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特許7329228建物の壁表面に吹き付けるためのシステム及びその方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】建物の壁表面に吹き付けるためのシステム及びその方法
(51)【国際特許分類】
   B25J 13/08 20060101AFI20230810BHJP
   B05B 12/00 20180101ALI20230810BHJP
   B05B 13/04 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
B25J13/08 A
B05B12/00 A
B05B13/04
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2018188289
(22)【出願日】2018-10-03
(65)【公開番号】P2019093542
(43)【公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-09-17
(31)【優先権主張番号】10201709756X
(32)【優先日】2017-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SG
(73)【特許権者】
【識別番号】518228769
【氏名又は名称】エリド テクノロジー インターナショナル ピーティーイー エルティーディー
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】リム,フイ エング
【審査官】杉山 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-030476(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0282202(US,A1)
【文献】特開昭63-176296(JP,A)
【文献】特開昭62-279861(JP,A)
【文献】実開昭63-181472(JP,U)
【文献】米国特許第03347339(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25J 1/00 ~ 21/02
B05B 12/00 ~ 13/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物の壁に吹き付けるための自動化システムであって、
建物上に搭載されたゴンドラを備えるキャリアであって、前記ゴンドラは、前記壁に対向する関係で配設された複数の吸引カップを備え、前記吸引カップは、前記キャリアを位置決めするために前記建物の壁に動作上付着するように構成される、キャリアと、
前記キャリア上に搭載されたロボット機構であって、エンドエフェクタを更に有し、前記エンドエフェクタは前記エンドエフェクタ上でスプレーノズルを支持するように適合される、ロボット機構と、
前記壁の構造特徴及びプロファイルをスキャンするように構成される視覚モニタリングシステムと、
前記視覚モニタリングシステム及び前記ロボット機構と通信状態で配設されたコンピューティングデバイスであって、前記視覚モニタリングシステムから前記壁の前記スキャン済み構造特徴及びプロファイルを受信するように構成される、コンピューティングデバイスと、
前記コンピューティングデバイスに通信可能に結合されるコントローラであって、前記壁の前記スキャン済み構造特徴及びプロファイルに従って前記ロボット機構及び前記スプレーノズルのそれぞれの1つの動作を独立に制御するように構成される、コントローラとを備え
前記キャリアの下に配設され、接続バーを通して前記キャリアに移動可能に接続する安定化器プラットフォーム、及び、前記接続バーに沿って前記キャリアに対して前記安定化器プラットフォームを動作可能に位置決めするように適合されるドライブシステムと、
前記安定化器プラットフォーム上に設置された2次吸引機構であって、前記建物の壁に付着するように別個に制御される、2次吸引機構とを備え、
動作上、前記安定化器プラットフォームが前記キャリアに対して移動しているとき、前記吸引カップまたは前記2次吸引機構の少なくともいずれか一方は、前記建物の壁に付着する、システム。
【請求項2】
前記キャリア上に位置し、前記建物の高さに関して水平に配設されたリニアトラックを更に備え、前記ロボット機構は前記リニアトラック上に摺動可能に搭載される、請求項に記載のシステム。
【請求項3】
前記キャリア上に配設された2方向トラックを更に備え、前記ロボット機構は前記2方向トラック上に摺動可能に搭載され、前記2方向トラックは、少なくとも2つの軸移動を含み、前記少なくとも2つの軸移動は、前記ロボット機構が前記2つの軸移動にわたって摺動することを可能にする、請求項に記載のシステム。
【請求項4】
前記吸引カップは、各リニアアクチュエータの自由端に位置するように構成される、請求項1に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ロボット操作式塗装及び清浄システムに関する。より詳細には、本開示は、塗装及び/または清浄のために建物の壁表面に吹き付けるために使用され得るロボット操作式吹き付けシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
建物の壁を塗装し清浄するために建物の一番上からケーブルによって懸垂保持される移動可能キャリアを使用することが当技術分野でよく知られている。或る場合には、これらの移動可能キャリアは、ペインタ及び/またはクリーナを移動可能キャリア内に収容するのに十分に大きなサイズに作ることができ、ペインタ及び/またはクリーナは、その後、建物の壁を手作業で塗装するためにセットアップされるであろう。こうした大きいサイズのキャリアを使用して、キャリアを支持するのに必要とされる構造は、望ましくない風力の作用下でキャリアが搖動する傾向を最小にすることに加えて、動作時にキャリアの重量に耐えるのに十分に頑丈である必要があることになる。こうした大きいサイズのキャリアを懸垂保持するための頑丈な機構の例は、米国特許第3347339号明細書に開示される。
【0003】
それでも、近年、これらの移動可能キャリアのサイズは、塗装及び清浄動作を実施することが可能である自動化ロボット機構の実装によって低減されてきた。しかし、こうした自動化ロボット機構の組込みによって、これらの移動可能キャリアを高度な構造及び作業能力を持つように更にさせることが至極賢明であることになり、高度な構造及び作業能力は、最適にまたは効率的に壁表面のスパンを横断し、動作を相乗的に実施するためにキャリア及び内部に配設される自動化ロボット機構の動きを容易にすることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】米国特許第3347339号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、建物の壁表面にわたってスプレー塗装または清浄を効率的に実施するために設計される、単純かつコンパクトなロボット操作式塗装システムについての必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様において、建物の壁に吹き付けるための自動化システムが提供され、システムは、キャリアと、キャリア上に搭載されたロボット機構であって、エンドエフェクタを更に有し、エンドエフェクタはエンドエフェクタ上でスプレーノズルを支持するように適合される、ロボット機構と、壁の構造特徴及びプロファイルをスキャンするように構成される視覚モニタリングシステムと、視覚モニタリングシステム及びロボット機構と通信状態で配設されたコンピューティングデバイスであって、視覚モニタリングシステムから壁のスキャン済み構造特徴及びプロファイルを受信するように構成される、コンピューティングデバイスと、コンピューティングデバイスに通信可能に結合されるコントローラであって、壁のスキャン済み構造特徴及びプロファイルに従ってロボット機構及びスプレーノズルのそれぞれの1つの動作を独立に制御するように構成される、コントローラとを備える。
【0007】
一実施形態において、キャリアは、空中作業プラットフォームである。
【0008】
一態様において、キャリアは、ブームリフトを備える。
【0009】
一実施形態において、システムは、キャリア上に位置し、建物の高さに関して水平に配設されたリニアトラックを更に備えることができ、ロボット機構はリニアトラック上に摺動可能に搭載される。
【0010】
別の実施形態において、システムは、キャリア上に配設された2方向トラックを備えることができ、ロボット機構は2方向トラック上に摺動可能に搭載され、2方向トラックは、少なくとも2つの軸移動を含み、少なくとも2つの軸移動は、ロボット機構が2つの軸移動にわたって摺動することを可能にする。
【0011】
別の態様において、キャリアはシザーリフトを備える。
【0012】
一実施形態において、システムは、キャリア上に位置し、建物の高さに関して水平に配設されたリニアトラックを備えることができ、ロボット機構はリニアトラック上に摺動可能に搭載される。
【0013】
更に別の実施形態において、システムは、キャリア上に配設された2方向トラックを備えることができ、ロボット機構は2方向トラック上に摺動可能に搭載され、2方向トラックは、少なくとも2つの軸移動を含み、少なくとも2つの軸移動は、ロボット機構が2つの軸移動にわたって摺動することを可能にする。
【0014】
更に別の態様において、自動化システムは、建物上に搭載されたゴンドラキャリアを備え、ゴンドラキャリアは、各リニアアクチュエータの自由端に位置し、建物の壁に対向する関係で配設された少なくとも吸引カップを備え、吸引カップは、ゴンドラキャリアを位置決めするために建物の壁に選択的に付着するように構成される。
【0015】
一実施形態において、システムは、キャリアの下に配設され、接続バーを通してキャリアに移動可能に接続する安定化器プラットフォーム、及び、接続バーに沿ってキャリアに対して安定化器プラットフォームを動作可能に位置決めするように適合されるドライブシステムと、安定化器プラットフォーム上に設置された2次吸引機構であって、建物の壁に付着するように別個に制御される、2次吸引機構とを備えることができる。動作上、安定化器プラットフォームがキャリアに対して移動しているとき、吸引カップまたは2次吸引機構の少なくともいずれか一方は、建物の壁に付着する。
【0016】
別の実施形態において、システムは、キャリア上に位置し、建物の高さに関して水平に配設されるリニアトラックを更に備え、ロボット機構は、リニアトラック上に摺動可能に搭載される。
【0017】
更に別の実施形態において、システムは、キャリア上に配設された2方向トラックを更に備えることができ、ロボット機構は2方向トラック上に摺動可能に搭載され、2方向トラックは、少なくとも2つの軸移動を含み、少なくとも2つの軸移動は、ロボット機構が前記2つの軸移動にわたって摺動することを可能にする。
【0018】
本開示の他の特徴及び態様は、以下の説明及び添付図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の複数の実施形態による、建物の壁を塗装するためのシステムの斜視図である。
図2】本発明の一実施形態による、図1からのシステムのコンポーネントの概略図である。
図3】本開示による、図1のシステムに関連するコンピューティングデバイスの種々のモジュールの概略図である。
図4】本発明の別の実施形態による、ゴンドラキャリア上に搭載されたシステムの斜視図である。
図5】本発明の一実施形態による、シザーリフト上に搭載されたシステムの斜視図である。
図6】本発明の別の実施形態による、ブームリフト上に搭載されたシステムの斜視図である。
図7】本発明の一実施形態による、ロボット機構を摺動可能に搭載するために適合される2トラックシステムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
可能である場合はどこででも、同じ参照数字が、同じまたは同様の部分を指すために図面全体を通して使用されることになる。更に、本明細書で述べる種々の要素に対する参照は、同じタイプの2つ以上の要素が存在する場合があるとき、ひとまとめにまたは個々に行われる。しかし、こうした参照は、本来例示に過ぎない。単数での要素に対するいずれの参照も、同様に、添付特許請求の範囲において明示的に述べられない限り、本開示の範囲をこうした要素の正確な数またはタイプに限定することなく、複数に関連すると解釈される場合がある、また、その逆も同様であることが留意される場合がある。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態による、建物200の壁202を塗装するためのシステム100を示す。システム100は、建物200の上側部分204上に配設された一対のレール102、104を含む。レールのうちの第1のレール102は、レール102上での少なくとも1つのフレーム部材106の移動を摺動可能に支持するように構成される。一例において、2つのフレーム部材106が、図1の例証される実施形態に示される。しかし、本開示に適合する機能を実施するために必要とされるフレーム部材の構造的完全性を含むが、それに限定されない用途の特定の要件に応じて、より少数のまたはより多くのフレーム部材106を実装することができることが留意される場合がある。
【0022】
誤解を避けるために、システム100は、吹き付け手段に適合し、吹き付け手段は、壁表面を清浄するために塗料及び/または清浄水を吹き付けるために使用され得る。
【0023】
フレーム部材106は、レールのうちの第1のレール102の長さLに沿うフレーム部材106の横方向移動を容易にするために、フレーム部材106上に搭載された1次モータ108を有する。システム100は、同様に、フレーム部材106に関連するプーリ114上で支持されるケーブル112によってフレーム部材106から懸垂保持されるキャリア110を含む。図1に示す一実施形態において、各フレーム部材106は、レールのうちの第2のレール104に係合する自由端116を含む。各フレーム部材106の自由端116は、キャリア110の重量に釣り合うために所定の重量118に連結される。同様に、システム100は、キャリア110を地上表面122に接続する引き綱120を更に含む。引き綱120は、壁120に対するキャリア110の位置を安定化するように構成される。
【0024】
一実施形態において、キャリア110はゴンドラキャリアであり得る。
【0025】
図1に示す更なる実施形態において、システム100は、キャリア110上に配設され、壁202と対向する関係で位置する少なくとも1つのホイール124を更に含む。ホイール124は、キャリアが壁202のそばを操行しているときに支援するように構成される。
【0026】
キャリア110は、キャリア110内に2次モータ126、視覚モニタリングシステム128、ロボット機構130、コンピューティングデバイス132、及びコントローラ134を収容するように適合される。2次モータ126は、ケーブル112に係合して、壁202の高さHに平行な方向Dへのキャリア110の移動を容易にする。
【0027】
視覚モニタリングシステム128は、デジタル撮像技法によって、壁202の構造特徴及びプロファイルをスキャンするように構成される。一実施形態において、視覚モニタリングシステム128は3次元カメラを含むことができる。別の実施形態において、視覚モニタリングシステム128は3次元レーザスキャンを含むことができる。
【0028】
ロボット機構130は、エンドエフェクタ136を有し、エンドエフェクタ136は、エンドエフェクタ136上でスプレーノズル138を支持するように適合される。本開示の一実施形態において、ロボット機構130は、スプレーノズル138が建物200の壁202に吹き付けるのを容易にするために移動において6自由度を有する。
【0029】
図2は、図1からのシステム100のコンポーネントの概略図を示す。図2に示すように、コンピューティングデバイス132は、視覚モニタリングシステム128、1次モータ108、2次モータ126、ロボット機構130、及びスプレーノズル138と通信状態で配設される。コンピューティングデバイス132は、視覚モニタリングシステム128から壁202のスキャン済み構造特徴及びプロファイルを受信するように構成される。コントローラ134は、コンピューティングデバイス132に通信可能に結合され、壁202のスキャン済み構造特徴及びプロファイルに応答して、1次モータ108、2次モータ126、ロボット機構130、及びスプレーノズル138のそれぞれの1つの動作を独立に制御するように構成される。
【0030】
図1に示す更なる実施形態において、システム100は、同様に、複数のリニアアクチュエータ140を含む。リニアアクチュエータ140のそれぞれは、キャリア110に摺動可能に係合する。システム100は、同様に、各リニアアクチュエータ140の自由端に位置し、建物200の壁202に対向する関係で配設された吸引カップ142を含む。吸引カップ142は、キャリア110を位置決めするために建物200の壁202に選択的に付着するように構成される。
【0031】
一実施形態において、壁202のスキャン済み構造特徴のうちの少なくとも1つは、各吸引カップ142と壁202との間の距離を含む。図2に示すように、システム100は、図1に示すリニアアクチュエータ140のそれぞれに連結された、2つの側でキャリア上に配設された、超音波センサ146を更に含む。超音波センサ146のそれぞれは、壁202に対する関連する吸引カップ142の距離をコンピューティングデバイス132に出力するように構成され、コンピューティングデバイス132は、次に、こうした出力をコントローラ134に提供する。したがって、コントローラ134は、吸引カップ142のうちのそれぞれの吸引カップ142が建物200の壁202に付着するまで、複数のリニアアクチュエータ140のそれぞれの移動を選択的かつ独立に作動させるように構成される。
【0032】
システム100がスプレー塗装のために適合される場合、一実施形態において、塗料容器148はキャリア110内に配設される。更に、図2に示すように、システム100は、塗料容器148及びコンピューティングデバイス132と通信状態で配設されるセンサ150を含む。センサ150は、塗料容器148内の塗料残余物のレベルをコンピューティングデバイス132に出力するように構成される。
【0033】
システム100が、高速水ジェットを通したスプレー清浄のために適合される場合、スプレーノズルは、水ホースを通して、水源に直接接続することができる。システムがより強力なポンプを必要とする場合がある及び/またはノズルが清浄のために必要とされる場合があることを当業者は認識するであろう。キャリアは、同様に、清浄プロセスを支援するために液体洗剤を装填するための容器を含み得る。
【0034】
更にまたは任意選択で、図1に示すように、システム100は、図1の例証的な実施形態に示すように、スプレーノズル138の周りに配設されたフード152を更に含む。フード152は、壁202上に吹き付けられることによって漏出する吹き付け済み液体を含むように構成される。
【0035】
更なる実施形態において、フードは、吹き付けられる液体のスプレーしぶき及び蒸気を隔離するのを支援するために吹き付け先端の前端に配設された任意のオーバヘッド覆い手段であり得る。フードに適用可能な多くの形態の幾何形状が存在し得ることが当業者によりよく理解される。なお更なる実施形態において、フードは、バーンドアを用いて適合され得る。
【0036】
別の実施形態において、コンピューティングデバイス132は、図2に示すリモートコントローラ158を使用して遠隔制御可能であることができる。リモートコントローラ158を使用して、システム100の個々のコンポーネントに関連する任意の機能が、リモートコントローラ158を介して遠隔に位置するオペレータによって無線で制御され得ることが想定される。したがって、本開示のシステム100が超音波センサ146、塗料レベルセンサ150、及び視覚モニタリングカメラからのデータを使用して自律的に動作するように構成されるが、本開示の実施形態が、リモートコントローラ158を使用して、システム100のオペレータが、遠隔で、任意の動作をオーバライドし、代替のコマンドをコンピューティングデバイス132に提供することを可能にするため、コンピューティングデバイス132が、オペレータによって提供される代替のコマンドに従ってシステム100の1つまたは複数のコンポーネントを適切に制御することができることが留意される場合がある。
【0037】
図3を参照すると、また、本明細書で先に開示したように、コンピューティングデバイス132は、コントローラ134、1次モータ108、2次モータ126、傾斜計デバイス162、視覚モニタリングシステム128、超音波センサ146、リニアアクチュエータ140のそれぞれ、スプレーノズル138に連結するものとして図1に示す弁機構154、及びロボット機構130のそれぞれに通信可能に結合される。
【0038】
更に、図3に示すように、コンピューティングデバイス132は、ロボット操作式ソフトウェア(ROS:robotically-operated software)プラットフォーム上で開発され、ROSプラットフォームは、キャリア位置決めモジュール302、吹き付けモジュール304、ビジョンモジュール306、運動モジュール308、及びグラフィカルユーザインタフェース(GUI)モジュール310を含むように構成される。更に、ROSプラットフォームがその上に存在するコンピューティングデバイス132は、同様に、キャリア位置決めモジュール302、吹き付けモジュール304、ビジョンモジュール306、運動モジュール308、及びGUIモジュール310のそれぞれと通信状態で配設されるプログラムマネジャモジュール312を含むように構成されることになる。
【0039】
したがって、キャリア位置決めモジュール302が、コントローラ134、1次モータ108、2次モータ126、及びリニアアクチュエータ140のそれぞれと通信状態で配設することができることが理解される場合がある。キャリア位置決めモジュール302は、同様に、本明細書で開示される1つまたは複数のセンサ、例えば、傾斜計デバイス162、超音波センサ146、及び同様なものと通信状態で配設することができ、それらは、1次モータ108、2次モータ126、及びリニアアクチュエータ140のそれぞれの1つまたは複数に関連する。したがって、キャリア位置決めモジュール302は、こうしたセンサからデータを受信して、プログラムマネジャモジュール312が、建物200の壁202に関してキャリア110を適切に位置決めすることを達成するのに役立つように構成することができる。
【0040】
更に、スプレー塗装の場合、吹き付けモジュール304は、スプレーノズル138の液体レベルセンサ150及び弁機構154と通信状態で配設することができる。吹き付けモジュール304は、液体レベルセンサ150からデータを受信し、こうしたデータ及び/またはフィードバックをプログラムマネジャモジュール312に送信して、容器148内の塗料残余物のレベルを決定し、建物200の壁202上に吹き付けるためにスプレーノズル138の弁機構154を動作させることができる。
【0041】
更に、ビジョンモジュール306は、視覚モニタリングシステム128と通信状態で配設されることになる。ビジョンモジュール306は、視覚モニタリングシステム128からの壁202のスキャン済み構造特徴を含むデータを受信し、そのデータをプログラムマネジャモジュール312に提供する。このデータは、プログラムマネジャモジュール312が、リニアアクチュエータ140のそれぞれの移動を独立に制御し、キャリア110の位置を安定化するために建物200の壁202上に吸引カップ142を付着させるのに役立つ可能性がある。
【0042】
なお更に、運動モジュール308は、ロボット機構130、特に、ロボット機構130のエンドエフェクタ136と通信状態で配設することができる。運動モジュール308は、ロボット機構130からフィードバックを受信し、こうしたフィードバックをプログラムマネジャモジュール312に送信することができるため、プログラムマネジャモジュール312は、キャリア110の位置が安定化されると、建物200の壁202上で吹き付けが行われるように、ロボット機構130のエンドエフェクタ136の移動についての軌跡を計画できる。
【0043】
先の開示において説明されたモジュール302~312が本開示を制限しないことが留意される。以降で詳細に行われることになるシステム100の作業に関連する説明から明らかになるように、本開示の趣旨から逸脱することなく、むしろ、他のタイプのモジュールが、更にまたは任意選択で、位置決めモジュール302、ビジョンモジュール306、吹き付けモジュール304、運動モジュール308、及びGUIモジュール310に加えてまたはその代わりに実装されて、プログラムマネジャモジュール312と協働することができる。
【0044】
図1に示すシステム100に対する代替の実施形態において、システム100は、図4に示すように、更にまたは任意選択で、安定化器プラットフォーム1102を含み、安定化器プラットフォーム1102は、キャリア110の下に配設され、接続バー1111を通してキャリア110に移動可能に接続することができる。安定化器プラットフォーム1102は、接続バー1111に移動可能に係合されるドライブシステム、及び、キャリア110の吸引カップ142と同様のまたはそれと異なる少なくとも1つの2次吸引機構1106を内部に含むことができる。ドライブシステム1104は、キャリア110に対して安定化器プラットフォーム1102を動作可能に位置決めするように指令されることができる。更に、2次吸引機構1106は、同様に、建物200の壁202に付着するために指令される可能性がある。2次吸引機構1106は、建物200の壁202に付着すると、建物200の壁202に向かってまたそこから離れて搖動することに対して倍加された抵抗をキャリア110に提供する。
【0045】
動作中、キャリア110が、例えば、建物200の高さHに沿って下方に移動する場合、2次吸引機構1106が、壁202との付着から最初に解放され、その後、ドライブシステム1104が、安定化器プラットフォーム1102を建物200の高さHに沿って下方に動作可能に移動させるように指令されることが想定される。キャリア110がその後そこに移動する必要がある位置に対して所定のまたは予想される位置に安定化器プラットフォーム1102が移動すると、2次吸引機構1106は、キャリア110をその後続の位置に移動させるように2次モータに指令する前に、建物200の壁202に付着するように指令されることになる。したがって、この実施形態において、任意の所与の時点で、安定化器プラットフォーム1102に連結された2次吸引機構1106またはキャリア110からの吸引カップ142が建物200の壁202と付着状態にあることが留意される場合がある。接続バー1111を通して接続されたキャリア110及び安定化器プラットフォーム1102は、同様に、同じセットのケーブル112上に配設されるため、力、例えば、普通ならキャリア110を変位させる可能性がある風に関連する望ましくない力は、2次吸引機構1106及び/または吸引カップ142の付着によって軽減され、こうして、ゴンドラキャリア110は、垂直壁202に沿って「はっている(crawling)」間に、建物200の壁202に向かってまたそこから離れて搖動することを阻止される可能性がある。
【0046】
同様に、図4のシステム100の示す代替の実施形態に示すように、システム100は、キャリア110の上に位置し、建物200の高さHに関して水平に配設されたリニアトラック1108を更に含むことができる。リニアトラック1108の長さL1は、リニアトラック1108が、キャリア110の少なくとも幅Wまで延在するように構成されるように選択することができる。ロボット機構130は、このリニアトラック1108上に摺動可能に配設することができ、動作時、ロボット機構130は、位置が軸方向に変位可能であるように、リニアトラック1108の長さL1を横断するように指令されることができる。リニアトラック1108は、リニアトラック1108の長さL1に沿って任意の所望のポイントにロボット機構130が位置決めされることを可能にするため、広い範囲の移動をロボット機構130に提供し得る。こうして、吹き付け作業が進行中であるとき、エンドエフェクタ136の到達範囲は、キャリア110の単一パスで壁202のより広い表面積をカバーするように増大することができる。同様に、エンドエフェクタ136のより広い到達範囲によって、フレーム106が、普通ならレール102に沿って移動する必要があることになる回数が、おそらくは最小化されて、建物200の壁202に吹き付けるためにキャリア110を再位置決めすることに関連する総合サイクル時間を低減し得る。
【0047】
図5及び6に示す他の代替の実施形態を参照すると、キャリア110は、それぞれ、図5に示すシザーリフト配置構成1202または図6に示すブームリフト配置構成1302であることができる。シザーまたはブームリフト配置構成1202/1302は、ケーブル112及び2次モータ配置構成の代わりに使用されて、キャリア110が地上表面122に対して移動される高さを動作可能に変更し得る。実際には、シザーリフト配置構成1202及びブームリフト配置構成1302は、ゴンドラキャリア110が、建物200の壁202の吹き付けを達成するときだけでなく、建物200の内壁206に吹き付けるときに使用されることを可能にすることができる。
【0048】
本発明によるシステム100が、空中作業プラットフォーム、昇降式作業プラットフォーム、または同様なもの等の任意の空中デバイス上に搭載するために適合されることが当業者に理解される。
【0049】
図7に示す本発明のなお更なる実施形態において、ロボット機構130は、2方向トラックシステム1400上に搭載され、ロボット機構130が、2つの軸方向に、すなわち、縦方向と横方向の両方に移動することを可能にする。図示するように、2方向トラックシステム1400は、縦トラック1404上に摺動可能に取付けられた横トラック1402を備える。ロボット機構130は、横トラック1402上に摺動可能に搭載され、ロボット機構130がトラックの長さに沿って移動することを可能にし、一方同様に、縦トラック1404上に搭載される横トラック1402は、ロボット機構130が縦トラック1404の長さに沿って移動可能であることを可能にする。したがって、2方向トラックシステム1400は、2方向トラックシステム1400がその上に搭載される乗物(ゴンドラを含む)上でのロボット機構130の可動性を拡張する。
【0050】
別の実施形態において、2方向トラックシステム1400は、2つの横トラックの間に配設された縦トラックを有するH形状トラックとして適合され得る。2方向トラックシステム1400は、ゴンドラ、ブームリフト、シザーリフト、または同様なもの等の任意の乗物上に搭載され得る。
【0051】
本発明の実施形態によって提供される種々の構成によって、スプレーシステムが、適切な乗物上に搭載されると、外壁ならびに内壁のために使用され得ることが当業者によりよく理解される。ノズルヘッドを検査手段で置換えることによって、本システムは、同様に、壁検査を自動化するために使用され得る。
【0052】
本明細書で開示される種々の実施形態は、例証的かつ説明的な意味で考えられ、いずれの点でも本開示を制限するものと解釈されるべきでない。全ての方向参照(例えば、上部(top)、下部(bottom)、上(above)、下(below)、下方(lower))は、本開示の読者の理解を補助するために識別目的で使用されるだけであり、特に、本明細書で開示される位置、配向、またはシステム及び/または方法の使用に関して制限を生成しないとすることができる。更に、全ての結合参照(例えば、取付けた(attached)、固着した(affixed)、結合した(joined)、付着した、連結した(associated)、接続した(connected)、及び同様なもの)は、本開示の読者の理解を補助するために使用されるだけであり、特に、本明細書で開示される位置、配向、またはシステム及び/または方法の使用に関して制限を生成しないとすることができる。したがって、結合参照は、もしあれば、幅広く解釈される。更に、こうした結合参照は、2つの要素が互いに直接接続されることを必ずしも推測しない。
【0053】
更に、限定はしないが、「1次(primary)」、「2次(secondary)」、「第1(first)」、「第2(second)」、「第3(third)」、または任意の他の通常の及び/または数値の用語等の全ての数値用語は、同様に、本開示の種々の要素、実施形態、変形、及び/または修正の読者の理解を補助するために識別子としてだけ考えられるべきであり、特に、別の要素、実施形態、変形、及び/または修正に対するまたはそれにわたる、任意の要素、実施形態、変形、及び/または修正の順序または選好について制限を生成しないとすることができる。
【0054】
一実施形態について示されるまたは述べられる個々の特徴を、別の実施形態について示されるまたは述べられる個々の特徴と組合わすことができることが理解される。上述した実施態様は、いずれの点でも本開示の範囲を制限しない。したがって、機能コンポーネントの文脈で本開示の使用を示すために一部の特徴が示されるまたは述べられるが、こうした特徴を、添付特許請求の範囲に規定される本開示の趣旨から逸脱することなく本開示の範囲から省略することができることが理解される。
【0055】
本開示の実施形態は、建物200の壁202を塗装し清浄するときの使用及び実装について適用可能性を有する。本開示のシステム100がロボット機構130を備えるため、ロボット機構130は、有利には、人間相互作用が最小または全くない状態で建物200の壁202上で必要とされる作業を実施する能力によって自動化され得る。更に、本明細書で開示される実施形態を使用すると、伝統的な設計と比較して、本開示のキャリア110を往復動させることが容易かつ迅速であることになる。
【0056】
したがって、建物の壁をスプレー塗装するまたは清浄するための本明細書で開示するシステム100の使用は、有利には、伝統的に設計されたキャリアまたは乗物内に配置される要員による壁の手作業による塗装及び清浄によって、通常、発生した、時間、コスト、労力を節約することができる。
【0057】
本開示の態様が、上記実施形態を参照して特に示され述べられたが、開示されるものの趣旨及び範囲から逸脱することなく、開示される機械、システム、及び方法を修正することによって、種々の更なる実施形態を企図することができることが当業者によって理解されるであろう。こうした実施形態は、特許請求の範囲及びその均等物に基づいて決定される本開示の範囲内に入ると理解されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7