(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】フライトシミュレーター
(51)【国際特許分類】
G09B 9/10 20060101AFI20230810BHJP
【FI】
G09B9/10
(21)【出願番号】P 2019172058
(22)【出願日】2019-09-20
【審査請求日】2022-09-15
(73)【特許権者】
【識別番号】599085633
【氏名又は名称】株式会社タマディック
(74)【代理人】
【識別番号】100167081
【氏名又は名称】本谷 孝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100154195
【氏名又は名称】丸林 敬子
(74)【代理人】
【識別番号】100171826
【氏名又は名称】丸林 啓介
(72)【発明者】
【氏名】加藤 丈尋
(72)【発明者】
【氏名】片山 博文
(72)【発明者】
【氏名】玉木 紀康
(72)【発明者】
【氏名】神戸 幹弥
【審査官】槙 俊秋
(56)【参考文献】
【文献】特開平7-59946(JP,A)
【文献】特開2009-137516(JP,A)
【文献】実開平5-8578(JP,U)
【文献】実開昭49-51348(JP,U)
【文献】特開平8-335029(JP,A)
【文献】特公昭49-42934(JP,B1)
【文献】実開平7-22899(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 9/00- 9/56
A63G 1/00-33/00
A63J 1/00-99/00
A63K 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前後方向に延在する軸線(SL)に対する平行方向及び当該軸線回りに回動可能な操縦桿(16)を有するフライトシミュレーター(10)であって、
前記平行方向に直線移動可能な軸線方向移動部(32)と、
前記軸線方向移動部(32)上に前記軸線回りに回動自在に設けられ、一端部に前記操縦桿(16)が固定された操縦軸(17)と、
前記軸線方向移動部(32)の移動に対し移動抵抗を付与する第1モータ(49A)と、
前記操縦軸(17)の軸線回りの回動に対し回動抵抗を付与する第2モータ(49B)と、
前記第1モータ(49A)及び前記第2モータ(49B)に対する制御量を演算する操縦桿負荷制御部(72)と、
を備えるフライトシミュレーター。
【請求項2】
前記軸線方向移動部(32)の直線移動方向に設けられた一対のプーリー(52A、52B)と、
前記一対のプーリー(52A、52B)に架けられて回転駆動するベルト(54)と、
前記ベルト(54)と前記軸線方向移動部(32)とを結合させる結合部(56)と、を備え、
前記第1モータ(49A)は、前記ベルト(54)に対して回動抵抗を付与する、
請求項1記載のフライトシミュレーター。
【請求項3】
前記第2モータ(49B)の回転軸に設けられた第1ギヤ(62)と、
前記操縦軸(17)に設けられ、前記第1ギヤ(62)に噛み合わされる第2ギヤ(64)と、
を備え、
前記第2モータ(49B)は、前記第1ギヤ(62)及び前記第2ギヤ(64)を介して回動抵抗を前記操縦軸(17)に付与する、
請求項1又は請求項2記載のフライトシミュレーター。
【請求項4】
前記軸線方向移動部(32)の移動量を検出する移動量センサ(57)と、
前記操縦軸(17)の回転角を検出する回転角センサ(68)と、
を備え、
前記操縦桿負荷制御部(72)は、前記移動量センサ(57)による検出結果に基づいて前記第1モータ(49A)に対する制御量を算出し、前記回転角センサ(68)による検出結果に基づいて前記第2モータ(49B)に対する制御量を算出する、
請求項1から請求項3の何れか1項記載のフライトシミュレーター。
【請求項5】
前記軸線方向移動部(32)の移動により発生する負荷を検出する負荷センサ(59)と、
前記操縦軸(17)の回転トルクを検出するトルクセンサ(42)と、
を備え、
前記操縦桿負荷制御部(72)は、前記移動量センサ(57)による検出結果に基づく反力値と前記負荷センサ(59)による検出結果との差分から前記第1モータ(49A)に対する制御量を算出し、前記回転角センサ(68)による検出結果に基づく反力値と前記トルクセンサ(42)による検出結果との差分から前記第2モータ(49B)に対する制御量を算出する、
請求項4記載のフライトシミュレーター。
【請求項6】
左右一対の前記操縦桿(16)が備えられ、
一対の前記操縦桿(16)の前記操縦軸(17)は、連動装置(41)によって繋がれている、
請求項1から請求項5の何れか1項記載のフライトシミュレーター。
【請求項7】
前記連動装置(41)は、左側の左操縦桿(16L)が固定される左操縦軸(17L)と右側の右操縦桿(16R)が固定される右操縦軸(17R)の中間に共通操縦軸(17C)が配置され、前記左操縦軸(17L)と前記共通操縦軸(17C)とは左連動装置(41L)によって連動可能に構成され、前記右操縦軸(17R)と前記共通操縦軸(17C)とは右連動装置(41R)によって連動可能に構成され、
前記共通操縦軸(17C)には、前記操縦軸(17)の回転トルクを検出するトルクセンサ(42)が直列配置される、
請求項6に記載のフライトシミュレーター。
【請求項8】
前記共通操縦軸(17C)の真下に前記軸線方向移動部(32)の移動により発生する負荷を検出する負荷センサ(59)が配置される、
請求項7に記載のフライトシミュレーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フライトシミュレーターに関するものである。
【背景技術】
【0002】
フライトシミュレーターは、実際の航空機を模擬した操縦桿を前後(軸線)方向へ移動させることで、航空機のピッチ(上昇下降)、及び当該操縦桿を前記軸線回りに回転させることで、ロール(左右旋回)を模擬する。実際の航空機は、操縦桿を操作すると反力が生じ、航空機の操縦者はこの反力を感じることによって、航空機の状態を体感し得る。このため、フライトシミュレーターでもこのような操舵感覚を、シミュレーターを使用している訓練者に与えることが望まれる。
【0003】
ここで、特許文献1には、フライトシミュレーターの操縦桿にスプリングによって抵抗を与えることで、安価に操舵感覚を与える操舵力発生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されている装置では、スプリングを用いているので、操縦桿に対する反力の微調整ができない。このため、実際の操縦負荷を模擬した操舵感覚を再現し難い。また、例えば、セスナ機のような小型航空機のフライトシミュレーターは、旅客機のような大型航空機のフライトシミュレーターのように、シミュレーターの構成を大型、複雑化することはできない。このため、小型航空機のフライトシミュレーターは、その構成を簡易とし、小型化することが望まれている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであって、実際の操縦負荷を模擬した反力を簡易な構成で操縦桿に与えるフライトシミュレーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明のフライトシミュレーターは以下の手段を採用する。
【0008】
本発明のフライトシミュレーターは、前後方向に延在する軸線に対する平行方向及び当該軸線回りに回動可能な操縦桿を有するフライトシミュレーターであって、前記平行方向に直線移動可能な軸線方向移動部と、前記軸線方向移動部上に前記軸線回りに回動自在に設けられ、一端部に前記操縦桿が固定された操縦軸と、前記軸線方向移動部の移動に対し移動抵抗を付与する第1モータと、前記操縦軸の軸線回りの回動に対し回動抵抗を付与する第2モータと、前記第1モータ及び前記第2モータに対する制御量を演算する負荷制御部と、を備える。
【0009】
本構成によれば、一端部に操縦桿が固定された操縦軸が設けられた軸線方向移動部の移動に対して第1モータによって移動抵抗が付与され、操縦軸の軸線回りの回動に対して第2モータによって回動抵抗が付与される。これにより、実際の操縦負荷を模擬した反力を簡易な構成で操縦桿に与えることができる。
【0010】
上記態様のフライトシミュレーターは、前記軸線方向移動部の直線移動方向に設けられた一対のプーリーと、前記一対のプーリーに架けられて回転駆動するベルトと、前記ベルトと前記軸線方向移動部とを結合させる結合部と、を備え、前記第1モータは、前記ベルトに対して回動抵抗を付与する。
【0011】
本構成によれば、軸線方向移動部に結合されるベルトに回動抵抗が付与されることによって、操縦桿の軸線方向の移動に対する移動抵抗を簡易な構成で付与できる。
【0012】
上記態様のフライトシミュレーターは、前記第2モータの回転軸に設けられた第1ギヤと、前記操縦軸に設けられ、前記第1ギヤに噛み合わされる第2ギヤと、を備え、前記第2モータは、前記第1ギヤ及び前記第2ギヤを介して回動抵抗を前記操縦軸に付与する。
【0013】
本構成によれば、一対のギヤによって第2モータからの回動抵抗が操縦軸に付与されるので、操縦桿の回転方向に対する回動抵抗を簡易な構成で付与できる。
【0014】
上記態様のフライトシミュレーターは、前記軸線方向移動部の移動量を検出する移動量センサと、前記操縦軸の回転角を検出する回転角センサと、を備え、前記負荷制御部は、前記移動量センサによる検出結果に基づいて前記第1モータに対する制御量を算出し、前記回転角センサによる検出結果に基づいて前記第2モータに対する制御量を算出する。
【0015】
本構成によれば、簡易な演算によって実際の操縦負荷を模擬した負荷を操縦桿に与えることができる。
【0016】
上記態様のフライトシミュレーターは、前記軸線方向移動部の移動により発生する負荷を検出する負荷センサと、前記操縦軸の回転トルクを検出するトルクセンサと、を備え、前記負荷制御部は、前記移動量センサによる検出結果に基づく反力値と前記負荷センサによる検出結果との差分から前記第1モータに対する制御量を算出し、前記回転角センサによる検出結果に基づく反力値と前記トルクセンサによる検出結果との差分から前記第2モータに対する制御量を算出する。
【0017】
本構成によれば、簡易な演算によって実際の操縦負荷を模擬した負荷を操縦桿に与えることができる。
【0018】
上記態様のフライトシミュレーターは、左右一対の前記操縦桿が備えられ、一対の前記操縦桿の前記操縦軸は、連動装置によって繋がれている。
【0019】
本構成によれば、左右の操縦桿を連動装置によって機械的に繋いで操縦桿の回動を同期させるので、簡易な構成で複座式のフライトシミュレーターとできる。
【0020】
上記態様のフライトシミュレーターは、前記連動装置は、左側の前記操縦桿が固定される左操縦軸と右側の前記操縦桿が固定される右操縦軸の中間に共通操縦軸が配置され、前記左操縦軸と前記共通操縦軸とは左連動装置によって連動可能に構成され、前記右操縦軸と前記共通操縦軸とは右連動装置によって連動可能に構成され、前記共通操縦軸には、前記操縦軸の回転トルクを検出するトルクセンサが直列配置される。
【0021】
本構成によれば、左右の操縦桿が配置された、いわゆる複座式フライトシュミレーターであっても、トルクセンサは一つ備えられるだけでよいので、小型化及び軽量化できると共にコスト低減も可能となる。
【0022】
上記態様のフライトシミュレーターは、前記共通操縦軸の真下に前記軸線方向移動部の移動により発生する負荷を検出する負荷センサが配置される。
【0023】
本構成によれば、左右の操縦桿が配置された、いわゆる複座式フライトシュミレーターであっても、負荷センサは一つ備えられるだけでよく、かつ共通操縦軸と三次元的に配置されるので、小型化、及び軽量化できると共に、コスト低減が可能となる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、実際の操縦負荷を模擬した反力を簡易な構成で操縦桿に与えることができる、という効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】本実施形態のフライトシミュレーターの全体構成図である。
【
図2】本実施形態のフライトシミュレーターの反力付与機構の前方斜視図である。
【
図3】本実施形態のフライトシミュレーターの反力付与機構の後方斜視図である。
【
図4】本実施形態のフライトシミュレーターの反力付与機構の上面図である。
【
図5】左右の操縦桿の同期機構及び移動抵抗付与機構を含まない反力付与機構の上面図である。
【
図6】本実施形態のフライトシミュレーターの反力付与機構の側面図である。
【
図7】本実施形態のフライトシミュレーターの反力付与機構の正面図である。
【
図8】本実施形態のフライトシミュレーターの反力付与機構の背面図である。
【
図11】本実施形態のフライトシミュレーターの電気的構成を示す機能ブロック図である。
【
図12】本実施形態の操縦桿負荷制御部における移動抵抗付与に係る制御ブロック図である。
【
図13】本実施形態の操縦桿負荷制御部における回動抵抗付与に係る制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明に係るフライトシミュレーターの一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0027】
図1は、本実施形態のフライトシミュレーター10の全体構成図である。本実施形態のフライトシミュレーター10は、一例として、セスナ機等の小型航空機の操縦を模擬するシミュレーション装置として構成され、小型航空機の操縦訓練に用いられる。
【0028】
図1に示されるように、フライトシミュレーター10を操縦する訓練者12は、シート14に着座し、操縦桿16を両手で把持し、足先を左右一対のラダーペダル18の操作が可能な位置とする。なお、本実施形態のフライトシミュレーター10は、一例として、左右一対の操縦桿16及び左右一対のシート14が備えられる。
【0029】
操縦桿16は、前後方向に延在する軸線SL(左軸線SLL、右軸線SLR)に対する平行方向及び当該軸線SL回りに回動可能とされている。なお、軸線SLに対する平行方向への操縦桿16の操作をピッチ操作といい、軸線回りへの操縦桿16の操作をロール操作という。
【0030】
訓練者12が操縦桿16を前方に押し込むピッチ操作を行うと、フライトシミュレーター10は、水平尾翼の後縁部に取り付けられている昇降舵(エレベーター)が下がり、機体が降下するように模擬する。一方、訓練者12が操縦桿16を後方に引くピッチ操作を行うと、フライトシミュレーター10は、昇降舵が上がり、機体が上昇するように模擬する。
【0031】
訓練者12が操縦桿16を左方向又は右方向へ回動させるロール操作を行うと、フライトシミュレーター10は、操縦桿16の回動方向に応じて左右の補助翼(エルロン)が上下動し、機体がロールするように模擬する。ラダーペダル18の操作量に応じて方向舵(ラダー)が回動し、機体が首振り運動(ヨーイング)するように模擬する。
【0032】
また、訓練者12がラダーペダル18を操作すると、フライトシミュレーター10は、ラダーペダル18の操作量に応じて方向舵(ラダー)が回動し、機体が首振り運動(ヨーイング)するように模擬する。
【0033】
操縦桿16の軸(以下「操縦軸」という。)17は、詳細を後述する反力付与機構20に接続されている。反力付与機構20は、実際の操縦負荷を模擬した反力を操縦桿16に与える装置である。
【0034】
操縦軸17の軸線方向に対して略直交する平面には操作パネル22が設けられる。操作パネル22は、実際の航空機(以下「実機」という。)の計器やスイッチ等を模擬したパネルである。一例として、操作パネル22には、計器を模擬した計器画像を表示する操作パネルディスプレイが備えられる。計器画像を示す値は、シミュレートの状況に応じてリアルタイムで変化する。
【0035】
また、シート14に着座する訓練者12の正面には、航空機のフロントウィンドウから視認される風景を模擬するウィンドウディスプレイ24が備えられる。このウィンドウディスプレイ24は、シミュレートの状況に応じた風景を模擬した風景画像を表示する。
【0036】
次に
図2から
図9を用いて、本実施形態のフライトシミュレーター10が備える反力付与機構20の構成について詳細に説明する。
図2は、反力付与機構20の前方斜視図である。
図3は、反力付与機構20の後方斜視図である。
図4は、反力付与機構20の上面図である。
図5は、左右の操縦桿16の同期機構及び移動抵抗付与機構を含まない反力付与機構20の上面図である。
図6は、反力付与機構20の側面図である。
図7は、反力付与機構20の正面図である。
図8は、反力付与機構20の背面図である。また、
図9は
図5のA-A断面図であり、
図10は
図5のB-B断面図である。
【0037】
本実施形態の反力付与機構20は、反力付与機構20の構成機器が載置されるベース部30、及びベース部30に対してピッチ操作方向に直線移動可能な軸線方向移動部32を備える。
【0038】
本実施形態の軸線方向移動部32上には、一端部に操縦桿16が固定された操縦軸17(右操縦軸17R、左操縦軸17L)が軸線回りに回動自在に設けられる。
【0039】
さらに軸線方向移動部32は、その中央下方にスライド部34を備え、スライド部34はベース部30の上面の前後方向に配置された断面が大凡四角形であて、直線棒状のリニアガイド36に沿って移動可能とされている。すなわち、訓練者12が操縦桿16をピッチ操作すると、ピッチ操作の方向(前後方向への移動)に応じて軸線方向移動部32はリニアガイド36に沿ってベース部30の上面を移動することとなる。
【0040】
また、本実施形態のフライトシミュレーター10は、上述のように左右一対の操縦桿16(右操縦桿16R、左操縦桿16L。特に区別する必要がある場合を除き、操縦桿16として説明する。)が備えられるため、ベース部30と軸線方向移動部32の左右には各々操縦軸17を支持する操縦軸支持部38,40が設けられる。
【0041】
本実施形態の一対の操縦桿16の操縦軸17は、連動装置41によって連携されている。このような構成によれば、左操縦桿16L、及び右操縦桿16Rを連動装置41によって機械的に駆動連結し、左操縦桿16Lと右操縦桿16Rの回動を同期させるので、簡易な構成で複座式のフライトシミュレーター10を構成できる。
【0042】
本実施形態の連動装置41は、左側の左操縦桿16Lが固定される左操縦軸17Lと右側の右操縦桿16Rが固定される右操縦軸17Rの中間に共通操縦軸17Cが、その軸線SLCが左軸線SLL、右軸線SLRに対し平行になるように配置される。これにより、右操縦軸17Rと左操縦軸17Lとで操作感が同じとなる。また、本実施形態の共通操縦軸17Cには、操縦軸17の回転トルクを検出するトルクセンサ42が直列配置される。
【0043】
共通操縦軸17Cは、前側端部がベース部30に固定された前側ブラケット39に回転自在に支持され、後側先端はベース部30に固定された後側ブラケット40に回転自在に支持されている。
【0044】
そして、左操縦軸17Lと共通操縦軸17Cとは左連動装置41Lによって連動可能に構成され、右操縦軸17Rと共通操縦軸17Cとは右連動装置41Rによって連動可能に構成される。
【0045】
より具体的には左連動装置41Lは、左操縦軸17Lの端部に設けられる左プーリー44Lと、共通操縦軸17Cに設けられる左タイミングプーリー46Lと、左プーリー44L及び左タイミングプーリー46Lに架けられる左タイミングベルト48Lによって構成される。また、右連動装置41Rは、右操縦軸17Rの端部に設けられる右プーリー44Rと、共通操縦軸17Cに設けられる右タイミングプーリー46Rと、右プーリー44R及び右タイミングプーリー46Rに架けられる右タイミングベルト48Rによって構成される。なお、左右に分けて説明する必要がある場合を除いて、連動装置41、プーリー44、タイミングプーリー46を用いて説明する。また、連動装置41は、スプロケットとチェーン等によって構成される確動連動機構に変更することができる。
【0046】
このような構成において、例えば左側の左操縦桿16Lを回動させると、この回動に伴い左プーリー44Lが回動すると共に左タイミングベルト48Lを介して左タイミングプーリー46Lも回動する。このため、左タイミングプーリー46Lが設けられた共通操縦軸17Cが回動するので右タイミングプーリー46Rも回動する。右タイミングプーリー46Rが回動すると右タイミングベルト48Rを介して右側の右操縦桿16Rに設けられた右プーリー44Rが回動するので右側の右操縦桿16Rが左側の左操縦桿16Lに同期して回動することになる。
【0047】
後述するように、軸線方向移動部32は操縦軸17の延在方向たる軸線SLに沿って、平行に移動可能である。そのため、左タイミングプーリー46L及び右タイミングプーリー46Rは、共通操縦軸17Cに対してその軸線方向に摺動可能、且つ一体回転可能に設けられている。具体的は、共通操縦軸17Cはスプライン軸に形成され、左タイミングプーリー46L及び右タイミングプーリー46Rはスプライン孔に形成され、スプラインはめあいはめ合い構造になっている。この構成によって、操縦桿16をロール操作しつつピッチ操作することができる。
【0048】
さらに本実施形態の反力付与機構20は、軸線方向移動部32の移動に対し移動抵抗を付与する第1モータ49Aたるサーボモータ50Aと、操縦軸17の軸線回りの回動に対し回動抵抗を付与する第2モータ49Bたるサーボモータ50Bとを備える。サーボモータ50Aとサーボモータ50Bの両者、又は一方を指してモータ50ということがある。
【0049】
ここで、軸線方向移動部32に対してサーボモータ50Aが移動抵抗を付与する移動抵抗付与機構26について説明する。
【0050】
移動抵抗付与機構26は、軸線方向移動部32の直線移動方向に設けられた一対のプーリー52A,52B、一対のプーリー52A,52Bに架けられて回転駆動するベルト54、及びベルト54と軸線方向移動部32とを結合させる結合部56と、を備える。
図10に示されるように、結合部56は軸線方向移動部32の直線移動に応じて、所定のストローク範囲内で移動する。このような構成により、訓練者12が操縦桿16をピッチ操作すると、結合部56を介してベルト54が軸線方向移動部32の移動に応じて回転駆動する。
【0051】
移動抵抗付与機構26は上述のサーボモータ50Aをその構成に含む。一例として、サーボモータ50Aの回転軸がプーリー52Bに連結され、これによりサーボモータ50Aはベルト54に対して回動抵抗を付与する。
【0052】
すなわち、訓練者12が操縦桿16をピッチ操作した場合に、ベルト54に対して回動抵抗を付与するようにサーボモータ50Aが駆動することで、ベルト54に対して軸線方向移動部32の移動方向とは逆向きの力が作用する。この力が、反力となり軸線方向移動部32の移動抵抗となる。このような構成によって、操縦桿16の軸線方向の移動に対する移動抵抗(反力)を簡易な構成で付与できる。
【0053】
なお、移動抵抗付与機構26は、軸線方向移動部32の移動量を検出する移動量センサ57たる直線変位センサ58(
図4)を備える。直線変位センサ58は、一例として、リニアガイド36に対して平行、かつ共通操縦軸17Cの下方に設けられる。そして、サーボモータ50Aに対する制御量(回転軸の回転角度)は、直線変位センサ58による軸線方向移動部32の移動量の検出結果に基づいて算出される。したがって、直線変位センサ58は、例えば、筒状の本体と当該本体の軸線方向に直線移動可能なロッドよりなる直線ポテンショメーターであって、ロッドの先端部が軸線方向移動部32に関連して移動される部位に固定され、本体の一部が固定状態を維持されるベース部30に固定される。
【0054】
また、軸線方向移動部32のスライド部34には、操縦桿16に対するピッチ方向の荷重、換言すると軸線方向移動部32の移動に伴い発生する負荷を検出する負荷センサ59たるロードセル60が設けられる。なお、軸線方向移動部32のスライド部34は、軸線方向移動部32の中央下方に設けられているので、ロードセル60は共通操縦軸17Cの真下に設けられることとなる。これにより、左右それぞれの操縦桿16に対する操作によって、ロードセル60が検出する数値に偏りが発生することを防止できる。
【0055】
このような構成により、左右の操縦桿16が配置された複座式のフライトシミュレーター10であっても、ロードセル60は一つ備えられるだけでよく、かつ共通操縦軸17Cと三次元的に配置されるので、小型化、及び軽量化できると共に、コスト低減が可能となる。
【0056】
なお、ロードセル60による検出値は、詳細を後述するように、サーボモータ50Aの制御量の算出に用いられる。
【0057】
次に、操縦桿16に対してサーボモータ50Bが回動抵抗を付与する回動抵抗付与機構28について説明する。
【0058】
回動抵抗付与機構28は、サーボモータ50Bの回転軸に設けられた第1ギヤたるギヤ62、及び共通操縦軸17Cに設けられてギヤ62に噛み合わされる第2ギヤたるギヤ64を備える。なお、サーボモータ50Bは、共通操縦軸17Cと平行となるように、サーボモータ50Bの回転軸の端部が共通操縦軸17Cの端部と同様に前方方向を向くように配置され、サーボモータ50Bの回転軸の端部にギヤ62が設けられ、共通操縦軸17Cの端部にギヤ64が設けられ、ギヤ62とギヤ64とが噛み合わされるように構成される。このような構成により、サーボモータ50Bは共通操縦軸17Cに対して平行に配置されることになるので、反力付与機構20の全長が長くなることを抑制できる。
【0059】
そして、サーボモータ50Bは、ギヤ62,64及び共通操縦軸17Cを介して、回動抵抗を操縦軸17に付与する。このような構成によれば、一対のギヤ62,64によってサーボモータ50Bからの回動抵抗が操縦軸17に付与されるので、操縦桿16の回転方向に対する回動抵抗を簡易な構成で付与できる。
【0060】
また、ギヤ64には第3ギヤたるギヤ66が噛み合わされ、ギヤ66は回転角センサ68の回転軸に設けられる。この回転角センサ68は、操縦桿16の回動量(回転角)を検出し、検出結果は補助翼の移動量や変化量の制御に用いられる。さらに、サーボモータ50Bに対する制御量(回転軸の回転角度)は、回転角センサ68の検出結果に基づいて算出される。
【0061】
また、回動抵抗付与機構28は、操縦軸17の回転トルクを検出するトルクセンサ42が備えられる。トルクセンサ42は、一例として、共通操縦軸17Cの軸線上、すなわち共通操縦軸17Cに対して直列配置される。このような構成により、左右の操縦桿16が配置された、いわゆる複座式フライトシュミレーターであっても、トルクセンサ42は一つ備えられるだけでよいので、小型化及び軽量化できると共にコスト低減も可能となる。
【0062】
なお、トルクセンサ42による検出値は、詳細を後述するように、サーボモータ50Bの制御量の算出に用いられる。
【0063】
図11は、本実施形態に係るフライトシミュレーター10の電気的構成を示す機能ブロック図である。なお、
図11は、主として反力付与機構20に関係する電気的構成を示す。
【0064】
図11に示されるように、フライトシミュレーター10は、情報処理装置70を備える。情報処理装置70は、各種センサから入力された情報に基づいて実機を模擬するシミュレーション処理や、サーボモータ50A,50Bや操作パネルディスプレイ22A、ウィンドウディスプレイ24に対する画像制御処理を行なう。なお、上記各種センサには、トルクセンサ42、直線変位センサ58、ロードセル60、回転角センサ68と共に、ラダーペダル18の操作量を検出するペダル操作量センサ69等が含まれる。
【0065】
情報処理装置70は、操縦桿負荷制御部72、シミュレート部74、及び画像処理制御部76を備える。
【0066】
操縦桿負荷制御部72は、トルクセンサ42、直線変位センサ58、ロードセル60、及び回転角センサ68の検出結果に基づいて、サーボモータ50A及びサーボモータ50Bに対する制御量を演算する。
【0067】
シミュレート部74は、操縦桿16及びラダーペダル18に対する操作量、換言すると、直線変位センサ58、回転角センサ68、及びペダル操作量センサ69の検出結果等に基づいて、航空機の操縦を模擬し、操作パネルディスプレイ22Aやウィンドウディスプレイ24に表示させるための画像情報を生成する。
【0068】
なお、シミュレート部74は、適宜、機体高度情報や機体速度情報等の航空機の操縦の模擬に要する情報を生成する。なお、機体高度情報は操縦を模擬している航空機の高度を示す情報であり、機体速度情報は当該航空機の速度を示す情報である。
【0069】
画像処理制御部76は、シミュレート部74で生成された画像情報を表示するように操作パネルディスプレイ22Aやウィンドウディスプレイ24を制御する。
【0070】
図12は、本実施形態の操縦桿負荷制御部72における移動抵抗付与に係る制御ブロック図である。
【0071】
操縦桿負荷制御部72は、反力値演算部80A、機体条件演算部82A、加算部84A、減算部86A、モータ制御部88A、及びリミッタ部90Aを備える。
【0072】
反力値演算部80Aは、直線変位センサ58の検出結果が入力され、当該検出結果に基づく反力値(以下「直線反力値」という。)を算出する。より具体的には、反力値演算部80Aは、操縦桿16の直線移動位置の中立位置からの差分に基づいて直線反力値を算出する。すなわち、直線反力値は、操縦桿16の直線移動量に基づいて算出される反力値であり、例えば、上記差分の値に応じた直線反力値が予め設定されてもよい。
【0073】
機体条件演算部82Aは、機体高度情報及び機体速度情報に基づいて、機体の高度及び速度に応じて直線反力値として加えるべき負荷(以下「直線負荷値」という。)を算出する。
【0074】
加算部84Aは、直線反力値に直線負荷値を加算する。
【0075】
減算部86Aは、加算部84Aの出力値からロードセル60の検出値を減算する。なお、ロードセル60の検出値は、既に操縦桿16に生じている負荷の値である。この負荷は、操縦桿16に付与する反力の一部であると考えられるので、ロードセル60の検出値を直線反力値から減算する。この減算部86Aから出力される値が、軸線方向移動部32の移動に対する移動抵抗に相当する。
【0076】
モータ制御部88Aは、減算部86Aの出力値に基づいてサーボモータ50Aの制御量、すなわちサーボモータ50Aの回転角を算出する。
【0077】
リミッタ部90Aは、モータ制御部88Aから出力された制御量(回転角)が予め定められた制限値未満の場合に当該制御量をサーボモータ50Aへ出力する。一方、制御量が制限値以上の場合には、当該制御量の替わりに制限値が制御量としてサーボモータ50Aへ出力される。
【0078】
このように、本実施形態の操縦桿負荷制御部72は、直線変位センサ58に基づく直線反力値とロードセル60による検出結果との差分からサーボモータ50Aに対する制御量を算出する。そして、サーボモータ50Aが制御量に基づいて回転することで、操縦桿16の直線移動に対する反力が付与される。なお、サーボモータ50Aの回転角の値は、モータ制御部88Aへフィードバックされ、回転角が制御量に達していない場合には、回転角が制御量に達するようにモータ制御部88Aが制御量を出力する。
【0079】
図13は、本実施形態の操縦桿負荷制御部72における回動抵抗付与に係る制御ブロック図である。
【0080】
操縦桿負荷制御部72は、反力値演算部80B、機体条件演算部82B、加算部84B、減算部86B、モータ制御部88B、及びリミッタ部90Bを備える。
【0081】
反力値演算部80Bは、回転角センサ68の検出値である操縦桿16の回転角が入力され、回転角センサ68による検出結果に基づく反力値(以下「回動反力値」という。)を算出する。より具体的には、反力値演算部80Bは、操縦桿16の回転角の中立位置からの差分に基づいて回動反力値を算出する。すなわち、回動反力値は、操縦桿16の回動量に基づいて算出される反力値であり、例えば、上記差分の値に応じた回動反力値が予め設定されてもよい。
【0082】
機体条件演算部82Bは、機体高度情報及び機体速度情報に基づいて、機体の高度及び速度に応じて回動反力値として加えるべき負荷(以下「回転負荷値」という。)を算出する。
【0083】
加算部84Bは、回動反力値に回転負荷値を加算する。
【0084】
減算部86Bは、加算部84Bの出力値からトルクセンサ42の検出値を減算する。なお、トルクセンサ42の検出値は、既に操縦桿16の回転方向に生じている負荷の値である。この負荷は、操縦桿16に付与する反力の一部であると考えられるので、トルクセンサ42の検出値を直線反力値から減算する。この減算部86Bから出力される値が、操縦軸17の軸線回りの回動に対する回動抵抗に相当する。
【0085】
モータ制御部88Bは、減算部86Bの出力値に基づいてサーボモータ50Bの制御量、すなわちサーボモータ50Bの回転角を算出する。
【0086】
リミッタ部90Bは、モータ制御部88Bから出力された制御量(回転角)が予め定められた制限値未満の場合に当該制御量をサーボモータ50Bへ出力する。一方、制御量が制限値以上の場合には、当該制御量の替わりに制限値が制御量としてサーボモータ50Bへ出力される。
【0087】
このように、本実施形態の操縦桿負荷制御部72は、回転角センサ68に基づく回動反力値とトルクセンサ42による検出結果との差分からサーボモータ50Bに対する制御量を算出する。そして、サーボモータ50Bが制御量に基づいて回転することで、操縦桿16の回動に対する反力が付与される。なお、サーボモータ50Bの回転角の値は、モータ制御部88Bへフィードバックされ、回転角が制御量に達していない場合には、回転角が制御量に達するようにモータ制御部88Bが制御量を出力する。
【0088】
以上説明した本実施形態のフライトシミュレーター10によれば、一端部に操縦桿16が固定された操縦軸17が設けられた軸線方向移動部32の移動に対してサーボモータ50Aによって移動抵抗(移動反力)が付与され、操縦軸17の軸線回りの回動に対してサーボモータ50Bによって回動抵抗(回動反力)が付与される。これにより、本実施形態のフライトシミュレーター10は、実際の操縦負荷を模擬した反力を簡易な構成で操縦桿16に与えることができる。
【0089】
また、このような構成のフライトシミュレーター10は、反力を付与するためにサーボモータ50A,50Bを適用することで、従来のバネ方式とは違い、より実機に近い操縦反力の再現が可能となる。すなわち、本実施形態のフライトシミュレーター10は、実機の飛行状態の模擬に合わせたリアルタイムでの反力変更が可能となり、ソフトウェアの変更のみで多機種へ対応可能な高い拡張性を有し、飛行訓練装置(Flight Training Device)に対応可能となる。
【0090】
以上、本発明を、上記実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。発明の要旨を逸脱しない範囲で上記実施形態に多様な変更又は改良を加えることができ、該変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0091】
例えば、上記実施形態では、回転角センサ68によって操縦桿16の回動量を検出する形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、サーボモータ50Bによって回動量を検出する形態としてもよい。
【0092】
また、上記実施形態では、操縦桿16を左右に備える形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、操縦桿16を一つとする形態としてもよい。この形態の場合、上記実施形態における共通操縦軸17Cの端部に操縦桿16が固定される。
【0093】
また、ラダーペダル18に対しても反力付与機構20を適用してもよい。この形態の場合、ラダーペダル18の回動に対し回動抵抗を付与するモータを備え、ペダル操作量センサ69による検出結果に基づいて当該モータに対する制御量を算出する。
【符号の説明】
【0094】
SL 軸線
10 フライトシミュレーター
16 操縦桿
16L 左操縦桿
16R 右操縦桿
17 操縦軸
17L 左操縦軸
17R 右操縦軸
17C 共通操縦軸
32 軸線方向移動部
42 トルクセンサ
41 連動装置
41L 左連動装置
41R 右連動装置
49A 第1モータ
49B 第2モータ
52A、52B プーリー
54 ベルト
56 結合部
57 移動量センサ
59 負荷センサ
62 第1ギヤ
64 第2ギヤ
68 回転角センサ
72 操縦桿負荷制御部