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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】アンカーボルトの下穴形成確認装置
(51)【国際特許分類】
   G01B 5/18 20060101AFI20230810BHJP
   G01B 3/28 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
G01B5/18
G01B3/28
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022026279
(22)【出願日】2022-02-24
(62)【分割の表示】P 2021031584の分割
【原出願日】2021-03-01
(65)【公開番号】P2022133247
(43)【公開日】2022-09-13
【審査請求日】2023-05-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521173306
【氏名又は名称】株式会社柴田工業
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】矢島 寿範
【審査官】櫻井 仁
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-093702(JP,U)
【文献】特開平01-174901(JP,A)
【文献】特開2009-168660(JP,A)
【文献】米国特許第5497560(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 3/28
G01B 5/18
G01B 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンクリート壁面に形成されたアンカーボルト用の下穴の形成確認装置であって、
前記下穴に、前記下穴の軸方向に沿って挿入される検査探部と、
前記検査探部を進退自在に保持する本体と、
前記検査探部の先端に取り付けられ、前記下穴の内径の下限φSと等しい内径を有する内径確認部と、
前記検査探部の前記軸方向の進退位置の変化によって動作し、前記下穴に挿入された前記検査探部の先端が、前記下穴の許容深さの下限値D1を超え、かつ上限値D2に至る以前に、前記下穴の底部に達した場合にオンとなるスイッチと、
前記スイッチがオンになったときに動作する報知部を駆動する電気回路と、
を備える下穴形成確認装置。
【請求項2】
前記本体の前記検査探部側に設けられた移動部であって、前記検査探部が下穴に挿入されて、前記コンクリート壁面に接すると移動する移動部を備え、
前記スイッチは、
前記下穴に挿入された前記検査探部の先端が、前記下穴の許容深さの上限値D2に至る以前に、前記下穴の底部に達した場合にオンとなる第1スイッチと、
前記移動部が前記下穴が形成された被加工面に接した場合にオンとなる第2スイッチとを備え、
前記電気回路は、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチが共にオンとなった場合に前記スイッチがオンになったと判断する、
請求項1に記載の下穴形成確認装置。
【請求項3】
前記検査探部の外周に設けられ、前記検査探部の径方向に、前記下穴の内径の上限φLだけ隔たった少なくとも2つの動作点を有するスイッチであって、前記下穴に前記検査探部が挿入されたとき、前記少なくとも2つの動作点に前記下穴の内壁が接することでオンになる第3スイッチを備え、
前記電気回路は、前記第3スイッチがオンになったときに前記報知部を駆動する、
請求項1または請求項2に記載の下穴形成確認装置。
【請求項4】
記内径確認部は、前記検査探部に対して着脱可能であり、軸方向の長さが、前記下穴の深さに応じた長さを備える、請求項1または請求項2に記載の下穴形成確認装置。
【請求項5】
記報知部は、前記本体に設けられたLEDである、請求項1または請求項2に記載の下穴形成確認装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、アンカーボルトの下穴加工用治具、下穴加工方法および下穴形成確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル内などのコンクリート壁面・天井などに、照明器具を取り付けたら、ケーブルを保持するケーブル保持具などを取り付ける場合、後施工タイプのアンカーボルトが用いられる。後施工タイプのアンカーボルトでは、硬化されたコンクリートからなる母材に下穴をあけ、アンカーボルトを挿入し、下穴とアンカーボルトの隙間を埋めて固着させ、設備機器や構造物に取り付ける。こうした後施工タイプのアンカーボルトには、打ち込み型と接着型がある(例えば、下記特許文献1)。
【0003】
いずれの場合も、コンクリートに対してハンマドリルなどを使って下穴を開け、ここにアンカーボルトを挿入して固定する。こうした下穴は、アンカーボルトの大きさに適した径と深さに形成する必要がある。打ち込みアンカーボルトでは、下穴を形成すると、下穴加工時に生じた切り粉などを排除し、そこに打ち込みアンカーボルトをしっかりと差し入れ、アンカーボルトの芯や外周部など特定の箇所をハンマーで叩くと、打ち込みアンカの下部が広がり、下穴の内部に食い込む。これにより、アンカーボルトは、母材にしっかりと固定される。
【0004】
こうした打ち込みアンカには、芯棒打ち込み式の雄ネジタイプと、本体打ち込み式の雌ネジタイプの製品があるが、いずれのタイプも特定の部位に衝撃を加えることで拡張部が拡張し、コンクリートの下穴に固定される。下穴の内径が規定の寸法に対して小さ過ぎればアンカーボルトを挿入できず、下穴の外径が大き過ぎればアンカーボルトを固定できない。下穴の深さが規定の寸法より短すぎれば、アンカーボルトが母材から突き出てしまい、設備機器や構造物の固定強度が不足することが生じ得る。他方、下穴の深さが長すぎれば、アンカーボルトが埋設されてしまい、固定用のボルトが届かないといった不具合が生じ得る。このため、コンクリート製の躯体の形成時に下穴を形成することも行なわれているが(例えば、下記特許文献2参照)、後施工で下穴を形成する場合には、こうした下穴形成の手法は採用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-193521号公報
【文献】特開2012-36575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
アンカーボルトをトンネルなどの壁面・天井などに後施工する場合、規定の深さ・規定の内寸の下穴を、短時間のうちに多数形成しなければならないが、下穴の深さを規定の寸法に収めることは容易ではなかった。もとより、ドリルビットにネジ止めして穴加工の寸法を制限するストッパなどの治具や、ドリルビットに取り付けて加工深さを可視化するスポンジなどの補助具も存在するが、実際に使用してみると、以下の点で実用に耐えなかった。
【0007】
[1]コンクリート製の母材に下穴を開けるには、通常ハンマドリルが用いられる。このため穴加工の際に、強い振動がドリルビットに加わり、ネジ止めされているストッパは、下穴を何個か加工しているうちに外れてしまう。
[2]また、多数の下穴を明ける場合、ドリルビットは連続使用に近い使われ方になり、コンクリートとの摩擦により、高温になる。このためビニールやスポンジなどの合成樹脂は熱により溶けたり変形したりして、すぐに使い物にならなくなってしまう。
[3]多数の下穴を明ける場合、各下穴が規定の寸法に形成されているかを簡単に確認することは難しい。所定の長さにマーキングした細棒を下穴に差し込んで長さを確認することも考えられるが、トンネル内などで作業する場合には、十分な明るさがえられない場合もあり、目視でマークを確認することが難しい場合もあり得る。また、ドリルビットの先端形状により、下穴の中心は周辺より深くなっている。このため、細棒では、下穴の深さを正確に確認することが難しい。
【0008】
下穴の深さや内径が、規定の範囲に入っていないと、アンカーボルトの固定強度が不十分になってしまう。特に、下穴を規定の範囲を超えて深く形成してしまうと、下穴深さを規定範囲に修復することは困難であった。また、下穴の内径は、加工用のハンマドリルに装着したドリルビットの外径によりほぼ規定できるとはいえ、下穴形成時に誤って規定より大きな穴を明けてしまうことも生じ得る。こうした場合には、位置をずらして再度下穴を明け、アンカーボルトを打ち直すことになる。この場合、下穴加工とアンカーボルトの打ち直しの手間を要するだけでなく、隣接した位置に下穴を再度明けることは、母材の強度を低下させる虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本開示は、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0010】
(1)本開示の下穴加工用治具としての実施態様の1つは、ハンマドリルにチャッキングされる下穴用ドリルビットに装着されるアンカーボルトの下穴加工用治具としての態様である。この下穴加工用治具は、加工される下穴の内径より大きな外径を有し、前記下穴用ドリルビットの外径より大きな内径を有する所定長さのパイプと、前記下穴用ドリルビットが挿入された前記パイプの内側に充填される、耐熱温度が少なくとも200℃以上である充填材と、を備え、前記ドリルビットの長さがL、前記下穴の許容深さがD1以上D2以下、前記下穴用ドリルビットの前記ハンマドリルによる掴み代がCK、であるとき、前記パイプの前記所定長さSが、L-CK-D2≦S≦L-CK-D1、である。
【0011】
(2)本開示のもう一つの態様は、ハンマドリルを用いてアンカーボルトの下穴を加工する方法としての態様である。この方法は、前記ハンマドリルに、アンカーボルトの下穴の深さを規定するパイプ形状の治具が取り付けられたドリルビットをチャッキングし、前記ハンマドリルを駆動して、前記ドリルビットによりコンクリートの被加工面の予め定めた位置への穴明けを開始し、前記パイプ形状の治具の先端が、前記被加工面に接する深さまで、前記ドリルビットを用いて下穴を形成する。このとき、前記パイプは、形成される下穴の内径より大きな外径を有し、前記ドリルビットの外径より大きな内径を有し、前記ドリルビットを前記パイプの略中心に保持するように、耐熱温度が少なくとも200℃以上である充填材が充填されており、前記パイプの長さSは、前記ドリルビットの長さがL、前記下穴の許容深さがD1以上D2以下、前記下穴用ドリルビットの前記ハンマドリルによる掴み代がCK、であるとき、L-CK-D2≦S≦L-CK-D1
であるものとしてよい。こうすれば、規定の深さの下穴を容易に形成できるだけでなく、短時間のうちに繰り返し下穴を加工しても、加工深さを所定の範囲に収めることができる。こうすれば、アンカーボルトの下穴を所定の深さに加工でき、しかも、短時間のうちに繰り返し下穴を加工しても、加工深さが変わってしまったり、治具が使えなくなったりすることが生じにくく、高い耐久性を実現できる。
【0012】
(3)更に、本開示の第3の実施の態様は、ハンマドリルにより形成されたアンカーボルト用の下穴の形成確認装置としての態様である。この下穴の形成確認装置は、前記下穴に、前記下穴の軸方向に沿って挿入される検査探部と、前記検査探部を進退自在に保持する本体と、前記検査探部の先端に着脱自在に取り付けられ、前記下穴の内径の下限値φSと等しい内径を有する円形部材と、前記検査探部の前記軸方向の進退位置の変化によって動作し、前記下穴に挿入された前記検査探部の前記円形部材の先端が、前記下穴の許容深さの下限値D1を超え、かつ上限値D2に至る以前に、前記下穴の底部に達した場合にオンとなるスイッチと、前記スイッチがオンになったときに動作する報知部を駆動する電気回路とを備える。こうすれば、加工した下穴の内径が下限φS以上あり、かつ下穴が規定の深さに形成されているかを簡単に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】トンネルの内壁に照明器具を設置する様子を示す説明図。
図2】アンカーボルトの下穴加工の様子を模式的に示す説明図。
図3】アンカーボルトの下穴加工用治具をドリルビットに取り付けた状態を示す斜視図。
図4】アンカーボルトの下穴加工が完了した様子を模式的に示す説明図。
図5】下穴加工用治具の他の実施形態を示す側面図。
図6図5に示した下穴加工用治具にドリルビットを取り付けた状態を断面視にて模式的に示す説明図。
図7】下穴形成確認装置の全体構成を示す概略構成図。
図8】下穴形成確認装置の電気配線を示す説明図。
図9】下穴形成確認の際の各部の動作を示すタイミングチャート。
図10】下穴形成確認装置において、下穴の内径が規定の範囲に入っていることを確認する付属部品の構成を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
A.第1実施形態:
(A1)照明器具の固定:
実施形態のアンカーボルトの下穴加工用治具、下穴加工方法について説明する。照明器具230をトンネルの内面、ここでは壁面TWに取り付けた照明装置210を例に挙げて説明する。もとより、照明器具230は、トンネルの天井に取り付けてもよい。また、トンネルは、山体をくりぬいて形成されるものに限らず、地下や海底のトンネルであってもよく、騒音対策のためなどの理由で、コンクリート等で人工的に形成されたトンネル(チューブ)などであってもよい。また急斜面に造成された道路などを覆う半トンネル(片側が開放されたトンネル)などであっても差し支えない。もとよりトンネルに限らず、コンクリートにより形成された床面、壁面などに取り付けるものであってもよい。取り付けられるものは、照明器具230に限らず、フェンスや電源板、ケーブル支持具など、アンカーボルトを用いて固定されるものなら、どのようなものでもよい。
【0015】
この照明装置210は、図1に示すように、トンネルの壁面TWに、照明器具230の幅方向左右に配置された支持台220,225を用いて固定される。照明器具230を固定する支持台220,225は、左右対称に構成され、配置される。支持台220,225は、Lアングルを組み合わせて構成される。第1Lアングル221は、ベース部221cの両側に直角に折り曲げられた長短2つのアーム部221a,221bを備える。ベース部221cは、2つのアンカーボルト212,213により、壁面TWに固定される。アンカーボルト212,213は、打ち込みタイプ、接着剤タイプのいずれでもよい。また、打ち込みはセンタピンによってもよいし、スリーブを円環状の工具により打ち込むものであってもよい。アンカーボルトの先端には、雄ネジが形成されており、ベース部221cに設けられた取り付け孔にネジ部を差し入れて、ナットを螺合して、第1Lアングル221を固定する。
【0016】
第1Lアングル221のアーム部221a,221bの先端同士は、第2Lアングル222により結合されている。第1Lアングル221と第2Lアングル222との結合は溶接によってもよいし、ボルト・ナットで締結してもよい。なお、支持台220,225は、2つのLアングルを組み合わせて形成する必要はなく、一体物として成形してもよい。また、その形状も、照明器具230を壁面に取り付けられれば、どのような形状、材質でもよい。
【0017】
照明器具230は、支持台220,225の2つの第2Lアングル222にボルト・ナット231,232により固定されている。このボルト・ナット231が取り付けられる部位の近傍に、ワイヤ用の器具側貫通孔が設けられている。トンネル内には、こうした照明器具230が、多数設けられており、トンネル内を照らす。
【0018】
本実施形態では、こうした支持台220,225を用いた照明器具230の固定に加えて、更に、ワイヤ260を用いた脱落防止のため施工が行なわれている。支持台220,225を壁面TWに固定するアンカーボルト212,213より壁面TWに沿って所定距離だけ上方に隔たった位置に、下孔UHが形成され、ここに、脱落防止用ルーズナット250を取り付けるためのアンカーボルト211が設置されている。ワイヤ260は、この脱落防止用ルーズナット250に設けられた貫通孔とアングル222に設けられた貫通孔とに通されている。こうすることで、仮にアンカーボルト212,213からアングル221が脱落しても、ワイヤ260により照明装置210の脱落は防止される。
【0019】
このように、照明装置210の固定には、多数のアンカーボルトが用いられている。これらアンカーボルト211,212,213を固定するための下穴の形成方法について、次に説明する。
【0020】
(A2)アンカーボルト用下穴の形成:
図2は、ハンマドリル10を用いてコンクリートの躯体SFに、アンカーボルトの下穴40を形成する様子を示す。図示では、ハンマドリル10は、電源ケーブル17により、図示しない発電機などの接続されており、電源スイッチ15を操作するようにことにより、チャック12に装着されたドリルビット11を回転およびドリルビット11の軸方向に前後(打撃)させ、コンクリートの躯体SFに下穴40を形成する。ドリルビット11をハンマドリル10のチャック12にチャッキングすると、ドリルビット11に取り付けられた下穴加工用治具20の上端は、チャック12の先端に当たる。アンカーボルト用の下穴40は、床、壁、天井など様々な位置に形成されるので、ハンマドリル10は下穴40の形成方向に応じた角度で用いられるが、以下の説明では、ハンマドリル10を下向きにして下穴40を形成するものとし、便宜上、この図示する向きでの上下に応じて、ドリルビット11の先端方向を「下」、反対方向に「上」と呼び、例えば、下穴加工用治具20の端部のうち、チャック12に接する側を「上端」、加工時に躯体SFの表面に接する側を「下端」といった呼び方をする場合がある。
【0021】
図2に示した各部の寸法について説明する。下穴形成用のドリルビット11がチャック12にチャッキングされる際の掴み代CKは、ドリルビット11をチャック12の一番奥まで差し入れた際のドリルビット11の該当部分の長さである。また、下穴加工用治具20から突き出したドリルビット11の寸法を加工長DDと呼ぶ。ドリルビット11の全長Lは、ドリルビット11より決まっているので、下穴加工用治具20の長さSは、次式(1)により求めることができる。
S=L-CK-DD …(1)
ここで、加工長DDは、下穴40の許容深さがD1以上D2以下の任意の寸法である。
【0022】
下穴40を形成するためのドリルビット径φmは、アンカーボルト211の呼び径毎に規格が定められている。また、下穴40の埋設用深さは、アンカーボルトの種類により異なるが、アンカーボルトの種類毎に規格化されている。打ち込みボルトタイプの一例を、ドリルビット径と共に、以下に示す。下穴40の埋設深さは、中央値を示し、更に許容範囲である下限値D1と上限値D2を併せて示した。単位はいずれもmmである。
呼び径 ドリル径φm 埋設深さ 下限値D1 上限値D2
M10 10.5 40 38 42
M12 12.7 50 48 52
M16 17.0 60 58 62
M20 21.5 80 78 82
そこで、呼び径に対応する下穴40を形成するために、ドリルビット11の加工長DDがアンカーボルトの埋設深さに一致する様に、上記式(1)を用いて、下穴加工用治具20の長さSを定める。なお、加工長DDには、ドリルビット11先端のテーパ部13の長さは含まれない。
【0023】
下穴加工用治具20を取り付けた状態のドリルビット11を、図3に示した。図示するように、下穴加工用治具20は、円筒形のケース21の内部に充填材25が充填されており、ドリルビット11はこの充填材25より、ケース21の略中心に保持されている。本実施形態では、ケース21として塩化ビニールのパイプを長さSにカットしたものを用い、充填材25として耐熱温度が250℃シリコン樹脂を用いた。治具を用いて、ケース21の略中心にドリルビット11を保持に、ケース21に硬化剤を加えたシリコン樹脂を流し込む。硬化時間の経過後、充填材25であるシリコン樹脂は固まり、ケース21の中心にドリルビット11を保持する。シリコン樹脂は、硬化後も一定の柔らかを保つシリコンゴムである。
【0024】
下穴加工用治具20のケース21の外径φCは、アンカーボルト211等を埋設する下穴40の外径を規定するドリルビット径φmより大きい。また、ドリルビット11の先端が、下穴加工用治具20から飛び出している部分が、テーパ部13を除いて、下穴40の加工長DDとなる。
【0025】
こうして下穴加工用治具20を取り付けたドリルビット11をハンマドリル10にチャッキングする。このとき、ドリルビット11の後端側の6角軸形状に加工された側は、ハンマドリル10のチャック12に奥まで差し込まれ、チャック12により、その掴み代CKで固定される。このとき、下穴加工用治具20の一端は、チャック12の先端に当たる。
【0026】
作業者は、この状態の図3に示した下穴加工用治具20装着済みのドリルビット11をチャッキングしたハンマドリル10(図2参照)を持ち、躯体SFの表面に予めマーキングした下穴40の加工位置に、ドリルビット11の先端中心を合わせ、ハンマドリル10を起動して、下穴40を形成する。ドリルビット11は躯体SFを削り、次第に奥まで進むが、下穴加工用治具20の下端が、躯体SFの表面に至ると、下穴加工用治具20の外径φCは、ドリルビット径φmより大きいので、それ以上加工が進むことはない。この結果、下穴40の深さは、加工長DDとなる。加工長DDは、埋設深さの中央値に合わせているから、形成された下穴40の深さは、下限値D1から上限値D2の間に収まる。
【0027】
ドリルビット11による下穴40の加工が進むと、下穴加工用治具20の先端が躯体SFの表面に近づく。作業者は、これを目視により確認し、下穴加工用治具20の先端が躯体SFに接すると、ハンマドリル10を躯体SFに押しつけるのをやめ、あるいはハンマドリル10の電源スイッチ15を操作して、その回転を止める。とはいえ、下穴加工用治具20の先端が躯体SFの表面に接し、摩擦により下穴加工用治具20の回転数は低下して、ドリルビット11との間に剪断力を受けることがあり得るが、充填材25はシリコン樹脂(シリコンゴム)であるため、剪断力により11表面が充填材25の内周面から引き剥がされても、下穴加工用治具20がドリルビット11から脱落することはない。なお、下穴加工用治具20の先端表面に柔らかい素材のシートを貼り、下穴加工用治具20の先端が躯体SFの表面に接したとき、このシートが潰れることで、下穴加工用治具20の回転数を維持し、ドリルビット11が充填材25から引き剥がされないようにしてもよい。
【0028】
以上説明した第1実施形態によれば、ハンマドリル10に下穴加工用治具20を付けただけの簡単に構成でありながら、アンカーボルトの下穴40の深さを、簡単に規定の深さにすることができる。したがって、多数個の下穴40を形成する場合の作業性が飛躍的に高まる。しかも、下穴40を繰り返しても、ハンマドリル10の振動や回転により下穴加工用治具20がずれたり脱落したりして、下穴40の加工深さが変わってしまうことがない。たとえ、下穴加工用治具20のドリルビット11に対する固定が緩くなり、下穴加工用治具20がドリルビット11の先端側にずれた状態になったとしても、下穴加工用治具20がドリルビット11に填められていれば、そのまま加工が進むと、ドリルビット11の外周に形成された螺旋溝の働きにより、下穴加工用治具20は、チャック12方向に移動する場合が多く、またたとえ移動しなくても、下穴加工用治具20の先端が躯体SFの表面に接すれば、下穴加工用治具20はチャック12方向に移動するから、下穴40の深さを、所定の下限値D1から上限値D2までの間とすることは容易である。
【0029】
アンカーボルトの下穴40は、場合によっては連続して多数個形成することがあり、ドリルビット11は躯体SFとの摩擦により高温になる。本実施形態の下穴加工用治具20は、充填材25として耐熱温度250℃のシリコン樹脂を用いているので、摩擦熱によりドリルビット11の先端が高温になり、伝熱によって下穴加工用治具20に固定された部位が100℃あるいはこれを超えるような程度になっても著しい劣化を受けることがない。また、ドリルビット11の露出した部分の長さ、つまり加工長DDは、下穴加工用治具20の長さSにより定めた寸法となるから、下穴40の深さはアンカーボルトの呼び径に対応した所定の規格を満足するものとなる。このため、下穴40にアンカーボルト211等を差し込んで、規定の打力で打ち込めば、十分な固定強度を実現できる。なお、アンカーボルトが他の形式、例えば接着剤方式のものであっても、採用したアンカーボルト用に規定された下穴の深さや径が規定の寸法に収まり、十分な固定強度を実現できることは、同様である。
【0030】
(A3)変形例1:
第1実施形態の下穴加工用治具20の変形例について説明する。図5は、下穴加工用治具60の他の構成例を示す側面図である。この下穴加工用治具60は、ケース61の両端にフランジ部62および63を有する。図5に示した変形例では、ケース61の両端にフランジ部を設けたが、一方の端部のみにフランジ部を備えるものとしてもよい。こうすれば、下穴加工用治具60をハンマドリル10のチャック12に装着する場合や、加工が進んで下穴加工用治具60の端部が躯体SFの表面に当たる場合など、フランジ部62や63が当接することになるので、下穴加工用治具60の装着が一層容易になる。また、ケース61の内径をドリルビット11が収まる程度まで狭くできる。こうした場合、ケース61を金属、例えば変形させやすいアルミニウムや錫などにより形成し、その内径をドリルビット11の外径より僅かに小さくしておけば、充填材なしで下穴加工用治具60をドリルビット11に固定することができる。この場合、後から充填材を充填するようにしてもよい。
【0031】
(A4)変形例2:
もう1つの変形例を、図6に示した。この例では、充填材としてシリコン樹脂に代えて耐熱性フィラー65を用い、ケース61とドリルビット11との間に耐熱性フィラー65を充填している。こうした耐熱性フィラー65としては、例えば鉄や銅、あるいはステンレスを細くかつ薄くレース状に形成した、いわゆる金属ウールや、ガラスバルーン、シラスバルーン、シリカバルーン、樹脂バルーンなどを用いた複合材フィラーや粒体、など各種の耐熱性材料を用いるこができる。
【0032】
こうした耐熱性フィラー65を充填した下穴加工用治具60は、フィラーや粒体の特性上、ドリルビット11が高速で回転している場合は、下穴加工用治具60はドリルビット11と共に回転するが、下穴加工用治具60の先端側フランジ部63が躯体SFの表面に接して、ドリルビット11に対する下穴加工用治具60の回転数が落ちる場合には、この移動を許容する。このため、使用を繰り返しても、下穴加工用治具60がドリルビット11から脱落することがない。また、充填材65は耐熱性を有するので、連続使用しても摩擦熱で溶けたり消失したりすることもない。
【0033】
B.下穴形成確認装置:
次に、上述した下穴加工用治具を用いて加工した下穴40の深さなどを確認する下穴形成確認装置100について説明する。図7は、下穴形成確認装置100の概略構成を断面視として示す説明図である。図示するように、この下穴形成確認装置100、加工された下穴40に挿入される検査探部110と、この検査探部110の一部を内部の保持穴121に保持する本体120と、本体120の内部に収容された電気回路部構成部材とを備える。
【0034】
検査探部110は、先端に内径確認部141を備えた挿入部140と、この140に軸方向に連接するガイド部130と、ガイド部130に更に軸方向に連接する規制部150とを備える。ガイド部130の軸方向両端には、それぞれ雌ネジ部が形成されており、ここに、挿入部140に形成された雄ネジ部143や規制部150の端部に形成された雄ネジ部151が螺合する。挿入部140の外径は、図示したものではガイド部130の外径と等しいが、両者を分離しているのは、挿入部140を交換可能にするためである。
【0035】
本体120の下端には、キャップ形状の移動部170が嵌め込まれている。移動部170の外径は本体120の外径より大きい。移動部170は、平らで固いフランジ部171と、本体120の外周に形成された摺動溝126に係合する係合部175、フランジ部171と係合部175とを接続する弾性変形部173とを備える。移動部170の中心には、ガイド部130の外径より大きな径の開口部が設けられ、ここに、ガイド部130が挿通している。
【0036】
フランジ部171が一定の剛性を備え、弾性変形部173が容易に変形可能とされ、係合部175が摺動溝126に固定されているので、フランジ部171を本体120側におすと、弾性変形部173が変形し、フランジ部171は120側に移動する。このフランジ部171の移動は、ガイド部130には影響を与えない。
【0037】
ガイド部130には、2箇所の張出部131が設けられている。張出部131の外径は、保持穴121の内径より僅かに小さく、ガイド部130が121内で傾くことなく摺動するのを助けている。このガイド部130に先端が螺合している規制部150は、本体120の上端に形成された貫通孔を貫通して外側から挿入され、径の大きな頭部153を回転することにより、先端に設けられた雄ネジ部151がガイド部130に螺合し固定される。この規制部150は、規制部150の外径より大きな内径を有する圧縮バネ160が外嵌されている。この圧縮バネ160の自由長は、頭部153が本体120上端に接した状態での、ガイド部130の上端から保持穴121の端部までの寸法より大きいので、規制部150を雄ネジ部151を用いてガイド部130に固定すると、圧縮バネ160は圧縮代の一部が圧縮された状態となり、検査探部110全体を、本体120に対して所定の初期位置に保持する。
【0038】
初期位置において、挿入部140に固定された移動部170のフランジ部171の本体120側の端面は、本体120の下面から、ギャップdgだけ離間している。また、挿入部140の内径確認部141の先端面から、本体120の下面までが距離D2となり、ギャップdgは、次式(2)を満たすように設計されている。
dg=D2-D1 …(2)
ここでD2,D1は、下穴40の深さ上限と下限である。
【0039】
本体120内部の電気回路構成部材としては、2つのスイッチSW1,SW2、発光ダイオードLED、バッテリBTが設けられている。スイッチSW1は、本体120において、保持穴121側にスイッチの操作部DPが臨むように設けられる。その位置は、操作部DPが、ガイド部130が初期位置から上昇した際に張出部131に接して、オンとなる位置である。またスイッチSW2は、本体120の下面に設けられ、その操作部DPが、移動部170のフランジ部171が初期位置から上昇したときにオンとなる位置に設けられている。もとより、理論的には、初期位置からの上昇が生じた時に、スイッチSW2がオンになればよいが、実際の使用に際しては、誤動作を予防するために、このギャップdgには遊びΔdが設けられる。この場合でも、上記式(2)の関係は変わらない。遊びΔdだけ、フランジ部171が上方に移動したとき、スイッチSW2はオンとなり、そのときの下穴40の深さは少なくとも下限値D1である。
【0040】
上述した電気回路構成部材は、図8に示すよう、バッテリBTと発光ダイオードLEDとを接続する閉回路に、スイッチSW1,SW2が、直列に介装された構成を取っている。このため、2つのスイッチSW1,SW2が共にオンになると、バッテリBTから発光ダイオードLEDに電流がながれ、発光ダイオードLEDが点灯する。なお、この実施形態において、バッテリBTは定格電圧が3.2Vのボタン電池であり、発光ダイオードLEDは内部に電流制限用の抵抗器を内蔵している赤色ダイオードである。なお、発光ダイオードLEDに代えて、圧電ブザーなどを接続し、音により報知するものとしてもよい。
【0041】
図8に示した回路の動作を、図9に示した。図において横軸は、下穴40の深さであり、縦軸は、各スイッチや発光ダイオードのオン・オフを示す。例えば、アンカーボルト211が呼び径M12の打ち込み型アンカーボルトであって、ドリルビット11の外径が12.7mm、下穴40の深さの下限値D1が48mm、上限値D2が52mmであるとする。このとき、実際に、ハンマドリル10を用いて形成した下穴40の深さdが、下限値D1(48mm)以下の場合には、下穴形成確認装置100の検査探部110を下穴40に差し込むと、挿入部140先端の内径確認部141の先端が、下穴40の底部に当たり、それ以上進まないから、本体120を更に差し込むと、本体120に対して検査探部110、延いてはガイド部130が上昇し、ガイド部130の張出部131によりスイッチSW1がオンになる。この状態は、下穴40の深さdが、上限値D2(52mm)未満であれば、同様である。他方、下穴40の深さdが、上限値D2以上であれば、内径確認部141の先端が、下穴40の底部に届くことかないので、検査探部110の上昇は起きず、スイッチSW1は、オンになることがない。
【0042】
他方、スイッチSW2について説明すると、スイッチSW2は、下穴形成確認装置100の検査探部110が下穴40に差し込まれると、下穴40の深さか、下限値D1より深ければ、移動部170のフランジ部171が躯体SFの表面に達し、これを上方に押し上げる。この結果、スイッチSW2がオンとなる。
【0043】
この結果、図9に示したように、下穴40の深さが下限値D1より以上で上限値D2以下であれば、スイッチSW1,SW2が共にオンとなり、発光ダイオードLEDが点灯する。下穴40の深さが下限値D1未満でも、上限値D2より大きくても、発光ダイオードLEDは点灯しない。このことから、下穴形成確認装置100の検査探部110を下穴40に挿入すれば、下穴40が規格通りの深さに形成されているかを容易に知ることができる。しかも、検査探部110の先端に設けられた内径確認部141の外径は、埋設しようとするアンカーボルト211等の場合に必要な内径より僅かに小さくしてあるので、仮に内径がアンカーボルト211に必要な径を下回っていれば、内径確認部141が挿入できないことで、容易に検出できる。
【0044】
下穴40がアンカーボルト211に必要な内径より大きく作られてしまった場合には、実施形態の下穴形成確認装置100には、検出する機能は無いが、例えば、図10のように、検査探部110の挿入部140に、スイッチSW3,SW4を設けることで、下穴40の内径が、規格寸法を満足しているかを検出することができる。この例では、2つのスイッチSW3,SW4は、挿入部140の中心軸に対して対称の位置に設けられ、その操作部DPが操作されていない状態での操作部DPの一番外側同士の間の寸法が、下穴40の内径の規格の上限φLにされている。2つのスイッチSW3,SW4は、図8に示した閉回路において、他のスイッチSW1,SW2と直列に接続される。
【0045】
挿入部140の外周側に操作部DPを外側に向けて、2つのスイッチSW3,SW4を配置しているので、挿入部140を下穴40に挿入すると、下穴40の内径が上限φLより大きければ、2つのスイッチSW3,SW4を同時にオンにすることはできない。挿入部140が下穴40の中で、中心軸に対して径方向に移動したとしても、スイッチSW3,SW4のいずれか一方は、操作部DPが下穴40の内壁に接することができないからである。下穴40の内径が、下限φSから上限φLの間に入っていれば、スイッチSW3,SW4のそれぞれの操作部DPが同時に下穴40の内壁に接し、オンとなる。この結果、発光ダイオードLEDが点灯する。
【0046】
このとき、既に説明した様に、内径確認部141の外径は、下穴40の内径の規格の下限φSにされている。このため、下穴40の内径が、下限φSより小さければ、検査探部110先端の内径確認部141が挿入できない。当然、2つのスイッチSW3,SW4もオンにならないから、発光ダイオードLEDは点灯しない。従って、図10に示した構成を追加すれば、下穴40の内径が、使用するアンカーボルト211の内径の規格の上限および下限を満足しているか否かを容易に検出できる。
【0047】
使用するアンカーボルト毎に下穴の深さや内径の規格は異なるので、規格のそれぞれに対応する下穴形成確認装置100を作ってもよいが、規格に合わせて、検査探部110の挿入部140を取り替える様にしてもよい。既に説明した様に、挿入部140はネジによりガイド部130の先端に螺合されるように構成されているので、挿入部140を取り替えれば、下穴40の規格に合わせて、深さ検出のための下限値D1,上限値D2、および内径検出の下限φS,上限φLを設定することは容易である。使用するアンカーボルト211の規格(呼び径)に合わせて、挿入部140を用意し、内径確認部141ごと取り替えて検査する様にすればよい。
【0048】
C.他の態様:
(1)本開示の下穴加工用治具としての実施態様の1つは、ハンマドリルにチャッキングされる下穴用ドリルビットに装着されるアンカーボルトの下穴加工用治具としての態様である。この下穴加工用治具は、加工される下穴の内径より大きな外径を有し、前記下穴用ドリルビットの外径より大きな内径を有する所定長さのパイプと、前記下穴用ドリルビットが挿入された前記パイプの内側に充填される、耐熱温度が少なくとも200℃以上である充填材と、を備え、前記下穴用ドリルビットの長さがL、前記下穴の許容深さがD1以上D2以下、前記下穴用ドリルビットの前記ハンマドリルによる掴み代がCK、であるとき、前記パイプの前記所定長さSが、L-CK-D2≦S≦L-CK-D1、である。
【0049】
この下穴加工用治具によれば、アンカーボルトの下穴を所定の深さに加工できる。しかも、短時間のうちに繰り返し下穴を加工しても、加工深さが変わってしまったり、治具が使えなくなったりすることが生じにくく、高い耐久性を実現できる。なお、パイプの断面は円形のみならず、矩形、楕円形、三角系などの多角形、等であってもよい。
【0050】
(2)こうした構成において、前記充填材は、シリコンゴムまたは金属製フィラーであるものとしてよい。こうすれば、簡単に手に入る充填材を用いて下穴加工用治具を作ることができ、十分な耐久性を実現できる。もとより、耐熱温度が200℃以上あれば、どのような材料でも採用可能である。例えば、カーボンナノチューブや炭素繊維、CFRPなどを採用してもよい。耐熱温度が足りれば、塩化ビニールなどであってもよい。
【0051】
(3)こうした構成において、前記パイプは、塩化ビニール、ベークライト、炭素繊維、炭素繊維系樹脂またはシリコン樹脂により成形されたものとしてよい。こうすれば、下穴加工用治具を構成するパイプに必要な耐久性を安価かつ容易に実現できる。
【0052】
(4)こうした構成において、前記パイプは、金属製パイプであるものとしてよい。こうすれば、こうすれば、合成樹脂製のパイプ以外であっても、下穴加工用治具を構成するパイプに必要な耐久性を安価かつ容易に実現できる。金属パイプは、鉄、鉄合金、アルミニウム、真鍮など、どのようなものであってもよい。なお、金属パイプの表面は、稠密なものであってもよいし、穴あき加工されたものであってもよい。金網などをパイプ状にしたものでもよい。
【0053】
(5)こうした構成において、前記パイプの少なくとも一方の端部は、平らなフランジ形状とされたものとしてよい。こうすれば、パイプ端部の面積をフランジ形状にしていないものより広くでき、下穴の深さが規定の深さに達した場合に、下穴が形成される壁面や治具を取り付けるハンマドリルのチャック側などを傷つけることを抑制できる。また、下穴加工が所定の深さまで達したことを容易に確認できる。フランジ形状は、平らでもよいが、パイプ本体側に湾曲していてもよい。こうすれば、治具が、下穴を形成するコンクリートの壁面に達した時に、壁面を傷つけにくい。
【0054】
(6)本開示のもう一つの態様は、ハンマドリルを用いてアンカーボルトの下穴を加工する方法としての態様である。この方法は、前記ハンマドリルに、アンカーボルトの下穴の深さを規定するパイプ形状の治具が取り付けられた下穴用ドリルビットをチャッキングし、前記ハンマドリルを駆動して、前記下穴用ドリルビットによりコンクリートの被加工面の予め定めた位置への穴明けを開始し、前記パイプ形状の治具の先端が、前記被加工面に接する深さまで、前記下穴用ドリルビットを用いて下穴を形成する。このとき、前記パイプ形状の前記治具は、形成される下穴の内径より大きな外径を有し、前記下穴用ドリルビットの外径より大きな内径を有し、前記下穴用ドリルビットを前記治具の略中心に保持するように、耐熱温度が少なくとも200℃以上である充填材が充填されており、前記形状の前記治具の長さSは、前記下穴用ドリルビットの長さがL、前記下穴の許容深さがD1以上D2以下、前記下穴用ドリルビットの前記ハンマドリルによる掴み代がCK、であるとき、L-CK-D2≦S≦L-CK-D1
であるものとしてよい。こうすれば、規定の深さの下穴を容易に形成できるだけでなく、短時間のうちに繰り返し下穴を加工しても、加工深さを所定の範囲に収めることができる。
【0055】
(7)更に、本開示の第3の実施の態様は、ハンマドリルにより形成されたアンカーボルト用の下穴の形成確認装置としての態様である。この下穴の形成確認装置は、前記下穴に、前記下穴の軸方向に沿って挿入される検査探部と、前記検査探部を進退自在に保持する本体と、前記検査探部の先端に着脱自在に取り付けられ、前記下穴の内径の下限値φSと等しい内径を有する円形部材と、前記検査探部の前記軸方向の進退位置の変化によって動作し、前記下穴に挿入された前記検査探部の前記円形部材の先端が、前記下穴の許容深さの下限値D1を超え、かつ上限値D2に至る以前に、前記下穴の底部に達した場合にオンとなるスイッチと、前記スイッチがオンになったときに動作する報知部を駆動する電気回路とを備える。こうすれば、加工した下穴の内径が下限φS以上あり、かつ下穴が規定の深さに形成されているかを簡単に確認できる。
【0056】
(8)こうした構成において、前記本体の前記検査探部側に設けられた移動部であって、前記検査探部が下穴に挿入されて、前記コンクリート壁に接すると移動する移動部を備え、前記スイッチは、前記下穴に挿入された前記検査探部の先端が、前記下穴の許容深さの上限値D2に至る以前に、前記下穴の底部に達した場合にオンとなる第1スイッチと、前記移動部が前記下穴が形成された被加工面に接した場合にオンとなる第2スイッチとを備え、前記電気回路は、前記第1スイッチおよび前記第2スイッチが共にオンとなった場合に前記スイッチがオンになったと判断するものとしてもよい。こうすれば、下穴の深さが下限値D1から上限値D2の間に入っているか否かを容易に確認できる。
【0057】
(9)こうした構成において、更に前記検査探部の外周に設けられ、前記検査探部の径方向に、前記下穴の内径の上限φLだけ隔たった少なくとも2つの動作点を有するスイッチであって、前記下穴に前記検査探部が挿入されたとき、前記少なくとも2つの動作点に前記下穴の内壁が接することでオンになる第3スイッチを備え、前記電気回路は、前記第3スイッチがオンになったときに前記報知部を駆動するものとしてもよい。こうすれば、下穴の内径が上限φLを超えていないことを容易に確認できる。
【0058】
(10)上記各実施形態において、ハードウェアによって実現されていた構成の一部をソフトウェアに置き換えるようにしてもよい。例えば、図8に示した電気回路は、入出力インタフェースを備えた1チップのCPUに置き換えて、各スイッチの状態をCPUが読み込んで、発光ダイオードLEDを点灯するようにしてもよい。ソフトウェアによって実現されていた構成の少なくとも一部は、ディスクリートな回路構成により実現することも可能である。また、本開示の機能の一部または全部がソフトウェアで実現される場合には、そのソフトウェア(コンピュータプログラム)は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納された形で提供することができる。「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスクやCD-ROMのような携帯型の記録媒体に限らず、各種のRAMやROM等のコンピュータ内の内部記憶装置や、ハードディスク等のコンピュータに固定されている外部記憶装置も含んでいる。すなわち、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、データパケットを一時的ではなく固定可能な任意の記録媒体を含む広い意味を有している。
【0059】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0060】
10…ハンマドリル、11…ドリルビット、12…チャック、13…テーパ部、15…電源スイッチ、17…電源ケーブル、20…下穴加工用治具、21…ケース、25…充填材、40…下穴、60…下穴加工用治具、61…ケース、62…フランジ部、63…先端側フランジ部、65…耐熱性フィラー、100…下穴形成確認装置、110…検査探部、120…本体、121…保持穴、126…係合溝、130…ガイド部、131…張出部、140…挿入部、141…内径確認部、143…雄ネジ部、150…規制部、151…雄ネジ部、153…頭部、160…圧縮バネ、170…移動部、171…フランジ部、173…弾性変形部、175…係合部、210…照明装置、211~213…アンカーボルト、220…支持台、221…第1Lアングル、221a,221b…アーム部、221c…ベース部、222…第2Lアングル、230…照明器具、231…ボルト・ナット、250…脱落防止用ルーズナット、260…ワイヤ、BT…バッテリ、DP…操作部、LED…発光ダイオード、SF…躯体、SW1~SW3…スイッチ
図1
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図10