti:0.005%以下、Cr:0.5%以下を含み、残部がFeおよび不可避的な不純物からな
り、
前記スケール層は、粗度が0.01~0.5nmであり、
前記スケール層上に位置する絶縁コーティング層をさらに含むことを特徴とする無方向性電磁鋼板。
【請求項2】
前記スケール層は、Si:5~80重量%、O:5~80重量%を含み、残部がFeおよび不可避的な不純物からなることを特徴とする請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
【請求項3】
スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、
前記熱延板に形成されたスケール中の一部を除去し、10nm厚さ以上のスケール層を残留させる段階、
前記スケール層が残留する熱延板の粗度を制御する段階、
冷間圧延して冷延板を製造する段階、および、
冷延板を焼鈍する段階を含み、
スケール層の厚さが1~100nmであ
り、
前記スケール層は、粗度が0.01~0.5nmであり、
前記スケール層上に位置する絶縁コーティング層をさらに含むことを特徴とする無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項4】
前記スケール層を残留させる段階で、ブラスト方法を用いて粒子の投入量を鋼板面積当り20g/m
3~1000g/m
3で、粒子の速度は0.1km/s~200km/sで処理することを特徴とする請求項
3に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項5】
前記熱延板の粗度を制御する段階で、粗度を0.1~2.0nmに制御することを特徴とする請求項
3または請求項
4に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項6】
前記熱延板の粗度を制御する段階は、熱延板をゴムでコーティングされたブレードの間に通過させる段階を含むことを特徴とする請求項
3~請求項
5のいずれか一項に記載の電磁鋼板の無方向性製造方法。
【請求項7】
前記ゴムの弾性度は7~45Mpaであることを特徴とする請求項
6に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項8】
前記熱延板の粗度を制御する段階以後、酸洗する段階をさらに含むことを特徴とする請求項
3~請求項
7のいずれか一項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【請求項9】
前記酸洗する段階は、15重量%以下の酸溶液に20~70秒間浸漬する段階を含むことを特徴とする請求項
8に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電磁鋼板およびその製造方法に係り、より詳しくは、熱延板製造後熱延板表面に存在するスケールを一部残留させて絶縁特性および絶縁コーティング層との密着性を改善した電磁鋼板およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁鋼板は変圧器、モータ、電気機器用素材として使用される製品であって、機械的特性など加工性を重要視する一般炭素鋼とは異なり、電気的特性を重要視する機能性製品である。要求される電気的特性としては、鉄損が低いこと、磁束密度、透磁率および占積率が高いことなどがある。
電磁鋼板は、方向性電磁鋼板と無方向性電磁鋼板に区分される。方向性電磁鋼板は、2次再結晶と呼ばれる異常結晶粒成長現象を用いてGoss集合組織({110}<001>集合組織)を鋼板全体に形成させて圧延方向の磁気的特性に優れた電磁鋼板である。無方向性電磁鋼板は、圧延板上のすべての方向に磁気的特性が均一な電磁鋼板である。
無方向性電磁鋼板の生産工程として、スラブ(slab)を製造した後、熱間圧延、冷間圧延、および最終焼鈍を経て絶縁コーティング層を形成する。
方向性電磁鋼板の生産工程として、スラブ(slab)を製造した後、熱間圧延、冷間圧延、1次再結晶焼鈍、2次再結晶焼鈍を経て絶縁コーティング層を形成する。
電磁鋼板の生産工程で熱間圧延以後、表面に発生したスケール(Scale)を除去して以後に展開される工程の効率を改善することが一般的であった。
しかし、酸洗後の鋼板表面はFeが多量存在し、このような鋼板の表面はOH、O官能基と結合力が大きく作用しなくなる。このような表面にO、OH成分から構成された酸化物を含む絶縁コーティング層を形成する時、絶縁コーティング層が均一に形成されない問題および鋼板と絶縁コーティング層間の密着力が劣化する問題が発生した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、方向性電磁鋼板およびその製造方法を提供することを目的とする。より具体的には、熱延板製造後熱延板表面に存在するスケールを一部残留させて絶縁特性および絶縁コーティング層との密着性を改善した電磁鋼板およびその製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明による電磁鋼板製造方法は、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、熱延板に形成されたスケール中の一部を除去し、10nm厚さ以上のスケール層を残留させる段階、スケール層が残留する熱延板の粗度を制御する段階、冷間圧延して冷延板を製造する段階、および冷延板を焼鈍する段階を含むことを特徴とする。
スラブは重量%で、C:0.1%以下、Si:6.0%以下、P:0.5%以下、S:0.005%以下、Mn:1.0%以下、Al:2.0%以下、N:0.005%以下、Ti:0.005%以下、Cr:0.5%以下を含み、残部がFeおよび不可避的な不純物からなることを特徴とする。
スケールは、Si:5~80重量%、O:5~80重量%を含み、残部がFeおよび不可避的な不純物からなることを特徴とする。
スケールを残留させる段階で、ブラスト方法を用いて粒子の投入量を鋼板面積当り20g/m3~1000g/m3で、粒子の速度は0.1km/s~200km/sで処理することを特徴とする。
【0005】
熱延板の粗度を制御する段階で、粗度を0.1~2.0nmに制御することを特徴とする。
熱延板の粗度を制御する段階は、熱延板をゴムでコーティングされたブレードの間に通過させる段階を含むことを特徴とする。
ゴムの弾性度は7~45Mpaであることを特徴とする。
熱延板の粗度を制御する段階以後、酸洗する段階をさらに含むことを特徴とする。
酸洗する段階は、15重量%以下の酸溶液に20~70秒間浸漬する。
本発明による電磁鋼板は、電磁鋼板基材、および電磁鋼板基材の表面から内部方向に存在するスケール層を含み、スケール層の厚さは1~100nmである。
スケール層は、粗度が0.01~0.5nmであり、
スケール層上に位置する絶縁コーティング層をさらに含む。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、絶縁コーティング層とスケール層間の堅固な結合を形成して、絶縁コーティング層との密着性を向上させることができる。
また、スケール層自体に絶縁特性が存在して、絶縁特性を向上させることができる。
また、熱延コイルが待機状態にある時、空気中の酸素から熱延板の酸化を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の一実施形態による電磁鋼板の断面の模式図である。
【
図2】実施例の酸洗以後鋼板断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図3】実施例の酸洗以後鋼板表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図4】比較例の熱間圧延以後鋼板断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図5】比較例の熱間圧延以後鋼板表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図6】実施例の冷間圧延以後鋼板断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【
図7】実施例の冷間圧延以後鋼板断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳しく説明する。
本発明による電磁鋼板製造方法は、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する段階、熱延板に形成されたスケール中の一部を除去し、10nm厚さ以上のスケール層を残留させる段階、スケール層が残留する熱延板の粗度を制御する段階、冷間圧延して冷延板を製造する段階、および冷延板を焼鈍する段階を含む。
以下、各段階別に具体的に説明する。
まず、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する。
スラブの合金成分は特に限定されず、電磁鋼板で使用される合金成分を全て使用することができる。一例として、スラブは重量%で、C:0.1%以下、Si:6.0%以下、P:0.5%以下、S:0.005%以下、Mn:1.0%以下、Al:2.0%以下、N:0.005%以下、Ti:0.005%以下、Cr:0.5%以下を含み、残部がFeおよび不可避的な不純物からなる。
まず、スラブを加熱する。スラブの加熱温度は制限されないが、スラブを1300℃以下の温度で加熱すれば、スラブの柱状晶組織が粗大に成長することを防止して熱間圧延工程で板のクラックが発生するのを防止できる。したがって、スラブの加熱温度は1050℃~1300℃である。
次に、スラブを熱間圧延して熱延板を製造する。熱間圧延温度は制限されず、一実施形態として950℃以下で熱延を終了できる。
熱延板に形成されたスケール中の一部を除去し、10nm厚さ以上のスケールを残留させる。
熱間圧延は高い温度で行われるため、必然的に熱延板表面にスケールが生成される。このスケールは磁性に悪影響を与え、圧延時に破断が発生して全部除去していた。
【0009】
本発明ではスケール層を10nm厚さ以上に意図的に残留させることによって、絶縁コーティング層との密着性を改善し、追加的な絶縁特性を得ることができる。スケールはFe含量が鋼板基材に比べて少なく、その代わりにSi含量が比較的に高くて、OH、O成分と結合力が大きく作用する。したがって、絶縁コーティング層を形成する時、絶縁コーティング層が均一に形成され、密着力が向上する。
また、スケールはO含量が鋼板基材に比べて高くて、それ自体で絶縁特性が付与される。
具体的に、スケールは、Si:5~80重量%、O:5~80重量%を含み、残部がFeおよび不可避的な不純物からなる。さらに具体的に、スケールは、Si:10~60重量%、O:10~60重量%を含み、残部がFeおよび不可避的な不純物からなる。さらに具体的に、スケールは、Si:15~40重量%、O:15~40重量%を含み、残部がFeおよび不可避的な不純物からなる。
スケールを残留させる方法としては特に限定しない。一例として、ブラスト方法を用いて処理することができる。ブラスト方法とは、微細粒子を速い速度で鋼板と衝突させてスケールを除去する方法である。この時、粒子の投入量を鋼板面積当り20g/m3~1000g/m3とし、粒子の速度は0.1km/s~200km/sである。さらに具体的に、粒子の投入量を鋼板面積当り100g/m3~750g/m3とし、粒子の速度は1km/s~100km/sである。
【0010】
これは、スケールを全部除去する既存ブラスト方法に比べて微細粒子の投入量および速度が少ない。このように前述のブラスト方法によってスケールを適切な厚さで残留させることができる。前述の範囲に比べて大きいとか小さければ、適切な厚さのスケールが残留しないことがある。
本発明では、残留するスケールの厚さは10nm以上である。スケールの厚さは鋼板全体にかけて不均一であってもよく、別途の説明がなければ、スケールの厚さは鋼板全体面に対する平均厚さを意味する。スケール厚さが過度に厚く残存する場合、磁性に悪影響を与えることがある。したがって、残留するスケールの厚さは10nm~300nm、さらに具体的に、残留するスケールの厚さは30~150nmがよい。
その次に、スケールが残存する熱延板の粗度を制御する。この時、熱延板の粗度とは熱延板最表面の粗度、即ち、スケールの粗度を意味する。スケールが残存する場合、粗度が非常に大きくなる。これは磁性に悪影響を与える。したがって、スケールを除去せずに、粗度のみを制御することが必要である。
【0011】
本発明では、粗度制御を通じて熱延板の粗度を0.1~2.0nmに制御する。粗度が過度に高ければ、磁性に悪影響を与えることがある。逆に、粗度を過度に低く制御しようとする時、スケールが全て除去される問題が発生することがある。したがって、前述の範囲に粗度を制御することができる。さらに具体的に、粗度を1.0~1.5nmに制御することができる。
粗度の制御方法として、熱延板をゴムでコーティングされたブレードの間に通過させる方法がある。
この時、ゴムの弾性度は7~45Mpaになる。弾性度が適切でない時、粗度制御が難しいことがある。
熱延板の粗度を制御する段階以後、酸洗する段階をさらに含む。酸洗を通じて熱延板の粗度をさらに制御することができる。酸洗時、酸溶液の濃度が高いか、浸漬時間が長くなれば、スケールが全て除去される問題が発生することがある。したがって、15重量%以下の酸溶液に20~70秒間浸漬する。
【0012】
次に、熱延板を冷間圧延して、冷延板を製造する。熱延板厚さによって異なるように適用できるが、70~95%の圧下率を適用して最終厚さが0.2~0.65mmになるように冷間圧延する。冷間圧延は1回の冷間圧延によって実施するか、あるいは必要によって中間焼鈍を挟む2回以上の冷間圧延を行って実施することも可能である。
冷間圧延過程でスケール層も共に圧延されて、厚さが薄くなる。冷間圧延以後、スケール層の厚さは1~100nmに、さらに、5~20nmになり得る。
その次に、冷延板を焼鈍する。この時、無方向性電磁鋼板または方向性電磁鋼板用途によって冷延板を焼鈍する工程が異なる。
具体的に、無方向性電磁鋼板を製造する場合、850~1050℃の温度で30秒~3分間焼鈍する。亀裂温度が過度に高ければ結晶粒の急激な成長が発生し磁束密度と高周波鉄損が低下することがある。さらに具体的に、900~1000℃の亀裂温度で最終焼鈍することができる。最終焼鈍過程で、前段階の冷間圧延段階で形成された加工組織が全て(即ち、99%以上)再結晶できる。
【0013】
方向性電磁鋼板を製造する場合、冷間圧延された冷延板を1次再結晶焼鈍する。1次再結晶焼鈍段階でゴス結晶粒の核が生成される1次再結晶が起こる。1次再結晶焼鈍過程で鋼板の脱炭および窒化が行われる。脱炭および窒化のために水蒸気、水素およびアンモニアの混合ガス雰囲気下で1次再結晶焼鈍することができる。
窒化のためにアンモニアガスを使用して鋼板に窒素イオンを導入し主析出物である(Al、Si、Mn)NおよびAlNなどの窒化物を形成するに当たり、脱炭を終えて窒化処理するか、あるいは脱炭と同時に窒化処理を共に行うことができるように同時に窒化処理を行うか、あるいは窒化処理を先ず行った後に脱炭を行う方法のいずれも本発明の効果を発揮することに問題がない。
1次再結晶焼鈍は、800~900℃の温度範囲で実施できる。
その次に、1次再結晶焼鈍が完了した冷延板を2次再結晶焼鈍する。この時、1次再結晶焼鈍が完了した冷延板に焼鈍分離剤を塗布した後、2次再結晶焼鈍することができる。この時、焼鈍分離剤は特に制限せず、MgOを主成分として含む焼鈍分離剤を使用することができる。
【0014】
2次再結晶焼鈍の目的は、2次再結晶による{110}<001>集合組織形成、脱炭時形成された酸化層とMgOの反応によるガラス質被膜形成で絶縁性付与、磁気特性を害する不純物の除去にある。2次再結晶焼鈍の方法としては、2次再結晶が起こる前の昇温区間では窒素と水素の混合ガスで維持して粒子成長抑制剤である窒化物を保護することによって2次再結晶がよく発達するようにし、2次再結晶完了後には100%水素雰囲気で長時間維持して不純物を除去するようにする。
その後、絶縁コーティング層を形成する段階をさらに含む。厚さを薄く形成することを除いては一般的な方法を使用して絶縁層を形成することができる。絶縁コーティング層形成方法については電磁鋼板技術分野で広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【0015】
図1は本発明の電磁鋼板100の断面を概略的に示す。
図1を参照して、本発明の電磁鋼板の構造を説明する。
図1の電磁鋼板はただ本発明を例示するためのものであり、本発明がここに限定されるのではない。したがって、電磁鋼板の構造を多様に変形することができる。
図1に示すように、本発明の電磁鋼板100は、電磁鋼板基材10の表面から内部方向に存在するスケール層20を含む。このようにスケール層20を含むことによって、絶縁コーティング層30とスケール層20間の堅固な結合を形成して、絶縁コーティング層30との密着性を向上させることができる。また、スケール層20自体に絶縁特性が存在して、絶縁特性を向上させることができる。
以下では各構成別に詳細に説明する。
まず、電磁鋼板基材10は、電磁鋼板で使用される合金成分を全て使用することができる。一例として、電磁鋼板基材10は重量%で、C:0.1%以下、Si:6.0%以下、P:0.5%以下、S:0.005%以下、Mn:1.0%以下、Al:2.0%以下、N:0.005%以下、Ti:0.005%以下、Cr:0.5%以下を含み、残部がFeおよび不可避的な不純物からなる。
【0016】
スケール層20は、電磁鋼板基材10の表面から内部方向に存在する。スケール層20の厚さは1~100nmに、さらに具体的に、5~20nmになる。スケール層20が過度に薄ければ、前述のスケール層20の存在によって発生する絶縁コーティング層30との密着性の向上および絶縁特性の向上効果を適切に得にくい。また、スケール層20が過度に厚ければ、むしろ磁性に悪影響を与えることがある。したがって、スケール層20の厚さは1~100nmに、さらに具体的に、5~20nmになる。
スケール層20は、Si:5~80重量%、O:5~80重量%を含み、残部がFeおよび不可避的な不純物からなる。さらに具体的に、スケールは、Si:10~60重量%、O:10~60重量%を含み、残部がFeおよび不可避的な不純物からなる。また、スケールは、Si:15~40重量%、O:15~40重量%を含み、残部Feおよび不可避的な不純物からなる。
スケール層20はFe含量が電磁鋼板基材10に比べて少なく、その代わりにSi含量が比較的に高くて、OH、O成分と結合力が大きく作用する。したがって、絶縁コーティング層30を形成する時、絶縁コーティング層30が均一に形成され、密着力が向上する。また、スケール層20はO含量が電磁鋼板基材10に比べて高くて、それ自体で絶縁特性が付与される。
【0017】
図1ではスケール層20表面(即ち、スケール層20と絶縁コーティング層30間の界面)を平らに表現しているが、実質的には
図6のように非常に粗く形成される。このようなスケール層20は粗度が0.01~0.5nmである。粗度が過度に高ければ磁性に悪影響を与えることがある。反対に、粗度を過度に低く制御しようとする時、スケール層20が全て除去される問題が発生する。したがって、前述の範囲にスケール層20の粗度を制御する。
図1に示すように、スケール層20上には絶縁コーティング層30がさらに形成できる。本発明でスケール層20が適切に形成されたため、絶縁コーティング層30の密着性を向上させることができ、絶縁コーティング層30の厚さを薄く形成しても十分な絶縁性を確報することができる。具体的に、絶縁コーティング層30の厚さは0.7~1.0μmになる。絶縁コーティング層30については電磁鋼板技術分野で広く知られているので、詳細な説明は省略する。
以下では実施例を通じて本発明をさらに詳細に説明する。しかし、このような実施例はただ本発明を例示するためのものであり、本発明がここに限定されるのではない。
【0018】
実施例
シリコン(Si)を3.4重量%含み、残部はFeおよびその他不可避的な不純物からなるスラブを準備した。
スラブを1130℃で加熱した後、2.3mm厚さで熱間圧延して、熱延板を製造した。
熱延板をShot Blasterを用いて微細粒子投入量約650g/m
3、投入速度約50km/sに制御して、約100nm厚さのスケール層を残留させた。その後、弾性度約30MpaゴムでコーティングされたBladeの間を通過させて表面粗度を約1.5nmに制御した。その後、約70℃温度の塩酸溶液(約15wt%)に約50秒間浸漬して酸洗処理した。その後、洗浄を実施した。
図2には酸洗以後鋼板断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示した。
図2に示すように、スケール層が白色部分として表示され、スケール層が残留するのを確認することができる。
図3には酸洗以後鋼板表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示した。
図3に示すように、羽毛形状のスケール層が鋼板表面を覆っているのを確認することができる。
その後、冷間圧延して板厚さを0.25mmにした後、最終焼鈍を実施した。鋼板断面を
図6および
図7に示した。
図6および
図7に示すように、冷間圧延および最終焼鈍以後にもスケール層が残存するのを確認することができる。
スケール層は約50nm厚さであり、粗度が約0.1nmであるのが確認された。また、スケール層の合金成分をTEM-FIBで分析した。Si:35.25重量%、O:34.02重量%および残部Feおよび不純物であるのを確認した。
また、2μm×2μm面積でスケールの面積分率が30%以上であるのを確認した。
【0019】
比較例1
シリコン(Si)を3.4重量%含み、残部はFeおよびその他不可避的な不純物からなるスラブを準備した。
スラブを1130℃で加熱した後、2.3mm厚さで熱間圧延して、熱延板を製造した。
熱延板をShot Blasterを用いて微細粒子投入量1300g/m
3、投入速度50km/sに制御して、スケール層を全部除去した。その後、約80℃温度の塩酸溶液(約30wt%)に約100秒間浸漬して酸洗処理した。その後、洗浄を実施した。
図4にでは酸洗以後鋼板断面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示した。
図4で示すように、スケール層が全て除去されるのを確認することができる。
図5には酸洗以後鋼板表面の走査電子顕微鏡(SEM)写真を示した。
図5に示すように、羽毛形状のスケール層が存在せず、鋼板上にスクラッチのみが確認される。
その後、冷間圧延して板厚さを0.25mmにした後、最終焼鈍を実施した。
また、2μm×2μm面積でスケールの面積分率が10%であるのを確認した。
【0020】
比較例2シリコン(Si)を3.4重量%含み、残部はFeおよびその他不可避的な不純物からなるスラブを準備した。
スラブを1130℃で加熱した後、2.3mm厚さで熱間圧延して、熱延板を製造した。
熱延板をShot Blasterを用いて微細粒子投入量約80g/m3、投入速度約50km/sに制御して、約500nm厚さのスケール層を残留させた。その後、約70℃温度の塩酸溶液(約15wt%)に約50秒間浸漬して酸洗処理した。その後、洗浄を実施した。その後、冷間圧延して板厚さを0.25mmにした後、最終焼鈍を実施した。冷間圧延以後約250nmのスケール層が確認された。
【0021】
実験例1:錆生成確認
実施例および比較例で熱延板の酸洗および洗浄以後、冷間圧延前に熱延板を巻き取って下記表1の時間放置した。
2ポイントで光沢を測定して下記表1に示した。光沢はASTM D523光沢計を使用して反射光を入射光と同一の角度で受光する時の光の強度を、屈折率1.567のガラス表面光沢を100にした比率で示した。この時、角度は60゜に設定した。
【表1】
表1に示すように、洗浄直後にはスケール層の存在する実施例が比較例に比べて光沢度が落ちた。しかし、1日後、2日後には、実施例はスケール層によって錆生成が防止された反面、比較例は錆が生成されて、光沢度が顕著に落ちたのを確認することができる。
【0022】
実験例2:絶縁性測定
実施例および比較例で最終焼鈍以後、3ポイントで鋼板の絶縁性を測定して下記表2に示した。また、1μm厚さの絶縁コーティング層を形成した以後、絶縁性を測定して下記表2に示した。絶縁特性はASTM A717国際規格によってFranklin測定器を活用して測定した。
また、密着性は試片を180°曲げる時に被膜剥離存在有無で判断した。顕微鏡x100観察時、まったくなければ非常に良好、x100に3個以下defect/5cmx5cmを良好と表示した。
鉄損(W15/50)は、周波数50Hzの磁場を1.5Teslaまで交流で磁化させた時に発生する電力損失を意味する。
【0023】
【表2】
表2に示すように、スケール層の存在する実施例が比較例1に比べて絶縁特性に優れ、密着性が向上するのを確認することができる。さらに鉄損も向上するのを確認することができる。スケール層が過度に多く残留した比較例2は鉄損が非常に劣位になるのを確認することができる。
本発明は実施例に限定されるわけではなく、互いに異なる多様な形態に製造でき、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者は本発明の技術的な思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態に実施できるということが理解できるはずである。したがって、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的ではないと理解しなければならない。
【符号の説明】
【0024】
100:電磁鋼板
10:電磁鋼板基材
20:スケール層
30:絶縁コーティング層