IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ユーピー ケミカル カンパニー リミテッドの特許一覧

特許7329256第4族金属元素含有化合物、その製造方法、それを含む膜形成用前駆体組成物、及びそれを利用する膜の形成方法
<>
  • 特許-第4族金属元素含有化合物、その製造方法、それを含む膜形成用前駆体組成物、及びそれを利用する膜の形成方法 図1
  • 特許-第4族金属元素含有化合物、その製造方法、それを含む膜形成用前駆体組成物、及びそれを利用する膜の形成方法 図2
  • 特許-第4族金属元素含有化合物、その製造方法、それを含む膜形成用前駆体組成物、及びそれを利用する膜の形成方法 図3
  • 特許-第4族金属元素含有化合物、その製造方法、それを含む膜形成用前駆体組成物、及びそれを利用する膜の形成方法 図4
  • 特許-第4族金属元素含有化合物、その製造方法、それを含む膜形成用前駆体組成物、及びそれを利用する膜の形成方法 図5
  • 特許-第4族金属元素含有化合物、その製造方法、それを含む膜形成用前駆体組成物、及びそれを利用する膜の形成方法 図6
  • 特許-第4族金属元素含有化合物、その製造方法、それを含む膜形成用前駆体組成物、及びそれを利用する膜の形成方法 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】第4族金属元素含有化合物、その製造方法、それを含む膜形成用前駆体組成物、及びそれを利用する膜の形成方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/18 20060101AFI20230810BHJP
   C07F 7/00 20060101ALI20230810BHJP
   C07F 7/28 20060101ALI20230810BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20230810BHJP
   H01L 21/316 20060101ALI20230810BHJP
   H01L 21/318 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
C23C16/18
C07F7/00 Z
C07F7/28 F
C23C16/455
H01L21/316 X
H01L21/318 B
C07F7/00 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2020542607
(86)(22)【出願日】2019-02-01
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 KR2019001447
(87)【国際公開番号】W WO2019156451
(87)【国際公開日】2019-08-15
【審査請求日】2022-01-26
(31)【優先権主張番号】10-2018-0015297
(32)【優先日】2018-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0040184
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2018-0087591
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】514183215
【氏名又は名称】ユーピー ケミカル カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ウォン ソク
(72)【発明者】
【氏名】コ,ウォンヨン
(72)【発明者】
【氏名】パク,ミョン‐ホ
【審査官】高森 ひとみ
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-539709(JP,A)
【文献】特表2010-539710(JP,A)
【文献】特表2011-513260(JP,A)
【文献】特表2012-533909(JP,A)
【文献】国際公開第2009/049387(WO,A2)
【文献】特開2005-171291(JP,A)
【文献】特開平08-253522(JP,A)
【文献】Hsiao, Ting-Jui,Novel monocyclopentadienyl zirconium and hafnium trialkoxide complexes: Syntheses and catalytic properties for olefin polymerization,Journal of Applied Polymer Science,2010年,116(4),pp.2040-2049,DOI:10.1002/app.31731
【文献】Buerger, Hans,Titanium-nitrogen compounds. XXI. Preparation and properties of substituted cyclopentadienyltitanium dialkylamides,Journal of Organometallic Chemistry,1975年,101(3),pp.295-306
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジルコニウム含有膜を形成するための前駆体組成物であって、下記化学式Iで表されるジルコニウム含有化合物を含み、
前記前駆体組成物は、DRAM半導体素子を製造するために用いられる、前駆体組成物。
[化学式I]
(RZr(NR
前記化学式Iにおいて、
は、n-プロピル基又はn-ブチル基であり
及びRは、それぞれ独立にメチル又はエチルである。
【請求項2】
前記ジルコニウム含有化合物は、PrCpZr(NMePrCpZr(NEtMe)PrCpZr(NEtBuCpZr(NMeBuCpZr(NEtMe)又はBuCpZr(NEt ]である、請求項1に記載の前駆体組成物
【請求項3】
前記ジルコニウム含有化合物は、常温で液体である、請求項1に記載の前駆体組成物
【請求項4】
前記前駆体組成物は、ジルコニウムを含有する酸化膜、窒化膜、酸窒化膜、炭化膜、又は炭窒化膜を形成するために用いられる、請求項に記載の前駆体組成物。
【請求項5】
前記ジルコニウム含有膜は、気相蒸着により形成された膜である、請求項に記載の前駆体組成物。
【請求項6】
下記化学式Iで表されるジルコニウム含有化合物を含む前駆体組成物と反応ガスとを反応させ、基材上にジルコニウム含有膜を形成する、ジルコニウム含有膜の形成方法。
[化学式I]
(R )Zr(NR
前記化学式Iにおいて、
は、n-プロピル基又はn-ブチル基であり、
及びR は、それぞれ独立にメチル又はエチルである。
【請求項7】
前記ジルコニウム含有膜は、気相蒸着により前記基材上に形成される、請求項に記載のジルコニウム含有膜の形成方法。
【請求項8】
前記ジルコニウム含有膜ジルコニウムを含有する酸化膜、窒化膜、酸窒化膜、炭化膜、又は炭窒化膜である、請求項に記載のジルコニウム含有膜の形成方法。
【請求項9】
前記ジルコニウム含有膜の形成方法は、
前記基材の1つ以上の表面を反応チャンバに提供するステップと、
前記ジルコニウム含有化合物を含む前駆体を前記反応チャンバに導入するステップと、
前記反応ガスを前記反応チャンバに導入するステップと、
を含み、
前記ジルコニウム含有膜は、気相蒸着により前記基材の1つ以上の表面上に形成さる、請求項に記載のジルコニウム含有膜の形成方法。
【請求項10】
前記反応ガスは、酸素含有供給源、窒素含有供給源、炭素含有供給源及び還元剤からなる群より選択される少なくとも1つである、請求項に記載のジルコニウム含有膜の形成方法。
【請求項11】
前記ジルコニウム含有化合物を含む第1の前駆体と同一あるいは異なる金属元素を含有する1つ以上の追加前駆体を前記第1の前駆体と同時に又は順次に供給することで、ジルコニウムと共に1つ以上の追加金属元素を含有する膜形成る、請求項に記載のジルコニウム含有膜の形成方法。
【請求項12】
前記気相蒸着が、化学気相蒸着、低圧気相蒸着、プラズマ強化された化学気相蒸着、サイクリック化学気相蒸着、プラズマ強化されたサイクリック化学気相蒸着、原子層蒸着、及びプラズマ強化された原子層蒸着からなる群より選択された1つ以上である、請求項に記載のジルコニウム含有膜の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、新規な第4族金属元素含有化合物、前記第4族金属元素含有化合物の製造方法、前記第4族金属元素含有化合物を含む膜形成用前駆体組成物、及び前記第4族金属元素含有化合物を利用する第4族金属元素含有膜の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
Ti、Zr及びHfのような第4族金属元素を含む化合物、例えば、第4族金属元素を含む酸化物又は窒化物の膜、例えば酸化ジルコニウム膜、窒化チタン膜などは、高誘電物質、電極などで半導体素子の製造に使用される。第4族金属元素を含む膜を化学蒸着法(chemical vapor deposition、CVD)又は原子層蒸着法(atomic layer deposition、ALD)のような方法で形成するために、様々な第4族金属化合物が使用される。また、第4族金属元素を含む化合物は、ポリマー合成などの触媒としても使用される[大韓民国登録特許第10-0852234号]。しかし、均一な膜の形成、特に、凹凸(溝)のある基材又は多孔性基材の全体表面に均一な第4族金属元素含有膜又は薄膜が形成可能な前駆体として有用に使用することのできる新規第4族金属元素含有化合物の開発が依然として必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本願は、新規な第4族金属元素含有化合物、前記第4族金属元素含有化合物の製造方法、前記第4族金属元素含有化合物を含む膜形成用前駆体組成物、及び前記第4族金属元素含有化合物を利用する第4族金属元素含有膜の形成方法を提供することを目的としている。
【0004】
しかし、本願が解決しようとする課題は、上記に言及した課題に限定されるものではなく、言及されていない他の課題は、以下の記載から当業者にとって明確に理解できるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本願の第1の側面は、下記化学式Iで表される、第4族金属元素含有化合物を提供する:
[化学式I]
(R)MA
前記化学式Iにおいて、
Mは、Ti、Zr又はHfであり、
は、炭素数3~5の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、
Aは、-NR又は-ORであり、
及びRは、それぞれ独立にメチル又はエチルであり、
は、炭素数1~4の直鎖状又は分枝状のアルキル基である。
【0006】
本願の第2の側面は、前記本願の第1の側面に係る第4族金属元素含有化合物の製造方法を提供する。
【0007】
本願の第3の側面は、前記本願の第1の側面に係る第4族金属元素含有化合物を含む、膜形成用前駆体組成物を提供する。
【0008】
本願の第4の側面は、前記本願の第1の側面に係る第4族金属元素含有化合物を前駆体として利用し、第4族金属元素含有膜を形成することを含む、第4族金属元素含有膜の形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本願の実施形態に係る新規な第4族金属元素含有化合物は、従来知られていない新規な化合物である。本願の実施形態に係る新規な第4族金属元素含有化合物は、常温で液体であり、熱的に安定している。
【0010】
本願の実施形態に係る新規な第4族金属元素含有化合物は、熱安定性が高く、気相蒸着の前駆体として使用可能であり、例えば、原子層蒸着法又は化学気相蒸着法の前駆体として使用して第4族金属元素含有膜を形成することができ、特に、表面に凹凸(溝)のある基材又は多孔性基材上にも数nm~数十nm厚さの第4族金属元素含有膜を均一に形成することができる。例えば、本願の実施形態に係る新規な第4族金属元素含有化合物は、縦横比が約1以上であり、幅が約1μm以下の微細な凹凸(溝)が表面にある基材において、前記微細な凹凸(溝)の最も深いところの表面及び前記微細な凹凸(溝)の上部表面を含む前記微細な凹凸(溝)の表面を含み、前記基材の全体表面上に数nm~数十nm厚さの第4族金属元素含有膜を均一に形成することができる優れた効果を有する。
【0011】
本願の実施形態に係る第4族金属元素含有化合物前駆体を含む組成物及び前記前駆体を利用した第4族金属元素含有膜を形成する方法は、商業的な半導体素子の製造に適用することができる。特に、DRAM半導体素子を製造するためには、溝の幅が約100nm又は約50nmよりも遥かに狭く、縦横比が約10:1、約20:1、約30:1、又はそれよりもさらに深く、さらに狭い溝のある基材に高誘電物質を数nm厚さで形成する必要があり、特に、約280℃、約300℃、又はそれ以上の温度でも均一な厚さの高誘電物質膜を形成する必要があるため、高温でも非常に狭くて深い溝に原子層蒸着法(ALD)で均一な厚さの膜を形成することができる前駆体組成物が必要であり、このような前駆体組成物として使用するために、熱安定性が非常に高いTi、Zr、又はHf化合物が必要である。そこで、本願の実施形態に係る前記第4族金属元素含有化合物は、上記に求められる特性たちを満たす前駆体として有用に使用されることができる。
【0012】
本願の実施形態に係る前記第4族金属元素含有化合物は、ALD、CVDなどに使用される前駆体として使用され、半導体のような次世代デバイスの製造に求められる性能、例えば、向上した熱安定性、高い揮発性及び/又は向上した蒸着速度などを提供することができ、第4族金属元素含有膜又は薄膜の形成に有用に使用されることができる。
【0013】
本願の一実施形態に係る前記第4族金属元素含有化合物は、触媒などのような様々な分野に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本願の一実施例によって製造された化合物1[PrCpZr(NMe]及び比較例化合物それぞれの熱重量分析グラフである。
図2】本願の一実施例によって製造された化合物2[BuCpZr(NMe]の熱重量分析結果及び示差走査熱量分析(differential scanning calorimetry、DSC)結果を示すグラフである。
図3】本願の一実施例によって製造された化合物1[PrCpZr(NMe]及び化合物2[BuCpZr(NMe]を利用した原子層蒸着法の膜成長を基材温度に応じて示すものである。
図4】本願の一実施例によって製造された化合物1[PrCpZr(NMe]を利用した原子層蒸着法の膜成長及び比較例化合物の膜成長を前駆体供給時間に応じて示すものである。
図5】本願の一実施例によって製造された化合物1:PrCpZr(NMeを利用して狭い溝を含む基材上に形成された膜の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した結果である。
図6】本願の一実施例によって製造された化合物1[PrCpZr(NMe]を利用したプラズマ原子層蒸着法の膜成長及び比較例化合物を利用した膜成長を基材温度に応じて示すものである。
図7】本願の一実施例によって製造されたPrCpTi(OMを利用した原子層蒸着法の膜成長を基材温度に応じて示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下では、添付した図面を参照しながら、本願の属する技術分野において通常の知識を有する者が容易に実施できるように本願の実施例を詳しく説明する。ところが、本願は様々な異なる形態に具現されることができ、ここで説明する実施例に限定されるものではない。そして、図面において、本願を明確に説明するために、説明とは関係ない部分は省略しており、明細書全体に亘って類似した部分に対しては類似した図面符号を付けている。
【0016】
本願の明細書全体において、ある部分が他の部分と「連結」されているという場合、これは「直接的に連結」されている場合だけでなく、その中間に他の素子を挟んで「電気的に連結」されている場合も含む。
【0017】
本願の明細書全体において、ある部材が他の部材の「上に」位置しているという場合、これは、ある部材が他の部材に接している場合だけでなく、両部材の間にまた他の部材が存在する場合も含む。
【0018】
本願の明細書全体において、ある部分がある構成要素を「含む」という場合、これは、特に反対の記載がない限り、他の構成要素を除くのではなく、他の構成要素をさらに含み得ることを意味する。本願の明細書全体において使用される程度の用語「約」、「実質的に」などは、言及された意味に固有の製造及び物質許容誤差が提示される場合、その数値で、又はその数値に近接した意味として使用され、本願の理解を助けるために、適確であるか絶対的な数値が言及された開示内容を非良心的な侵害者が不当に用いることを防止するために使用される。本願の明細書全体において使用される程度の用語「~(する)ステップ」又は「~のステップ」は、「~のためのステップ」を意味しない。
【0019】
本願の明細書全体において、マーカッシュ形式の表現に含まれた「これらの組み合わせ(たち)」という用語は、マーカッシュ形式の表現に記載された構成要素からなる群より選択される1つ以上の混合又は組み合わせを意味し、前記構成要素からなる群より選択される1つ以上を含むことを意味する。
【0020】
本願の明細書全体において、「A及び/又はB」という記載は、「A又はB、又はA及びB」を意味する。
【0021】
本願の明細書全体において、「アルキル」という用語は、1~12個の炭素原子、1~10個の炭素原子、1~8個の炭素原子、1~5個の炭素原子、又は1~4個の炭素原子を有する直鎖状又は分枝状のアルキル基及びこれらの全ての可能な異性体を含む。例えば、前記アルキル基としては、メチル基(Me)、エチル基(Et)、n-プロピル基(Pr)、iso-プロピル基(Pr)、n-ブチル基(Bu)、tert-ブチル基(Bu)、iso-ブチル基(Bu)、sec-ブチル基(Bu)、neo-ペンチル基(neoPe)、ヘキシル基、イソヘキシル基、ヘプチル基、4,4-ジメチルペンチル基、オクチル基、2,2,4-トリメチルペンチル基、ノニル基、デシル基、ウン
デシル基、ドデシル基、及びこれらの異性体などが挙げられるが、これに限定されるものではない。
【0022】
本願の明細書全体において、「第4族金属元素」という用語は、周期律表の4番目の族に属する化学元素を意味し、Ti、Zr又はHfを含み得る。
【0023】
本願の明細書全体において、「Cp」という用語は、-Cで表され、「シクロペンタジエニル(cyclopentadienyl)基」の略語を意味する。
【0024】
以下、本願の実施形態を詳しく説明するが、本願がこれに限定されるものではない。
【0025】
本願の第1の側面は、下記化学式Iで表される、第4族金属元素含有化合物を提供する:
[化学式I]
(R)MA
前記化学式Iにおいて、
Mは、Ti、Zr又はHfであり、
は、炭素数3~5の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、
Aは、-NR又は-ORであり、
及びRは、それぞれ独立にメチル又はエチルであり、
は、炭素数1~4の直鎖状又は分枝状のアルキル基である。
【0026】
本願の一実施形態において、前記第4族金属元素含有化合物は、下記化学式1で表されるものであっても良いが、これに限定されるものではない:
[化学式1]
(R)M(NR
前記化学式1において、
Mは、Ti、Zr又はHfであり、
は、炭素数3~5の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、
及びRは、それぞれ独立にメチル又はエチルである。
【0027】
本願の一実施形態において、前記第4族金属元素含有化合物は、下記化学式2で表されるものであっても良いが、これに限定されるものではない:
[化学式2]
(R)M(OR
前記化学式2において、
Mは、Ti、Zr又はHfであり、
は、炭素数3~5の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、
は、炭素数1~4の直鎖状又は分枝状のアルキル基である。
【0028】
本願の一実施形態において、Rは、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、イソペンチル、又はネオペンチルであっても良いが、これに限定されるものではない。
【0029】
本願の一実施形態において、Rは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、又はtert-ブチルであっても良いが、これに限定されるものではない。
【0030】
本願の一実施形態において、前記化学式Iで表される前記第4族金属元素含有化合物の例として、以下のようなTi、Zr、又はHf化合物があるが、これに限定されるもので
はない:
(n-propylcyclopentadienyl)tris(dimethylamido)zirconium[PrCpZr(NMe];(n-propylcyclopentadienyl)tris(ethylmethylamido)zirconium[PrCpZr(NEtMe)];(n-propylcyclopentadienyl)tris(diethylamido)zirconium[PrCpZr(NEt];(n-butylcyclopentadienyl)tris(dimethylamido)zirconium[BuCpZr(NMe];(n-butylcyclopentadienyl)tris(ethylmethylamido)zirconium[BuCpZr(NEtMe)];(n-butylcyclopentadienyl)tris(diethylamido)zirconium[BuCpZr(NEt];(isobutylcyclopentadienyl)tris(dimethylamido)zirconium[isoBuCpZr(NMe];(isobutylcyclopentadienyl)tris(ethylmethylamido)zirconium[isoBuCpZr(NEtMe)];(isobutylcyclopentadienyl)tris(diethylamido)zirconium[isoBuCpZr(NEt];(sec-butylcyclopentadienyl)tris(dimethylamido)zirconium[secBuCpZr(NMe];(sec-butylcyclopentadienyl)tris(ethylmethylamido)zirconium[secBuCpZr(NEtMe)];(sec-butylcyclopentadienyl)tris(diethylamido)zirconium[secBuCpZr(NEt];(neopentylcyclopentadienyl)tris(dimethylamido)zirconium[neoPeCpZr(NMe];(neopentylcyclopentadienyl)tris(ethylmethylamido)zirconium[neoPeCpZr(NEtMe)];(neopentylcyclopentadienyl)tris(diethylamido)zirconium[neoPeCpZr(NEt];(n-propylcyclopentadienyl)tris(dimethylamido)hafnium[PrCpHf(NMe];(n-propylcyclopentadienyl)tris(ethylmethylamido)hafnium[PrCpHf(NEtMe)];(n-propylcyclopentadienyl)tris(diethylamido)hafnium[PrCpHf(NEt];(n-butylcyclopentadienyl)tris(dimethylamido)hafnium[BuCpHf(NMe];(n-butylcyclopentadienyl)tris(ethylmethylamido)hafnium[BuCpHf(NEtMe)];(n-butylcyclopentadienyl)tris(diethylamido)hafnium[BuCpHf(NEt];(isobutylcyclopentadienyl)tris(dimethylamido)hafnium[isoBuCpHf(NMe];(isobutylcyclopentadienyl)tris(ethylmethylamido)hafnium[isoBuCpHf(NEtMe)];(isobutylcyclopentadienyl)tris(diethylamido)hafnium[isoBuCpHf(NEt];(sec-butylcyclopentadienyl)tris(dimethylamido)hafnium[secBuCpHf(NMe];(sec-butylcyclopentadienyl)tris(ethylmethylamido)hafnium[secBuCpHf(NEtMe)];(sec-butylcyclopentadienyl)tris(diethylamido)hafnium[secBuCpHf(NEt];(neope
ntylcyclopentadienyl)tris(dimethylamido)hafnium[neoPeCpHf(NMe];(neopentylcyclopentadienyl)tris(ethylmethylamido)hafnium[neoPeCpHf(NEtMe)];(neopentylcyclopentadienyl)tris(diethylamido)hafnium[neoPeCpHf(NEt];(n-propylcyclopentadienyl)tris(dimethylamido)titanium[PrCpTi(NMe];(n-propylcyclopentadienyl)tris(ethylmethylamido)titanium[PrCpTi(NEtMe)];(n-propylcyclopentadienyl)tris(diethylamido)titanium[PrCpTi(NEt];(n-butylcyclopentadienyl)tris(dimethylamido)titanium[BuCpTi(NMe];(n-butylcyclopentadienyl)tris(ethylmethylamido)titanium[BuCpTi(NEtMe)];(n-butylcyclopentadienyl)tris(diethylamido)titanium[BuCpTi(NEt];(isobutylcyclopentadienyl)tris(dimethylamido)titanium[isoBuCpTi(NMe];(isobutylcyclopentadienyl)tris(ethylmethylamido)titanium[isoBuCpTi(NEtMe)];(isobutylcyclopentadienyl)tris(diethylamido)titanium[isoBuCpTi(NEt];(sec-butylcyclopentadienyl)tris(dimethylamido)titanium[secBuCpTi(NMe];(sec-butylcyclopentadienyl)tris(ethylmethylamido)titanium[secBuCpTi(NEtMe)];(sec-butylcyclopentadienyl)tris(diethylamido)titanium[secBuCpTi(NEt];(neopentylcyclopentadienyl)tris(dimethylamido)titanium[neoPeCpTi(NMe];(neopentylcyclopentadienyl)tris(ethylmethylamido)titanium[neoPeCpTi(NEtMe)];(neopentylcyclopentadienyl)tris(diethylamido)titanium[neoPeCpTi(NEt];(n-propylcyclopentadienyl)trimethoxyzirconium[PrCpZr(OMe)];(n-propylcyclopentadienyl)triethoxyzirconium[PrCpZr(OEt)];(n-propylcyclopentadienyl)triisopropoxyzirconium[PrCpZr(OPr)];(n-butylcyclopentadienyl)trimethoxyzirconium[BuCpZr(OMe)];(n-butylcyclopentadienyl)triethoxyzirconium[BuCpZr(OEt)];(n-butylcyclopentadienyl)triisopropoxyzirconium[BuCpZr(OPr)];(isobutylcyclopentadienyl)trimethoxyzirconium[isoBuCpZr(OMe)];(isobutylcyclopentadienyl)triethoxyzirconium[isoBuCpZr(OEt)];(isobutylcyclopentadienyl)triisopropoxyzirconium[isoBuCpZr(OPr)];(sec-butylcyclopentadienyl)trimethoxyzirconium[secBuCpZr(OMe)];(sec-butylcyclopentadienyl)triethoxyzirconium[secBuCpZr(OEt)];(sec-butylcyc
lopentadienyl)triisopropoxyzirconium[secBuCpZr(OPr)];(neopentylcyclopentadienyl)trimethoxyzirconium[neoPeCpZr(OMe)];(neopentyl cyclopentadienyl)triethoxyzirconium[neoPeCpZr(OEt)];(neopentylcyclopentadienyl)triisopropoxyzirconium[neoPeCpZr(OPr)];(n-propylcyclopentadienyl)trimethoxyhafnium[PrCpHf(OMe)];(n-propylcyclopentadienyl)triethoxyhafnium[PrCpHf(OEt)];(n-propylcyclopentadienyl)triisopropoxyhafnium[PrCpHf(OPr)];(n-butylcyclopentadienyl)trimethoxyhafnium[BuCpHf(OMe)];(n-butylcyclopentadienyl)triethoxyhafnium[BuCpHf(OEt)];(n-butylcyclopentadienyl)triisopropoxyhafnium[BuCpHf(OPr)];(isobutylcyclopentadienyl)trimethoxyhafnium[isoBuCpHf(OMe)];(isobutylcyclopentadienyl)triethoxyhafnium[isoBuCpHf(OEt)];(isobutylcyclopentadienyl)triisopropoxyhafnium[isoBuCpHf(OPr)];(sec-butylcyclopentadienyl)trimethoxyhafnium[secBuCpHf(OMe)];(sec-butylcyclopentadienyl)triethoxyhafnium[secBuCpHf(OEt)];(sec-butylcyclopentadienyl)triisopropoxyhafnium[secBuCpHf(OPr)];(neopentylcyclopentadienyl)trimethoxyhafnium[neoPeCpHf(OMe)];(neopentyl cyclopentadienyl)triethoxyhafnium[neoPeCpHf(OEt)];(neopentylcyclopentadienyl)triisopropoxyhafnium[neoPeCpHf(OPr)];(n-propylcyclopentadienyl)trimethoxytitanium[PrCpTi(OMe)];(n-propylcyclopentadienyl)triethoxytitanium[PrCpTi(OEt)];(n-propylcyclopentadienyl)triisopropoxytitanium[PrCpTi(OPr)];(n-butylcyclopentadienyl)trimethoxytitanium[BuCpTi(OMe)];(n-butylcyclopentadienyl)triethoxytitanium[BuCpTi(OEt)];(n-butylcyclopentadienyl)triisopropoxytitanium[BuCpTi(OPr)];(isobutylcyclopentadienyl)trimethoxytitanium[isoBuCpTi(OMe)];(isobutylcyclopentadienyl)triethoxytitanium[isoBuCpTi(OEt)];(isobutylcyclopentadienyl)triisopropoxytitanium[isoBuCpTi(OPr)];(sec-butylcyclopentadienyl)trimethoxytitanium[secBuCpTi(OMe)];(sec-butylcyclopentadienyl)triethoxytitanium[secBuCpTi(OEt)];(sec-butylcyclopentadienyl)triisopropoxytitanium[secBuCpTi(OPr)];(neopentylcyclopentadienyl)trimethoxytitanium[neoPeCpTi(OMe)];(ne
opentyl cyclopentadienyl)triethoxytitanium[neoPeCpTi(OEt)];(neopentylcyclopentadienyl)triisopropoxytitanium[neoPeCpTi(OPr)]。
【0031】
本願の一実施形態において、前記第4族金属元素含有化合物は、常温で液体であり、安定している。
【0032】
本願の第2の側面は、前記本願の第1の側面に係る第4族金属元素含有化合物の製造方法を提供する。
【0033】
本願の一実施形態において、前記製造方法は、下記化学式3の化合物と下記化学式4の化合物とを反応させ、前記化学式1で表される前記第4族金属元素含有化合物を得ることを含んでいても良い:
[化学式3]

[化学式4]
M(NR
[化学式1]
(R)M(NR
前記化学式3、化学式4、及び化学式1のそれぞれにおいて、
は、炭素数3~5の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、
Mは、Ti、Zr又はHfであり、
及びRは、それぞれ独立にメチル又はエチルである。
【0034】
本願の他の実施形態において、前記製造方法は、前記実施形態で得られた下記化学式1の化合物と下記化学式5の化合物とを反応させ、下記化学式2で表される前記第4族金属元素含有化合物を得ることを含んでいても良い:
[化学式1]
(R)M(NR
[化学式5]
OH;
[化学式2]
(R)M(OR
前記化学式1、化学式5、及び化学式2のそれぞれにおいて、
Mは、Ti、Zr又はHfであり、
は、炭素数3~5の直鎖状又は分枝状のアルキル基であり、
及びRは、それぞれ独立にメチル又はエチルであり、
は、炭素数1~4の直鎖状又は分枝状のアルキル基である。
【0035】
本願の実施形態において、前記化学式3の化合物と前記化学式4の化合物とを反応させたり、又は前記化学式1の化合物と前記化学式5の化合物とを反応させることは、有機溶媒中で行われも良い。前記有機溶媒は、非極性有機溶媒であって、本技術分野において公知のものを特に制限されることなく使用することができる。例えば、前記有機溶媒は、n-ヘキサン、ベンゼン、トルエンなど、非極性有機溶媒を含んでいても良いが、これに限定されるものではない。
【0036】
本願の実施形態において、前記化学式3の化合物と前記化学式4の化合物とを反応させたり、又は前記化学式1の化合物と前記化学式5の化合物とを反応させることは、常温で行われても良い。
【0037】
本願の一実施形態において、前記化学式3の化合物を有機溶媒と混合した後、前記化学式4の化合物を徐々に滴加して常温で反応させ(1時間以上、3時間以下、又は5時間以下)、その後、減圧下で前記溶媒を除去し、減圧蒸溜することで、常温で液体である前記化学式1の第4族金属元素含有化合物を得ることができる。
【0038】
本願の一実施形態において、前記化学式1の化合物を有機溶媒と混合した後、前記化学式5の化合物を徐々に滴加して常温で反応させ(1時間以上、3時間以下、又は5時間以下)、その後、減圧下で前記溶媒を除去し、減圧蒸溜することで、常温で液体である前記化学式2の第4族金属元素含有化合物を得ることができる。
【0039】
本願の第1の側面について上記した内容は、何れも本願の第2の側面に適用される。
【0040】
本願の第3の側面は、前記本願の第1の側面に係る第4族金属元素含有化合物を含む、膜形成用前駆体組成物を提供する。
【0041】
本願の一実施形態において、前記膜形成用前駆体組成物は、第4族金属元素含有膜又は薄膜の蒸着に使用されても良い。前記第4族金属元素含有膜又は薄膜は、約1ナノメートル~数マイクロメートルの厚さであっても良いが、これに限定されるものではない。
【0042】
本願の一実施形態において、前記第4族金属元素含有膜は、第4族金属元素含有酸化膜、窒化膜、酸窒化膜、炭化膜、又は炭窒化膜を含んでいても良いが、これに限定されるものではない。
【0043】
本願の一実施形態において、前記第4族金属元素含有膜は、2つ以上の前記第4族金属元素を含有するか、前記第4族金属元素1つ以上と共に他の追加金属元素1つ以上を含有していても良い。前記追加金属は、本技術分野において公知のものを特に制限されることなく含んでいても良く、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、柱石(Sn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta);及びランタン系原子、より特別には、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びランタン(La)、及び希土類金属原子からなる群より選択される1つ以上の金属であっても良いが、これに限定されるものではない。
【0044】
本願の一実施形態において、前記第4族金属元素含有膜は、気相蒸着により形成されても良い。例えば、前記気相蒸着は、化学気相蒸着、低圧気相蒸着、プラズマ強化された化学気相蒸着、サイクリック化学気相蒸着、プラズマ強化されたサイクリック化学気相蒸着、原子層蒸着、及びプラズマ強化された原子層蒸着からなる群より選択された1つ以上であっても良いが、これに限定されるものではない。
【0045】
本願の第1の側面について上記した内容は、何れも本願の第3の側面に適用される。
【0046】
本願の第4の側面は、前記本願の第1の側面に係る第4族金属元素含有化合物を前駆体として利用して第4族金属元素含有膜又は薄膜を形成することを含む、第4族金属元素含有膜又は薄膜の形成方法を提供する。前記第4族金属元素含有膜は、2つ以上の第4族金属元素を含有するか、前記第4族金属元素1つ以上と共に他の追加金属元素1つ以上を含有していても良い。
【0047】
本願の一実施形態において、前記第4族金属元素含有膜又は薄膜の形成方法は、蒸着チ
ャンバ内に位置した基材に前記第4族金属元素含有膜又は薄膜形成用前駆体組成物を供給して蒸着させることで第4族金属元素含有膜又は薄膜を形成することを含んでいても良いが、これに限定されるものではない。前記膜の形成方法は、本技術分野において公知の方法、装置などを利用することができ、必要な場合、1つ以上の追加反応気体を共に利用して行うことができる。前記基材としては、シリコン半導体ウェハ、化合物半導体ウェハを使用しても良いが、これに限定されるものではない。孔や溝のある基材を使用しても良く、例えば、触媒の目的で使用するために表面積の広い多孔質の基材を使用しても良い。
【0048】
本願の一実施形態において、前記第4族金属元素含有膜は、気相蒸着により形成されても良い。例えば、前記気相蒸着は、化学気相蒸着(CVD)、低圧気相蒸着(LPCVD)、プラズマ強化された化学気相蒸着(PECVD)、サイクリック化学気相蒸着(cyclic CVD)、プラズマ強化されたサイクリック化学気相蒸着(PE cyclic CVD)、原子層蒸着(ALD)、及びプラズマ強化された原子層蒸着(PEALD)からなる群より選択された1つ以上であっても良いが、これに限定されるものではない。
【0049】
本願の一実施形態において、前記第4族金属元素含有膜又は薄膜の形成方法は、下記を含んでいても良いが、これに限定されるものではない:
前記基材の1つ以上の表面を反応チャンバに提供するステップ;
前記第4族金属元素含有化合物を含む前駆体を前記反応チャンバに導入するステップ;及び
反応ガスを前記反応チャンバに導入するステップ;
ここで、気相蒸着により前記基材の1つ以上の表面上に第4族金属元素含有膜を形成させる。
【0050】
本願の一実施形態において、前記第4族金属元素含有膜は、第4族金属元素含有酸化膜、窒化膜、酸窒化膜、炭化膜、又は炭窒化膜を含んでいても良いが、これに限定されるものではない。
【0051】
本願の一実施形態において、前記第4族金属元素含有膜は、2つ以上の前記第4族金属元素を含有するか、前記第4族金属元素1つ以上と共に他の追加金属元素1つ以上を含有していても良い。前記第4族金属元素と共に他の追加金属元素を含有する膜は、前記第4族金属元素含有膜又は薄膜の形成方法において、前記第4族金属元素含有化合物を含む第1の前駆体と同一あるいは異なる金属元素を含有する追加前駆体1つ以上を前記第4族金属元素含有化合物を含む1つ以上の追加前駆体と同時に又は順次に供給することで形成されるものであっても良いが、これに限定されるものではない。前記前駆体を順次に供給する場合、各前駆体の供給の間に前記反応ガス及び/又はパージガスが供給されても良いが、これに限定されるものではなく、本技術分野において公知の蒸着工程を通常の技術者が適切に選択して使用することができる。
【0052】
前記追加金属は、本技術分野において公知のものを特に制限されることなく含んでいても良く、例えば、マグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、亜鉛(Zn)、ホウ素(B)、アルミニウム(Al)、インジウム(In)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、柱石(Sn)、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム(Zr)、チタン(Ti)、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta);及びランタン系原子、より特別には、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)及びランタン(La)、及び希土類金属原子からなる群より選択される1つ以上の金属であっても良いが、これに限定されるものではない。前記追加金属元素を含有する前駆体は、本技術分野において公知のものを特に制限されることなく使用することができる。
【0053】
本願の一実施形態において、前記反応ガスは、酸素含有供給源、窒素含有供給源、炭素供給源、還元剤、及びこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを含んでいても良いが、これに限定されるものではない。
【0054】
本願の一実施形態において、前記窒素含有供給源が、窒素(N)、窒素含有ラジカル、アンモニア、ヒドラジン、モノアルキルヒドラジン、ジアルキルヒドラジン、窒素/水素、アンモニアプラズマ、窒素プラズマ、窒素/水素プラズマ、及びこれらの混合物からなる群より選択されるものであっても良いが、これに限定されるものではない。
【0055】
特定の具体例において、窒素含有供給源は、約1~約2000平方立方センチメートル(square cubic centimeters、sccm)又は約1~約1000sccm範囲の流速で反応器に導入されるアンモニアプラズマ又は水素/窒素プラズマ供給源ガスを含む。窒素含有供給源は、約0.1~約100秒範囲の時間の間導入されても良い。フィルムがALD又はサイクリックCVD工程により蒸着される具体例において、前駆体パルスは約0.01秒を超えるパルス持続期間を有し、窒素含有供給源は約0.01秒を超えるパルス持続期間を有する一方、水パルス持続期間は約0.01秒を超えるパルス持続期間を有しても良い。他の具体例において、パルス間のパージ持続期間は0秒だけ低いか、中間にパージなしにパルスを連続しても良い。
【0056】
本願の一実施形態において、前記酸素含有供給源は、1つ以上の酸素含有供給源の形態で反応器に導入されても良く、あるいは、蒸着工程に利用されたその他の前駆体に付随的に存在しても良い。適合した酸素含有供給源ガスは、例えば、水(HO)(例えば、脱イオン水、精製水、及び/又は蒸留水)、H、酸素(O)、酸素含有ラジカル、酸素プラズマ、オゾン(O)、NO、NO、NO、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO)、及びこれらの混合物を含む。特定の具体例において、酸素含有供給源は、約1~約2000sccm又は約1~約1000sccm範囲の流速で反応器に導入される酸素含有供給源ガスを含む。酸素含有供給源は、約0.1~約100秒範囲の時間の間導入されても良い。特定の一具体例において、酸素含有供給源は、10℃又はそれを超える温度を有する水を含む。膜がALD又はサイクリックCVD工程により蒸着される具体例において、前駆体パルスは、約0.01秒を超えるパルス持続期間を有しても良く、酸素含有供給源は、約0.01秒を超えるパルス持続期間を有する一方、水パルス持続期間は、約0.01秒を超えるパルス持続期間を有しても良いが、これに限定されるものではない。
【0057】
本願の一実施形態において、反応性種は、窒素と酸素供給源の全て、より特別には、NO、NO、NO、N、N、及びこれらの混合物から選択されても良いが、これに限定されるものではない。
【0058】
必要なN/O比に従い、必要に応じて上記したような方法で使用される反応性種は、酸素供給源、酸素供給源の混合物及び窒素供給源の混合物、酸素と窒素供給源の全て、又はこれらの混合物であっても良いが、これに限定されるものではない。本願の一実施形態において、前記第4族金属元素含有膜が炭化膜、又は炭窒化膜のように炭素を含有する場合、1種以上の炭素供給源を使用しても良く、例えば、メタン、エタン、プロパン、ブタン、エチレン、プロピレン、t-ブチレンなどを使用しても良いが、これに限定されるものではない。
【0059】
本願の一実施形態において、前記還元剤は、水素、水素プラズマ、及び塩化水素からなる群より選択されるものを含んでいても良いが、これに限定されるものではない。
【0060】
本願に開示された蒸着方法は、1つ以上のパージガスを含んでいても良い。消耗されな
かった反応物及び/又は反応副産物をパージさせるのに使用されるパージガスは、前駆体と反応しない不活性ガスである。パージガスの例としては、アルゴン(Ar)、窒素(N)、ヘリウム(He)、ネオン、水素(H)、及びこれらの混合物を含むが、これに限定されるものではない。特定の具体例において、パージガス、例えばArは、約0.1~100秒の間に約10~約2000sccm範囲の流速で反応器に供給され、これにより、反応器に残留し得る未反応物質及び任意の副産物がパージされる。
【0061】
前記前駆体、酸素含有供給源、窒素含有供給源、及び/又は他の前駆体、供給源ガス、及び/又は試薬を供給するそれぞれのステップは、生成される第4族金属元素含有膜の化学量論組成を変更させるためにこれらを供給する時間を変更することで行われても良い。
【0062】
前記反応を誘導し、基板上に第4族金属元素含有膜又はコーティングを形成するために、前駆体、窒素含有供給源、還元剤、他の前駆体又はこれらの混合物のうち1つ以上にエネルギーが供給される。このようなエネルギーは、熱、プラズマ、パルス化されたプラズマ、ヘリコンプラズマ、高密度プラズマ、誘導的にカップリングされたプラズマ、X線、e-ビーム、光子、リモートプラズマ方法、及びこれらの組み合わせにより提供されても良いが、これに限定されるものではない。特定の具体例において、基板の表面でプラズマ特徴を変更させるために2次RF周波数供給源が利用されても良い。蒸着がプラズマを含む具体例において、プラズマ発生工程は、プラズマが反応器で直接発生する直接プラズマ発生工程、あるいは代案として、プラズマが反応器の外部で発生し、反応器に供給されるリモートプラズマ発生工程を含んでいても良い。
【0063】
本願の一実施形態において、前記基材の温度は、室温以上、約100℃以上、約150℃以上、約200℃以上、約250℃以上、約280℃以上、約300℃以上、又は約350℃以上であっても良いが、これに限定されるものではない。例えば、前記基材の温度は、室温以上~約500℃以下、約100℃以上~約500℃以下、約150℃以上~約500℃以下、約200℃以上~約500℃以下、約250℃以上~約500℃以下、約280℃以上~約500℃以下、約300℃以上~約500℃以下、又は約350℃以上~約500℃以下であっても良いが、これに限定されるものではない。
【0064】
本願の一実施形態において、前記第4族金属元素含有化合物を含む前駆体を利用して約280℃、約300℃、又はそれ以上の温度でも均一な厚さの前記第4族金属元素含有膜を形成することができる。このような第4族金属元素含有膜は、高誘電物質膜として有用に使用されることができる。
【0065】
本願の一実施形態において、前記基材の少なくとも一部の上に第4族金属元素含有膜を蒸着するために使用しても良い。適合した前記基材の例は、シリコン、SiO、Si、OSG、FSG、炭化シリコン、水素化された炭化シリコン、窒化シリコン、水素化された窒化シリコン、炭窒化シリコン、水素化された炭窒化シリコン、窒化ホウ素、反射防止コーティング、フォトレジスト、可撓性基板、有機ポリマー、多孔性有機及び無機物質、金属、例えば銅及びアルミニウム、及び拡散バリア層、例えばTiN、Ti(C)N、TaN、Ta(C)N、Ta、W、又はWN(これに限定されるものではない)を含むが、これに限定されるものではない。膜は様々な後続の加工ステップ、例えば化学機械研磨(chemical mechanical planarization;CMP)及び異方性エッチング工程と両立しても良い。
【0066】
本願の一実施形態において、前記第4族金属元素含有膜又は薄膜は、約1ナノメートル~数マイクロメートルの厚さであっても良いが、これに限定されるものではない。
【0067】
本願の一実施形態において、前記第4族金属元素含有膜又は薄膜は、半導体素子の高誘
電膜、化学反応触媒などとして利用しても良いが、これに限定されるものではない。
【0068】
本願の第1の側面について上記した内容は、何れも本願の第4の側面に適用される。
【0069】
本願の一実施形態において、前記膜を蒸着することは、有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)又は原子層蒸着法(ALD)によって行われても良いが、これに限定されるものではない。前記有機金属化学気相蒸着法(MOCVD)又は原子層蒸着法(ALD)は、本技術分野において公知の蒸着装置、蒸着条件、追加反応気体などを利用して行われても良い。
【0070】
前記前駆体として利用される前記第4族金属元素含有化合物は、熱安定性が高く、原子層蒸着法又は化学気相蒸着法の前駆体として使用して第4族金属元素含有膜を形成することができ、特に、表面に凹凸(溝)のある基材又は多孔性基材上にも数nm~数十nm厚さの第4族金属元素含有膜を均一に形成することができる。例えば、前記第4族金属元素含有化合物前駆体は、縦横比が約1以上、約2以上、約5以上、約10以上、約20以上、約30以上、又は約40以上であり、幅が約1μm以下、約500nm以下、約400nm以下、約300nm以下、約200nm以下、約100nm以下、約80nm以下、約60nm以下、約50nm以下、約40nm以下、約30nm以下、約20nm以下、又は約10nm以下である微細な凹凸(溝)が表面にある基材において、前記微細な凹凸(溝)の最も深いところの表面及び前記微細な凹凸(溝)の上部表面を含む前記微細な凹凸(溝)の表面を含み、前記基材の全体表面上に数nm~数十nm厚さの第4族金属元素含有膜を均一に形成することができる優れた効果を有する。
【実施例
【0071】
以下、本願について実施例を利用してさらに具体的に説明するが、下記実施例は、本願の理解を助けるために例示するだけであり、本願の内容が下記実施例に限定されるものではない。
【0072】
<実施例1>化合物1[PrCpZr(NMe]の製造
火炎乾燥した1Lのシュレンクフラスコにテトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム[Zr(N(CH]91.3g(0.341mol)とn-ヘキサン(n-hexane)400mLを入れた後、室温を維持した。ここにノルマルプロピルシクロペンタジエン37g(0.341mol)を徐々に滴加した後、反応溶液を3時間常温で攪拌した。
【0073】
前記反応が完了した後、減圧下で溶媒を除去し、減圧下で蒸溜して、浅黄色の液体である下記化合物1を79g(収率70%)得た。
【0074】
<化合物1>
【化1】

沸点(bp)100℃(0.4torr);
元素分析(elemental analysis)計算値-(C1429Zr):C50.86、H8.84、N12.71;実測値C50.76、H8.81、N12.79;
1H-NMR(400MHz、C、25℃):δ6.013、5.923(m、4H、C -CHCHCH)、δ2.958(s、18H、N(C )、δ2.469(t、2H、C-C CHCH)、δ1.576(m、2H、C-CHCHCH)、δ0.920(t、3H、C-CHCH )。
【0075】
本実施例による前記化合物1と比較例であるCpZr[N(CHのそれぞれの熱重量分析結果を図1に示す。図1の熱重量分析の際、残量が約3%程度であるので、本実施例による前記ジルコニウム液体化合物が膜(薄膜)形成前駆体として使用するのに有利であることを示している。
【0076】
<実施例2>化合物2[BuCpZr(NMe]の製造
火炎乾燥した1Lのシュレンクフラスコにおいて、テトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム(VI)[tetrakis(dimethylamido)zirconium]109g(0.407mol)とn-ヘキサン(n-hexane、C14)400mLを入れた後、室温を維持した。前記フラスコにノルマルブチルシクロペンタジエン(n-butyl cyclopentadiene)52g(0.428mol)を徐々に滴加した後、反応溶液を3時間常温で攪拌した。
【0077】
前記反応が完了した後、減圧下で溶媒を除去し、減圧下で蒸溜して、浅黄色の液体である下記化合物2を98g(収率70%)得た。
【0078】
<化合物2>
【化2】

沸点(bp)110℃(0.3torr);
元素分析(elemental analysis)計算値-(C1531Zr):C52.27、H9.07、N12.19;実測値C52.28、H9.05、N12.17;
1H-NMR(400MHz、C、25℃):δ6.015、5.935(m、4H、C -CHCHCHCH)、δ2.962(s、18H、N(C )、δ2.514(t、2H、C-C CHCHCH)、δ1.524(m、2H、C-CH CHCH)、δ1.314(m、2H、C-CHCH CH)、δ0.908(t、3H、C-CHCHCH
【0079】
本実施例による前記化合物2の熱重量分析結果と示差走査熱量分析(differential scanning calorimetry、DSC)結果を図2に示す。
【0080】
<実施例3>化合物1とオゾン(O)気体を使用した原子層蒸着法によるジルコニウム酸化膜の形成
実施例1によって製造された化合物1[PrCpZr(NMe]を前駆体として使用し、原子層蒸着法(ALD)を利用してシリコン基材にジルコニウム酸化膜を形成する実験を行った。シャワーヘッドを使用せず、供給気体が基材の表面と水平な方向に流れる(lateral flow)ALD反応器を使用した。前記基材(シリコン)は、290℃~350℃に加熱した。また、ステンレス鋼材質の容器に入れた前駆体化合物を110℃の温度に加熱し、60sccm流速のアルゴン(Ar)ガスを前記容器に通過させることによって、前記前駆体化合物を原子層蒸着法を行うためのALD反応器に供給した。前記ALD反応器の内部圧力は、3torrに維持した。前記ALD反応器に前記前駆体化合物気体を5秒間供給し、その後にアルゴン気体を5秒間供給し、その後にオゾン(O)気体を5秒間供給し、その後に再びアルゴン気体を5秒間供給するALD原料供給周期を200回繰り返した。前記工程により形成したジルコニウム酸化物薄膜の原料供給周期当たりの膜成長を図3に示す。図3に示すように、基材温度290℃~350℃の範囲でALD原料供給周期当たりの膜成長が一定であることが分かる。
【0081】
基材温度を300℃に維持し、実施例1によって製造された化合物1[PrCpZr(NMe]の気体供給時間を5、10、15、20、25、30秒間供給し、その後にアルゴン気体を10秒間供給し、その後にオゾン(O)気体を20秒間供給し、その後に再びアルゴン気体を10秒間供給するALD原料供給周期を100回繰り返した。前記工程により形成したジルコニウム酸化物薄膜の原料供給周期当たりの膜成長を図4に示す。図4に示すように、基材温度300℃で実施例1によって製造された前記化合物1の気体供給時間を5秒から30秒まで増加させた際、ALD原料供給周期当たりの膜成長
が比較的一定に維持されることが分かる。ALD原料供給周期において、第4族金属前駆体気体供給時間を増加させた際の膜成長が一定であることが、微細な凹凸(溝)が表面にある基材の全体表面上に第4族金属元素含有膜を均一に形成するのに有利である。
【0082】
図5は、縦横比10:1の微細な溝を含む基材を300℃に加熱し、上記のようなALD原料供給周期を80回繰り返して形成した膜の断面を透過電子顕微鏡(TEM)で観察した結果である。前記基材にある溝の最も深いところの表面と溝の上部表面を全て含み、前記基材の全体表面に均一な厚さの膜が約7nmの厚さで形成されたことが分かる。
【0083】
<実施例4>化合物2とオゾン(O)気体を使用した原子層蒸着法によるジルコニウム酸化膜の形成
実施例2によって製造された化合物2[BuCpZr(NMe]を使用し、原子層蒸着法(ALD)を利用してシリコン基材にジルコニウム酸化膜を形成する実験を行った。実施例3と同じALD反応器を使用した。前記基材は、290℃~350℃に加熱した。また、ステンレス鋼材質の容器に入れた前記前駆体化合物2を110℃の温度に加熱し、60sccm流速のアルゴン(Ar)ガスを前記容器に通過させることによって、前記前駆体化合物を原子層蒸着法を行うためのALD反応器に供給した。前記ALD反応器の内部圧力は、3torrに維持した。前記ALD反応器に前記前駆体化合物2の気体を5秒間供給し、その後にアルゴン気体を5秒間供給し、その後にオゾン(O)気体を5秒間供給し、その後に再びアルゴン気体を5秒間供給するALD原料供給周期を200回繰り返した。前記工程により形成したジルコニウム酸化物薄膜のALD原料供給周期当たりの膜成長を図3に示す。図3に示すように、基材温度290℃~350℃の範囲でALD原料供給周期当たりの膜成長が一定であることが分かる。
【0084】
<実施例5>化合物1と酸素(O)気体プラズマを使用した原子層蒸着法によるジルコニウム酸化膜の形成
ステンレス鋼材質の容器に入れた前記化合物1[PrCpZr(NMe]を前駆体として使用し、プラズマ原子層蒸着法(PEALD)を利用してジルコニウム酸化膜を形成する実験を行った。供給気体をシャワーヘッドを介して基材の表面と垂直な方向に供給するPEALD反応器を使用した。シャワーヘッドと基材が置かれたヒータの間にラジオ波(RF)電力を断続的に印加してO気体プラズマを形成した。このとき、前記基材は、250、300、350、400、450℃の温度に加熱した。また、ステンレス鋼材質の容器に入れた前駆体化合物を110℃の温度に加熱し、60sccm流速のアルゴン(Ar)ガスを前記容器に通過させることによって、前記前駆体化合物1を原子層蒸着法を行うためのALD反応器に供給した。前記ALD反応器の内部圧力は、3torrに維持した。前記ALD反応器に前記前駆体化合物1の気体を15秒間供給し、その後にアルゴン気体を10秒間供給し、その後に酸素(O)気体を20秒間供給すると同時にラジオ波(RF)電力を印加することで基材が置かれたALDチャンバの内部にプラズマを発生させ、その後に再びアルゴン気体を10秒間供給するPEALD原料供給周期を100回繰り返した。前記工程により形成したジルコニウム酸化物薄膜の原料供給周期当たりの膜成長を図6に示す。図6に示すように、基材を450℃まで加熱してもALD原料供給周期当たりの膜成長があまり増加しないことが分かる。これは、比較例のZr化合物に比べ、実施例1によって製造された化合物1[PrCpZr(NMe]の方が、高い基材温度で一定の厚さのジルコニウム酸化膜を形成するのに有利であるということを示す。
【0085】
<比較例1>CpZr[N(CH及びEtCpZr[N(CH化合物とオゾン(O)気体を使用した原子層蒸着法によるジルコニウム酸化膜の形成
ステンレス鋼材質の容器に入れたCpZr[N(CH及びEtCpZr[N(CH化合物を90℃の温度に、EtCpZr[N(CH化合物を
105℃の温度にそれぞれ加熱したことを除いては実施例3と同じ条件でジルコニウム酸化膜を形成した。実施例3と同じALD反応器を使用した。基材温度を300℃に維持し、CpZr[N(CH又はEtCpZr[N(CHの気体供給時間を5、10、15、20、25、30秒間供給し、その後にアルゴン気体を10秒間供給し、その後にオゾン(O)気体を20秒間供給し、その後に再びアルゴン気体を10秒間供給するALD原料供給周期を100回繰り返した。前記工程により形成したジルコニウム酸化物薄膜の原料供給周期当たりの膜成長を図4に示す。図4に示すように、CpZr[N(CH、EtCpZr[N(CH化合物は、気体供給時間を5秒から30秒まで増加させた際、ALD原料供給周期当たりの膜成長が増加することが分かる。ALD原料供給周期において、第4族金属前駆体気体供給時間を増加させた際の膜成長が増加すれば、微細な凹凸(溝)が表面にある基材の上部表面の方が、溝の最も深いところに比べて膜成長が大きいため、凹凸(溝)のある基材の全体表面上に第4族金属元素含有膜を均一に形成するのに不利である。
【0086】
<比較例2>CpZr[N(CH及びEtCpZr[N(CH化合物と酸素(O)気体プラズマを使用した原子層蒸着法によるジルコニウム酸化膜の形成
ステンレス鋼材質の容器に入れたCpZr[N(CH化合物を90℃の温度に、EtCpZr[N(CH化合物を105℃の温度にそれぞれ加熱したことを除いては実施例5と同じ条件でプラズマ原子層蒸着法によりジルコニウム酸化膜を形成した。実施例5と同じPEALD反応器を使用した。このようにして形成したジルコニウム酸化物薄膜の原料供給周期当たりの膜成長を図6に示す。図6に示すように、CpZr[N(CH化合物とEtCpZr[N(CH化合物は、基材温度400、450℃で膜成長が大きく増加することが分かり、これは、CpZr[N(CH化合物とEtCpZr[N(CH化合物を使用したプラズマ原子層蒸着法では、この温度で一定の厚さのジルコニウム酸化膜を形成することが難しいということを示す。比較例2と実施例5の結果を比較すると、CpZr[N(CH化合物とEtCpZr[N(CH化合物に比べ、実施例1によって製造された化合物1[PrCpZr(NMe]の方が、高い基材温度で一定の厚さのジルコニウム酸化膜を形成するのに有利であるということが分かる。
【0087】
実施例3、4、5及び比較例1、2から、本願の新規Zr化合物を使用する原子層蒸着法の方が、従来公知のCpZr[N(CH及びEtCpZr[N(CH化合物気体を使用した原子層蒸着法よりも高い温度で、溝(凹凸)のある基材において前記溝の最も深いところの表面と溝の上部表面の全てを含み、前記基材の全体表面にジルコニウム酸化膜を均一な厚さで形成するのに有利であるということが分かる。
【0088】
本願の実施例による前記PrCpZr(NMe化合物の方が遥かに高い温度でALDが可能な理由は、PrCp基末端の-CHCHCHがジルコニウム金属と反応し、基材の表面に以下のように安定した形態で結合するためであっても良い:
【化3】
【0089】
前記比較例において使用したCpZr[N(CH化合物は、このように結合できる末端を有しておらず、EtCpZr[N(CH化合物では、EtCp基末端の-CHCHが短く、Zr金属と結合することが難しい。従って、本願の実施形態及び実施例による(R)MA化合物において、RCpは、Cpに炭素原子3つ以上が鎖で繋がっている形態(isoPrCpとtertBuCpを除いた形態)がより好ましい。
【0090】
<実施例6>PrCpZr(NEt及びPrCpZr(NEtMe)化合物の製造
実施例1で使用したテトラキス(ジメチルアミノ)ジルコニウム[Zr(NMe]の代わりにテトラキス(ジエチルアミノ)ジルコニウム[Zr(NEt]又はテトラキス(エチルメチルアミノ)ジルコニウム[Zr(NEtMe)]を使用することを除いては実施例1と同じ方法で前駆体物質であるPrCpZr(NEt又はPrCpZr(NEtMe)を製造した。
【0091】
<実施例7>PrCpHf(NMe化合物の製造
火炎乾燥した1Lのシュレンクフラスコにテトラキス(ジメチルアミノ)ハフニウム[Hf(N(CH]とn-ヘキサンを入れた後、室温を維持した。ここにノルマルプロピルシクロペンタジエンを徐々に滴加した後、反応溶液を3時間常温で攪拌した。
【0092】
前記反応が完了した後、減圧下で溶媒を除去し、減圧下で蒸溜して、PrCpHf(NMeで表される浅黄色の液体化合物を得た。
【0093】
沸点(bp)100℃(0.3torr);
1H-NMR(400MHz、C、25℃):δ5.985、5.901(m、4H、C -CHCHCH)、δ2.991(s、18H、N(C )、δ2.489(t、2H、C-C CHCH)、δ1.545(m、2H、C-CHCHCH)、δ0.908(t、3H、C-CHCH )。
【0094】
<実施例8>PrCpTi(NMe化合物の製造
火炎乾燥した1Lのシュレンクフラスコにテトラキス(ジメチルアミノ)チタン[Ti(N(CH]とn-ヘキサンを入れた後、室温を維持した。ここにノルマルプロピルシクロペンタジエンを徐々に滴加した後、反応溶液を3時間常温で攪拌した。
【0095】
前記反応が完了した後、減圧下で溶媒を除去し、減圧下で蒸溜して、PrCpTi(NMeで表される浅黄色の液体化合物を得た。
【0096】
<実施例9>PrCpTi(OMe)の製造
火炎乾燥した250mLのシュレンクフラスコに前記実施例8によって製造されたPrCpTi(NMeとn-ヘキサンを入れた後、メタノール(methanol)を前記フラスコに徐々に滴加し、2時間常温で攪拌した。
【0097】
前記反応が完了した後、減圧下で溶媒及び揮発性副反応物を除去してから減圧下で蒸溜して、PrCpTi(OMe)で表される浅黄色の液体化合物を得た。
【0098】
沸点(bp)80℃(0.25torr);
1H-NMR(400MHz、C、25):δ5.989、5.956(m、4H、C -CHCHCH)、δ4.045(s、6H、OC )、δ2.520(t、2H、C-C CHCH)、δ1.566(m、2H、C-CHCHCH)、δ0.887(t、3H、C-CHCH )。
【0099】
<実施例10>PrCpTi(OMe)化合物とオゾン(O)気体を使用した原子層蒸着法によるチタン酸化膜の形成
実施例9によって製造されたPrCpTi(OMe)を前駆体として使用し、オゾン(O)気体を反応気体として使用する原子層蒸着法(ALD)を利用してチタン酸化膜を形成する実験を行った。このとき、基材は、シリコン(Si)ウェハを使用した。前記基材は、250℃~350℃に加熱した。また、ステンレス鋼材質の容器に入れた前駆体化合物を90℃の温度で加熱し、60sccm流速のアルゴン(Ar)ガスを前記容器に通過させることによって、前記前駆体化合物を原子層蒸着法を行うためのALD反応器に供給した。前記ALD反応器の内部圧力は、3torrに維持した。前記ALD反応器に前記前駆体化合物気体を10秒間供給し、その後にアルゴン気体を10秒間供給し、その後にオゾン(O)気体を10秒間供給し、その後に再びアルゴン気体を10秒間供給するALD原料供給周期を200回繰り返した。前記工程により形成したチタン酸化物薄膜の原料供給周期当たりの膜成長を図7に示す。図7に示すように、基材温度250℃~350℃の範囲でALD原料供給周期当たりの膜成長が0.05nm/cycleとして概ね一定であることが分かる。
【0100】
上述した本願の説明は例示のためのものであり、本願の属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、本願の技術的思想や必須の特徴を変更せずに他の具体的な形態に容易に変形可能であるということを理解できるはずである。それゆえ、上記した実施例は全ての面において例示的なものであり、限定的なものではないと理解すべきである。例えば、単一型で説明されている各構成要素は分散して実施されても良く、同様に、分散したものと説明されている構成要素も結合された形態で実施されても良い。
【0101】
本願の範囲は、上記詳細な説明よりは後述する特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲の意味及び範囲、並びにその均等概念から導出される全ての変更又は変形された形態が本願の範囲に含まれると解釈されなければならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7