(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】ゴム組成物およびその架橋体
(51)【国際特許分類】
C08L 23/16 20060101AFI20230810BHJP
C08K 3/36 20060101ALI20230810BHJP
C08K 3/011 20180101ALI20230810BHJP
C08K 3/06 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
C08L23/16
C08K3/36
C08K3/011
C08K3/06
(21)【出願番号】P 2019031446
(22)【出願日】2019-02-25
【審査請求日】2022-02-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001070
【氏名又は名称】弁理士法人エスエス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】服部 祐介
(72)【発明者】
【氏名】大久保 太一
(72)【発明者】
【氏名】市野 光太郎
【審査官】岩田 行剛
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-019890(JP,A)
【文献】特開昭56-120744(JP,A)
【文献】特開平06-093191(JP,A)
【文献】特開2006-328111(JP,A)
【文献】特開2014-162817(JP,A)
【文献】特開平01-168741(JP,A)
【文献】特開2012-151074(JP,A)
【文献】特開2006-290914(JP,A)
【文献】国際公開第2017/047519(WO,A1)
【文献】特開2018-130645(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00-101/14
C08K 3/00- 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と、
親水性シリカ(B)と、
架橋剤(C)と
を含み、且つ、
前記エチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)が、
エチレン含量50.7~56.3質量%、非共役ポリエン含量6.8~8.4質量%の第1のエチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合
体(A1)60~90質量%と、
エチレン含量61.7~67.3質量%、非共役ポリエン含量3.7~5.3質量%の第2のエチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合
体(A2)10~40質量%と
を含むゴム組成物。
【請求項2】
前記親水性シリカ(B)が、疎水基を有さない請求項1に記載のゴム組成物。
【請求項3】
前記エチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100質量部に対し、前記親水性シリカ(B)を30~80質量部含む、請求項1または2に記載のゴム組成物。
【請求項4】
前記架橋剤(C)が硫黄である、請求項1~3のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項5】
腕時計型ウェアラブル端末用バンドに用いられる、
請求項1~4のいずれか1項に記載のゴム組成物。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋体。
【請求項7】
請求項6に記載のゴム架橋体を含む、腕時計型ウェアラブル端末用バンド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム組成物およびその架橋体に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・プロピレン・ジエン共重合体ゴム(EPDM)は、その分子構造の主鎖に不飽和結合を有しないため、汎用の共役ジエンゴムと比べ、耐熱老化性、耐候性、耐オゾン性に優れ、自動車用部品、電線用材料、電気・電子部品、建築土木資材、工業材部品等の種々の用途に広く用いられている。
【0003】
EPDMは、多くの場合、カーボンブラック等の補強材を配合したゴム組成物の形で用いられ、ゴム架橋体の製造に供される。EPDM等を含むゴム組成物は、架橋剤をさらに含む形で成形及び架橋に供せられ、ゴム架橋体に導かれる。
【0004】
ここで、このようなゴム架橋体を、金型を用いて成形する場合、金型から成形体を脱型する必要があるところ、作業効率向上の観点から脱型を高温で行うことへの要求がある。ただ、高温での脱型を可能とするためには、得られるゴム架橋体が、高温での引裂き特性を十分に有している必要がある。このため、高い引裂強度を有するゴム架橋体を得るための試みが種々なされている。例えば、特許文献1には、このようなゴム架橋体を与えるゴム組成物として、特定のムーニー粘度を有するEPDMと特定の老化防止剤と充填材などとを特定の割合で含むEPDM系ゴムモールド材料を開示している。また、特許文献1には、このEPDM系ゴムモールド材料が優れた熱老化特性および高温での引裂き強度をもつことも記載されている。
【0005】
一方、腕時計型ウェアラブル端末は、腕時計に類似した形態を有する情報端末であり、通常、腕時計と同様腕に装着された状態で使用される。このため、腕時計型ウェアラブル端末は、情報端末としての本質的機能を担う本体部分と、当該本体部分を腕に固定するためのバンドとを有する構成となっている。腕時計型ウェアラブル端末の分野は、スポーツ用の成長が著しく、近年は脈拍計が搭載されているタイプの腕時計型ウェアラブル端末が発売されている。この腕時計型ウェアラブル端末の分野は、更なる成長が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載されているように、EPDM等を含むゴム組成物からゴム架橋体を得る際の脱型性の向上についての試みは種々なされている。しかし、EPDM等を含むゴム組成物であっても従来のゴム組成物には、使用する補強材によっては、依然として、ゴム架橋体に変換した後金型から脱型する際に引裂強度が低く、裂けてしまい、脱型性が低下する場合がある。したがって、EPDM等を含むゴム組成物からゴム架橋体を得る際の脱型性についての更なる向上が望まれている。
【0008】
一方、脈拍計が搭載されているタイプの腕時計型ウェアラブル端末では、脈拍測定時には肌に端末を押しつける必要がある。そのため、このような腕時計型ウェアラブル端末は、バンドに持続的に引張力が掛かる状態で用いられることになり、バンド自体に十分に高い引裂き強度が求められることになる。また、脈拍測定時に端末がずれることがないよう、バンドは軽量であることも求められる。
【0009】
そこで、本発明は、十分に高い引裂強度を有するゴム架橋体を与えることができ、金型を用いて成形および架橋をしたときに金型から脱型する際の脱型性に優れ、且つ、比重の低いゴム組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、EPDMと補強材とを含むゴム組成物を用いてゴム架橋体を製造するにあたり、親水性シリカを補強材として採用すると、金型を用いて成形および架橋をしたときに金型からの脱型性に優れることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
本発明は、下記[1]~[8]に係るものである。
[1]
エチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と、
親水性シリカ(B)と、
架橋剤(C)と
を含むゴム組成物。
【0012】
[2]
前記親水性シリカ(B)が、疎水基を有さない前記[1]に記載のゴム組成物。
[3]
前記エチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100質量部に対し、前記親水性シリカ(B)を30~80質量部含む、前記[1]または[2]に記載のゴム組成物。
【0013】
[4]
前記エチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)が、
エチレン含量50.7~56.3質量%、非共役ポリエン含量6.8~8.4質量%の第1のエチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A1)10~90質量%と、
エチレン含量61.7~67.3質量%、非共役ポリエン含量3.7~5.3質量%の第2のエチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)10~90質量%と
を含む、前記[1]~[3]のいずれかに記載のゴム組成物。
【0014】
[5]
前記架橋剤(C)が硫黄である、前記[1]~[4]のいずれかに記載のゴム組成物。
[6]
腕時計型ウェアラブル端末用バンドに用いられる、前記[1]~[5]のいずれかに記載のゴム組成物。
【0015】
[7]
前記[1]~[6]のいずれかに記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋体。
[8]
前記[7]に記載のゴム架橋体を含む、腕時計型ウェアラブル端末用バンド。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、十分に高い引裂強度を有するゴム架橋体を与えることができ、金型を用いて成形および架橋をしたときに金型から脱型する際の脱型性に優れ、且つ、比重の低いゴム組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
〔ゴム組成物〕
本発明に係るゴム組成物は、
エチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)と、
親水性シリカ(B)と、
架橋剤(C)と
を含む。
【0018】
ここで、本明細書において、エチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)100質量部に対する各成分の質量部は、「phr」と呼ばれることがある。また、「phr」という表現は油展ゴムにおける油展量についても用いられる場合もあるが、その場合、油展ゴム中の構成ゴムの量100質量部に対して配合されているオイルの量を表す。
【0019】
以下、本発明のゴム組成物、および、本発明のゴム組成物を構成する各構成成分について詳細に説明する。
<エチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)>
本発明のゴム組成物を構成するエチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A)(本明細書において、単に「共重合体(A)」とも呼ばれる場合がある。)は、エチレンと、炭素原子数3~20のα-オレフィンと、非共役ポリエンとの共重合体である。すなわち、共重合体(A)は、エチレン由来の構造単位と、炭素原子数3~20のα-オレフィン由来の構造単位と、非共役ポリエン由来の構造単位とを含む。本発明のゴム組成物において、共重合体(A)はゴム主剤として機能する。
【0020】
ここで、本明細書において、「エチレン由来の構造単位」というときは、エチレンに対応する構造単位、すなわち、-CH2-CH2-で表される構造単位を意味する。「炭素原子数3~20のα-オレフィン由来の構造単位」および「非共役ポリエン由来の構造単位」についても同様に解釈され、それぞれ、炭素原子数3~20のα-オレフィンに対応する構造単位、および、非共役ポリエンに対応する構造単位を意味する。
【0021】
本発明で用いられる共重合体(A)は、ゴム成分であって、ランダム共重合体でも、ブロック共重合体でもよい。共重合体(A)は、耐候性および加硫性等に優れる点で好ましい。
【0022】
ここで、上記炭素原子数3~20のα-オレフィンとしては、具体的には、プロピレン、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、1-トリデセン、1-テトラデセン、1-ペンタデセン、1-ヘキサデセン、1-ヘプタデセン、1-ノナデセン、1-エイコセン、9-メチルデセン-1、11-メチルドデセン-1および12-エチルテトラデセン-1などが挙げられる。なかでも、プロピレン、1-ブテン、4-メチルペンテン-1、1-ヘキセンおよび1-オクテンが好ましく、特にプロピレンが好ましい。これらα-オレフィンは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0023】
また、非共役ポリエンの具体例として、
1,4-ヘキサジエン、3-メチル-1,4-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、4,5-ジメチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、8-メチル-4-エチリデン-1,7-ノナジエン、4-エチリデン-1,7-ウンデカジエン等の鎖状非共役ジエン;
ノルボルナジエン、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB)、5-イソプロペニル-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-イソブテニル-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1-メチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(2,3-ジメチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-エチル-3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-メチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(3,4-ジメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(3-エチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-(2-メチル-6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2-ジメチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(5-エチル-5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(1,2,3-トリメチル-4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-ビニリデン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン(ENB)、5-イソプロピリデン-2-ノルボルネン等の不飽和ノルボルネン誘導体、メチルテトラヒドロインデン、および、ジシクロペンタジエン、などの環状非共役ジエン;
2,3-ジイソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-エチリデン-3-イソプロピリデン-5-ノルボルネン、2-プロペニル-2,2-ノルボルナジエン、4-エチリデン-8-メチル-1,7-ノナジエン等のトリエン
などが挙げられる。これらの非共役ポリエンのうち、VNBおよびENBが好ましい。
これらの非共役ポリエンは一種単独で用いても、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
共重合体(A)の具体例として、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネンランダム共重合体、エチレン・プロピレン・5-ビニル-2-ノルボルネンランダム共重合体、エチレン・プロピレン・5-エチリデン-2-ノルボルネン・5-ビニル-2-ノルボルネンランダム共重合体などが挙げられる。
【0025】
上記共重合体(A)は、エチレン由来の構造単位を、好ましくは40~80質量%、より好ましくは45~75質量%、さらに好ましくは50~70質量%含む。また、非共役ポリエン由来の構造単位を、好ましくは2~15質量%、より好ましくは2~10質量%、さらに好ましくは3~8質量%含む。なお、本明細書において、共重合体(A)中のエチレン由来の構造単位の含有量は「エチレン含量」と呼ばれる場合があり、共重合体(A)中の非共役ポリエン由来の構造単位の含有量は「非共役ポリエン含量」と呼ばれる場合がある。
【0026】
また、上記共重合体(A)は、炭素原子数3~20のα-オレフィン由来の構造単位に対するエチレン由来の構造単位の質量比が90/10~40/60、好ましくは、60/40~70/30である。この質量比が前記範囲内であると、機械強度が良好な材料が得られる。
【0027】
このような共重合体(A)を構成するエチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体は、1種単独であっても良く、2種以上の組み合わせであっても良い。ただ、本発明において、共重合体(A)は、
エチレン含量50.7~56.3質量%、非共役ポリエン含量6.8~8.4質量%の第1のエチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A1)(以下、「共重合体(A1)」とも呼ばれる場合がある。)と、
エチレン含量61.7~67.3質量%、非共役ポリエン含量3.7~5.3質量%の第2のエチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A2)(以下、「共重合体(A2)」とも呼ばれる場合がある。)と
を含むことが好ましい。共重合体(A)がこのような共重合体(A1)および共重合体(A2)を含むと、良加工性の未架橋のゴム組成物が得られ、かつ、機械強度に優れるため好ましい。
【0028】
ここで、共重合体(A1)の例として、X-4010M(三井化学製)、などが挙げられる。共重合体(A)における共重合体(A1)の割合は、加工性、架橋度の向上が期待できるという点から、通常10質量%以上、好ましくは40質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。一方、共重合体(A1)は、共重合体(A2)と比べてエチレン含量が低く、共重合体(A2)と比べて常温での機械強度が低い傾向にある。そのため、常温での機械強度を十分に維持する点から、共重合体(A)における共重合体(A1)の割合は、通常90質量%以下、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0029】
また、共重合体(A2)の例として、3062EM(三井化学製)などが挙げられる。共重合体(A)における共重合体(A2)の割合は、常温での機械強度向上の点から、通常10質量%以上、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。一方、共重合体(A2)は、共重合体(A1)と比べて分子量が高い傾向にあり、加工性が共重合体(A1)と比べて劣る傾向にある。そのため、一定の加工性を確保する点から、共重合体(A)における共重合体(A2)の割合は、通常60質量%以下、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下である。
【0030】
このような共重合体(A)は、典型的には、共重合体(A1)と共重合体(A2)とのみからなる。ただ、共重合体(A)は、共重合体(A1)と共重合体(A2)とのみからなる態様に限定されるものでなく、例えば、共重合体(A1)および共重合体(A2)のいずれにも該当しないエチレン・炭素原子数3~20のα-オレフィン・非共役ポリエン共重合体(A3)を60質量%以下含んでいても良い。
【0031】
本発明において、共重合体(A1)および共重合体(A2)など共重合体(A)を構成しうる各共重合体は、それぞれ、オイルを添加してなる油展ゴムの形態であっても良く、あるいは、非油展ゴムの形態であっても良い。
【0032】
ただ、共重合体(A)として油展ゴムの形態のものが用いられる場合、共重合体(A)についての「質量部」および「質量%」は、特に別途の記載がない限り、いずれも、油展ゴムの総質量から油展ゴムに含まれるオイルの質量を除いた残りの質量を基準とする。例えば、共重合体(A1)として非油展ゴムがX(g)と、共重合体(A2)として油展量a(phr)の油展ゴムがY(g)とのみからなる共重合体(A)の場合、「質量部」の基準となる共重合体(A)の質量は、X+Y×100/(100+a)(g)となる。このとき、当該共重合体(A)中の共重合体(A1)および共重合体(A2)の含量は、それぞれ、X/(X+Y×100/(100+a))×100(質量%)および(Y×100/(100+a))/(X+Y×100/(100+a))×100(質量%)となる。
【0033】
<親水性シリカ(B)>
本発明のゴム組成物は、親水性シリカ(B)を含む。本発明において親水性シリカ(B)を必須成分とするのは、ゴム組成物の補強材として親水性シリカを用いたときには、シリカ以外の補強材や疎水性シリカを用いたときと比べて、より高い引裂強度を有するゴム架橋体を与えることができ、且つ、金型を用いて成形および架橋をしたときに金型から脱型する際の脱型性に優れることに基づいている。また、ゴム組成物の補強材として親水性シリカを用いたときには、比重の低いゴム架橋体を与えることもできる。したがって、例えば、腕時計用ウェアラブル端末のバンドとして、本発明のゴム組成物を用いて得られるものを採用すると、装着感の良い腕時計用ウェアラブル端末が得られるとともに、脈拍計が搭載されているタイプの腕時計用ウェアラブル端末の場合には、脈拍測定時に端末がずれにくくなる。
【0034】
ここで、親水性シリカとは、表面に疎水基を有さないシリカをいい、通常の場合、通常ゴム工業において用いられる公知の乾式シリカ、湿式シリカ等が挙げられる。本発明において、親水性シリカ(B)は、未架橋のゴム組成物中で強度向上に寄与することが知られているバウンドラバー量を多くする効果があるという点から、シラノール基の多いシリカであることが好ましい。そのような好ましい親水性シリカの例として、アエロジル(登録商標)200(日本アエロジル(株)製)などが挙げられる。
親水性シリカ(B)の配合量は、その用途により適宜選択できるが、共重合体(A)100質量部に対して、通常30~80質量部、好ましくは40~70質量部である。
【0035】
<架橋剤(C)>
本発明のゴム組成物を構成する架橋剤(C)は、上記共重合体(A)を架橋可能である限り特に限定されず、硫黄系化合物、過酸化物系架橋剤などゴムの分野において通常用いられる種々のものであってもよい。
【0036】
本発明においては、好適な架橋剤(C)として、イオウ系化合物(C1)が挙げられる。イオウ系化合物(C1)によりゴム組成物を架橋することで、ジクミルパーオキサイド等の過酸化物系架橋剤を用いた場合と比べて、格段に優れた柔軟性や機械的特性を付与することができる。
【0037】
イオウ系化合物(C1)の種類としては、イオウ、塩化イオウ、二塩化イオウ、モルフォリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジチオカルバミン酸セレン等が挙げられる。この中でも、イオウやテトラメチルチウラムジスルフィドが好ましい。
【0038】
一方、架橋剤(C)として過酸化物系架橋剤(C2)を用いることもできる。
過酸化物系架橋剤(C2)としては、
1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2-ビス(t-ブチルパーオキシ)オクタン、1,1-ビス(t-ブチルパーオキシ)シクロドデカンなどのパーオキシケタール、並びに、
ジ-t-ブチルパーオキサイド、t-ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α、α'-ビス(t-ブチルパーオキシ-m-イソプロピル)ベンゼン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、2,5-ジメチル-2,5-ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサンなどのジアルキルパーオキサイド等が挙げられる。
【0039】
本発明のゴム組成物における架橋剤(C)の含有量は、共重合体(A)100質量部に対して、0.01~10質量部であり、好ましくは0.01~5質量部である。
ここで、架橋剤(C)としてイオウ系化合物(C1)が用いられる場合、その含有量は、前記共重合体(A)100質量部に対して0.01~5質量部であることが好ましい。
一方、架橋剤(C)として過酸化物系架橋剤(C2)が用いられる場合、その含有量は、前記共重合体(A)100質量部に対して0.5~5質量部であることが好ましい。
【0040】
<その他の成分>
本発明のゴム組成物は、上述した共重合体(A)、親水性シリカ(B)、および架橋剤(C)を含むところ、用途に合わせてさらにその他の成分を含んでいても良い。
【0041】
本発明のゴム組成物に含まれうるその他の成分として、親水性シリカ(B)以外の補強材(以下「補強材(B')」)、可塑剤、加硫促進剤、共架橋剤、加硫助剤、加工助剤、老化防止剤、活性剤、吸湿剤、発泡剤、発泡助剤等の種々の添加剤が挙げられる。また、必要に応じて、公知の着色剤、分散剤、難燃剤等もその他の成分として用いうる。
【0042】
補強材(B')
本発明のゴム組成物は、架橋体としたときの引張強度、引裂強度、耐摩耗性などの機械的性質を高めるために、上記親水性シリカ(B)に加えて、さらに、親水性シリカ(B)以外の補強材(B')を含んでいても良い。
【0043】
補強材(B')の種類としては、カーボンブラック、活性化炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、タルク、クレー等が挙げられる。これらの補強材は、1種単独で、あるいは、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0044】
この中でも、ゴムマトリックスへの均一分散性と優れた補強性、および汎用性(コスト)という観点から、補強材(B')は、カーボンブラックが好ましい。
カーボンブラックの種類は特に限定されないが、使用目的に応じて、通常ゴム工業において用いられる公知のタイプ、例えば、ファーネスブラック(ASTM D 1765による分類)、チャンネルブラック、サーマルブラック、アセチレンブラック等が挙げられる。
【0045】
ここで、カーボンブラックは、シランカップリング剤等で表面処理して使用してもよい。
また、重質炭酸カルシウムとしては、市販されている「ホワイトンSB」(商品名;白石カルシウム株式会社)等を用いることができる。
【0046】
補強材(B')の種類および配合量は、その用途により適宜選択できるが、共重合体(A)100質量部に対して、通常10~300質量部、好ましくは10~200質量部である。
【0047】
可塑剤
本発明のゴム組成物は、その用途に応じて、ゴムの分野において軟化剤として一般的に用いられる公知の可塑剤をさらに含んでいてもよい。
【0048】
このような可塑剤の具体例としては、プロセスオイル(例えば、「ダイアナプロセスオイル PS-430」(商品名;出光興産株式会社製)など)、潤滑油、パラフィン油、流動パラフィン、石油アスファルト、およびワセリン等の石油系軟化剤;コールタール、およびコールタールピッチ等のコールタール系軟化剤;ひまし油、アマニ油、ナタネ油、大豆油、およびヤシ油等の脂肪油系軟化剤;蜜ロウ、カルナウバロウ、およびラノリン等のロウ類;リシノール酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸カルシウム、およびラウリン酸亜鉛等の脂肪酸またはその塩;ナフテン酸、パイン油、およびロジンまたはその誘導体;テルペン樹脂、石油樹脂、アタクチックポリプロピレン、およびクマロンインデン樹脂等の合成高分子物質;ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、およびジオクチルセバケート等のエステル系軟化剤;その他、マイクロクリスタリンワックス、液状ポリブタジエン、変性液状ポリブタジエン、液状チオコール、炭化水素系合成潤滑油、トール油、およびサブ(ファクチス)などが挙げられる。なかでも、石油系軟化剤が好ましい。石油系軟化剤の中では、石油系プロセスオイルが好ましく、この中でもパラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、アロマ系プロセスオイル等がさらに好ましい。
【0049】
ここで、上記可塑剤の含有量は、その用途により適宜選択でき、通常、共重合体(A)100質量部に対して、最大200質量部、好ましくは最大150質量部、より好ましくは最大130質量部が望ましい。
【0050】
加硫促進剤
本発明に係るゴム組成物には、上記共重合体(A)、親水性シリカ(B)および架橋剤(C)のほかに、加硫促進剤をさらに含んでいてもよい。
【0051】
ここで、本発明に係るゴム組成物において、加硫促進剤の含有量は、上記共重合体(A)100質量部に対して、好ましくは0.1~15質量部、より好ましくは0.5~10質量部である。このような含有量でゴム組成物に加硫促進剤が含まれることにより、ゴム組成物が優れた架橋特性を有し、得られるゴム架橋体におけるブルームの発生をより低減することができる。
【0052】
加硫促進剤の具体例としては、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド(例えば、「サンセラーCM」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、N-オキシジエチレン-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、N,N'-ジイソプロピル
-2-ベンゾチアゾールスルフェンアミド、2-メルカプトベンゾチアゾール(例えば、「サンセラーM」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、2-(4-モルホリノジチオ)ペンゾチアゾール(例えば、「ノクセラーMDB-P」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、2-(2,4-ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2-(2,6-ジエチル-4-モルフォリノチオ)ベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等のチアゾール系;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジオルソトリルグアニジン等のグアニジン系;アセトアルデヒド-アニリン縮合物、ブチルアルデヒド-アニリン縮合物、アルデヒドアミン系;2-メルカプトイミダゾリン等のイミダゾリン系;ジエチルチオウレア、ジブチルチオウレア等のチオウレア系;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド(例えば、「サンセラーTT」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、テトラエチルチウラムジスルフィド(例えば、「サンセラーTET」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)等のチウラム系;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(例えば、「サンセラーBZ」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、ジエチルジチオカルバミン酸テルル等のジチオ酸塩系;エチレンチオ尿素(例えば、「サンセラー22-C」(商品名;三新化学工業株式会社製)など)、N,N'-ジエチルチオ尿素等のチオウレア系;ジブチルキサトゲン酸亜鉛等のザンテート系;その他亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業株式会社製)などの酸化亜鉛)等が挙げられる。
【0053】
共架橋剤
上記架橋剤(C)として過酸化物系架橋剤(C2)を用いる場合には、本発明に係るゴム組成物には、上記共重合体(A)、補強材(B)および架橋剤(C)のほかに、物性や加硫速度改善などを目的として、必要に応じて、適宜な共架橋剤をさらに含むことができる。
【0054】
共架橋剤の例として、ブレンマーPDE-100(日本油脂株式会社製商品名)の如きポリエチレングリコールジメタクリレート(PEGDM)、ジアリルフタレート(DAP)、タイク(日本化成株式会社製商品名)の如きトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、タック(株式会社武蔵野化学研究所製商品名)の如きトリアリルシアヌレート(TAC)、アクリエステルTHF(三菱レーヨン株式会社製商品名)の如きメタクリル酸テトラヒドロフルフリル(THFMA)、サンエステルEG(三新化学工業株式会社製商品名)やアクリエステルED(三菱レーヨン株式会社製商品名)の如きジメタクリル酸エチレン(EDMA)、アクリエステルBD(三菱レーヨン株式会社製商品名)の如きジメタクリル酸1,3-ブチレン(BDMA)、サンエステルTMPMA(三新化学工業株式会社製商品名)やアクリエステルTMP(三菱レーヨン株式会社製商品名)やハイクロスM(精工化学株式会社製商品名)の如きトリメタクリル酸トリメチロールプロパン(TMPMA)などが挙げられる。
【0055】
この共架橋剤の添加量は、上記共重合体(A)100質量部に対して、1~10質量部程度が適当である。
またこの態様のゴム組成物においては、過酸化物系架橋剤を用いた加硫の際にメタクリル酸エステルやタイク(日本化成株式会社)の如きトリアリルイソシアヌレート(TAIC)、などを加硫助剤としてさらに添加してもよい。
【0056】
加硫助剤
本発明に係るゴム組成物には、上記共重合体(A)、親水性シリカ(B)および架橋剤(C)のほかに、加硫助剤をさらに含んでいてもよい。
【0057】
加硫助剤の具体的例としては、酸化マグネシウム、亜鉛華(例えば、「META-Z102」(商品名;井上石灰工業株式会社製)などの酸化亜鉛)などが挙げられる。その含有量は、通常、共重合体(A)100質量部に対して、1~20質量部である。
【0058】
加工助剤
本発明に係るゴム組成物には、上記共重合体(A)、親水性シリカ(B)および架橋剤(C)のほかに、加工助剤をさらに含んでいてもよい。
【0059】
加工助剤としては、通常のゴムの加工に使用される化合物を使用することができる。具体的には、リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸;ステアリン酸バリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の高級脂肪酸の塩;リシノール酸、ステアリン酸、パルチミン酸、ラウリン酸等の高級脂肪酸のエステル類などが挙げられる。
【0060】
このような加工助剤は、通常、共重合体(A)100質量部に対して、10質量部以下、好ましくは5質量部以下の割合で用いられるが、要求される物性値に応じて適宜最適量を決定することが望ましい。
【0061】
老化防止剤
本発明に係るゴム組成物から製造されたゴム製品は、さらに製品寿命を長くするために、老化防止剤を含有してもよい。また、老化防止剤としては、従来公知の老化防止剤、例えばアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、イオウ系老化防止剤等が挙げられる。
【0062】
具体的には、フェニルブチルアミン、N,N-ジ-2-ナフチル-p-フェニレンジアミン等の芳香族第2級アミン系老化防止剤、ジブチルヒドロキシトルエン、テトラキス-[メチレン-3-(3',5'-ジ-t-ブチル-4'-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン等のフェノール系老化防止剤;ビス[2-メチル-4-(3-n-アルキルチオプロピオニルオキシ)-5-t-ブチルフェニル]スルフィド等のチオエーテル系老化防止剤;ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等のジチオカルバミン酸塩系老化防止剤;2-メルカプトベンゾイルイミダゾール、2-メルカプトベンゾイミダゾールの亜鉛塩、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等のイオウ系老化防止剤等が挙げられる。
【0063】
これらの老化防止剤は、1種単独であるいは2種以上の組み合わせで用いることができ、このような老化防止剤の含有量は、共重合体(A)100質量部に対して、通常0.3~10質量部、好ましくは0.5~7.0質量部、さらに好ましくは0.7~5.0質量部である。老化防止剤の含有量が上記範囲内であると、ゴム組成物の架橋時における加硫阻害を低減することができ、得られるゴム架橋体におけるブルームの発生を低減することができる。
【0064】
<ゴム組成物の製造方法>
本発明のゴム組成物は、上記所定質量部の共重合体(A)、親水性シリカ(B)および架橋剤(C)と、必要により配合される上記「その他の成分」とから、一般的なゴム配合物の調製方法と同様の方法によって調製することができる。
【0065】
例えば、バンバリーミキサー、ニーダー、インターミックスのようなインターナルミキサー類を用いて、上述した各成分を、好ましくは80~190℃、より好ましくは80~170℃の温度で、好ましくは2~20分間、より好ましくは3~10分間混練した後、オープンロールのようなロール類またはニーダーを用いて、ロール温度40~80℃で3~30分間混練した後、混練物を押出し/分出しすることにより調製することができる。また、インターナルミキサー類での混練温度が低い場合には、加硫促進剤または加硫助剤などを同時に混練してもよい。また、上記インターナルミキサー類を用いた混練は、混練温度等によっては、インターナルミキサー類に代えてロール類を用いて行ってもよい。
【0066】
<ゴム架橋体>
本発明のゴム組成物は、ゴム架橋体の原料として用いることができる。本発明のゴム架橋体は、上述したゴム組成物を架橋してなる。本発明のゴム架橋体は、高い引裂強度を有しており、且つ、比重も低い。したがって、軽量且つ高い強度を要する各分野のゴム製品として非常に有用である。
【0067】
ここで、本発明のゴム架橋体は、上述したゴム組成物を架橋することにより得ることができる。本発明の組成物から架橋体を製造するには、一般のゴムを加硫するときと同様に、未加硫のゴム組成物を上述したような方法で調製し、次に、このゴム組成物を意図する形状に成形した後に加硫を行えばよい。
【0068】
前記のようにして調製された未加硫のゴム組成物は、種々の成形法により成形、加硫することができる。ただ、本発明のゴム組成物は、型を用いた成形および架橋を行ったときに脱型性に優れる。したがって、本発明のゴム組成物は、圧縮成形、射出成形、注入成形などの型成形により成形、加硫する場合に、最も効果的にその特性を発揮することができる。
【0069】
圧縮成形は、たとえば、予め秤量した未加硫のゴム組成物を型に入れ、型を閉じた後120~270℃の温度で、30秒~120分加熱することにより行うことができる。その後、脱型を行うことにより、目的とする架橋体が得られる。
【0070】
射出成形は、例えば以下のように行うことができる。まず、リボン状あるいはペレット状のゴム組成物をスクリューにより予め設定した量だけポットに供給する。引き続き予備加熱されたゴム組成物をプランジャーにより金型内に1~20秒で送り込む。ゴム組成物を射出した後120~270℃の温度で、30秒~120分加熱する。その後、脱型を行うことにより、目的とする架橋体が得られる。
【0071】
注入成形は、例えば以下のように行うことができる。まず、予め秤量したゴム組成物をポットに入れピストンにより金型内に1~20秒で注入する。ゴム組成物を注入した後120~270℃の温度で、30秒~120分加熱する。その後、脱型を行うことにより、目的とする架橋体が得られる。
【0072】
このようにして得られる本発明のゴム架橋体の用途としては、例えば、腕時計型ウェアラブル端末用バンド、ゴム長靴、ゴム手袋等が挙げられる。ここで、本発明のゴム架橋体が腕時計型ウェアラブル端末用バンドに用いられる場合、このバンドを備える腕時計型ウェアラブル端末は、情報端末としての本質的機能を担う本体部分と、当該本体部分を腕に固定するためのバンドとを含んでおり、当該バンドが、本発明のゴム架橋体を含む。
【実施例】
【0073】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。各物性の測定方法は以下の通りである。
【0074】
<未加硫ゴム物性の評価>
(ムーニー粘度(ML(1+4)125℃)、最低粘度(Vm))
125℃におけるムーニー粘度(ML(1+4)125℃)は、JIS K6300に準拠して、ムーニー粘度計((株)島津製作所製SMV202型)を用いて、125℃の条件下で測定した。この際、測定開始からの最低粘度(Vm(125℃))を求めた。
【0075】
(加硫速度)
実施例および比較例におけるゴム組成物を用いて、測定装置:MDR2000P(ALPHA TECHNOLOGIES 社製MDR (Moving Die Rheometer))により、キュアメーター試験を行い、S'Max-S'Min、tc10、tc20、tc50およびtc90を以下のとおり測定した。
【0076】
サンプルを測定装置にセットし、一定温度および一定のせん断速度の条件下で得られるトルク変化を測定し、加硫曲線を得た。この加硫曲線からトルクの最小値S'Minおよび最大値S'Maxを求め、測定開始時を基準としてトルクが(S'Max-S'Min)×0.1、(S'Max-S'Min)×0.2、(S'Max-S'Min)×0.5および(S'Max-S'Min)×0.9となるまでの時間(分)をそれぞれtc10、tc20、tc50およびtc90とした。ここで、このtc10は加硫開始点を意味し、tc90は最適加硫点を意味する。本発明では、このtc90をもって加硫速度とした。
【0077】
また、前記トルクの最小値からトルク1point(1dNm)上がるまでの時間を加硫誘導時間(TS1;分)とした。
また、加硫曲線の最大傾きをMCR(dNm/分)とした。
【0078】
<加硫ゴム物性の評価>
(引張破断点応力、引張破断点伸び)
ゴム架橋体からなるシートの引張破断点応力、引張破断点伸びを以下の方法で測定した。
【0079】
ゴム架橋体からなるシートを打抜いてJIS K 6251(2017年)に記載されている3号形ダンベル試験片を調製し、この試験片を用いてJIS K6251に規定される方法に従い、測定温度23℃、相対湿度50%、引張速度500mm/分の条件で引張り試験を行ない、伸び率が25%であるときの引張応力(25%モジュラス(M25))、伸び率が50%であるときの引張応力(50%モジュラス(M50))、伸び率が100%であるときの引張応力(100%モジュラス(M100))、伸び率が200%であるときの引張応力(200%モジュラス(M200))、伸び率が300%であるときの引張応力(300%モジュラス(M300))、引張破断点応力(TB)および引張破断点伸び(EB)を測定した。
また、測定温度を180℃に変更した場合についても、同様の測定を行った。
【0080】
(引裂強度)
引裂強度(TR-B)は、JIS-K6252-1に規定される「試験方法B-手順(a):切込みなしアングル形試験片を用いる方法」に従い測定した。
【0081】
(デュロメーターA硬度)
JIS K 6253に従い、シートの硬度(タイプAデュロメータ、HA)の測定は、平滑な表面をもっている2mmのシート状ゴム成形品6枚を用いて、平らな部分を積み重ねて厚み約12mmとして行った。ただし、試験片に異物の混入したもの、気泡のあるもの、およびキズのあるものは用いなかった。また、試験片の測定面の寸法は、押針先端が試験片の端から12mm以上離れた位置で測定できる大きさとした。
【0082】
(比重)
JIS L1013(2010年)に従って測定した。
<実施例、比較例で用いた成分について>
実施例及び比較例では、エチレン・プロピレン・非共役ポリエン共重合体として下記のものを使用した:
EPDM1:エチレン・プロピレン・ENB共重合体(商品名:三井EPT(商標) X-4010M(三井化学(株)製))、ML(1+4)100℃(ASTM D 1646):8、エチレン含量(ASTM D 3900):54wt%、ENB含量(ASTM D 6047):7.6wt%、[η]:1.03dl/g、比重:0.87;
EPDM2:エチレン・プロピレン・ENB共重合体(商品名:三井EPT(商標) 3062EM(三井化学(株)製))、ML(1+4)125℃(ASTM D 1646):43、エチレン含量(ASTM D 3900):65wt%、ENB含量(ASTM D 6047):4.5wt%、[η]:2.72dl/g、比重:0.87、油展量:20phr。
【0083】
また、シリカとして下記のものを使用した:
親水性シリカ1:表面修飾されていないフュームドシリカ(商品名:アエロジル(登録商標)200(日本アエロジル(株)製))、比重:1.06;
疎水性シリカ1:トリメチルシリル基で表面修飾したフュームドシリカ(商品名:アエロジル(登録商標)RX200(日本アエロジル(株)製))。
【0084】
[実施例1]
第一段階として、MIXTRON BB MIXER(神戸製鋼所社製、BB-4型、容積2.95L、ローター4WH)を用いて、共重合体(A)として上記EPDM1 70質量部および上記EPDM2 36質量部(共重合体成分量として30質量部相当)と、親水性シリカ(B)として上記親水性シリカ1 67質量部と、加硫助剤として活性亜鉛華(商品名:META-Z 102、井上石灰工業(株)製) 5質量部と、加工助剤としてステアリン酸 2質量部と、可塑剤としてパラフィン系プロセスオイル(商品名:ダイアナプロセスオイル PS-430、出光興産(株)製) 44重量部とを混練し、配合物を得た。混練条件は、ローター回転数50rpm、フローティングウェイト圧力3kg/cm2、混練時間5分間で行い、混練排出温度は120℃であった。
【0085】
第一段階で得られた配合物の組成を表1に示す。ここで、EPDM2の配合量につき、上段に示された値は、油展ゴムとしての全体量を表し、下段に括弧つきの斜体で示された値は、共重合体成分量(すなわち、油展ゴムとしての全体量から当該油展ゴムに含まれるオイルの量を除いた残りの量)を表す。
【0086】
第一段階で得られた配合物の比重を、上記「加硫ゴム物性の評価」中の「比重」の項に記載の方法により測定した。結果を表2-1に示す。
次に、第二段階として、第一段階で得られた配合物に8インチロールを用いて前記ゴム組成物に、加硫促進剤として2-メルカプトベンゾチアゾール(サンセラーM:三新化学工業(株)製) 0.5質量部、テトラメチルチウラムジスルフィド(サンセラーTT:三新化学工業(株)製) 0.5質量部、テトラエチルチウラムジスルフィド(サンセラーTET:三新化学工業(株)製) 0.5質量部、および、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛(サンセラーBZ:三新化学工業(株)製) 1.5質量部と、架橋剤(C)として硫黄 0.8質量部とを加えて混練し、未架橋のゴム組成物を得た。混練条件は、ロール温度を前ロール/後ロール:50℃/50℃、ロール回転数を前ロール/後ロール:18rpm/15rpm、ロール間隙を2mmとして、混練時間8分間で分出した。未架橋のゴム組成物の組成を表1に示す。
【0087】
得られた未架橋のゴム組成物の物性(未加硫ゴム物性)を、上記「未加硫ゴム物性の評価」に基づいて測定した。ここで、キュアメーター試験は、温度180℃および時間20分の測定条件下で行った。結果を表2-1に示す。
【0088】
さらにこの未架橋のゴム組成物を、プレス成形機を用いて180℃で10分間プレスすることにより架橋し、ゴム架橋体として厚み2mmのゴムシートを調製した。得られたゴムシートの物性(加硫ゴム物性)を、上記「加硫ゴム物性の評価」に基づいて、測定した。具体的には、得られたゴムシートのデュロメーターA硬度、並びに、23℃および180℃のそれぞれにおける、引張応力(M25,M50,M100,M200,M300)、破断点強度TB(MPa)、破断点伸びEB(%)、および引裂強度(TR-B)をそれぞれ測定した。結果を、下記表2-2に示す。
【0089】
また、脱型性の評価は、次のように行った。まず、上記未架橋のゴム組成物を、プレス成形機を用いて、金型内にて180℃で10分間プレスすることにより成形および架橋した。このとき用いた金型は、成形のために互いに組み合わされたときに、幅150mm、奥行き150mm、厚み2mmのゴムシートを形成できる大きさの空洞を形成する一対の金型であり、当該空洞の周囲に喰い切り溝を有しており、この喰い切り溝を介して余剰のゴム組成物を当該空洞から排出可能な構造を有している。つまり、当該成形および架橋によって、加硫ゴムシートとなる本体部と前記喰い切り溝に対応する喰い切り部とを有し、当該喰い切り部が当該本体部の周囲にある加硫成形体が得られることになる。
【0090】
この成形および架橋を終了した後、金型から加硫成形体を脱型し、得られた加硫成形体の外観を目視観察し、喰い切り部が裂けずに脱型することができたかどうかを評価した。この評価に際して、以下の基準により加硫成形体の採点を行った。
〇:シート4辺のうち一つも裂けない。
△:シート4辺のうち1~3か所裂ける。
×:シート4辺のうち4か所裂ける。
結果を、下記表2-2に示す。
【0091】
[比較例1]
親水性シリカ(B)として用いた上記親水性シリカ1に代えて、カーボンブラック(SRF)(商品名:旭#50G、旭カーボン(株)製) 67質量部を用いたことを除き、実施例1と同様に行った。ここで、未架橋のゴム組成物についてのキュアメータ試験は、表2-1に記載の測定条件下で行うとともに、加硫ゴム物性の測定に用いるゴム架橋体を製造する際のプレス温度および時間を、表2-2に記載のものとした。
【0092】
未架橋のゴム組成物の組成を表1に示すとともに、第一段階で得られた配合物の比重、未加硫ゴム物性、加硫ゴム物性および脱型性についての結果を表2-1および2-2に示す。
【0093】
[比較例2]
親水性シリカ(B)として用いた上記親水性シリカ1に代えて、上記疎水性シリカ1 15質量部およびカーボンブラック(SRF)(商品名:旭#50G、旭カーボン(株)製)45質量部を用いたことを除き、実施例1と同様に行った。ここで、未架橋のゴム組成物についてのキュアメータ試験は、表2-1に記載の測定条件下で行うとともに、加硫ゴム物性の測定に用いるゴム架橋体を製造する際のプレス温度および時間を、表2-2に記載のものとした。
【0094】
未架橋のゴム組成物の組成を表1に示すとともに、第一段階で得られた配合物の比重、未加硫ゴム物性、加硫ゴム物性および脱型性についての結果を表2-1および2-2に示す。
【0095】
[比較例3]
親水性シリカ(B)として用いた上記親水性シリカ1に代えて、同量のカーボンブラック(FEF)(商品名:旭#60G、旭カーボン(株)製)を用いたことを除き、実施例1と同様に行った。ここで、未架橋のゴム組成物についてのキュアメータ試験は、表2-1に記載の測定条件下で行うとともに、加硫ゴム物性の測定に用いるゴム架橋体を製造する際のプレス温度および時間を、表2-2に記載のものとした。
【0096】
未架橋のゴム組成物の組成を表1に示すとともに、第一段階で得られた配合物の比重、未加硫ゴム物性、加硫ゴム物性および脱型性についての結果を表2-1および2-2に示す。
【0097】
[比較例4]
親水性シリカ(B)として用いた上記親水性シリカ1に代えて、同量のクレー(商品名:ディキシークレー(商標)、ヴァンダービルトケミカルズ社製)を用いたことを除き、実施例1と同様に行った。ここで、未架橋のゴム組成物についてのキュアメータ試験は、表2-1に記載の測定条件下で行うとともに、加硫ゴム物性の測定に用いるゴム架橋体を製造する際のプレス温度および時間を、表2-2に記載のものとした。
【0098】
未架橋のゴム組成物の組成を表1に示すとともに、第一段階で得られた配合物の比重、未加硫ゴム物性、加硫ゴム物性および脱型性についての結果を表2-1および2-2に示す。
【0099】
[比較例5]
親水性シリカ(B)として用いた上記親水性シリカ1に代えて、同量のタルク(商品名:ミストロンベーパー(MISTRON VAPOR)、イメリス スペシャリティーズ ジャパン(株)製)を用いたことを除き、実施例1と同様に行った。ここで、未架橋のゴム組成物についてのキュアメータ試験は、表2-1に記載の測定条件下で行うとともに、加硫ゴム物性の測定に用いるゴム架橋体を製造する際のプレス温度および時間を、表2-2に記載のものとした。
【0100】
未架橋のゴム組成物の組成を表1に示すとともに、第一段階で得られた配合物の比重、未加硫ゴム物性、加硫ゴム物性および脱型性についての結果を表2-1および2-2に示す。
【0101】
[比較例6]
親水性シリカ(B)として用いた上記親水性シリカ1に代えて、同量の上記疎水性シリカ1を用いたことを除き、実施例1と同様に行った。ここで、未架橋のゴム組成物についてのキュアメータ試験は、表2-1に記載の測定条件下で行うとともに、加硫ゴム物性の測定に用いるゴム架橋体を製造する際のプレス温度および時間を、表2-2に記載のものとした。
【0102】
未架橋のゴム組成物の組成を表1に示すとともに、第一段階で得られた配合物の比重、未加硫ゴム物性、加硫ゴム物性および脱型性についての結果を表2-1および2-2に示す。
【0103】
【0104】
【0105】