(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】半導体装置
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20230810BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
H01L23/36 D
H01L23/36 C
H05K7/20 F
(21)【出願番号】P 2019160906
(22)【出願日】2019-09-04
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000003997
【氏名又は名称】日産自動車株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】507308902
【氏名又は名称】ルノー エス.ア.エス.
【氏名又は名称原語表記】RENAULT S.A.S.
【住所又は居所原語表記】122-122 bis, avenue du General Leclerc, 92100 Boulogne-Billancourt, France
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】森本 達也
(72)【発明者】
【氏名】沼倉 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】冨田 要介
(72)【発明者】
【氏名】早見 泰明
【審査官】佐藤 靖史
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-247274(JP,A)
【文献】特開2015-162497(JP,A)
【文献】特開2003-046027(JP,A)
【文献】特開2007-184351(JP,A)
【文献】特開2017-073483(JP,A)
【文献】特開2002-134669(JP,A)
【文献】特開2010-103338(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H05L 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の金属板と
前記第1の金属板に第1主面が接合された半導体チップと、
前記第1主面に対向する前記半導体チップの第2主面に接合された第2の金属板と、
前記半導体チップと並列に配置され、前記第1の金属板と前記第2の金属板に接合された絶縁性の熱伝導基板と
を備え、
前記熱伝導基板と前記第1の金属板との接合部および前記熱伝導基板と前記第2の金属板との接合部の少なくともいずれかが、接合強度が相対的に高い高強度領域と相対的に低い低強度領域とが混在する接合部であり、
前記低強度領域が、前記半導体チップに近い位置の前記高強度領域と遠い位置の前記高強度領域に挟まれ
、
前記半導体チップに近い位置の前記高強度領域と遠い位置の前記高強度領域のそれぞれが、前記半導体チップから前記熱伝導基板に向かう方向に対して垂直に延在する帯形状であり、相互に離間して配置されている
ことを特徴とする半導体装置。
【請求項2】
前記高強度領域が、接合材が配置された領域であり、
前記低強度領域が、前記接合材が配置された領域の残余の領域である
ことを特徴とする請求項1に記載の半導体装置。
【請求項3】
前記低強度領域に、前記接合材よりもヤング率が低く且つ熱伝導性を有する低弾性材が配置されていることを特徴とする請求項2に記載の半導体装置。
【請求項4】
前記第2の金属板が平面視で矩形状であり、
前記半導体チップが接合された領域から前記熱伝導基板が接合された領域に向かう行方向に沿った前記第2の金属板の長さが、前記行方向に垂直な列方向に沿った前記第2の金属板の長さよりも長い
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の半導体装置。
【請求項5】
第1の金属板と、
前記第1の金属板に第1主面が接合された半導体チップと、
前記第1主面に対向する前記半導体チップの第2主面に接合された第2の金属板と、
前記半導体チップと並列に配置され、前記第1の金属板と前記第2の金属板に接合された絶縁性の熱伝導基板と
を備え、
前記熱伝導基板と前記第1の金属板との接合部および前記熱伝導基板と前記第2の金属板との接合部の少なくともいずれかが、接合強度が相対的に高い高強度領域と相対的に低い低強度領域とが混在する接合部であり、
前記低強度領域が、前記半導体チップに近い位置の前記高強度領域と遠い位置の前記高強度領域に挟まれ、
前記半導体チップが配置された主面と対向する前記第1の金属板の他の主面に、前記第1の金属板より曲げ剛性の高い補強板が接合されている
ことを特徴とす
る半導体装置。
【請求項6】
第1の金属板と、
前記第1の金属板に第1主面が接合された半導体チップと、
前記第1主面に対向する前記半導体チップの第2主面に接合された第2の金属板と、
前記半導体チップと並列に配置され、前記第1の金属板と前記第2の金属板に接合された絶縁性の熱伝導基板と
を備え、
前記熱伝導基板と前記第1の金属板との接合部および前記熱伝導基板と前記第2の金属板との接合部の少なくともいずれかが、接合強度が相対的に高い高強度領域と相対的に低い低強度領域とが混在する接合部であり、
前記低強度領域が、前記半導体チップに近い位置の前記高強度領域と遠い位置の前記高強度領域に挟まれ、
前記高強度領域が、接合材が配置された領域であり、
前記低強度領域が、前記接合材が配置された領域の残余の領域であり、
前記低強度領域に、前記接合材よりもヤング率が低く且つ熱伝導性を有する低弾性材が配置されている
ことを特徴とする半導体装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
半導体チップに形成した半導体素子に電流が流れると、内部抵抗により半導体チップが発熱する。半導体チップで発生する熱を放出するために、種々の対策が検討されている。例えば、半導体素子の主面に冷却器を接合し、冷却器に流れる冷却水により半導体チップを冷却する。また、半導体チップの上面と下面に熱伝導性の高い導電部材を接続し、それぞれの導電部材に絶縁性部材を介して冷却器を接合する構造により、半導体チップを上面と下面から冷却する方法がある(特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、半導体チップ、導電部材および絶縁性部材に異なる材料を用いると、これらの材料の熱膨張率の差に起因して、半導体チップの温度変化によって導電部材が接合されている冷却器などの金属板に反りが生じる。この反りにより発生する力が導電部材を経由して半導体チップと導電部材との接合部に伝わることによって、半導体チップと導電部材との接合部に応力がかかる。このため、接合部の劣化や剥離が生じ、半導体チップと導電部材の間の熱抵抗や電気抵抗が増大するなどの問題が生じる。
【0005】
一方、導電部材を変形しやすくして、半導体チップと導電部材との接合部にかかる応力を緩和する方法がある。例えば、半導体チップとの接合面に垂直な断面の面積が小さい導電部材を使用することにより、導電部材を変形しやすくすることができる。しかし、導電部材の断面積を小さくすると、導電部材での熱の移動が制限され、熱が移動する経路(以下において、「放熱経路」という。)の熱抵抗が増大する。このように、導電部材の断面積の減少と放熱経路の熱抵抗の増大とはトレードオフの関係がある。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、半導体チップの接合部にかかる応力を緩和し、且つ放熱経路の熱抵抗の増大が抑制された半導体装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る半導体装置は、熱伝導基板と第1の金属板の接合部および熱伝導基板と第2の金属板の接合部の少なくともいずれかが、接合強度が高い高強度領域と低い低強度領域とが混在する接合部であることを要旨とする。低強度領域は、半導体チップに近い位置の高強度領域と遠い位置の高強度領域に挟まれている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、半導体チップの接合部にかかる応力を緩和し、且つ放熱経路の熱抵抗の増大が抑制された半導体装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第1の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【
図2】第1の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な平面図である。
【
図3】第1の実施形態に係る半導体装置の他の構成を示す模式的な平面図である。
【
図4】第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【
図5】第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の構成を示す模式的な平面図である。
【
図6】第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の他の構成を示す模式的な平面図である。
【
図7】第1の実施形態の変形例に係る半導体装置の更に他の構成を示す模式的な断面図である。
【
図8】第2の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な平面図である。
【
図9】第2の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【
図10】第3の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な平面図である。
【
図11】第3の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【
図12】第4の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【
図13】第4の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な平面図である。
【
図14】第4の実施形態に係る半導体装置の他の構成を示す模式的な平面図である。
【
図15】第5の実施形態に係る半導体装置の構成を示す模式的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して実施形態を説明する。図面の記載において同一部分には同一符号を付して説明を省略する。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部の厚みの比率などは現実のものとは異なる部分を含む。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれている。
【0011】
(第1の実施形態)
第1の実施形態に係る半導体装置1は、
図1に示すように、第1の金属板10、半導体チップ20、第2の金属板30および絶縁性の熱伝導基板40を備える。半導体チップ20の第1主面が第1の金属板10に接合され、第1主面に対向する半導体チップ20の第2主面が第2の金属板30に接合されている。熱伝導基板40は、半導体チップ20と並列に配置され、第1の金属板10と第2の金属板30に主面が接合されている。
【0012】
第1の金属板10および第2の金属板30には、例えば、アルミニウム板や銅板などが使用される。第1の金属板10は、半導体チップ20に発生する熱を外部に放出する放熱板の機能を有する。
【0013】
第1の金属板10や第2の金属板30は、半導体チップ20に形成された半導体素子の電極として使用されてもよい。例えば、第1主面に露出する第1主電極および第2主面に露出する第2主電極を有する半導体素子が形成された半導体チップ20において、第1の金属板10と第2の金属板30は電極として使用される。すなわち、半導体素子の第1主電極は第1の金属板10と電気的に接続し、第2主電極は第2の金属板30と電気的に接続する。そして、第1の金属板10と第2の金属板30を経由して、半導体素子に主電流が流れる。
【0014】
半導体チップ20と第1の金属板10は、第1のチップ接合材51により接合されている。また、半導体チップ20と第2の金属板30は、第2のチップ接合材52により接合されている。第1の金属板10や第2の金属板30が電極として使用される場合には、第1のチップ接合材51や第2のチップ接合材52に、例えば、はんだや焼結型金属接合材などの導電性の接合材が使用される。このとき、半導体チップ20と第1の金属板10および第2の金属板30とは金属接合される。なお、以下において、半導体チップ20と第1の金属板10の接合部および半導体チップ20と第2の金属板30との接合部を総称して、半導体チップ20の接合部とも称する。
【0015】
第1の金属板10と第2の金属板30の間で半導体チップ20と並列に配置された熱伝導基板40は、一方の主面が第1の金属板10と第1の基板接合材61により接合されている。また、熱伝導基板40の他方の主面と第2の金属板30は、第2の基板接合材62により接合されている。
【0016】
第1の金属板10と第2の金属板30の間で熱の移動が可能であるように、熱伝導性を有する材料が、熱伝導基板40、第1の基板接合材61および第2の基板接合材62に使用される。なお、熱伝導基板40は、第1の金属板10と第2の金属板30の間で電流経路が形成されない程度の絶縁性を有する。例えば、窒化ケイ素基板などが熱伝導基板40に使用される。
【0017】
第2の金属板30と対向する主面に金属パターンが形成された熱伝導基板40を使用してもよい。これにより、第2の金属板30を半導体チップ20の電極として使用した場合などに、第2の基板接合材62および熱伝導基板40に形成された金属パターンを電流経路として使用することができる。この場合、第2の基板接合材62には、はんだや焼結型金属接合材などの導電性の接合材が使用される。なお、熱伝導基板40の主面に金属膜を形成し、熱伝導基板40と第1の金属板10および第2の金属板30とを金属接合してもよい。
【0018】
半導体装置1では、半導体チップ20が発熱すると、半導体チップ20から第1の金属板10への直接の熱移動と、第2の金属板30と熱伝導基板40を経由する半導体チップ20から第1の金属板10への熱移動が生じる。これら2経路の熱移動により、半導体装置1の放熱経路の熱抵抗を下げることができる。
【0019】
図1に示すように、熱伝導基板40と第2の金属板30の接合部には、第2の基板接合材62が配置された領域と、第2の基板接合材62が配置されていない領域が混在している。一方、熱伝導基板40と第1の金属板10との接合部には、第1の基板接合材61が一様に配置されている。
【0020】
熱伝導基板40と第2の金属板30との接合部において、第2の基板接合材62が配置された領域は、第2の基板接合材62が配置されていない領域に比べて、接合強度が相対的に高い領域(以下、「高強度領域」という。)である。一方、第2の基板接合材62が配置された領域の残余の領域は、第2の基板接合材62が配置された領域に比べて、接合強度が相対的に低い領域(以下、「低強度領域」という。)である。そして、低強度領域は、半導体チップ20に近い位置の高強度領域と半導体チップ20から遠い位置の高強度領域に挟まれた領域である。
【0021】
熱伝導基板40と第2の金属板30との接合部に第2の基板接合材62が配置されていない空間を設けることにより、第2の金属板30に変形しやすい部分が生じる。つまり、第2の基板接合材62が配置されていない空間である低強度領域が、第2の金属板30が変形しやすい領域である。
【0022】
半導体装置1では、第1の金属板10の反りにより発生して第2の金属板30に伝わる力が、半導体チップ20に近い位置の高強度領域と半導体チップ20から遠い位置の高強度領域に分散される。このため、半導体チップ20の接合部にかかる応力の力点の位置が、熱伝導基板40と第2の金属板30の接合強度が接合部で一様の場合に比べて、半導体チップ20から遠くなる。更に、低強度領域において第2の金属板30の曲げ剛性が弱いため、第2の金属板30に力が伝わると第2の金属板30が曲がる。このため、半導体装置1では、半導体チップ20の温度変化などにより半導体装置1に反りが発生しても、反りの影響は、第2の金属板30が変形することにより吸収される。したがって、半導体装置1によれば、半導体チップ20の接合部にかかる応力を緩和することができる。
【0023】
更に、半導体装置1では、第2の金属板30を変形しやすくするために第2の金属板30の断面積を小さくする必要がない。このため、半導体装置1によれば、放熱経路の熱抵抗の増大を抑制することができる。
【0024】
図2に、半導体装置1の平面図を示す。
図2では、第2のチップ接合材52を表示しておらず、第2の金属板30を透過して半導体チップ20、第2の基板接合材62、熱伝導基板40および第1の金属板10が表示されている。
図1は、
図2のI-I方向に沿った断面図に相当する。
図2に示した半導体装置1では、第2の基板接合材62が環形状に形成されている。すなわち、第2の基板接合材62に周囲を囲まれた領域が低強度領域である。
【0025】
図3に、半導体装置1の他の例の平面図を示す。
図1は、
図3のI-I方向に沿った断面図に相当する。
図3に示した半導体装置1では、相互に離間して配置された2つの第2の基板接合材62に挟まれた領域が低強度領域である。つまり、半導体チップ20に近い位置の高強度領域と遠い位置の高強度領域のそれぞれが、半導体チップ20から熱伝導基板40に向かう方向と垂直に延在する帯形状である。このように、半導体チップ20に近い位置の高強度領域と半導体チップ20から遠い位置の高強度領域を分離して配置することにより、半導体チップ20の接合部にかかる応力をより緩和することができる。
【0026】
半導体装置1は、温度サイクルのある厳しい条件で使用される電力変換装置などに好適に使用される。例えば、自動車に搭載される車載電力変換装置では、半導体素子に流れる電流が大きく、半導体チップでの発熱が大きい。更に、車載電力変換装置は、温度サイクルの厳しい環境で使用される。しかし、半導体装置1を適用することにより、車載電力変換装置において、半導体チップの接合部にかかる応力を緩和し、且つ放熱経路の熱抵抗の増大を抑制することができる。
【0027】
<変形例>
図4に示す第1の実施形態の変形例に係る半導体装置1では、熱伝導基板40と第1の金属板10を接合する第1の基板接合材61に、低強度領域として空間が設けられている。つまり、熱伝導基板40と第1の金属板10との接合部に、高強度領域と低強度領域が混在している。一方、熱伝導基板40と第2の金属板30との接合部には、第2の基板接合材62が一様に配置されている。
【0028】
図4に示す半導体装置1では、熱伝導基板40と第1の金属板10の接合強度の高い領域が、半導体チップ20に近い位置と半導体チップ20から遠い位置に分散されている。このため、第1の金属板10に発生する反りの影響により半導体チップ20の接合部にかかる応力の力点の位置が、熱伝導基板40と第1の金属板10の接合強度が接合部で一様の場合に比べて、半導体チップ20から遠くなる。更に、低強度領域で第1の金属板10の曲げ剛性が弱いため、第1の金属板10が曲がる。このため、半導体装置1の反りの影響が、第1の金属板10が変形することにより吸収される。その結果、
図4に示した半導体装置1によれば、半導体チップ20の接合部にかかる応力を緩和することができる。
【0029】
図5に、
図4に示した半導体装置1の平面図を示す。
図5では、熱伝導基板40を透過して、第1の基板接合材61が表示されている。
図4は、
図5のIV-IV方向に沿った断面図である。
図5に示した半導体装置1では、第1の基板接合材61が環形状に形成されている。すなわち、第1の基板接合材61に周囲を囲まれた領域が低強度領域である。
【0030】
図6に、
図4に示した半導体装置1の他の例の平面図を示す。
図6に示した半導体装置1では、相互に離間して配置された2つの帯形状の第1の基板接合材61に挟まれた領域が低強度領域である。
【0031】
なお、熱伝導基板40と第1の金属板10との接合部および熱伝導基板40と第2の金属板30との接合部の両方に、高強度領域と低強度領域を混在させてもよい。即ち、
図7に示すように、熱伝導基板40と第2の金属板30との接合部に第2の基板接合材62に挟まれた空間を低強度領域として設け、且つ、熱伝導基板40と第1の金属板10との接合部に第1の基板接合材61に挟まれた空間を低強度領域として設ける。これにより、第1の金属板10と第2の金属板30の両方の曲げ剛性が弱くなる。このため、半導体チップ20の接合部にかかる応力を低減することができる。
【0032】
(第2の実施形態)
第2の実施形態に係る半導体装置1では、
図8に示すように、平面視で矩形状の第2の金属板30が、半導体チップ20から熱伝導基板40に向かう行方向Xの長さが、平面視で行方向Xに垂直な列方向Yの長さより長い形状である。他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0033】
図8に示す半導体装置1によれば、第2の金属板30を、行方向Xを長手方向とする細長い形状にすることにより、第2の金属板30の曲げ剛性が弱くなる。このため、第2の金属板30が曲がることにより、第1の金属板10の反りの影響が吸収される。その結果、半導体チップ20の接合部にかかる応力を低減することができる。
【0034】
図9に、熱伝導基板40と第2の金属板30との接合部に、第2の基板接合材62が配置されていない空間を低強度領域として設けた例を示した。なお、熱伝導基板40と第1の金属板10との接合部に第1の基板接合材61が配置されていない空間を低強度領域として設けてもよい。また、熱伝導基板40と第2の金属板30との接合部および熱伝導基板40と第1の金属板10との接合部の両方に、低強度領域を設けてもよい。
【0035】
(第3の実施形態)
第3の実施形態に係る半導体装置1は、
図10および
図11に示すように、半導体チップ20の第2主面に、第2のチップ接合材52によって第1部分電極板31および第2部分電極板32がそれぞれ接続された構成である。第1部分電極板31および第2部分電極板32には、熱伝導基板40に相当する第1熱伝導基板41と第2熱伝導基板42とが個別に接合されている。つまり、第2の金属板30が、第1部分電極板31および第2部分電極板32に分割されている点が、
図1の半導体装置1と異なる点である。他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0036】
第3の実施形態に係る半導体装置1は、半導体チップ20から第1の金属板10への直接の放熱経路、第1部分電極板31と第1熱伝導基板41を経由する放熱経路、および第2部分電極板32と第2熱伝導基板42を経由する放熱経路を有する。これら複数の放熱経路での熱移動により、半導体装置1の放熱経路の熱抵抗を下げることができる。また、第1部分電極板31と第2部分電極板32を細長い形状にすることにより、第1部分電極板31と第2部分電極板32の曲げ剛性を弱くしてもよい。これにより、半導体チップ20の接合部にかかる応力を低減することができる。
【0037】
なお、
図11では、第1熱伝導基板41と第1部分電極板31の接合部および第2熱伝導基板42と第2部分電極板32の接合部に、第2の基板接合材62が配置されていない空間を低強度領域として設けた例を示した。しかし、第1熱伝導基板41および第2熱伝導基板42と第1の金属板10とを接合する第1の基板接合材61に、低強度領域として空間が設けてもよい。或いは、これらの接合部のすべてに低強度領域を設けてもよい。
【0038】
(第4の実施形態)
第4の実施形態に係る半導体装置1は、
図12に示すように、第2の基板接合材62が配置された領域の残余の領域に、第2の基板接合材62よりもヤング率が低く、且つ熱伝導性を有する低弾性材70を配置した構成である。すなわち、
図12に示す半導体装置1では、第2の基板接合材62が配置された高強度領域に挟まれた低強度領域に、低弾性材70が配置されている。その他の構成については、
図1に示す第1の実施形態と同様である。
【0039】
低弾性材70に、少なくとも空気よりも熱伝導性が高い材料を使用する。これにより、第2の金属板30および熱伝導基板40を経由する放熱経路の熱抵抗が低減し、半導体チップ20から第1の金属板10までの熱の移動量が増大する。
【0040】
上記のように、
図12に示す半導体装置1によれば、熱伝導性を有する低弾性材70を第2の基板接合材62の配置されていない空間に埋め込むことにより、放熱経路の熱抵抗を更に下げることができる。そして、ヤング率が低い低弾性材70を用いることにより、低強度領域において第2の金属板30の曲げ剛性を弱くできる。このため、第2の基板接合材62に空間を設ける場合に対して、半導体チップ20の接合部にかかる応力を低減する効果の低下を抑制できる。他は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。
【0041】
図13に、
図12に示した半導体装置1の平面図を示す。
図13に示した半導体装置1では、第2の基板接合材62が環形状に形成されている。すなわち、第2の基板接合材62に周囲を囲まれて低弾性材70が配置された領域が低強度領域である。
【0042】
図14に、
図12に示した半導体装置1の他の例の平面図を示す。
図14に示した半導体装置1では、半導体チップ20に近い位置と遠い位置に離間して配置された2つの第2の基板接合材62に挟まれて低弾性材70が配置された領域が低強度領域である。
【0043】
なお、熱伝導基板40と第1の金属板10との接合部において、第1の基板接合材61が配置された領域の残余の領域に、第1の基板接合材61よりもヤング率が低く且つ熱伝導性を有する低弾性材を配置してもよい。或いは、熱伝導基板40と第1の金属板10との接合部および熱伝導基板40と第2の金属板30との接合部の両方において、接合材が配置された領域の残余の領域に低弾性材70を配置してもよい。
【0044】
(第5の実施形態)
第5の実施形態に係る半導体装置1は、
図15に示すように、半導体チップ20が配置された主面に対向する第1の金属板10の他の主面に、第1の金属板10よりも曲げ剛性の高い補強板80を接合した構成である。他の構成は、第1の実施形態と同様である。
【0045】
図15に示す半導体装置1によれば、補強板80を第1の金属板10に接合することにより、第1の金属板10の反りを抑制できる。例えば、半導体チップ20に接合する主面に対向する第1の金属板10の他の主面に冷却器や金属構成部品などの反りの影響を大きく受ける部品を配置した場合にも、補強板80によって半導体装置1全体の反りが抑制される。
【0046】
図15に示す半導体装置1においても、半導体チップ20の接合部に高強度領域と低強度領域を混在させることにより、半導体チップ20の接合部にかかる応力が緩和される。
図15に示すように熱伝導基板40と第2の金属板30との接合部に第2の基板接合材62が配置されていない空間を低強度領域として設けてもよいし、この空間を低弾性材70で埋め込んでもよい。或いは、熱伝導基板40と第1の金属板10との接合部に第1の基板接合材61が配置されていない空間を低強度領域として設けてもよいし、この空間を低弾性材70で埋め込んでもよい。また、熱伝導基板40と第2の金属板30との接合部および熱伝導基板40と第1の金属板10との接合部の両方に、低強度領域を設けてもよい。
【符号の説明】
【0047】
1…半導体装置
10…第1の金属板
20…半導体チップ
30…第2の金属板
40…熱伝導基板
51…第1のチップ接合材
52…第2のチップ接合材
61…第1の基板接合材
62…第2の基板接合材
70…低弾性材
80…補強板