(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】車両のステップ装置
(51)【国際特許分類】
B60R 3/02 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
B60R3/02
(21)【出願番号】P 2019196864
(22)【出願日】2019-10-30
【審査請求日】2022-05-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】591038587
【氏名又は名称】株式会社アンセイ
(74)【代理人】
【識別番号】100174366
【氏名又は名称】相原 史郎
(72)【発明者】
【氏名】▲徳▼増 信哉
(72)【発明者】
【氏名】高橋 聡
(72)【発明者】
【氏名】中田 吉紀
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-119611(JP,A)
【文献】特開昭58-039543(JP,A)
【文献】実開平02-016340(JP,U)
【文献】特開平04-339041(JP,A)
【文献】特開平05-310081(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0355137(US,A1)
【文献】特開2015-066961(JP,A)
【文献】特開2005-297888(JP,A)
【文献】特開2015-127165(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降用ステップと、
車体に固定された車体固定部材と、
一端部に前記乗降用ステップが支持され車幅方向に延びるステップ支持部材と、
一端部が前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第1リンクアームと、
一端部が前記第1リンクアームと車幅方向外側に離間して前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第2リンクアームと、
前記第1リンクアームを回転駆動するアクチュエータと、を有し、
前記アクチュエータにより前記第1リンクアームを回転駆動することで、前記乗降用ステップを前記車体より外方に位置する展開位置と前記車体の下部に位置する格納位置との間で車幅方向に移動させる縦リンク式の車両のステップ装置であって、
前記車体固定部材は、前記乗降用ステップの格納位置において、前記乗降用ステップより車幅方向内側で前記ステップ支持部材に対して上下方向の間隙を有するように、前記ステップ支持部材に向かって延在する壁部を有しており、
前記壁部は、少なくとも前記ステップ支持部材の上部に位置し、
前記壁部の下側の端縁は、前記乗降用ステップの上面と同じ高さ又は前記上面より下側に位置していることを特徴とする車両のステップ装置。
【請求項2】
乗降用ステップと、
車体に固定された車体固定部材と、
一端部に前記乗降用ステップが支持され車幅方向に延びるステップ支持部材と、
一端部が前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第1リンクアームと、
一端部が前記第1リンクアームと車幅方向外側に離間して前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第2リンクアームと、
前記第1リンクアームを回転駆動するアクチュエータと、を有し、
前記アクチュエータにより前記第1リンクアームを回転駆動することで、前記乗降用ステップを前記車体より外方に位置する展開位置と前記車体の下部に位置する格納位置との間で車幅方向に移動させる縦リンク式の車両のステップ装置であって、
前記車体固定部材は、前記乗降用ステップの格納位置において、前記乗降用ステップより車幅方向内側で前記ステップ支持部材に対して上下方向の間隙を有するように、前記ステップ支持部材に向かって延在する壁部を有しており、
前記壁部の下側の端縁は、前記乗降用ステップの上面と同じ高さ又は前記上面より下側に位置し、
前記ステップ支持部材は、前記乗降用ステップの格納位置において、前記壁部より車幅方向内側で前記ステップ支持部材から上方に突出するように、突出部を有しており、該突出部の上側の端縁は、前記壁部の下側の端縁と同じ高さ又は前記下側の端縁より上側に位置している
ことを特徴とする車両のステップ装置。
【請求項3】
前記ステップ支持部材は、車幅方向において前記乗降用ステップと前記突出部との間に、前記車体の前後方向の少なくとも一方に向かって下方に傾斜する傾斜面部を有している、請求項2に記載の車両のステップ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両に備えられたステップ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
フロア位置の高い自動車等の車両において、乗員の乗降性を向上させるためにステップ装置が備えられたものがある。例えば、特許文献1には、車両のサイドドアの下部に備えられた可動式のサイドステップ装置が開示されている。特許文献1に記載されたサイドステップ装置は、車体の下部に平行リンクを介して乗降用ステップ(サイドステップ)が連結されており、車体に対して縦方向(上下方向及び車幅方向)に乗降用ステップが移動可能な構造になっている。当該サイドステップ装置は、アクチュエータを作動させることで、車体下部に格納される格納位置と、車体より側方に突出した展開位置との間を、乗降用ステップが移動可能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、車両の走行中、格納位置にある乗降用ステップの上面には、車両前方から後方へ向けて風が流れ、このような風の流れによって、サイドステップ装置の内部の空気が吸い出される。このため、車両が雪路を走行する際に前輪によって巻き上げられて床下を車両後方へ向かって流れる雪は、サイドステップ装置の内部に吸い込まれる。そして、サイドステップ装置の内部に吸い込まれた雪は、当該サイドステップ装置の構成部品(例えば平行リンク等)に衝突し、当該サイドステップ装置の内部に堆積する。サイドステップ装置の内部に雪が堆積すると、乗降用ステップを格納位置と展開位置との間で移動する動作、特に乗降用ステップを格納位置から展開位置へ移動する展開動作が阻害される恐れがある。
【0005】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、内部への雪の堆積を抑制することのできる車両のステップ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る車両のステップ装置は、乗降用ステップと、車体に固定された車体固定部材と、一端部に前記乗降用ステップが支持され車幅方向に延びるステップ支持部材と、一端部が前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第1リンクアームと、一端部が前記第1リンクアームと車幅方向外側に離間して前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第2リンクアームと、前記第1リンクアームを回転駆動するアクチュエータと、を有し、前記アクチュエータにより前記第1リンクアームを回転駆動することで、前記乗降用ステップを前記車体より外方に位置する展開位置と前記車体の下部に位置する格納位置との間で車幅方向に移動させる縦リンク式の車両のステップ装置であって、前記車体固定部材は、前記乗降用ステップの格納位置において、前記乗降用ステップより車幅方向内側で前記ステップ支持部材に対して上下方向の間隙を有するように、前記ステップ支持部材に向かって延在する壁部を有しており、前記壁部は、少なくとも前記ステップ支持部材の上部に位置し、前記壁部の下側の端縁は、前記乗降用ステップの上面と同じ高さ又は前記上面より下側に位置していることを特徴とする。
【0007】
あるいは本発明に係る車両のステップ装置は、乗降用ステップと、車体に固定された車体固定部材と、一端部に前記乗降用ステップが支持され車幅方向に延びるステップ支持部材と、一端部が前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第1リンクアームと、一端部が前記第1リンクアームと車幅方向外側に離間して前記車体固定部材に回動可能に支持され、他端部が前記ステップ支持部材の他端部に回動可能に支持された第2リンクアームと、前記第1リンクアームを回転駆動するアクチュエータと、を有し、前記アクチュエータにより前記第1リンクアームを回転駆動することで、前記乗降用ステップを前記車体より外方に位置する展開位置と前記車体の下部に位置する格納位置との間で車幅方向に移動させる縦リンク式の車両のステップ装置であって、前記車体固定部材は、前記乗降用ステップの格納位置において、前記乗降用ステップより車幅方向内側で前記ステップ支持部材に対して上下方向の間隙を有するように、前記ステップ支持部材に向かって延在する壁部を有しており、前記壁部の下側の端縁は、前記乗降用ステップの上面と同じ高さ又は前記上面より下側に位置し、前記ステップ支持部材は、前記乗降用ステップの格納位置において、前記壁部より車幅方向内側で前記ステップ支持部材から上方に突出するように、突出部を有しており、該突出部の上側の端縁は、前記壁部の下側の端縁と同じ高さ又は前記下側の端縁より上側に位置している。
本発明の一態様に係る車両のステップ装置において、前記ステップ支持部材は、車幅方向において前記乗降用ステップと前記突出部との間に、前記車体の前後方向の少なくとも一方に向かって下方に傾斜する傾斜面部を有している。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る車両のステップ装置によれば、車体固定部材は、乗降用ステップの格納位置において、乗降用ステップより車幅方向内側でステップ支持部材に対して上下方向の間隙を有するように、ステップ支持部材に向かって延在する壁部を有しており、壁部の下側の端縁は、前記乗降用ステップの上面と同じ高さ又は前記上面より下側に位置している。従って、乗降用ステップの格納位置において、壁部の下側の端縁と乗降用ステップの上面とにより、車体の下部(床下)から車体の外方へ延びる曲がりくねる形状の通路(以下「ラビリンス通路」ともいう)が形成される。このため、車両の走行中、サイドステップ装置の内部の空気がラビリンス通路を通過する際の抵抗が大きくなり、サイドステップ装置の内部から吸い出される空気の量を低減することができる。よって、車両が雪路を走行する際にサイドステップ装置の内部に吸い込まれる雪の量を低減することができ、ひいては、当該サイドステップ装置の内部への雪の堆積を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態のステップ装置を備えた車両の外形図である。
【
図2】格納状態におけるリヤリンク機構の概略構成図である。
【
図3】本発明の一実施形態のステップ装置のリンクアームを示す斜視図である。
【
図4】展開状態におけるリヤリンク機構の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体化した車両のステップ装置の実施形態を説明する。
図1は、本発明の一実施形態のステップ装置1を備えた車両2の外形図である。
図2は、格納状態におけるリヤリンク機構5の概略構成図である。
図3は、本発明の一実施形態のステップ装置1のリンクアーム14を示す斜視図である。
図4は、展開状態におけるリヤリンク機構5の概略構成図である。なお、説明の便宜上、車両2の進行方向を基準に着座乗員から見て「前」、「後」、「左」、「右」をそれぞれ定義し、重力を基準に「上」、「下」を定義する。即ち、各図に示される矢印「前」及び「後」は車両2の前進方向及び後進方向を示し、矢印「左」及び「右」は車両2の車幅方向を示し、矢印「上」及び「下」は車両2の上下方向を示している。なお、
図1では、車両2の左側(助手席側)のフロントドア及びリヤドアの図示を省略しており、ステップ装置1は展開状態である。
図2及び
図4は、リヤリンク機構5及びその周辺部を車両2の後方から視た図である。
【0011】
図1に示すように、本発明の一実施形態のステップ装置1は、例えば1BOX型の車両2の助手席側の下部に備えられた可動式のステップ装置である。ステップ装置1は、ステッププレート3(乗降用ステップ)と、ステッププレート3を縦方向(車幅方向及び上下方向)に移動可能に支持する2個のリンク機構4、5を備えている。
ステッププレート3は、車両2の左側(助手席側)のフロントドアの開口部6及びスライド式のリヤドアの開口部7の下方を車両前後方向に延び、乗員の足を載せることが可能な車幅方向長さに設定されている。ステッププレート3は、2個のリンク機構4、5を介して、車体の下部、詳しくは車両2の左側(助手席側)のサイドシル8の下部に支持されている。
【0012】
2個のリンク機構4、5は、車両前後方向に互いに間隔をおいて配置されている。ステップ装置1は、ステッププレート3が、車両2の下部に位置する格納位置と、サイドシル8より車幅方向外側(左側)に突出した展開位置との間で、車幅方向に移動可能に構成されている。2個のリンク機構4、5のうち、車両2の後方側のリヤリンク機構5は、リンク(後述するドライブリンク12)を回転駆動させる駆動モータ10(アクチュエータ)を備えている。車両2の前方側のフロントリンク機構4は、駆動モータを備えておらず、ステッププレート3の移動に追従して作動する。
【0013】
駆動モータ10は、車両2の助手席側のフロントドア及びリヤドアの開閉に伴って自動的に作動するよう制御される。例えば、フロントドア及びリヤドアが閉状態では、ステッププレート3が格納位置に位置し、フロントドア及びリヤドアの少なくとも一方が開操作された場合に、ステッププレート3が展開位置に移動するように駆動モータ10が作動制御される。
【0014】
以下、駆動モータ10を備えたリヤリンク機構5について説明するが、フロントリンク機構4はリヤリンク機構5と駆動モータが備えられていない点が異なり、リンク機構4、5における各リンクの長さ、車両2における車幅方向位置及び上下位置等については、同一の構成になっている。
図2に示すように、リヤリンク機構5は、リンクブラケット11(車体固定部材)、ドライブリンク12(第1リンクアーム)、ドリブンリンク13(第2リンクアーム)、及びリンクアーム14(ステップ支持部材)を備えている。
【0015】
リンクブラケット11は、前後方向に間隔をおいて配置され車幅方向及び上下方向に延びる2枚の厚板状の縦板部材11aと、当該2枚の縦板部材11aを前後方向で接続してリンクブラケット11の上方を閉塞する板状の接続部材11bとを有し、下方が開口した箱型に形成されている。リンクブラケット11は、車体20の下部に前後左右の4か所でボルトによって固定されている。
【0016】
図2に示すように、リンクブラケット11は、ステッププレート3の格納位置において、ステッププレート3より車幅方向内側(右側)でリンクアーム14に対して上下方向の間隙Gを有するように、リンクアーム14に向かって延在する壁部11cを有している。具体的には、壁部11cは、リンクブラケット11の接続部材11bの下面から下方に延びる板状の部材であり、車幅方向に所定の厚さを有して前後方向に延びて形成されている。壁部11cの前後方向長さは、リンクアーム14の後述する前側縦板部材14a及び後側縦板部材14bの前後方向間隔と同一又は略同一に設定されている。なお、壁部11cの前後方向長さは、前側縦板部材14a及び後側縦板部材14bの前後方向間隔より短くてもよい。また、壁部11cの断面形状は、上側から下側に向かって先細りの形状でもよいし(
図2参照)、先広がりの形状でもよい。
【0017】
図2に示すように、壁部11cは、ステッププレート3の格納位置において、リンクアーム14の上面に対向する下側の端縁11dを有している。壁部11cの下側の端縁11dは、ステッププレート3の格納位置において、ステッププレート3の上面3aより下側に位置している。なお、壁部11cの下側の端縁11dは、ステッププレート3の上面3aと同じ又は略同じ高さに位置してもよい。
【0018】
図3に示すように、リンクアーム14は、車幅方向に延びるように配置されたアーム状の部材であり、前後方向に間隔をおいて配置された2枚の厚板状の前側縦板部材14a及び後側縦板部材14bを有し、当該前側縦板部材14a及び後側縦板部材14bが車幅方向外側(左側)の部位等で連結されて構成されている。リンクアーム14の車幅方向外側となる外側端部14cには、ステッププレート3が固定されている。リンクブラケット11とリンクアーム14とは、同一の前後位置に配置されている。詳しくは、リンクブラケット11の前側の縦板部材11aとリンクアーム14の前側縦板部材14a、リンクブラケット11の後側の縦板部材11aとリンクアーム14の後側縦板部材14bは、夫々同一の前後位置に配置されている。
【0019】
図2に示すように、リンクアーム14は、ステッププレート3の格納位置において、壁部11cより車幅方向内側でリンクアーム14から上方に突出するように、突出部14dを有している。具体的には、
図3に示すように、突出部14dは、前後方向に延在する上側の端縁14eを有し、当該端縁14eから車幅方向内側(右側)に向かって下方に傾斜する内側傾斜面14fと、当該端縁14eから鉛直下方に延びる堰止め面14gとにより構成されている。突出部14dの上側の端縁14eは、内側傾斜面14fと堰止め面14gとの接触部分により形成されている。突出部14dは、前側縦板部材14a及び後側縦板部材14bの間に配置されており、前側縦板部材14a及び後側縦板部材14bの前後方向間隔と同等又は略同等の前後方向長さを有している。なお、堰止め面14gは、鉛直に形成されていなくてもよく、例えば端縁14eから右側に向かって下方に傾斜していてもよい。また、内側傾斜面14fは、
図2に示すように、リンクアーム14の下側端部14hまで延びるものであってもよいし、下側端部14hに到達しないものであってもよい。
図2に示すように、突出部14dの上側の端縁14eは、ステッププレート3の格納位置において、壁部11cの下側の端縁11dより上側に位置している。なお、突出部14dの上側の端縁14eは、ステッププレート3の格納位置において、壁部11cの下側の端縁11dと同じ又は略同じ高さに位置していてもよい。
【0020】
また、リンクアーム14は、車幅方向においてステッププレート3と突出部14dとの間に、前後方向の少なくとも一方に向かって下方に傾斜する傾斜面部14iを有している。具体的には、リンクアーム14の傾斜面部14iは、車幅方向において外側端部14cと突出部14dの堰止め面14gとの間に形成されている。傾斜面部14iは、車幅方向に延びる上側の端縁14jを有し、当該端縁14jから前方向に向かって下方に傾斜する前側傾斜面14kと、当該端縁14jから後方向に向かって下方に傾斜する後側傾斜面14lとにより構成されている。傾斜面部14iの上側の端縁14jは、前側傾斜面14kと後側傾斜面14lとの接触部分により形成されている。傾斜面部14iの上側の端縁14jは、突出部14dの上側の端縁14eより下側に位置している。なお、傾斜面部14iは、前側傾斜面14k及び後側傾斜面14lのいずれか一方のみで構成されていてもよい。この場合、前側傾斜面14k及び後側傾斜面14lの他方は、上側の端縁14jから鉛直下方に延びていてもよい。傾斜面部14iの近傍において、前側縦板部材14a及び後側縦板部材14bの夫々は、下方に窪む凹部14m、14nを有している。凹部14m、14nの夫々は、前側傾斜面14kの前側端縁14o及び後側傾斜面14lの後側端縁14pより下方又は同じ高さまで窪んでいる。
【0021】
ドライブリンク12及びドリブンリンク13は、断面が箱型のアーム状の部材である。
図2に示すように、ドライブリンク12及びドリブンリンク13は、夫々、一端がリンクブラケット11に他端がリンクアーム14に、前後方向に軸線が延びるように配置されたリンクピン21、22、23、24によって回動可能に支持されている。したがって、ドライブリンク12及びドリブンリンク13は、車体20に対して車幅方向に揺動可能に配置されている。ドライブリンク12は、ドリブンリンク13より車幅方向内側(右側)に配置されている。また、ドライブリンク12はドリブンリンク13よりも短く形成されている。
【0022】
リンクブラケット11とドライブリンク12とを支持する第1リンクピン21は、駆動モータ10の駆動軸と一体に構成されている。駆動モータ10はリンクブラケット11に固定されている。リンクブラケット11とドリブンリンク13とを支持する第2リンクピン22は、第1リンクピン21に対して車幅方向外側に離間して配置されるとともに、第1リンクピン21よりも下方にオフセットして配置されている。一方、車幅方向に延びるリンクアーム14において、リンクアーム14とドライブリンク12とを支持する第3リンクピン23は、リンクアーム14の車幅方向内側の端部に配置されている。リンクアーム14とドリブンリンク13とを支持する第4リンクピン24は、リンクアーム14の車幅方向内側の端部近傍に配置されるとともに、第3リンクピン23よりも車幅方向外側かつ下方に離間して配置されている。
【0023】
図2に示すように、ステッププレート3が格納位置に位置する格納状態では、ドライブリンク12及びドリブンリンク13は車幅方向内側に回転移動し、第3リンクピン23及び第4リンクピン24が、第1リンクピン21及び第2リンクピン22よりも車幅方向内側に位置する。
図4に示すように、駆動モータ10を駆動して、ドライブリンク12を回転させることで、ステッププレート3が格納位置と展開位置との間を移動する。ステッププレート3が展開位置に位置する展開状態では、ドライブリンク12及びドリブンリンク13は車幅方向外側に回転移動し、第3リンクピン23及び第4リンクピン24が、第1リンクピン21及び第2リンクピン22よりも車幅方向外側に位置する。
図4に示すように、ステッププレート3の展開位置では、ステッププレート3の上面3aが略水平(車体20の水平面と平行)となっている。一方、ステッププレート3の格納位置では、ステッププレート3は展開位置よりも車幅方向内側に位置し、かつステッププレート3の上面3aが展開位置よりもわずかに上方に位置するとともに車幅方向外側に向けて下方にわずかに傾斜している。
【0024】
次いで、
図2及び
図3を用いて本発明の一実施形態のステップ装置1の作用、効果について説明する。上述したように、本発明の実施形態に係るステップ装置1によれば、リンクブラケット11は、ステッププレート3の格納位置において、ステッププレート3より車幅方向内側(右側)でリンクアーム14に対して上下方向の間隙Gを有するように、リンクアーム14に向かって延在する壁部11cを有している。そして、
図2に示すように、壁部11cの下側の端縁11dは、ステッププレート3の格納位置において、ステッププレート3の上面3aより下側に位置している。従って、ステッププレート3の格納位置において、壁部11cの下側の端縁11dとステッププレート3の上面3aとによりラビリンス通路W1が形成される。つまり、車両2の走行中、ステップ装置1の内部の空気は、ラビリンス通路W1において流れの方向を変えて外部に吸い出される。このため、ラビリンス通路W1を通過する際の抵抗が大きくなり、ステップ装置1の内部から吸い出される空気の量を低減することができる。よって、車両2が雪路を走行する際にステップ装置1の内部に吸い込まれる雪S(当該雪Sの流れを
図2に二点鎖線で示す)の量を低減することができ、ひいては、当該ステップ装置1の内部への雪Sの堆積を抑制することができる。これより、車両2が雪路を走行した場合であっても、ステッププレート3を格納位置と展開位置との間で移動する動作、特にステッププレート3を格納位置から展開位置へ移動する展開動作不良を抑制することができる。
【0025】
また、本発明の実施形態に係るステップ装置1によれば、リンクアーム14は、ステッププレート3の格納位置において、壁部11cより車幅方向内側でリンクアーム14から上方に突出するように、突出部14dを有している。そして、
図2に示すように、突出部14dの上側の端縁14eは、ステッププレート3の格納位置において、壁部11cの下側の端縁11dより上側に位置している。従って、ステッププレート3の格納位置において、壁部11cの下側の端縁11dと突出部14dの上側の端縁14eとによりラビリンス通路W2が形成される。つまり、車両2の走行中、ステップ装置1の内部の空気は、ラビリンス通路W2において流れの方向を変えて外部に吸い出される。このため、ラビリンス通路W2を通過する際の抵抗が大きくなり、ステップ装置1の内部から吸い出される空気の量を低減することができる。よって、車両2が雪路を走行する際にステップ装置1の内部に吸い込まれる雪Sの量を低減することができ、ひいては、当該ステップ装置1の内部への雪Sの堆積を抑制することができる。
【0026】
また、本発明の実施形態に係るステップ装置1によれば、
図3に示すように、リンクアーム14は、車幅方向においてステッププレート3と突出部14dとの間に、前方向に向かって下方に傾斜する前側傾斜面14kと、後方向に向かって下方に傾斜する後側傾斜面14lとを有している。従って、車体20等に付着した雪、氷などが解けてリンクアーム14に水が流れ込んだ場合であっても、前側傾斜面14k及び後側傾斜面14lを介して当該水を排出することができる。より詳細には、車体20等に付着した雪、氷などが解けてリンクアーム14に水が流れ込んだ場合であっても、この水の流れを突出部14dの堰止め面14gで堰止めつつ、前側傾斜面14k及び後側傾斜面14lを介して当該水を排出することがきる。また、リンクアーム14の上面に雪が堆積した場合であっても、前側傾斜面14k及び後側傾斜面14lを介して当該雪を排出することができる。このため、リンクアーム14に流れ込んだ水や雪の再凍結を抑制することができ、ステップ装置1の動作(特に展開動作)不良を抑制することができる。
【0027】
以上、本発明の好適な実施の形態について説明したが、本発明は上記の実施の形態に係るステップ装置1に限定されるものではなく、本発明の概念及び特許請求の範囲に含まれるあらゆる態様を含み、各構成を適宜選択的に組み合わせても良い。例えば、上記実施形態では、駆動モータ10によってドライブリンク12を回転駆動する構造であるが、駆動モータ10の代わりにシリンダ等の他のアクチュエータによってドライブリンク12を駆動させる構造であってもよい。また、上記実施の形態における各構成要素の形状、材料、配置、サイズ等は、本発明の具体的態様によって適宜変更され得る。
【符号の説明】
【0028】
1 ステップ装置
3 ステッププレート(乗降用ステップ)
3a 上面
10 駆動モータ(アクチュエータ)
11 リンクブラケット(車体固定部材)
11c 壁部
11d 端縁
12 ドライブリンク(第1リンクアーム)
13 ドリブンリンク(第2リンクアーム)
14 リンクアーム(ステップ支持部材)
14d 突出部
14e 端縁
14i 傾斜面部
20 車体
G 間隙