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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】緩衝器
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/348 20060101AFI20230809BHJP
【FI】
F16F9/348
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021554164
(86)(22)【出願日】2020-09-17
(86)【国際出願番号】 JP2020035183
(87)【国際公開番号】W WO2021084956
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-01-04
(31)【優先権主張番号】P 2019196923
(32)【優先日】2019-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000929
【氏名又は名称】KYB株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122323
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 憲
(72)【発明者】
【氏名】安井 剛
【審査官】児玉 由紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-096474(JP,A)
【文献】特開平11-280819(JP,A)
【文献】実開平02-098234(JP,U)
【文献】特開2007-211909(JP,A)
【文献】特開2002-106624(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00- 9/58
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダと、
前記シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、
前記シリンダ内に設けられた二つの作動室と、
前記ロッドの外周に軸方向移動自在に設けられるとともに、環状弁座と、前記環状弁座の内周に開口して前記二つの作動室同士を連通するポートとを有するバルブディスクと、
前記ポートを開閉するとともに前記環状弁座に着座する状態で前記バルブディスクを軸方向へ付勢する環状のリーフバルブと、
前記ロッドの外周に前記ロッドに対して軸方向移動不能に設けられて前記リーフバルブの内周を支持する環状の内周座又は間座とを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項2】
シリンダと、
前記シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、
前記シリンダ内に設けられた二つの作動室と、
前記ロッドの外周に軸方向移動自在に設けられるとともに、環状弁座と、前記環状弁座の内周に開口して前記二つの作動室同士を連通するポートとを有するバルブディスクと、
前記ポートを開閉する環状のリーフバルブと、
前記ロッドの外周に装着されて前記バルブディスクに隙間を開けて軸方向で対向するとともに、前記リーフバルブの内周側或いは前記バルブディスク側に配置される環状のバルブ調整シムとを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項3】
シリンダと、
前記シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、
前記シリンダ内に設けられた二つの作動室と、
前記ロッドの外周に軸方向移動自在に設けられるとともに、環状弁座と、前記環状弁座の内周に開口して前記二つの作動室同士を連通するポートとを有するバルブディスクと、
前記ポートを開閉する環状のリーフバルブと、
前記ロッドの外周に装着されて前記バルブディスクに隙間を開けて軸方向で対向するとともに、前記リーフバルブの前記バルブディスク側に配置される環状のバルブ調整シムと、
前記ロッドの外周に装着されて前記バルブ調整シムとともに前記リーフバルブの内周を挟持する環状の間座とを備え、
前記リーフバルブは、
前記ポートに通じる連通孔を有して外開きに設定される第一ディスクと、
環状であって前記第一ディスクの前記バルブディスク側に重ねられており前記連通孔を開閉するとともに内径が前記第一ディスクより大径な内開きの第二ディスクとを有する
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項4】
シリンダと、
前記シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、
前記シリンダ内に設けられた二つの作動室と、
前記ロッドの外周に軸方向移動自在に設けられるとともに、環状弁座と、前記環状弁座の内周に開口して前記二つの作動室同士を連通するポートとを有するバルブディスクと、
前記ポートを開閉する環状のリーフバルブと、
前記ロッドの外周に前記ロッドに対して軸方向移動不能に設けられて前記リーフバルブの内周を支持する環状の内周座又は間座とを備え、
前記ポートは、前記二つの作動室のうち一方から他方へ向かう液体の流れに供される第一ポートと、前記二つの作動室のうち他方から一方へ向かう液体の流れに供される第二ポートとを有し、
前記リーフバルブは、前記バルブディスクの軸方向一端側に配置されて前記第一ポートを開閉する第一リーフバルブと、前記バルブディスクの軸方向他端側に配置されて前記第二ポートを開閉する第二リーフバルブとを有し、
前記バルブディスクは、前記第一リーフバルブと前記第二リーフバルブとで軸方向両端側から付勢される
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項5】
シリンダと、
前記シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、
前記シリンダ内に設けられた二つの作動室と、
前記ロッドの外周に固定されるとともに前記二つの作動室を連通するメインポートを有して前記シリンダの内周に摺接するピストンと、
前記ロッドの外周に装着されて前記メインポートを開閉するメインリーフバルブと、
前記ロッドの外周に軸方向移動自在に設けられるとともに、環状弁座と、前記環状弁座の内周に開口して前記二つの作動室同士を連通するポートとを有するバルブディスクと、
前記ポートを開閉する環状のリーフバルブと、
前記ロッドの外周に前記ロッドに対して軸方向移動不能に設けられて前記リーフバルブの内周を支持する環状の内周座又は間座とを備えた
ことを特徴とする緩衝器。
【請求項6】
前記ロッドの外周には前記内周座が設けられており、
前記リーフバルブは、前記ロッドに設けた前記内周座と前記環状弁座との間に介装される内外両開きのリーフバルブである
ことを特徴とする請求項1に記載の緩衝器。
【請求項7】
前記バルブディスクは、前記シリンダの内周に摺接するとともに、前記ロッドに対して径方向への移動が許容される
ことを特徴とする請求項1からのいずれか一項に記載の緩衝器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、緩衝器に関する。
【背景技術】
【0002】
緩衝器は、たとえば、車両の車体と車輪との間に介装されて減衰力を発揮して、車体と車輪の振動を抑制する。緩衝器が発揮する減衰力は、減衰バルブによって発揮され、車両における乗心地を左右するが、近年、車両のサスペンションに利用される緩衝器では、乗心地の向上のため極低速で伸縮する際にも減衰力を発揮することが要望される。
【0003】
緩衝器は、このような要望に応えるために、ピストンに設けられたメインバルブの他に、微低速で伸縮する際に減衰力を発揮する背圧用リーフバルブを備える場合がある。
【0004】
メインバルブは、ピストンに設けたポートを開閉するリーフバルブとオリフィスとを並列した構造となっており、緩衝器の伸縮速度が極低い場合にはリーフバルブは開弁せずオリフィスのみで減衰力を発揮する。ところが、オリフィスは、流量の二乗に比例して減衰力を発揮する特性となっており、緩衝器の伸縮速度が極低く流量がごく少量の場合にはほとんど減衰力を発揮しない。よって、メインバルブのみでは、緩衝器が微低速で伸縮する場合に減衰力を発揮するのが難しい。
【0005】
対して、背圧用リーフバルブは、環状であって、外周がピストンに組付けられたキャップの環状のシート部に支持されるとともに内周がピストンナットの環状のシート部に支持された内外両開きのリーフバルブとされており、メインバルブに直列配置されている。そして、背圧用リーフバルブは、緩衝器が微低速で伸縮する際に撓んで開弁して、減衰力を発揮する。このように構成された緩衝器は、低速以上の速度で伸縮する際に減衰力を発揮するメインバルブに加えて、微極低速で伸縮する際に減衰力を発揮する背圧用リーフバルブを備えているので、微低速で伸縮する際にも減衰力を発揮して、車両における乗心地を向上できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-126198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このように、従来の緩衝器では、微低速で伸縮する際にも減衰力を発揮できるのであるが、車両のばね下部材の共振周波数帯の振動の入力に対してリーフバルブが同じ周波数で開閉を繰り返す。背圧用リーフバルブは、撓んでシート部から離座して開弁してから、自己の弾性による復元力でシート部へ着座する閉弁位置へ戻るので、キャップ或いはピストンナットのシート部に衝突を繰り返すことになる。
【0008】
キャップおよびピストンナットは、ピストンロッドに固定されており、背圧用リーフバルブの前記シート部へ衝突による衝撃がピストンロッドを通じて車両の車体へ伝達され、車室内の搭乗者にコトコト音として知覚され、搭乗者に不快感を与えてしまう。
【0009】
そこで、本発明は、コトコト音を解消して車両における乗心地を向上できる緩衝器の提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記した課題を解決するために、本発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、シリンダ内に設けられた二つの作動室と、ロッドの外周に軸方向移動自在に設けられるとともに環状弁座と環状弁座の内周に開口して二つの作動室同士を連通するポートとを有するバルブディスクと、ポートを開閉するとともに環状弁座に着座する状態でバルブディスクを軸方向へ付勢する環状のリーフバルブと、ロッドの外周にロッドに対して軸方向移動不能に設けられてリーフバルブの内周を支持する環状の内周座又は間座とを備えている。
【0011】
このように構成された緩衝器では、バルブディスクがロッドに対して軸方向へ移動できるので、リーフバルブが環状弁座から離間した状態から着座する際に生じる衝撃がロッドに伝達されるのを抑制して、車体へ振動を与えるのを抑制できる。また、このように構成された緩衝器によれば、微低速で伸縮しても設定通りの減衰力を発揮でき、減衰力不足を生じて乗心地を悪化させる恐れが無くなる。
【0013】
さらに、緩衝器におけるリーフバルブを環状であって内外両開きのリーフバルブとしてもよく、このように構成された緩衝器によれば、単一のリーフバルブで伸縮両側の減衰力を発揮できるので、ピストン部の全長を短くでき、その分、緩衝器のストローク長も確保しやすくなる。
【0014】
他の発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、シリンダ内に設けられた二つの作動室と、ロッドの外周に軸方向移動自在に設けられるとともに環状弁座と環状弁座の内周に開口して二つの作動室同士を連通するポートとを有するバルブディスクと、ポートを開閉する環状のリーフバルブと、ロッドの外周に装着されてバルブディスクに隙間を開けて軸方向で対向するとともにリーフバルブの内周側に配置される環状のバルブ調整シムを備えている。このように構成された緩衝器では、バルブディスクがロッドに対して軸方向へ移動できるので、リーフバルブが環状弁座から離間した状態から着座する際に生じる衝撃がロッドに伝達されるのを抑制して、車体へ振動を与えるのを抑制できる。また、このように構成された緩衝器によれば、バルブ調整シムがリーフバルブに与える初期撓み量の調整だけでなくバルブディスクの移動を規制するストッパとしても機能するので、二つの機能をバルブ調整シムに集約でき、部品点数を削減できコストを低減できる。
【0015】
さらに他の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、シリンダ内に設けられた二つの作動室と、ロッドの外周に軸方向移動自在に設けられるとともに環状弁座と環状弁座の内周に開口して二つの作動室同士を連通するポートとを有するバルブディスクと、ポートを開閉する環状のリーフバルブと、ロッドの外周に装着されてバルブディスクに隙間を開けて軸方向で対向するとともにリーフバルブのバルブディスク側に配置される環状のバルブ調整シムと、ロッドの外周に装着されてバルブ調整シムとともにリーフバルブの内周を挟持する環状の間座とを備え、リーフバルブが、ポートに通じる連通孔を有して外開きに設定される第一ディスクと、環状であって第一ディスクのバルブディスク側に重ねられており連通孔を開閉するとともに内径が第一ディスクより大径な内開きの第二ディスクとを備えている。このように構成された緩衝器では、バルブディスクがロッドに対して軸方向へ移動できるので、リーフバルブが環状弁座から離間した状態から着座する際に生じる衝撃がロッドに伝達されるのを抑制して、車体へ振動を与えるのを抑制できる。また、このように構成された緩衝器によれば、バルブ調整シムがリーフバルブに与える初期撓み量の調整だけでなくバルブディスクの移動を規制するストッパとしても機能するので、二つの機能をバルブ調整シムに集約でき、部品点数を削減できコストを低減できる。また、このように構成された緩衝器によれば、第一ディスクでポートを開放してリーフバルブの外周を液体が通過する際の減衰力を低減しても、第二ディスクを開いて液体が通過する際の減衰力が大きくなるようなことはなく、自由に設定できるので、伸圧両側の減衰力の低減が可能となる。
【0016】
また、別の発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、シリンダ内に設けられた二つの作動室と、ロッドの外周に軸方向移動自在に設けられるとともに、環状弁座と、環状弁座の内周に開口して二つの作動室同士を連通するポートとを有するバルブディスクと、ポートを開閉する環状のリーフバルブと、ロッドの外周にロッドに対して軸方向移動不能に設けられてリーフバルブの内周を支持する環状の内周座又は間座とを備え、ポートが、一方の作動室から他方の作動室へ向かう液体の流れに供される第一ポートと、他方の作動室から一方の作動室へ向かう液体の流れに供される第二ポートとを有し、リーフバルブが、バルブディスクの軸方向一端側に配置されて第一ポートを開閉する第一リーフバルブと、バルブディスクの軸方向他端側に配置されて第二ポートを開閉する第二リーフバルブとを有し、バルブディスクが第一リーフバルブと第二リーフバルブとで軸方向両端側から付勢されていこのように構成された緩衝器では、バルブディスクがロッドに対して軸方向へ移動できるので、リーフバルブが環状弁座から離間した状態から着座する際に生じる衝撃がロッドに伝達されるのを抑制して、車体へ振動を与えるのを抑制できる。また、このように構成された緩衝器では、伸長作動から収縮作動への切換えの際と収縮作動から伸長作動への切換りの際にロッドへの振動の伝達を抑制できるので、より一層コトコト音の発生を抑制して乗心地を向上できる。
【0017】
さらに別の発明の緩衝器は、シリンダと、シリンダ内に移動自在に挿入されるロッドと、シリンダ内に設けられた二つの作動室と、ロッドの外周に固定されるとともに二つの作動室を連通するメインポートを有してシリンダの内周に摺接するピストンと、ロッドの外周に装着されてメインポートを開閉するメインリーフバルブと、ロッドの外周に軸方向移動自在に設けられるとともに、環状弁座と、環状弁座の内周に開口して二つの作動室同士を連通するポートとを有するバルブディスクと、ポートを開閉する環状のリーフバルブと、ロッドの外周にロッドに対して軸方向移動不能に設けられてリーフバルブの内周を支持する環状の内周座又は間座とを備えていこのように構成された緩衝器では、バルブディスクがロッドに対して軸方向へ移動できるので、リーフバルブが環状弁座から離間した状態から着座する際に生じる衝撃がロッドに伝達されるのを抑制して、車体へ振動を与えるのを抑制できる。さらに、緩衝器は、シリンダの内周に摺接するバルブディスクのロッドに対する径方向へ移動を許容してもよい。このように構成された緩衝器によれば、シリンダに対してピストンとバルブディスクが摺接する構造を採用しても摺動抵抗が大きくならず円滑に伸縮でき、高度な寸法管理も不要となるからコストも低減される。
【発明の効果】
【0018】
以上より、本発明の緩衝器によれば、コトコト音を解消して車両における乗心地を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施の形態における緩衝器の縦断面図である。
図2】一実施の形態における緩衝器のピストン部分の拡大断面図である。
図3】一実施の形態の第一変形例における緩衝器のピストン部分の拡大断面図である。
図4】一実施の形態の第二変形例における緩衝器のピストン部分の拡大断面図である。
図5】一実施の形態の第三変形例における緩衝器のピストン部分の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図に示した実施の形態に基づき、本発明を説明する。図1および図2に示すように、一実施の形態における緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に移動自在に挿入されるロッド2と、シリンダ1内に設けられた二つの作動室としての伸側室R1と圧側室R2と、伸側室R1と圧側室R2とを連通するポート3dを有するバルブディスク3と、ポート3dを開閉するリーフバルブ4とを備えている。そして、この緩衝器Dの場合、図示しない車両における車体と車軸との間に介装されて使用され、車体および車輪の振動を抑制する。
【0021】
以下、緩衝器Dの各部について詳細に説明する。図1に示すように、シリンダ1の上端には、環状のロッドガイド20が装着されており、シリンダ1の下端はキャップ21で閉塞されている。そして、シリンダ1内には、先端にピストン5とバルブディスク3とが装着されたロッド2が移動自在に挿入されている。
【0022】
ロッド2は、ロッドガイド内に摺動自在に挿通されてシリンダ1内に挿入されており、ロッドガイド20によって軸方向への移動が案内される。また、シリンダ1内は、ピストン5およびバルブディスク3とによって、作動油等の液体が充填される伸側室R1と圧側室R2とに区画されている。なお、液体は、作動油以外にも、たとえば、水、水溶液といった液体の使用もできる。
【0023】
なお、シリンダ1内であって圧側室R2よりも下方には、シリンダ1内に摺動自在に挿入されるフリーピストン6によって気室Gが区画されている。そして、気室Gは、シリンダ1に対してロッド2が軸方向に変位すると、シリンダ1内のロッド2の体積変化に応じてフリーピストン6がシリンダ1に対して軸方向へ変位して拡縮され、この気室Gの容積変化によりシリンダ1内に出入りするロッド2の体積補償がなされる。このように緩衝器Dは、所謂単筒型の緩衝器とされているが、シリンダ1外にリザーバを備える復筒型の緩衝器として構成されてもよい。
【0024】
戻って、ロッド2は、その図1中下端となる先端に設けた小径部2aと、小径部2aの先端の外周に設けた螺子部2bと、小径部2aを設けたことにより形成される段部2cとを備えており、小径部2aの外周に環状のピストン5とバルブディスク3とが装着されている。
【0025】
ピストン5は、環状であって、小径部2aの外周に固定されており、外周がシリンダ1の内周に摺接している。また、ピストン5は、メインポートとしての圧側メインポート5aおよび伸側メインポート5bを備えている。バルブディスク3は、外周がシリンダ1の内周に摺接しており、ポート3dを備えている。そして、ピストン5とバルブディスク3は、協同してシリンダ1内を伸側室R1と圧側室R2とに区画しており、ピストン5とバルブディスク3との間には中間室R3が形成されているこの中間室R3は、ピストン5に設けられた圧側メインポート5aおよび伸側メインポート5bによって圧側室R2に連通され、バルブディスク3に設けられたポート3dによって伸側室R1に連通される。よって、圧側メインポート5a、伸側メインポート5b、中間室R3およびポート3dは、伸側室R1と圧側室R2とを連通する通路を形成している。
【0026】
そして、ロッド2における小径部2aの外周には、図1および図2に示すように、バルブディスクホルダ7、バルブ調整シム8、内周座9、メインリーフバルブとしての圧側メインリーフバルブ10、ピストン5、メインリーフバルブとしての伸側メインリーフバルブ11およびバルブストッパ12が順に嵌合される。そして、これらバルブディスクホルダ7、バルブ調整シム8、内周座9、圧側メインリーフバルブ10、ピストン5、伸側メインリーフバルブ11およびバルブストッパ12は、ロッド2の段部2cと螺子部2bに螺着されるナット13とによって挟持されて固定される。
【0027】
また、バルブディスク3は、バルブディスクホルダ7の外周に軸方向移動自在に遊嵌されており、リーフバルブ4は、本実施の形態では内外両開きの環状のリーフバルブとされてバルブ調整シム8の外周に嵌合されている。
【0028】
バルブディスクホルダ7は、図2に示すように、ロッド2の小径部2aの外周に嵌合する筒部7aと、筒部7aの図2中上端外周に設けられたフランジ部7bとを備えている。バルブディスク3は、本実施の形態では、バルブディスクホルダ7の筒部7aの外周に遊嵌される環状の本体部3aと、本体部3aの外周に設けられてシリンダ1の内周に摺接する摺接筒3bと、本体部3aの図2中下端となるリーフバルブ側端に設けられた環状窓3cと、本体部3aを軸方向に貫いて環状窓3cに連通するポート3dとを備えている。また、バルブディスク3の本体部3aの図2中下端であって環状窓3cの外周には、環状弁座3eが設けられている。環状弁座3eは、本体部3aから図2中下方側へ突出しており、本体部3aの環状窓3cの内周側の軸方向長さL2より本体部3aの図2中上端から環状弁座3eの図2中下端までの軸方向長さの方が長くなっている。
【0029】
バルブディスク3の本体部3aの環状窓3cよりも内周における軸方向長さL2は、バルブディスクホルダ7の筒部7aの図2中下端からフランジ部7bの図2中下端までの軸方向長さL1よりも短く、バルブディスク3は、バルブディスクホルダ7の筒部7aの外周を、長さL1と長さL2の差分Δだけ軸方向に移動できる。このように、バルブディスク3は、本実施の形態ではバルブディスクホルダ7を介してロッド2に装着されるが、ロッド2の外周に段部2cの他に段部を設ければバルブディスクホルダ7を省略できる。
【0030】
また、本実施の形態では、バルブディスク3の本体部3aの内周径は、バルブディスクホルダ7の筒部7aの外周径より大きくフランジ部7bの外周径よりも小さくしてあって、バルブディスク3は、バルブディスクホルダ7から脱落せずに前記内周径と前記外周径との差分だけバルブディスクホルダ7に対して径方向へ変位できる。つまり、バルブディスク3は、ロッド2に対して径方向へ変位でき、減衰力の発生に支障がないことを条件にしてどの程度径方向への変位を許容するかは任意に設定できる。
【0031】
バルブ調整シム8は、環状であってロッド2の小径部2aの外周に嵌合されており、外周に切欠8aを備えている。そして、バルブ調整シム8は、ロッド2の外周に嵌合されるとともに、バルブディスク7の筒部7aの外径よりも大径の外径を有している。また、バルブ調整シム8は、図2中でバルブディスクホルダ7の筒部7aの下端に積層されていて、バルブディスクホルダ7の外周に遊嵌されたバルブディスク3がフランジ部7bに当接した状態では軸方向に隙間を開けて対向する。よって、バルブディスク3が図2に示した状態から図2中下方へ移動してバルブ調整シム8に当接すると、バルブ調整シム8は、バルブディスク3のそれ以上の下方への移動を規制するストッパとして機能する。また、このバルブ調整シム8の外周に嵌合されるリーフバルブ4は、バルブ調整シム8によって調心されて、径方向への移動が規制されている。
【0032】
内周座9は、環状であってロッド2の小径部2aの外周に嵌合されている。内周座9の外周径は、バルブ調整シム8の外周径よりも大径とされており、内周座9の図2中上端外周には、リーフバルブ4の図2中下端内周が着座している。リーフバルブ4の図2中上端外周は、バルブディスク3の環状弁座3eに着座している。内周座9の図2中上端の軸方向の位置は、図2に示すように、バルブディスク3の上端がバルブディスクホルダ7のフランジ部7bに当接した状態における環状弁座3eの下端の軸方向の位置より図2中で高い位置にある。よって、リーフバルブ4を内周座9と環状弁座3eとの間に介装すると、リーフバルブ4は初期撓みが与えられて撓んだ状態で内周座9と環状弁座3eとに着座して、バルブディスク3をフランジ部7bに当接する方向へ付勢する。なお、リーフバルブ4の内周が着座する内周座9の図2中上端の軸方向の位置は、バルブディスクホルダ7の筒部7aの図2中の下端に積層されるバルブ調整シム8の図2中で上下方向の長さである厚みによって調整できる。よって、バルブ調整シム8の厚みの設計変更で、リーフバルブ4に与える初期撓みの大きさである初期撓み量を変更できる。
【0033】
また、リーフバルブ4は、内周座9と環状弁座3eとに着座した状態ではポート3dを閉塞するが、中間室R3の圧力が伸側室R1の圧力よりも高くなると内周側が上方へ撓んで内周座9から離座してポート3dを開放し、反対に、伸側室R1の圧力が中間室R3の圧力よりも高くなると外周側が下方へ撓んで環状弁座3eから離座してポート3dを開放する。
【0034】
なお、バルブ調整シム8の外周にリーフバルブ4を配置した際に、リーフバルブ4の径方向のガタを小さくするには、リーフバルブ4の内周とバルブ調整シム8の外周との間の隙間を極小さくすればよいが、そうすると、リーフバルブ4の内周が内周座9から離座した際の隙間でなる流路の面積も小さくなり、液体が隙間を通過する流れに対して与えられる抵抗が過剰となってしまう場合がある。これに対して、バルブ調整シム8の外周に切欠8aを設ける場合、切欠8aは、リーフバルブ4の内周側が撓んで内周座9から離座した際に流路面積に寄与するので、リーフバルブ4の内周側の開弁時における流路面積が確保され、前記抵抗が過大となるのを抑制できる。したがって、バルブ調整シム8の外周に切欠8aを設けることによって、バルブ調整シム8によるリーフバルブ4の調心性能の向上とリーフバルブ4の開弁時の流路面積の確保とが両立する。なお、切欠8aが不要であれば、切欠8aを廃止することも可能である。
【0035】
つづいて、圧側メインリーフバルブ10は、複数の環状板を積層して構成された積層リーフバルブとされており、ピストン5の図2中上端に重ねられて圧側メインポート5aの出口端を開閉する。圧側メインリーフバルブ10のピストン5に対面する環状板の外周には切欠で形成されるオリフィス10aが設けられている。そして、圧側メインリーフバルブ10は、ピストン5に全体が当接した状態では、圧側室R2と中間室R3とをオリフィス10aのみで連通させる一方、圧側メインポート5aを通じて受ける圧側室R2の圧力が中間室R3の圧力よりも高くなり、両者の差圧が開弁圧に達すると撓んで圧側メインポート5aを開放する。
【0036】
伸側メインリーフバルブ11は、複数の環状板を積層して構成された積層リーフバルブとされており、ピストン5の図2中下端に重ねられて伸側メインポート5bの出口端を開閉する。伸側メインリーフバルブ11のピストン5に対面する環状板の外周には切欠で形成されるオリフィス11aが設けられている。そして、伸側メインリーフバルブ11は、ピストン5に全体が当接した状態では、中間室R3と圧側室R2をオリフィス11aのみで連通させる一方、伸側メインポート5bを通じて中間室R3の圧力が圧側室R2の圧力よりも高くなり、両者の差圧が開弁圧に達すると撓んで伸側メインポート5bを開放する。
【0037】
緩衝器Dは、以上のように構成され、以下に、緩衝器Dの作動について説明する。まず、シリンダ1に対してロッド2が図1中上方へ移動して緩衝器Dが伸長作動する場合の作動について説明する。緩衝器Dが伸長作動すると、ピストン5およびバルブディスク3がシリンダ1に対して図1中上方へ移動するので、伸側室R1が圧縮され圧側室R2が拡大される。
【0038】
すると、伸側室R1内の液体は、圧側室R2へ移動する。緩衝器Dの伸長速度が微低速であって、伸側メインリーフバルブ11が開弁しない状態では、リーフバルブ4が伸側室R1の圧力を受けて外周側が撓んで環状弁座3eから離座してポート3dを開放する。緩衝器Dの伸長作動時には、バルブディスク3が伸側室R1からの圧力によってバルブディスクホルダ7に対して図2中下方へ変位するが、この変位量よりもリーフバルブ4の外周の撓み量が大きく、リーフバルブ4と環状弁座3eとの間に環状隙間が形成されてポート3dが開放される。
【0039】
よって、伸側室R1の液体は、リーフバルブ4の外周を撓ませてポート3dを通過し中間室R3を経て、圧側および伸側のメインポート5a,5bおよびオリフィス10a,11aを通過して圧側室R2へ移動する。このように、伸長作動時であって緩衝器Dの伸長速度が微低速域にある場合、オリフィス10a,11aを通過する流量がごく少量であるので、液体がオリフィス10a,11aを通過する際に生じる圧力損失よりもリーフバルブ4を通過する際に生じる圧力損失の方が大きい。よって、緩衝器Dは、微低速域で伸長する場合、主としてリーフバルブ4によって減衰力を発揮する。
【0040】
また、緩衝器Dの伸長速度が低速域になると、伸側メインリーフバルブ11は開弁しないが、オリフィス10a,11aにおける圧力損失が大きくなるので、緩衝器Dは、リーフバルブ4およびオリフィス10a,11aによって減衰力を発揮する。
【0041】
さらに、この伸長作動時において緩衝器Dの伸長速度が高速になると、伸側メインリーフバルブ11が撓んで開弁して伸側メインポート5bが大きく開放され、緩衝器Dは、主としてリーフバルブ4および伸側メインリーフバルブ11によって減衰力を発揮する。
【0042】
つづいて、シリンダ1に対してロッド2が図1中下方へ移動して緩衝器Dが収縮作動する場合の作動について説明する。緩衝器Dが収縮作動すると、ピストン5およびバルブディスク3がシリンダ1に対して図1中下方へ移動するので、圧側室R2が圧縮され伸側室R1が拡大される。
【0043】
すると、圧側室R2内の液体は、伸側室R1へ移動する。緩衝器Dの収縮速度が微低速であって、圧側メインリーフバルブ10が開弁しない状態では、リーフバルブ4が圧側室R2の圧力を受けて内周側が撓んで内周座9から離座して、リーフバルブ4と内周座9との間に環状隙間が形成されてポート3dが開放される。
【0044】
よって、圧側室R2の液体は、圧側および伸側のメインポート5a,5b、オリフィス10a,11aおよび中間室R3を経て、リーフバルブ4の内周を撓ませてポート3dを通過して伸側室R1へ移動する。このように、収縮作動時であって緩衝器Dの収縮速度が微低速域にある場合、オリフィス10a,11aを通過する流量がごく少量であるので、液体がオリフィス10a,11aを通過する際に生じる圧力損失よりもリーフバルブ4を通過する際に生じる圧力損失の方が大きい。よって、緩衝器Dは、微低速域で収縮する場合、主としてリーフバルブ4によって減衰力を発揮する。
【0045】
また、緩衝器Dの収縮速度が低速域になると、圧側メインリーフバルブ10は開弁しないが、オリフィス10a,11aにおける圧力損失が大きくなるので、緩衝器Dは、リーフバルブ4およびオリフィス10a,11aによって減衰力を発揮する。
【0046】
さらに、この伸長作動時において緩衝器Dの伸長速度が高速になると、圧側メインリーフバルブ10が撓んで開弁して圧側メインポート5aが大きく開放され、緩衝器Dは、主としてリーフバルブ4および圧側メインリーフバルブ10によって減衰力を発揮する。
【0047】
なお、このように本実施の形態の緩衝器Dでは、主としてリーフバルブ4で減衰力を発生する速度域を微低速とし、主としてオリフィス10a,11aで減衰力を発生する速度域を低速とし、主として圧側メインリーフバルブ10或いは伸側メインリーフバルブ11で減衰力を発生する速度域を高速としている。なお、微低速、低速および高速の区分する速度については設計者が任意に設定できる。また、オリフィス10a,11aのいずれか一方は省略でき、さらに、オリフィス10a,11aは、圧側メインリーフバルブ10および伸側メインリーフバルブ11にではなく、ピストン5に設けられてもよい。
【0048】
他方、緩衝器Dが微低速で伸縮を繰り返す場合、圧側メインリーフバルブ10および伸側メインリーフバルブ11は開弁せず、リーフバルブ4がポート3dを開閉する。このように、緩衝器Dが微低速で伸縮を繰り返して、緩衝器Dが伸長作動から収縮作動へ切換わる場合、伸長作動時において、バルブディスク3は、伸側室R1の圧力の作用でバルブディスクホルダ7のフランジ部7bから離間した状態となっていて、リーフバルブ4の外周は、撓んで環状弁座3eから離座した状態となる。この状態から緩衝器Dの伸縮方向が収縮に転じると、リーフバルブ4が圧側室R2の作用を受けるとともに自己の復元力で環状弁座3eに当接する位置まで戻るが、バルブディスク3がフランジ部7bから離間しているので、リーフバルブ4が環状弁座3eに衝突した衝撃はロッド2には伝達されない。
【0049】
このように本実施の形態の緩衝器Dでは、環状弁座3eから離間したリーフバルブ4が環状弁座3eに着座する際に生じる衝撃がロッド2に伝達されないので、その分、車体へ振動を与えずに済む。
【0050】
このように本実施の形態の緩衝器Dは、シリンダ1と、シリンダ1内に移動自在に挿入されるロッド2と、シリンダ1内に設けられた伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2と、ロッド2の外周に軸方向移動自在に設けられるとともに環状弁座3eと環状弁座3eの内周に開口して伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2とを連通するポート3dとを有するバルブディスク3と、ポート3dを開閉する環状のリーフバルブ4とを備えている。このように構成された緩衝器Dでは、バルブディスク3がロッド2に対して軸方向へ移動できるので、リーフバルブ4が環状弁座3eから離間した状態から着座する際に生じる衝撃がロッド2に伝達されるのを抑制して、車体へ振動を与えるのを抑制できる。よって、本実施の形態の緩衝器Dによれば、車体へ振動を与えるのを抑制できるのでコトコト音を解消でき、車両における乗心地を向上できる。
【0051】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、リーフバルブ4が環状弁座3eに着座する状態でバルブディスク3を軸方向へ付勢しており、バルブディスク3がリーフバルブ4の付勢方向とは逆方向方向へ移動しても元の位置(バルブディスク3がバルブディスクホルダ7のフランジ部7bに当接する位置)へ戻すことができるとともに、バルブディスク3がどの位置にいてもポート3dを遮断できなくなって開きっぱなしになる問題も生じない。よって、このように構成された緩衝器Dによれば、微低速で伸縮しても設定通りの減衰力を発揮でき、減衰力不足を生じて乗心地を悪化させる恐れが無くなる。
【0052】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、リーフバルブ4が環状であって、一方の作動室から他方の作動室へ向かう液体の流れに対しては内側と外側の一方が開き、他方の作動室から一方の作動室へ向かう液体の流れに対しては内側と外側の他方が開く、内外両開きのリーフバルブとされているので、単一のリーフバルブ4で伸縮両側の減衰力を発揮でき、ピストン部の全長を短くでき、その分、緩衝器Dのストローク長も確保しやすくなる。なお、本実施の形態では、リーフバルブ4は、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに対しては外周側が開弁し、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに対しては内周側が開弁するようになっているが、流れの方向に対してリーフバルブ4の内周と外周の何れを開弁させるかについては任意に設計変更できる。なお、リーフバルブ4は、複数枚の環状板を積層させて構成される積層リーフバルブとされもよい。
【0053】
なお、リーフバルブ4は、本実施の形態では、バルブディスク3の図2中下方の中間室R3側に配置されているが、バルブディスク3の図2中上方の伸側室R1側に配置されてもよい。この場合、バルブディスクホルダ7を図2に示したところとは天地逆向きに配置して、バルブ調整シム8および内周座9をそれぞれリーフバルブ4とともにバルブディスクホルダ7の図2中上方に配置すればよい。
【0054】
また、本実施の形態の緩衝器Dでは、ロッド2の外周に装着されてバルブディスク3に隙間を開けて軸方向で対向するとともにリーフバルブ4の内周側に配置される環状のバルブ調整シム8を備えている。このように構成された緩衝器Dによれば、バルブ調整シム8がリーフバルブ4に与える初期撓み量の調整だけでなくバルブディスク3の移動を規制するストッパとしても機能するので、二つの機能をバルブ調整シム8に集約でき、部品点数を削減できコストを低減できる。
【0055】
なお、バルブ調整シム8におけるバルブディスク3に軸方向で対向する対向面がバルブディスク3に当接可能な当接面となっており、バルブ調整シム8の外周に段部を形成して段部を当接面をとすれば、当接面の位置をバルブ調整シム8の設計変更で図2中上下に調整できる。
【0056】
さらに、本実施の形態の緩衝器Dでは、ロッド2の外周に固定されるとともに伸側室(作動室)R1と圧側室(作動室)R2とを連通するメインポートとしての圧側メインポート5aおよび伸側メインポート5bを有してシリンダ1の内周に摺接するピストン5と、ロッド2の外周に装着されて圧側メインポート5aおよび伸側メインポート5bを開閉するメインリーバルブとしての圧側メインリーフバルブ10および伸側メインリーフバルブ11を備え、バルブディスク3がシリンダ1の内周に摺接するとともにバルブディスクホルダ7に対して径方向への移動も許容されている。このように構成された緩衝器Dによれば、ピストン5によってロッド2とシリンダ1とが径方向に位置決めされるが、バルブディスク3がロッド2に対して径方向へ移動できるので、ピストン5、ロッド2或いはバルブディスク3に寸法誤差があっても、バルブディスク3とシリンダ1との間に摺動抵抗が大きくならずに済む。よって、このように構成された緩衝器Dによれば、シリンダ1に対してピストン5とバルブディスク3が摺接する構造を採用しても摺動抵抗が大きくならず円滑に伸縮でき、高度な寸法管理も不要となるからコストも低減される。なお、バルブディスク3をシリンダ1或いはピストン5のガイド筒5cに摺接させる場合でも、精度よく寸法管理がなされていれば、バルブディスク3をバルブディスクホルダ7或いはロッド2の外周に遊嵌せずに摺接させるようにしてもよい。
【0057】
また、図3に示す緩衝器Dの第一変形例のように、バルブディスク3の外周をシリンダ1の内周に摺接させるのではなく、ピストン5の図3中下端外周に下方へ向けて突出するガイド筒5cを設けて、バルブディスク3をピストン5の下方側に配置してガイド筒5cの内周に摺接させるようにしてもよい。この場合、伸側メインリーフバルブ11の下方に、バルブディスクホルダ7、バルブ調整シム8、リーフバルブ4および内周座9を積層して、ピストン5の図3中下方であってピストン5とバルブディスク3とで囲まれた空隙を中間室R3とすればよい。なお、ガイド筒5cは、ピストン5と別部品とされてもよい。
【0058】
また、図4に示す緩衝器D1の第二変形例のように、ロッド2の外周にバルブ調整シム8の反バルブディスク側に配置される間座21を設けて、リーフバルブ22をバルブ調整シム8と間座21とで挟持してもよい。具体的には、第二変形例の緩衝器D1は、図4に示すように、図2に示した緩衝器D1の構造においてバルブ調整シム8の反バルブディスク側に、内周座9の代わりに、バルブホルダ23と、バルブホルダ23によって支持される間座21とを備えるとともに、リーフバルブ4に代えて第一ディスク22aと、第二ディスク22bとを有するリーフバルブ22を備えている。
【0059】
バルブホルダ23は、環状であってバルブ調整シム8の反バルブディスク側に積層された状態でロッド2の外周に嵌合されており、外径が二段に大きくなる形状となっていて、外周にバルブディスク側から小径部23a、中径部23bおよび大径部23cを備えている。そして、バルブホルダ23の小径部23aの外周には、リーフバルブ22および間座21が順に嵌合されている。
【0060】
バルブホルダ23をバルブ調整シム8に積層すると、間座21とバルブ調整シム8との間に配置されているリーフバルブ22における第一ディスク22aの内周がバルブ調整シム8と間座21とで挟持される。バルブホルダ23は、リーフバルブ22および間座21の径方向の位置を調心する役割を果たしているが、間座21およびリーフバルブ22の内周をロッド2の外周に直接嵌合するようにする場合、バルブホルダ23を廃止してもよい。
【0061】
リーフバルブ22は、環状であって内周バルブホルダ23の小径部23aの外周に嵌合されるとともにバルブ調子シム8と間座21との間で内周が挟持されて外周側の撓みが許容される第一ディスク22aと、環状であって第一ディスク22aのバルブディスク側面に取付けられた第二ディスク22bとを備えている。
【0062】
第一ディスク22aは、内径がバルブ調子シム8および間座21の外径よりも小径であって、外径がバルブ調整シム8および間座21の外径よりも大径であってバルブディスク3の環状弁座3eに離着座可能な径に設定され、内周がバルブ調整シム8と間座21とで挟持された状態で環状弁座3eに着座している。第一ディスク22aは、伸側室R1の圧力を受けて撓むと環状弁座3eから離間してポート3dを開放して伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに抵抗を与える。このように、第一ディスク22aは、環状弁座3eに離着座してポート3dを開閉できる。また、第一ディスク22aは、軸方向に肉厚を貫通する連通孔22a1を備えている。なお、バルブホルダ23は、リーフバルブ22および間座21の径方向の位置を調心する役割を果たすほか、第一ディスク22aが最大限に撓むと第一ディスク22aの反バルブディスク側面に中径部23bの外周縁を当接させて第一ディスク22aを支持するバルブストッパとしても機能する。
【0063】
第二ディスク22bは、環状であって、内径がバルブ調整シム8の外径よりも大径であって外径が環状弁座3eの内径よりも小さく第一ディスク22aのバルブディスク側面に積層されて外周が第一バルブディスク22aの外周側に溶接等によって取り付けられている。また、第二ディスク22bは、第一ディスク22aに対して、連通孔22a1を閉塞する位置に取り付けられており、全体が第一ディスク22aに当接した状態では連通孔22a1を閉塞し、連通孔22a1を介して中間室R3の圧力を受けると内周側が図4中上方に撓んで連通孔22a1を開放する。つまり、第二ディスク22bは、第一ディスク22aに対して内周側の撓みが許容されており、連通孔22a1を開閉できる。なお、第二ディスク22bは、第一ディスク22aがポート3dを開放する際の液体の流れとは逆向きの圧側室R2から伸側室R1へ向かう流れに対して連通孔22a1を開放して当該液体の流れに抵抗を与える。
【0064】
このように構成された緩衝器D1では、液体が伸側室R1から圧側室R2へ向かう場合、リーフバルブ22における第二ディスク22bは第一ディスク22aに押し付けられて連通孔22a1を閉塞するのに対して、第一ディスク22aは、外周を撓ませてポート3dを開放する。よって、液体が伸側室R1から圧側室R2へ向かう場合、液体は、第一ディスク22aと環状弁座3eとの間に形成される環状隙間を通過して伸側室R1から圧側室R2へ移動する。液体が環状隙間を通過する際に受ける抵抗の大きさは、環状隙間の大きさに依存して変化し、環状隙間の大きさは第一ディスク22aの撓み剛性と環状隙間の直径に依存して変化する。環状隙間の大きさは、環状隙間の直径が大きくなるほど、また、第一ディスク22aの撓み剛性が小さくなるほど、大きくなる。
【0065】
ここで、第一ディスク22aでポート3eを開放してリーフバルブ22の外周を液体が通過する際の減衰力を低減したい場合、第一ディスク22aの撓みの支点となる間座21の外径を可能な限り小径化し、環状弁座3eの内径を可能な限り大径化して第一ディスク22aの撓み量に対する環状弁座3eと第一ディスク22aとの間の環状隙間の大きさを大きくすればよい。よって、第一ディスク22aの撓みの支点となる間座21の外径を可能な限り小径化し、環状弁座3eの内径を可能な限り大径化すると、緩衝器D1が収縮して第一ディスク22aが撓んだ際にリーフバルブ22と環状弁座3eとの間に形成される環状隙間が大きくなるため、リーフバルブ22が液体の流れに与える抵抗を極小さくすることができる。
【0066】
他方、本実施の形態の緩衝器D1では、液体が圧側室R2から伸側室R1へ向かう場合、リーフバルブ22における第一ディスク22aはバルブディスク3の環状弁座3eに押し付けられてポート3dを閉塞するのに対して、第二ディスク22bは、連通孔22a1から圧側室R2の圧力を受けて内周を撓ませて連通孔22bを開いて圧側室R2とポート3dとを連通させる。このように、液体が圧側室R2から伸側室R1へ向かう場合、第二ディスク22bが液体の流れに抵抗を与える。液体が第二ディスク22bを撓ませて連通孔22a1を通過する際の減衰力の大きさは、第一ディスク22aの撓み剛性には関係せず、第二ディスク22bの内周が撓んだ際の第二ディスク22bの内周と第一ディスク22aとの間の環状隙間の大きさに依存する。第二ディスク22aの内外周径差と撓み剛性は、第一ディスク22aとは独立して設定できるので、第二ディスク22bを撓ませて連通孔22a1を通過する際の減衰力は、第一ディスク22aの設定に関係なく別個に設定できる。そして、第二ディスク22bの内周と第一ディスク22aとの間の環状隙間の大きさは、この環状隙間の直径が大きくなるほど、また、第ディスク22bの撓み剛性が低くなるほど、大きくなる。よって、第二ディスク22bの内周径を大きくして、第二ディスク22bの撓み剛性を小さくすると、緩衝器Dが収縮して第二ディスク22bが撓んだ際に第二ディスク22bの内周と第一ディスク22aとの間に形成される環状隙間が大きくなるため、リーフバルブ22が液体の流れに与える抵抗を極小さくすることができる。
【0067】
このように、第一ディスク22aでポート3dを開放してリーフバルブ22の外周を液体が通過する際の減衰力を低減することによって、第二ディスク22bを開いて液体が通過する際の減衰力が大きくなるようなことはなく、連通孔22a1の位置や第一ディスク22aの外径により多少制限はあるものの第二ディスク22bで発生する減衰力を比較的自由に設定できる。
【0068】
このように本実施の形態の緩衝器D1は、ロッド2の外周に装着されてバルブディスク3に隙間を開けて軸方向で対向するとともにリーフバルブ22のバルブディスク側に配置される環状のバルブ調整シム8と、ロッド2の外周に装着されてバルブ調整シム8とともにリーフバルブ22の内周を挟持する環状の間座21とを備え、リーフバルブ22は、ポート3dに通じる連通孔22a1を有して外開きに設定される第一ディスク22aと、環状であって第一ディスク22aのバルブディスク側に重ねられており連通孔22a1を開閉するとともに内径が第一ディスク22aより大径な内開きの第二ディスク22bとを備えている。
【0069】
このように構成された緩衝器D1では、バルブ調整シム8がロッド2の外周に装着されていて、バルブディスク3に軸方向に隙間を開けて対向しており、バルブディスク3が図2中下方へ移動してバルブ調整シム8に当接すると、バルブ調整シム8は、バルブディスク3のそれ以上の下方への移動を規制するストッパとして機能する。また、このバルブ調整シム8の反バルブディスク側に重ねられたリーフバルブ22の内周側の固定位置は、バルブ調整シム8の厚みの変更によって変更可能となっている。よって、バルブ調整シム8の厚みの設計変更で、リーフバルブ22の第一ディスク22aに与える初期撓みの大きさである初期撓み量を変更できる。
【0070】
したがって、このように構成された緩衝器D1によれば、バルブ調整シム8がリーフバルブ22に与える初期撓み量の調整だけでなくバルブディスク3の移動を規制するストッパとしても機能するので、二つの機能をバルブ調整シム8に集約でき、部品点数を削減できコストを低減できる。
【0071】
さらに、このように構成された緩衝器D1によれば、第一ディスク22aでポート3dを開放してリーフバルブ22の外周を液体が通過する際の減衰力を低減しても、第二ディスク22bを開いて液体が通過する際の減衰力が大きくなるようなことはなく、自由に設定できるので、伸圧両側の減衰力の低減が可能となる。以上より、本実施の形態の緩衝器D1によれば、伸圧両側の減衰力を低減できる。
【0072】
また、このように構成された緩衝器D1によれば、ポート3dを開放してリーフバルブ22の外周を液体が通過する際の減衰力は、第一ディスク22aの撓み剛性と間座21の外径と環状弁座3eの外径の設定で調整でき、第ディスク22bが開いて液体が通過する際の減衰力については第二ディスク22bの内外径差と内径の設定で調整でき、両者は独立して調整できるから伸側の減衰力と圧側の減衰力を独立して設定できる。なお、間座21の外径が第ディスク22bの内径よりも大径である場合、伸側室R1の圧力でリーフバルブ22が開弁する場合、第一ディスク22aと第二ディスク22bとの内周が間座21によって支持されて両者が撓むようになる構造となる。この場合でも、ポート3dを開放してリーフバルブ22の外周を液体が通過する際の減衰力は、第一ディスク22aおよび第二ディスク22bの撓み剛性と間座21の外径と環状弁座3eの外径の設定で調整でき、第ディスク22bが開いて液体が通過する際の減衰力については第二ディスク22bの内外径差と内径の設定で調整できるから、伸側の減衰力と圧側の減衰力を個別に設定できる。
【0073】
また、第一ディスク22aと第二ディスク22bは、ともに単一の環状板で構成されているが、ともに積層される複数枚の環状板で構成されてもよい。第二ディスク22bを複数枚の環状板で構成する場合、これら環状板の外周を溶接して第一ディスク22aに一体化すればよい。
【0074】
なお、前述したリーフバルブ22では、第一ディスク22aの外径より第二ディスク2の外径が小さいが、第一ディスク22aと第二ディスク22bの外径を同一に設定して第二ディスク22bを環状弁座3eに着座させるようにしてもよい。第一ディスク22aと第二ディスク22bの外径を同一にすると、第二ディスク22bの内外径差を大きくでき撓み剛性の低減に有利となって減衰力をより低減できる。また、緩衝器D1におけるバルブディスクホルダ7、バルブ調整シム8、リーフバルブ22および間座21を図4に示したところとは天地逆向きに配置して、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れに対して第二ディスク22bが連通孔22a1を開き、反対の圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れに対して第一ディスク22aがポート3dを開くようにしてもよい。
【0075】
また、図4では、リーフバルブ22を第一ディスク22aと第二ディスク22bとを積層した構造としているが、図4のリーフバルブ22に代えて図2のリーフバルブ4へ変更してもよい。この場合は、リーフバルブ4の内周がバルブ調整シム8と間座21とで挟持されるので、リーフバルブ4は外周の撓みみが許容される態様となるが、この場合でも、バルブ調整シム8がバルブディスク3のストッパとして機能するとともにリーフバルブ4の初期撓み量を調整する機能を発揮できる。なお、このように緩衝器を構成する場合、液体がポート3dを伸側室R1から圧側室R2へ、および、圧側室R2から伸側室R1へ移動できるようにしたい場合、リーフバルブ4或いは環状弁座3eにオリフィスやチョークを設ければよい。
【0076】
つづいて、本実施の形態の緩衝器Dでは、バルブディスク3の上方或いは下方のいずれかに内外両開きのリーフバルブ4を設けていたが、図5に示す第三変形例の緩衝器D2のように、バルブディスク31の上下にそれぞれ伸側と圧側のリーフバルブ4a,4bを設けるようにしてもよい。
【0077】
この場合、バルブディスク31は、孔あきの円盤状であって、図5中上下端にそれぞれ設けられる環状窓31a,31bと、各環状窓31a,31bの外周を取り囲む環状弁座31c,31dと、下端の環状弁座31dの外周から開口して上端の環状窓31aに通じる第一ポート31eと、上端の環状弁座31cの外周から開口して下端の環状窓31bに通じる第二ポート31fとを備えている。
【0078】
このバルブディスク31は、ロッド2の外周に嵌合される筒状のカラー32の外周に遊嵌されており、ロッド2に対して径方向への移動が許容されている。そして、カラー32の図5中上方には、内周がロッド2に固定される第一リーフバルブ4aと間座33が積層されるとともに、カラー32の図5中下方にも、内周がロッド2に固定される第二リーフバルブ4bと間座34が積層されている。
【0079】
そして、間座33、第一リーフバルブ4a、カラー32、バルブディスク31、第二リーフバルブ4bおよび間座34の下方には、圧側メインリーフバルブ10、ピストン5および伸側メインリーフバルブ11が潤に積層されてロッド2の外周に組付けられる。このように組み合わされた前述の各部品は、ナット13によってロッド2の小径部2aに固定される。
【0080】
ここで、バルブディスク31の内周側の軸方向長さは、カラー32の軸方向長さよりも短く、バルブディスク31は、バルブディスク3と同様にロッド2に対して軸方向へ移動できる。
【0081】
第一リーフバルブ4aの外周は、バルブディスク31の図5中上端側の環状弁座31cに離着座して、第一ポート31eを開閉する。第二リーフバルブ4bの外周は、外周がバルブディスク31の図5中下端側の環状弁座31dに離着座して第二ポート31fを開閉する。バルブディスク31の環状弁座31cの上端から環状弁座31dの下端までの軸方向長さは、カラー32の軸方向長さよりも長くなっており、第一リーフバルブ4aが環状弁座31cに着座するとともに第二リーフバルブ4bが環状弁座31dに着座すると、第一リーフバルブ4aおよび第二リーフバルブ4bが撓んでバルブディスク31を上下から付勢する。このように、第一リーフバルブ4aと第二リーフバルブ4bとに初期撓みが与えられるので、バルブディスク31は、第一リーフバルブ4aと第二リーフバルブ4bとの双方から付勢されて両者の付勢力がバランスする位置に位置決めされる。
【0082】
このように構成された一実施の形態の第三変形例における緩衝器D2は、微低速で伸長する場合、第二リーフバルブ4bが撓んで、バルブディスク31が伸側室R1の圧力の作用で図5中下方へ移動するとともに第二リーフバルブ4bが環状弁座31dから離座して第二ポート31fが開放される。よって、伸側室R1内の液体が第二ポート31fを介して圧側室R2へ移動し、第二ポート31fは、伸側室R1から圧側室R2へ向かう液体の流れのみを許容している。そして、第三変形例における緩衝器D2は、微低速で伸長する場合第二リーフバルブ4bによって減衰力を発生する。第三変形例における緩衝器D2は、緩衝器Dと同様に、低速で伸長する場合には、第二リーフバルブ4bおよびオリフィス10a,11aによって減衰力を発生し、高速で伸長する場合には主として伸側メインリーフバルブ11によって減衰力を発生する。
【0083】
他方、一実施の形態の第三変形例における緩衝器D2は、微低速で収縮する場合、第一リーフバルブ4aが撓んで、バルブディスク31が圧側室R2の圧力の作用で図5中上方へ移動するとともに第一リーフバルブ4aが環状弁座31dから離座して第一ポート31eが開放される。よって、圧側室R2内の液体が第一ポート31eを介して伸側室R1へ移動し、第一ポート31eは、圧側室R2から伸側室R1へ向かう液体の流れのみを許容している。そして、第三変形例における緩衝器D2は、微低速で収縮する場合第一リーフバルブ4aによって減衰力を発生する。第三変形例における緩衝器D2は、緩衝器Dと同様に、低速で収縮する場合には、第一リーフバルブ4aおよびオリフィス10a,11aによって減衰力を発生し、高速で伸長する場合には主として圧側メインリーフバルブ10によって減衰力を発生する。
【0084】
そして、緩衝器D2が微低速で伸縮を繰り返す場合、圧側メインリーフバルブ10および伸側メインリーフバルブ11は開弁せず、第一リーフバルブ4aおよび第二リーフバルブ4bが対応する第一ポート31eおよび第二ポート31fを開閉する。このように、緩衝器D2が微低速で伸縮を繰り返して、緩衝器Dが伸長作動から収縮作動へ切換わる場合、伸長作動時において、バルブディスク31は、伸側室R1の圧力の作用で図5中下方へ移動して、第二リーフバルブ4bの外周は、撓んで環状弁座31dから離座した状態となる。この状態から緩衝器D2の伸縮方向が収縮に転じると、第二リーフバルブ4bが圧側室R2の作用を受けるとともに自己の復元力で環状弁座31dに当接する位置まで戻るが、バルブディスク31が第一リーフバルブ4aの内周から離間しているので、第二リーフバルブ4bが環状弁座31dに衝突した衝撃はロッド2には伝達されない。
【0085】
また、緩衝器D2が微低速で伸縮を繰り返して、緩衝器Dが収縮作動から伸長作動へ切換わる場合、収縮作動時において、バルブディスク31は、圧側室R2の圧力の作用で図5中上方へ移動し、第一リーフバルブ4aの外周は、撓んで環状弁座31cから離座した状態となる。この状態から緩衝器D2の伸縮方向が伸長に転じると、第一リーフバルブ4aが伸側室R1の作用を受けるとともに自己の復元力で環状弁座31cに当接する位置まで戻るが、バルブディスク31が第二リーフバルブ4bの内周から離間しているので、第一リーフバルブ4aが環状弁座31cに衝突した衝撃はロッド2には伝達されない。
【0086】
このように本実施の形態の緩衝器D2では、環状弁座31c,31dから離間した第一リーフバルブ4a或いは第二リーフバルブ4bが環状弁座31c,31dに着座する際に生じる衝撃がロッド2に伝達されないので、その分、車体へ振動を与えずに済む。
【0087】
このように構成された一実施の形態の第三変形例における緩衝器D2は、バルブディスク31に設けられるポートは、一方の圧側室(作動室)R2から他方の伸側室(作動室)R1へ向かう液体の流れに供される第一ポート31eと、他方の伸側室(作動室)R1から一方の圧側室(作動室)R2へ向かう液体の流れに供される第二ポート31fとを有し、リーフバルブは、バルブディスク31の軸方向一端側となる図5中上端側に配置されて第一ポート31eを開閉する第一リーフバルブ4aと、バルブディスク31の軸方向他端側となる図5中下端側に配置されて第二ポート31fを開閉する第二リーフバルブ4bとを有し、バルブディスク31は、第一リーフバルブ4aと第二リーフバルブ4bとで軸方向両端側となる図5中上下側から付勢されている。
【0088】
このように構成された緩衝器D2では、バルブディスク31がロッド2に対して軸方向へ移動できるので、第一リーフバルブ4aおよび第二リーフバルブ4bが対応する環状弁座31cおよび環状弁座31dから離間した状態から着座する際に生じる衝撃がロッド2に伝達されるのを抑制でき、車体へ振動を与えるのを抑制できる。つまり、第三変形例における緩衝器D2では、伸長作動から収縮作動への切換えの際と収縮作動から伸長作動への切換りの際にロッド2への振動の伝達を抑制できるので、より一層コトコト音の発生を抑制して乗心地を向上できる。
【0089】
また、本実施の形態の緩衝器D2では、第一リーフバルブ4aおよび第二リーフバルブ4bがバルブディスク31を軸方向の両側から付勢しているので、バルブディスク31が軸方向へ移動しても元の位置(第一リーフバルブ4aと第二リーフバルブ4bとの付勢力がバランスする位置)へ戻すことができるとともに、バルブディスク31がどの位置にいても第一ポート31eおよび第二ポート31fを遮断できなくなって開きっぱなしになる問題も生じない。よって、このように構成された緩衝器D2によれば、微低速で伸縮しても設定通りの減衰力を発揮でき、減衰力不足を生じて乗心地を悪化させる恐れが無くなる。
【0090】
さらに、第三変形例における緩衝器D2では、微低速での伸長作動時に第二リーフバルブ4bで減衰力を発生し、微低速での収縮作動時に第一リーフバルブ4aで減衰力を発生するので、伸長作動時の減衰力と収縮作動時の減衰力とを別個独立に設定できる。
【0091】
以上、本発明の好ましい実施の形態を詳細に説明したが、特許請求の範囲から逸脱しない限り、改造、変形、および変更が可能である。
【0092】
本願は、2019年10月30日に日本国特許庁に出願された特願2019-196923に基づく優先権を主張し、この出願の全ての内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0093】
1・・・シリンダ、2・・・ロッド、3,31・・・バルブディスク、4,22・・・リーフバルブ、3d・・・ポート、3e,31c,31d・・・環状弁座、4a・・・第一リーフバルブ、4b・・・第二リーフバルブ、5・・・ピストン、5a・・・圧側メインポート(メインポート)、5b・・・伸側メインポート(メインポート)、8・・・バルブ調整シム、9・・・内周座、10・・・圧側メインリーフバルブ(メインリーフバルブ)、11・・・伸側メインリーフバルブ(メインリーフバルブ)、21・・・間座、22a・・・第一ディスク、22a1・・・連通孔、22b・・・第二ディスク、b31e・・・第一ポート、31f・・・第二ポート、D,D1,D2・・・緩衝器、R1・・・伸側室(作動室)、R2・・・圧側室(作動室)
図1
図2
図3
図4
図5