(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】拡張現実装置、ならびに、そのための光学システム及び半反射体
(51)【国際特許分類】
G02B 27/02 20060101AFI20230810BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
G02B27/02 Z
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2020565009
(86)(22)【出願日】2019-02-12
(86)【国際出願番号】 CN2019074857
(87)【国際公開番号】W WO2019154428
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2020-08-27
(31)【優先権主張番号】201810146738.7
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810146751.2
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810146912.8
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810146905.8
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810147326.5
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810147336.9
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810147325.0
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810146915.1
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810147330.1
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810147332.0
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201810147328.4
(32)【優先日】2018-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】520302774
【氏名又は名称】マトリックスド、リアリティー、テクノロジー、カンパニー、リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MATRIXED REALITY TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】梁 ▲暁▼斌
(72)【発明者】
【氏名】肖 冰
(72)【発明者】
【氏名】徐 ▲馳▼
【審査官】堀部 修平
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-077840(JP,A)
【文献】特開平11-237584(JP,A)
【文献】中国実用新案第205539729(CN,U)
【文献】特開平06-059217(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107422480(CN,A)
【文献】特開平09-304730(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0240843(US,A1)
【文献】特表2008-533517(JP,A)
【文献】特表2017-514168(JP,A)
【文献】特開平11-153772(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 27/01 - 27/02
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
拡張現実装置用の光学システムであって、
イメージ投影ソース;
前記イメージ投影ソースに隣接するビーム分割側と、前記イメージ投影ソースとは反対側の透過側と、を有するビームスプリッタ;及び
前記ビーム分割側に隣接して配置され、かつ、前記イメージ投影ソースから射出さられた光が前記ビーム分割側によって反射される光路に沿って前記ビーム分割側の下流にある半反射体であって、前記ビームスプリッタが、前記イメージ投影ソースから射出された光が、ビーム分割側によって半反射体に向かって少なくとも部分的に反射されることができるように配置されている、半反射体;
を備え、
1/4波長板が、前記ビームスプリッタと前記半反射体との間に配置され、前記半反射体は、
前記ビームスプリッタ側から順に配置された、半反射フィルム、基材となる二次1/4波長板、及び、偏光子
が一体化されたものであり、
前記二次1/4波長板の異常軸又は通常軸は、前記偏光子を通過する偏光の偏光方向に対して45度の角度となるように構成され、
前記イメージ投影ソースが、光を射出するための平面イメージソースを備え、前記ビームスプリッタの前記ビーム分割側が位置する平面が前記イメージ投影ソースの法線に対して第1の角度(β)にあり、前記第1の角度が11°~79°の値を有し、かつ/または、前記ビームスプリッタのビーム分割側が位置する平面が前記半反射体の光軸に対して第2の角度(α)にあり、0°<前記第2の角度(α)<90°であり、かつ、前記第2の角度が、前記第1の角度(β)-10°と前記第1の角度(β)+10°との間であることを特徴とする光学システム。
【請求項2】
反射防止フィルムが、前記ビームスプリッタに対して前記基材の近位面上に適用されることを特徴とする請求項1に記載の光学システム。
【請求項3】
前記ビームスプリッタは、前記イメージ投影ソースから射出された光が前記ビーム分割側に入射する際に、偏光方向が第1の方向である偏光成分が、前記ビームスプリッタを通過して前記透過側に透過し、かつ、偏光方向が前記第1の方向に垂直な第2の方向である偏光成分が、前記ビーム分割側で前記1/4波長板に向かって反射されるように構成され、
前記ビームスプリッタはさらに、光が前記透過側に入射する際、その光の偏光方向が前記第1の方向である偏光成分が前記ビームスプリッタを通過して、前記ビーム分割側を透過することができ、かつ、その光の偏光方向が前記第2の方向である偏光成分が前記ビームスプリッタで吸収されることが可能なように構成されることを特徴とする請求項1に記載の光学システム。
【請求項4】
前記ビームスプリッタは、偏光ビーム分割フィルム及び偏光フィルムを備え、前記偏光ビーム分割フィルムは、偏光方向が前記第1の方向である偏光を透過させ、かつ、偏光方向が第2の方向である偏光を反射させるように構成され、前記偏光フィルムは、偏光方向が前記第1の方向である偏光を通過させ、かつ、偏光方向が前記第2の方向である偏光を吸収させ、
前記イメージ投影ソースから射出された光の方向で見た場合、前記偏光ビーム分割フィルムは、前記偏光フィルムの上流に配置され、前記ビーム分割側を画定することを特徴とする請求項3に記載の光学システム。
【請求項5】
前記1/4波長板の異常軸及び通常軸が、それぞれ前記第1及び第2の方向との角度を含むように構成され、角度が1°~89°の間であることを特徴とする請求項3または4に記載の光学システム。
【請求項6】
前記角度が30°~60°の間であることを特徴とする請求項5に記載の光学システム。
【請求項7】
前記角度が45°であることを特徴とする請求項6に記載の光学システム。
【請求項8】
前記第1の角度が20°~70°の値を有することを特徴とする請求項1に記載の光学システム。
【請求項9】
前記第1の角度が30°~60°の値を有することを特徴とする請求項1に記載の光学システム。
【請求項10】
前記第1の角度が40°~55°の値を有することを特徴とする請求項1に記載の光学システム。
【請求項11】
前記第1の角度が40°~50°の値を有することを特徴とする請求項1に記載の光学システム。
【請求項12】
前記半反射体が湾曲半反射体であることを特徴とする請求項1~11のいずれか一項に記載の光学システム。
【請求項13】
前記半反射体が、±150度の屈折度、すなわち、±1.5Dの屈折度を有することを特徴とする請求項12に記載の光学システム。
【請求項14】
前記半反射体が、±100度の屈折度、すなわち、±1.0Dの屈折度を有することを特徴とする請求項12に記載の光学システム。
【請求項15】
ブラケットと、請求項1~
14のいずれか一項に記載の光学システムと、を備え、前記光学システムが前記ブラケットに組み込まれていることを特徴とするヘッドマウント拡張現実装置。
【請求項16】
前記ブラケットが眼鏡フレームであることを特徴とする請求項
15に記載のヘッドマウント拡張現実装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、拡張現実装置、特にヘッドマウント拡張現実装置に関する。本願はまた、拡張現実装置のための光学システム及び半反射体に関する。
【背景技術】
【0002】
拡張現実(AR)技術は、混合ディスプレイ技術と呼ぶことができます。その原理は、コンピュータで制御可能なイメージソースを使用して、使用者に表示される画像を使用者の目に映し、コンピュータを介して表示された画像で増強された実際のシーン情報が使用者に提供されるように、表示された画像に、使用者の目に直接見える実際の環境画像を重ねる。この種のテクノロジーは、設計者による工業製品の設計と開発を促進する上でますます重要な役割を果たしている。ヘッドマウント拡張現実(AR)装置は、通常AR眼鏡またはヘルメットの形をしている。
【0003】
AR装置用の光学システムを設計する際の重要な要素は、設計の自由度をどのように高めるか、すなわち、どのように光学システムの調整可能なパラメータの選択性を高めるかである。従って、設計の自由度を高めることができれば、光学システム全体の性能を自由に調整でき、光学システムの画質を向上させることができる。
【0004】
AR装置の光学システムでは、一般的に、イメージソースからの光の一部が使用者の目に向けて反射され、同時に環境光が使用者の目に入ることができる半反射体が使用される。イメージソースからの光に対して、半反射体はその光の1回の反射用に設計されている。すなわち、光学システムは、半反射体の反射に関するパラメータを調整することによってのみその結像性能を調整できるように設計されている。調整可能なパラメータの数を増やすように半反射体を革新できるとすれば、光学システムの設計の自由度が確実に向上し、光学システムの全体的なパフォーマンスが向上し得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の課題について、本願は、AR装置に用いられる光学システム及び半反射体を提案し、光学システムの設計自由度を高め、全体の性能を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願の一態様によれば、拡張現実(AR)装置のための光学システムが提供され、拡張現実装置は:イメージソース; イメージソースに隣接するビーム分割側と、イメージソースとは反対側の透過側と、を有するビームスプリッタ; 及び、ビーム分割側に隣接して配置され、かつ、イメージソースから射出さられた光がビーム分割側によって反射される光路に沿ってビーム分割側の下流にある半反射体であって、ビームスプリッタが、イメージソースから射出された光が、ビーム分割側によって半反射体に向かって少なくとも部分的に反射されることができるように配置されている、半反射体;を備える。半反射体は、基材及び基材の遠位面上の半反射フィルムを備える。
【0007】
半反射フィルムは半反射体の基材の遠位面にあるため、イメージソースから射出された光は、画像化のために人の目に入る前に、半反射体で2回の屈折と1回の反射を受ける。これにより、光学システム全体の設計自由度が高められる。光学システムの全体的な画質をさらに改善するための調整可能なパラメータの数を増やすことができる。その間、視野を拡大できるため、人の目における最終的な撮像結果が容易になる。
【0008】
任意選択で、波長板が、ビームスプリッタと半反射体との間に配置され、好ましくは、波長板は、1/4波長板である。波長板または1/4波長板は、装置の消費電力を低減するように画像の明るさとコントラストを改善するために使用さる。
【0009】
任意選択で、半反射体の基材は波長板であり、好ましくは、波長板は1/4波長板である。半反射体に波長板または1/4波長板を組み込むと、半反射体の体積が減少するため、光学システム全体の機械的構造をより柔軟に設計できる。さらに、組み込みにより反射媒体の数を減らすことができるため、光学システム全体の迷光や「ゴースト」の影響を減らしたり排除したりして、光学システムのコントラストを改善できる。
【0010】
任意選択で、反射防止フィルムが基材の近位面上に適用される。反射防止フィルムは、基材に入る光のエネルギーを増加させるために使用され、従って、屈折及び反射によって光を変調する際のエネルギー利用効率を改善する。
【0011】
任意選択で、ビームスプリッタは、イメージソースから射出された光がビーム分割側に入射する際に、偏光方向が第1の方向である偏光成分が、ビームスプリッタを通過して透過側に透過し、かつ、偏光方向が前記第1の方向に垂直な第2の方向である偏光成分が、ビーム分割側で波長板に向かって反射されるように構成され、ビームスプリッタはさらに、光が透過側に入射する際、その光の偏光方向が第1の方向である偏光成分がビームスプリッタを通過して、ビーム分割側を透過することができ、かつ、その光の偏光方向が第2の方向である偏光成分がビームスプリッタで吸収されることが可能なように構成される。これにより、外光以外の不要な光が人の目に入るのを防ぐことができ、画質や鮮鋭度を向上させることができる。AR装置の消費エネルギーが低減され得る。
【0012】
任意選択で、ビームスプリッタは、偏光ビーム分割フィルム及び偏光フィルムを備え、偏光ビーム分割フィルムは、偏光方向が前記第1の方向である偏光を透過させ、かつ、偏光方向が第2の方向である偏光を反射させるように構成され、偏光フィルムは、偏光方向が第1の方向である偏光を通過させ、かつ、偏光方向が前記第2の方向である偏光を通過させ、イメージソースから射出された光の方向で見た場合、偏光ビーム分割フィルムは、偏光フィルムの上流に配置され、ビーム分割側を画定する。これにより、偏光方向が第2の方向にある偏光成分は、必然的に偏光ビーム分割フィルムによって反射され、その後、波長板または1/4波長板及び半反射体を介して処理され、最終的に人間の目に入射して映像化される。任意選択で、波長板の異常軸及び通常軸が、それぞれ第1及び第2の方向との角度を含むように構成され、角度が1°~89°の間、好ましくは30°~60°の間、より好ましくは45°である
【0013】
任意選択で、イメージソースが、光を射出するための平面イメージソースを備え、ビームスプリッタの前記ビーム分割側が位置する平面が前記イメージソースの法線に対して第1の角度(β)にあり、第1の角度が11°~79°、好ましくは20°~70°、より好ましくは30°~60°、より好ましくは40°~55°、最も好ましくは40°~50°の値を有し、かつ/または、ビームスプリッタのビーム分割側が位置する平面が半反射体の光軸に対して第2の角度(α)にあり、0°<第2の角度(α)<90°であり、かつ、第2の角度が、第1の角度(β)-10°と第1の角度(β)+10°との間である。これにより、ビームスプリッタの利用効率が最大化され得る。
【0014】
任意選択で、半反射体は湾曲した半反射体である。
【0015】
任意選択で、半反射体は、±150度、好ましくは±100度の屈折度を有する。これにより、装置を使用してシーンを見る使用者の快適性に影響が出ないことを確約し得る。
【0016】
本願の別の態様によれば、上述の光学システム用の半反射体が提供され、半反射体は、基材と、基材の遠位面上に配置された半反射フィルムと、を備える。これにより、光学システム全体をより柔軟に設計することができる。光学システムの全体的な画質をさらに改善するための調整可能なパラメータの数を増やすことができる。同時に、視野を拡大できるため、人の目での最終的な撮像結果が容易になる。
【0017】
任意選択で、半反射体の基材は波長板であり、好ましくは、波長板は1/4波長板であり、これにより、画像の輝度及びコントラストを改善し、さらに装置の電力消費を低減する。
【0018】
任意選択で、反射防止フィルムが基材の近位面上に適用され、基材に入る光のエネルギーを増加させ、従って屈折及び反射による光の変調におけるエネルギー利用効率を改善する。
【0019】
任意選択で、半反射体は湾曲した半反射体である。
【0020】
任意選択で、半反射体は、±150度、好ましくは±100度の屈折度を有する。
【0021】
本願の別の態様によれば、拡張現実装置、特に、ヘッドマウント拡張現実装置が提供され、ブラケット及び上述のような光学システムを備え、拡張現実装置がブラケットに組み込まれる。
【0022】
任意選択で、ブラケットは眼鏡フレームである。
【0023】
上述の本発明の技術的手段によれば、光学システムの要素の構造設計を実質的に変更することなく、光学システムの設計自由度を巧みに高めることができる。従って、これは、光学システムの全体的な性能をさらに改善するための基礎を提供している。さらに、これにより、光学要素の数及び体積を低減することができ、これは、光学システムをさらに小型化するための基礎を提供している。さらに、光学システムで発生する可能性のある迷光または「ゴースト」の影響を排除でき、視野を可能な限り拡大して、画質を向上させることができる。
【0024】
本願の前述及び他の態様は、添付の図面と共に以下の詳細な説明によって十分に理解され得る。図面は明瞭化のために異なる縮尺で与えられている場合があるが、これは、本願の理解に影響を与えないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】従来のAR装置の光学システムを模式的に示す図である。
【
図2】変更されたAR装置の光学システムを模式的に示す図である。
【
図3】従来の半反射体を模式的に示す断面図である。
【
図4a】本願の一実施形態による半反射体を概略的に示す断面図である。
【
図4b】
図4aの半反射体が
図1の光学システムでどのように使用されるかを概略的に示す図である。
【
図4c】
図4aの半反射体が
図2の光学システムでどのように使用されるかを概略的に示す図である。
【
図5】本願の別の実施形態による半反射体を概略的に示す断面図である。
【
図6a】本願の別の実施形態による半反射体を概略的に示す断面図である。
【
図6b】
図6aの半反射体を含む光学システムを概略的に示す図である。
【
図7】本願の一実施形態によるAR装置のイメージソースを概略的に示す断面図である。
【
図8】本願の別の実施形態によるAR装置のイメージソースを概略的に示す断面図である。
【
図9】本願の一実施形態によるビームスプリッタを概略的に示す拡大図である。
【
図10】本願の別の実施形態によるビームスプリッタを概略的に示す拡大図である。
【
図11】本願の他の実施の形態に係るAR装置の光学システム2000Aを模式的に示す図である。
【
図12】本願の別の実施形態による半反射体を概略的に示す断面図である。
【
図13】本願の別の実施形態による半反射体を概略的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本願の図面において、同じ構成または類似の機能を有するそれらの特徴は、同じ符号によって表される。さらに、例示のみを目的として、図面によって示される光学システムの光路は、光が伝播する経路のみを示すことに留意されたい。しかしながら、これは、図示されていないそれらの光路が、本願に係る光学システムの光路に存在しないことを意味するものではない。
【0027】
図1は、従来のAR装置の光学システムの光路図を模式的に示している。従来のAR装置の光学システムは、通常、コンピュータ(図示せず)によって制御可能なイメージソース10、ビームスプリッタ20及び半反射体30を備える。コンピュータの制御下で、イメージソース10はそれぞれ、光L10を射出して、イメージソースから所望の画像を表示する。イメージソースから射出された光L10に沿って、ビームスプリッタ20はイメージソース10の下流に配置される。イメージソースから射出された光L10の一部はビームスプリッタ20によって反射され、イメージソースから射出された光の他部は、ビームスプリッタ20を透過する。イメージソースから射出された光L10の反射光の光路に沿って、半反射体30は、ビームスプリッタ20の下流に配置される。イメージソースから射出された光L10の反射光は、部分的に半反射体30を通って外側に透過し、部分的に同じ半反射体によって反射される。光の一部は、部分的にビームスプリッタ20を再び通過して、人の目で見ることができる。同時に、環境光L30は、それぞれ半反射体30を通過し、次に部分的にビームスプリッタ20を通過して、人の目40によって見ることができる。従って、イメージソースから射出された光L10の一部によって表示される画像と、環境光L30の一部によって表示される環境画像と、が人間の目40に重ね合わされ、これにより、使用者が実際のシーンの拡張現実効果を体験できる。上記の従来の光学システムにおいて、ビームスプリッタ20を透過するイメージソースから射出された光L10の一部が画像形成に影響を与えるように折り返されないことを確実にするために、イメージソースから射出された光L10の一部を周囲環境にスムーズに放出させる必要がある。
【0028】
イメージソースから射出された光L10のエネルギー利用効率を高めるために、AR装置には
図2に示すような光学システムが提案されている。明確にするために、
図1に示されている光学システムとは異なるAR装置の光学システムの特徴のみを以下に説明する。その他の構成要素については、既に説明した内容を参照することができる。
図2に示すように、AR装置の光学システムは、ビームスプリッタ20の代わりに偏光ビームスプリッタ21を備える。例えば、偏光ビームスプリッタは、(非偏光)スプリッタ基材上に偏光ビーム分割フィルムを適用することによって作られ得る。偏光ビームスプリッタ21は、この偏光ビーム分割フィルムがイメージソース10の隣側に配置される。ビームスプリッタ基材は、
図1に示されるビームスプリッタ20と同じ機能を達成し得る。偏光ビーム分割フィルムは、偏光方向が第1の方向である偏光を通過させ、かつ、偏光方向が第1の方向に垂直な第2の方向である偏光を反射することを可能にするために使用される。なお、以下では、説明の便宜上、第1の方向の偏光及び第2の方向の偏光を、それぞれ、P偏光及びS偏光と称する。また、偏光ビームスプリッタ21と半反射体30との間の光路上には、1/4波長板50が配置されている。
【0029】
本明細書の文脈において、ビームスプリッタのビーム分割側は、ビームスプリッタの構成部分によって画定される表面またはインターフェースを指し、光は表面またはインターフェースに入射し得、かつ/または部分的に反射され、かつ、部分的にそこを通って透過し得る。ビームスプリッタの透過側とは、ビームスプリッタの構成部分によって画定される表面またはインターフェースを指し、光は表面またはインターフェースに入射し得、かつ/またはビームスプリッタの外側に透過し得る。
図2に示す実施形態では、ビームスプリッタ21の偏光ビーム分割フィルムが、ビームスプリッタのビーム分割側を画定し、ビームスプリッタ基材が、ビームスプリッタの透過側を画定する。
図1に示すビームスプリッタ20では、ビームスプリッタ20のイメージソース10の隣側の面がビーム分割側であり、ビームスプリッタ20のイメージソース10の反対を向いている面が透過側である。
【0030】
さらに、本明細書の文脈において、ビームスプリッタ(またはそのスプリッタ基材)は、立方体または平面的であり得ることを理解されたい。例えば、2つの直角二等辺三角形プリズムで構成される立方体ビームスプリッタでは、プリズムの斜面がスプリッタのビーム分割側を構成する。例えば、再び、平面的スプリッタでは、ビームスプリッタの平面基材の平面がビームスプリッタのビーム分割側を構成する。
【0031】
説明を明確にするために、以下ではそれぞれ、偏光方向がP方向である偏光を、偏光方向が第1の方向である偏光とし、偏光方向がS方向である偏光を、偏光方向が第2の方向である偏光とする。しかしながら、当業者は、P偏光及びS偏光が、それらの偏光方向が互いに垂直であることを保証するという前提の下で、光が伝搬する経路に沿って回転できることを理解するであろう。従って、第1の方向に偏光された光は、偏光がP方向に対してある角度である偏光された光であり得る。
【0032】
本明細書の文脈において、「フィルム」または「プレート」という用語は、「フィルム」または「プレート」の形で別の薄層構造に取り付けることができる薄層構造を指すか、または単一の薄層構造を指す。
【0033】
本明細書の文脈において、ビームスプリッタ部品のビーム分割側が配置される平面は、ビーム分割側が実質的に配置される平面である。イメージソースは、光を射出することができる平面または湾曲したイメージソースを含む。本明細書の文脈において、平面イメージソースは、それが実質的に平面の発光側面を有することを意味する。同様に、湾曲したイメージソースは、それが実質的に湾曲した発光側面を有することを意味する。イメージソースは、有機発光ダイオード(OLED)、液晶オンシリコン(LCOS)、液晶ダイオード(LCD)などのような光学デバイスによって作られ得る。レンズサブアセンブリは、より鮮明な画像を得るためにイメージソースから射出される光を集束させるために使用される1つまたは複数のレンズを備え得る。ビームスプリッタのビーム分割側が位置する平面は、イメージソースの法線に対して角度βにある。角度βは、11°~79°、好ましくは20°~70°、より好ましくは30°~60°、より好ましくは40°~55°、最も好ましくは40°~50°の値を有する。ビームスプリッタのビーム分割側が位置する平面は、半反射体の光軸に対して角度αにあり、角度αは、β-10°とβ+10°の間であり、0<α<90°である。これにより、光エネルギーの最大の利用効率を達成し得る。
【0034】
本願の文脈において、値の範囲に関連する「間」という用語は、範囲の両端の値も考慮されることを意味する。例えば、「値Aは値Bと値Cの間にある」とは、値Aが値B、値Cである、または、値Aより大きく、値Cより小さい値になることを意味する。
【0035】
また、
図2に示すように、イメージソース10から射出された光L10が偏光ビームスプリッタ21を通過すると、イメージソースから射出された光L10のP偏光成分L10pは、ビームスプリッタSを透過する。イメージソースから射出された光L10のS偏光成分L10sは、半反射体30または1/4波長板50に向かって反射される。1/4波長板50を通過する際、S偏光成分L10sは、円偏光(または楕円偏光)に変換される。次に、円偏光(または楕円偏光)は、半反射体30を部分的に透過し、部分的に反射される。再び1/4波長板50を通過すると、反射された円偏光(または反射された楕円偏光)は、P偏光成分L10pに変換される。続いて、このP偏光成分L10pは、偏光ビームスプリッタ21を通過して人の目40から見える。一方、環境光L30もまた、半反射体30及び1/4波長板50を順次通過し、その後、さらに、不要な光L20は、偏光ビームスプリッタ21に入射すると、ビームスプリッタ21を通して透過したP偏光成分L20p、及び、ビームスプリッタによって反射されたS偏光成分L20sに変換され、S偏光された光成分L20sのみが人間の目40によって見ることができる。
【0036】
図1に示す光学システムでは、イメージソースから射出された光L10の光エネルギーは、ビームスプリッタ20に入射すると、半分を失う。次に、光の光エネルギーは、半反射体30に入射すると、半分を失う。次に、光の光エネルギーは、戻されてビームスプリッタ20に再び入射すると、半分を失う。すなわち、イメージソースから射出された初めの光L10の光エネルギーの8分の1のみが、人間の目40における画像化に使用され得る。対照的に、
図2によって示される光学システムでは、光エネルギーは、イメージソースから射出された光L10は、ビームスプリッタ21に入射すると、半分を失う。次に、光の光エネルギーは、半反射体30に入射すると、半分を失う。しかしながら、光の光エネルギーは、戻ってビームスプリッタ20に再び入射するとき、全く失わない。すなわち、イメージソースから射出された初めの光L10の光エネルギーの4分の1が人間の目40での画像化に使用され、これにより画像化の明るさとコントラストが大幅に改善され、装置の電力消費が減少する。
【0037】
図3は、
図1及び
図2の光学システムで使用される半反射体30の断面図を例示的に示す。半反射体30は、透明基材31と、ビームスプリッタ20または21に向かって面する透明基材31の表面に適用される半反射フィルム32と、を備える。半反射体30は、光が入射し、部分的に反射され、部分的に透過する。さらに、「半反射体」または「半反射フィルム」という用語は、そこに入射する光のエネルギーの半分が半反射体によって反射され、半分のエネルギーが半反射体を透過することを意味しないことを当業者は理解すべきである。むしろ、反射光エネルギーと透過光エネルギーの比率は、例えば、「半反射体」または「半反射フィルム」自体の特性に依存し得る。図示するように、ビームスプリッタ20によって反射された光L10または偏光ビームスプリッタ21によって反射された光のS偏光成分L10sのいずれかは、初めに半反射フィルム32に入射し、次に、人間の目40での画像化に使用することができる、イメージソースから射出された光(またはその成分))たものは、半反射フィルム32によって人間の目40に部分的に反射される。半反射体30を再設計することによって画質を改善するために、半反射体30などの1つの光学要素のパラメータのみを考慮して修正することができることがわかるだろう。
【0038】
好ましい実施形態では、半反射体自体の基材は、屈折補正のための光学レンズ、例えば屈折収差を補正するために使用される光学レンズである。
【0039】
図4aは、本願の一実施形態による半反射体300の断面図を概略的に示す。半反射体300は、透明基材301と、透明基材301の遠位面に適用される半反射フィルム302と、を備える。本明細書の文脈において、基材または1つの光学要素の遠位側面または表面は、人から遠い側の基材または光学要素の側面または表面を意味し、人の目に入る直線の光路内に見られる。同様に、基材または1つの光学要素の近位側面または表面は、基材または人間の目に近位の光学要素の側面または表面を意味し、人の目に入る直線の光路内に見られる。
【0040】
図4bは、
図4aの半反射体300を採用する光学システム1000を概略的に示す。この光学システム1000は、後者の半反射体30が、本願による半反射体300によって置き換えられている点においてのみ、
図10によって示される光学システム10と異なることを当業者は理解すべきである。従って、半反射体300以外の光学システム1000の他の光学要素は、既に説明された内容を参照する。
図4a及び
図4bに示すように、イメージソースから射出された光L10の一部がビームスプリッタ20によって反射された後、イメージソースから射出された光L10のこの一部は、最初に半反射体300の基材301に入射する。空気と基材301との屈折率は異なるため、光のごく一部は、基材301の近位面(図では空気と接触する)で反射されるが、光のはるかに多くの部分がそこで屈折する。屈折した光は、基材301内をその遠位面に向かって伝搬し続ける。光が基材301の遠位面に到達すると、光の一部は半反射フィルム302によって基材301の近位面へと後方に反射され、他の光は半透過性フィルムを通して外側に透過する。光の後方反射された部分は、基材301内を再びその近位面に伝播し、その後、近位面で空気に向かって部分的に屈折する。最後に、屈折した光は、人間の目に結像するためにビームスプリッタ20を通過する。光が基材301の遠位面に到達すると、光の一部は半反射フィルム302によって後方に反射されて基材301の近位面に向かい、光の他の部分は半反射フィルム302を通って外側に透過する。光の後方反射された部分は、基材301内を再びその近位面に伝播し、その後、近位面で空気に向かって部分的に屈折する。最後に、屈折した光は、人間の目に結像するためにビームスプリッタ20を通過する。光が基材301の遠位面に到達すると、光の一部は半反射フィルム302によって後方に反射されて基材301の近位面に向かい、光の他の部分は外側に半反射フィルム302を透過する。光の後方反射された部分は、基材301内を再び基材の近位面まで伝播し、その後、近位面で空気に向かって部分的に屈折する。最後に、屈折した光は、ビームスプリッタ20を通過して人の目に結像する。
【0041】
従来の光学システム10では、半反射体30において、イメージソースから射出された、人の目40に入ることができる光L10の反射が1回だけ生じる。しかしながら、本発明の光学システム1000では、半反射体300において、人の目40に入ることができる、イメージソースから射出された光L10の少なくとも2つの屈折及び1つの反射が生じる。従って、本発明の技術的手段を用いて、光学システム全体の設計自由度を高めることができる。例えば、設計者は、基材301の厚さまたは材料特性を変更し、基材301の近位面の形態を再形成して、光学システム全体の光学性能を変更することにより、光の屈折を再設計することができる。さらに、基材301内の光の伝播は、反射及び屈折に関連するため、最終屈折での光は、視野拡大の効果をもたらし、これにより、人の目での最終的な画像化結果が容易になる。
【0042】
図4cによって示される別の実施形態では、
図4aによって示される半反射体300は、
図2によって示される光学システムの半反射体30を置き換えるために使用され得る。この場合、半反射体300において、人の目に入る前にイメージソースから射出された光成分は、少なくとも2回反射し、1回屈折する。また、光学システム全体の設計自由度が高まり、視野拡大効果が得られ、人の目での最終的な画像化結果が容易になります。
【0043】
図5は、本願の別の実施形態による半反射体310を概略的に示す。半反射体300と同様に、この半反射体310は、透明基材301と、透明基材301の遠位面上に適用された半反射フィルム302と、を備える。さらに、半反射体310はまた、透明基材301の近位面上に適用された反射防止フィルム303を備える。反射防止フィルムは、基材に入る光のエネルギーを増加させ、屈折及び反射を介して変調される光のエネルギー利用効率を改善するために使用される。
図4b及び
図4cによって示される光学システムの半反射体は、別の実施形態では、この半反射体310によって置き換えられ得ることを理解されたい。
【0044】
図4cに示される実施形態では、1/4波長板50は、半反射体300から離間するように配置される。これにより、イメージソースから射出され、ビームスプリッタ21で反射する、光のS偏光成分L10sが、1/4波長板50の近位面に入射し、その遠位面から出る際に反射される。すなわち、空気と1/4波長板のメディアパラメータ間の違いにより、光成分のごく一部が反射される。さらに、1/4波長板50を通過するS偏光成分L10sによって変換された円偏光の一部が半反射体300で反射される際、この部分は、1/4波長板50の近位面及び遠位面を通過する際に再び反射する。すなわち、空気と4分の1波長板のメディアパラメータ間の違いより、光成分のごく一部が反射される。すなわち、人の目40に入る光(または光成分)は、少なくとも4つのマイクロリフレクション(micro-reflection)を受ける。これらのマイクロリフレクションは、最終的な画像化結果に望ましくない迷光と「ゴースト」の影響をもたらす。さらに、1/4波長板50を半反射体300から離間させることも、大規模な光学システムをもたらす。これらのマイクロ反射は、最終的なイメージング結果に望ましくない迷光と「ゴースト」の影響をもたらします。さらに、1/4波長板50を半反射体300から離間させることも、大規模な光学システムをもたらす。これらのマイクロ反射は、最終的なイメージング結果に望ましくない迷光と「ゴースト」の影響をもたらします。さらに、1/4波長板50を半反射体300から離間させることも、大きな光学システムをもたらすことになる。
【0045】
従って、
図6aは、本願の別の実施形態による半反射体400を概略的に示す。半反射体400は、1/4波長板401と、1/4波長板401の遠位面上に適用される半反射フィルム402と、を備える。すなわち、この実施形態では、1/4波長板401が半反射体400の基材である。本願の文脈において、1/4波長板は、偏光方向が第2の方向である偏光を円偏光(または楕円偏光)に変換し、円偏光(または楕円偏光)を偏光方向が第1の方向である偏光に変換するために使用される。波長板の異常軸及び通常軸は、それぞれ第1及び第2の方向に対しての角度を含むように構成されており、その角度は1°~89°の間、好ましくは30°~60°の間である。好ましい実施形態では、波長板の異常軸及び通常軸は、第1及び第2の方向の両方に対して45°になるように構成される。例えば、1/4波長板401は、光学プラスチック材料、光学ガラス、光学結晶などの特定の複屈折材料で作られ得る。
【0046】
図6bは、
図6aに示される半反射体400を含む光学システム2000を概略的に示す図である。光学システム2000は、
図2に示されるように、イメージソース10及びビームスプリッタ21を備える。従って、イメージソース10及びビームスプリッタ21の内容は、前の説明を参照することができる。さらに、光学システム2000は、半反射体400も備える。従って、ビームスプリッタで反射されたイメージソースからの光のS偏光成分L10sが半反射体400の近位面に入射すると、それは、半反射体400の1/4波長板401内を伝播し、円偏光(または楕円偏光)に変換される。
【0047】
さらに、本願の半反射体は、例えば、部分的に円筒形または部分的に球形であり得ることは、当業者によって理解されるべきである。或いは、部分的に回転対称(非球形)または他の適切な、または自由に湾曲したものでもよい。例えば、再び、装置を装着して実際のシーンを見る使用者の快適さに影響を与えないために、本発明の半反射体の全ジオプターは±150度、好ましくは±100度である。
【0048】
好ましい実施形態では、半反射体400は、光のエネルギー利用効率を改善するように、その近位面上に適用される反射防止フィルムを備え得る。
【0049】
本願の説明を読んだ後、当業者には理解されるべきであるが、ここでは1/4波長板またはフィルムについて説明したが、本願では、板またはフィルムを、本願の上述の技的解決策において同様の機能を達成または実質的に達成できる限り、互いに垂直に偏光した2つの光の間に追加の光路差を生成できる、他の任意の他の波長板または位相差フィルムまたは光学要素に置き換えられ得る。
【0050】
イメージソースのビーム成形要素は、イメージソースから射出される光ビームをコリメート、成形及び/または結合するように、イメージソースから射出される光の光路内に配置される。
【0051】
本願によれば、ビーム成形要素はレンズとして構成され得る。ビーム成形要素のレンズは、1つのレンズまたはレンズからなるレンズサブアセンブリであり得る。レンズまたはレンズサブアセンブリの各レンズは、正レンズ、負レンズ、または正レンズと負レンズの任意の組み合わせにすることができる。レンズの表面は、球面、非球面、または自由曲面を有し得る。
【0052】
本願の原理によれば、ビーム成形要素は、例えば接着剤を介して直接面と面を接着することにより、或いは中間整合部を介してイメージソースに組み込むことにより、イメージソースに一体化され得る。言い換えると、本願によるAR装置のイメージソース及びイメージソースのビーム整形要素は、一体部品として、直接的に一緒に一体化されるか、または中間整合部分を介して間接的に一緒に一体化される。中間整合部は、空気ではなく、屈折率が1より大きい整合媒体で作られる。これにより、イメージソースから出射され、仮想画像情報を運ぶ光線VLは、直接または屈折率が1より大きい整合媒体を介してビーム成形要素に入ることができ、その後、ビーム成形要素を介してイメージソースから出る。
【0053】
好ましくは、中間整部を形成するための整合媒体の屈折率は、1~2.7であり得る。中間整合部を形成するための整合媒体は、液体媒体、液晶媒体、半固体媒体または固体媒体であり得る。中間整合部は、前述の媒体の少なくとも1つによって形成され得る。液体媒体は、水またはエチルアルコールなどの透明媒体であり得る。固体媒体は、ガラスまたは樹脂などの透明な固体媒体であり得る。
【0054】
図7は、本願に係るAR装置のイメージソースの一例を示している。この例では、イメージソース12及びビーム成形要素14は、中間整合部16によって間接的に一体に一体化される。この例では、ビーム成形要素14はレンズとして提供され、中間整合部16は、液体及び/または液晶媒体で形成される。その結果、イメージソース10は、液体または液体媒体をイメージソース12とビーム成形要素14との間で密封することができるシール構造を備える。シール構造は、当技術分野で既知の任意の適切なシール構造であり得ることが理解される。
【0055】
実現可能な実施形態では、シール構造は、シールフレーム18を備える。シールフレーム18は、イメージソース12に接着されて、それらの間のシールを達成する。シールフレーム18とビーム成形要素14のレンズとの間のシールは、それらの間のインレイ係合によって達成され得る。任意選択で、中間整合部16を作製するために使用される媒体の形態に応じて、シールフレーム18は、ビーム成形要素14のレンズに接着され得る。
【0056】
このような構成によれば、イメージソース12から射出されて虚像を運ぶ光ビームは、最初に中間整合部16に入射し、次にレンズの形態をしたビーム成形要素14に入射し得る。整合媒体の屈折率は空気の屈折率より大きいので、ビーム成形要素14のレンズが形成される媒体と整合媒体との間の屈折率の差は、ビーム成形要素14のレンズが形成される媒体と、中間整合部16とビーム成形要素14との間の境界面の空気と、の屈折率の差よりも小さい。従って、より多くの光線を屈折させて、これにより、光透過率を改善し、イメージソースの光学効率を高めることができる。その結果、界面で反射する光線が少なくなり、迷光やゴーストの発生を抑制または低減することができる。
【0057】
これは、方程式R=(0.61*λ)/(n*sinθ)から観察され、ここで、Rはエアリーディスクの半径、λは光の波長、nは画像空間の屈折率、θは入射開口角であり、整合媒体の屈折率が大きくなると、生成されるエアリーディスクが小さくなり、画像解像度を上げることができる。また、結像側で屈折率が大きくなるため、比較的小さい開口角で大きな開口数が得られ、周辺光線の屈曲角を小さくでき、設計の難易度を下げることができる。さらに、イメージソースがビーム成形要素と一緒に一体化されているので、光学構造がよりコンパクトになり、設置及び調整がより簡単になり、従ってより構造的になる。
【0058】
図8は、本願に係るAR装置のイメージソースの他の例を示している。この例では、イメージソース12及びビーム成形要素14は、面嵌合の方法で一緒に一体化される。イメージソース12及びビーム成形要素14は、互いに嵌合され得る相補的な接触面を有する。一例として、ビーム成形要素14が形成されるレンズは、イメージソース12に接着される。或いは、イメージソース12及びビーム成形要素14は、当業者に既知の他の任意の適切な方法を介して互いにしっかりと嵌合され得る。
【0059】
このような構成によれば、イメージソース12から射出するソース光ビームは、ビーム成形要素14を形成するレンズに直接入る。このような構成は、
図7に関して説明したものと同様のすべての利点をもたらし得る。イメージソースはレンズに直接取り付けられるため、光学構造をよりコンパクト、より小さく、より軽く、より快適に装着され得る。よりコンパクトな構造により、設置と調整が簡単になることを確約する。
【0060】
本願によるイメージソースのいくつかの可能な例は、
図1~
図4に関して説明されている。これらは、本願によるイメージソースの例のすべてではないことを当業者は理解すべきである。本願によれば、イメージソースがビーム成形要素と一緒に一体化されるそのような実施形態も実現可能である。本願によれば、イメージソースは、どのように構成されているか、どのような種類の機能を有しているかは関係なく、光路モジュールと組み合わせて使用され得ることを当業者は理解すべきである。本願のイメージソースと組み合わせて使用される光路モジュールは、任意の数の光学要素、様々な機能を有する光学要素、または実現可能に配置された光学要素の任意の組み合わせを備え得る。
【0061】
本願の任意選択の実施形態によれば、イメージソースは、単一の部品として互いに一体化されたイメージソースとビーム成形要素とを備え、イメージソースから射出される光ビームは、ビーム成形要素によって成形されてイメージソースから出る。任意選択で、ビーム整形要素はイメージソースに直接的に一体化される。例えば、ビーム整形要素は、面嵌合によってイメージソースに接着される。任意選択で、ビーム整形要素は、中間整合部を介してイメージソースに間接的に一体化され得る。任意選択で、中間整合部は、液体媒体、液晶媒体、半固体媒体及び固体媒体からなる群から選択される少なくとも1つによって形成される。
【0062】
任意に、中間整合部は、水、エチルアルコール、ガラス、及び樹脂からなる群から選択されるいずれかによって形成される。
【0063】
任意選択で、中間整合部は、液体媒体及び/または液晶媒体によって形成され、イメージソースは、中間整合部を形成する媒体がイメージソースとビーム成形要素との間で密封されるシール構造も備える。
【0064】
任意選択で、中間整合部の媒体は1~2.7の屈折率を有する。
【0065】
任意選択で、ビーム成形要素は、正レンズとして構成されるか、負レンズとして構成されるか、正レンズと負レンズの組み合わせとして構成される。
【0066】
図9は、本願の一実施形態によるビームスプリッタ22を示す拡大図である。ビームスプリッタは、ビームスプリッタ基材22a、偏光フィルム22b、偏光ビーム分割フィルム22cの順に3層構造となっている。ビームスプリッタ基材22aは、当技術分野で周知の光スプリッタ、例えば非偏光ビームスプリッタとし得る。偏光フィルム22bは、第1の方向の偏光を透過するが、第1の方向と直交する第2の方向の偏光を吸収するフィルムである。偏光分割フィルム22cは、その偏光方向が第1の方向である偏光を透過させ、かつ、その偏光方向が第2の方向である偏光を反射するフィルムである。
【0067】
図2のビームスプリッタ21がビームスプリッタ22に置き換えられた別の実施形態では、イメージソース100から射出された光L10がビームスプリッタ22の偏光ビーム分割フィルム22c(ビーム分割側面)に入射すると、イメージソースから射出された光L10のP偏光成分L10pは、偏光ビーム分割フィルム22cを透過し、さらに偏光フィルム22bを透過して、ビームスプリッタ22の透過側面から出る。イメージソースから射出された光L10のS偏光成分L10sは、1/4波長板に向かって反射される。1/4波長板を通過すると、S偏光成分L10sは円偏光に変換される。半反射体30に達すると、円偏光は部分的に半反射体30を透過し、半反射体30よって部分的に反射される。反射した円偏光は、再び1/4波長板を通過し、P偏光成分L10pに変換される。続いて、P偏光成分L10pは、ビームスプリッタ22の偏光ビーム分割フィルム22c(ビーム分割側面)に入射し、偏光フィルム22bを透過して人の目40で視認される。一方、環境光L30は、半反射体30及び1/4波長板をこの順序で通過し、部分的にビームスプリッタ部品22を通過して、人の目40によって視認される。さらに、不要な光L20が、ビームスプリッタ22のビームスプリッタ基材22a(送信側)に入射すると、不要な光のS偏光成分は偏光フィルム22bによって吸収され、不要な光のP偏光成分は偏光フィルム22bを通過し、続いて偏光ビーム分割フィルム22cを通過する。従って、すでに述べた光学システムのビームスプリッタがビームスプリッタ22によって置き換えられる場合、理想的には、不要な光L20の光成分は人の目40に向かって透過することができず、これにより、使用者の観察上の不要な光の影響は、完全に排除される、弱められ、従って、光学システム全体の画質が向上する。
【0068】
別の実施形態では、ビームスプリッタ基材22aと偏光フィルム22bの位置は交換可能である。別の実施形態においてでも、ビームスプリッタ基材22aを省くことができる。
【0069】
実際の生産では、ビームスプリッタ基材またはフィルム自体が厚さを持っているので、ビームスプリッタ部品22に入射すると、イメージソースから射出された光L10のすべてが偏光フィルム22b及び偏光ビーム分割フィルム22cによって変調できるわけではない。すなわち、イメージソースから射出された光L10の成分のごく一部がビームスプリッタ部品22の透過側面に透過し得る可能性がある。透過側面と空気との界面により、イメージソースから射出された光L10の成分のこの非常に小さい部分は、偏光フィルム22b及び偏光ビーム分割フィルム22cに向かって反射され得る。最後に、イメージソースから射出された光L10の成分のこの非常に小さい部分は、光学システム全体の画像化において「ゴーストの干渉」をもたらす可能性があり、従って、人の目40によって視認できる画像品質に影響を与える。
【0070】
図10は、本願の他の実施形態に係るビームスプリッタ23を示す拡大図である。ビームスプリッタ23は、ビームスプリッタ基材23a、1/4位相差フィルム23b、偏光フィルム23c、偏光ビーム分割フィルム23dの順に4層構造となっている。例えば、それらは単一のピースとして順次一緒に接着される。偏光ビーム分割フィルム23dはビームスプリッタ23のビーム分割側面を画定し、ビームスプリッタ基材23aはビームスプリッタ23の透過側面を画定する。ビームスプリッタ23では、ビーム分割側面と透過側面は1/4位相差フィルム23b及び偏光フィルム23cよって分離される。
【0071】
また、
図10に示すように、イメージソース100から射出された光L10がビームスプリッタ23の偏光分割フィルム23d(ビーム分割側)に入射すると、イメージソースから射出された光L10のP偏光成分L10pは、1/4位相差フィルム23bによって円偏光に変換される。円偏光がビームスプリッタ基材23a内を空気との境界面(透過側面)に伝搬すると、円偏光の一部が、ビームスプリッタ基材23a内を空気との界面まで伝搬すると、空気及び基材の媒体パラメータは、界面で明らかに互いに異なるため、円偏光のわずかな部分が1/4位相差フィルム23bに向かって界面で反射される。再び1/4位相差フィルム23bを通過すると、反射された円偏光は、偏光方向が90°変更されるため、S偏光成分に変換される。その後、S偏光成分は隣接する偏光フィルム23cで吸収される。従って、「ゴーストの干渉」が大幅に低減され得る。
図10に示す実施形態では、ビームスプリッタ23の透過側面からビーム分割側面に向かって、ビームスプリッタ基材23a、1/4位相差フィルム23b、偏光フィルム23c、偏光ビーム分割フィルム23dが、この順序で配置されている。別の実施形態では、ビームスプリッタ23の透過側面からビーム分割側面に向かって、1/4位相差フィルム、ビームスプリッタ基材、偏光フィルム及び偏光ビーム分割フィルムが、この順序で再配置され得る。別の実施形態では、ビームスプリッタ23の透過側からビーム分割側に向かって、1/4位相差フィルム、偏光フィルム、ビームスプリッタ基材、及び偏光ビーム分割フィルムが、この順序で再配置され得る。別の実施形態では、ビームスプリッタ23の透過側からビーム分割側に向かって、1/4位相差フィルム、偏光フィルム、偏光ビーム分割フィルム及びビームスプリッタ基材が、この順序で再配置され得る。別の実施形態では、ビームスプリッタ基材を省くことさえできる。
【0072】
本願の任意の実施形態によれば、拡張現実(AR)装置のための光学システムが提供され、光学システムは:
・イメージソース;
・イメージソースに隣接するビーム分割側面と、イメージソースとは反対側の透過側面と、を有するビームスプリッタ;
・ビーム分割側に隣接する波長板であって、ビームスプリッタが、イメージソースから射出さられた光がビーム分割側面に非垂直に入射し、少なくとも部分的に波長板に向かって反射し得るように配置される、波長板;及び、
反射光路で波長板の下流に配置された半反射体;
を備え、
ビームスプリッタは、イメージソースから射出された光がビーム分割側面に入射すると、偏光方向が第1の方向である偏光成分がビームスプリッタを通過して透過側面を透過し、かつ、偏光方向が第1の方向に垂直な第2の方向である偏光成分がビーム分割側面によって波長板に向かって反射するように構成され、かつ、ビームスプリッタは、光が透過側面に入射すると、偏光方向が第1の方向である光の偏光成分がビームスプリッタを通過してビーム分割側面から透過し、偏光方向が第2方向にある偏光成分はビームスプリッタで吸収されるように構成される。好ましくは、波長板は1/4波長板である。従って、イメージソースから射出されて人の目に入る光のエネルギーを増加させることができ、環境光を除いて、人の目に入る不要な光を遮断または低減することができるため、画質と鮮明度を向上させることができ、かつ、AR装置の消費電力を低減できる。
【0073】
任意選択で、ビームスプリッタは、偏光ビーム分割フィルム及び偏光フィルムを備え、偏光ビーム分割フィルムは、第1の方向に偏光された光が、偏光ビーム分割フィルムを通過し、第2の方向に偏光された光が、偏光ビーム分割フィルムによって反射されるように構成さ、偏光フィルムは、第1の方向に偏光された光が偏光フィルムを通過し、第2の方向に偏光された光が偏光フィルムに吸収されるように構成され、イメージソースから射出された光の方向で見た場合、偏光ビーム分割フィルムは、偏光フィルムの上流に配置され、ビーム分割側面を画定する。これにより、偏光方向が第2の方向にある偏光成分は、必然的に偏光ビーム分割フィルムによって反射され、その後に波長板または1/4波長板及び半反射体で処理され、次いで、人の目に入り画像化される。
【0074】
任意選択で、透過側面は、光のエネルギー利用効率を高めるように偏光フィルムによって画定される。
【0075】
任意選択で、ビームスプリッタは、ビームスプリッタの一体強度を向上させるために、偏光ビーム分割フィルムと偏光フィルムとの間に配置されたビームスプリッタ基材も備える。
【0076】
任意選択で、ビームスプリッタはまた、ビームスプリッタ基材を備え、偏光フィルムは、ビームスプリッタ基材と偏光ビーム分割フィルムとの間に配置され、透過側面は、ビームスプリッタの一体強度を向上させるためにビームスプリッタ基材によって画定される。
【0077】
任意選択で、ビームスプリッタはまた、ビームスプリッタ基材を備え、偏光ビーム分割フィルムは、ビームスプリッタ基材と偏光フィルムとの間に配置され、透過側面は、偏光フィルムによって画定され、これにより、ビームスプリッタの一体強度が改善される。
【0078】
任意選択で、ビームスプリッタはまた、位相差フィルムを備え、偏光フィルムは位相差フィルムと偏光ビーム分割フィルムとの間に配置され、「ゴーストの干渉」効果を排除して光のエネルギー利用効率を改善する。好ましくは、位相差フィルムは、1/4位相差フィルムである。
【0079】
任意選択で、ビーム分割側面は偏光ビーム分割フィルムによって画定され、透過側面は位相差フィルムによって画定、これにより、「ゴーストの干渉」効果を排除し、光のエネルギー利用効率を向上させる。
【0080】
任意選択で、ビームスプリッタはまた、ビームスプリッタ基材を備え、位相差フィルム及び偏光フィルムは、ビームスプリッタ基材と偏光ビーム分割フィルムとの間に位置し、透過フィルムは、ビームスプリッタ基材によって画定され、これにより、「ゴーストの干渉」効果排除し、かつ、ビームスプリッタ構造の一体強度を向上させる。
【0081】
任意選択で、ビームスプリッタはビームスプリッタ基材も含み、ビームスプリッタ基材と偏光フィルムは位相差フィルムと偏光ビーム分割フィルムの間に配置され、透過側は位相差フィルムによって画定され、これにより、「ゴーストの干渉」効果とビームスプリッタ構造の積分強度を向上させます。
【0082】
任意選択で、ビームスプリッタはまた、ビームスプリッタ基材を備え、偏光ビーム分割フィルムは、偏光フィルムとビームスプリッタ基材の間に配置され、これにより、「ゴーストの干渉」効果を排除して、かつ、ビームスプリッタ構造の一体強度を向上させる。
【0083】
任意選択で、イメージソースは、光を射出するための平面イメージソースを含み、ビームスプリッタのビーム分割側面が配置される平面は、イメージソースの法線に対して第1の角度にあり、第1の角度は11°~79°、好ましくは20°~70°、より好ましくは30°~60°、より好ましくは40°~55°、最も好ましくは40°~50°の値を有し、かつ/または、ビームスプリッタのビーム分割側面が位置する平面は、半反射体の光軸に対して第2の角度にあり、0<第2の角度<90°であり、第2の角度は、第1の角度-10°~第1の角度+10°である。
【0084】
任意選択で、波長板は、システム全体の体積を減らすように、半反射体と一緒に一体化されている。
【0085】
さらに、一体化により反射界面の数を減らすことができるため、光学システム全体で発生する迷光を低減したり、「ゴーストの干渉」の影響を弱めたりすることができ、光学システムのコントラストを高めることができる。
【0086】
図11は、本願の別の実施形態によるAR装置の光学システム2000Aを概略的に示す。光学システム2000Aは、一般的に、コンピュータ(図示せず)によって制御可能なイメージソース10、偏光ビームスプリッタ21、及び半反射体30を備え、1/4波長板50は、偏光ビームスプリッタ21と半反射体30との間の光路に配置される。イメージソース10、偏光ビームスプリッタ21、半反射体30及び1/4波長板50の設計は、すでに述べた内容を参照することができる。さらに、イメージソース10から射出された光がビーム分割側面によって遠位に反射される光路に沿って、二次1/4波長板70及び偏光子80が、光学システム2000Aの半反射体30の遠位に順次配置され、偏光子80は、二次1/4波長板70の遠位に配置される。円偏光を第1または第2の方向の偏光である直線偏光に変換され得るように1/4波長板が配置され、偏光子80は、直線偏光を吸収するように構成される。例えば、1/4波長板70は、円偏光をS偏光に変換するように構成することができ、偏光子80は、P偏光を通過させ、S偏光を吸収できるように構成され得る。繰り返すが例えば、1/4波長板70は、円偏光をP偏光に変換するように構成され得、偏光子80は、S偏光を通過させ、P偏光を吸収できるように構成され得る。1/4波長板70の異常な軸または通常の軸は、軸が、偏光子80を通過する偏光の偏光方向に対してある角度になり得るように構成され、その角度は30度~60°の間である。好ましくは、4分の1波長板70の異常軸または通常軸は、軸が偏光子80を通過する偏光の偏光方向に対して45度の角度になるように構成される。1/4波長板70の異常な軸または通常の軸は、軸が偏光子80を通過する偏光の偏光方向に対してある角度になり得るように構成され、その角度は30°~60°である。好ましくは、4分の1波長板70の異常軸または通常軸は、軸が偏光子80を通過する偏光の偏光方向に対して45度の角度になるように構成される。
【0087】
図11に示すように、イメージソース10から射出された光L10が偏光ビームスプリッタ21を通過すると、イメージソースから射出された光L10のP偏光成分L10pが透過し、イメージソースから射出された光L10のS偏光成分L10sは、半反射体30または1/4波長板50に向かって反射される。1/4波長板50を通過する際、S偏光成分L10sは円偏光(または楕円偏光)に変換される。続いて、円偏光された光(または楕円偏光された光)は、半反射体30によって部分的に反射され、半反射体30を部分的に透過する。円偏光の場合、透過した円偏光は、1/4波長板70を通過すると、S偏光(またはP偏光)に変換され得、次いでS偏光(またはP偏光)を吸収するように構成された偏光子80に入射する。光)及びP偏光(またはS偏光)が透過することを可能にし、偏光子80によって吸収される。このようにして、イメージソースから射出された光L10はAR装置から出ることはできない。楕円偏光された光の場合、透過された楕円偏光された光のほとんどが吸収されて、AR装置の外に漏れることが防止される。AR装置のプライバシーと使用者の双方向性を向上させることができる。これは、S偏光(またはP偏光)を吸収し、P偏光(またはS偏光)がそこを透過することを可能にするように構成され、偏光子80によって吸収される。これにより、イメージソースから射出された光L10がAR装置から出て行くことができないか、または少ない。楕円偏光の場合、透過した楕円偏光の大部分は吸収されて、AR装置からの漏れを防止される。AR装置のプライバシーと使用者の双方向性を向上させることができる。これは、S偏光(またはP偏光)を吸収し、P偏光(またはS偏光)がそこを透過することを可能にするように構成され、偏光子80によって吸収される。イメージソースから射出された光L10がAR装置から出て行くことができないか、または少ない。楕円偏光された光の場合、透過された楕円偏光された光の大部分は吸収され、これにより、AR装置からの漏れを防止する。AR装置の機密性と使用者のインタラクティビティを向上させることができる。
【0088】
任意の実施形態では、波長板70は、それらを通過する光が透過または反射され得る界面の数を減らすために、偏光子80に接着される。これにより、光の利用効率を高めることができる。
【0089】
半反射体30が湾曲半反射体である場合、横方向における波長板70及び偏光子80の形状は、半反射体の湾曲形状に従う。本願の文脈では、横方向は一般的に、AR装置の使用者の額方向を指す。従って、「ゴースト」の悪影響を低減し、画質を向上させることができる。任意選択で、追加の波長板及び追加の偏光子が、半反射体の湾曲した形状に追従するように、横方向にほぼ垂直な縦方向に形状化される。任意選択で、半反射板は湾曲した半反射板であり、これにより、追加の波長板と追加の偏光子は、「ゴーストの干渉」を低減できる最適な効果を達成するように半反射板の湾曲した形状に実質的に追従するように成形される。
【0090】
追加的なの実施形態では、光学システムはまた、追加の偏光子の遠位に配置された透明保護シートを備える。波長板70及び偏光子80は、半反射体30と透明保護シートとの間に配置され、これにより、環境光が透明保護シートに入り、半反射体30の遠位面で反射されることによって引き起こされる「ゴースト」の悪影響が軽減される。さらに、光学素子の性能により偏光子80から光が漏れた場合に、漏れ出した光が透明保護シートで反射することによる「ゴースト」の悪影響も低減できる。透明保護シートは、光エネルギー減衰シート、フォトクロミックシートまたはエレクトロクロミックシートであり得る。
【0091】
図12は、本願の一実施形態による半反射体30’を概略的に示す断面図である。半反射体30’は、透明基材31と、透明基材31の近位面上に適用された半反射フィルム32と、を備える。さらに、半反射体30’はまた、1/4位相差フィルム70’と偏光フィルム80’とを備え、これらはこの順序で基材31の遠位面上に適用される。1/4位相差フィルム70’及び偏光フィルム80’は、それぞれ1/4波長板70及び偏光子80と同様に構成される。従って、半反射体30’自体が1/4位相差フィルム70’及び偏光フィルム80’と一体化しているため、光学システムをさらに削減し得る。一方、反射界面の数を減らすことで、光学システム全体に現れる迷光をなくし、光学システムのコントラストを上げることができる。
【0092】
任意選択で、
図13は、本願の別の実施形態による半反射体30’’を概略的に示す断面図である。半反射体30’’は、透明基材31と、透明基材31の遠位面上に適用された半反射フィルム32と、を備える。さらに、半反射体30’’はま
た、半反射体
フィルム32の上にこの順序で適用される
1/4位相差フィルム70’’と、偏光フィルム80’’と、を備える。1/4位相差フィルム70’’及び偏光フィルム80’’は、それぞれ1/4波長板70及び偏光子80と同様に構成される。
【0093】
半反射体30’または半反射体30’’が前述の光学システム(
図2)で代替的に使用されている場合、S偏光成分L10sは、ビームスプリッタのビーム分割側面で反射される際に、1/4波長板50によって円偏光に変換される。この円偏光が半反射体30’または30’’に入射すると、半反射フィルム32を透過した円偏光の光成分、または、半反射フィルム32で直接反射されたもの以外の円偏光の光成分は、
図11に示される原理に従って直線偏光に変換され、その後吸収される。従って、イメージソース10から射出された光がAR装置の外に漏れることが防止される。これにより、AR装置の機密性と使用者のインタラクティビティを向上させることができる。
【0094】
別の実施形態では、半反射体31’の基材31は、1/4波長板70の形態で形成され得る。従って、1/4位相差フィルム70’は省くことができる。
【0095】
本願の任意の実施形態によれば、AR装置用の光学システムが提供され、この光学システムは:
イメージソース; 及び、
偏光ビームスプリッタであって、偏光ビームスプリッタは、イメージソースに隣接するビーム分割側面と、イメージソースとは反対側の透過側面と、を含み、偏光ビームスプリッタは、イメージソースから射出される光が、ビーム分割側面に非垂直に入射し、少なくとも部分的に反射することができ、偏光ビームスプリッタは、光がビーム分割側面に入射すると、偏光方向が第1の方向である偏光成分が、偏光ビームスプリッタを通過して透過側面を透過し、かつ、偏光方向が第1の方向に垂直な第2の方向である偏光成分は、ビーム分割側面で反射されるように構成された、偏光ビームスプリッタ;
を備え、
光学システムはまた、イメージソースと偏光ビームスプリッタのビーム分割側面との間に配置された偏光子を備え、偏光子は、第2の方向に偏光された光がそこを透過し、かつ、第1の方向に偏光された光が吸収され得るように構成される。
【0096】
偏光子を設けることにより、イメージソースから射出さられた光が偏光ビームスプリッタで反射されずに人の目で視認される可能性を低減または排除し、これにより、装置を使用する使用者の快適性が向上され得る。
【0097】
任意選択で、偏光子は、第2の方向に偏光された光がイメージソースから出ることができるようにイメージソース内に一体化される。これにより、光学システムの体積を小さくでき、装置のコンパクト化を図ることができる。さらに、反射界面の数を減らすことができるので、光学システム全体の迷光を減らすことができ、または「ゴースト」の影響を弱めることができ、従って、光学システムのコントラストを高めることができる。
【0098】
任意選択で、光学システムはまた、ビーム分割側面に隣接する波長板を備え、イメージソースから射出された光は、ビーム分割側面によって波長板に向かって部分的に反射され得る。また、光学システムは、反射光の光路において波長板の下流に配置された半反射体を備え、波長板は、好ましくは、1/4波長板である。これにより、光学システムの光エネルギー利用効率を向上させることができ、AR装置の消費電力を低減することができる。
【0099】
任意選択で、波長板は、半反射体の近位面上に適用される位相差フィルムである。従って、光学システムの体積を小さくでき、装置のコンパクト化を図ることができる。さらに、反射界面の数を減らすことができるので、光学システム全体の迷光を減らすことができ、または「ゴースト」の影響を弱めることができ、従って、光学システムのコントラストを高めることができる。
【0100】
任意選択で、偏光子は、反射光の光路が影響を受けることができず、従って、人間の目での最終的な撮像結果が影響を受けないような方法で配置される。
【0101】
任意選択で、イメージソースは、光を射出するように制御還付なイメージソースと、射出光を集束させるためのレンズと、を備え、偏光子が、イメージソースとレンズとの間に配置される。
【0102】
任意選択で、イメージソース、偏光子、レンズが互いに接着される、または、代わりに、偏光子がイメージソース及びレンズのいずれかに接着される。一緒に接着することによって、光学要素間の反射界面の数を減らすことができるため、光エネルギーの損失を減らすことができ、迷光の影響を排除または弱めることができ、画質を向上させることができる。
【0103】
任意選択で、偏光子は偏光フィルムである。
【0104】
任意選択で、イメージソースは、光を射出するように制御可能なイメージソースと、射出光を集束させるためのレンズと、を備え、レンズは、イメージソースと偏光子との間に配置される。
【0105】
任意選択で、偏光子は、レンズの表面上に適用された偏光フィルムである。
【0106】
任意選択で、イメージソースは、イメージソースとレンズとの間に配置された整合レンズも含み、偏光子は、イメージソースと整合レンズとの間、または整合レンズとレンズとの間に配置される。
【0107】
任意選択で、イメージソース、整合レンズ、偏光子、及び、レンズが一緒に接着される、または、代わりに、偏光子がイメージソース、マッチングレンズ、レンズのいずれかに接着されます。
【0108】
任意選択で、偏光子は偏光フィルムである。
【0109】
任意選択で、イメージソースはまた、イメージソースとレンズとの間に整合レンズを備える。
【0110】
任意選択で、光学システムはまた、半反射体の遠位に順次配置される追加の波長板と追加の偏光子も備え、追加の波長板は、円偏光が追加の波長板に入射すると、直線偏光された光がそこから出ることが可能であり、追加の偏光子が、出てきた直線偏光された光を吸収するように構成され、追加の波長板は、追加の1/4波長板であることが好ましい。これにより、イメージソースから射出された光がAR装置の半反射体から発射する可能性が排除または低減され、AR装置の機密性及び使用者のインタラクティビティを改善することができる。一方、反射板を透過した光が保護レンズで部分的に反射され、最終的に人の目に入ることによる迷光や「ゴースト」の影響を排除または低減することができる。
【0111】
任意選択で、追加の波長板と追加の偏光子とが一緒に接着される。
【0112】
任意選択で、半反射体は、湾曲した半反射体であり、追加の波長板及び追加の偏光子は、半反射体の湾曲した形状に実質的に追従ように横方向に形状化される。
【0113】
任意選択で、半反射体は湾曲半反射体であり、追加の波長板及び追加の偏光子は、半反射体の湾曲形状に実質的に追従するように横方向に実質的に垂直な縦方向に形状化される。
【0114】
任意選択で、半反射体は、湾曲した半反射体であり、追加の波長板及び追加の偏光子は、半反射体の湾曲した形状に実質的に追従するように形状化される。
【0115】
任意選択で、光学システムはまた、追加の偏光子の遠位に配置された透明保護シートを備え、透明保護シートは、好ましくは、光エネルギー減衰シート、フォトクロミックシートまたはエレクトロクロミックシートである。この場合、追加の波長板及び追加の偏光子は、「ゴーストの干渉」の悪影響を排除または弱めるように設計されており、半反射体からの光によって生じる迷光は、透明保護シートによって反射され、最終的に人の目に入る。
【0116】
任意選択で、追加の波長板は、円偏光が入射すると、偏光方向が第1方向である偏光成分が透過できるように構成され、追加の偏光子は、偏光方向が第1方向である偏光成分が吸収され得るように構成される
【0117】
任意選択で、追加の波長板は、円偏光が入射すると、偏光方向が第2方向である偏光成分が透過できるように構成され、追加の偏光子は、偏光方向が第2の方向である偏光成分が吸収され得るように構成される。
【0118】
任意選択で、半反射体は、透明基材と、基材の表面上に適用される半反射フィルムと、を備える。
【0119】
任意選択で、追加の波長板及び/または追加の偏光子は、半反射体上に一体化された追加の位相差フィルム及び/または追加の偏光フィルムであり、追加の位相差フィルムは、追加の1/4位相差フィルムであることが好ましい。従って、光学システムの体積が小さくなり、AR装置をよりコンパクトにすることができる。さらに、光の反射が発生する可能性のある干渉の数を減らすことができるため、光学システム全体の迷光を減らすことができ、「ゴースト」の影響を弱め、光学システムのコントラストを向上させることができる。
【0120】
任意選択で、基材の表面は基材の近位面であり、追加の位相差フィルムは基材の遠位面上に適用され、かつ/または、追加の偏光フィルムは追加の位相差フィルムの遠位面上に適用される。
【0121】
任意選択で、基材の表面は基材の遠位面であり、追加の位相差フィルムは基材の遠位面上に適用され、かつ/または、追加の偏光フィルムは追加の位相差フィルムの遠位面上に適用される。
【0122】
本願の別の任意の実施形態によれば、AR装置用の光学システムが提供され、この光学システムは:
イメージソース;
偏光ビームスプリッタであって、偏光ビームスプリッタは、イメージソースに隣接するビーム分割側面と、イメージソースとは反対側の透過側面と、を含む、偏光ビームスプリッタ;
ビーム分割側に隣接する第1の波長板であって、偏光ビームスプリッタは、イメージソースから射出された光が非垂直にビーム分割側面に入射し、第1の波長に向けて少なくとも部分的に反射されるように配置されている、第1の波長板; 及び、
反射光の光路において第1の波長板の下流に位置する半反射体であって、偏光ビームスプリッタは、イメージソースから射出された光がビーム分割側面に入射する際、偏光ビームスプリッタは、偏光方向が第1方向である光成分は、偏光ビームスプリッタを通過して透過側面を透過し、偏光方向が第1方向に垂直な第2方向である偏光成分は、第1の波長板に向かってビーム分割側面によって反射されるように構成される、半反射体;
を備え、
光学システムはまた、
半反射体の遠位に順次配置された第2の波長板及び偏光子を備え、第2の波長板は、円偏光がそこに入射すると、直線偏光がそこから透過できるように配置され、偏光子は、透過した直線偏光を吸収するように構成され、第1の波長板及び/または第2の波長板は、好ましくは1/4波長板である。これにより、イメージソースから射出された光がAR装置の半反射体から出る可能性が排除または低減され、これにより気密性及び使用者のインタラクティビティが改善され得る。
【0123】
任意選択で、第2波長板は偏光子と一緒に接着さる。
【0124】
任意選択で、半反射体は、湾曲した半反射体であり、第2の波長板及び偏光子は、半反射体の湾曲した形状に実質的に追従するように横方向に形状化される。
【0125】
任意選択で、半反射体は湾曲した半反射体であり、第2の波長板及び偏光子は、半反射体の湾曲形状に実質的に追従するように横方向に実質的に垂直な縦方向に形状化される。
【0126】
任意選択で、半反射体は、湾曲した半反射体であり、追加の波長板及び追加の偏光子は、半反射体の湾曲した形状に実質的に追従するように形状化される。
【0127】
任意選択で、光学システムはまた、偏光子の遠位に配置された透明保護シートも備え、透明保護シートは、好ましくは、光エネルギー減衰シート、フォトクロミックシートまたはエレクトロクロミックシートである。
【0128】
任意選択で、第1の波長板は、半反射体の近位面上に適用されている第1の位相差フィルムである。
【0129】
任意選択で、第2の波長板は、円偏光が入射すると、第1の方向に偏光された光がそこを透過できるように構成され、偏光子は、第1の方向に偏光された光を吸収するように構成される。
【0130】
任意選択で、第2の波長板は、円偏光が入射すると、第2の方向に偏光された光がそこを透過できるように構成され、偏光子は、第2の方向に偏光された光を吸収するように構成される。
【0131】
任意選択で、半反射体は、透明基材と、基材の表面上に適用される半反射フィルムと、を備える。
【0132】
任意選択で、第2の波長板及び/または偏光子は、半反射体上に一体化された第2の位相差フィルム及び/または偏光フィルムである。このような一体化により、反射界面の数が減り、光学システム全体の迷光を減らしたり、「ゴースト」の影響を排除したりして、光学システムのコントラストを改善できる。
【0133】
任意選択で、基材の表面はその近位面であり、第2の位相差フィルムは基材の遠位面上に適用され、かつ/または、偏光フィルムは第2の位相差フィルムの遠位面上に適用される。
【0134】
任意選択で、基材の表面はその遠位面であり、第2の位相差フィルムは半反射フィルムの遠位面上に適用され、及び/または偏光フィルムは第2の位相差フィルムの遠位面上に適用される。
【0135】
本願の文脈では、様々な実施形態が互いに任意に組み合わせされ得る。本願のいくつかの具体的な実施形態がここで説明されたが、それらは説明の目的のためだけに与えられ、決して本願の範囲を制約するものと見なされない。本願の精神及び範囲から離れることなく、様々な置換、修正、及び代替が企図され得る。
【符号の説明】
【0136】
10 光学システム
10 イメージソース
12 イメージソース
14 ビーム成形要素
16 中間整合部
18 シールフレーム
20 ビームスプリッタ
21 ビームスプリッタ
22 ビームスプリッタ
23 ビームスプリッタ
30 半反射体
30’ 半反射体
30’’ 半反射体
31 透明基材
31’ 半反射体
31’’ 半反射体
32 半反射フィルム
40 目
50 波長板
70 波長板
70’ 位相差フィルム
70’’ 位相差フィルム
80 偏光子
80’ 偏光フィルム
80’’ 偏光フィルム
100 イメージソース
300 半反射体
301 透明基材
302 半反射フィルム
303 反射防止フィルム
310 半反射体
400 半反射体
401 波長板
402 半反射フィルム
1000 光学システム
2000 光学システム