(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-08
(45)【発行日】2023-08-17
(54)【発明の名称】ポリ(アリーレンエーテル)組成物
(51)【国際特許分類】
C08G 18/48 20060101AFI20230809BHJP
C08G 18/61 20060101ALI20230809BHJP
【FI】
C08G18/48 079
C08G18/61
(21)【出願番号】P 2022506157
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(86)【国際出願番号】 US2020044493
(87)【国際公開番号】W WO2021022156
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-04-26
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521198963
【氏名又は名称】エスエイチピーピー グローバル テクノロジーズ ベスローテン フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】バナック ティモシー エドワード
(72)【発明者】
【氏名】ターキン-タス エイレム
【審査官】前田 直樹
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2018/0126338(US,A1)
【文献】特開平03-292326(JP,A)
【文献】特開平03-250027(JP,A)
【文献】特表昭63-503391(JP,A)
【文献】特公昭49-016193(JP,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/48
C08G 18/61
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイソシアナート化合物とキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体とを含む組成物であって、
前記キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体が、キャッピング剤と、フェノール性末端基を含むアンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体との反応から誘導され、
前記アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体が、一価フェノール、二価フェノール、またはこれらの組み合わせを含むモノマーと、必要に応じて、ヒドロキシ芳香族末端化シロキサンとの酸化共重合生成物であり、
前記キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体が、脂肪族アルコールを含む末端基を含
み、
前記キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体が構造式(1)で示されるものであり、
Q(J-D)
y
(1)
式中、
Qは、前記一価フェノールまたは前記二価フェノールと、必要に応じて、前記ヒドロキシ芳香族末端化シロキサンとから誘導され、Qが前記二価フェノールから誘導される場合、前記二価フェノールが構造式(3)で示されるものであり、
【化1】
(3)
式中、
R
1
、R
2
、R
3
、およびR
4
は出現毎に、独立して、水素、ハロゲン、C
1
~C
12
ヒドロカルビル(但し、前記ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1
~C
12
ヒドロカルビルチオ、C
1
~C
12
ヒドロカルビルオキシ、およびC
2
~C
12
ハロヒドロカルビルオキシ(前記ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)であり、
zは0または1であり、
Yは、次の構造式で示される二価の結合基であり、
【化2】
式中、R
a
、R
b
、R
c
、R
d
、およびR
e
は出現毎に、独立して、水素、C
1
~C
12
ヒドロカルビル、またはC
1
~C
6
ヒドロカルビレンであって、必要に応じて、R
a
とR
b
またはR
c
とR
d
とでC
4
~C
12
シクロアルキレン基となっており、
Jは、構造式(2)で示される構造を持ち、
【化3】
(2)
式中、
Q
1a
は、C
1
~C
12
第一級または第二級アルキルであり、
Q
1b
は、ハロゲン、C
1
~C
12
ヒドロカルビル(但し、前記ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1
~C
12
ヒドロカルビルチオ、C
1
~C
12
ヒドロカルビルオキシ、またはC
2
~C
12
ハロヒドロカルビルオキシ(前記ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)であり、
Q
2
は出現毎に、独立して、水素、ハロゲン、非置換または置換C
1
~C
12
ヒドロカルビル(但し、前記ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1
~C
12
ヒドロカルビルチオ、C
1
~C
12
ヒドロカルビルオキシ、またはC
2
~C
12
ハロヒドロカルビルオキシ(前記ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)であり、
eは、1から200であり、
Dは、脂肪族アルコールを含む末端基であり、
yは1または2である
ことを特徴とする組成物。
【請求項2】
請求項
1に記載の組成物であって、前記一価フェノールが構造式(4)で示されるものであり、
【化4】
(4)
式中、Q
1a
は、C
1
~C
12
第一級または第二級アルキルであり、
Q
1b
は、ハロゲン、C
1
~C
12
ヒドロカルビル(但し、前記ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1
~C
12
ヒドロカルビルチオ、C
1
~C
12
ヒドロカルビルオキシ、またはC
2
~C
12
ハロヒドロカルビルオキシ(前記ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)であり、
Q
2
は出現毎に、独立して、水素、ハロゲン、非置換または置換C
1
~C
12
ヒドロカルビル(但し、前記ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1
~C
12
ヒドロカルビルチオ、C
1
~C
12
ヒドロカルビルオキシ、またはC
2
~C
12
ハロヒドロカルビルオキシ(前記ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)である
ことを特徴とする組成物。
【請求項3】
請求項1
または2に記載の組成物であって、前記ヒドロキシ芳香族末端化シロキサンが構造式(5)で示されるものであり、
【化5】
(5)
式中、
それぞれのR
6は、独立して、水素、またはC
1~14一価有機基であり、
それぞれのR
7は、C
1~6ヒドロカルビレン基であり、
それぞれのR
8は、同じまたは異なるものであって、ハロゲン、シアノ、ニトロ、C
1~8アルキルチオ、C
1~8アルキル、C
1~8アルコキシ、C
2~8アルケニル、C
2~8アルケニルオキシ、C
3~8シクロアルキル、C
3~8シクロアルコキシ、C
6~10アリール、C
6~10アリールオキシ、C
7~12アラルキル、C
7~12アリールアルコキシ、C
7~12アルキルアリール、またはC
7~12アルキルアリールオキシであり、
それぞれのnは、独立して、0から4の整数であり、
Eは、2から20
0である
ことを特徴とする組成物。
【請求項4】
請求項1~
3のいずれか1項に記載の組成物であって、前記キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体が構造式(6)または(7)で示されるものであり、
【化6】
(6)
【化7】
(7)
式中、
Q
1aは出現毎に、C
1~C
12第一級または第二級アルキルであり、
Q
1bは出現毎に、ハロゲン、C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、前記ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(前記ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)であり、
Q
2は出現毎に、独立して、水素、ハロゲン、非置換または置換C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、前記ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(前記ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)であり、
R
1、R
2、R
3、およびR
4は出現毎に、独立して、水素、ハロゲン、C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、前記ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ(Yがケイ素含有基である場合を除き)、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(前記ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)であり、
R
5は出現毎に、独立して、Q
1aまたは(C
1~C
6ヒドロカルビル)(C
1~C
6ヒドロカルビル)アミノメチレン基であり、
x’およびy’は独立して、0から5
0(但し、x’とy’の和は少なくとも2)であり、または、eは1から200であり、
zは0または1であり、
Yは、次の構造式で示される二価の結合基であって、
【化8】
または
【化9】
式中、
R
a、R
b、R
c、R
d、およびR
eは出現毎に、独立して、水素、C
1~C
12ヒドロカルビル、またはC
1~C
6ヒドロカルビレンであり、必要に応じて、R
aとR
bまたはR
cとR
dとでC
4~C
8アルキレン基となっており、
R
6は出現毎に、独立して、水素、C
1~14ヒドロカルビル、C
1~14ハロヒドロカルビル、またはC
1~14ヘテロヒドロカルビルであり、
それぞれのR
7はC
1~6ヒドロカルビレン基であり、
Eは、2から20
0であり、
それぞれのDは、独立して、置換または非置換C
2~C
30ヒドロキシヒドロカルビル、置換または非置換C
3~C
30ヒドロキシヒドロカルビルカルボニル、置換または非置換C
4~C
30ヒドロキシ末端化ポリ(C
2~C
4アルキレンエーテル)、またはC
5~C
30ヒドロキシ末端化ポリ(C
2~C
4アルキレンエーテル)カルボニル(但し、前記ヒドロキシ基は脂肪族炭素原子に直接結合している)である
ことを特徴とする組成物。
【請求項5】
請求項
4に記載の組成物であって、前記キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体が構造式(7a)で示されるものであり、
【化10】
(7a)
式中、Dは出現毎に、独立して、C
2~C
20ヒドロキシヒドロカルビルまたはC
4~C
20ヒドロキシ末端化ポリ(エチレンエーテル)である
ことを特徴とする組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の組成物であって、前記キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体が、200から2,500グラム/モルの数平均分子量と、600から6,000グラム/モルの質量平均分子量を持ち、前記数平均分子量および質量平均分子量がゲル浸透クロマトグラフィで求めたものであることを特徴とする組成物。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の組成物であって、前記キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体が、1分子当たり平均で、1.5から5のヒドロキシ基を持つことを特徴とする組成物。
【請求項8】
請求項1~
7のいずれか1項に記載の組成物であって、前記キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体が、クロロホルム中25℃での測定で、0.04から0.15デシリットル/グラムの固有粘度を持つことを特徴とする組成物。
【請求項9】
請求項1~
8のいずれか1項に記載の組成物であって、前記ポリイソシアナート化合物が、1,4-テトラメチレンジイソシアナート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート、1,12-ドデカメチレンジイソシアナート、シクロヘキサン-1,3-ジイソシアナート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアナート、1-イソシアナト-2-イソシアナトメチルシクロペンタン、1-イソシアナト-3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(4-イソシアナト-3-メチルシクロヘキシル)メタン、α,α,α’,α’-テトラメチル-1,3-キシリレンジイソシアナート、α,α,α’,α’-テトラメチル-1,4-キシリレンジイソシアナート、1-イソシアナト-1-メチル-4(3)-イソシアナトメチルシクロヘキサン、2,4-ヘキサヒドロトルエンジイソシアナート、2,6-ヘキサヒドロトルエンジイソシアナート、1,3-フェニレンジイソシアナート、1,4-フェニレンジイソシアナート、2,4-トルエンジイソシアナート、2,6-トルエンジイソシアナート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、1,5-ジイソシアナトナフタレン、1分子当たり平均で、2よりも多く、4以下のイソシアナート基を持つ、オリゴマー状(oligomeric)ジフェニルメタンジイソシアナート、またはこれらの組み合わせを含むことを特徴とする組成物。
【請求項10】
請求項1~
9のいずれか1項に記載の組成物であって、ポリオール、発泡剤、または触媒の1つ以上を更に含むことを特徴とする組成物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物であって、前記アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体が、前記一価フェノールと、前記二価フェノールと、を含むモノマーの酸化共重合生成物であり、前記モノマーは前記ヒドロキシ芳香族末端化シロキサンを含まないことを特徴とする組成物。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物であって、前記アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体が、前記一価フェノールと、前記ヒドロキシ芳香族末端化シロキサンと、を含むモノマーの酸化共重合生成物であることを特徴とする組成物。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物の前記キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体の製造法であって、前記製造法が、前記キャッピング剤と、前記フェノール性末端基を含むアンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体とを、前記キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体を含む反応混合物が生成するような条件下で反応させる工程を含むことを特徴とする製造法。
【請求項14】
請求項13に記載の製造法であって、前記キャッピング剤が、構造式(10)から(13)で示される化合物の1つ以上を含み、
【化11】
(10)
【化12】
(11)
【化13】
(12)
【化14】
(13)
式中、
R
9からR
12、R
20、およびR
21はそれぞれ独立して、水素、C
1~C
12第一級アルキル、C
2~12アルケニル、C
7~C
12アリールアルキル、C
2~C
12アルコキシアルキル、C
7~C
12アリールオキシアルキル、またはC
1~C
12ヒドロキシアルキルであり、
R
13、R
14、R
22、およびR
23は出現毎に、独立して、水素、C
1~C
12第一級アルキル、C
7~C
12アリールアルキル、C
2~C
12アルコキシアルキル、C
7~C
12アリールオキシアルキル、またはC
1~C
12ヒドロキシアルキルであり、
R
15からR
18は出現毎に、独立して、水素またはメチルであり、
R
19は水素またはC
1~C
18第一級アルキルであり、
Xはハロゲンであり、
aは0または1であり、
bは0から10であり、
cは0から3であり、
gは1または2である
ことを特徴とする製造法。
【請求項15】
請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物から製造した生成物であることを特徴とする生成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、ポリ(アリーレンエーテル)組成物に関する。
【0002】
本願は、2019年7月31日、欧州特許庁に出願された欧州特許出願第19189450.0号に対する優先権およびその利益を主張するものであり、その内容は全て本件に引用して援用する。
【背景技術】
【0003】
ポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、優れた耐水性、寸法安定性、および固有難燃性、更に、広い周波数および温度範囲に亘る際だった誘電性特性で知られる、熱可塑性物質の一群である。熱硬化性のポリ(アリーレンエーテル)共重合体を様々な架橋剤と反応させることで、延性、剛性、耐薬品性、耐熱性などの特性を、幅広い様々な最終用途、例えば、流体工学部品、電気容器、自動車部品、ワイヤおよびケーブル用絶縁材の要求に合わせて調整することができる。特に、ポリ(アリーレンエーテル)共重合体は電子工学用の熱硬化性組成物に使用され、様々な長所の中でも特に強靱性と誘電性特性に優れたものを生じる。
【0004】
アンキャップド(uncapped)ポリ(フェニレンエーテル)(PPE)などのフェノール類は、ポリウレタン、特に被覆および接着用のポリウレタンのブロッキング剤として使用される。PPEブロッキング剤により、遊離イソシアナートが少なく、系の湿度感受性を下げることで貯蔵安定性を伸ばしたポリウレタン系が得られる。PPEブロッキング剤のフェノール性末端基はイソシアナートと可逆的結合を形成するが、高温ではデブロッキング(deblocking)が起こる。この結合の可逆性は熱安定性に乏しいため、最終的なポリウレタン生成物におけるフェノール性PPEの使用が制限される。キャップド(capped)PPE共重合体を最終ポリウレタン生成物に使用して、特性を改善(吸湿性を下げ、ガラス転移温度(Tg)を高め、引裂強さ、耐薬品性、難燃性を改善)できるならば有益と考えられる。
【0005】
ポリウレタンは一般に、ポリオールをポリイソシアナートと、通常は触媒存在下で反応させて製造する。製造の際の安定性を保つため、ポリイソシアナートをブロッキング剤でブロックすることができ、このとき、少なくとも1つのイソシアナート基が保護またはブロッキング剤と反応して誘導体(“ブロックド(blocked)ポリイソシアナート”とも呼ばれる)が生じる。この誘導体は加熱すると解離し、保護またはブロッキング剤が外れて(デブロッキングとも呼ばれる)、反応性イソシアナート基を放出することができる。その後、反応性イソシアナート基はポリオールと反応し、ポリウレタンの重合を起こすことができる。しかし、ブロッキングの化学的性質として、反応を進めるには加熱と長い反応時間の両方が必要なことがある。シート状の応用では、射出成形または熱成形により製造した平面またはゆるやかな曲面の最終部品に、ポリウレタンコーティングを、硬化する前にデブロッキングがなるべく起きないような条件下で、流し塗りまたは浸漬被覆によって塗布し、その後、加熱または照射して硬化を行うことができる。熱可塑性ポリウレタンでは、サーモポリマーを成形した後に被覆および硬化して、所定の用途のための最終製品を作ることができる。この手法は、ポリイソシアナートをブロッキングする化学反応が本質的に遅いため、時間集約的であるという欠点がある。浸漬被覆などの工程では、硬化を一様に始める前に、基材に被覆を塗布するための追加時間が更に必要である。
【0006】
アンキャップドポリ(フェニレンエーテル)(PPE)共重合体などのフェノール化合物をポリウレタンのブロッキング剤として使用し、遊離イソシアナート基を減らし、貯蔵安定性を伸ばすことができる。更に、アンキャップドPPE共重合体を特定の条件下でイソシアナート基と反応させて、アンキャップドPPE共重合体を最終ポリウレタン生成物の構造内に組み入れることができる。アンキャップドPPE共重合体のフェノール性末端基は、ポリイソシアナートのイソシアナート基と可逆的結合を形成することができ、これによりアンキャップドPPE共重合体は、高温でデブロッキングが起こるため、ブロッキング剤として有用となる。しかし、この結合の可逆性が、ポリマー生成の際にアンキャップドPPE共重合体がポリオールとしてイソシアナート基と反応するようなポリウレタン組成物においては、アンキャップドPPE共重合体の使用を制限することもある。その理由は、フェノール性ヒドロキシル基とイソシアナート基との間で形成される結合の熱安定性が制限され、従って、最終ポリウレタン生成物の熱安定性も同様に、特に高温で制限されるためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
このようなポリウレタン組成物におけるアンキャップドPPE共重合体の制限を打開する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このようなポリウレタン組成物におけるアンキャップドPPE共重合体の制限を打開するため、本発明の発明者は、アンキャップドPPE共重合体の代わりに、脂肪族ヒドロキシルエンドキャップ(末端基とも呼ばれる)を含むキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体が使用できることを発見した。有益なことに、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体の脂肪族アルコール基は、ポリイソシアナートのイソシアナート基と反応して熱的に強固な結合を形成し、得られたポリウレタン生成物の熱安定性は、アンキャップドPPE共重合体を組み入れたポリウレタン生成物に比べて高くなる(アンキャップドPPE共重合体のフェノール性ヒドロキシル基と、ポリイソシアナートのイソシアナート基との間の結合は、約170℃で熱可逆的である)。従って、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、熱的に安定なポリウレタン生成物を生成することから、ポリイソシアナート組成物において有用である。更に、出願者は、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体をポリウレタン生成物に組み入れると、ショアD硬さ、引張応力、引裂強さ、圧縮強さ、耐溶剤性も、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体を含まない組成物から製造した比較用ポリウレタン生成物より改善することを発見した。
【0009】
ある態様に従って、ポリイソシアナート化合物とキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体とを含む組成物を提示する。このキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、キャッピング剤と、フェノール性末端基を含むアンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体との反応から誘導され、アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、一価フェノール、二価フェノール、またはこれらの組み合わせを含むモノマーと、必要に応じて、ヒドロキシ芳香族末端化シロキサンとの酸化共重合生成物であり、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、脂肪族アルコールを含む末端基を含んでいる。
【0010】
更に、キャッピング剤と、フェノール性末端基を含むアンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体とを、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体を含む反応混合物が生成するような条件下で反応させる工程を含む、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体の製造法を提示する。
【0011】
本組成物から製造した生成物、望ましくは、熱可塑性ポリウレタン、ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌラートフォーム、またはこれらの組み合わせも提示する。
【0012】
上記およびその他の特徴の例を、以下の図および詳細な記述に示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の発明者は、脂肪族アルコール末端基(エンドキャップ)を持つポリ(アリーレンエーテル)がポリウレタン組成物に使用できることを確認した。提示されているものは、ポリイソシアナート化合物とキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体とを含む組成物であって、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、キャッピング剤と、フェノール性末端基を含むアンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体との反応から誘導され、アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、一価フェノール、二価フェノール、またはこれらの組み合わせを含むモノマーと、必要に応じて、ヒドロキシ芳香族末端化シロキサンとの酸化共重合生成物であり、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、脂肪族アルコールを含む末端基を含んでいる。
【0014】
文中で使用されている“脂肪族アルコールを含む末端基”とは、末端基中の脂肪族炭素原子に直接結合したヒドロキシ基を含むC1~30有機基を指す。末端基の例は、文中に開示されているように、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、2-ブロモエタノールなど、またはこれらの組み合わせから誘導することができる。
【0015】
キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は構造式(1)で示されるものである。
Q(J-D)y (1)
式中、Qは、一価フェノールまたは二価フェノールと、必要に応じて、ヒドロキシ芳香族末端化シロキサンとから誘導される。構造式(1)で示されるキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体において、基Jは、構造式(2)で示される構造を持つことができる。
【化1】
(2)
式中、Q
1aは、C
1~C
12第一級または第二級アルキルまたはシクロアルキル、望ましくはC
1~C
12第一級アルキル、より望ましくはC
1~C
6第一級アルキル、更に望ましくはメチルであり、Q
1bは、ハロゲン、C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)、望ましくはC
1~C
12アルキルまたはC
3~C
12シクロアルキル、より望ましくはC
1~C
6アルキル、更に望ましくはメチルである。Q
2は出現毎に、独立して、水素、ハロゲン、非置換または置換C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)、望ましくは水素であり、eは1から200、望ましくは1から100であり、yは1または2、望ましくは2である。
【0016】
構造式(1)において、Dは、脂肪族アルコールを含む末端基である。例えば、それぞれのDは独立して、置換または非置換C2~C30ヒドロキシヒドロカルビル、置換または非置換C3~C30ヒドロキシヒドロカルビルカルボニル、置換または非置換C4~C30ヒドロキシ末端化ポリ(C2~C4アルキレンエーテル)、またはC5~C30ヒドロキシ末端化ポリ(C2~C4アルキレンエーテル)カルボニル(但し、ヒドロキシ基は脂肪族炭素原子に直接結合している)とすることができる。例えば、Dは、置換または非置換C1~C10ヒドロキシアルキル、置換または非置換C3~C10ヒドロキシアルケニル、置換または非置換C5~C10ヒドロキシシクロアルキル、置換または非置換C7~C13ヒドロキシアルキルアリール、置換または非置換C2~C10ヒドロキシアルキルカルボニル、置換または非置換C8~C14ヒドロキシアルキルアリールカルボニル、置換または非置換C4~C10ヒドロキシ末端化ポリ(C2~C4アルキレンエーテル)、あるいは置換または非置換C5~C11ヒドロキシ末端化ポリ(C2~C4アルキレンエーテル)カルボニル(但し、ヒドロキシ基は脂肪族炭素原子に直接結合している)とすることができる。望ましくは、Dは、非置換C1~C4ヒドロキシアルキル、非置換C5~C9ヒドロキシアルキルカルボニル、非置換ヒドロキシ末端化C4~C8ポリ(C2~C4アルキレンエーテル)、または非置換ヒドロキシ末端化C5~C9ポリ(C2~C4アルキレンエーテル)カルボニル(但し、ヒドロキシ基は脂肪族炭素原子に直接結合している)とすることができる。
【0017】
二価フェノールは、同じ芳香族環に、または同じ分子内にある2つの異なる芳香族環に直接結合した2つのヒドロキシ基を持つ。二価フェノールは、構造式(3)で示される構造を持つことができる。
【化2】
(3)
式中、R
1、R
2、R
3、およびR
4は出現毎に、同じまたは異なるものであり、独立して、水素、ハロゲン、C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、およびC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)、望ましくは、水素、ハロゲン、またはC
1~C
12アルキル、より望ましくは、水素またはC
1~C
6アルキルであり、zは0または1、望ましくは1である。
【0018】
構造式(3)において、基Yは、次の構造式のいずれかで示される二価の結合基である。
【化3】
式中、R
a、R
b、R
c、R
d、およびR
eは出現毎に、独立して、水素、C
1~C
12ヒドロカルビル、またはC
1~C
6ヒドロカルビレンであって、必要に応じて、R
aとR
bまたはR
cとR
dとでC
4~C
12シクロアルキレン基となっている。例えば、二価フェノールは、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンであっても良い。zが0の場合、2つのアリール基は単結合で結合している。
【0019】
二価フェノールの例としては、3,3’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノール、2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)オクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-n-ブタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロヘキサン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘプタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロヘプタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロオクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロオクタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロノナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロノナン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロウンデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロウンデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)シクロドデカン、1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-t-ブチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)プロパン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、2,2’,6,6’-テトラメチル-3,3’,5,5’-テトラブロモ-4,4’-ビフェノール、2,2’,5,5’-テトラメチル-4,4’-ビフェノール、またはこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、二価フェノールとしては、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンが挙げられる。
【0020】
一価フェノールは、構造式(4)で示される構造を持つことができる。
【化4】
(4)
式中、Q
1a、Q
1b、およびQ
2は、先の構造式(2)で定義したとおりである。例えば、Q
1aはメチルまたはシクロヘキシルであり、Q
1bは、ハロゲン、非置換C
1~C
12アルキル(但し、アルキル基は第三級アルキルではない)、または非置換C
1~C
12アリールである。一価フェノールの例としては、2,6-ジメチルフェノール、2-メチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2-アリル-6-メチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2-メチル-6-フェニルフェノール、2-シクロヘキシル-6-メチルフェノール、またはこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、一価フェノールとしては、2,6-ジメチルフェノールが挙げられる。
【0021】
ヒドロキシ芳香族末端化シロキサンは、構造式(5)で示される構造を持つことができる。
【化5】
(5)
式中、それぞれのR
6は独立して、水素、C
1~14ヒドロカルビル、C
1~14ハロヒドロカルビル、またはC
1~14ヘテロヒドロカルビル、望ましくは、C
1~13アルキル、C
1~13アルコキシ、C
2~13アルケニル、C
2~13アルケニルオキシ、C
3~6シクロアルキル、C
3~6シクロアルコキシ、C
6~14アリール、C
6~10アリールオキシ、C
7~13アリールアルキル、C
7~13アリールアルコキシ(arylalkylenoxy)、C
7~13アルキルアリール、またはC
7~13アルキルアリールオキシであり、それぞれのR
7は、C
1~6ヒドロカルビレン基、望ましくは二価C
2~8脂肪族基、より望ましくは、ジメチレン、トリメチレン、またはテトラメチレンであり、それぞれのR
8は、同じまたは異なるものであり、ハロゲン、C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)であり、それぞれのnは独立して、0から4の整数であり、Eは、平均で、2から200、2から125、5から125、5から100、5から50、20から80、10から60、または5から20である。
【0022】
例えば、ヒドロキシ芳香族末端化シロキサンは、構造式(5a)で示される構造を持つことができる。
【化6】
(5a)
式中、nは、平均で、5から100、より詳細には10から60である。
【0023】
キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、構造式(6)または(7)で示される構造を持つことができる。
【化7】
(6)
または
【化8】
(7)
式中、Q
1a、Q
1b、およびQ
2は出現毎に、独立して、先に定義のとおりである。R
1、R
2、R
3、およびR
4は出現毎に、独立して、水素、ハロゲン、C
1~C
12ヒドロカルビル(但し、ヒドロカルビル基は第三級ヒドロカルビルではない)、C
1~C
12ヒドロカルビルチオ、C
1~C
12ヒドロカルビルオキシ、またはC
2~C
12ハロヒドロカルビルオキシ(ハロゲンおよび酸素原子は少なくとも2つの炭素原子で隔てられている)である。R
5は出現毎に、独立して、Q
1a、または(C
1~C
6ヒドロカルビル)(C
1~C
6ヒドロカルビル)アミノメチレン基であり、x’およびy’は、アリーレンエーテル単位の繰り返し単位の数、従って相対モル比を表していて、x’およびy’はそれぞれ独立して0から50(但し、x’とy’の和は少なくとも2である)であり、または、eはアリーレンエーテル単位の繰り返し単位の数であって、eは1から200、望ましくは1から100であり、zは0または1である。例えば、x’およびy’は独立して0から30とすることができる。
【0024】
構造式(6)または(7)中のそれぞれの基Dは、構造式(1)において示されている脂肪族アルコールを含む末端基である。
【0025】
構造式(7)において、基Yは、次の構造式で示される二価の結合基である。
【化9】
または
【化10】
式中、R
a、R
b、R
c、R
d、およびR
eは出現毎に、独立して、水素、C
1~C
12ヒドロカルビル、またはC
1~C
6ヒドロカルビレンであって、必要に応じて、R
aとR
bまたはR
cとR
dとでC
4~C
8アルキレン基となっており、R
6は出現毎に、独立して、水素、C
1~14ヒドロカルビル、C
1~14ハロヒドロカルビル、またはC
1~14ヘテロヒドロカルビル、望ましくは、C
1~13アルキル、C
1~13アルコキシ、C
2~13アルケニル、C
2~13アルケニルオキシ、C
3~6シクロアルキル、C
3~6シクロアルコキシ、C
6~14アリール、C
6~10アリールオキシ、C
7~13アリールアルキル、C
7~13アリールアルコキシ、C
7~13アルキルアリール、またはC
7~13アルキルアリールオキシであり、それぞれのR
7は、C
1~6ヒドロカルビレン基、望ましくは二価C
2~8脂肪族基、より望ましくは、ジメチレン、トリメチレン、またはテトラメチレンであり、Eは、平均で、2から200、2から125、5から125、5から100、5から50、20から80、10から60、または5から20である。
【0026】
例えば、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は構造式(7a)で示されるものである。
【化11】
(7a)
式中、Q
1a、Q
1b、Q
2、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、D、x’、およびy’は、先に定義したとおりである。
【0027】
キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、それぞれゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)による測定で、400から2,500グラム/モル(g/モル)の数平均分子量(Mn)と、500から6,000g/モルの質量平均分子量(Mw)を持つことができる。例えば、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、それぞれGPCによる測定で、400から2,200g/モルまたは800から1,600g/モルの数平均分子量(Mn)と、600から5,000g/モルまたは800から4,500g/モルの質量平均分子量(Mw)を持つことができる。
【0028】
キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、1分子当たり平均で、1.5から5、望ましくは1.5から3.1、より望ましくは1.5から2.1のヒドロキシ基を持つことができる。例えば、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、対応するアンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体の遊離ヒドロキシル基(例えば、フェノール類)の少なくとも75%、望ましくは少なくとも90%、より望ましくは少なくとも95%、更に望ましくは少なくとも99%が、キャッピング剤との反応によって官能化されたポリ(アリーレンエーテル)共重合体とすることができる。
【0029】
キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、クロロホルム中25℃での測定で、0.04から0.15デシリットル/グラム(dL/g)の固有粘度を持つことができる。例えば、固有粘度は、望ましくは0.06から0.1dL/g、より望ましくは0.075から0.090dL/gである。
【0030】
キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、一価フェノール、二価フェノール、またはこれらの組み合わせを含むモノマーと、必要に応じて、ヒドロキシ芳香族末端化シロキサンとを酸化共重合して、アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体を生成し、次に、キャッピング剤と反応させてキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体とした生成物である。
【0031】
アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、モノマー(例えば、一価フェノールおよび二価フェノールを含む)と、必要に応じて溶媒と、重合触媒とを含む反応混合物に連続的に酸素を加え、モノマーを重合させて生成することができる。分子酸素(O2)は、空気または純酸素として供給できる。重合触媒は、金属錯体、即ち、周期表のVIB、VIIB、VIIIB、またはIB族、またはこれらの組み合わせであるカチオンなどの遷移金属カチオンを含む金属触媒とすることができる。この触媒は、金属カチオン(クロム、マンガン、コバルト、銅、またはこれらの組み合わせなど)と、アニオン(塩化物、臭化物、ヨウ化物、硫酸塩、酢酸塩、プロピオン酸塩、酪酸塩、ラウリン酸塩、パルミチン酸塩、安息香酸塩、またはこれらのアニオンの1つ以上を含む組み合わせなど)と、必要に応じて、1つ以上の中性電荷の配位子(水、アミン、ホスフィン、COなど)を含むことができる。あるいは、金属または金属酸化物と、無機酸、有機酸、またはこれらの酸の水溶液とを組み合わせて、対応する金属塩または水和物をその場(in situ)で生成することができる。例えば、亜酸化銅と臭化水素酸を組み合わせて、臭化第一銅をその場で生成することができる。
【0032】
例示的なアミン配位子は、例えば、モノアミン、アルキレンジアミン、またはこれらの組み合わせとすることができる。モノアミンには、ジアルキルモノアミン(ジ-n-ブチルアミンなど)およびトリアルキルモノアミン(N,N-ジメチルブチルアミンなど)が含まれる。モノアミンの例としては、ジ-n-ブチルアミン、n-ブチルエチルアミン、ジ-tert-ブチルアミン、tert-ブチルエチルアミン、ジメチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、ジ-sec-ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジオクチルアミン、ジデシルアミン、ジベンジルアミン、メチルエチルアミン、メチルブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、N-エチルアニリン、N-ブチルアニリン、N-メチル-2-メチルアニリン、N-メチル-2,6-ジメチルアニリン、ジフェニルアミン、またはこれらの組み合わせが挙げられる。ジアミンの例としては、N,N’-ジ-tert-ブチルエチレンジアミンなど、またはその組み合わせが挙げられる。トリアルキルモノアミンの例としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリプロピルアミン、トリブチルアミン、ブチルジメチルアミン、フェニルジエチルアミンなど、およびこれらの組み合わせが挙げられる。
【0033】
アミン配位子が、ジ-n-ブチルアミンなどの第二級アミンを含む場合、アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体の末端一価フェノール単位のベンジル位置に、第二級アミンを一部、化学的に組み入れることができる。共有結合したモノアミン基は、下に示すように、末端単位のフェノール酸素に対してortho位置に、アミノメチル基として存在できる。
【化12】
共有結合したモノアミン基の量は、
1H-NMR分光法で求めることができる。共有結合したモノアミン基はキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体の酸化安定性に悪影響を及ぼすことがあり、熱老化するとキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体が黄変してしまうことがある。
【0034】
アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、構造式(8)または(9)で示すことができる。
【化13】
(8)
【化14】
(9)
式中、Q
1a、Q
1b、Q
2、R
1、R
2、R
3、R
4、R
5、Y、e、x’、y’、およびzは、先に述べたとおりである。構造式(8)および(9)において、R
5は出現毎に、独立して、Q
1aまたは(C
1~C
6ヒドロカルビル)(C
1~C
6ヒドロカルビル)アミノメチレン基である。ある態様において、この共重合体の合計質量部(total parts by weight)に対して、R
5基の1から500質量百万分率(ppm)、50から1,000ppm、または50から3,000ppmは、(C
1~C
6ヒドロカルビル)(C
1~C
6ヒドロカルビル)アミノメチレン基である。
【0035】
構造式(8)および(9)において、x’およびy’は、繰り返し単位の数を表し、つまり、それぞれのアリーレンエーテル繰り返し単位の相対モル比を示している。例えば、x’およびy’はそれぞれ独立して0から50である(但し、x’とy’の和は少なくとも2、例えば4から53である)。例えば、x’とy’の和は8から20、望ましくは8から15、より望ましくは8から10である。アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、80から99質量部の一価フェノールと、1から20質量部の二価フェノールとを含むモノマー混合物から調製することができる。この範囲内で、アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、一価フェノールと二価フェノールの合計質量に対して、85から95質量部の一価フェノールと、5から15質量部の二価フェノールから調製することができる。
【0036】
アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)による測定で、300から25,000g/モルのMnを持つことができる。例えば、アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、GPCによる測定で、300から10,000g/モル、より詳細には300から8,000g/モル、300から5,000g/モル、または300から2,500g/モルのMnを持つことができる。
【0037】
キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体を含む反応混合物が生成するような条件下で、フェノール性末端基を含むアンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体を反応させて生成する。
【0038】
キャッピング剤は、構造式(10)、(11)、(12)、および(13)で示される化合物の1つ以上とすることができる。
【化15】
(10)
【化16】
(11)
【化17】
(12)
【化18】
(13)
式中、R
9からR
12、R
20、およびR
21はそれぞれ独立して、水素、C
1~C
12第一級アルキル、C
2~12アルケニル、C
7~C
12アリールアルキル、C
2~C
12アルコキシアルキル、C
7~C
12アリールオキシアルキル、またはC
1~C
12ヒドロキシアルキル、望ましくは、水素またはC
1~6アルキルである。R
13、R
14、R
22、およびR
23は出現毎に、独立して、水素、C
1~C
12第一級アルキル、C
7~C
12アリールアルキル、C
2~C
12アルコキシアルキル、C
7~C
12アリールオキシアルキレン、またはC
1~C
12ヒドロキシアルキル、望ましくは、水素またはC
1~6第一級アルキルである。R
15からR
18は出現毎に、独立して、水素またはメチル、望ましくは水素である。R
19は、水素またはC
1~C
18第一級アルキル、望ましくは、水素またはC
1~6アルキル(hydrogen)である。Xはハロゲン、望ましくはBrである。構造式(10)~(13)において、aは0または1であり、bは0から10、望ましくは0から6、より望ましくは0から3であり、cは0から3、望ましくは1から3であり、gは1または2、望ましくは1である。
【0039】
アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)とキャッピング剤との反応法については、例えば、Holochほかによる米国特許第3,375,228号、Goossensによる米国特許第4,148,843号、Whiteほかによる米国特許第4,806,602号、Nelissenほかによる米国特許第5,219,951号、Braatほかによる米国特許第6,384,176号、Yeagerほかによる米国特許出願公開第2001/0053820A1号、および、Petersほかによる欧州特許第261,574B1号に述べられている。
【0040】
アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)とキャッピング剤との反応に、キャッピング触媒を用いても良い。このような化合物の例としては、フェノール類と上記のキャッピング剤との縮合に触媒作用を及ぼす、当該技術分野で公知のものが挙げられる。例えば、キャッピング触媒は、水酸化物塩(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラアルキルアンモニウムなど)、第三級アルキルアミン(トリブチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルブチルアミンなど)、第三級アルキル-アリール混合アミンおよびその置換誘導体(N,N-ジメチルアニリンなど)、複素環アミン(イミダゾール類、ピリジン類など)およびその置換誘導体(2-メチルイミダゾール、2-ビニルイミダゾール、4-(ジメチルアミノ)ピリジン、4-(1-ピロリノ)ピリジン、4-(1-ピペリジノ)ピリジン、2-ビニルピリジン、3-ビニルピリジン、4-ビニルピリジンなど)とすることができる。
【0041】
あるいは、キャッピング触媒は、フェノール類と上記のキャッピング剤とのエステル交換反応に触媒作用を及ぼすエステル交換触媒であっても良い。例えば、キャッピング触媒は、アルカリまたはアルカリ土類イオンの発生源を含む触媒とすることができる。これらのイオンの発生源としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物や、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ土類水酸化物が挙げられる。その他のアルカリおよびアルカリ土類金属イオン源としては、対応するカルボン酸塩(酢酸ナトリウムなど)およびエチレンジアミン四酢酸(EDTA)誘導体(EDTA四ナトリウム塩、EDTAマグネシウム二ナトリウム塩など)が挙げられる。その他のエステル交換触媒としては、アルカリまたはアルカリ土類金属の炭酸塩(Cs2CO3、NaHCO3、Na2CO3など)、不揮発性無機酸塩(NaH2PO3、NaH2PO4、Na2HPO3、KH2PO4、CsH2PO4、Cs2HPO4など)、または、リン酸の混合塩(NaKHPO4、CsNaHPO4、CsKHPO4など)が挙げられる。前述の触媒の組み合わせも使用できる。
【0042】
あるいは、キャッピング触媒は、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物、またはこれらの組み合わせを含むエステル交換触媒であっても良い。第四級アンモニウム化合物は、化学式 (R24)4N+X- (式中、それぞれのR24は、同じまたは異なるものであって、C1~C20アルキル、C4~C20シクロアルキル、またはC4~C20アリールであり、X-は、有機または無機アニオン、例えば、水酸化物、ハロゲン化物、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、炭酸塩、または重炭酸塩である)で示される化合物とすることができる。有機第四級アンモニウム化合物の例としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、酢酸テトラメチルアンモニウム、ギ酸テトラメチルアンモニウム、酢酸テトラブチルアンモニウム、およびこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、水酸化テトラメチルアンモニウムが使用できる。第四級ホスホニウム化合物は、化学式 (R25)4P+X- (式中、それぞれのR25は、同じまたは異なるものであって、C1~C20アルキル、C4~C20シクロアルキル、またはC4~C20アリールであり、X-は、有機または無機アニオン、例えば、水酸化物、フェノキシド、ハロゲン化物、カルボン酸塩(酢酸塩、ギ酸塩など)、スルホン酸塩、硫酸塩、ギ酸塩、炭酸塩、または重炭酸塩である)で示される化合物とすることができる。X-が炭酸塩や硫酸塩などの多価アニオンの場合、当然、第四級アンモニウムおよびホスホニウム構造中の正および負電荷は釣り合っている。例えば、R24またはR25がそれぞれメチルで、X-が炭酸塩である場合、当然、X-は、1/2(CO3
2-)である。有機第四級ホスホニウム化合物の例としては、水酸化テトラメチルホスホニウム、酢酸テトラメチルホスホニウム、ギ酸テトラメチルホスホニウム、水酸化テトラブチルホスホニウム、酢酸テトラブチルホスホニウム(TBPA)、酢酸テトラフェニルホスホニウム、テトラフェニルホスホニウム=フェノキシド、およびこれらの組み合わせが挙げられる。例えば、TBPAが使用できる。
【0043】
キャッピング反応は、キャッピング剤に応じて、溶媒を用いて、または用いずに行うことができる。溶媒の例としては、芳香族炭化水素(トルエン、キシレンなど)、または塩素化芳香族炭化水素(クロロベンゼン、o-ジクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼンなど)が挙げられる。例えば、溶媒はトルエンを含む。
【0044】
本方法は更に、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体を反応混合物から単離する工程を含むことができる。適当な方法として、沈殿および全単離法(total isolation methods)が挙げられる。全単離法は、固有粘度(I.V.)が、クロロホルム中25℃での測定で、約0.25デシリットル/グラム(dL/g)未満の場合、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体の単離に使用できる。全単離の一段階として、望ましくは、溶媒の一部を除去して、全単離装置への溶媒負荷を小さくする。望ましくは、共重合体を含む溶液の濃縮は、望ましくは、共重合体含有溶液の温度を上げながら、溶媒蒸発容器内を減圧して行う。単離した共重合体は、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体の軟化温度またはTgよりも低い温度で乾燥することができる。
【0045】
本組成物は、ポリイソシアナート化合物と、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体とを含む。望ましくは、本組成物は、本組成物の総質量に対して5から50質量%、5から40質量%、または5から30質量%のキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体を含む。
【0046】
本組成物のポリイソシアナート化合物は、1,4-テトラメチレンジイソシアナート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート、1,12-ドデカメチレンジイソシアナート、シクロヘキサン-1,3-ジイソシアナート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアナート、1-イソシアナト-2-イソシアナトメチルシクロペンタン、1-イソシアナト-3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(4-イソシアナト-3-メチルシクロヘキシル)メタン、α,α,α’,α’-テトラメチル-1,3-キシリレンジイソシアナート、α,α,α’,α’-テトラメチル-1,4-キシリレンジイソシアナート、1-イソシアナト-1-メチル-4(3)-イソシアナトメチルシクロヘキサン、2,4-ヘキサヒドロトルエンジイソシアナート、2,6-ヘキサヒドロトルエンジイソシアナート、1,3-フェニレンジイソシアナート、1,4-フェニレンジイソシアナート、2,4-トルエンジイソシアナート、2,6-トルエンジイソシアナート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、1,5-ジイソシアナトナフタレン、1分子当たり平均で、2よりも多く、4以下のイソシアナート基を持つ、オリゴマー状(oligomeric)ジフェニルメタンジイソシアナート、またはこれらの組み合わせとすることができる。
【0047】
キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体はまた、少なくとも2つのキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体の混合物を含んでいる組成物の一部とすることができる。このような混合物は、個別に調製および単離したキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体から調製することができる。あるいは、このような混合物は、1つのアンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体を、少なくとも2つの異なるキャッピング剤と反応させて調製しても良い。
【0048】
本組成物は、キャップドポリ(アリーレンエーテル)に加えてポリオールを更に含むことができる。ポリオールとしては、1分子当たり2から8のヒドロキシル基、詳細には3から8のヒドロキシル基を持つ開始剤を、アルコキシル化剤(エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドなど)と反応させて調製したポリエーテルポリオールが挙げられる。ポリオールの例としては、エトキシル化サッカリド、プロポキシル化サッカリド、ブトキシル化サッカリド、エトキシル化グリセリン、プロポキシル化グリセリン、ブトキシル化グリセリン、エトキシル化ジエタノールアミン、プロポキシル化ジエタノールアミン、ブトキシル化ジエタノールアミン、エトキシル化トリエタノールアミン、プロポキシル化トリエタノールアミン、ブトキシル化トリエタノールアミン、エトキシル化トリメチロールプロパン、プロポキシル化トリメチロールプロパン、ブトキシル化トリメチロールプロパン、エトキシル化エリトリトール、プロポキシル化エリトリトール、ブトキシル化エリトリトール、エトキシル化ペンタエリトリトール、プロポキシル化ペンタエリトリトール、ブトキシル化ペンタエリトリトール、脂肪族ポリエステルジオール、芳香族ポリエステルポリオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブタンジオール、ヘキサンジオール、その他のC2~C8グリコール、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0049】
本組成物は更に発泡剤を含むことができ、望ましくは、この発泡剤は、物理的発泡剤、例えば、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、2-ブロモペンタフルオロプロペン、1-ブロモペンタフルオロプロペン、3-ブロモペンタフルオロプロペン、3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン、3-ブロモ-1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、2-ブロモ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-ブロモ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,2,3,3,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブテン(but-1-ene)、2-ブロモ-3,3,3-トリフルオロプロペン、E-1-ブロモ-3,3,3-トリフルオロプロペン-1、(Z)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、3,3,3-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,1-トリフルオロ-2-ブテン、またはこれらの組み合わせなどである。物理的発泡剤を用いる場合、その存在量は、反応混合物の総質量に対して2から20質量%とすることができる。この範囲内で、物理的発泡剤の量は2.5から15質量%とすることができる。
【0050】
化学的発泡剤としては、水や、イソシアナート基と反応して二酸化炭素を発生するカルボン酸が挙げられる。化学的発泡剤、特に水を使用する場合、その量は、反応混合物の総質量に対して0.2から5質量%とすることができる。この範囲内で、化学的発泡剤の量は0.2から3質量%とすることができる。
【0051】
本組成物は更に、硬化触媒、例えば、ウレタン触媒、イソシアヌラート触媒、およびこれらの組み合わせなどを含むことができる。望ましくは、硬化触媒は、ジメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルジメチルアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、オクタン酸(2-エチルヘキサン酸)カリウム、酢酸カリウム、二ラウリン酸ジブチルスズ、二酢酸ジブチルスズ、ギ酸=2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、N,N’,N’’-ジメチルアミノプロピルヘキサヒドロトリアジン、またはこれらの組み合わせである、本組成物は、硬化に有効な量、例えば、組成物の総質量に対して0.5から10質量%、望ましくは1から5質量%の触媒を含むことができる。
【0052】
本組成物は、界面活性剤、例えば、ポリオルガノシロキサン、ポリオルガノシロキサンポリエーテル共重合体、フェノールアルコキシラート(エトキシル化フェノールなど)、アルキルフェノールアルコキシラート(エトキシル化ノニルフェノールなど)、およびこれらの組み合わせなどを含むことができる。界面活性剤は、乳化剤および/または整泡剤として作用することができる。
【0053】
本組成物は、難燃剤、例えば、有機リン化合物、例えば、有機リン酸エステル(リン酸トリエチルやリン酸トリス(2-クロロプロピル)などのリン酸トリアルキル、リン酸トリフェニルやリン酸ジフェニルクレジルなどのリン酸トリアリールなど)、亜リン酸エステル(亜リン酸トリアルキル、亜リン酸トリアリール、アルキル-アリール混合亜リン酸エステルなど)、ホスホン酸エステル(ホスホン酸ジエチルエチル(diethyl ethyl phosphonate)、ホスホン酸ジメチルメチル(dimethyl methyl phosphonate)など)、ポリリン酸エステル(ポリリン酸メラミン、ポリリン酸アンモニウムなど)、ポリ亜リン酸エステル、ポリホスホン酸エステル、ホスフィン酸エステル(トリス(ジエチルホスフィン酸)アルミニウムなど);ハロゲン化難燃剤(テトラブロモフタル酸エステル、塩素化パラフィンなど);金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、水酸化コバルト、および前述の金属水酸化物の水和物など);およびこれらの組み合わせなどを含むことができる。難燃剤は、反応型の難燃剤(リン基(phosphorus group)を含むポリオール、例えば、10-(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファ-フェナントレン-10-オキシド、リン含有ラクトン修飾ポリエステル、エチレングリコール=ビス(ジフェニルホスファート)、ネオペンチルグリコール=ビス(ジフェニルホスファート)、アミンおよびヒドロキシル官能化シロキサンオリゴマーなど)とすることができる。これらの難燃剤は、単独で、または他の難燃剤と併せて使用することができる。
【0054】
本組成物は、五酸化アンチモンなどの難燃性相乗剤、酸化防止剤、界面活性剤、熱および紫外線安定剤、滑剤、帯電防止剤、染料、顔料、微粒子、補強剤、その他の成分などを含むことができる。
【0055】
当業者は、ポリウレタンとポリイソシアヌラートとの間に連続体があることを理解している。キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体と、必要に応じてポリオールと、イソシアナート化合物とから、一方または両方が調製できる。ポリウレタンおよびポリイソシアヌラートの調製に使用する反応混合物の特徴は、イソシアナートインデックスで示され、これは次の式に従って算出する。
イソシアナートインデックス=(モル数NCO/モル数OH+モル数HOH+モル数NH)×100
式中、モル数NCOは、反応混合物中のイソシアナート基のモル数であり、モル数OHは、反応混合物中の、水以外の原料からのOH基(アルコールおよびカルボン酸からのOH基など)のモル数であり、モル数HOHは、反応混合物中の水からのOH基のモル数であり、モル数NHは、反応混合物中のNH基のモル数である。一般に、反応混合物の特徴は、105から350のイソシアナートインデックスで示される。反応混合物のイソシアナート基とヒドロキシル基とのモル比が1:1で、反応混合物中に水またはNH基が存在しない場合、イソシアナートインデックスは100であり、“純粋な”ポリウレタンが生成する。イソシアナートインデックスが100から125、より詳細には105から125の反応混合物から生成したものが、一般にポリウレタンとされ、イソシアナートインデックスが180から350の反応混合物から生成したものが、一般にポリイソシアヌラートとされる。イソシアヌラート基が生成し易くなるのはイソシアナートインデックスが高い場合だけでなく、イソシアヌラートを生成するための触媒、例えば、N-ヒドロキシアルキル第四級アンモニウムカルボン酸塩などを使用した場合にも起こる。
【0056】
本組成物に更に発泡剤を加えた場合、成分を十分に混ぜ合わせると、ポリウレタンまたはポリイソシアヌラートフォームが製造できる。暫くして反応が始まり、熱を発しながら(with heat development)進行する。架橋が進み泡構造ができて反応生成物が固体となるまで、発泡ガスの放出によって反応混合物は膨らみ続ける。
【0057】
更に、本組成物から調製したポリウレタン生成物も提示されており、望ましくは、この生成物は、熱可塑性ポリウレタン、ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌラートフォーム、またはこれらの組み合わせである。ポリウレタンまたはポリイソシアヌラート生成物を調製するには、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体と、必要に応じてポリオールと、イソシアナート化合物とを、必要に応じて温度を制御し、添加剤を加えて、架橋が進んで反応生成物が固体となるまで十分に混ぜ合わせる。発泡剤を加えると、発泡ガスの放出によって反応混合物が膨らみ続け、泡構造が得られる。
【0058】
この生成物は、105から350、望ましくは105から125または180から350のイソシアナートインデックスを持つことができる。
【0059】
このポリウレタン生成物、詳細には、ポリウレタンまたはポリイソシアヌラートフォームを利用できる物品の具体例としては、家庭用電化製品など(家庭用および業務用冷蔵庫および冷凍庫、温水タンクなど)の断熱材; 建築材料(壁および屋根板、スラブストック(slab stock)から切り出した定寸法部品(cut-to-size pieces)、絶縁および封止用の現場噴霧(spray-in-place)フォーム);断熱性タンクおよび容器、パイプライン、加熱管、冷却管、および冷蔵倉庫;コンテナを含む道路および鉄道用の断熱性冷蔵車両などが挙げられる。
【0060】
具体的な態様では、ポリウレタンまたはポリイソシアヌラート生成物を、イソシアナート化合物とジオールとキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体とを含む組成物から調製し、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、2,6-ジメチルフェノールと2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンとを反応させてアンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体を生成し、次に、アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体を炭酸エチレンまたは炭酸プロピレンと、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体が生成するような条件下で反応させて調製する。
【0061】
別の具体的な態様では、ポリウレタンまたはポリイソシアヌラート生成物を、イソシアナート化合物とジオールとキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体とを含む組成物から調製し、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、2,6-ジメチルフェノールと2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンとを反応させてアンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体を生成し、次に、アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体を炭酸エチレンまたは炭酸プロピレンと、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体が生成するような条件下で反応させて調製し、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体の存在量は、ジオールとキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体の合計質量に対して5から30質量%である。
【0062】
具体的な態様において、本組成物は、アンキャップドポリ(フェニレンエーテル)共重合体から誘導したキャップドポリ(フェニレンエーテル)共重合体である、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体を含み、アンキャップドポリ(フェニレンエーテル)共重合体は、2,6-ジメチルフェノールと2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンとを含むモノマーから調製し、アンキャップドポリ(フェニレンエーテル)共重合体は、700から1200グラム/当量(g/当量)のヒドロキシル当量を持ち、1分子当たり平均で1.9から2.0のヒドロキシル基を含み、クロロホルム中25℃での測定で、0.06から0.12デシリットル/グラム(dL/g)の固有粘度を持つ。
【0063】
特定の生成物、望ましくは、ポリウレタンフォーム生成物は、本件に開示されている組成物から調製可能であり、この生成物は、以下の特性の1つ以上を備えることができる。ASTM D2240による測定で、45から90または50から80のショアD硬さ;ISO 527-1および527-2(2012)による測定で、100%伸長において、15から40MPaまたは20から40MPaの引張応力;ISO 527-1および527-2(2012)による測定で、300%伸長において、18から30MPaまたは20から25MPaの引張応力;ASTM D624-00による測定で、1500から2500ニュートン/センチメートル(N/cm)または1600から2500N/cmの引裂強さ;ASTM D1621-00による測定で、5から15MPaまたは6から10MPaの圧縮強さ。
【0064】
具体的な態様では、ポリウレタンフォーム生成物を、イソシアナート化合物とジオールとキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体とを含む組成物から調製し、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、2,6-ジメチルフェノールと2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンとを反応させてアンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体を生成し、次に、アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体を炭酸エチレンまたは炭酸プロピレンと、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体が生成するような条件下で反応させて調製し、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体の存在量は、ジオールとキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体の合計質量に対して5から30質量%であり、ポリウレタンフォーム生成物は以下の特性の1つ以上を備えている。ASTM D2240による測定で、45から90または50から80のショアD硬さ;ISO 527-1および527-2(2012)による測定で、100%伸長において、15から40MPaまたは20から40MPaの引張応力;ISO 527-1および527-2(2012)による測定で、300%伸長において、18から30MPaまたは20から25MPaの引張応力;ASTM D624-00による測定で、1500から2500ニュートン/センチメートル(N/cm)または1600から2500N/cmの引裂強さ;ASTM D1621-00による測定で、5から15MPaまたは6から10MPaの圧縮強さ。
【実施例】
【0065】
本発明の開示内容については以下の実施例で更に説明するが、これらに限定するものではない。
【0066】
実施例で使用する成分を表1にまとめた。
【0067】
【0068】
質量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン標準を用いたゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)で測定した。
【0069】
共重合体の化学構造と平均官能度は核磁気共鳴(NMR)分光法で求めた。全ての1H NMRスペクトルは、Varian Mercury Plus 400装置を、400.14MHzの観測周波数で作動させて求めた。
【0070】
ショアD硬さは、ASTM D2240に従って求めた。
【0071】
降伏での引張応力の値は、ISO 527-1および527-2に従って、23℃で、試験速度を50ミリメートル/分(mm/分)とし、組成物毎に5つの試料について求め、メガパスカル(MPa)の単位で示した。
【0072】
引裂強さは、ASTM D624-00に従って、23℃で、Instron Universal Tester, Model 1122, Die Cを使用し、試験速度を50.8cm/分として求めた。
【0073】
圧縮強さは、ASTM D1621-00に従って、23℃で、サンプルサイズを5.08cm×5.08cm×2.54cm、ヘッドスピードを2.5mm/分として求めた。
【0074】
耐溶剤性は、トルエン、メチルエチルケトン(MEK)、イソプロパノールのそれぞれに室温(約23℃)で72時間浸漬させた後のポリウレタン試料の膨潤に基づいて評価した。結果は、溶媒に曝露した後の質量増加(質量%増加)として示した。
【0075】
[実施例1]
窒素流入口の付いた還流冷却管、撹拌機、温度プローブ、およびラバーセプタムを取り付けた4つ口丸底フラスコに、1250ミリリットル(mL)のo-キシレンを入れた。次に、撹拌しながら、1251.7グラム(g)のアンキャップドPPE-2OH共重合体粉末をゆっくりとこれに加えた。アンキャップドPPE-2OH共重合体粉末を40mLのo-キシレンでフラスコに濯ぎ入れ、この混合物を室温で一晩撹拌して反応物を溶解させた。次に、フラスコの中身を60℃に加熱し、5.000gのKHCO3を加えた。次に、PEG-400(2.5mL)を加え、KHCO3の溶解を助けた。次に、128.23gの粉末状の炭酸エチレンをフラスコに加えて温度を120℃に上げると、気泡(CO2)の発生が見られた。温度をゆっくりと145℃まで上げ、12時間保った。次に、温度を152℃に上げ、20時間加熱還流し、内容物を60℃まで放冷した。得られた物質を1300mLの溶媒で希釈し、0.1規定(N)のHCl水溶液で洗った後、真空蒸留して乾燥させた。粘稠な生成物をアルミ皿に移し、真空オーブン中110℃で十分に乾燥させた。得られたキャップドPPE共重合体のエンドキャッピング度は、1H-NMRおよび31P-NMR分析による測定で、アンキャップドPPE-2OH共重合体の末端フェノール基のキャッピングに対して、99+%であった。
【0076】
[実施例2]
窒素流入口の付いた還流冷却管、撹拌機、温度プローブ、および添加漏斗を取り付けた4つ口丸底フラスコに、1000mLのo-キシレンを入れた。次に、撹拌しながら、850gのアンキャップドPPE-2OH共重合体粉末をゆっくりと加えた。アンキャップドPPE-2OH共重合体粉末を30mLのo-キシレンでフラスコに濯ぎ入れ、この混合物を室温で一晩撹拌して反応物を溶解させた。次に、フラスコの中身を50℃に加熱し、3.61gのKHCO3をこれに加えた。内容物を加熱還流(148℃)し、次に、PEG-400(1.5mL)を還流冷却管から加え、KHCO3の溶解を助けた。次に、85mLの炭酸プロピレンを添加漏斗からゆっくりとフラスコに加えた。温度を150℃に上げたところ、気泡(CO2)の発生が見られた。内容物を更に20時間加熱還流した後、室温まで放冷した。1H-NMRおよび31P-NMR分析より、炭酸プロピレンは消費されたが、キャッピング度は約60%であることが分かった。
【0077】
キャッピング反応を完了させるため、3.116gの炭酸エチレンを反応混合物に追加した。加え始めるとすぐに気体の発生が見られた。次に、得られた混合物を13時間加熱還流した。1H-NMRおよび31P-NMR分析から、キャッピング度が80%であることが分かった。次に、3.045gの炭酸エチレンを追加し、内容物を12時間加熱還流した。NMR分析から、キャッピング度が88%であることが分かった。更に、3.295gの炭酸エチレンと1.012gのKHCO3を反応混合物に加え、得られたものを6時間加熱還流した。次に、反応混合物を50℃まで冷やしてから、700mLの溶媒で希釈した。この溶液を分液漏斗に移して0.1NのHCl水溶液で洗い、真空蒸留して溶媒を除いた。得られた粘稠な生成物をアルミ皿に移し、真空オーブン中110℃で十分に乾燥させた。得られたキャップドPPE共重合体のエンドキャッピング度は、1H-NMRおよび31P-NMR分析による測定で、アンキャップドPPE-2OH共重合体の末端フェノール基のキャッピングに対して、99+%であった。
【0078】
[熱可塑性ポリウレタンの調製]
熱可塑性ポリウレタン(TPU)試料を、メチレンジフェニルイソシアナート(MDI)と、PPE共重合体とポリエーテルジオールとの組み合わせ(表2に示す)と、鎖延長剤との反応混合物から調製した。反応混合物のイソシアナートインデックスは102であった。
【0079】
表2に、PPE共重合体の種類、PPE共重合体の量、ポリエーテルジオールの量、および、PPE共重合体とポリエーテルジオールとMDIと鎖延長剤の合計質量に対するPPE共重合体の質量%を示す。
【0080】
【0081】
表2に示すように、実施例3および5は、実施例1の炭酸エチレン(ethyl carbonate)から調製したキャップドPPE共重合体を、それぞれ10質量%または20質量%含むものであった。実施例4および6は、実施例2の炭酸プロピレンから調製したキャップドPPE共重合体を、それぞれ10質量%または20質量%含むものであった。比較例1(CE1)は、ポリイソシアナートとジオールを含むが、PPE共重合体を含まないものであった。比較例2(CE2)および比較例3(CE3)は、アンキャップドPPE-2OH共重合体を、それぞれ10質量%または20質量%含むものであった。
【0082】
表2の反応混合物から調製したTPU試料の物理的機械的特性を調べるため、シートおよ丸底(round bottom)試料を調製した。試料は、実験室圧縮成形法(laboratory compression molding method)(Carver press)を用いて作成した。PPE共重合体とポリエーテルジオールと鎖延長剤との混合物を脱気および予熱して、高速混合容器(speed mixing cup)に計り取り、Speed Mixer (FlackTek Inc.製)を用いて2200rpmで30秒間混合した後、空気循環オーブン中120℃で15分間加熱した。80℃で環境順化した液体のイソシアナートをシリンジを用いて混合物に加え、得られた内容物を、Speed Mixerを用いて2200rpmで30秒間混合し、得られた混合物を120℃に予熱したアルミニウム金型に移し入れて、ポリテトラフルオロエチレンシートで覆った。ゲル化時間の間、金型を閉じ、TPUを120℃で2時間硬化させた。その後、TPU試料を、100℃で20時間、あと硬化させた。
【0083】
表3に、TPU試料の種類および特性を示す。
【0084】
【0085】
表3に示すように、CE2でアンキャップドPPE-2OH共重合体を10質量%使用すると、ショアD硬さ、引張応力、引裂強さ、圧縮強さ、耐溶剤性が、CE1よりも大きくなった。それぞれECおよびPCキャッピング基を組み入れると、硬さ、引張応力、引裂強さ、圧縮強さ、耐溶剤性が、CE2に比べて更に大きくなり、示されている特性の向上は、TPU系に使用したキャップドPPE共重合体の量の増大と対応している。
【0086】
本発明の開示内容は更に、以下の態様を含む。
【0087】
態様1:ポリイソシアナート化合物とキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体とを含む組成物であって、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、キャッピング剤と、フェノール性末端基を含むアンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体との反応から誘導され、アンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、一価フェノール、二価フェノール、またはこれらの組み合わせを含むモノマーと、必要に応じて、ヒドロキシ芳香族末端化シロキサンとの酸化共重合生成物であり、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、脂肪族アルコールを含む末端基を含んでいる。
【0088】
態様2:態様1の組成物であって、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、構造式(1) Q(J-D)y で示されるものであり、式中、Qは、一価フェノールまたは二価フェノールと、必要に応じて、ヒドロキシ芳香族末端化シロキサンとから誘導され、Jは、構造式(2)で示される構造を持ち、式中、Q1a、Q1b、Q2、およびeは文中に示したとおりであり、Dは、キャッピング基の脂肪族炭素原子に直接結合しているヒドロキシ基を含む脂肪族アルコールキャッピング基であって、望ましくは、それぞれのDは、独立して、置換または非置換C2~C30ヒドロキシヒドロカルビル、置換または非置換C3~C30ヒドロキシヒドロカルビルカルボニル、置換または非置換C4~C30ヒドロキシ末端化ポリ(C2~C4アルキレンエーテル)、またはC5~C30ヒドロキシ末端化ポリ(C2~C4アルキレンエーテル)カルボニル(但し、ヒドロキシ基は脂肪族炭素原子に直接結合している)であり、yは1または2、望ましくは2である。
【0089】
態様3:態様1または2の組成物であって、二価フェノールは構造式(3)で示されるものであり、式中、R1、R2、R3、R4、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Y、およびzは文中に示したとおりであって、望ましくは、二価フェノールは、2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパンを含む。
【0090】
態様4:前記態様のいずれかの組成物であって、一価フェノールは構造式(4)で示されるものであり、式中、Q1a、Q1b、Q2は文中に定めたとおりであって、望ましくは、Q1aはメチルであり、Q1bは、ハロゲン、非置換C1~C12アルキル(但し、アルキル基は第三級アルキルではない)、または非置換C1~C12アリールであり、より望ましくは、一価フェノールは、2,6-ジメチルフェノール、2-メチルフェノール、2,5-ジメチルフェノール、2,3,6-トリメチルフェノール、2-メチル-6-フェニルフェノール、またはこれらの組み合わせである。
【0091】
態様5:前記態様のいずれかの組成物であって、ヒドロキシ芳香族末端化シロキサンは構造式(5)で示されるものであり、式中、R6、R7、R8、E、およびnは文中に示したとおりである。
【0092】
態様6:前記態様のいずれかの組成物であって、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は構造式(6)または(7)で示されるものであり、式中、R1、R2、R3、R4、Ra、Rb、Rc、Rd、Re、Q1a、Q1b、Q2、Y、D、x’、y’、およびzは文中に示したとおりである。
【0093】
態様7:態様6の組成物であって、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、文中に提示した、構造式(7a)で示されるものであり、式中、Dは出現毎に、独立して、C2~C20ヒドロキシヒドロカルビルまたはC4~C20ヒドロキシ末端化ポリ(エチレンエーテル)である。
【0094】
態様8:前記態様のいずれかの組成物であって、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、200から2,500グラム/モルの数平均分子量と、600から6,000グラム/モルの質量平均分子量を持ち、数平均分子量および質量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィで求めたものである。
【0095】
態様9:前記態様のいずれかの組成物であって、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、1分子当たり平均で、1.5から5、望ましくは1.5から3.1、より望ましくは1.5から2.1のヒドロキシ基を持つ。
【0096】
態様10:前記態様のいずれかの組成物であって、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体は、クロロホルム中25℃での測定で、0.04から0.15dL/g、望ましくは0.06から0.1dL/g、より望ましくは0.075から0.090dL/gの固有粘度を持つ。
【0097】
態様11:前記態様のいずれかの組成物であって、ポリイソシアナート化合物は、1,4-テトラメチレンジイソシアナート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート、2,2,4-トリメチル-1,6-ヘキサメチレンジイソシアナート、1,12-ドデカメチレンジイソシアナート、シクロヘキサン-1,3-ジイソシアナート、シクロヘキサン-1,4-ジイソシアナート、1-イソシアナト-2-イソシアナトメチルシクロペンタン、1-イソシアナト-3-イソシアナトメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキサン、ビス(4-イソシアナトシクロヘキシル)メタン、2,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(4-イソシアナト-3-メチルシクロヘキシル)メタン、α,α,α’,α’-テトラメチル-1,3-キシリレンジイソシアナート、α,α,α’,α’-テトラメチル-1,4-キシリレンジイソシアナート、1-イソシアナト-1-メチル-4(3)-イソシアナトメチルシクロヘキサン、2,4-ヘキサヒドロトルエンジイソシアナート、2,6-ヘキサヒドロトルエンジイソシアナート、1,3-フェニレンジイソシアナート、1,4-フェニレンジイソシアナート、2,4-トルエンジイソシアナート、2,6-トルエンジイソシアナート、2,4-ジフェニルメタンジイソシアナート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアナート、1,5-ジイソシアナトナフタレン、1分子当たり平均で、2よりも多く、4以下のイソシアナート基を持つ、オリゴマー状ジフェニルメタンジイソシアナート、またはこれらの組み合わせを含む。
【0098】
態様12:前記態様のいずれかの組成物であって、ポリオール、発泡剤、または触媒の1つ以上を更に含み、望ましくは、ポリオールは、エトキシル化サッカリド、プロポキシル化サッカリド、ブトキシル化サッカリド、エトキシル化グリセリン、プロポキシル化グリセリン、ブトキシル化グリセリン、エトキシル化ジエタノールアミン、プロポキシル化ジエタノールアミン、ブトキシル化ジエタノールアミン、エトキシル化トリエタノールアミン、プロポキシル化トリエタノールアミン、ブトキシル化トリエタノールアミン、エトキシル化トリメチロールプロパン、プロポキシル化トリメチロールプロパン、ブトキシル化トリメチロールプロパン、エトキシル化エリトリトール、プロポキシル化エリトリトール、ブトキシル化エリトリトール、エトキシル化ペンタエリトリトール、プロポキシル化ペンタエリトリトール、ブトキシル化ペンタエリトリトール、脂肪族ポリエステルジオール、芳香族ポリエステルポリオール、またはこれらの組み合わせであり、望ましくは、発泡剤は、1,1-ジフルオロエタン、1,1,1,2-テトラフルオロエタン、ペンタフルオロエタン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロプロパン、1,1,1,3,3-ペンタフルオロブタン、2-ブロモペンタフルオロプロペン、1-ブロモペンタフルオロプロペン、3-ブロモペンタフルオロプロペン、3,4,4,5,5,5-ヘプタフルオロ-1-ペンテン、3-ブロモ-1,1,3,3-テトラフルオロプロペン、2-ブロモ-1,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1-ブロモ-2,3,3,3-テトラフルオロプロペン、1,1,2,3,3,4,4-ヘプタフルオロ-1-ブテン、2-ブロモ-3,3,3-トリフルオロプロペン、E-1-ブロモ-3,3,3-トリフルオロプロペン-1、(Z)-1,1,1,4,4,4-ヘキサフルオロ-2-ブテン、3,3,3-トリフルオロ-2-(トリフルオロメチル)プロペン、1-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、2-クロロ-3,3,3-トリフルオロプロペン、1,1,1-トリフルオロ-2-ブテン、またはこれらの組み合わせであり、望ましくは、硬化触媒は、ジメチルシクロヘキシルアミン、ベンジルジメチルアミン、N,N,N’,N’’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、2,4,6-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、オクタン酸(2-エチルヘキサン酸)カリウム、酢酸カリウム、二ラウリン酸ジブチルスズ、二酢酸ジブチルスズ、ギ酸=2-ヒドロキシプロピルトリメチルアンモニウム、N,N’,N’’-ジメチルアミノプロピルヘキサヒドロトリアジン、またはこれらの組み合わせである。
【0099】
態様13:前記態様のいずれかの組成物のキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体の製造法であって、この製造法は、キャッピング剤と、フェノール性末端基を含むアンキャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体とを、キャップドポリ(アリーレンエーテル)共重合体を含む反応混合物が生成するような条件下で反応させる工程を含む。
【0100】
態様14:態様13の製造法であって、キャッピング剤は、構造式(10)から(13)で示されるものの1つ以上を含み、式中、R9からR23、X、a、b、c、およびgは文中に示したとおりである。
【0101】
態様15:前記態様のいずれかの組成物から調製した生成物であって、望ましくは、この生成物は、熱可塑性ポリウレタン、ポリウレタンフォーム、ポリイソシアヌラートフォーム、またはこれらの組み合わせである。
【0102】
組成物、方法、および物品は、選択的に、本件に開示されている任意の適当な材料、ステップ、または構成要素を含む(comprise)、から成る(consist of)、あるいは、基本的に~から成る(consist essentially of)ことができる。組成物、方法、および物品は、付加的に、または選択的に、この組成物、方法、および物品の機能または目的の達成に必ずしも必要ではない任意の材料(または種)、ステップ、または構成要素を除いて、または実質的に含まないように構成することができる。
【0103】
文中に開示されている全ての範囲は終点を含んでおり、その終点は独立して互いに組み合わせ可能である(例えば、“25質量%以下、または、より詳細には5質量%から20質量%”の範囲は、終点と、“5質量%から25質量%”など、この範囲の中にある全ての値を含む)。“組み合わせ(combinations)”は、混合物(blends, mixtures)、合金、反応生成物などを含む。用語“第1(first)”、“第2(second)”などは、順番、数量、または重要度を何ら示すものではなく、ある要素と別の要素とを識別するために使用する。用語“a”、“an”、および“the”は、数量の限定を示すものではなく、別途指示のない限り、または文脈によって明らかに否定されない限り、単数形と複数形の両方を含むと解釈すべきである。“または(or)”は、別に明示されない限り、“および/または(and/or)”を意味する。明細書中における“一部の(some)態様”、“ある(an)態様”などでの言及は、その態様に関連して述べられているある要素が、本件に記載されている少なくとも1つの態様には含まれているが、他の態様中には存在してもしていなくても良いことを意味する。更に、記載されている要素は、様々な態様において、任意の適当な方法で組み合わせ可能であることは当然である。“その組み合わせ(combination thereof)”は非限定(open)であって、挙げられている構成要素または特性の少なくとも1つを含み、必要に応じて、挙げられていない類似または同等の構成要素または特性を共に含む、任意の組み合わせを含んでいる。
【0104】
文中にそうでないことが明記されていない限り、全ての試験基準は、本願の出願日、あるいは、優先権が主張されている場合、この試験基準が記載されている最先の優先権出願の出願日時点で有効な、最も新しい基準である。別途定義のない限り、文中で使用する技術および科学用語は、本願の属する技術分野の当業者に一般的に理解されているものと同じ意味を持つ。引用されている特許、特許出願、その他の参考文献は全て、その内容を全て本件に引用して援用する。援用する参考文献の用語と矛盾する場合は、本願において明確に定義されている用語が優先する。
【0105】
化合物は標準命名法を用いて記述する。例えば、指示された何らかの基で置換されていない位置は、指示された結合で、または水素原子で満たされたその価数を持つものとする。2つの文字または記号に挟まれていないダッシュ(“-”)は、置換基の結合に使われる位置を示すために使用する。例えば、-CHOは、カルボニル基の炭素で結合している。
【0106】
用語“炭化水素”は、炭素と水素を含む化合物を指し、“ヒドロカルビル”は、炭化水素から1個の水素原子を除いてできる一価基を意味し、“ヒドロカルビレン”は、炭化水素から2個の水素原子を除いて、例えば、1つの炭素原子から2個の水素原子を、または異なる2つの炭素原子から1個ずつ水素原子を除いてできる二価基を意味する。ヒドロカルビルおよびヒドロカルビレンは、非環式または環式基であって良く、および/または線状または分枝であって良く、炭素と水素を含む、環、環系、芳香族環、芳香族環系を含んでいても良い。
【0107】
“アルキル”は、分枝または直鎖、飽和脂肪族炭化水素基を意味する。“アルケニル”は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を持つ、分枝または直鎖、一価炭化水素基 (例えば、エテニル(-HC=CH2))を意味する。“アルコキシ”は、酸素を経て結合しているアルキル基(即ち、アルキル-O-)、例えば、メトキシ、エトキシ、およびsec-ブチルオキシ基を意味する。“アルキレン”は、分枝または直鎖、飽和、二価脂肪族炭化水素基(例えば、メチレン(-CH2-)、またはプロピレン(-(CH2)3-))を意味する。“アルケニレン”は、二価アルケニル基を意味する。“カルボニル”は、構造式 -C(=O)- で示される二価基を意味する。“オキソ”は、構造式 -O- で示される二価基を指す。“シクロアルキル”は、1つ以上の環を持つ一価飽和炭化水素環基を意味する。“シクロアルキレン”は、二価シクロアルキル基を意味する。“シクロアルケニル”は、1つ以上の環と、環内に1つ以上の炭素-炭素二重結合を含み、全ての環員が炭素である一価基(例えば、シクロペンテニルおよびシクロヘキセニル)を意味する。“アリール”は、指定された数の炭素原子を含む芳香族炭化水素基、例えば、フェニル、トロポン、インダニル、ナフチルなどを意味する。“アリーレン”は、二価のアリール基を意味する。“アルキルアリール”は、アルキル基で置換されたアリール基を意味する。“アルキルアリールオキシ”は、アルキル基で置換されたアリールオキシ基を意味する。“アリールアルキル”は、アリール基で置換されたアルキル基(例えば、ベンジル)を意味する。“アリールアルコキシ”は、アリール基で置換されたアルキルオキシ基を意味する。接頭辞“ハロ”は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨード置換基の1つ以上を含む基または化合物を意味する。異なるハロ基の組み合わせ(例えば、ブロモとフルオロ)、または、クロロ基のみが存在していても良い。“置換された”は、化合物または基が、置換されている原子の通常の価数を超えないという条件で、水素の代わりに、少なくとも1つ(例えば、1、2、3、または4個)の置換基(それぞれ独立して、C1~9アルコキシ、C1~9ハロアルコキシ、ニトロ(-NO2)、シアノ(-CN)、C1~6アルキルスルホニル(-S(=O)2-アルキル)、C6~12アリールスルホニル(-S(=O)2-アリール)、チオール(-SH)、チオシアノ(-SCN)、トシル(CH3C6H4SO2-)、C3~12シクロアルキル、C2~12アルケニル。C5~12シクロアルケニル、C6~12アリール、C7~13アリールアルキル、C4~12ヘテロシクロアルキル、またはC3~12ヘテロアリールとすることができる)で置換されていることを意味する。ある基について示された炭素原子の数に置換基は含まれない。例えば、-CH2CH2CN は、シアノ基で置換されたC2アルキル基である。
【0108】
接頭辞“複素(ヘテロ:hetero)”は、化合物または基が、炭素の代わりに、ヘテロ原子である少なくとも1つの環員(例えば、1、2、または3個のヘテロ原子)を含むことを意味し、このときヘテロ原子は、それぞれ独立して、N、O、S、Si、またはPである。文中で使用している用語“ヘテロヒドロカルビル”は、炭素の代わりに少なくとも1つのヘテロ原子を含むヒドロカルビル基を意味する。“ヒドロキシヒドロカルビル”は、構造式 -ヒドロカルビル-OH で示される基を指す。“ヒドロカルビルオキシ”は、構造式 -O-ヒドロカルビル で示されるヘテロヒドロカルビル基を指す。“ヒドロカルビルチオ”は、構造式 -S-ヒドロカルビル で示されるヘテロヒドロカルビル基を指す。“ヒドロキシヒドロカルビルカルボニル”は、構造式 -C(=O)-Rx (式中、Rxは、ヒドロキシ末端化ヒドロカルビルである)で示される基を指す。“ヒドロキシ末端化ポリ(C2~C4アルキレンエーテル)カルボニル”は、構造式 -C(=O)-Ry (式中、Ryは、ヒドロキシ末端化ポリ(C2~C4アルキレンエーテル)である)で示される基を指す。“ヒドロキシアルキルアリール”は、構造式 -アリール-アルキル-OH で示される基を指す。“ヒドロキシアルキルアリールカルボニル”は、構造式 -C(=O)-アリール-アルキル-OH で示される基を指す。“ヒドロキシアリールアルキル”は、構造式 -アルキル-アリール-OH で示される基を指す。“ヒドロキシアリールアルキルカルボニル”は、構造式 -C(=O)-アルキル-アリール-OH で示される基を指す。
【0109】
“脂肪族アルコール”は、ヒドロキシ基(-OH)に直接結合している脂肪族炭素原子を持つ基または部分を意味する。“脂肪族炭素原子”は、非環式または環式、飽和または不飽和のヒドロカルビルまたはヒドロカルビレン(芳香族ヒドロカルビルまたは芳香族ヒドロカルビレンを除く)の炭素原子である。
【0110】
例となる態様について述べてきたが、現時点で予想されていない、または予想されていないと考えられる代替(alternatives)、変形(modifications)、変化(variations)、改善(improvements)、および実質的同等物が、出願者や他の同業者によって考案されることがある。従って、出願時の、および修正の可能性のある添付請求項は、これらの代替、変形、変化、改善、および実質的同等物を全て包含するものとする。