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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】媒体
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/06 20060101AFI20230810BHJP
   G09F 3/02 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
G09F3/06
G09F3/02 M
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2019058169
(22)【出願日】2019-03-26
(65)【公開番号】P2020160216
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2022-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005267
【氏名又は名称】ブラザー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003096
【氏名又は名称】弁理士法人第一テクニカル国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 汐里
(72)【発明者】
【氏名】穂苅 有希
【審査官】藤井 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-172608(JP,A)
【文献】特開平11-024569(JP,A)
【文献】特開2008-197214(JP,A)
【文献】米国特許第05658648(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F 3/00- 3/20
H02G 1/06- 1/10
B65C 3/02- 3/04
B31B 50/00-70/99
B31C 1/00-99/00
B31D 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリンタに装着されて印字される媒体であって、
剥離材と、
前記剥離材に設けられ、互いに対向する第1辺及び第2辺を少なくとも備え、穴又は切れ目又は穴の列又は切れ目の列により囲まれた切取領域と、
前記切取領域の前記第1辺及び前記第2辺を跨ぐように前記剥離材に貼られた、被印字用ラベルと、
を有し、
前記被印字用ラベルを前記第1辺側から前記第2辺側に向かって引き剥がす力が作用する際には、前記切取領域が前記剥離材のうち前記切取領域以外の領域に固定される力は、前記被印字用ラベルと前記切取領域との粘着力よりも小さく、
前記被印字用ラベルを前記第2辺側から前記第1辺側に向かって引き剥がす力が作用する際には、前記切取領域が前記剥離材のうち前記切取領域以外の領域に固定される力は、前記被印字用ラベルと前記切取領域との粘着力よりも大きい、
ことを特徴とする媒体。
【請求項2】
請求項1記載の媒体において、
前記被印字用ラベルと前記切取領域との前記粘着力は、
0.01N/20mm以上かつ2N/20mm以下である
ことを特徴とする媒体。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の媒体において、
前記第1辺及び前記第2辺の、前記穴又は前記切れ目又は前記穴の列又は前記切れ目の列の種類が、互いに異なる
ことを特徴とする媒体。
【請求項4】
請求項3記載の媒体において、
前記第1辺の前記穴又は前記切れ目又は前記穴の列又は前記切れ目の列の合計長さは、前記第2辺の前記穴又は前記切れ目又は前記穴の列又は前記切れ目の列の合計長さよりも、大きい
ことを特徴とする媒体。
【請求項5】
請求項3又は請求項4記載の媒体において、
前記第1辺の前記穴又は前記切れ目又は前記穴の列又は前記切れ目の列の深さは、前記第2辺の前記穴又は前記切れ目又は前記穴の列又は前記切れ目の列の深さよりも、大きい
ことを特徴とする媒体。
【請求項6】
請求項3乃至請求項5のいずれか1項記載の媒体において、
前記切取領域の幅方向寸法は、前記被印字用ラベルの幅方向寸法よりも小さい
ことを特徴とする媒体。
【請求項7】
請求項3乃至請求項6のいずれか1項記載の媒体において、
前記被印字用ラベルは、
少なくとも一部が透明又は半透明である
ことを特徴とする媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体及び引き剥がしラベルの巻き付け方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ケーブル又は円柱状の被着体の外周に取り付けられ、ラベルとして使用される媒体が知られている(例えば、特許文献1参照)。この従来技術の媒体は、基材層と粘着剤層と剥離材層とを含む積層構造を備えており、剥離材層を剥がした後に裏面側が粘着性となる一方側粘着領域と、この一方側粘着領域に隣接して設けられ、上記裏面側が非粘着性となる印字背景層つきの非粘着領域と、この非粘着領域にさらに隣接して設けられ、上記裏面側の一部が粘着性の他方側粘着領域と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特表2011-524154号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来技術の媒体においては、まず上記一方側粘着領域の裏面(内周面)が粘着剤により被着体の外周部に貼り付けられた後、一方側粘着領域に隣接する上記非粘着領域が被着体の周りを周回して円筒体を形成するように巻き付けられた後、他方側粘着領域の裏面(内周面)が粘着剤により上記非粘着領域の外周側に貼り付けられる。その後、ユーザが、上記被着体に貼り付いた状態の一方側粘着領域と上記非粘着領域との間に予め設けられているミシン目を破断することで、一方側粘着領域から残りの非粘着領域及び他方側粘着領域の結合体を分離させ、これによって上記被着体に対し回転可能な回転ラベル(円筒形媒体)が完成する。一方で、上記従来技術の媒体では、ミシン目で切らずに被着体に固定した状態で、固定ラベルとして使用する場合が考えられる。しかし、上記従来の媒体では、ミシン目を切らずに固定ラベルとして使用していた場合に、使用中にミシン目が切れてしまい、被着体に対し回転する回転ラベルとなってしまう可能性がある。
【0005】
本発明の目的は、回転ラベルとしても固定ラベルとしても安定的に使用できるラベルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本願発明は、プリンタに装着されて印字される媒体であって、剥離材と、前記剥離材に設けられ、互いに対向する第1辺及び第2辺を少なくとも備え、穴又は切れ目又は穴の列又は切れ目の列により囲まれた切取領域と、前記切取領域の前記第1辺及び前記第2辺を跨ぐように前記剥離材に貼られた、被印字用ラベルと、を有し、前記第1辺及び前記第2辺の、前記穴又は前記切れ目又は前記穴の列又は前記切れ目の列の種類が、互いに異なることを特徴とする。
【0007】
本願発明の媒体は、剥離材に切取領域が設けられ、切取領域の対向する第1辺及び第2辺を跨ぐように、被印字用ラベルが貼られている。切取領域は、穴又は切れ目(いわゆるスリット)、若しくは、又は穴の列又は切れ目の列(いわゆるミシン目)によって囲まれている。被印字用ラベルが剥離材から剥がされるとき、上記スリット又は上記ミシン目によって連続的な破断線が形成される場合には、被印字用ラベルと切取領域とが一体的に剥離材から剥がされる。被印字用ラベルが剥離材から剥がされるとき、上記スリット又は上記ミシン目によって連続的な破断線が形成されない場合には、切取領域は剥離材側に残り、被印字用ラベルのみが剥離材から剥がされる。第1辺と第2辺とでは、スリット又はミシン目の種類が互いに異なっている。このため、同じ力が加わったとしても、第1辺と第2辺とでは、連続的な破断線の形成に関する挙動や態様が異なる。
【0008】
連続的な破断線を形成しやすい辺あるいは既に形成されている辺(以下適宜、「破断容易辺」という)から連続的な破断線を形成しにくい辺(以下適宜、「破断困難辺」という)に向かって被印字用ラベルが剥がされる場合は、引き剥がし始めの段階で上記破断容易辺において連続的な破断線が形成される。このため、そこから切取領域の切り取りが進行し、引き剥がし終わりの段階で上記破断困難辺においても連続的な破断線が形成され、最終的には、被印字用ラベルと切取領域とを一体的に剥離材から剥がすことができる。したがって、この一体物を対象物に巻き付けるとき、切取領域を対象物に接触させつつ被印字用ラベルを巻き付けることで、対象物に対して回転可能な回転ラベルとして用いることができる。
【0009】
破断困難辺から破断容易辺に向かって被印字用ラベルが剥がされる場合は、引き剥がし始めの段階で上記破断困難辺において連続的な破断線が形成されない。このため、切取領域の切り取りが始まることなく引き剥がしが進行するため、最終的には、上記と異なり、切取領域を剥離材側に残したまま被印字用ラベルのみが剥離材から剥がされる。したがって、被印字用ラベルを対象物に巻き付けるとき、引き剥がしによって露出した粘着面を対象物に接触させつつ巻き付けることで、対象物に対して回転せずに固定される固定ラベルとして用いることができる。
【0010】
以上のようにして、ユーザは、第1辺及び第2辺のうちどちらから引き剥がしを行うかを決めるだけで、回転ラベルとしての使用又は固定ラベルとしての使用、を使い分けることができる。その結果、回転ラベルとしても固定ラベルとしても安定的に使用することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、回転ラベルとしても固定ラベルとしても安定的に使用できるラベルを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の各実施形態に係わるラベル作成装置の概略構成を表す説明図である。
図2】本発明の第1実施形態に係る被印字テープを表し、図2(a)は、印刷前の被印字テープを表す平面図、図2(b)は、印刷後の被印字テープを表す平面図、図2(c)は、印刷後の被印字テープのIIy断面による縦断面図、図2(d)は、印刷後の被印字テープの背面図、図2(e)は、印刷前の被印字テープのIx断面による横断面図、図2(f)は、印刷後のIIx断面による縦断面図である。
図3】ケーブルに対する印字ラベルの取り付け状態を表し、図3(a)は、印字が正面に位置した姿勢の印字ラベルを表す模式図、図3(b)は、印字が上部に位置した姿勢の印字ラベルを表す模式図である。
図4】ケーブルに取り付けられた印字ラベルの利用態様を表す模式図である。
図5】印字ラベルを回転ラベルとして使用する際の使用態様を表し、図5(a)は、回転ラベルとして使用する際の被印字テープを表す平面図、図5(b)は、同被印字テープの背面図である。
図6】印字ラベルを固定ラベルとして使用する際の使用態様を表し、図6(a)は、固定ラベルとして使用する際の被印字テープを表す平面図、図6(b)は、同被印字テープの背面図である。
図7】印字ラベルを回転ラベルとして使用する際の使用態様を表し、図7(a)は、回転ラベルとして使用する際の被印字テープを表す平面図、図7(b)は、同被印字テープの背面図、図7(c)は、分離された印字ラベルと被印字テープを表す平面図、図7(d)は、印字ラベルが分離された被印字テープの背面図、図7(e)は、分離された印字ラベルと被印字テープのIIIy断面による縦断面図である。
図8】回転ラベルとして使用する場合の印字ラベルを表し、図8(a)は、印字ラベルの平面図、図8(b)は、IVy断面による縦断面図である。
図9】回転ラベルとして使用する場合の印字ラベルのケーブルへの取り付け手順を表す説明図である。
図10】印字ラベルを固定ラベルとして使用する際の使用態様を表し、図10(a)は、固定ラベルとして使用する際の被印字テープを表す平面図、図10(b)は、分離された印字ラベルと被印字テープを表す平面図、図10(c)は、印字ラベルが分離された被印字テープの背面図、図7(d)は、分離された印字ラベルと被印字テープのVy断面による縦断面図である。
図11】固定ラベルとして使用する場合の印字ラベルを表し、図11(a)は、印字ラベルの平面図、図11(b)は、VIy断面による縦断面図である。
図12】固定ラベルとして使用する場合の印字ラベルのケーブルへの取り付け手順を表す説明図である。
図13】本発明の第1実施形態の第1変形例に係る被印字テープを表す模式図である。
図14】本発明の第1実施形態の第2変形例に係る被印字テープを表す模式図である。
図15】本発明の第1実施形態の第3変形例に係る被印字テープを表す模式図である。
図16】本発明の第1実施形態の第4変形例に係る被印字テープを表す模式図である。
図17】本発明の第2実施形態に係る被印字テープを表し、図17(a)は、印刷前の被印字テープを表す平面図、図17(b)は、印刷後の被印字テープを表す平面図、図17(c)は、印刷後の被印字テープのXy断面による縦断面図、図17(d)は、印刷後の被印字テープの背面図、図17(e)は、印刷前の被印字テープのIXx断面による横断面図、図17(f)は、印刷後のXx断面による縦断面図である。
図18】印字ラベルを回転ラベルとして使用する際の使用態様を表し、図19(a)は、分離された印字ラベルと被印字テープを表す平面図、図7(b)は、印字ラベルが分離された被印字テープの背面図、図7(c)は、分離された印字ラベルと被印字テープのXIy断面による縦断面図である。
図19】印字ラベルを固定ラベルとして使用する際の使用態様を表し、図7(a)及び図7(b)は、固定ラベルとして使用する際の被印字テープを表す平面図、図7(b)は、分離された印字ラベルと被印字テープを表す平面図、図7(d)は、印字ラベルが分離された被印字テープの背面図、図7(e)は、分離された印字ラベルと被印字テープのXIIy断面による縦断面図である。
図20】本発明の第3実施形態に係る被印字テープを表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面では、実質的に同一の機能を有する構成要素は、原則として同一の符号で表す。そして、これらの構成要素についての重複説明は、適宜省略する。
【0014】
<ラベル作成装置>
まず、図1を参照しつつ、本発明の各実施形態のラベル作成装置の機能的構成を説明する。
【0015】
図1において、ラベル作成装置1(プリンタに相当)は、制御回路2と、ユーザ(操作者)が適宜の操作を行える操作部3と、所定の表示を行う表示部4と、各種情報を記憶するRAM5と、搬送ローラ6と、印字ヘッド7と、カットレバー8と、カッタ9と、を有する。
【0016】
ラベル作成装置1には、カートリッジホルダ12が設けられている。このカートリッジホルダ12には、筐体11内にテープロール10A(本来は渦巻き状であるが簡略化して同心円で図示している)を収納したテープカートリッジ10(カセットに相当)が着脱可能である。テープロール10Aには、被印字テープToがロール状の形状にて巻回されている。
【0017】
このとき、このテープカートリッジ10は、被印字テープToのハーフカットによる切り込みHC(後述の図2参照)を備えた被印字テープToが上記テープロールAに巻回された、いわゆるダイカットラベルタイプと、上記切り込みHCのない被印字テープToが上記テープロールAに巻回された、いわゆる無定長タイプ(後述の図11参照)とが存在する。ラベル作成装置1では、どちらのタイプのテープカートリッジ10も使用可能である。なお、以下、特に断らない限り、上記ダイカットラベルタイプのテープカートリッジ10が使用される場合を例にとって説明する。なお、上記切り込みHCは、例えばいわゆるミシン目により構成されている。本明細書において「ミシン目」とは、対象となる層において、面方向に断続する細線状の孔が複数設けられ、かつ各孔が厚さ方向に上記対象となる層を貫通しているものを指す(以下同様)。
【0018】
制御回路2は、図示しないCPU及びROMを備えている。制御回路2は、上記RAM5の一時記憶機能を利用しつつ、上記ROMに予め記憶された各種プログラムを実行するとともに、ラベル作成装置1全体の制御を行う。
【0019】
搬送ローラ6は、印字ヘッド7に対向して設けられており、テープロール10Aから繰り出される被印字テープToを印字ヘッド7との間で挟持する。搬送ローラ6は、回転することによって被印字テープToをテープロール10Aから繰り出しながら搬送する。
【0020】
印字ヘッド7は、搬送ローラ6によって搬送される被印字テープToの各ラベル本体部Lo(詳細は後述)に対し、ユーザの意図する文字・図像等の所望の印字オブジェクト(後述の印字R参照)を印刷する。
【0021】
カッタ9は、ユーザによるカットレバー8の操作によって作動し、搬送方向に沿って複数の印字ラベルLが形成された印字後の被印字テープT(詳細は後述)を切断する。なお、被印字テープTo,Tが各請求項記載の媒体に相当している。
【0022】
<第1実施形態>
以下、図2図12を参照しつつ、本発明の第1実施形態について説明する。
【0023】
<被印字テープ>
本実施形態に係る被印字テープTo,Tの詳細構成を図2(a)~(f)に示す。未印刷状態の被印字テープToの平面図を図2(a)に表し、ラベル余剰部LBが剥がされかつ印字Rが印刷された後の被印字テープTの平面図を図2(b)に表す。この図2(a)及び図2(b)では、図中上下方向を搬送方向(=テープ長さ方向)、図中左右方向をテープ幅方向、図中紙面手前奥方向をテープ厚さ方向としている。また、印刷後の被印字テープTのIIy断面による縦断面図及び背面図をそれぞれ図2(c)及び図2(d)に表している。そして、印刷前の被印字テープToのIy断面による横断面図及び印刷後の被印字テープTのIIy断面による横断面図をそれぞれ図2(e)及び図2(f)に表している。
【0024】
図2に示すように、被印字テープToは、厚さ方向に沿って、厚さ方向の一方側(図2(e)の下側)から、厚さ方向の他方側(図2(e)の上側)へ向かって、例えばフィルム等を含む構成の透明な剥離材層24と、透明な粘着剤層22(粘着層に相当)と、透明な基材層21と、がこの順序で積層されている。なお、粘着剤層22は、基材層21の裏側(図2(e)中の下側)、すなわち剥離材層24との間に、全面的に設けられるのではなく、部分的に配置されていても良い。
【0025】
積層構造の被印字テープTo,Tにおいて、複数のラベル本体部Lo(又はラベル本体部Loに印字Rが形成された印字ラベルL)が、ラベル余剰部LB(図2(a)参照)を介しつつ、テープ長さ方向連続的に配置されている。言い換えれば、各ラベル本体部Lo(又は印字ラベルL)は、テープ長さ方向に離散的に配置されている。それら複数のラベル本体部Lo(又は印字ラベルL)のそれぞれは、その長手方向がテープ長さ方向となる向きで配置されている。その際、基材層21は、切り込みHC(ミシン目)を介してラベル本体部Loとそれ以外のラベル余剰部LBとに分けられるとともに、剥離材層24の厚さ方向他方側の面に粘着剤層22を介して貼られている。なお、ラベル本体部Loが、被印字用ラベルに相当し、ラベル余剰部LBが、ラベルに相当している。
【0026】
またこのとき、基材層21のうち、ラベル本体部Lo内に位置する表側(図2(d)中の上側)の面には、適宜の非透明な色彩を備え、上記サーマルヘッド7により印字Rが形成される印字背景層25(印刷部に相当)が部分的に設けられている。
【0027】
積層構造の結果、各ラベル本体部Lo(又は印字ラベルL)は、図2(a)等に示すように、テープ長さ方向の一方側の端部を構成する粘着領域D1と、この粘着領域D1に隣接し印字背景層25に対応するように設けられた粘着可変領域D23と、この非粘着領域D23に隣接して設けられた粘着領域D4と、の3つの領域を有している。このとき、テープ幅方向における被印字テープTo,Tの長さWsは、テープ幅方向におけるラベル本体部Loの長さWbよりも大きくなっている。
【0028】
そして、剥離材層24には、図2(d)に示すように、破断線Sにより囲まれた切取領域ARが設けられている。破断線Sは、スリットSL及びミシン目SMにより構成され、矩形状(四角形)に設けられている。破断線Sにより囲まれた切取領域ARは、平面視で見て、粘着領域D1及びD4が、切取領域ARの外部の破断線外領域SOに位置し、非粘着領域D23が、切取領域ARの内部の破断線内領域SIに位置するように形成されている。
【0029】
印字背景層25は、その少なくとも一部が、破断線Sに囲まれた破断線内領域SIの少なくとも一部と重なるように、設けられている。この例では、印字背景層25は、テープ幅方向における長さ及びテープ長さ方向における長さが破断線Sと同一であり、全体が破断線S内の切取領域ARに重なる。すなわち、平面視において、破断線Sは印字背景層25と重なる。なお、印字背景層25は、辺25a、辺25b、辺25c、辺25dを有する四角形形状を備えている。
【0030】
なお、図2(d)に示すように、剥離材層24のうち、隣接する2つの破断線S同士の中間部には、前述の搬送ローラ6による被印字テープToの搬送時における位置決め制御のための、マークPMが設けられている。すなわち、ラベル作成装置1には、発光部及び受光部を有する公知の反射型の光学センサ(図示せず)が設けられている。位置決め制御時において、光学センサは、発光部から発光された光が剥離材層24で反射した反射光を受光部により受光する。このときの剥離材層24のうちマークPMが設けられている部分とそれ以外の部分との受光量の差に基づきマークPMを検出し、これによって被印字テープToの位置決めが行われる。
【0031】
このような剥離材層24の構造により、被印字テープTo,Tにおいては、搬送方向であるテープ長さ方向に沿って、複数の矩形状の破断線Sが並び、その破断線Sに囲まれた切取領域ARに、印字背景層25が位置することとなる。各印字ラベルLの印字背景層25には、この例では、「A01」「A02」「A03」、・・・のテキストからなる印字オブジェクト、すなわち印字Rが形成されている。
【0032】
<印字ラベルの利用例>
ここで説明した図2(a)及び図2(e)に示す被印字テープToにおいては、まず、表面のラベル余剰部LBが引き剥がされることで、図2(b)~図2(d)及び図2(f)に示すように、ラベル本体部Lo及び剥離材層24からラベル余剰部LBが分離される。なお、ラベル余剰部LBが省略された構成(言い換えれば図2(b)から印字Rを省略した構成)の被印字テープToを最初から用意してもよい。そして、被印字テープTに含まれた状態で、各印字ラベルLの印字背景層25に印字Rが形成される。なお、ラベル余剰部LBが分離される前に印字Rが形成されてもよい。その後、印字Rが形成された被印字テープTに含まれる各印字ラベルLは、剥離材層24から引き剥がされ、個々の印字ラベルLとなる。バラバラの印字ラベルLは、それぞれケーブル302に巻き回されて利用される。
【0033】
印字ラベルLの利用例を図3及び図4に示す。ケーブル302に対する印字ラベルLの取り付け状態を、図3に模式的に示す。図中には、ケーブル302の軸心kを併せて示している。印字ラベルLは、被着体としてのケーブル302に対し取り付けられる。
【0034】
本実施形態に係る印字ラベルLは、固定ラベルとしても回転ラベルとしても使用可能である。例えば、図3(a)に示す状態では、「A01」の印字Rが備えられた印字背景層25が図に向かって手前側となる姿勢で配置されている。なお、実際には、印字Rのさらに外周側を覆うように透明な粘着領域D4が存在するが、煩雑化防止と説明の明確化のために図3では図示を省略している。印字ラベルLを固定ラベルとして使用している場合、印字ラベルLは、ケーブル302に対して図3(a)の姿勢を維持できる。他方で、印字ラベルLを回転ラベルとして使用している場合、印字ラベルLは、ケーブル302に対して図3(a)の姿勢から回転されることで、図3(b)に示す姿勢とすることもできる。また、図3(b)の位置で印字ラベルLがケーブル302に固定されていると印字Rが見え難いが、上記と反対方向に回転させて図3(a)の位置にすることにより、印字Rが見易くなる。
【0035】
この例では、ケーブル302として、例えば有線LANのネットワーク上で情報の中継を行うスイッチングハブに使用されるケーブルが適用される場合を示している。図4において、スイッチングハブ300は、上段、下段の各列でそれぞれ8つのスロット301(合計16のスロット)を有している。図示する例では、上段の8つのスロット301それぞれに対応して、左から順に「A01」~「A08」の識別名称を表すプレートPLが設けられている。また、下段の8つのスロット301それぞれに対応して、左から順に「A09」~「A16」の識別名称を表すプレートPLが設けられている。各スロット301には、それぞれ、適切に対応するケーブル302を接続する必要がある。接続の便宜を図るために、各コネクタスロット301にそれぞれ挿入される各ケーブル302の端部に、それぞれの接続先となるスロット301の識別名称と同じ内容の印字Rを形成した印字ラベルLが装着される。つまり、ケーブル302には、接続されるべきスロット301のプレートPLの識別名称と同一のテキストが印字された印字ラベルLが取り付けられる。これにより、接続するスロット301とケーブル302との対応関係が明確となり、誤配線を防ぐことができる。
【0036】
<回転ラベルと固定ラベルの使い分け>
本実施形態に係る被印字テープTo,Tによれば、スリットSL及びミシン目SMを含む破断線SLを剥離材層24が有することにより、剥離材層24からの引き剥がし方によって、図5(a)及び図5(b)に示すように、印字ラベルLを回転ラベルとして使用することも、図6(a)及び図6(b)に示すように、印字ラベルLを固定ラベルとして使用することも可能である。つまり、図5(a)に示すように、印字ラベルLを紙面左方(スリットSL側)から剥がせば、印字ラベルLの裏面には、図5(b)に示すように、切取領域ARの剥離材層24が張り付いた状態となりことで、印字ラベルLは、回転ラベルとして使用可能になる。他方、図6(a)に示すように、印字ラベルLを紙面右方(ミシン目SM側)から剥がせば、印字ラベルLは、図6(b)に示すように、切取領域ARを含む剥離材層24から切り離され、印字ラベルLは、固定ラベルとして使用可能になる。このような使い分けは、破断線S等の構成によって可能となる。そこで、この破断線Sについて詳細に説明する。
【0037】
<破断線Sの詳細>
再び図2(d)を参照する。上述の通り、破断線Sは、スリットSLとミシン目SMにより構成される。破断線Sは、図2(d)のテープ幅方向の右側(図2(b)のテープ幅方向の左側)に位置してテープ長さ方向に形成された第1辺と、図2(d)のテープ幅方向の左側(図2(b)のテープ幅方向の右側)に位置してテープ長さ方向に形成された第2辺と、図2(d)のテープ長さ方向上側に位置してテープ幅方向に形成された第3辺と、図2(d)のテープ長さ方向下側に位置してテープ幅方向に形成された第4辺と、を有する。従って、第1辺と第2辺は、テープ幅方向で互いに対向し、第3辺と第4辺は、テープ長さ方向で互いに対向している。また、第1辺の破断線Sと第2辺の破断線Sは種類が異なり、第1辺は、スリットSLで構成され、第2辺は、ミシン目で構成される。つまり、第1辺のスリットSLと第2辺のミシン目SMは、テープ幅方向で互いに対向している。
【0038】
なお、スリットSLは、穴又は切れ目で構成され、ミシン目SMは、穴の列又は切れ目の列で構成される。なお、本実施形態では、スリットSL又はミシン目SMは、対象となる層を厚さ方向に貫通しているものを指しているが、対象となる層を厚さ方向に部分的に切り込んでいる(厚さ方向に一定量切れ込みが入っている)構造としてもよい。上述のように、第1辺はスリットSLで構成され、第2辺はミシン目で構成されるため、第1辺における穴又は切れ目又は穴の列又は切れ目の列の合計の長さ、つまり厚さ方向に貫通している部位の長さの合計は、第2辺における合計の長さよりも、大きい。
【0039】
一方、第3辺と第4辺は、それぞれテープ幅方向の中心線を堺に、第1辺側がスリットで構成され、第2辺側がミシン目で構成される。ここで、ラベル本体部Lo(又は印字ラベルL)は、切取領域ARの第1辺及び第2辺を跨ぐように、更に、切取領域ARの第3辺及び第4辺も跨ぐように、剥離材層24に貼られている。なお、印字ラベルLと切取領域ARとの粘着力は、0.01N/20mm以上かつ2N/20mm以下に設定されることで、切取領域ARの印字ラベルLへの張り付き状態を調整可能として、印字ラベルLを回転ラベル及び固定ラベルの双方として使用可能にしている。
【0040】
<回転ラベルとして使用される場合>
まず、図7図9を参照しつつ、印字ラベルLを回転ラベルとして使用する場合について説明する。まず、回転ラベル又は固定ラベルに関係なく、ラベル作成装置1により、被印字テープToの剥離材層24に貼られたラベル本体部Loに印字Rを形成させて、印字済みの印字ラベルLを形成する(第1ステップ)。その後、図7及び図8に示すように、印字ラベルLを切取領域ARと一体的に、被印字テープTから剥がし、図9に示すように、切取領域ARを対象物であるケーブル302に接触させつつ印字ラベルLをケーブル302に巻き付ける(第2Bステップ)ことで、印字ラベルLを回転ラベルとして使用可能になる。なお、印字ラベルLが被印字テープTから剥がされる前に、ラベル余剰部LBが被印字テープTから剥がされることが望ましい。
【0041】
(1)回転ラベルとして使用する際の印字ラベルの剥がし方
より具体的に、印字ラベルLを回転ラベルとして使用する場合の印字ラベルの剥がし方について説明する。印字ラベルLを回転ラベルとして使用したい場合、図7(a)に示すように、ユーザは、印字ラベルLを紙面左方(スリットSL側、第1辺側)から剥がすことになる。このように、スリットSL側から印字ラベルLが剥がされると、図7(b)に示すように、印字ラベルLの裏面には、切取領域ARの剥離材層24が張り付いた状態となる。上述の通り、破断線Sは、第1辺側がスリットSLで構成され、第2辺側がミシン目SMで構成される。従って、第1辺側から印字ラベルLが引き剥がされると、スリットSL部分に対応する印字ラベルLが引き剥がされている間は、切取領域ARは、スリットSLにより印字ラベルLに張り付いた状態で、他の剥離材層24から引き離され、ミシン目SMに対応する印字ラベルLが引き剥がされ出すと、切取領域ARは、印字ラベルLに張り付く力に加え、ミシン目SMにより、他の剥離材層24に引っ張られる力が作用する。しかし、この段階では、すでに印字ラベルLに対して切取領域ARのスリットSLに対応する部分が張り付いた状態であるため、印字ラベルLが第1辺側から第2辺側に向かって引き剥がす力が作用する際には、切取領域ARが剥離材層24のうち切取領域AR以外の領域に固定される力は、印字ラベルLと切取領域ARとの粘着力よりも小さくなる。従って、図7(c)に示すように、印字ラベルLが被印字テープTから分離された際には、図7(d)及び図7(e)に示すように、ミシン目SMが破断され、剥離材層24には、切取領域ARに相当する部位に、辺Sa,Sb,Sc,Sdで囲まれた矩形状の穴WDが生じる一方、印字ラベルLの粘着可変領域D23の粘着剤層22の位置には、剥離材層24の切取領域ARが張り付いた状態となる。
【0042】
(2)回転ラベルとして使用される印字ラベルの構造
次に、前述のようにして生成された印字ラベルLの構造を図8により説明する。図8(a)には、上記のようにして分離して生成された1つの印字ラベルLの平面図を示し、図8(b)は、図8(a)中IVy-IVy断面による横断面図を示している。
【0043】
これら図8(a)及び図8(b)において、印字ラベルLは、先に説明した被印字テープTと同様、厚さ方向(図8(a)に向かって奥行き方向。図8(b)中の左右方向)に沿って、図8(b)中の左側から右側へ、透明な基材層21と粘着剤層22と剥離材層24とがこの順序で積層され、基材層21の厚さ方向他方側の面に印字Rを備えた印字背景層25が部分的に設けられている。そして、印字ラベルLは、テープ長さ方向(図示上下方向)の他方側(図示上側)から一方側(図示下側)に向かって、粘着領域D1、粘着可変領域D23、粘着領域D4を備えている。
【0044】
粘着領域D1では、厚さ方向他方側から一方側(図8(b)中左側から右側)へ向かって、基材層21、粘着剤層22の順に積層されている。この結果、粘着領域D1は、全体として、上記粘着剤層22による接着性を備えた領域となっている。なお、粘着領域D1は、テープ幅方向における長さL1を備えている。
【0045】
非粘着領域D23では、厚さ方向他方側から一方側へ向かって、印字Rを備えた印字背景層25、基材層21、粘着剤層22、剥離材層24(切取領域AR)の順に積層されている。この結果、非粘着領域D23は、全体として、粘着剤層22による接着性が剥離材層24によって阻止された非接着性の領域となっている。なお、この例では、印字背景層25は、例えば、適宜の色(この例では透明を含む透過性の色)のインクが予め基材層21上に塗布されることにより形成(インク塗布層)されており、テキスト「A01」の印字Rが印字ヘッド7により形成されている。なお、非粘着領域D23は、テープ幅方向における長さL23を備えている。
【0046】
粘着領域D4では、厚さ方向他方側から一方側へ向かって、基材層21、粘着剤層22の順に積層されている。この結果、粘着領域D4は、全体として、粘着剤層22による接着性を備えた領域となっている。なお、粘着領域D4は、テープ幅方向における長さL4を備えている。
【0047】
(3)回転ラベルとして使用される印字ラベルの対象物への取り付け手順
上記印字ラベルLの対象物への取り付け手順の例を図9に示す。図9において、この例では、直径2rのケーブル状(言い換えれば円柱状)の対象物(被着体とも言う。以下適宜、単に「ケーブル302」と称する。)に印字ラベルLを巻き付けて取り付ける例を示している。
【0048】
まず、図9(a)に示すように、粘着領域D1→分離した剥離材層24によって覆われた粘着可変領域D23→粘着領域D4の順で連なる印字ラベルL(すなわち剥離材層24で覆われていない粘着領域D1,D4は粘着剤層22が露出している状態である)のうち、粘着領域D1及び粘着可変領域D23を、剥離材層24側(図9(a)中右側)が内側となるように凹状に曲げる(図示省略)。
【0049】
そして、図9(b)に示すように、凹状の内側にケーブル302を配置し、印字ラベルLを、ケーブル302の周りを環状に取り囲む円筒体を形成するように一周させた後、先端側に位置する粘着領域D1の粘着剤層22と、粘着領域D4の粘着剤層22とを、互いのテープ幅方向位置を一致させつつ互いに貼り合わせる(いわゆる合掌貼り)。このとき、剥離材層24のテープ長さ方向における長さは、少なくともケーブル302の円周長2πr以上となっている。この結果、印字ラベルLは、前述した粘着剤層22,22どうしの接着によって自身の形状は固定されつつ、粘着可変領域D23の剥離材層24(つまり切取領域AR)によって非粘着状態でケーブル302の周りを一周することで、ケーブル302に対し回転可能に取り付けられる。すなわち、前述の剥離材層24の引き剥がしの際に剥離材層24の一部である切取領域ARがラベル本体部Lo側に残されていることで、印字ラベルLの粘着剤層22がケーブル302に接着するのを抑制することができる。
【0050】
その後、ケーブル302周りの一周構造に使用されなかった粘着領域D4の残りの部分を、図9(b)中の矢印Gで示すように、粘着領域D1及び粘着領域D4の貼り合わせ部分を内周側に巻き込む(例えば粘着領域D1は矢印カのように折り返され部位キに当接する)ようにしつつ、円筒体を構成する粘着可変領域D23を覆いながら、それら領域D23の外周部に巻き付ける(図9(c)参照)。そして、粘着領域D4が、その粘着剤層22の接着性を利用して粘着可変領域D23の外周部に接着されることで、ケーブル302への取り付けが完了する。
【0051】
<固定ラベルとして使用される場合>
次に、図10図12を参照しつつ、印字ラベルLを固定ラベルとして使用する場合について説明する。まず、回転ラベル又は固定ラベルに関係なく、ラベル作成装置1により、被印字テープToの剥離材層24に貼られたラベル本体部Loに印字Rを形成させて、印字済みの印字ラベルLを形成する(第1ステップ)。その後、図10及び図11に示すように、印字ラベルLを、切取領域ARを含む剥離材層24から剥がして、被印字テープTから剥がし、図9に示すように、露出した粘着剤層22の粘着領域を対象物であるケーブル302に接触させつつ印字ラベルLをケーブル302に巻き付ける(第2Aステップ)ことで、印字ラベルLを固定ラベルとして使用可能になる。なお、印字ラベルLが被印字テープTから剥がされる前に、ラベル余剰部LBが被印字テープTから剥がされることが望ましい。
【0052】
(1)固定ラベルとして使用する際の印字ラベルの剥がし方
より具体的に、印字ラベルLを固定ラベルとして使用する場合の印字ラベルの剥がし方について説明する。印字ラベルLを固定ラベルとして使用したい場合、図10(a)に示すように、ユーザは、印字ラベルLを紙面右方(ミシン目SM側、第2辺側)から剥がすことになる。このように、ミシン目SM側から印字ラベルLが剥がされると、図10(a)及び図10(b)に示すように、切取領域ARは、他の剥離材層24から分離されることなく残る。上述の通り、破断線Sは、第1辺側がスリットSLで構成され、第2辺側がミシン目SMで構成される。従って、第2辺側から印字ラベルLが引き剥がされると、印字ラベルLが被印字テープTから引き剥がされ始めると、切取領域ARは、ミシン目SMにより他の剥離材層24に固定された状態を維持することになる。つまり、印字ラベルLが第2辺側から第1辺側に向かって引き剥がす力が作用する際には、切取領域ARが剥離材層24のうち切取領域AR以外の領域に固定される力は、印字ラベルLと切取領域ARとの粘着力よりも大きくなる。従って、図10(b)に示すように、印字ラベルLが被印字テープTから分離された際には、図10(c)及び図10(d)に示すように、ミシン目SMが破断されず、印字ラベルLと切取領域ARとは分離され、印字ラベルLの粘着可変領域D23は粘着剤層22による粘着性を有する状態となる。
【0053】
(2)固定ラベルとして使用される印字ラベルの構造
次に、前述のようにして生成された印字ラベルLの構造を図11により説明する。図11(a)には、上記のようにして分離して生成された1つの印字ラベルLの平面図を示し、図11(b)は、図11(a)中VIy-VIy断面による横断面図を示している。
【0054】
これら図11(a)及び図11(b)において、印字ラベルLは、先に説明した被印字テープTと同様、厚さ方向(図11(a)に向かって奥行き方向。図11(b)中の左右方向)に沿って、図11(b)中の左側から右側へ、透明な基材層21と粘着剤層22と剥離材層24とがこの順序で積層され、基材層21の厚さ方向他方側の面に印字Rを備えた印字背景層25が部分的に設けられている。そして、印字ラベルLは、テープ長さ方向(図示上下方向)の他方側(図示上側)から一方側(図示下側)に向かって、粘着領域D1、粘着可変領域D23、粘着領域D4を備えている。
【0055】
上述の通り、回転ラベルとして使用する場合と異なり、粘着可変領域D23の裏面(図11(b)の右側)には、切取領域ARに相当する剥離材層24は付着せず、粘着剤層22が露出している。従って、粘着領域D1、粘着可変領域D23及び粘着領域D4では、厚さ方向他方側から一方側(図11(b)中左側から右側)へ向かって、粘着可変領域D23に印字背景層25が積層されていることを除き、基材層21、粘着剤層22の順に積層されている。この結果、粘着領域D1、粘着可変領域D23及び粘着領域D4は、全体として、粘着剤層22による接着性を備えた領域となっている。なお、粘着領域D1、粘着可変領域D23及び粘着領域D4それぞれは、テープ幅方向における長さL1、L23,L4を備えている。
【0056】
(3)固定ラベルとして使用される印字ラベルの対象物への取り付け手順
上記印字ラベルLの対象物への取り付け手順の例を図12に示す。図12でも、図9同様に、ケーブル302に印字ラベルLを巻き付けて取り付ける例を示している。
【0057】
まず、図12(a)に示すように、粘着領域D1→粘着可変領域D23→粘着領域D4の順で連なる印字ラベルL(すなわち全体に渡って剥離材層24で覆われていない粘着剤層22が露出している状態である)のうち、粘着領域D1及び粘着可変領域D23を、剥離材層24側(図12(a)中右側)が内側となるように凹状に曲げる(図示省略)。
【0058】
そして、図12(b)に示すように、凹状の内側にケーブル302を配置し、印字ラベルLを、ケーブル302の周りを環状に取り囲む円筒体を形成するように一周させた後、先端側に位置する粘着領域D1の粘着剤層22と、粘着領域D4の粘着剤層22とを、互いのテープ幅方向位置を一致させつつ互いに貼り合わせる(いわゆる合掌貼り)。この結果、印字ラベルLは、前述した粘着剤層22,22どうしの接着によって自身の形状は固定され、かつ、粘着可変領域D23の粘着剤層22によって粘着状態でケーブル302の周りを一周することで、ケーブル302に対し固定されて取り付けられる。
【0059】
その後、ケーブル302周りの一周構造に使用されなかった粘着領域D4の残りの部分を、図12(b)中の矢印Gで示すように、粘着領域D1及び粘着領域D4の貼り合わせ部分を内周側に巻き込む(例えば粘着領域D1は矢印カのように折り返され部位キに当接する)ようにしつつ、円筒体を構成する粘着可変領域D23を覆いながら、それら領域D23の外周部に巻き付ける(図12(c)参照)。そして、粘着領域D4が、その粘着剤層22の接着性を利用して粘着可変領域D23の外周部に接着されることで、ケーブル302への取り付けが完了する。
【0060】
<第1実施形態の効果の例>
以上説明したように、本実施形態においては、図2に示すように、剥離材層24に切取領域ARが設けられ、切取領域ARの対向する第1辺及び第2辺を跨ぐように、被印字用ラベル、つまりラベル本体部Lo又は印字Rが形成された印字ラベルLが貼られている。切取領域ARは、スリットSLとミシン目SMによって囲まれている。
【0061】
被印字用ラベルが剥離材層24から剥がされるとき、スリットSLによって連続的な破断線が形成される場合には、被印字用ラベルと切取領域ARとが一体的に剥離材層24から剥がされる。被印字用ラベルが剥離材層24から剥がされるとき、ミシン目SMによって連続的な破断線が形成されない場合には、切取領域ARは剥離材層24側に残り、被印字用ラベルのみが剥離材層24から剥がされる。第1辺と第2辺とでは、スリットSL又はミシン目SMの種類が互いに異なっている。このため、同じ力が加わったとしても、第1辺と第2辺とでは、連続的な破断線の形成に関する挙動や態様が異なる。
【0062】
連続的な破断線を形成しやすい辺あるいは既に形成されている辺(以下適宜、「破断容易辺」という)から連続的な破断線を形成しにくい辺(以下適宜、「破断困難辺」という)に向かって被印字用ラベルが剥がされる場合、つまり、第1辺側から第2辺側に向かって被印字用ラベルが剥がされる場合は、引き剥がし始めの段階で上記破断容易辺において連続的な破断線が形成される。このため、そこから切取領域ARの切り取りが進行し、引き剥がし終わりの段階で上記破断困難辺においても連続的な破断線が形成され、最終的には、被印字用ラベルと切取領域ARとを一体的に剥離材層24から剥がすことができる。したがって、この一体物を対象物に巻き付けるとき、切取領域ARを対象物に接触させつつ被印字用ラベルを巻き付けることで、対象物に対して回転可能な回転ラベルとして用いることができる。
【0063】
一方、破断困難辺から破断容易辺に向かって被印字用ラベルが剥がされる場合、つまり、第2辺側から第1辺側に向かって被印字用ラベルが剥がされる場合は、引き剥がし始めの段階で上記破断困難辺において連続的な破断線が形成されない。このため、切取領域ARの切り取りが始まることなく引き剥がしが進行するため、最終的には、上記と異なり、切取領域ARを剥離材層24側に残したまま被印字用ラベルのみが剥離材層24から剥がされる。したがって、被印字用ラベルを対象物に巻き付けるとき、引き剥がしによって露出した粘着面を対象物に接触させつつ巻き付けることで、対象物に対して回転せずに固定される固定ラベルとして用いることができる。
【0064】
また、本実施形態では、被印字用ラベルに作用する力に着目すると、以下のように効果を言い換えることも可能である。つまり、被印字用ラベルを第1辺側から第2辺側に向かって引き剥がす場合には、切取領域ARが他の部位に固定され剥離材層24側に残存しようとする力が、被印字用ラベルから切取領域ARへ作用する粘着力よりも小さい。そのため、引き剥がし始めの段階で上記第1辺において連続的な破断線が形成されてそこから切取領域ARの切り取りが進行し、最終的には、被印字用ラベルと切取領域ARとが一体的に剥離材層24から剥がされる。したがって、前述と同様、切取領域ARを対象物に接触させつつ被印字用ラベルを巻き付けることで、対象物に対して回転可能な回転ラベルとして用いることができる。
【0065】
一方、被印字用ラベルを第2辺側から第1辺側に向かって引き剥がす場合には、切取領域ARが他の部位に固定され剥離材層24側に残存しようとする力が、被印字用ラベルから切取領域ARへ作用する粘着力よりも大きい。そのため、引き剥がし始めの段階で上記第2辺において連続的な破断線が形成されず切取領域ARの切り取りが始まることなく引き剥がしが進行し、最終的には、切取領域ARを剥離材層24側に残したまま被印字用ラベルのみが剥離材層24から剥がされる。したがって、前述と同様、引き剥がしによって露出した粘着面を対象物に接触させつつ巻き付けることで、対象物に対して回転せずに固定される固定ラベルとして用いることができる。
【0066】
以上のようにして、ユーザは、第1辺及び第2辺のうちどちらから引き剥がしを行うかを決めるだけで、回転ラベルとしての使用又は固定ラベルとしての使用、を使い分けることができる。
【0067】
また、本実施形態では、第1辺はスリットSLで形成され、第2辺はミシン目SMで形成されるため、切れ目や穴の合計長は、第1辺の方が第2辺よりも大きい。従って、第1辺を、第2辺よりも破断容易辺とすることができ、第2辺を、第1辺よりも破断困難辺とすることができる。
【0068】
また、本実施形態では、被印字用ラベルにおいて粘着領域D1及び粘着領域D4は透明である。粘着領域D1及び粘着領域D4は半透明であってもよい。このこれにより、上記固定ラベルとして対象物のまわりに巻き付けられる際、被印字用ラベルの印字R表記部分の外周側に別の部分が巻き付けられたとしても、透明又は半透明部分を介し当該印字R表記を外部から視認可能とすることができる。
【0069】
また、本実施形態では、被印字用ラベルと切取領域ARとの粘着力は、0.01N/20mm以上かつ2N/20mm以下である。これにより、例えば180°の角度で被印字用ラベルを剥がすときに、第1辺及び第2辺のうちどちらの辺から引き剥がしを行うかを決めるだけで、回転ラベルとしての使用又は固定ラベルとしての使用、を使い分けることができる。
【0070】
<第1実施形態の第1変形例>
上記第1実施形態では、破断線Sとして、スリットSL(第1辺)が、テープ幅方向の一方側(図2(d)のテープ幅方向の右側)に位置してテープ長さ方向に形成され、ミシン目SM(第2辺)が、テープ幅方向他方側(図2(d)のテープ幅方向左側)に位置してテープ長さ方向に形成されることにより、テープ幅方向の一方側から印字ラベルLを剥がす場合には、印字ラベルLを固定ラベルとして使用でき、テープ幅方向の他方側から印字ラベルLを剥がす場合には、印字ラベルLを回転ラベルとして使用できたが、このスリットSLとミシン目SMの位置関係は、この例に限定されるものではない。
【0071】
図13に、破断線SにおけるスリットSLとミシン目SMの位置関係を変更した第1変更例を例示する。本変形例において第1実施形態と同一又は類似の内容については説明を省略して、主に相違点について説明する。
【0072】
図13(d)に、図2(d)に相当する本変形例に係る破断線Sを表した被印字テープTの背面図を表す。図13(d)に示すように、本変形例に係る破断線Sは、テープ幅方向においてスリットSLとミシン目SMとが対向するのではなく、テープ長さ方向においてスリットSLとミシン目SMとが対向するように構成される。つまり、破断線Sでは、スリットSLは、図13(d)のテープ長さ方向の上側に位置してテープ幅方向に形成され、ミシン目SMは、図13(d)のテープ長さ方向の下側に位置してテープ幅方向に形成される。本変形例では、テープ長さ方向の上側に位置してテープ幅方向に形成された辺、つまり、スリットSLで構成される辺が、第1辺となり、テープ長さ方向の下側に位置してテープ幅方向に形成された辺、つまり、ミシン目SMとなる辺が、第2辺となる。
【0073】
図13(c)に、印字ラベルLを回転ラベルとして剥離した場合の被印字テープTの背面図を、図13(b)に、同被印字テープTと剥離後の印字ラベルLの図13(c)のVIIy断面による横断面図を、図13(a)に、同剥離後の印字ラベルLの平面図を模式的に示している。本変形例に係る破断線Sによれば、図13(a)~図13(c)に示すように、図13(d)のテープ長さ方向の上側から下側に向けて、つまりスリットSL側から印字ラベルLを剥がせば、第1実施形態と同様に、印字ラベルLは、切取領域ARの剥離材層24が粘着剤層22に張り付いた状態で被印字テープTから切り離され、回転ラベルとして使用可能になる。
【0074】
印字ラベルLを回転ラベルとして剥離した場合の被印字テープTの背面図は、図13(d)と同一であり、図13(e)に、同被印字テープTと剥離後の印字ラベルLの図13(d)のVIIIy断面による横断面図を、図13(f)に、同剥離後の印字ラベルLの平面図を模式的に示している。本変形例に係る破断線Sによれば、図13(d)~図13(f)に示すように、図13(d)のテープ長さ方向の下側から上側に向けて、つまりミシン目SM側から印字ラベルLを剥がせば、第1実施形態と同様に、印字ラベルLは、切取領域ARを含めて剥離材層24を被印字テープTに残して、粘着剤層22が背面全体に露出した状態で被印字テープTから切り離され、固定ラベルとして使用可能になる。
【0075】
なお、第1実施形態及び第1変形例において、図2(d)又は図13(d)に示したスリットSLとミシン目SMの位置が反転していてもよいことは言うまでもない。ただし、この場合、スリットSLとなる図2(d)のテープ幅方向左側の辺が第1辺となり、ミシン目SMとなる図2(d)のテープ幅方向右側の辺が第2辺となる。
【0076】
<第1実施形態の第2変形例>
上記第1実施形態及び第1変形例では、破断線Sとして、対向する第1辺と第2辺にスリットSLとミシン目SMがそれぞれ配置される構成について説明した。しかしながら、対向する第1辺と第2辺とは、この例に限定されるものではない。第1辺の穴又は切れ目又は穴の列又は切れ目の列の合計長さが、第2辺の穴又は切れ目又は穴の列又は切れ目の列の合計長さよりも大きければ、第1辺を破断容易辺とし、第2辺を破断困難辺とすることができるため、様々な構成が可能である。
【0077】
図14に、破断線Sを異なる構成で形成した第2変形例を例示する。本変形例において第1実施形態又は第1変形例と同一又は類似の内容については説明を省略して、主に相違点について説明する。
【0078】
図14の紙面左右方向中央に、本変形例に係る被印字テープTの背面図を模式的に示している。本変形例に係る破断線Sは、スリットSLとミシン目SMとの組み合わせではなく、一辺の一部において切り欠いて形成されたスリットSL0で構成される。本変形例では、図14に図示した破断線Sにおいて、テープ長さ方向上側の辺を第1辺、テープ長さ方向下側の辺を第2辺、テープ幅方向左側の辺を第3辺、テープ幅方向右側の辺を第4辺とする。破断線Sを構成するスリットSL0は、第1辺の全体と、第3辺の全体と、第4辺の全体と、テープ幅方向中央の一部の連結部を除く第2辺とにおいて、一本の矩形状のスリットとして形成される。従って、第1辺のスリット長は、第2辺のスリット長よりも連結部の幅分だけ大きい。
【0079】
本変形例に係る破断線Sによれば、図14の紙面左側に示すように、テープ長さ方向の上側から下側に向けて印字ラベルLを剥がせば、第1実施形態と同様に、印字ラベルLは、切取領域ARの剥離材層24が粘着剤層22に張り付いた状態で被印字テープTから切り離され、回転ラベルとして使用可能になる。他方、図14の紙面右側に示すように、テープ長さ方向の下側から上側に向けて印字ラベルLを剥がせば、第2辺の連結部の作用により切取領域ARが他の剥離材層24から分離することが妨げられ、第1実施形態と同様に、印字ラベルLは、切取領域ARを含めて剥離材層24を被印字テープTに残して、粘着剤層22が背面全体に露出した状態で被印字テープTから切り離され、固定ラベルとして使用可能になる。なお、スリットSL0の端部の間に形成された連結部の位置は、テープ長さ方向の下側の辺でなく、上側の辺に形成されてもよく、テープ幅方向の左側の辺又は右側の辺に形成されてもよいことは言うまでもない。ただし、この場合、連結部が形成された辺が第2辺となり、それと対向する辺が第1辺となる。
【0080】
<第1実施形態の第3変形例>
上記第1実施形態、第1変形例及び第2変形例では、破断線Sが剥離材層24を貫通したスリットSL,SL0又はミシン目SMで構成される場合について説明した。しかしながら、破断線Sを構成する穴又は切れ目又は穴の列又は切れ目の列は、この例に限定されるものではなく、例えば、貫通していない切込みとして剥離材層24に形成されてもよい。このように穴又は切れ目又は穴の列又は切れ目の列が切込みで構成される場合、第1辺の穴又は切れ目又は穴の列又は切れ目の列の深さは、第2辺の穴又は切れ目又は穴の列又は切れ目の列の深さよりも、大きければ、第1辺を破断容易辺とし、第2辺を破断困難辺とすることができるため、様々な構成が可能である。
【0081】
図15に、破断線S切込みによるスリットSL1,SL2で形成した第3変形例を例示する。本変形例において第1実施形態、第1変形例又は第2変形例と同一又は類似の内容については説明を省略して、主に相違点について説明する。
【0082】
図15の紙面左右方向中央に、本変形例に係る被印字テープTの背面図を模式的に示している。本変形例に係る破断線Sは、貫通したスリットSLやミシン目SMではなく、深さが相異なる切込みであるスリットSL1とスリットSL2で構成される。本変形例でも、図15に図示した破断線Sにおいて、テープ長さ方向上側の辺を第1辺、テープ長さ方向下側の辺を第2辺、テープ幅方向左側の辺を第3辺、テープ幅方向右側の辺を第4辺とする。スリットSL1は、スリットSL2よりも深い切込みで構成され、第1辺の全体と、第3辺及び第4辺のテープ長さ方向中央よりも上側とに形成される(以下「深いスリット」とも言う。)。他方、スリットSL2は、スリットSL1よりも浅い切込みで構成され、第2辺の全体と、第3辺及び第4辺のテープ長さ方向中央よりも下側とに形成される(以下「深いスリット」とも言う。)。
【0083】
本変形例に係る破断線Sによれば、図15の紙面左側に示すように、テープ長さ方向の上側から下側に向けて、つまり深いスリットSL1側から印字ラベルLを剥がせば、印字ラベルLに切取領域ARが粘着する力によりスリットSL1が破断され、第1実施形態と同様に、印字ラベルLは、切取領域ARの剥離材層24が粘着剤層22に張り付いた状態で被印字テープTから切り離され、回転ラベルとして使用可能になる。他方、図15の紙面右側に示すように、テープ長さ方向の下側から上側に向けて、つまり浅いスリットSL2側から印字ラベルLを剥がせば、印字ラベルLに切取領域ARが粘着する力ではスリットSL2を破断することができず、第1実施形態と同様に、印字ラベルLは、切取領域ARを含めて剥離材層24を被印字テープTに残して、粘着剤層22が背面全体に露出した状態で被印字テープTから切り離され、固定ラベルとして使用可能になる。なお、相互に対向していれば深いスリットSL1及び浅いスリットSL2の位置は、第1実施形態や第1変形例と同様に特に限定されるものではなく、深いスリットSL1が形成された辺が第1辺となり、それと対向する浅いスリットSL2が形成された辺が第2辺となる。また、切込みの深さを変更したミシン目等を適宜組み合わせて使用することが可能であることは言うまでもない。
【0084】
<第1実施形態の第4変形例>
図16は、上記第1実施形態の第4変形例に係る被印字テープTを模式的に示し、図16(b)は、印字ラベルLが回転ラベルとして剥離された後の被印字テープTを表す平面図であり、図16(a)は、回転ラベルとして剥離された印字ラベルLを表す平面図であり、図16(c)は、固定ラベルとして剥離された印字ラベルLを表す平面図である。
【0085】
上記第1実施形態及び第1変形例~第3変形例では、ラベル本体部Lo(又は印字ラベルL)が、切取領域ARの第1辺及び第2辺を跨ぐように貼られているが、図16(a)~図16(b)に示す第4変形例ように、切取領域ARのテープ幅方向の寸法WSは、ラベル本体部Lo(又は印字ラベルL)のテープ幅方向の寸法WLよりも小さくてもよい。これにより、印字ラベルL側が切取領域ARよりも少しだけ大きいことにより、破断容易辺(第1辺)から破断困難辺(第2辺)に向かって印字ラベルLを引き剥がす場合に、切取領域ARの切り取り漏れが生じるのを低減することができる。従って、印字ラベルLと切取領域ARとを一体的に剥離材層24から剥がすことができる。なお、この第4変形例の他の構成は、上記第1実施形態及び第1変形例~第3変形例と同一又は類似であるため説明を省略する。
【0086】
<第2実施形態>
次に、図17図19を参照しつつ、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態及び第1変形例~第4変形例では、切取領域ARの破断線Sは、第1辺が破断容易辺と第2辺が破断困難辺となるように、相異なる種類の穴又は切れ目又は穴の列又は切れ目の列を含んで構成されが、本実施形態では、第1実施形態及び第1変形例~第4変形例とは、切取領域ARの破断線Sの構成が異なり、結果として、回転ラベルと固定ラベルの使い分けが異なる。従って、以下、本実施形態では、第1実施形態及び第1変形例~第4変形例と同一又は類似の内容については説明を省略して、主に、切取領域ARの破断線Sの構成と、回転ラベルと固定ラベルの使い分けについて説明する。
【0087】
本実施形態に係る図17(a)~図17(f)は、図2(a)~図2(f)にそれぞれ対応する。各図に示すとおり、本実施形態に係る破断線Sは、点線状の短ミシン目SD(穴と連結部とのピッチがミシン目SMより短いミシン目を意味し、切込みともいう。)で形成される。つまり、破断線Sは、第1辺~第4辺で構成された四角形状に形成され、この第1辺~第4辺は、種類が同一で一様な、穴又は切れ目又は穴の列又は切れ目の列の一例である短ミシン目SDで構成される。更に、この破断線Sの短ミシン目SDは、印字ラベルL(又はラベル本体部Lo)を例えば第1辺側から第2辺側に向かって引き剥がす力が作用する際、及び、第2辺側から第1辺側に向かって引き剥がす力が作用する際、のいずれにおいても、切取領域ARが剥離材層24のうち切取領域AR以外の領域に固定される力が、印字ラベルL(又はラベル本体部Lo)と切取領域ARとの粘着力よりも大きくなるように構成される。
【0088】
まず、図18を参照しつつ、印字ラベルLを回転ラベルとして使用する場合の印字ラベルの剥がし方について説明する。印字ラベルLを回転ラベルとして使用したい場合、図18(a)に示すように、ユーザは、背面側(裏側、紙面奥側)から切取領域ARを前面側(表側、紙面手前側)に向けて、指等で押圧して、印字ラベルLを、当該被印字テープTの面に対して印字ラベルLを垂直に持ち上げるように剥がすことになる。このように、指等を裏側から入れて剥離材層24側から印字ラベルLが垂直に持ち上げるように剥がされると、図18(b)及び図18(c)に示すように、短ミシン目SDが破断され、剥離材層24には、切取領域ARに相当する部位に、辺Sa,Sb,Sc,Sdで囲まれた矩形状の穴WDが生じる一方、印字ラベルLの粘着可変領域D23の粘着剤層22の位置には、剥離材層24の切取領域ARが張り付いた状態となる。従って、第1実施形態等と同様に、印字ラベルLを回転ラベルとして使用することが可能となる。なお、回転ラベルとして使用する際の印字ラベルLの構造及び取り付け手順等は、第1実施形態等と同様であるため、説明を省略する。
【0089】
次に、図19を参照しつつ、印字ラベルLを固定ラベルとして使用する場合の印字ラベルの剥がし方について説明する。印字ラベルLを固定ラベルとして使用したい場合、ユーザは、印字ラベルLにアクセスして、印字ラベルを剥がすことになる。より具体的には、ユーザは、図19(a)に示すように、印字ラベルLを紙面右側(ここでは第2辺側とする)から紙面左側(ここでは第1辺側とする)に向けて剥がしたり、図19(b)に示すように、印字ラベルLを紙面左側から紙面右側に向けて剥がしたり、図示はしていないが、印字ラベルLを紙面上側(ここでは第3辺側とする)から紙面下側(ここでは第4辺側とする)に向けて剥がしたり、印字ラベルLを紙面下側から紙面上側に向けて剥がす。
【0090】
このように印字ラベルLが剥がされると、図19(a)及び図19(b)に示すように、切取領域ARは、他の剥離材層24から分離されることなく残る。上述の通り、破断線Sは、短ミシン目SDで構成される。そして、この短ミシン目SDは、どの方向から印字ラベルLが剥がされても、取領域ARが剥離材層24のうち切取領域AR以外の領域に固定される力つまり短ミシン目SDの破断に必要な力が、印字ラベルLと切取領域ARとの粘着力よりも強くなるように構成される。従って、切取領域ARは、切込みSMにより他の剥離材層24に固定された状態を維持することになり、印字ラベルLが被印字テープTから分離された際には、図19(c)、図19(d)及び図19(e)に示すように、短ミシン目SDが破断されず、印字ラベルLと切取領域ARとは分離され、印字ラベルLの粘着可変領域D23は粘着剤層22による粘着性を有する状態となる。従って、第1実施形態等と同様に、印字ラベルLを固定ラベルとして使用することが可能となる。なお、固定ラベルとして使用する際の印字ラベルLの構造及び取り付け手順等は、第1実施形態等と同様であるため、説明を省略する。
【0091】
以上説明したように、本実施形態においては、被印字用ラベル、つまりラベル本体部Lo又は印字ラベルLを第1辺側から第2辺側に向かって引き剥がす場合も、被印字用ラベルを第2辺側から第1辺側に向かって引き剥がす場合も、切取領域ARが他の部位に固定され剥離材層24側に残存しようとする力が、被印字用ラベルから切取領域ARへ作用する粘着力よりも大きい。そのため、引き剥がし始めの段階で上記第1辺及び第2辺のいずれにおいても連続的な破断線が形成されず切取領域ARの切り取りが始まることなく引き剥がしが進行し、最終的には、切取領域ARを剥離材層24側に残したまま被印字用ラベルのみが剥離材層24から剥がされる。したがって、前述と同様、引き剥がしによって露出した粘着面を対象物に接触させつつ巻き付けることで、対象物に対して回転せずに固定される固定ラベルとして用いることができる。
【0092】
一方、回転ラベルとして使用したい場合は、例えばユーザの指で、剥離材層24の切取領域ARを、剥離材層24側から被印字用ラベル側に向かって押し上げる。すると、上記第1辺及び第2辺において強制的に連続的な破断線が形成されるため、被印字用ラベルと切取領域ARとが一体的に剥離材層24から剥がされる。したがって、前述と同様、切取領域ARを対象物に接触させつつ被印字用ラベルを巻き付けることで、対象物に対して回転可能な回転ラベルとして用いることができる。なお、本実施形態においても、第1実施形態や各変更例と同様に、破断線Sを短ミシン目SD以外の構成とする等の各種の変更が可能であることは言うまでもない。
【0093】
<第3実施形態>
次に、図20を参照しつつ、本発明の第3実施形態について説明する。本実施形態でも、第2実施形態と同様に、第1実施形態等とは、切取領域ARの破断線Sの構成が異なり、結果として、回転ラベルと固定ラベルの使い分けが異なる。従って、以下、本実施形態では、第1実施形態、第1変形例~第4変形例及び第2実施形態と同一又は類似の内容については説明を省略して、主に、切取領域ARの破断線Sの構成と、回転ラベルと固定ラベルの使い分けについて説明する。
【0094】
図20(b)は、印字ラベルLを剥離する際の被印字テープTの平面図、図20(a)は、印字ラベルLが剥離される前の被印字テープTのXIIIy断面による縦断面図である。図20(a)及び図20(b)に示すように、本実施形態の切取領域ARの破断線Sは、スリットSLで形成される。つまり、破断線Sは、第1辺~第4辺で構成された四角形状に形成され、この第1辺~第4辺は、種類が同一で一様な、穴又は切れ目又は穴の列又は切れ目の列の一例であるスリットSLで構成される。
【0095】
図20(c)は、被印字テープTから剥離された印字ラベルLの平面図である。上述の通り、切取領域ARの全周がスリットSLで構成されるため、図20(b)及び図20(c)に示すように、いずれの方向からであっても、印字ラベルLを被印字テープTから剥がすと、印字ラベルLは、剥離材層24の切取領域ARが裏面に張り付いた状態で一体的に、被印字テープTから分離される(第2ステップ)。
【0096】
図20(d)は、被印字テープTから剥離された印字ラベルLの背面図、図20(e)は、固定ラベルとして使用する際の印字ラベルLを表す模式図、図20(f)は、固定ラベルとして使用する際の印字ラベルLの平面図である。図20(d)に示すように、被印字テープTから剥離された印字ラベルLの裏面には、粘着剤層22の一部が剥離材層24の切取領域ARにより覆われている。そこで、印字ラベルLを固定ラベルとして使用したい場合、ユーザは、図20(e)及び図20(f)に示すように、この印字ラベルLから切取領域ARを剥がし、第1実施形態と同様に、露出した粘着領域22を対象物に接触させつつ印字ラベルLを対象物に巻き付ける(第3Aステップ)ことで、印字ラベルLを固定ラベルとして使用することが可能となる。なお、固定ラベルとして使用する際の印字ラベルLの構造及び取り付け手順等は、第1実施形態等と同様であるため、説明を省略する。
【0097】
図20(g)は、回転ラベルとして使用する印字ラベルLを表す模式図である。前述の通り、図20(d)に示すように、被印字テープTから剥離された印字ラベルLの裏面には、粘着剤層22の一部が剥離材層24の切取領域ARにより覆われている。そこで、印字ラベルLを回転ラベルとして使用したい場合、ユーザは、図20(g)に示すように、切取領域ARを印字ラベルLから剥がすことなくそのまま使用し、切取領域ARを対象物に接触させつつ印字ラベルLを対象物に巻き付ける(第3Bステップ)ことで、印字ラベルLを回転ラベルとして使用することが可能となる。なお、回転ラベルとして使用する際の印字ラベルLの構造及び取り付け手順等は、第1実施形態等と同様であるため、説明を省略する。
【0098】
以上説明したように、本実施形態においては、図20(g)に示すように、印字ラベルLをそのまま使用すれば、第1実施形態と同様にケーブル302に粘着しない「回転ラベル」として使用することができる一方、図20(d)~図20(e)に示すように、さらに上記くっついてきた切取領域ARを引きはがせば、粘着材層22が露出するので、第1実施形態と同様にケーブル302に粘着する「固定ラベル」として使用することが可能である。
【0099】
以上、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について詳細に説明した。しかしながら、本発明の技術的思想の範囲は、ここで説明した実施の形態に限定されないことは言うまでもない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された本発明の技術的思想の範囲内において、様々な変更や修正、組み合わせなどを行うことに想到できることは明らかである。従って、これらの変更や修正、組み合わせなどの後の技術も、当然に本発明の技術的思想の範囲に属するものである。
【0100】
なお、以上の説明において、「垂直」「平行」「平面」等の記載がある場合には、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「垂直」「平行」「平面」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に垂直」「実質的に平行」「実質的に平面」という意味である。
【0101】
また、以上の説明において、外観上の寸法や大きさが「同一」「等しい」「異なる」等の記載がある場合は、当該記載は厳密な意味ではない。すなわち、それら「同一」「等しい」「異なる」とは、設計上、製造上の公差、誤差が許容され、「実質的に同一」「実質的に等しい」「実質的に異なる」という意味である。
【0102】
また、以上既に述べた以外にも、上記実施形態や各変形例による手法を適宜組み合わせて利用しても良い。
【0103】
その他、一々例示はしないが、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲内において、種々の変更が加えられて実施されるものである。
【符号の説明】
【0104】
1 ラベル作成装置(プリンタ)
2 制御回路
3 操作部
4 表示部
5 RAM
6 搬送ローラ
7 印字ヘッド
8 カットレバー
9 カッタ
10 テープカートリッジ(カセット)
10A テープロール
11 筐体
12 カートリッジホルダ
21 基材層
22 粘着剤層(粘着層)
24 剥離材層(剥離材)
25 印字背景層(印刷部、印刷層)
25a,25b,25c,25d 辺
300 スイッチングハブ
301 スロット
302 ケーブル
AR 切取領域
D1 粘着領域
D23 粘着可変領域
D4 粘着領域
HC 切り込み
L 印字ラベル
Lo ラベル本体部(被印字用ラベル)
LB ラベル余剰部(ラベル)
PM マーク
R 印字
S 破断線
SL,SL0,SL1,SL2 スリット
SM ミシン目
SD 切込み
SO 破断線外領域
SI 破断線内領域
Sa,Sb,Sc,Sd 辺(第4辺)
T、To 被印字テープ(媒体)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
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図15
図16
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図18
図19
図20