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特許7329306セラミック複合材原子燃料被覆管の製造工程を自動化するための易解体性マンドレル
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  • 特許-セラミック複合材原子燃料被覆管の製造工程を自動化するための易解体性マンドレル 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】セラミック複合材原子燃料被覆管の製造工程を自動化するための易解体性マンドレル
(51)【国際特許分類】
   G21C 3/06 20060101AFI20230810BHJP
   G21C 3/07 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
G21C3/06 300
G21C3/07
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020519238
(86)(22)【出願日】2018-09-11
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 US2018050343
(87)【国際公開番号】W WO2019070370
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2021-09-01
(31)【優先権主張番号】15/726,737
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】501010395
【氏名又は名称】ウエスチングハウス・エレクトリック・カンパニー・エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】ラホーダ、エドワード、ジェイ
【審査官】鳥居 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2017-0084710(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0146346(US,A1)
【文献】特開2012-153601(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0087457(US,A1)
【文献】国際公開第2015/111591(WO,A1)
【文献】特開2016-013951(JP,A)
【文献】米国特許第04282904(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G21C 3/06- 3/07
C04B 35/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原子燃料棒の炭化ケイ素(SiC)被覆管を製造する方法であって、
SiC繊維を、SiCの少なくとも1つの前駆物質を含む混合物で覆うステップと、
当該前駆物質に覆われたSiC繊維を、融点が600℃~1100℃である材料製のマンドレルに巻き付けるステップとを含み、当該600℃~1100℃の融点は、SiCの当該前駆物質の分解温度よりも高く、当該マンドレルに形成されるSiCの分解温度よりも低い温度であり、さらに
当該マンドレルに巻き付けられ、当該前駆物質に覆われたSiC繊維を、当該前駆物質の分解温度まで加熱することにより、当該マンドレルに巻き付けられ、当該前駆物質に覆われたSiC繊維をSiCに変化させるステップと、
当該マンドレルを600℃~1100℃まで加熱して当該マンドレルを溶融することにより、当該原子燃料棒のSiC被覆管を作製するステップと
を含む方法。
【請求項2】
前記SiC繊維を前記混合物で覆うステップが、前記繊維の上に前記混合物をローラで塗布するプロセス、前記繊維を前記混合物の浴に浸すプロセス、前記繊維に前記混合物をスプレーするプロセス、および前記繊維を前記混合物の浴を通過させるプロセスから成る群より選択した1つ以上の被覆プロセスを使用すること
を特徴とする請求項1の方法。
【請求項3】
前記混合物は粉末状または粒子状のSiCおよび担体をさらに含む、請求項1の方法。
【請求項4】
SiCの前記前駆物質は、クロロメチル(トリエトキシ)シラン、ポリカルボシラン、ポリビニルシラン、ポリシラスチレン、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される、
請求項1の方法。
【請求項5】
SiCの前記前駆物質の分解温度は150℃~250℃の範囲である、
請求項1の方法。
【請求項6】
前記マンドレルの材料銅の金属合金である
請求項1の方法。
【請求項7】
原子燃料棒のSiC被覆管を製造する方法であって、
SiC繊維を、SiCの少なくとも1つの前駆物質を含む混合物で覆うステップと、
当該前駆物質に覆われたSiC繊維を、融点が548℃~955℃である材料製のマンドレルに巻き付けるステップとを含み、当該548℃~955℃の融点は、SiCの当該前駆物質の分解温度よりも高く、当該マンドレルに形成されるSiCの分解温度よりも低い温度であり、さらに
当該マンドレルに巻き付けられ、当該前駆物質に覆われたSiC繊維を、当該前駆物質の分解温度まで加熱することにより、当該マンドレルに巻き付けられ、当該前駆物質に覆われたSiC繊維をSiCに変化させるステップと、
当該マンドレルを548℃~955℃まで加熱して当該マンドレルを溶融することにより、当該原子燃料棒のSiC被覆管を作製するステップと
を含む方法。
【請求項8】
SiCの前記前駆物質は、クロロメチル(トリエトキシ)シラン、ポリカルボシラン、ポリビニルシラン、ポリシラスチレン、およびそれらの組み合わせから成る群より選択される、
請求項の方法。
【請求項9】
前記マンドレルの材料は銅合金である
請求項の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
政府の権利に関する陳述
本発明は、エネルギー省との契約第DE-NE0008222号に基づく政府支援の下でなされたものである。米国政府は、本発明に対して一定の権利を有している。
【0002】
本発明は原子燃料棒の被覆に関し、具体的には、セラミック複合材の燃料棒被覆の製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
炭化ケイ素(SiC)および酸化アルミニウム(III)(Al)のモノリスおよび繊維のようなセラミック材料は、米国特許第6,246,740号、第5,391,428号、第5,338,576号および第5,182,077号、ならびに米国特許公報第2006/0039524A1号および第2007/0189952A1号に記述されている。米国特許第9,455,053号も参照のこと。
【0004】
セラミック複合材を用いる原子燃料棒の被覆が提案されている。この燃料棒被覆は現在、SiCやAlのようなセラミック繊維をマンドレルに巻回するか編組みしたあと、そのセラミック材料を化学気相含浸(CVI)法によって繊維および繊維間の空隙に低めの温度で浸透させるバッチプロセスで作製する。そのあと、化学蒸着(CVD)法によって高めの温度で外層または障壁被膜を施す。
【0005】
このプロセスの最後にマンドレルを取り外す必要があるが、マンドレルがセラミック材料にくっ付いて外れないという不都合なことが起こるので、この最後のステップは特に難度が高い。マンドレルを取り外す際に被覆管に損傷が生じる可能性があるが、その場合、損傷した被覆管を廃棄する必要があるため、被覆管を製造する全体的なコストが高くなる。長さが4~5メートルで直径がわずか11mm未満のことがある原子燃料被覆管のようなアスペクト比の大きい構造体では、この工程は特に難度が高い。
【発明の概要】
【0006】
本願では、セラミック複合材燃料被覆管を製造する改良型方法を提示する。この改良型方法は、セラミック材料の繊維を当該セラミック材料の前駆物質のうちの少なくとも1つを含む混合物で覆うステップと、当該前駆物質に覆われた繊維を、当該前駆物質が当該セラミック材料に変化する分解温度より高い融点を有する材料製のマンドレルに巻き付けるステップと、当該前駆物質に覆われた繊維を当該前駆物質の分解温度まで加熱して当該前駆物質を当該セラミック材料に変化させるステップと、当該マンドレルを少なくとも当該マンドレルの融点まで加熱するステップとを含む。
【0007】
当該混合物は、粉末状または粒子状のセラミック材料と、担体(或る特定の局面ではセラミック前駆物質でもよい)とをさらに含む。
【0008】
この方法は、当該セラミック材料に覆われた繊維を当該セラミック材料の結晶化温度まで加熱して非晶質セラミック材料を結晶化するステップをさらに含んでよい。
【0009】
さまざまな局面において、当該セラミック繊維を当該混合物で覆うステップは、当該セラミック繊維の上に当該混合物をローラで塗布するプロセス、当該繊維を当該混合物の浴に浸すプロセス、当該繊維に当該混合物をスプレーするプロセス、および当該繊維を当該混合物の浴を通過させるプロセスから成る群より選択した1つ以上の被覆プロセスを使用する。
【0010】
当該セラミック材料はSiCまたはAlでよく、当該セラミック繊維はSiCまたはAl繊維でよい。SiCの前駆物質は、クロロメチル(トリエトキシ)シラン、ポリカルボシラン、ポリビニルシラン、ポリシラスチレン、およびそれらの組み合わせから成る群より選択してよい。Alの前駆物質はトリメチルアルミニウムでよい。
【0011】
さまざまな局面において、当該マンドレルはセルロース材料、金属および金属合金から成る群より選択してよい。
【0012】
さまざまな局面において、セラミック製の囲繞体の形成に使用するマンドレルについても説明する。このマンドレルは細長い3次元構造体であり、当該構造体の材料の融点は、セラミック前駆物質の分解温度より高く、マンドレルの上に形成されるセラミック製囲繞体の融点または分解点より低い。当該マンドレルの材料は、セルロース材料、金属および金属合金から成る群より選択してよい。当該セルロース材料は、紙またはボール紙でよい。当該金属は、アルミニウムまたは銅、およびそれらの合金でよい。これらのマンドレル材料の融点は、200℃~1600℃の範囲であるのが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0013】
添付の図面を参照することにより、本発明の特徴と利点の理解が深まるであろう。
図1】ポリマー含浸焼成(PIP)法を用いてSiC複合材被覆を製造するための例示的なプロセスの概略フロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本願で使用する「a」、「an」および「the」に先導される単数形は、文脈からそうでないことが明らかでない限り、複数形をも包含する。したがって、本願で使用する冠詞「a」および「an」は、1つまたは複数の(すなわち、少なくとも1つの)冠詞の文法上における対象物を表す。例として、「an element」は1つの要素または複数の要素を意味する。
【0015】
非限定的な例として、本願で使用する頂部、底部、左、右、下方、上方、前、後ろ、およびそれらの変形例などの方向性を示唆する語句は、添付の図面に示す要素の幾何学的配置に関連し、特段の記載がない限り、本願の特許請求の範囲を限定するものではない。
【0016】
特許請求の範囲を含み、本願では、特段の指示がない限り、量、値または特性を表すあらゆる数字は、すべての場合において「約」という用語により修飾されると理解されたい。したがって、数字と一緒に「約」という用語が明示されていない場合でも、数字の前に「約」という語があるものと読み替えることができる。したがって、数字と一緒に「約」という用語が明示されていない場合でも、数字の前に「約」という語があるものと読み替えることができる。したがって、別段の指示がない限り、以下の説明で記載されるすべての数値パラメータは、本発明に基づく組成物および方法が指向する所望の特性に応じて変わる可能性がある。最低限のこととして、また均等論の適用を特許請求の範囲に限定する意図はないが、本願に記載された各数値パラメータは、少なくとも、報告された有効数字の数を勘案し、通常の丸め手法を適用して解釈するべきである。
【0017】
また、本願で述べるあらゆる数値範囲は、そこに内包されるすべての断片的部分を含むものとする。例えば、「1~10」という範囲は、記述された最小値1と最大値10との間(最小値と最大値を内包)のすべての断片的部分を含むことを意図している。すなわち、最小値は1以上、最大値は10以下である。
【0018】
本願に用いる用語「セラミック複合材」には、SiCやAlのような材料が含まれる。セラミック複合材は、例えば緻密なモノリシックSiC、SiC-SiC複合材またはそれらの組み合わせを含む複数層のセラミック材料から成るのが最も好ましい。耐腐食性の改善、圧力降下の抑制、熱伝達能力の向上などのさらなる作用効果を得るために、別の層を追加してもよい。
【0019】
本願に用いる用語「融点」は、対象となるマンドレルに使用される材料が、選択される材料に応じて溶融または燃焼する温度または温度範囲である。この用語は、理論的な値というよりも、材料が固相から変化する実際的な値の意味で使用する。融点は、或る特定のセルロース材料におけるように、材料の物理的変化をより正確に記述するために、発火や燃焼の温度または温度範囲の意味で使用されることがある。いずれの場合も、材料が固体から別の状態に変化するときの温度または温度範囲を表す。融点は、最初に検出可能な液相が検出される温度範囲もしくは温度、または固相の存在が認められなくなる温度を意味することがある。この相転移に影響を及ぼす要因として、マンドレルなどの対象物の大きさ、粒径、熱拡散効率および加熱速度が挙げられる。一部の材料では、溶融プロセスは同時に分解または燃焼を伴うことがある。
【0020】
本願に用いる、物質の「分解温度」という用語は、熱によって化学種に大きな変化が生じる温度または温度範囲を意味する。例えば、セラミック前駆物質が分解してセラミック生成物および他の反応生成物になるときの温度または温度範囲である。
【0021】
燃料被覆管を製造するための本願の改良型方法は、或る特定の局面において、SiC繊維(界面被膜の有無を問わない)のようなセラミック繊維をセラミック前駆物質で覆うか当該繊維に当該前駆物質を塗布して被膜を形成する。この被膜の形成は、セラミック前駆物質を含む混合液に繊維を浸すことによって行うことができる。さまざまな局面において、セラミック前駆物質の浴にセラミック繊維を浸すことによって施すことができる。さまざまな局面において、被膜は、セラミック繊維をセラミック前駆物質の浴を通過させることによって形成してもよい。
【0022】
さまざまな局面において、例えば再循環式スプレーにより、セラミック前駆物質を含む混合液をスプレーすることによってセラミック繊維に被覆を施すことができる。さまざまな局面において、例えばセラミック前駆物質を含む混合液に浸したローラにより当該混合液を繊維の上に塗布することによって、被覆を形成してもよい。当業者であれば、セラミック繊維にセラミック前駆物質の被覆を施す多数の方法のうちの任意の方法を使用できることがわかるであろう。
【0023】
セラミック前駆物質は、選択するセラミック材料(例えばSiCまたはAl)の前駆物質のうち、当業者に知られ、PIP法で使用可能な任意の前駆物質を含む。ただし、この方法で当該前駆物質から所望のセラミック材料(すなわちSiCまたはAl)が生成されなければならない。例示的なSiC前駆物質は、クロロメチル(トリエトキシ)シラン((CHCHO)-Si-CHCl)、ポリカルボシラン(―(R)Si―C―)n(ここにRはアルキル基)、ポリビニルシラン(CH―Si[(CH=CH)(CH)Si]n―Si―CH)およびポリシラスチレン([Si(C)(CH)―]n―[Si(CH]n―)などのうちの1つまたは2つ以上の組み合わせを含む。ここに、n、n、およびnは同じ値または異なる値の整数であり、関連する単量体の繰り返される単位数を表す。Alの前駆物質の非限定的な例として、トリメチルアルミニウムが挙げられる。
【0024】
さまざまな局面において、セラミック前駆物質の混合物は、所望のセラミック材料の固体粒子(粉末状または粒子状)をさらに含むことができる。この混合物は担体を含んでもよい。例示的な担体には、ベンゼン、キシレン、または前駆物質と反応しない他の溶媒が含まれる。さまざまな局面において、溶媒を担体として使用せずとも、セラミック前駆物質が担体として機能することがある。
【0025】
セラミック繊維は、セラミック前駆物質で覆われた後、最終的な被覆の所望の幾何学形状と同じ3次元幾何学形状を有する細長いマンドレルの周りに巻回または編組み若しくは他の技法で巻き付けられる。例示的な幾何学形状として、棒、管体、および柱体、例えば、断面が円形、長円形、長方形、四角形または三角形の細長い構造体が挙げられる。マンドレルは、機械的に安定な剛化セラミック複合材被覆を形成するための安定な構造体であれば、他の形状でもよい。
【0026】
マンドレルの材料の融点は、セラミック前駆物質の分解温度より高く、最終的なセラミック複合材被覆の分解温度または融点より低いものとする。マンドレルの材料例として、発火点または燃焼点が約258℃の紙やボール紙のようなセルロース材料(プラスチックを除く)、アルミニウムや銅のような金属、アルミニウム合金および銅合金のような金属合金が挙げられる。アルミニウムの融点は約660℃である。セラミック複合材被覆を製造する方法に適したアルミニウム合金の融点は、500℃~800℃の範囲である。銅の融点は約1083℃である。セラミック複合材被覆の製造に適した銅合金の融点は、600℃~1100℃の範囲である。マンドレル材料の他の例として、マグネシウムとその合金がある。
【0027】
SiC繊維は、主としてにSiおよびCから成り、微量または比較的少量のOを含むSiC繊維であるのが好ましい。例示的な含有量を以下に示す。
Si:50%~70%(より好ましくは60%~70%)
C:30%~40%(より好ましくは30%~38%)
O:0.01%~14%(より好ましくは0.01%~1%)
【0028】
マンドレルに巻回するセラミック繊維の撚糸は、小さなセラミック繊維を撚糸加工してトウの状態に巻いたものである。この撚糸を、編組み、編み込み、織り込み、または巻回を含む当技術分野で公知の従来の手法により、加工物(ここではマンドレル)の周りで所望の幾何学形状に構成する。例えば米国特許第5,391,428号を参照のこと。繊維の撚糸で形成した上被の表面は凹凸で起伏があり、撚糸の隣接部分に空隙または隙間が存在する。
【0029】
マンドレルにセラミック繊維の上被を形成するプロセスでは、前駆物質の混合物(固体セラミック材料の有無を問わない)が、セラミック繊維上被の起伏のある凹凸の表面一帯の隙間に押し込まれる。繊維を覆う余分な混合物は、絞り出されて剥離する。
【0030】
セラミック前駆物質混合物に覆われた繊維の上被をマンドレルに形成した後、セラミック前駆物質が分解してセラミック材料(例えばSiCまたはAl)が形成されるように十分な熱を加える。この分解温度およびその付近において、前駆物質はセラミック材料に変化して、少なくとも上被形成時の印加圧力および分解プロセスそれ自体により、繊維上被の空隙を少なくとも部分的に充填する。十分な量のセラミック前駆物質がセラミック材料に変化し、当該セラミック材料に覆われたセラミック繊維構造体が機械的に安定して、後続の加工ステップで幾何学形状が変わることがないほど剛化するように、十分な時間にわたって分解温度を保持するとよい。混合物中の担体、溶媒または他の反応生成物は、加熱ステップで拡散または気化若しくは他の現象により排出されるが、これは、非セラミック材料生成物および混合成分の除去に適した既知の手法によって行う。
【0031】
例えば、クロロメチル(トリエトキシ)シランは220℃で分解し始めるが、この局面において、分解温度は約220℃である。ポリカルボシランは150℃~250℃で分解し始め、ポリビニルシランは約220℃で分解し始める。他のセラミック前駆物質、特にSiCまたはAlの他の前駆物質の分解温度は、文献から、または、当業者であれば定常的な試験によって容易に突き止めることができる。
【0032】
マンドレルに使用する材料に応じて、さまざまな加熱方法を用いることができる。例えば、紙、ボール紙、金属または金属合金のいずれかで作製したマンドレルでは、例えば2MeVまたは15mGyの電子ビームを照射することによって加熱することができる。あるいは、誘導加熱またはマイクロ波加熱によって加熱することもできる。マンドレルが金属または金属合金製である場合、加熱炉によるより常套的な加熱もまた、本願の方法にしたがって分解温度まで加熱したあと温度を変化させるための熱源である。前駆物質を分解してセラミック材料を生成させるための熱源および加熱方法は、この段階でマンドレルを溶融または燃焼させるものであってはならない。
【0033】
さまざまな局面において、SiC複合材構造体が十分に剛化したら、マンドレルの温度を融点に達するまでさらに引き上げる。剛化セラミック繊維構造体を損傷することなくマンドレルを取り除くには、マンドレルの温度を、マンドレル自体は溶融または分解させるが、剛化セラミック繊維構造体は無傷のまま残すに十分な、前駆物質の分解温度よりも高いマンドレルの融点まで引上げる。
【0034】
マンドレルの融点は構成材料に左右される。マンドレルの融点は約200℃~1600℃の範囲であるが、或る特定の局面において500℃~1200℃の範囲、または、500℃~1000℃の範囲である。或る特定の局面において、マンドレルの融点は約350℃~800℃の範囲である。例えば、マンドレルが紙やボール紙のようなセルロース材料製の場合、マンドレルの融点(より正確に言えばマンドレル材料の燃焼温度)は約258℃になる。マンドレルがアルミニウム製の実施態様では、マンドレルの融点は約660℃である。しかし、アルミニウム合金製のマンドレルの融点は、合金中の他の元素に起因する融点の変動によりばらつきが大きい。いくつかの既知のアルミニウム合金の融点は約382℃~800℃の範囲である。マンドレルが銅製の実施態様では、マンドレルの融点は約1084℃である。銅合金製のマンドレルの融点は、合金中の他の元素に起因する融点の変動によりばらつきがある。例えば、マンドレルの融点は約548℃~955℃の範囲である。
【0035】
さまざまな局面において、セラミック繊維構造体は、非晶質セラミック材料が繊維を覆うとともに繊維基材中の空隙を充填している。非晶質セラミック材料を結晶質に変化させるには、繊維を覆うためのセラミック材料の温度を結晶化温度まで引き上げる。例えば、SiCの結晶化温度は約1300℃である。結晶化により、SiCは非晶質からβ相SiCに変化する。Alは天然では主に結晶状態で産する。前駆物質をAlに変化させる時のAlの結晶化温度は約1000℃である。
【0036】
所望の3次元幾何学形状に形成されたセラミック複合材燃料棒被覆は、結晶化のあと、形成時にその幾何学形状の画定に使用したマンドレルを解体し、従来の方法でマンドレルを取り除く際に生じるような損傷がなければ、防水層や防食層などの保護障壁層をさらに付着させるための例えばCVDや他の適当な既知のプロセスにより被膜を施すことができる。
【0037】
本願に記述した方法は、セラミック前駆物質を使用し、温度の上昇を制御することにより、セラミック繊維を剛化させてセラミック製上被を施した所望の幾何学形状のセラミック複合材燃料被覆管を形成するだけでなく、被覆管の形成に使用したマンドレルを解体する。本願に記述した方法では、細長いセラミック複合材被覆の製造にあたり、被覆の幾何学形状の画定に使用したマンドレルをセラミック複合材被覆を損傷することなく容易に解体除去することができる。或る特定の局面において、セラミック製品がSiCの場合、このプロセスによってSiCの密度が理論密度の70%~80%であるセラミック複合材料が製造される。
【0038】
本願で言及したすべての特許、特許出願、刊行物または他の開示資料は、各々の参考文献が参照により明示的に本願に組み込まれるように、その全体が参照により本願に組み込まれる。ただし、本願で参照により組み込まれると言及されたすべての文献および資料またはそれらの一部分は、本願で明示的に記載された既存の定義、言明または他の開示資料と矛盾しない範囲でのみ本願に組み込まれる。したがって、本願に記載の開示事項は、必要な範囲において、それと矛盾する、参照により本願に組み込まれた資料に取って代わり、本願に明示的に記載された開示事項が決定権をもつ。
【0039】
本発明を、さまざまな例示的な実施態様を参照して説明してきた。本願に記載の実施態様は、開示された発明のさまざまな実施態様のさまざまな詳細度の例示的な特徴を示すものとして理解されたい。したがって、特に断らない限り、可能な範囲において、開示した実施態様における1つ以上の特徴、要素、構成部品、成分、構造物、モジュールおよび/または局面は、本発明の範囲から逸脱することなく、当該開示した実施態様における他の1つ以上の特徴、要素、構成部品、成分、構造物、モジュールおよび/または局面との間で、複合、分割、置換えおよび/または再構成が可能であることを理解されたい。したがって、通常の技量を有する当業者であれば、本発明の範囲から逸脱することなく、例示的な実施態様のいずれにおいてもさまざまな置換え、変更または組み合わせが可能であることを理解するであろう。当業者はまた、本願を検討すれば、本願に記載された本発明のさまざまな実施態様に対する多くの均等物に気付くか、あるいは単に定常的な実験を用いてかかる均等物を確認できるであろう。したがって、本発明は、さまざまな実施態様の説明によってではなく、特許請求の範囲によって限定される。
図1