(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】学習誘導装置、及び学習誘導装置使用方法
(51)【国際特許分類】
G09B 19/00 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
G09B19/00 Z
(21)【出願番号】P 2023091293
(22)【出願日】2023-06-02
【審査請求日】2023-06-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519300770
【氏名又は名称】尾崎 昭雄
(74)【代理人】
【識別番号】100205523
【氏名又は名称】木村 浩也
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 昭雄
【審査官】宮本 昭彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-075266(JP,A)
【文献】特開2009-059677(JP,A)
【文献】特開2015-008037(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 1/00 - 9/56
G09B 17/00 - 19/26
A61M 21/00
A61H 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習をする際に集中できる環境へ誘導するための装置であって、
一列に配された3以上の光源部を有する左光源列部と、
前記左光源列部と同一形状である右光源列部と、
前記左光源列部の端部と前記右光源列部の端部と接続する接続部と、
を備え、
前記左光源列部と前記右光源列部の前記接続部が成す角度は鋭角であり、
前記左光源列部及び前記右光源列部の接続部から1番距離を有する前記左光源列部及び前記右光源列部の第1光源部が点灯し、消灯する第1ステップと、
前記第1ステップ後、前記第1光源部の隣であって、未点灯の光源部が点灯し、消灯する第2ステップと、
前記第2ステップ後、前記第2ステップで点灯した光源部の隣であって、未点灯の光源部が点灯し、消灯する第3ステップと、
前記第3ステップが、前記接続部上に配置された前記左光源列部及び前記右光源列部の最終光源部が点灯し、消灯するまで繰り返し続く第4ステップと、
前記第4ステップ後、前記左光源列部及び前記右光源列部の前記接続部上に配置された前記左光源列部及び前記右光源列部の最終光源部が点灯し、消灯する第5ステップと、
前記第5ステップ後、前記最終光源部の隣の光源部が点灯し、消灯する第6ステップと、
前記第6ステップ後、前記第6ステップで点灯した光源部の隣であって、前記第4ステップ以降未点灯の光源部が点灯し、消灯する第7ステップと、
前記第7ステップが、前記左光源列部及び前記右光源列部の接続部から1番距離を有する前記左光源列部及び前記右光源列部の第1光源部が点灯し、消灯するまで繰り返し続く第8ステップ、
を行わせるプログラムを組み込んだことを特徴とする学習誘導装置。
【請求項2】
請求項1の学習誘導装置であって、
前記左光源列部及び前記右光源列部の光源部の数が合計29であり、
請求項1のプログラムに、前記第1ステップから前記第3ステップすべてが終了する時間が2秒間であり、前記第3ステップすべてが終了した1秒後に前記第4ステップが開始し、前記第4ステップから前記第6ステップすべてが終了する時間が4秒間である、
という動作ステップを行わせるプログラムを追加して組み込んだことを特徴とする学習誘導装置。
【請求項3】
請求項2の学習誘導装置であって、
1秒ごと間隔をおいて請求項2の動作ステップを繰り返す、
という動作ステップを行わせるプログラムを追加して組み込んだことを特徴とする学習誘導装置。
【請求項4】
着座する椅子の前に、請求項3の学習誘導装置の前記接続部を上側、前記左光源列部及び前記右光源列部の第1光源部を下側に固定し、請求項3の学習誘導装置
に組み込まれたプログラムの動作ステップを起動する、
ことを特徴とする学習誘導装置使用方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
本発明は、心理学を応用して、学習時間中に呼吸で心の落ち着いた状態を作り出し、眼球運動で学習に集中できる環境へ誘導する装置、及びその使用方法に関する。
【0002】
近年、認知脳の研究に加え、社会脳と呼ばれる新しい研究分野が急速に拓かれつつある。
【0003】
社会脳と認知脳の注意リソースはシーソーのバランスの関係にあり、学習中(認知脳)の注意を強化するには、社会脳の注意を抑制する必要がある。つまり、学習者が学習と関係のないことを思い浮かべ(マインドワンダリング)注意リソースを消費してしまうからである。これを予防するためには、呼吸を整え、心を落ち着いた状態に整え、社会脳の注意を抑制することが有効である
【0004】
他方、学習中の注意に注目すると、感覚器官である目の動き(眼球運動)が大きく関与する。腹式呼吸と眼球運動を組み合わせることで学習時の注意環境が整うこととなる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】社会脳ネットワーク入門:苧阪直行・越野英哉著(新曜社)
【文献】神経・生理心理学:早川友恵・田邉宏樹著(講談社)
【文献】クオリア入門:茂木健一郎著(ちくま学芸文庫)
【文献】ディスレクシア入門:加藤醇子著(日本評論社)
【文献】APDがわかる本:小渕千絵(講談社)
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2005-266729号公報
【文献】実用新案登録3224072号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1乃至5に記載の通り、上記の脳に関する研究結果は記載されているものの、それを補助する器具についての記載はなく、文献で理屈を説明するのみでは、学習の集中を増すことは容易ではない。
【0008】
特許文献1の発明は、学習補助具であって、集音と視野の制限をすることにより、集中力や記憶力を高められる機能的かつ効果的な学習補助を提供すると記載されている。
【0009】
また、特許文献2の考案は、学習に集中する学習部屋の構造であって、3つの光反転オブジェ群と、天井から紐状の接続具で吊り下げられた円筒形オブジェ等を備えることが記載されている。
【0010】
特許文献1、及び2のような発明は、外部の刺激を遮断したり、集中するための物品を用意、配置するなどして、学習への誘導を行うものであったが、眼球運動を意識したものではなく、集中には工夫が必要であった。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、請求項1記載の発明は、学習をする際に集中できる環境へ誘導するための装置であって、一列に配された3以上の光源部を有する左光源列部と、前記左光源列部と同一形状である右光源列部と、前記左光源列部の端部と前記右光源列部の端部と接続する接続部と、を備え、前記左光源列部と前記右光源列部の前記接続部が成す角度は鋭角であり、前記左光源列部及び前記右光源列部の接続部から1番距離を有する前記左光源列部及び前記右光源列部の第1光源部が点灯し、消灯する第1ステップと、前記第1ステップ後、前記第1光源部の隣であって、未点灯の光源部が点灯し、消灯する第2ステップと、前記第2ステップ後、前記第2ステップで点灯した光源部の隣であって、未点灯の光源部が点灯し、消灯する第3ステップと、 前記第3ステップが、前記接続部上に配置された前記左光源列部及び前記右光源列部の最終光源部が点灯し、消灯するまで繰り返し続く第4ステップと、前記第4ステップ後、前記左光源列部及び前記右光源列部の前記接続部上に配置された前記左光源列部及び前記右光源列部の最終光源部が点灯し、消灯する第5ステップと、前記第5ステップ後、前記最終光源部の隣の光源部が点灯し、消灯する第6ステップと、前記第6ステップ後、前記第6ステップで点灯した光源部の隣であって、前記第4ステップ以降未点灯の光源部が点灯し、消灯する第7ステップと、前記第7ステップが、前記左光源列部及び前記右光源列部の接続部から1番距離を有する前記左光源列部及び前記右光源列部の第1光源部が点灯し、消灯するまで繰り返し続く第8ステップ、を行わせるプログラムを組み込んだことを特徴としている。
【0012】
請求項2の発明は、請求項1の学習誘導装置であって、前記左光源列部及び前記右光源列部の光源部の数が合計29であり、請求項1のプログラムに、前記第1ステップから前記第3ステップすべてが終了する時間が2秒間であり、前記第3ステップすべてが終了した1秒後に前記第4ステップが開始し、前記第4ステップから前記第6ステップすべてが終了する時間が4秒間である、という動作ステップを行わせるプログラムを追加して組み込んだことを特徴としている。
【0013】
請求項3の発明は、請求項2の学習誘導装置であって、
1秒ごと間隔をおいて請求項2の動作ステップを繰り返す、
という動作ステップを行わせるプログラムを追加して組み込んだことを特徴としている。
【0014】
請求項4の発明は、着座する椅子の前に、請求項3の学習誘導装置の前記接続部を上側、前記左光源列部及び前記右光源列部の第1光源部を下側に固定し、請求項3の学習誘導装置に組み込まれたプログラムの動作ステップを起動することを特徴としている。
【0015】
請求項1の発明によって、注意力を高める状態へ移行するサポートが可能となる。
【0016】
請求項2の発明によって、より注意力を高める状態へ移行するサポートが可能となる。
【0017】
請求項3の発明によって、さらに注意力を高める状態へ移行するサポートが可能となる。
【0018】
請求項4の発明によって、学習前に注意力を高めた状態に移行することが可能となる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、椅子に座り、請求項1乃至請求項3のいずれかの記載の学習誘導装置を用いることによって、呼吸と眼球運動を同期させることが可能となり、注意力を高め学習が継続できる状態を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】本発明の実施形態に係る学習誘導装置の全体図である
【
図2】本発明の実施形態に係る学習誘導装置の使用方法を示す図である
【
図3】本発明の実施形態に係る学習誘導装置の動作ステップS2を示す図である
【
図4】本発明の実施形態に係る学習誘導装置の動作ステップS3を示す図である
【
図5】本発明の実施形態に係る学習誘導装置の動作ステップS4を示す図である
【
図6】本発明の実施形態に係る学習誘導装置の動作ステップS5を示す図である
【
図7】本発明の実施形態に係る学習誘導装置の動作ステップS6を示す図である
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。また、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、様々な変形が可能である。さらに、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0022】
図1は、本発明の実施形態に係る学習誘導装置1の全体図である。図示のとおり学習誘導装置1は、左光源列部11、右光源列部16及び左光源列部11と右光源列部16を接続する接続部20から成る。接続部20の上部には図示の通り円形の集中点部30を設けても良い。
【0023】
図示の通り、左光源列部11は、発光する第一光源部111乃至最終光源部125を備える。図示では光源部を15備えているが(最終光源部125は後述する右光源列部16上の最終光源部175と同一、又は重なっても良い)、3つ以上であれば数は問わない。集中力を増すことを考慮すると、光源部の数は14又は15であることが好ましい。第一光源部111乃至最終光源部125は、図示の通り1列に配している。
【0024】
第一光源部111乃至最終光源部125は通電することによって、発光する。第一光源部111乃至最終光源部125は発光ダイオードでも良いし、豆電球でも良いし発光すれば物品は問わないが、輝度と消費電力を考慮した場合は、発光ダイオード(LED)テープであることが好ましい。
【0025】
第一光源部111乃至最終光源部125は、通電することで発光するため、電源と接続されており、発光するタイミングは後述する動作を行うようにプログラミングされている。
【0026】
図示の通り、右光源列部16は、左光源列部11と同様の形状で、発光する第一光源部161乃至最終光源部175を備える。図示では光源部を15備えているが、3つ以上であれば数は問わない。集中力を増すことを考慮すると、光源部の数は15又は14であることが好ましく、左光源列部11の光源部の数と合わせると、29であることがさらに好ましい。第一光源部161乃至最終光源部175は、図示の通り1列に配している。
【0027】
第一光源部161乃至最終光源部175は通電することによって、発光する。第一光源部161乃至最終光源部175は発光ダイオードでも良いし、豆電球でも良いし発光すれば物品は問わないが、輝度と消費電力を考慮した場合は、発光ダイオード(LED)テープであることが好ましい。
【0028】
第一光源部161乃至最終光源部175は、通電することで発光するため、電源と接続されており、発光するタイミングは後述する動作を行うようにプログラミングされている。
【0029】
左光源列部11と右光源列部16は、端部を接続部20で接続されており、左光源列部11と右光源列部16とが成す角度Rは、鋭角である。集中力を増すことを考慮すると、角度Rは60度乃至90度が好ましい。
【0030】
集中点部30は、集中部31を中心に備え、学習者Mの一時的に視点を集めるために用いる。集中部31は集中できるように、蛍光色など、注目される色であることが好ましい。
【0031】
<実施形態>
次に
図2乃至
図7を用いて、椅子に座って当発明である学習誘導装置1を使用する形態について説明する。
図2は、本発明の実施形態に係る学習誘導装置の使用方法を示す図、
図3乃至
図7は、本発明の実施形態に係る学習誘導装置の動作ステップS2乃至S6を示す図である
【0032】
(ステップS1)
まず
図2のように人が椅子に座る。ボード5やスタンド6を用いることによって、学習誘導装置1を学習者Mの正面に設置する。学習者Mは、学習誘導装置1の集中点部30の集中部31を凝視する。
【0033】
(ステップS2)
初めに、学習誘導装置1の動作をスタートさせる。学習誘導装置1の動作はプログラミング等によってコントロールされ、
図3に示す通り、初めに左光源列部11及び前記右光源列部16の接続部20から1番距離を有する左光源列部11の第一光源部111、及び右光源列部16の第一光源部161が点灯する
【0034】
(ステップS3)
次に、
図4に示す通り、第一光源部111及び第一光源部161が消灯直後、第一光源部111及び第一光源部161の隣であって、未点灯の第二光源部112及び第ニ光源部162が点灯する。
【0035】
(ステップS4)
第二光源部112及び第ニ光源部162が消灯後、さらに隣であって未点灯の第三光源部113及び第三光源部163が点灯し、第三光源部113及び第三光源部163消灯する、という動作を、
図5に示す通り、第一光源部111及び第一光源部161から始まり、左光源列部11及び右光源列部16の接続部20から1番距離が近い第十四光源部124及び第十四光源部174が点灯及び消灯するまで続き、接続部20上の最終光源部175(125)が点灯及び消灯する。
【0036】
(ステップS5)
次に、
図6に示す通り、最終光源部175(125)が消灯直後、最終光源部175(125)の隣であって、未点灯の第十四光源部124及び第十四光源部174が点灯する。
【0037】
(ステップS6)
第十四光源部124及び第十四光源部174が、さらに隣であって未点灯の第十三光源部123及び第十三光源部173が点灯し、第十三光源部123及び第十三光源部173消灯する、という動作を、
図7に示す通り、最終光源部175(125)から始まり、左光源列部11及び右光源列部16の接続部から1番距離が遠い第一光源部111及び第一光源部161が点灯及び消灯するまで続く。
【0038】
上記のステップS2乃至ステップS6の動作を繰り返すことによって、光が、学習誘導装置1の第一光源部111及び第一光源部161から接続部20に近い最終光源部175(125)へ向け移動、続いて光が、最終光源部175(125)から接続部20より一番距離を有する第一光源部111及び第一光源部161へ、学習者Mの目で光を追いかけることによって、学習者Mは、安定した眼球運動が出来るようになり、結果、右目、左目から入った情報をそれぞれ重ね合わせた像を認識する両眼視機能を高めることが可能となる。
【0039】
また、上記ステップS2乃至ステップS4に要する時間は2秒、ステップS4乃至ステップS5に要する時間は1秒、及びステップS5乃至ステップS6に要する時間は4秒であることが好ましい。さらにステップS6からステップS2に戻る際の時間は1秒間であることが好ましい。これは、学習誘導装置1の第一光源部111及び第一光源部161から接続部20に近い最終光源部175(125)へ光が向け移動する際に学習者Mの目で光を追いかけるとき合わせて、鼻から息を吸い込み、続いて最終光源部175(125)から接続部20より一番距離を有する第一光源部111及び第一光源部161へ光が移動する際に息をゆっくり吐き出すことを繰り返すことによって、安定した腹式呼吸が出来るようになり、心が落ち着いた状態へ移行が容易となる。
【符号の説明】
【0040】
M 学習者
1 学習誘導装置
5 ボード
6 スタンド
11 左光源列部
16 右光源列部
20 接続部
30 集中点部
31 集中部
111 第一光源部
112 第ニ光源部
113 第三光源部
114 第四光源部
115 第五光源部
116 第六光源部
117 第七光源部
118 第八光源部
119 第九光源部
120 第十光源部
121 第十一光源部
122 第十二光源部
123 第十三光源部
124 第十四光源部
125 最終光源部
161 第一光源部
162 第ニ光源部
163 第三光源部
164 第四光源部
165 第五光源部
166 第六光源部
167 第七光源部
168 第八光源部
169 第九光源部
170 第十光源部
171 第十一光源部
172 第十二光源部
173 第十三光源部
174 第十四光源部
175 最終光源部
【要約】
【課題】従来の学習誘導装置は、外部の刺激を遮断したり、集中するための物品を用意、配置するなどして、学習への誘導を行うものであったが、眼球運動を意識したものではなく、集中には工夫が必要であった。
【解決手段】上記課題を解決するために、一列に配された3以上の光源部を有する左光源列部と、前記左光源列部と同一形状である右光源列部と、前記左光源列部の端部と前記右光源列部の端部と接続する接続部と、を備え、前記左光源列部と前記右光源列部の前記接続部が成す角度は鋭角であることを特徴とする学習誘導装置を用いて、光源を移動させることによって、容易に呼吸と眼球運動を同期させることが可能となり、注意力を高めた状態で学習の継続を提供することができる。
【選択図】
図2