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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】防水構造
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/00 20060101AFI20230810BHJP
   E04B 1/66 20060101ALI20230810BHJP
   E04B 1/94 20060101ALI20230810BHJP
   E04D 5/14 20060101ALN20230810BHJP
【FI】
E04D5/00 D
E04B1/66 A
E04B1/94 H
E04D5/14 F
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2019191577
(22)【出願日】2019-10-18
(65)【公開番号】P2021067039
(43)【公開日】2021-04-30
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000223403
【氏名又は名称】住ベシート防水株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091292
【弁理士】
【氏名又は名称】増田 達哉
(74)【代理人】
【識別番号】100091627
【弁理士】
【氏名又は名称】朝比 一夫
(72)【発明者】
【氏名】池田 浩和
【審査官】菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-185178(JP,A)
【文献】特開2000-038811(JP,A)
【文献】特開2002-266477(JP,A)
【文献】特開昭51-090796(JP,A)
【文献】特開昭52-103898(JP,A)
【文献】特開平08-302852(JP,A)
【文献】特開平11-222921(JP,A)
【文献】特開2019-132050(JP,A)
【文献】特開2019-007145(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 5/00
5/06
5/14
11/00
11/02
E04B 1/94
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱性を有し、平面視で長方形をなす平板状をなし、その厚さ方向に貫通する貫通孔を複数有する断熱パネルを複数枚備え、該複数枚の断熱パネルを、その長辺方向と短辺方向とにそれぞれ並べて敷設した断熱パネル敷設部と、
前記貫通孔に挿通され、前記断熱パネル敷設部を家屋に固定する固定ビスと、
耐火性を有し、前記断熱パネル敷設部のうち、前記短辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部を覆う第1耐火シートと、
耐火性を有し、前記断熱パネル敷設部のうち、前記長辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部を覆う第2耐火シートと、
耐火性を有し、前記断熱パネルの中央部に形成された前記貫通孔に挿通して固定されている前記固定ビスの頭部を覆う第3耐火シートと、
前記第1耐火シートを介して、前記短辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部と、前記第2耐火シートを介して、前記長辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部とを覆う防水シートと、を有することを特徴とする防水構造。
【請求項2】
前記第1耐火シートは、帯状をなし、前記短辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部を、前記長辺方向に沿って覆う請求項1に記載の防水構造。
【請求項3】
前記断熱パネルは、前記短辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部付近に形成された前記貫通孔を備え、
第1耐火シートは、前記短辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部と、前記短辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部付近に形成された前記貫通孔に挿通して固定された前記固定ビスの頭部とを一括して覆う請求項2に記載の防水構造。
【請求項4】
前記防水シートは、帯状をなす第1防水シートを有し、前記第1耐火シートを介して、前記短辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部を、前記長辺方向に沿って覆う請求項2または3に記載の防水構造。
【請求項5】
前記第2耐火シートは、帯状をなし、前記長辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部を、前記短辺方向に沿って覆う請求項1ないし4のいずれか1項に記載の防水構造。
【請求項6】
前記防水シートは、帯状をなす第2防水シートを有し、前記第2耐火シートを介して、前記長辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部を、前記短辺方向に沿って覆う請求項5に記載の防水構造。
【請求項7】
前記短辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士は、一方の前記断熱パネルの縁部に凹部が形成され、他方の前記断熱パネルの縁部に凸部が形成され、前記凹部と前記凸部とで係合しており、
前記長辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士は、双方の前記断熱パネルの縁部が平坦な平坦部となって互いに対向している請求項1ないし6のいずれか1項に記載の防水構造。
【請求項8】
前記第1耐火シートの幅と、前記第2耐火シートとの幅とは、同じである請求項1ないし7のいずれか1項に記載の防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、傾斜した屋根やベランダの床部として、多数枚の断熱パネルが敷設された断熱パネル敷設部が適用された家屋が知られている。この断熱パネル敷設部では、多数枚の断熱パネルが行列状に並べられ、隣り合う断熱パネル同士において、一方の断熱パネルは、突き合わされる端面において凹部を備え、他方の断熱パネルは、突き合わされる端面において凸部を備えており、一方の断熱パネルの凹部と、他方の断熱パネルの凸部とが係合することで、隣り合う断熱パネル同士が連結されている。
【0003】
そして、この断熱パネル敷設部は、家屋が備える棟木や、母屋および垂木等に、固定ビスを用いて固定されることで、屋根や床部を構成している。
【0004】
また、かかる構成をなす断熱パネル敷設部では、施工状態によっては、隣り合う断熱パネル同士の間に間隙が生じることがある。間隙があると、この間隙から雨水等が家屋の中に入り込み、雨漏りの原因となることがある。そこで、この間隙を覆うように帯状の防水シートを貼付して、雨水等の侵入を防止することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
以上のような断熱パネル敷設部では、上記の通り、優れた防水性を有することが求められるが、これと同様に、優れた耐火性を有することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2007-120248号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、優れた防水性とともに、優れた耐火性を備える防水構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的は、下記(1)~(8)に記載の本発明により達成される。
(1) 断熱性を有し、平面視で長方形をなす平板状をなし、その厚さ方向に貫通する貫通孔を複数有する断熱パネルを複数枚備え、該複数枚の断熱パネルを、その長辺方向と短辺方向とにそれぞれ並べて敷設した断熱パネル敷設部と、
前記貫通孔に挿通され、前記断熱パネル敷設部を家屋に固定する固定ビスと、
耐火性を有し、前記断熱パネル敷設部のうち、前記短辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部を覆う第1耐火シートと、
耐火性を有し、前記断熱パネル敷設部のうち、前記長辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部を覆う第2耐火シートと、
耐火性を有し、前記断熱パネルの中央部に形成された前記貫通孔に挿通して固定されている前記固定ビスの頭部を覆う第3耐火シートと、
前記第1耐火シートを介して、前記短辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部と、前記第2耐火シートを介して、前記長辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部とを覆う防水シートと、を有することを特徴とする防水構造。
【0009】
(2) 前記第1耐火シートは、帯状をなし、前記短辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部を、前記長辺方向に沿って覆う上記(1)に記載の防水構造。
【0010】
(3) 前記断熱パネルは、前記短辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部付近に形成された前記貫通孔を備え、
第1耐火シートは、前記短辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部と、前記短辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部付近に形成された前記貫通孔に挿通して固定された前記固定ビスの頭部とを一括して覆う上記(2)に記載の防水構造。
【0011】
(4) 前記防水シートは、帯状をなす第1防水シートを有し、前記第1耐火シートを介して、前記短辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部を、前記長辺方向に沿って覆う上記(2)または(3)に記載の防水構造。
【0012】
(5) 前記第2耐火シートは、帯状をなし、前記長辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部を、前記短辺方向に沿って覆う上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の防水構造。
【0013】
(6) 前記防水シートは、帯状をなす第2防水シートを有し、前記第2耐火シートを介して、前記長辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士の境界部を、前記短辺方向に沿って覆う上記(5)に記載の防水構造。
【0014】
(7) 前記短辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士は、一方の前記断熱パネルの縁部に凹部が形成され、他方の前記断熱パネルの縁部に凸部が形成され、前記凹部と前記凸部とで係合しており、
前記長辺方向に隣り合う前記断熱パネル同士は、双方の前記断熱パネルの縁部が平坦な平坦部となって互いに対向している上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の防水構造。
【0015】
(8) 前記第1耐火シートの幅と、前記第2耐火シートとの幅とは、同じである上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の防水構造。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、防水構造を、優れた防水性とともに、優れた耐火性を備えるものとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の防水構造の第1実施形態を示す平面図である。
図2図1中のA-A線断面図である。
図3図1中のB-B線断面図である。
図4図1中のC-C線断面図である。
図5図1中のD部における部分平面図である。
図6】本発明の防水構造の第2実施形態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の防水構造を添付図面に示す好適な実施形態に基づいて詳細に説明する。
本発明の防水構造10は、断熱性を有し、平面視で長方形をなす平板状をなし、その厚さ方向に貫通する貫通孔15を複数有する断熱パネル1を複数枚備え、これら複数枚の断熱パネル1を、その長辺方向と短辺方向とにそれぞれ並べて敷設した断熱パネル敷設部30と、貫通孔15に挿通され、断熱パネル敷設部30を家屋に固定する固定ビス9と、耐火性を有し、断熱パネル敷設部30のうち、前記短辺方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部を覆う第1耐火シート2Aと、耐火性を有し、断熱パネル敷設部30のうち、前記長辺方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部を覆う第2耐火シート2Bと、耐火性を有し、断熱パネル1の中央部に形成された貫通孔15に挿通して固定されている固定ビス9の頭部を覆う第3耐火シート2Cと、第1耐火シート2Aを介して、短辺方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部と、第2耐火シート2Bを介して、長辺方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部とを覆う防水シート8A、8Bと、を有する。
【0019】
防水構造10を、かかる構成をなすものとすることで、防水構造10は、優れた防水性とともに、優れた耐火性を発揮する。
【0020】
以下、本発明の防水構造を、家屋が備える傾斜した屋根に適用した場合を一例に説明する。
【0021】
<防水構造>
<第1実施形態>
図1は、本発明の防水構造の第1実施形態を示す平面図、図2は、図1中のA-A線断面図、図3は、図1中のB-B線断面図、図4は、図1中のC-C線断面図、図5は、図1中のD部における部分平面図である。なお、以下では、説明の便宜上、図1に示すように、図中の左右方向をx軸方向、上下方向をy軸方向とする。また、図2図4中の上側を「上」または「上方」、下側を「下」または「下方」、図5中の紙面手前側を「上」または「上方」、紙面奥側を「下」または「下方」と言うことがある。また、図3中の左側を「下流側」、右側を「上流側」と言うことがある。
【0022】
図1に示すように、防水構造10は、家屋が備える屋根100に適用して、施工されたものであり、本実施形態では、複数枚の断熱パネル1と、複数枚の第1耐火シート2Aと、複数枚の第2耐火シート2Bと、複数枚の第3耐火シート2Cと、複数枚の第1防水シート8Aと、複数枚の第2防水シート8Bと、複数個の固定ビス9とを備えている。
【0023】
この屋根100は、水はけがよいものとすることを目的に、水平方向に対して傾斜して、設けられている。この傾斜方向αは、図1中では、y軸方向と同方向となっている。そして、この屋根100において、防水構造10は、家屋が備える母屋91や、棟木および垂木(図示せず)等に固定されること、すなわち、母屋91や、棟木および垂木等を介して家屋に固定されることで、屋根としての機能を発揮する。
【0024】
以下、防水構造10の各部の構成について説明する。
断熱パネル1は、図1に示すように、平面視で長方形をなす平板状をなすものである。この断熱パネル1は、短辺方向と長辺方向とにそれぞれ同一方向として複数枚並べて敷設されて、断熱パネル敷設部30を構成し、これにより、屋根100を形成している。
【0025】
本実施形態では、長辺方向がx軸方向と平行となっており、短辺方向がy軸方向と平行となっている。なお、屋根100の広さや形状にもよるが、x軸方向に敷設される断熱パネル1の枚数と、y軸方向に敷設される断熱パネル1の枚数とは、同じとなる場合もあるし、異なる場合もある。
【0026】
各断熱パネル1は、配置箇所が異なること以外は、同じ積層構造を有するものである(図2図3参照)。以下、代表的に1枚の断熱パネル1の積層構造について説明する。
【0027】
断熱パネル1は、図2図4に示すように、樹脂層3と、金属層4aと、金属層4bと、樹脂層5aと、樹脂層5bとを有する積層板である。
【0028】
樹脂層3は、例えば、ポリウレタンフォームで構成され、断熱パネル1で断熱性を発揮する部分である。
【0029】
樹脂層3の下面側には、金属層4aが積層され、樹脂層3の上面側には、金属層4bが積層されている。金属層4aおよび金属層4bは、例えば、ガルバリウム鋼板(登録商標)やステンレス鋼板等の各種鋼板で構成され、断熱パネル1で耐環境性(防腐性)を発揮する部分である。
【0030】
なお、樹脂層3は、金属層4aおよび金属層4bよりも厚く、例えば、金属層4a(金属層4b)の厚さの2倍以上100倍以下であるのが好ましく、50倍以上80倍以下であるのがより好ましい。この場合、例えば、樹脂層3の厚さを35mm程度、金属層4aおよび金属層4bの厚さをそれぞれ0.5mm程度とすることができる。
【0031】
樹脂層5aおよび樹脂層5bは、例えば、ポリ塩化ビニルで構成された膜である。樹脂層5aは、金属層4aを被覆しており、金属層4aへの防錆性および防水性を発揮する。樹脂層5bは、金属層4bを被覆しており、金属層4bへの防錆性および防水性を発揮する。
【0032】
前述したように、屋根100は、水平方向に対して傾斜している。従って、屋根100を構成する断熱パネル1も、水平方向に対して傾斜した姿勢で、家屋において敷設される。これにより、例えば、雨水等が上流側(傾斜方向αの上側)から下流側(傾斜方向αの下側)に向かって流下することから、断熱パネル敷設部30すなわち屋根100での排水性が向上する。なお、断熱パネル1の傾斜角度θ図2参照)としては、特に限定されない。
【0033】
また、断熱パネル1は、前述したように平面視で長方形をなすものであり、その縁部(外縁部)を、長辺方向(x軸方向)に沿った縁部(第1縁部)11および縁部(第2縁部)12と、短辺方向(y軸方向)に沿った縁部(第3縁部)13および縁部(第4縁部)14とに分けることができる(図1参照)。
【0034】
図2に示すように、縁部12には、この縁部12を構成する端面から、凸部6が図中の右側に向かって突出して形成されている。この凸部6は、前記長辺方向に沿って、すなわち、図2中の紙面手前側から奥側に向かって形成された凸条となっている。
【0035】
また、縁部11には、この縁部11を構成する端面から、凹部7が図2中の右側に向かって凹没して形成されている。この凹部7は、前記長辺方向に沿って、すなわち、図2中の紙面手前側から奥側に向かって形成された溝となっている。なお、凹部7の深さは、凸部6の突出量よりも大きいのが好ましい。
【0036】
そして、断熱パネル敷設部30のうち、y軸方向(短辺方向)に隣り合う断熱パネル1同士は、一方の断熱パネル1の凹部7と、他方の断熱パネル1の凸部6とが係合することができる。これにより、双方の断熱パネル1同士が連結され(接合され)、よって、y軸方向の互いの位置関係が規制される。
【0037】
また、これら双方の断熱パネル1は、傾斜している。そのため、傾斜方向αの上側に位置する断熱パネル1が、重力によって、その下側に位置する断熱パネル1を押圧する。これにより、凸部6が凹部7にできる限り深く挿入されることとなり、よって、凸部6と凹部7との係合状態がより強固となる。
【0038】
また、凸部6が凸条で構成され、凹部7が溝で構成されていることにより、凸部6と凹部7との係合状態がさらに強固となる。これにより、例えば、断熱パネル1が強風等で不本意に取り外されてしまうのを確実に防止することができ、よって、屋根100を安全かつ快適に使用することができる。
【0039】
図3に示すように、縁部13、すなわち縁部13を構成する端面は、前記短辺方向に沿って、換言すれば、図3中の紙面手前側から奥側に向かって平坦な平坦部となっている。
【0040】
さらに、縁部13と同様に、縁部14、すなわち縁部14を構成する端面も、前記短辺方向に沿って、換言すれば、図3中の紙面手前側から奥側に向かって平坦な平坦部となっている。また、このような平坦な形状をなす縁部13および縁部14は、それぞれ、断熱パネル1の平面視での面方向に対して垂直に形成されている。
【0041】
そして、断熱パネル敷設部30のうち、y軸方向(長辺方向)に隣り合う断熱パネル1同士は、一方の断熱パネル1の縁部13と、他方の断熱パネル1の縁部14とが互いに対向している。
【0042】
また、各断熱パネル1は、ほぼ等間隔を空けて形成された複数の貫通孔15を備えている。そして、各貫通孔15にそれぞれ固定ビス9が挿通され、さらに、この固定ビス9は、家屋が有する母屋91が備える、内ネジを有する貫通孔に螺合されている。これにより、各断熱パネル1すなわち断熱パネル敷設部30は、固定ビス9により、母屋91すなわち家屋に対して固定される。
【0043】
第1耐火シート2Aは、y軸方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部、すなわち、縁部11と縁部12との間を覆うとともに、本実施形態では、断熱パネル1の縁部11、12付近において形成された貫通孔15に挿通された固定ビス9の頭部を覆う部材である(図2参照)。換言すれば、第1耐火シート2Aは、縁部11と縁部12との間を覆う耐火シートと、固定ビス9を覆う耐火シートとが一体的に形成されたものであると言うことができる。したがって、それぞれを覆う耐火シートを別体として形成する必要がなくなるため、耐火シートを貼付する際の時間と手間の簡略化を図ることができる。
【0044】
また、第2耐火シート2Bは、x軸方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部、すなわち、縁部13と縁部14との間を覆う部材である(図3参照)。
【0045】
さらに、第3耐火シート2Cは、断熱パネル1の中央部付近において形成された貫通孔15に挿通された固定ビス9の頭部を覆う部材である(図3参照)。
【0046】
第1耐火シート2A、第2耐火シート2Bおよび第3耐火シート2Cは、それぞれ、金属材料を主材料として含有する金属シートで構成されている。これにより、第1耐火シート2A、第2耐火シート2Bおよび第3耐火シート2Cには、それぞれ、耐火性が付与される。このような第1耐火シート2A、第2耐火シート2Bならびに第3耐火シート2Cを用いて、それぞれ、縁部11と縁部12との間および固定ビス9、縁部13と縁部14との間、ならびに、固定ビス9を覆うことにより、断熱パネル敷設部30、ひいては、この断熱パネル敷設部30を備える家屋に優れた耐火性を付与することができる。
【0047】
なお、金属材料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、ニッケル、ステンレス、銅、チタンおよびタングステン等が挙げられ、これらの金属を単独または合金として用いることができる。これらの中でも、アルミニウムであることが好ましい。これにより、第1耐火シート2A、第2耐火シート2Bおよび第3耐火シート2Cに、優れた耐火性を付与することができる。
【0048】
また、第1耐火シート2A、第2耐火シート2Bおよび第3耐火シート2Cは、それぞれ、前記金属シートの単層で構成されるものの他、例えば、その厚さ方向の途中に繊維層が介挿されたもの、すなわち、厚さ方向に積層された第1金属層と第2金属層との間に繊維層(繊維シート)が挾持された構成のものであってもよい。この繊維層は、繊維の集合体で構成されたものであり、例えば、織布や不織布等のクロス、縦糸と横糸とで複数の格子を形成したネット等の繊維シートが挙げられる。このような繊維層を備えるものとすることで、強度(引き裂き強度や引張り強度等)および耐久性(耐繰り返し疲労特性)等を向上させることができる。
【0049】
図1図3に示すように、第1耐火シート2Aは、帯状をなす。これにより、y軸方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部をx軸方向に沿って一括して、すなわち、連続的に覆うことができる。したがって、当該境界部を介して煙や火等が排出されるのを確実に防止することができる。また、第1耐火シート2Aは、その幅が、断熱パネル1の縁部11、12付近において形成された貫通孔15をも包含し得る大きさに設定されている。したがって、y軸方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部を、第1耐火シート2Aで覆う際に、貫通孔15に挿通して固定された固定ビス9の頭部をも一括して覆うことができる。したがって、当該境界部および貫通孔15を介して煙や火等が排出されるのを確実に防止することができる。
【0050】
第1耐火シート2Aと同様に、第2耐火シート2Bも、帯状をなす。これにより、x軸方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部をy軸方向に沿って一括して、すなわち、連続的に覆うことができる。したがって、当該境界部を介して煙や火等が排出されるのを確実に防止することができる。
【0051】
また、図3に示すように、x軸方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部には、突き合わされる縁部13と縁部14とがともに平坦面で構成される。そのため、施工状態によっては、大なり小なり、隙間20が形成されることがある。隙間20があると、この隙間20から、煙や火等が排出され易くなるため、断熱パネル敷設部30における耐火性が低下するおそれがある。そこで、この隙間20を覆うように帯状の第2耐火シート2Bを貼付することで、この隙間20からの煙や火等の排出を的確に抑制または防止することができるため、断熱パネル敷設部30を優れた耐火性を発揮するものとし得る。
【0052】
第3耐火シート2Cは、耐火シート2A、2Bとは異なり、円盤状をなす。これにより、断熱パネル1の中央部に位置する貫通孔15に挿通して固定された固定ビス9に対して、個別に覆うことができる。したがって、貫通孔15を介して煙や火等が排出されるのを確実に防止することができる。
【0053】
第1耐火シート2Aの幅W2Aと、第2耐火シート2Bの幅W2Bとは、本実施形態では、同じである(図1参照)。また、第1耐火シート2Aの厚さt2Aと、第2耐火シート2Bの厚さt2Bとは、同じである(図2参照)。このように双方の防水シートが幅も厚さも同じであることにより、共通の耐火シートを用いることができる。これにより、例えば各防水シートに幅や厚さが異なる防水シートを用いる場合に比べて、防水構造10を施工する際に、コストダウンを図ることができる。また、第1耐火シート2Aとして用いるか、または、第2耐火シート2Bとして用いるかを問わずに、前記共通の防水シートを用いることができる。これにより、防水構造10を施工するときの作業性が向上する。
【0054】
また、第1耐火シート2Aの幅W2Aは、具体的には、50mm以上175mm以下程度であることが好ましく、75mm超100mm以下程度あることがより好ましい。ここで、縁部11、12付近に形成される貫通孔15は、通常、各縁部11、12に形成されたもの同士の離間距離が、50mm程度の大きさとなる位置に配置され、また、固定ビス9としては、その頭部の直径がφ15mm程度の大きさのものが選択される。したがって、第1耐火シート2Aの幅W2Aを前記のような大きさに設定することとで、y軸方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部を、第1耐火シート2Aで覆う際に、貫通孔15に挿通して固定された固定ビス9の頭部をも確実に包含して覆うことができる。
【0055】
さらに、第3耐火シート2Cの直径W2Cは、φ20mm以上125mm以下程度であることが好ましく、φ25mm超60mm以下程度あることがより好ましい。ここで、前述の通り、また、固定ビス9としては、その頭部の直径φが15mm程度の大きさのものが選択される。したがって、第3耐火シート2Cの直径W2Cを前記のような大きさに設定することとで、貫通孔15に挿通して固定された固定ビス9の頭部を確実に覆うことができる。
【0056】
なお、本実施形態では、帯状をなす第1耐火シート2Aが、縁部11と縁部12との間を被覆し、さらに、帯状をなす第2耐火シート2Bが、縁部13と縁部14との間を被覆する場合について説明したが、かかる場合に限定されず、第1耐火シート2Aおよび第2耐火シート2Bは、それぞれ、縁部11と縁部12との間および縁部13と縁部14との間を被覆し得るものであれば、それらの形状として、任意の形状を有するものであってもよい。
【0057】
第1防水シート8Aは、y軸方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部、すなわち、縁部11と縁部12との間を、第1耐火シート2Aを介して覆う部材である(図2参照)。かかる構成をなす第1防水シート8Aを設けることで、当該境界部を介して家屋の内部に雨水のような水が浸入するのを確実に防止することができる。
【0058】
また、第2防水シート8Bは、x軸方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部、すなわち、縁部13と縁部14との間を、第2耐火シート2Bを介して覆う部材である(図3参照)。かかる構成をなす第2防水シート8Bを設けることで、当該境界部を介して家屋の内部に雨水のような水が浸入するのを確実に防止することができる。
【0059】
第1防水シート8Aおよび第2防水シート8Bは、それぞれ、樹脂材料を主材料として含有する樹脂シートで構成されている。これにより、第1防水シート8Aおよび第2防水シート8Bは、それぞれ、防水性を有するものとなる。
【0060】
なお、樹脂材料としては、特に限定されないが、例えば、ポリ塩化ビニルのような塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体等が挙げられ、これらのうちの1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、塩化ビニル系樹脂であることが好ましい。これにより、第1防水シート8Aおよび第2防水シート8Bは、熱融着性や溶剤溶着性に優れたものとなる。第1防水シート8Aおよび第2防水シート8Bは、断熱パネル1に貼付されるものであり、その貼付方法として、例えば、熱融着による方法や、溶剤による溶着による方法が用いられる。従って、第1防水シート8Aが熱融着性や溶剤溶着性に優れることは、第1防水シート8Aおよび第2防水シート8Bを断熱パネル1に貼付する上で好ましい。
【0061】
また、塩化ビニル系樹脂としては、塩化ビニルを含む重合体、すなわちオリゴマー、プレポリマーおよびポリマーであれば特に限定されないが、例えば、塩化ビニルの単量重合体、または塩化ビニルと、酢酸ビニル、エチレン、もしくはプロピレン等との共重合体、およびこれらの2種以上の重合体の混合物等が挙げられる。
【0062】
また、樹脂材料には、さらに、各種可塑剤、各種安定化剤、各種酸化防止剤、各種紫外線吸収剤、加工助剤、滑剤、充填材、難燃剤および色材等を含んでいてもよく、特に、可塑剤が含まれることが好ましい。これにより、第1防水シート8Aおよび第2防水シート8Bを、より優れた柔軟性を有するものとし得る。
【0063】
また、第1防水シート8Aおよび第2防水シート8Bは、それぞれ、前記樹脂シートの単層で構成されるものの他、例えば、その厚さ方向の途中に繊維層が介挿されたもの、すなわち、厚さ方向に積層された第1樹脂層と第2樹脂層との間に繊維層(繊維シート)が挾持された構成のものであってもよい。この繊維層は、繊維の集合体で構成されたものであり、例えば、織布や不織布等のクロス、縦糸と横糸とで複数の格子を形成したネット等の繊維シートが挙げられる。このような繊維層を備えるものとすることで、強度(引き裂き強度や引張り強度等)および耐久性(耐繰り返し疲労特性)等を向上させることができる。
【0064】
図3に示すように、第1防水シート8Aは、帯状をなす。これにより、y軸方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部をx軸方向に沿って一括して、すなわち、連続的に覆うことができる。したがって、当該境界部から雨水等が侵入するのを確実に防止することができる。
【0065】
第1防水シート8Aと同様に、第2防水シート8Bも、帯状をなす。これにより、x軸方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部をy軸方向に沿って一括して、すなわち、連続的に覆うことができる。したがって、当該境界部から雨水等が侵入するのを確実に防止することができる。
【0066】
また、図3に示すように、施工状態によっては、x軸方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部には、突き合わされる縁部13と縁部14とがともに平坦面で構成されるため、大なり小なり、隙間20が形成されることがある。隙間20があると、この隙間20から雨水等が家屋の中に入り込み、雨漏りの原因となるおそれがある。そこで、この隙間20を覆うように帯状の第2防水シート8Bを貼付することで、隙間20からの雨水等の侵入を防止することができる。
【0067】
ここで、図3に示すように、第2防水シート8Bは、傾斜方向αに沿って延在しており、第1防水シート8Aと交差している。そして、この交差部81では、第2防水シート8Bが、第1防水シート8Aの上に重なって貼付されており、その重なり分だけ、第2防水シート8Bが盛り上がった状態(図3参照)となる。
【0068】
この状態であるときに、仮に、第2防水シート8Bが傾斜方向αに沿って延在してはいるものの、交差部81での第1防水シート8Aと第2防水シート8Bとの上下関係が逆転している、すなわち、第1防水シート8Aが第2防水シート8Bの上に重なっている場合について考えてみる。この場合、交差部81では、上流側からの雨水等の水の流れが第1防水シート8Aで遮られてしまい、水はけ(排水性)が悪くなる。その結果、そこに水が溜まってしまう。水溜まりは、例えば、カビ発生の原因となったり、水溜りを踏んだ場合に水が飛散して周辺を濡らしてしまう原因となったりする。
【0069】
そこで、防水構造10では、前記のように、第2防水シート8Bは、傾斜方向αに沿って延在しており、第1防水シート8Aとの交差部81では、第1防水シート8Aの上に重なっている。これにより、上流側からの雨水等は、交差部81(第1防水シート8A)で遮られるのが防止され、よって、下流側に向かって円滑に流下することができる。このように防水構造10は、水はけに優れたものとなっており、防水機能が継続的に十分に発揮される。
【0070】
さらに、前述したように、x軸方向に隣り合う断熱パネル1同士の境界部には、隙間20が形成されることがある。この隙間20は、防水構造10の使用環境の温度変化により大きさ(図3中の左右方向の幅)が変化する場合がある。この場合、第2防水シート8Bは、隙間20の大きさの変化に追従して多少なりとも変形する(図3中の左右方向に伸長)が、その影響が交差部81で第2防水シート8Bに及ぶのをできる限り防止することができる。これにより、第2防水シート8Bの長手方向に沿って間欠的に多数(複数)存在する交差部81での第2防水シート8Bの剥がれを防止することができる。その結果、第2防水シート8Bが貼付された状態が維持され、よって、防水機能の経時的な低下を抑制することができる。このように、第1防水シート8Aは、隙間20の大きさが変化した際、その変化による第2防水シート8Bの交差部81での変形を抑止する機能を有するものとなっている。
【0071】
<第2実施形態>
次に、本発明の防水構造の第2実施形態について説明する。
図6は、本発明の防水構造の第2実施形態を示す平面図である。
【0072】
以下、この図を参照して本発明の防水構造の第2実施形態について説明するが、前述した実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項はその説明を省略する。
【0073】
図6に示す防水構造10は、断熱パネル1の構成、および、この断熱パネル1を被覆する防水シートの構成が異なる以外は、図1図5に示す防水構造10と同様である。
【0074】
すなわち、第2実施形態の防水構造10では、断熱パネル1における樹脂層5aおよび樹脂層5bの形成が省略されている(図示せず)。そして、図6に示すように、耐火シート2A、2Bを介して、断熱パネル1を被覆する第3防水シート8Cは、平板状をなし、断熱パネル1すなわち断熱パネル敷設部30のほぼ全面を、1つのシートで一括して被覆している。かかる構成の防水構造10では、第3防水シート8Cは、前記第1実施形態で説明した、樹脂層5aとしての機能をも併せ持つ。すなわち、金属層4aへの防錆性および防水性を発揮する防水層としての機能をも発揮する。
【0075】
このような第2実施形態の防水構造10によっても、前記第1実施形態と同様の効果が得られる。
【0076】
以上、本発明の防水構造を図示の実施形態について説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、防水構造を構成する各部は、同様の機能を発揮し得る任意の構成のものと置換することができる。また、任意の構成物が付加されていてもよい。
【0077】
また、防水構造の施工場所としては、前記各実施形態では、家屋が備える屋根であったが、これに限定されず、家屋が備える屋上やベランダの床等であってもよい。
【符号の説明】
【0078】
10 防水構造
1 断熱パネル
11 縁部(第1縁部)
12 縁部(第2縁部)
13 縁部(第3縁部)
14 縁部(第4縁部)
2A 第1耐火シート
2B 第2耐火シート
2C 第2耐火シート
3 樹脂層
4a 金属層
4b 金属層
5a 樹脂層
5b 樹脂層
6 凸部
7 凹部
8A 第1防水シート
8B 第2防水シート
8C 第3防水シート
81 交差部
9 固定ビス
91 母屋
15 貫通孔
20 間隙
30 断熱パネル敷設部
100 屋根
2A、t2B 厚さ
2A、W2B
2C 直径
α 傾斜方向
θ 傾斜角度
図1
図2
図3
図4
図5
図6