(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】準安定オーステナイト含有のコーティングされた鋼の上昇温度における圧下
(51)【国際特許分類】
C21D 9/46 20060101AFI20230810BHJP
C21D 8/00 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
C21D9/46 P
C21D9/46 J
C21D8/00 A
C21D8/00 D
(21)【出願番号】P 2020547374
(86)(22)【出願日】2019-03-08
(86)【国際出願番号】 US2019021392
(87)【国際公開番号】W WO2019177896
(87)【国際公開日】2019-09-19
【審査請求日】2020-09-10
(32)【優先日】2018-03-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503404132
【氏名又は名称】クリーブランド-クリフス スティール プロパティーズ、インク.
(74)【代理人】
【識別番号】100104411
【氏名又は名称】矢口 太郎
(72)【発明者】
【氏名】ギル、アマリンダー、シン
(72)【発明者】
【氏名】パブリナ、エリック、ジェームス
(72)【発明者】
【氏名】ジャナビシウス、ポール、バルダス
【審査官】河口 展明
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-243715(JP,A)
【文献】特開平10-140316(JP,A)
【文献】特開2011-080126(JP,A)
【文献】国際公開第2013/047739(WO,A1)
【文献】特開2005-171376(JP,A)
【文献】特開2007-335205(JP,A)
【文献】特開2010-196096(JP,A)
【文献】特開昭62-118905(JP,A)
【文献】特開平07-011484(JP,A)
【文献】国際公開第2014/136851(WO,A1)
【文献】特開2013-227635(JP,A)
【文献】特開2012-117148(JP,A)
【文献】特開2017-008371(JP,A)
【文献】特開2014-189870(JP,A)
【文献】特開2014-062286(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0122839(US,A1)
【文献】国際公開第2017/013717(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第02383353(EP,A2)
【文献】特開平09-103803(JP,A)
【文献】特開2010-089096(JP,A)
【文献】特開平06-227174(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C21D 9/46
C21D 8/00
C22C 38/00-38/60
C23C 2/00-30/00
C25D 1/00-21/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
準安定鋼のコーティング方法であって、
a.準安定オーステナイトを含み、2.9以上の不安定係数(IF)を有する準安定鋼を選択する工程であって、前記IFは以下の式:
IF=37.193-51.248(%C)-0.4677(%Cr)-1.0174(%Mn)-34.396(%N)-2.5884(%Ni)
によって計算され、
前記%C、%Cr、%Mn、%N、および%Niは質量パーセントである、前記選択する工程と、
b.前記準安定鋼をコーティングする前に、前記準安定鋼を焼鈍する工程と、
c.前記準安定鋼を金属コーティングでコーティングする工程と、
d.前記準安定鋼をコーティングした後、前記準安定鋼を66℃より高く、499℃より低い加温温度まで温める工程と、および
e.前記準安定鋼を温めた後、前記工程dの前記加温温度で温められた前記準安定鋼を圧延する工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記加温温度は、前記準安定鋼のM
d温度を超える、方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記加温温度は、930°F以下である、方法。
【請求項4】
請求項1記載の方法において、前記加温温度は、前記準安定鋼のM
d30温度を超えるものであり、前記準安定鋼の前記M
d30温度は、以下の式:
M
d30=551-462(%C+%N)-68
*%Nb-13.7
*Cr-29(%Cu+%Ni)-8.1
*%Mn-18.5
*%Mo-9.2
*%Si
に従って、全て質量パーセントで、計算される、方法。
【請求項5】
請求項1記載の方法において、前記加温温度は、前記準安定鋼
のM
d30温度を超えるものであり、前記準安定鋼の前記M
d30温度は、以下の式:
M
d30=413-462
*(%C+%N)-13.7
*%Cr-8.1
*%Mn-18.5
*%Mo-9.5
*%Ni-9.2
*%Si
に従って計算され、
前記%C、%Cr、%Mn、%N、%Mo、%Ni、および%Siは質量パーセントである、方法。
【請求項6】
請求項1、2、3、4、または5
のいずれか1つに記載の方法において、圧延後、前記準安定鋼を室温でさらに圧延する工程をさらに含む、方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法において、コーテイングされた前記準安定鋼は、室温で圧延される前に焼鈍される工程をさらに含む、方法。
【請求項8】
請求項1に記載の方法において、前記金属コーティングは、亜鉛、アルミニウム、またはそれらのうちの1つまたはそれ以上の合金を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2018年3月13日に提出された、準安定オーステナイト含有のコーティングされた鋼の上昇温度における圧下と題する米国仮出願第62/642,208号の優先権を主張し、その開示は参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
本発明は、顕著な量の準安定オーステナイト(5%~100%)を含有する鋼に関する。オーステナイトは、機械的変形によりマルテンサイトに変態する場合、準安定と見なされる。このようなマルテンサイトは変形誘起マルテンサイトと呼ばれ、マルテンサイトがオーステナイトに戻る高温まで鋼が加熱されるまで安定する。
【0003】
準安定オーステナイトのマルテンサイトへの変形誘発変態に関連する高い加工硬化速度により、準安定オーステナイトを含む鋼は、時々、周囲温度以上で圧延されて、高い降伏強度および引張強度を達成する。
【0004】
圧延状態で、そのような鋼を腐食防止のためにコーティングする場合、コーティングラインは通常、低強度鋼製品用に設計されているため、圧延鋼の高強度はコーティングプロセス中に独特の課題をもたらす。強度の増加は、ラインを介してストリップを引っ張る能力、ロールの周りでストリップを曲げる能力、および張力の平準化または他の手段によって任意の形状修正を実行する能力に関連する課題を引き起こす。
【0005】
さらに、いくつかのコーティング技術では、鋼帯は高温にさらされ、その結果、変形によって誘発されたマルテンサイトの一部またはすべてがオーステナイトに戻る。この転換の結果として、鋼帯の機械的特性が低下し、それによって以前の圧延プロセスの有益な効果が失われる。
この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、以下のものがある(国際出願日以降国際段階で引用された文献及び他国に国内移行した際に引用された文献を含む)。
(先行技術文献)
(特許文献)
(特許文献1) 米国特許出願公開第2016/122839号明細書
(特許文献2) 国際公開第2017/124081号
(特許文献3) 欧州特許出願公開第2383353号明細書
(特許文献4) 米国特許出願公開第2016/281196号明細書
(特許文献5) 国際公開第2013/124283号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
準安定オーステナイトの高強度マルテンサイト相への変形誘発変態のため、準安定オーステナイトを含有する鋼の冷間圧延は、課題となり得る。このような鋼の冷間圧延は、ミル負荷の大幅な増加につながり、さらに冷間圧下を行う前に、オーステナイト含有微細構造を部分的または完全に回復または再結晶化するために、鋼を焼鈍する必要があることがよくある。
【0007】
上述の特定された課題を克服するために、そのような準安定鋼を、圧延前に、部分的または完全に焼鈍した状態でコーティングすることが有利である。ここで、焼鈍は、臨界間焼鈍またはオーステナイト化を指すこともある。このような焼鈍状態では、材料の強度と硬度が低くなり、コーティングラインでの加工が容易になる。さらに、コーティングラインの熱プロファイルにさらされても、特性が大幅に低下することはない。
【0008】
本発明のプロセスは、焼鈍状態で準安定オーステナイト含有の鋼をコーティングし、続いて温間圧延を行うことを含む。温間圧延では、オーステナイトからマルテンサイトへの変態を抑制するために、圧延前または圧延中に材料を周囲条件よりも高い温度に加熱する。温間圧延は、周囲条件よりも高い温度で鋼の流動強度が低下し、鋼の延性が向上するため、同様の負荷でミルの負荷が低くなり、圧下量が大きくなる。より大きな圧下を達成する能力により、鋼を最終ゲージに加工する前に必要な中間焼鈍を少なくすることができる。
【0009】
驚くべきことに、温間圧延鋼は、冷間圧延によって同じ量に圧下された鋼と比較した場合、強化された機械的特性を示した。温間圧延とそれに続く焼鈍も、同じ量で冷間圧延し、焼鈍した鋼で達成されるよりも優れた機械的特性をもたらす。温間圧延の利点は、適度な温度で、ラインを大幅に変更することなく実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、温間圧延および冷間圧延に起因する圧下率の関数として、準安定鋼中のマルテンサイト率を示す。
【
図2】
図2は、冷間圧延および温間圧延に起因する圧下率の関数として、準安定鋼中の伸長率を示す。
【
図3】
図3は、冷間圧延および温間圧延の圧下の関数として降伏強度および最大抗張力を示す。
【
図4】
図4は、冷間圧延および温間圧延の圧下の関数としての総伸長を示す。
【
図5】
図5は、強度-延性積(最大抗張力さおよび総伸長の積)を冷間圧延および温間圧延の圧下の関数として示す。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、「準安定鋼」と呼ばれる、顕著な量の準安定オーステナイト(5%~100%オーステナイト)を含有する鋼に関する。オーステナイトは、機械的変形によりマルテンサイトに変態する場合、準安定と見なされる。このようなマルテンサイトは、変形誘起マルテンサイトと呼ばれる。変形誘発マルテンサイトは、鋼が高温にさらされるまで安定した成分である。そのような準安定オーステナイトを含有する鋼は、炭素鋼またはステンレス鋼であり得る。
【0012】
オーステナイトの安定性を特徴付けるいくつかの方法がある。1つの方法は、化学組成に基づいてオーステナイトの不安定係数(IF)を計算することである。この要因は、IFを次のように定義する米国特許第3,599,320号(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)に記載される。
【0013】
IF=37.193-51.248(%C)-0.4677(%Cr)-1.0174(%Mn)-34.396(%N)-2.5884(%Ni) 式1
【0014】
0~2.9の計算されたIF値を有する鋼は、「わずかに準安定」として分類され、2.9より大きいIFを有する鋼は、「中程度に準安定」として分類される。本発明の方法は、2.9より大きいIFを有する準安定オーステナイト含有の鋼にとって最も優位さを有する。
【0015】
オーステナイトの安定性を特徴付ける別の技術は、Md30温度として知られているものを計算または測定することである。与えられた準安定鋼の組成に対して、Md30温度で0.3のひずみまで変形すると、オーステナイトの50%がマルテンサイトに変態する。所与の準安定鋼組成物の場合、Md温度は、それを超えると変形時にマルテンサイトが形成されない温度である。MdおよびMd30の温度は、当技術分野でよく知られる。経験的に決定されることに加えて、特定の鋼組成のMd30温度は、次のような文献にあるいくつかの方程式の1つによって計算し得る。
【0016】
Nohara,K.,Ono,Y.and Ohashi,N.1977.Composition and Grain-Size Dependencies of Strain-Induced Martensitic Transformation in Metastable Austenitic Stainless Steels.Journal of Iron and Steel Institute of Japan,63(5),pp.212-222(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)によって教示されたように:
Md30=551-462(%C+%N)-68*%Cb-13.7*Cr-29(%Cu+%Ni)-8.1*%Mn-18.5*%Mo-9.2*%Si 式2
【0017】
Angel,T.1954.Formation of Martensite in Austenitic Stainless Steels.Journal of the Iron and Steel Institute、177(5)、pp.165-174(その開示は参照により本明細書に組み込まれる)によって教示されたように:
Md30=413-462*(%C+%N)-13.7*%Cr-8.1*%Mn-18.5*%Mo-9.5*%Ni-9.2*%Si 式3
【0018】
安定性が低いことは、オーステナイトが変形してマルテンサイトに容易に変態すること、および低ひずみでオーステナイトがマルテンサイトに容易に変態することを示す。逆に、高い安定性は、オーステナイトが変形に起因するマルテンサイトへの変態に耐性があり、オーステナイトをマルテンサイトにかなり変態させるには大きなひずみが必要であることを示す。低い不安定性は、Md30温度が高いことで示す。つまり、Md30温度が高くなるほど、オーステナイトは不安定になる。準安定オーステナイトのMd30温度は、Ms温度(つまり、アサーマルマルテンサイトのマルテンサイト開始温度)を超える。
【0019】
顕著な量の準安定オーステナイトを含有する鋼は、オーステナイトがより高強度のマルテンサイトに変態するときに急速に硬化する。このような鋼の冷間圧延は、変態の程度が大きいと、圧延機の能力または能力を超える負荷が発生する可能性があるため、課題が残る。次に、そのような鋼は、鋼をさらに圧延する前に、マルテンサイトの一部またはすべてをオーステナイトまたは他の低強度成分に部分的または完全に変態させるために焼鈍される必要がある。圧延中にオーステナイトからマルテンサイトへの変態を抑制できれば、鋼はより低いミル負荷でより薄いゲージに圧延できる。このような変形を抑制する1つの方法は、冷間圧延の前または間に鋼を温めることである。ここで、加温とは、鋼を周囲条件より高く、約930°Fまたは499℃未満の温度に加熱することを指す。温間圧延には、機械的特性を向上させる追加の利点があることが示される。温間圧延は、2017年1月17日に出願された「準安定オーステナイトを含有する鋼の温間圧延」という名称の米国特許出願第15/407,992号に記載されており、その内容は参照により本明細書に組み込まれる。
【0020】
そのような鋼は、腐食を防止するためにコーティングされ得る。鋼の典型的なコーティングは、亜鉛または亜鉛ベースの合金、アルミニウムまたはアルミニウムまたはアルミニウムシリコンベースの合金、または鋼に適用されることが当技術分野で知られている任意の他の金属コーティングであって良い。
【0021】
かなり加工硬化した鋼では、2つの主な要因のためにコーティングが困難になる。
1.高強度材料を処理するコーティングライン設備の能力、及び
2.溶融コーティング処理において鋼帯を高温にさらすと、マルテンサイトの一部またはすべてが低強度のオーステナイトに戻り、降伏強度と抗張強度が低下する。
【0022】
そのような鋼で高強度を保持する1つの方法は、焼鈍状態、または変形誘発マルテンサイトが存在しない他の状態でそのような鋼をコーティングし、その後そのような鋼を温間圧延することである。
【0023】
一実施形態は、熱間圧延帯に対して冷間または温間圧延操作を実施し、続いて焼鈍し、変形誘発マルテンサイトを全くまたはほとんど含まず、再結晶化された微細構造を有する材料を達成することを含む。この圧延に続いて、溶融アルミめっき、溶融亜鉛めっき、または電気亜鉛めっきなどのコーティング操作が行われる。コーティングに続いて、そのような準安定鋼を室温(約70°Fまたは21℃)を超える温度、一部の実施形態では鋼のMd温度に近いかそれを超える温度で圧延する。
【0024】
このような材料のコイルは、以下の方法の1つまたはそれらの組み合わせを含む、当業者に明らかである方法で加温することができる:
【0025】
I.コイルを圧延ラインに配置する前に、炉/オーブン内でコイルを温める。
【0026】
II.コールドミルの最初のスタンドに入る前に、誘導加熱器や放射加熱器などのインライン加熱システムを使用して、コーティングされたコイルを圧延機で温める。
【0027】
III.圧延機で使用するクーラントを温める。クーラントの加温は、圧延機のクーリングタワーの電源を切る、クーラントを温めるために他の材料を稼働させるなど、いくつかの方法で実行できる。巻く前にクーラントを温める他の方法は、当業者には明らかだろう、及び
【0028】
IV.埋め込まれたヒーターまたは他の手段を使用して、冷間圧延機のロールを温めるまたは加熱する。
【0029】
準安定鋼は、特定の組成物の典型的な金属製造プロセスに従って、コーティングおよび冷間圧延(該当する場合)の前に、溶融、鋳造、熱間圧延、および焼鈍することができる。いくつかの実施形態では、コーティング後かつ冷間圧延の前に、鋼を250°Fまたは121℃以下の温度に温める。他の実施形態では、鋼は、930°Fまたは499℃以下の温度まで温められる。他の実施形態では、準安定鋼は、特定の準安定鋼組成物のMd温度に近いかまたはそれを超える温度まで温められる。そして、他の実施形態では、準安定鋼は、特定の準安定鋼組成物のMd30温度に近いかまたはそれを超える温度まで温められる。そのような温間圧延パスは、第1、第2、またはその後の任意の「冷間圧延」工程の1つまたは複数とすることができる。
【0030】
図1は、準安定オーステナイトを含有する鋼の圧延中の変形誘発マルテンサイト形成の程度に対する圧延温度の影響を比較する。同じ量の圧下では、室温で圧延された冷間圧延鋼と比較して、各温間圧延条件で形成されるマルテンサイトが大幅に少なくなる。形成されるマルテンサイトの量を減らす温間圧延の利点は、比較的低温(この場合は150°Fまたは66℃)でも観察でき、温間圧延温度が上昇するにつれて形成されるマルテンサイトは少なくなる。
【0031】
図2は、温間圧延および冷間圧延後の準安定オーステナイトを含有する鋼の総伸長を示す。驚くべきことに、温間圧延では、総伸長が最初に増加してから減少する。これらの結果は、温間圧延の利点は、温度で行われる圧下の量を変えるか、圧延温度を変えることによって調整できることを示す。逆に、冷間圧延では、圧下量が増加するにつれて、常に総伸長が減少する。
【実施例1】
【0032】
準安定オーステナイトを含有する焼鈍された鋼は、亜鉛を豊富に含むコーティングで電気亜鉛めっきされ、その後、室温(約21℃)で冷間圧延されるか、または270°Fまたは132℃で温間圧延される。表1は、コーティング後の特性と圧延後の特性をまとめたものである。
【表1】
【0033】
図3は、冷間圧延および温間圧延の両方について、圧延の圧下が増加するにつれて降伏強度および最大抗張力が増加することを示す。
図4は、冷間圧延で圧下率が増加すると伸長が減少することを示す。驚くべきことに、温間圧延後の伸長はほとんど変化せず、最大で約30%減少するが、その後はわずかに減少する。温間圧延のこの有益な効果をさらに
図5で示す。
図5は、冷間圧延および温間圧延された被覆試験片の強度-延性積(最大抗張力と総伸長の積)を比較する。強度-延性積に対する圧延の影響は、総伸長に対する影響と似ている。強度-延性積は、冷間圧延の圧下率が増加すると減少する。ただし、強度と延性の積は、約30%までの削減のための温間圧延の結果として増加する。
【実施例2】
【0034】
準安定鋼は、以下のプロセスに従って調製された:
a.2.9以上の不安定係数(IF)を持つ準安定鋼を選択し、IFは次の式で計算される。
IF=37.193-51.248(%C)-0.4677(%Cr)-1.0174(%Mn)-34.396(%N)-2.5884(%Ni)
b.前記準安定鋼をコーティングする前に、前記準安定鋼を焼鈍する。
c.前記準安定鋼を被覆した後、前記準安定鋼を70°Fより高い加温温度まで温める。そして
d.コーティングされ、温められた準安定鋼を圧延する。
【実施例3】
【0035】
実施例2のプロセスに従って準安定鋼を調製され、前記加温温度は、特定の準安定鋼組成物のMd温度に近いか、またはそれより高い。
【実施例4】
【0036】
準安定鋼は、実施例2のプロセスに従って調製され、前記加温温度は、特定の準安定鋼組成物のMd30温度に近いか、またはそれより高い
またはそれを超える。
【実施例5】
【0037】
実施例2のプロセスに従って準安定鋼が調製され、前記加温温度は930°F以下である。
【実施例6】
【0038】
実施例2のプロセスに従って準安定鋼が調製され、前記加温温度は250°F以下である。
【実施例7】
【0039】
準安定鋼は、実施例4のプロセスに従って調製され、前記準安定鋼のMd30温度は、以下の方程式に従って計算される。
Md30=551-462(%C+%N)-68*%Cb-13.7*Cr-29(%Cu+%Ni)-8.1*%Mn-18.5*%Mo-9.2*%Si
【実施例8】
【0040】
準安定鋼は、実施例4のプロセスに従って調製され、前記準安定鋼のMd30温度は、以下の方程式に従って計算される。
Md30=413-462*(%C+%N)-13.7*%Cr-8.1*%Mn-18.5*%Mo-9.5*%Ni-9.2*%Si
【実施例9】
【0041】
実施例2、3、4、5、6、7、または8のプロセスに従って準安定鋼を調製し、圧延後、準安定鋼を室温で圧延する工程をさらに含む。
【実施例10】
【0042】
実施例2、3、4、5、6、7、または8のプロセスに従って準安定鋼を調製し、圧延後、準安定鋼をさらに焼鈍する工程を含む。
【実施例11】
【0043】
実施例10の方法に従って準安定鋼を調製し、焼鈍後、準安定鋼を室温でさらに圧延する工程をさらに含む。
【実施例12】
【0044】
実施例10のプロセスに従って準安定鋼を調製し、焼鈍後、準安定鋼をさらに温間圧延する工程をさらに含む。
【実施例13】
【0045】
実施例12のプロセスに従って準安定鋼を調製し、さらなる温間圧延工程の加温温度は、特定の準安定鋼組成物のMd温度に近いかまたはそれより高い。
【実施例14】
【0046】
実施例12のプロセスに従って準安定鋼を調製し、さらなる温間圧延工程の加温温度は、特定の準安定鋼組成物のMd30温度に近いか、またはそれより高い。
【実施例15】
【0047】
実施例12のプロセスに従って準安定鋼が調製され、さらなる温間圧延工程の加温温度は930°F以下である。
【実施例16】
【0048】
実施例12のプロセスに従って準安定鋼が調製され、さらなる温間圧延工程の加温温度は250°F以下である。
【実施例17】
【0049】
実施例14のプロセスに従って準安定鋼を調製し、さらなる温間圧延工程のための準安定鋼のMd30温度は、以下の式に従って計算される。
Md30=551-462(%C+%N)-68*%Cb-13.7*Cr-29(%Cu+%Ni)-8.1*%Mn-18.5*%Mo-9.2*%Si
【実施例18】
【0050】
実施例14のプロセスに従って準安定鋼を調製し、さらなる温間圧延工程のための準安定鋼のMd30温度は、以下の式に従って計算される。
Md30=413-462*(%C+%N)-13.7*%Cr-8.1*%Mn-18.5*%Mo-9.5*%Ni-9.2*%Si