(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】風味付与調味料
(51)【国際特許分類】
A23L 27/10 20160101AFI20230810BHJP
A23D 7/00 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
A23L27/10 H
A23D7/00 510
(21)【出願番号】P 2019016683
(22)【出願日】2019-02-01
【審査請求日】2022-01-17
(73)【特許権者】
【識別番号】519127797
【氏名又は名称】三菱商事ライフサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川戸 高博
(72)【発明者】
【氏名】山本 暁久
(72)【発明者】
【氏名】勝又 忠与次
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/147326(WO,A1)
【文献】特開2006-342286(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、A23D
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
トルラ酵母の酵素分解物または自己消化物からなる群より選ばれる1以上の酵母消化物およびαリノレン酸との加熱反応物を含有するエビ風味付与調味料
であって、該酵母消化物が酵母細胞壁成分を含み、該調味料の原材料全体を100重量部とした場合の酵母消化物が20~80重量部であり、αリノレン酸が0.1~10重量部である、エビ風味付与調味料。
【請求項2】
請求項1に記載のエビ風味付与調味料を、飲食品に添加することを特徴とする、飲食品への風味付与方法。
【請求項3】
酵母消化物とαリノレン酸を共存させ、加熱処理を行う、請求項1記載のエビ風味付与調味料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、魚介類を使用しない原材料で調製した魚介類風味付与調味料、飲食品に魚介類の風味を付与させる方法、および魚介類の風味を付与した飲食品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
魚介類は、直接食するだけでなく、その風味を有した各種加工食品がある。魚介類の風味を付与するには、魚介類から抽出したエキスなどを利用する方法がある。魚介類を原料としてエキスを抽出する場合、品質が一定であるエキスを抽出するのは困難であり、原料コストの変動などもあり、より品質の良いものを取得するのは困難なである。
そこで、加工食品などでは、魚介風味の増強や改善を行う場合には、酵母エキス、タンパク加水分解物、アミノ酸、呈味性核酸、香料、又はこれらを利用してメイラード反応組成物が用いられている。魚介類を使用しない原料で調製する調味料として、脂肪族アルデヒド類、チオール化合物、アンモニア又はアミン類化合物、糖類を加熱した風味改良剤が提案されている(特許文献1)。
【0003】
また、飲食品における香りや味、風味の強さを付与させるためには、香料や風味料が一般的に用いられてきた。これまで、このような風味を付与させる方法として、ペプチドと、植物性油脂との加熱反応生成物によって辛味を有する飲食品の辛味の味質改良方法(特許文献2)、ペプチドと植物性油脂との加熱反応物を含有する、風味改良剤(特許文献3)、焼装置に油脂とアミノ酸含有水溶液と乳化剤とを含有する組成物を滴下又は噴霧し、発生した煙を食品素材と接触させて炭焼風味を付与することを特徴とする炭焼風味食品の製造方法(特許文献4)、クレアチンおよびクレアチニンから選択される少なくとも一つの窒素化合物と、ω3脂肪酸とを含んでなる混合物を加熱することを含んでなる、こく味増強剤の製造方法(特許文献5)等が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2017/130256
【文献】特開2014-82955号公報
【文献】特開2012-170354号公報
【文献】特開2010-68763号公報
【文献】特開2011-125315号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、魚介風味、特に甲殻類の風味付与調味料、飲食品に魚介風味を付与させる方法、および魚介風味を付与した飲食品の製造方法を提供することにある。さらに、原材料に魚介類をしない、又は使用しても魚介類原料の使用量を低減させた場合であっても、魚介風味を付与できる調味料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下の(1)~(4)に関する。
(1)酵母消化物およびαリノレン酸との加熱反応物を含有する風味付与調味料。
(2)前記風味付与調味料が、エビ風味付与調味料である、(1)に記載の風味付与調味料。
(3)前記(1)または(2)の風味付与調味料を、飲食品に添加することを特徴とする、飲食品への風味付与方法。
(4)前記(1)または(2)の風味付与調味料を飲食品に添加する工程を含む、飲食品の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、飲食品に風味を付与させることができる風味付与調味料、飲食品に風味を付与させる方法、および風味を付与した飲食品の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の風味付与調味料は、酵母消化物およびαリノレン酸とを加熱反応させて得られる生成物を含有することを一つの特徴としている。かかる加熱反応物が、動物性油脂を用いていないにもかかわらず、動物性油脂の関与する風味を飲食品に付与しうることは意外な事実である。
【0009】
本発明によれば、簡便に飲食品に風味を付与することができ、特に「エビ風味」を付与することができる風味付与調味料、その製造方法、および簡便に飲食品に風味を付与する方法を提供できる。なお、本明細書において「エビ風味」とは、エビやその抽出物またはエビの香りを再現した香料から感じられるエビの香りや味、風味を意味する。本発明をエビを含む食品に使用した場合には、エビの風味を増強することができ、エビを使用していない食品に使用した場合には、エビ様の風味を付与することができる。
【0010】
本発明で使用する酵母消化物とは、酵母を酵素分解して得られたものであり、酵素分解は、酵母自己消化法又は酵素添加によるものである。さらに、本発明では、自己消化法と酵素添加による分解の両方を行ったものでもよいし、酵母を自己消化した酵母自己消化物と酵母に酵素を添加して得られた酵母酵素分解物とを、混合して用いてもよいし、一方のみを用いてもよい。酵母消化物の酵母原料としては、パン酵母、ビール酵母、トルラ酵母など食品用の酵母を挙げることができ、中でもトルラ酵母が望ましい。酵母の培養方法に特に制限はなく、公知の方法を用いて培養する。
【0011】
酵母原料を酵素分解する方法は特に限定されないので、一般的な方法を用いることができる。例えば、酵母原料をグルカナーゼ、プロテアーゼなどの酵素を用いる方法の場合には、後述の可溶成分比率になるよう酵素反応を行う。自己消化法による場合も、公知の方法で良く、特に制限はない。さらに、酵素を用いる方法と自己消化法の両方を行って、可溶化させることもできる。この可溶化により、水可溶成分の比率を65%以上に上げることが望ましく、より望ましくは80%以上である。水可溶成分の比率とは、全体の乾燥重量当たりの、水溶性成分の比率である。水可溶成分の測定方法は、次の通りである。試料に10倍量の水を加えて懸濁した後、5000rpmで10分遠心分離して上澄み液を取得し、それを乾燥して得られた固形物を水可溶成分とする。試料の乾燥重量に対する水可溶成分の重量の比率(%)を水可溶成分の比率とする。
本発明では、自己消化法や酵素添加による分解の過程において、プロテアーゼ、ヌクレアーゼが作用する場合には、完全に反応させてしまうよりも、反応後にRNA(モノヌクレオチドまで分解されていないもの)が4%以上、ペプチドが15%以上残存することが望ましい。
なお、本発明で用いる酵母消化物は、水溶性成分だけを抽出した酵母エキスとは異なり、酵母由来の不溶成分及び脂質をも含む構成物である。
【0012】
酵母を自己消化や酵素反応等で部分的に可溶化させた後、乾燥して固形、粉末にする。乾燥する際には、賦形剤を用いてもよい。たとえば賦形剤として酵母エキスの抽出残渣を添加して、乾燥機で乾燥を行ってもよい。酵母エキス抽出残渣の例としては、興人ライフサイエンス社の「KR酵母」などがあげられる。本発明では、酵母細胞壁成分をより多く含む組成がより好ましいため、酵母細胞壁を多く含む酵母エキスの抽出残渣を賦形剤として用いた酵母消化物を使用することは、特に好ましい。
【0013】
本発明の酵母消化物のペプチド含有量は、15重量%以上であることが好ましく、20重量%以上であることがより好ましく、30重量%以上であることがさらに好ましい。本発明の酵母消化物のRNA含有量は、4重量%以上であることが好ましく、6重量%以上であることがより好ましく、6.5重量%以上であることがさらに好ましく、7重量%以上であることが最も好ましい。本発明の酵母消化物の遊離アミノ酸の含有量は、8重量%以上が好ましく、10重量%以上がより好ましく、12重量%以上がさらに好ましい。本発明の酵母消化物の食物繊維の含有量は、10重量%以上であることが好ましく、12重量%以上であることがより好ましく、15重量%以上であることがさらに好ましい。本発明の酵母消化物のリン脂質の含有量は、1重量%であることが好ましく、1.5重量%以上であることがより好ましく、2重量%以上であることがさらに好ましい。本発明の酵母消化物のグアニル酸とイノシン酸との合計含有量は、10重量%以下であることが好ましく、8重量%以下であることがより好ましく、5重量%以下であることがさらに好ましい。上記物質の含有量は、一般栄養成分分析の分析方法、および、高速液体クロマトグラフィー等を用いて測定する。
【0014】
また、本発明のαリノレン酸は、常法により合成したものを用いてもよいし、αリノレン酸の含有物を用いても良い。αリノレン酸の含有物としては、例えば、市販品の油脂を代替として用いてもよい。油脂としては、大豆油、菜種油、紅花油(サフラワー油)、とうもろこし油、ひまわり油、カポック油、月見草油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油、ぶどう種子油、オリーブ油、ごま油、エゴマ油、シソ油、つばき油、綿実油、落花生油、米ぬか油等が挙げられるが、αリノレン酸を高含有するエゴマ油が好ましい。
【0015】
本発明に用いられるαリノレン酸の量は特に限定されないが、調味料を調製するための原材料全体(以下、「反応に供する組成物」という)を100重量部とした場合、好ましくは0.01~100重量部であり、より好ましくは0.1~10重量部であり、さらに好ましくは0.1~5重量部である。酵母消化物は、反応に供する組成物を100重量部とした場合、20~80重量部、好ましくは、30~60重量部、より好ましくは40~50重量部配合する。αリノレン酸と酵母消化物の混合物に水を加えて、以下の加熱反応を行う。
【0016】
また、酵母消化物およびαリノレン酸との加熱反応を行う際には、酵母消化物およびαリノレン酸とが共存している状況であればよい。たとえば、酵母消化物を含有する飲食品に、αリノレン酸またはその含有物を加えてもよい。また、当初よりαリノレン酸を含有する飲食品に、酵母消化物を加えてもよい。
【0017】
酵母消化物およびαリノレン酸とを加熱反応させる際のpHは特に限定はされないが、pH5.0~9.0、好ましくはpH7.0~9.0である。pHを調整する必要がある場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム等の飲食品に許容されるアルカリ、または塩酸、酢酸、乳酸、クエン酸、リン酸等の飲食品に許容される酸を添加することによって調整することができる。
【0018】
本発明による調味料の製造における加熱手段は、特に限定されない。本発明に利用可能な加熱手段としては、例えば、製造タンクでの加熱、IHヒーターによる加熱、オーブンによる焼成、電子レンジによる加熱、蒸気による加熱、熱風による加熱、オートクレーブによる加熱などが挙げられる。また、レトルト殺菌、ジュール殺菌、加圧殺菌、熱風乾燥、蒸気乾燥、燻製等も加熱手段として用いてもよい。特に好ましいのは、酵母消化物とαリノレン酸の反応性が良い、蒸気による加熱がもっとも好ましい加熱手段である。
【0019】
また、加熱反応させる温度は60~140℃とすることができる。加熱反応させる時間は任意であるが、10分間~10時間、好ましくは30分間~5時間である。
本発明では、加熱温度と加熱時間により、風味の異なる調味料とすることができる。例えば、加熱時間1時間の場合、60℃~100℃で加熱した場合には、エビの濃厚な風味、エビミソ様の生臭い風味を有する調味料となり、110~140℃で加熱した場合には、エビの殻を焼いたようなロースト香を有する調味料となる。
【0020】
また、加熱反応は、本発明の効果の妨げとならない限り、ビタミン類、無機塩類、有機酸、乳化剤、増粘剤、香料、油脂類、酸化防止剤、香辛料、保存料、および機能性素材等の他の食品添加物、食品素材とともに行ってもよい。
【0021】
上記加熱反応により得られる加熱反応物は、そのまま本発明の風味付与調味料として用いることができるが、必要に応じて濃縮処理、熱風乾燥、蒸気乾燥、凍結乾燥、噴霧乾燥等の乾燥処理、分離精製処理、脱色処理等に供して、濃縮物や乾燥物等にしたものを本発明の風味付与調味料として用いてもよい。
【0022】
本発明の風味付与調味料の形態は、固形状または液状のいずれであってもよい。固形状としては、たとえば、粉末状、顆粒状、ブロック状、カプセル状等があげられる。液状の場合は、溶媒は、水、アルコール(例えば、エタノール)等の有機溶媒、酢酸や液糖等の液状物質のいずれであってもよい。
【0023】
本発明の風味付与調味料は、風味付与の妨げとならない限り、前記の他の食品素材を含有してもよい。例えば、酵母エキス、アミノ酸、タンパク加水分解物などがあげられる。
【0024】
また、本発明の風味付与調味料が添加される飲食品としては、味噌、醤油、たれ、だし、ドレッシング、マヨネーズ、トマトケチャップ等の調味料、吸い物、コンソメスープ、卵スープ、ワカメスープ、フカヒレスープ、ポタージュ、味噌汁等のスープ類、麺類(そば、うどん、ラーメン、パスタ等)のつゆ、スープ、ソース類、おかゆ、雑炊、お茶漬け等の米調理食品、ハム、ソーセージ、チーズ等の畜産加工品、かまぼこ、干物、塩辛、珍味等の水産加工品、漬物等の野菜加工品、すき焼き、焼きそば、チャーハン、チャーシュー、ピラフ、グラタン、ピザ、ドリア、焼肉、お好み焼き、バーベキュー、各種ソテー、回鍋肉、麻婆豆腐、エビチリ、各種ムニエル、ポテトチップス、煎餅、クッキー等のスナック菓子類、煮物、揚げ物、焼き物、菓子パンや調理パンなどに用いられるフィリング、カレー、シチュー等の調理食品等があげられる。
【0025】
本発明の風味付与調味料を、飲食品に添加することにより、飲食品に風味を付与させることができるほか、その飲食品の有する風味を所望の風味に改善、改質、または付与させたり、所望のレベルに風味を増強したりする効果も期待できる。本発明の風味付与調味料の飲食品への添加は、飲食品を製造する際に原材料の一部として添加してもよく、飲食品を喫食する際に添加してもよい。
【0026】
飲食品に本発明の風味付与調味料を添加する方法は、飲食品に風味を付与する方法として好適に用いられる。
【0027】
本発明の風味付与調味料の飲食品への添加量は特に限定されず、飲食品の種類や性質に応じて適宜設定すればよいが、例えば、飲食品100重量部中、本発明の風味付与調味料を乾燥重量として好ましくは0.001~10重量部、より好ましくは0.05~5重量部添加する。
【0028】
本発明の飲食品の製造方法は、本発明の風味付与調味料を飲食品に添加する以外は、当該飲食品の通常の製造方法で行えばよい。例えば、本発明の風味付与調味料を、飲食品を製造する際に素材の一部として添加する方法、製品となっている飲食品を加熱調理、電子レンジ調理、真空調理等で調理する際に添加する方法、喫食の際に添加する方法等が挙げられる。本発明の風味付与調味料を添加する飲食品は、上記飲食品があげられる。本発明の飲食品の製造方法により得られる飲食品は、風味が強く、かつ風味の好ましい飲食品である。
【0029】
本発明の飲食品への風味付与方法および飲食品の製造方法は、飲食品に、本発明の風味付与調味料を添加する以外にも、飲食品に、酵母消化物およびαリノレン酸を逐次添加した後、本発明の風味付与調味料の製造における条件に準じて加熱反応させる方法であってもよい。これら方法によれば、本発明の風味付与調味料を製造する際に加熱を必要とせず、加熱する前の前記反応に供する組成物を飲食品に添加した後に、飲食品に対する一度の加熱によって、簡便に飲食品に風味を付与することができる。
【0030】
以下に、本発明の内容について実施例を用いて説明する。ただし、本発明の技術範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0031】
(酵母消化物の準備)
トルラ酵母の培養菌体100重量部(乾燥重量換算)の10重量%水懸濁液に対して、デナチームGEL(長瀬産業製)を4重量部、アルカラーゼ2.4LFG(ノボザイムズ社製)を4重量部添加し、酵母菌体の可溶化処理を実施した。この時の可溶化率は80%であった。ここに、賦形剤として、42.86重量部の酵母エキス残渣「KR酵母」(興人ライフサイエンス社製)を添加し、濃縮した。これをダブルドラムドライヤー(伝熱面積 28.3m2、ドラム表面温度155℃、ドラム回転数2.0rpm、給液速度 600L/hr)で乾燥し、酵母消化物とした。当該酵母消化物の、水可溶成分の比率は56重量%、ペプチド含有量は33.6重量%、RNA含有量は7%、遊離アミノ酸含有量は12.5重量%、食物繊維17.5%、リン脂質含有量2.2%、グアニル酸とイノシン酸との合計含有量は、3%であった。
【0032】
(実施例1)
下記表1に示す組成に準じて水溶液を調製し、反応に供する組成物とした。なお、αリノレン酸には市販のエゴマ油を用いた。
【0033】
【0034】
調製した水溶液のpHを、水酸化ナトリウムにてpH7.9に調整し、95℃、110℃、120℃および130℃それぞれで1時間、オートクレーブにて蒸気加熱により、各種加熱反応物を得た。各種加熱反応物の風味について、熟練した7名のパネラーにより官能評価を行った。
【0035】
各パネラーは、95℃及び110℃加熱品は、エビミソ様の風味、エビの濃厚な風味を有していると評価した。120℃及び130℃加熱品は、エビの殻を焼いたようなロースト香を有していたと評価した。
【0036】
(実施例2)
加熱反応において、120℃で、1時間または2時間の反応をさせたこと以外は、実施例1と同様に行った。2時間の反応においても、1時間と同様の風味を有するとの評価であった。
【0037】
(実施例3)
95℃1時間加熱品をサンプル1とし、120℃1時間加熱品をサンプル2として、食品に添加した場合の添加効果を確認した。熟練した7名のパネラーにより官能評価を行った。
【0038】
市販のホワイトソース(ハインツ社製)に添加した時の風味等の変化を評価した。当該ホワイトソースの原材料表示には、エビ関連の原材料の表示はなかった。サンプル1及びサンプル2をそれぞれホワイトソースに0.3重量%添加した。その結果、サンプル1を添加したものは、添加しないものと比較して、エビ様の風味が付与され、エビミソを添加したような濃厚な風味が付与された。サンプル2を添加したものは、添加しないものと比較して、やや香ばしいエビ風味が付与され、濃厚感をより強く感じる風味が付与された。
【0039】
原材料にエビが使用されている濃縮鶏がらスープである「湯麺汁子」(MCフードスペシャリティーズ製)40gを500gの熱湯に、コントロール(添加なし)、前記サンプル2を0.2重量%添加し官能評価を行った。サンプル2を添加したものは、コントロールと比較して、エビ様の香ばしい風味を濃厚感が増強されていた。
【0040】
ビスクへの添加効果を確認した。表1のような配合をした5倍濃縮配合品を作成した。評価時には、等倍となるよう水で薄めて、コントロール(添加なし)、サンプル2を0.5重量%添加し官能評価を行った。サンプル2を添加したものは、香ばしいエビの濃厚感が増強された。
【0041】
【0042】
加工用赤味噌および水を用いて、味噌汁で本発明の効果を確認した。コントロール(添加なし)、サンプル2を0.3重量%添加し官能評価を行った。サンプル2を添加したものは、エビ様の甘い風味が付与されて、濃厚な風味になった。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は、風味を付与することができる調味料および風味を付与した飲食品の製造・加工分野において利用できる。特に、原材料にエビを含む加工食品の本発明の調味料を添加した場合は、エビの風味を増強することができ、エビを含まない加工食品に本発明の調味料を添加した場合には、エビの風味を付与することができる。