(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】合成樹脂キャップ
(51)【国際特許分類】
B65D 51/24 20060101AFI20230810BHJP
B65D 41/04 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
B65D51/24
B65D41/04 300
(21)【出願番号】P 2019193555
(22)【出願日】2019-10-24
【審査請求日】2022-09-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000228442
【氏名又は名称】日本クロージャー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻口 洋一
(72)【発明者】
【氏名】杉山 祐香
【審査官】矢澤 周一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-206730(JP,A)
【文献】特開2015-168434(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0263854(US,A1)
【文献】独国特許出願公開第19852527(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 51/24
B65D 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器口部と螺合する内蓋と、
前記内蓋の外面を覆って当該内蓋を篏合可能な外蓋と、
前記内蓋と前記外蓋との間に設けられて、前記容器口部に対する前記内蓋の開栓及び閉栓を行う開閉栓機構と、
前記内蓋と前記外蓋との間に形成される収容空間に配置されて、前記内蓋の前記容器口部に対する閉栓が完了した後で報知を行う電子部品と、を含み、
前記外蓋と前記内蓋の一方には、前記電子部品の押圧面を押圧可能な押圧部が設けられ、
閉栓開始から閉栓完了までの前記外蓋の軸方向における移動距離は、前記閉栓開始の時点における前記電子部品の押圧面から前記押圧部までの距離よりも短い、ことを特徴とする合成樹脂キャップ。
【請求項2】
前記電子部品は、前記内蓋の頂壁における外面に設置されるとともに、
前記押圧部は、前記外蓋の天面壁における内面に設置される、請求項1に記載の合成樹脂キャップ。
【請求項3】
前記電子部品は、前記押圧部によって前記押圧面が押圧されたとき、発音、発光および外部の電子機器に対する電波送信の少なくとも1つを用いて前記報知を行う、請求項1又は2に記載の合成樹脂キャップ。
【請求項4】
前記内蓋は、
頂壁と、前記頂壁から垂下する第1スカート壁と、を含んで構成され、
前記第1スカート壁の内面に設けられて前記容器口部の第2螺子と螺合する第1螺子を備え、
前記頂壁の内面には前記容器口部をシールするシール部を有し、
前記外蓋は、
前記内蓋を外面から覆うように対向する天面壁と、前記天面壁から垂下する第2スカート壁と、を含んで構成され、
前記第2スカート壁の内面には前記内蓋に対して相対的に回動可能な係合部を有する、
請求項1~3のいずれか一項に記載の合成樹脂キャップ。
【請求項5】
前記閉栓開始における前記外蓋の位置は、前記容器口部の第2螺子と前記内蓋の第1螺子とが接触して螺合が開始されるときの状態で規定され、
前記閉栓完了における前記外蓋の位置は、前記容器口部の第2螺子に前記内蓋の第1螺子が締め込まれることで、前記第1螺子と前記第2螺子との螺合が完了するとともに前記内蓋のシール部と前記容器口部との密閉が完了したときの状態で規定される、
請求項1~4のいずれか一項に記載の合成樹脂キャップ。
【請求項6】
前記開閉栓機構は、
前記内蓋の頂壁を基端として立設すると共に、閉栓方向の下流側における前記内蓋からの高さが前記基端より高くなるよう周方向に向けて先端が延びる複数の可撓性の弾性片と、
前記弾性片の先端と接触可能な前記外蓋の天面壁における内面と、
前記弾性片を前記天面壁の内面に押し付ける押付手段と、
を含んで構成される、請求項1~5のいずれか一項に記載の合成樹脂キャップ。
【請求項7】
前記押付手段は、前記外蓋の第2スカート壁と前記内蓋の第1スカート壁との間に設けられて、シール完了前は前記内蓋と前記外蓋とを一体的に回動させつつ、シール完了後は前記外蓋のみ閉栓方向に回動させるカム機構である、請求項6に記載の合成樹脂キャップ。
【請求項8】
前記カム機構は、
前記外蓋の第2スカート壁の内面と前記内蓋の第1スカート壁の外面の一方に形成された柱状突起と、
前記外蓋の第2スカート壁の内面と前記内蓋の第1スカート壁の外面の他方において周方向に延在して形成されて、前記柱状突起の移動を規制する誘導溝と、
を含んで構成される、請求項7に記載の合成樹脂キャップ。
【請求項9】
前記誘導溝は、
前記外蓋に前記内蓋を嵌合する際に前記柱状突起が下方へ誘導される縦溝部と、
前記縦溝部と連続して形成されて、前記柱状突起をさらに下方へ移動させて前記内蓋によるシールを完了させるための第1誘導溝部と、
前記第1誘導溝部と連続して形成されて、前記押圧部によって前記電子部品の押圧面を押圧させるための第2誘導溝部と、
前記第2誘導溝部と連続して形成されて、前記押圧部を前記電子部品の押圧面から上方へ離間させるための第3誘導溝部と、
前記第3誘導溝部と連続して形成されて、前記内蓋に対して相対的に前記外蓋を回転させるための第4誘導溝部と、
を含んで構成される、請求項8に記載の合成樹脂キャップ。
【請求項10】
前記柱状突起が前記第1誘導溝部を移動中に前記閉栓が完了し、
前記閉栓が完了した後で前記柱状突起が前記第2誘導溝部に誘導されることで前記押圧部によって前記電子部品の押圧面が押圧される、請求項9に記載の合成樹脂キャップ。
【請求項11】
前記外蓋の天面壁における内面には、前記内蓋の頂壁へ向けて立設する開栓用リブが設けられ、
前記外蓋を開栓方向へ回したとき前記弾性片の先端が前記開栓用リブと係合することで、前記外蓋とともに前記内蓋が一体的に回動して開栓される、請求項6~10のいずれか一項に記載の合成樹脂キャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内蓋が外蓋に嵌め込まれて使用されるキャップに関するものであり、より詳細にはリシールにおける適正な密封(閉栓)が完了した後でこの閉栓を報知可能な構造を備えた合成樹脂キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば飲料水あるいは薬剤や薬液などの内容物を充填する容器が広く用いられている。かような容器の注出口となる容器口部には開閉栓が可能なキャップが装着され、未使用時には外気を遮断して内容物が保存・密封される。
【0003】
このキャップの一形態として、ラチェット機構を利用して一定の締付トルクを実現することが可能なネジ式キャップが提案されている。このようなネジ式キャップは、典型的には相対的に回転可能に組み合わされる内蓋と外蓋を有する二重構造となっている。
【0004】
例えば特許文献1では、キャップ本体に外蓋を冠着した二重構造のキャップにおいて、キャップ本体にはラチェット爪が周方向に間隔をおいて複数個設けられるとともに、外蓋の内面には上記ラチェット爪と対応したラチェット片が設けられる構造が開示されている。
【0005】
当該構造を開示する特許文献1によれば、キャップをリシールする際には必要以上のトルクが加わった時に該ラチェット爪と該ラチェット片とが空転して該キャップ本体の回転が阻止される点が言及されている。
【0006】
一方でキャップをリシールする際に一定の締め付けトルクを実現する構造として、例えば特許文献2に開示された二重構造のキャップも知られている。この特許文献2によれば、リシールする際に外キャップが空転して外キャップの突部が内キャップの爪部を乗り越え、その後にこの爪部が弾性復帰することでクリック音が発音されることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特許第4500557号
【文献】特開2011-1080号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したとおり容器を封止可能なキャップは、その優れた利便性から様々な内容物に対して適用が可能であるが、この汎用性の高さ故に種々の内容物に対応可能な適正な密封性も要求される。
この点、特許文献1や特許文献2に示されるキャップを用いれば、たしかに一定の締め付けトルクを確保できる点では有用である。
【0009】
しかしながら、そもそも従来においてリシール(閉栓)時における密封完了を示す明確な指標は存在せず、使用者個人の主観に委ねられているか、上記特許文献1や特許文献2のとおり空転するタイミングで締め付けトルクの上限が単純に規定されるものであった。
【0010】
このため例えば前者の場合には、体格や年齢の違いなどに起因して使用者によっては締め付けが不十分のまま閉栓が完了されてしまうことも想定され、このような場合には容器内の内容物が漏れ出す懸念があることは否めない。
【0011】
一方で後者の場合には上記クリック音などによって閉栓完了が報知されることにもなるが、必ずしも閉栓が完了した後で報知されるものではなく、上記した各特許文献では締め付けトルクと報知音との関係に深い考察が施されることはなかった。
また、例えば薬剤など内容物の種類によっては、リシールした際に単に閉栓完了を示すだけでなくこの事実を他の場所へ送信することもニーズとして起こり得る。
【0012】
このように上記特許文献を含む従来技術では未だに改善の余地はあり、したがって本発明が有する目的の一例としては、使用者個人の主観に頼らず、閉栓が確実に完了した後で初めて閉栓完了を示す報知を行うことが可能な構造のキャップを提供することが挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、本発明の一形態における合成樹脂キャップは、(1)容器口部と螺合する内蓋と、前記内蓋の外面を覆って当該内蓋を篏合可能な外蓋と、前記内蓋と前記外蓋との間に設けられて、前記容器口部に対する前記内蓋の開栓及び閉栓を行う開閉栓機構と、前記内蓋と前記外蓋との間に形成される収容空間に配置されて、前記内蓋の前記容器口部に対する閉栓が完了した後で報知を行う電子部品と、を含み、前記外蓋と前記内蓋の一方には、前記電子部品の押圧面を押圧可能な押圧部が設けられ、閉栓開始から閉栓完了までの前記外蓋の軸方向における移動距離は、前記閉栓開始の時点における前記電子部品の押圧面から前記押圧部までの距離よりも短い、ことを特徴とする。
【0014】
なお上記した(1)に記載の合成樹脂キャップにおいては、(2)前記電子部品は、前記内蓋の頂壁における外面に設置されるとともに、前記押圧部は、前記外蓋の天面壁における内面に設置されることが好ましい。
【0015】
また上記した(1)又は(2)に記載の合成樹脂キャップにおいては、(3)前記電子部品は、前記押圧部によって前記押圧面が押圧されたとき、発音、発光および外部の電子機器に対する電波送信の少なくとも1つを用いて前記報知を行うことが好ましい。
【0016】
さらに上記した(1)~(3)のいずれかに記載の合成樹脂キャップにおいては、(4)前記内蓋は、頂壁と、前記頂壁から垂下する第1スカート壁と、を含んで構成され、前記第1スカート壁の内面に設けられて前記容器口部の第2螺子と螺合する第1螺子を備え、前記頂壁の内面には前記容器口部をシールするシール部を有し、前記外蓋は、前記内蓋を外面から覆うように対向する天面壁と、前記天面壁から垂下する第2スカート壁と、を含んで構成され、前記第2スカート壁の内面には前記内蓋に対して相対的に回動可能な係合部を有することが好ましい。
【0017】
また上記した(1)~(4)のいずれかに記載の合成樹脂キャップにおいては、(5)前記閉栓開始における前記外蓋の位置は、前記容器口部の第2螺子と前記内蓋の第1螺子とが接触して螺合が開始されるときの状態で規定され、前記閉栓完了における前記外蓋の位置は、前記容器口部の第2螺子に前記内蓋の第1螺子が締め込まれることで、前記第1螺子と前記第2螺子との螺合が完了するとともに前記内蓋のシール部と前記容器口部との密閉が完了したときの状態で規定されることが好ましい。
【0018】
そして上記した(1)~(5)のいずれかに記載の合成樹脂キャップにおいては、(6)前記開閉栓機構は、前記内蓋の頂壁を基端として立設すると共に、閉栓方向の下流側における前記内蓋からの高さが前記基端より高くなるよう周方向に向けて先端が延びる複数の可撓性の弾性片と、前記弾性片の先端と接触可能な前記外蓋の天面壁における内面と、前記弾性片を前記天面壁の内面に押し付ける押付手段と、を含んで構成されることが好ましい。
【0019】
また上記した(6)に記載の合成樹脂キャップにおいては、(7)前記押付手段は、前記外蓋の第2スカート壁と前記内蓋の第1スカート壁との間に設けられて、シール完了前は前記内蓋と前記外蓋とを一体的に回動させつつ、シール完了後は前記外蓋のみ閉栓方向に回動させるカム機構であることが好ましい。
【0020】
また上記した(7)に記載の合成樹脂キャップにおいては、(8)前記カム機構は、前記外蓋の第2スカート壁の内面と前記内蓋の第1スカート壁の外面の一方に形成された柱状突起と、前記外蓋の第2スカート壁の内面と前記内蓋の第1スカート壁の外面の他方において周方向に延在して形成されて、前記柱状突起の移動を規制する誘導溝と、を含んで構成されることが好ましい。
【0021】
また上記した(8)に記載の合成樹脂キャップにおいては、(9)前記誘導溝は、前記外蓋に前記内蓋を嵌合する際に前記柱状突起が下方へ誘導される縦溝部と、前記縦溝部と連続して形成されて、前記柱状突起をさらに下方へ移動させて前記内蓋によるシールを完了させるための第1誘導溝部と、前記第1誘導溝部と連続して形成されて、前記押圧部によって前記電子部品の押圧面を押圧させるための第2誘導溝部と、前記第2誘導溝部と連続して形成されて、前記押圧部を前記電子部品の押圧面から上方へ離間させるための第3誘導溝部と、前記第3誘導溝部と連続して形成されて、前記内蓋に対して相対的に前記外蓋を回転させるための第4誘導溝部と、を含んで構成されることが好ましい。
【0022】
さらに上記した(9)に記載の合成樹脂キャップにおいては、(10)前記柱状突起が前記第1誘導溝部を移動中に前記閉栓が完了し、前記閉栓が完了した後で前記柱状突起が前記第2誘導溝部に誘導されることで前記押圧部によって前記電子部品の押圧面が押圧されることが好ましい。
【0023】
そして上記した(6)~(10)のいずれかに記載の合成樹脂キャップにおいては、(11)前記外蓋の天面壁における内面には、前記内蓋の頂壁へ向けて立設する開栓用リブが設けられ、前記外蓋を開栓方向へ回したとき前記弾性片の先端が前記開栓用リブと係合することで、前記外蓋とともに前記内蓋が一体的に回動して開栓されることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、内蓋と外蓋の間に形成される収容空間に配置された電子部品によって、内蓋の容器口部に対する閉栓が完了した後で初めて報知を行うことが可能となり、過不足のない密封性や閉栓動作の明示性を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】実施形態における合成樹脂キャップと容器を模式的に示した断面図である。
【
図2】合成樹脂キャップを構成する内蓋の外観斜視図である。
【
図4】押付手段の一実施形態であるカム機構を構成する誘導溝の部分を抜粋した模式図である。
【
図5】内蓋の内部を底面側から見た底面図、およびX-Z平面で切った断面図である。
【
図6】合成樹脂キャップを構成する外蓋の外観斜視図(その1)である。
【
図7】合成樹脂キャップを構成する外蓋の外観斜視図(その2)である。
【
図8】外蓋の内部を底面側から見た底面図、およびX-Z平面で切った一部の断面図である。
【
図9】外蓋に対して内蓋を装着する際の状態遷移図(その1)である。
【
図10】外蓋に対して内蓋を装着する際の状態遷移図(その2)である。
【
図11】可撓性の弾性片と開栓用リブとの配置関係を説明する模式図である。
【
図12】閉栓開始から閉栓完了までの外蓋の軸方向における移動距離と、閉栓開始の時点における電子部品の押圧面から押圧部までの距離と、の関係を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明を好適に実施するための実施形態について説明する。
なお本実施形態においては、説明の便宜上、図を用いた説明においてX、Y及びZ方向を適宜設定したが、説明の便宜上であって本発明を何ら過度に限定するものではない。
【0027】
≪合成樹脂キャップ100≫
図1~8を参照しつつ、本実施形態に係る合成樹脂キャップ100の構造について説明する。
図1に示すとおり、本実施形態における合成樹脂キャップ100は、内蓋10と、この内蓋10の外面を覆って当該内蓋10と嵌合可能な外蓋20と、を含んで構成されている。そして合成樹脂キャップ100のうち内蓋10が容器口部1aに螺合可能とされており、この容器1内へ公知の飲料水や薬剤など種々の内容物を貯留し保存するのに好適となっている。
【0028】
かような合成樹脂キャップ100の材質に特に制限はないが、例えば射出成形が可能な公知の合成樹脂(例えばポリエチレンやポリプロピレンなど)で構成されることが好ましい。また、容器1の形状や材質にも特に制限はなく、例えば樹脂や金属又はガラス製の公知の容器が適用できる。
【0029】
図1(b)からも明らかなとおり、本実施形態に好適な容器1における容器口部1aには、内蓋10の第1スカート壁12の内面12bに形成された第1螺子13と螺合可能な第2螺子1bが形成されている。なお上記した材質同様、容器の形状には特に制限はなく、公知の種々の形状を適用してもよい。
【0030】
なお
図1などに示すとおり、内蓋10はシール部14を有していてもよく、本実施形態ではパッキンを介して容器口部1aに内蓋10が嵌着されることで密封性がより確保されている。なお本実施形態ではシール部14としてパッキンを採用したが、この形態に限られず例えばシール部14としてインナーリング構造など公知の密封構造を採用してもよい。
【0031】
<内蓋10>
図1~5を用いて本実施形態の内蓋10についてさらに詳述する。
これらの図から明らかなとおり、内蓋10は、頂壁11とこの頂壁11の周縁から垂下する第1スカート壁12を含んでいる。このうち、
図2などに示すとおり、頂壁11の外面11aには、複数の弾性片15が周方向に所定の間隔をもって複数設けられている。また、この頂壁11の内面11bには、容器口部1aをシールするためのシール部14が備えられている。さらに、第1スカート壁12の内面12bには、容器口部1aの第2螺子1bと螺合する第1螺子13が設けられている。
【0032】
複数の弾性片15は、内蓋10の頂壁11において基端15bを起点として斜め上方に向けて立設すると共に、閉栓方向(
図2における時計回り(θz)方向)の下流側における内蓋10からの高さが基端15bより高くなるよう周方向に向けて先端15aが延びるように形成されている。かような弾性片15は、閉栓時に開栓用リブ24を乗り越えることが可能な程度の可撓性を有して構成されている。
本実施形態の弾性片15は、後述するとおり閉栓時には閉栓トルクの制御を司る一方で、開栓時には開栓用リブ24と係合して開栓トルクを発揮するといった開閉栓で共用される機能を有している。
【0033】
また、
図2及び
図3などから明らかなとおり、本実施形態における弾性片15は、内蓋10の頂壁11の外面11aにおいて中心(軸芯)から異なる複数の径ごとに複数配置されている。そして本実施形態では、この複数の径ごとに延在する複数の弾性片15は、それぞれの周方向に沿って断続的に複数設けられている。
【0034】
また
図2などに示すとおり、この複数の弾性片15よりも内径(外面11aのうち中央側)には、後述する電子部品40を収容可能な収容壁16が設けられている。この収容壁16によって電子部品40が囲繞されることで、電子部品40をガタつかずに安定して配設することが可能となっている。
【0035】
かような電子部品40は、本実施形態では、内蓋10と外蓋20との間に形成される収容空間ASに配置されて、内蓋10の容器口部1aに対する閉栓が完了した後で報知を行う機能を備えている。より具体的には、
図1などに示すとおり、電子部品40は、内蓋10の頂壁11における外面11a上に設置されるとともに、この電子部品40を押圧する押圧部PPは、後述する外蓋20の天面壁21における内面21b上に設置される。
なお本実施形態では、電子部品40が内蓋10側に設置される例を説明したが、この形態に限られず電子部品40が外蓋20側に取り付けられる形態であってもよく、仮に電子部品40が外蓋20側に配設される形態であれば、これに対応するように押圧部PPは内蓋10側の頂壁11に設けられることになる。
【0036】
このように電子部品40は、押圧部PPによって押圧面40aが押圧されたとき、発音、発光および外部の電子機器に対する電波送信の少なくとも1つを用いて報知を行うことが好ましい。かような電子部品40の具体例としては、不図示の電源やICチップが搭載された小型LED素子などが例示できる。
【0037】
例えば電子部品40が発音機能を有する場合には、閉栓が完了した後でメロディーを発生させてもよい。また、例えば電子部品40が発光機能を有する場合には、閉栓が完了した後で容器1の周囲へ光を発生させてもよい。また、電子部品40が電波送信機能を有する場合には、閉栓が完了したことを示す信号を遠方の電子機器(スマートフォンや監視装置など)に送信してもよい。
特に電子部品40が電波送信機能を有する場合には、遠方から容器1の内容物を使用したか否かを把握することができるので、薬剤摂取の管理などに有用性が高い。
【0038】
内蓋10の第1スカート壁12における外面12aには、外蓋20に設けられた柱状突起51(後述)の移動を規制する誘導溝52が形成されている。この誘導溝52は、上記した柱状突起51とともに、本実施形態におけるカム機構50の一部として機能している。なお本実施形態では、内蓋10の側に誘導溝52が形成されると共に外蓋20の側に柱状突起51が形成されているが、これらが逆の構成となっていてもよい。すなわち、内蓋10の側に柱状突起51が形成されると共に外蓋20の側に誘導溝52が形成されていてもよい。
また、上記第1スカート壁12の外面12aのうち誘導溝52よりも下方には、後述する外蓋20の係合部23と係合可能な周状凸部17が設けられている。
【0039】
次に
図3(b)や
図4を参照しつつ、本実施形態における誘導溝52の構造について詳述する。これらの図に示すとおり、誘導溝52は、内蓋10の第1スカート壁12における外面12aに形成されており、縦溝部52a、第1誘導溝部52b、第2誘導溝部52c、第3誘導溝部52dおよび第4誘導溝部52eを含んで構成されている。
【0040】
縦溝部52aは、例えば
図3(b)や
図9などに示すように、外蓋20を内蓋10に嵌合する際に柱状突起51が下方へ誘導される領域となっている。本実施形態の縦溝部52aは、内蓋10の軸方向(Z方向)に並行となるように外面12aに2つ形成されている。このように本実施形態では、良好な配置バランスの観点から、計2つの縦溝部52aが中心を挟んで互いに対向する形で配置されているが、この形態に限られず周方向の任意の位置に任意の数でそれぞれ配設してもよい。また、この縦溝部52aの幅や軸方向長さについては、少なくとも柱状突起51が不用意なガタツキがなくスムーズに挿入可能な程度であれば特に制限はない。
【0041】
第1誘導溝部52bは、上記した縦溝部52aと連続して形成されて、柱状突起51をさらに下方へ移動させて内蓋10によるシールを行うための領域である。すなわち容器口部1aの閉栓動作を開始した後、柱状突起51がこの第1誘導溝部52bと係合することによって外蓋20と内蓋10とを一体で回転(上記した弾性片15の弾性作用による押圧力によって外蓋20の回転に内蓋10が追従)する。
【0042】
かような第1誘導溝部52bは、
図4のとおり、縦溝部52aの下端から軸方向(Z方向)下方に向けて斜めに傾斜した構造とされている。なお、この第1誘導溝部52bの上記した傾斜の度合いについては、後述するとおり柱状突起51がこの第1誘導溝部52bの左端に差し掛かる前に閉栓動作が完了するように設定されている。
【0043】
したがって、柱状突起51が第1誘導溝部52bを通過するときは、まず初期段階では内蓋10と外蓋20とが一体となって閉栓方向に回転し、内蓋10の第1螺子13と容器口部1aの第2螺子1bが接触する。そして柱状突起51が第1誘導溝部52bを通過する後半においては、内蓋10のシール部14が容器口部1aをシールした後で、外蓋20が内蓋10に対して相対的に回転できる程度に調整される(このとき容器口部1aに対して内蓋10は回転せず巻き締め動作は完結している)。
【0044】
第2誘導溝部52cは、前記した第1誘導溝部52bと連続して形成されて、外蓋20に形成された押圧部PPによって電子部品40の押圧面40aを押圧させるための領域である。本実施形態の第2誘導溝部52cは、第1誘導溝部52bの下端から周方向に延在するように形成されている。そして本実施形態では、前記した柱状突起51が第1誘導溝部52bを移動中に閉栓が完了し、この閉栓が完了した後で柱状突起51が第2誘導溝部52cに誘導されることで押圧部PPによって電子部品40の押圧面40aが押圧される。
【0045】
第3誘導溝部52dは、前記した第2誘導溝部52cと連続して形成されて、押圧部PPを電子部品40の押圧面40aから上方へ離間させるための領域である。より具体的に本実施形態の第3誘導溝部52dは、右端(閉栓方向の下流側)が第2誘導溝部52cと接続されるとともに、この右端から左端(閉栓方向の上流側)に向けて軸方向(Z方向)上方に向けて斜めに傾斜した構造とされている。
【0046】
第4誘導溝部52eは、前記した第3誘導溝部52dと連続して形成されて、内蓋10の弾性片15が圧縮された状態を維持しつつ当該内蓋10に対して相対的に外蓋20が回転可能な領域である。より具体的に本実施形態の第4誘導溝部52eは、上記した縦溝部52aの底部よりも軸方向に関して若干低い位置に配置されている。
図3及び4から理解されるとおり、上記した第4誘導溝部52eの左端は、いずれかの縦溝部52aに対して段差を介して接続されることになる。
【0047】
<外蓋20>
次に
図1、6~8を用いて本実施形態の外蓋20について説明する。
外蓋20は、内蓋10の外面を覆って当該内蓋10を嵌合する機能を有し、内蓋10を外面から覆うように対向する天面壁21と、この天面壁21の周縁から垂下する第2スカート壁22と、を含んで構成されている。このうち天面壁21の内面21aには、
図7などに示すように、電子部品40の押圧面40aを押圧可能な押圧部PPと、複数の開栓用リブ24と、が設けられている。
なお、外蓋20の第2スカート壁22における外面22aには、公知のローレット加工などの凹凸構造が採用されていてもよい。これにより外蓋20を摘まんだ際に滑ってしまうことなどが抑制される。
【0048】
開栓用リブ24は、内蓋10の頂壁11へ向けて立設するように、外蓋20の天面壁21における内面21bに形成されている。この開栓用リブ24は、開栓時に外蓋20を回すことで合成樹脂キャップ100を容器口部1aから外すためのものであり、外蓋20を開栓方向へ回したとき弾性片15の先端15aが開栓用リブ24と係合することで、外蓋20とともに内蓋10が一体的に回動して開栓される。
なお本実施形態では、開栓用リブ24は、周方向に関して所定の間隔で複数個形成されることが望ましい。これにより開栓動作を開始してから弾性片15が開栓用リブ24と係合する時間を短縮できる。
【0049】
図7に示すとおり、第2スカート壁22の内面22bには、内蓋10に対して相対的に回動可能な係合部23が設けられている。この係合部23は、上述のとおり内蓋10の周状凸部17と係合可能であり、この係合部23と周状凸部17とが係合することで内蓋10から外蓋20が不用意に離脱しないように構成されている。
【0050】
また、
図8などに示すとおり、第2スカート壁22の内面22bには、上述のとおり、互いに対向するように設けられた2つの柱状突起51が形成されており、上記した誘導溝52とともに、本実施形態におけるカム機構50の一部として機能している。なお本実施形態では柱状突起51と誘導溝52からなるカム機構50は、周方向に関して2つ設けられているが、この形態に限られず複数あることが好ましく、これにより外蓋20を水平に保ち、開閉栓の回動をスムーズに行うことができる。
【0051】
<開閉栓機構30と合成樹脂キャップ100における開閉栓動作時の状態遷移>
次に上記内蓋10と外蓋20の各構成要素が作用して機能する開閉栓機構30について説明する。
本実施形態の合成樹脂キャップ100は、内蓋10と外蓋20との間に設けられて、容器口部1aに対する内蓋10の開栓及び閉栓を行う開閉栓機構30を備えている。より具体的に本実施形態の開閉栓機構30は、複数の可撓性の弾性片15と、この弾性片15の先端15aと接触可能な外蓋20の天面壁21における内面21bと、この弾性片15を天面壁21の内面21bに押し付ける押付手段PM(本実施形態ではカム機構50)と、を含んで構成されている。
【0052】
容器口部1aから合成樹脂キャップ100を外す際(開栓時)には、外蓋20の外面22aを摘まんで開栓方向(本例では反時計回り)に外蓋20を回すと、外蓋20の開栓用リブ24の先端が弾性片15の先端15aに引っ掛かり、内蓋10と供回りすることにより容器口部1aから合成樹脂キャップ100を外すことが可能となっている。
【0053】
次に
図9~11を参照しつつ、本実施形態の合成樹脂キャップ100における閉栓動作時の状態遷移を説明する。
まず本実施形態の合成樹脂キャップ100を用いて容器口部1aを閉栓するに際して、
図9(a)及び
図11(a)に示すように、内蓋10に対して外蓋20を嵌合させる。この状態ではカム機構50の柱状突起51は誘導溝52のうちの縦溝部52a内に在り、外蓋20の係合部23が内蓋10の周状凸部17(
図1など参照)と嵌合することから、意図せず外蓋20が内蓋10から分離してしまうことが抑制されている。
【0054】
このとき、内蓋10の頂壁11に立設された弾性片15は外蓋20の天面壁21と接触して圧縮された状態となっている。したがって使用者が更に外蓋20の外面22aを摘まんで閉栓方向(本例では時計回り)に外蓋20を回転させると、この弾性片15が外蓋20によって圧縮されるときの摩擦力によって、内蓋10も外蓋20とともに閉栓方向に回転することになる。
【0055】
次いで使用者が閉栓方向に外蓋20を回転させると、
図9(b)に示すように、内蓋10の第1螺子13が容器口部1aの第2螺子1bと螺合を開始する。なお、この
図9(b)に示す状態が、後述する閉栓開始における外蓋20の位置を規定するときであり、容器口部1aの第2螺子1bと内蓋10の第1螺子13とが接触して螺合が開始される状態である。また、この
図9(b)に示す状態では、
図11(b)に示すように外蓋20の開栓用リブ24に対して弾性片15の先端15aが接触した状態となっている。
【0056】
そして
図9(b)から更に閉栓方向に外蓋20を回転させると、
図9(c)に示すように、柱状突起51が第1誘導溝部52b内へ移動しつつ、外蓋20とともに回転している内蓋10のシール部14が容器口部1aを密封する。この
図9(c)に示す状態では、柱状突起51がいまだ第1誘導溝部52bの左端に到達していないが、内蓋10によって容器口部1aの閉栓は完了した状態となっている。これにより、以降で外蓋20が回転したとしても内蓋10は容器口部1aに対して回転しなくなる(すなわち更なる巻き締めは行われない)。
【0057】
このとき同図から明らかなとおり、外蓋20に設けられた押圧部PPは、いまだ電子部品40の押圧面40aには接触しておらず所定の間隙が形成された状態となっている。以降は、外蓋20と内蓋10との摩擦力に対し、内蓋10の容器口部1aとの密閉力が上回るので、内蓋10はこれ以上閉栓方向へ回転せずに、外蓋20が内蓋10に対して相対的に回転するようになる。
【0058】
そして使用者が
図9(c)から更に閉栓方向に外蓋20を回転させると、
図10(d)に示すように、柱状突起51が第2誘導溝部52c内へと移動し、外蓋20に設けられた押圧部PPが電子部品40の押圧面40aに接触して押圧する。このとき、押圧された電子部品40は、上述のとおり発音、発光および外部の電子機器に対する電波送信の少なくとも1つを用いて閉栓完了を示す報知を行う。なおこのとき、
図11(c)に示すように、外蓋20に設けられた複数の開栓用リブ24のうちの1つを乗り越えて、次に続く開栓用リブ24に対して弾性片15の先端15aが接触した状態となっている。
【0059】
次いで使用者が
図10(d)から更に閉栓方向に外蓋20を回転させると、
図10(e)に示すように、柱状突起51が第3誘導溝部52dを通過することで外蓋20の押圧部PPが電子部品40の押圧面40aに対して離間する。これにより電子部品40への押圧が解除されるので、電子部品40の電力が無駄に消費されてしまうことが抑制される。
また、図示からも明らかなとおり、柱状突起51が第2誘導溝部52cから第3誘導溝部52dへ移動する以降は、柱状突起51は第2誘導溝部52cの位置よりも軸方向の下側へ下がらないので、弾性片15の圧縮力も大きくならずに巻き締め過多の状態にはなり得ない。
【0060】
そして使用者が
図10(e)から更に閉栓方向に外蓋20を回転させると、
図10(f)に示すように、柱状突起51が第4誘導溝部52e内へと移動する。このとき、内蓋10による容器口部1aの閉栓完了が維持されつつ、さらに外蓋20の押圧部PPと電子部品40の押圧面40aの間隙も維持されつつ、弾性片15が開栓トルクを発揮可能な程度に圧縮された状態で外蓋20が内蓋10に対して相対的に回転するようになる。
【0061】
<外蓋の移動距離T1と、電子部品の押圧面から押圧部までの距離T2と、の関係>
ここで
図12を参照しつつ、閉栓開始から閉栓完了までの外蓋20の軸方向における移動距離T1と、閉栓開始の時点における電子部品40の押圧面40aから押圧部PPまでの距離T2と、の関係について説明する。
【0062】
すなわち、本実施形態の合成樹脂キャップ100は、内蓋10による容器口部1aの閉栓が完了した後で初めて報知を行うように構成されている。
上記構成を実現するため、
図12に示すとおり、閉栓開始から閉栓完了までの外蓋の軸方向における移動距離T1は、閉栓開始の時点における電子部品40の押圧面40aから押圧部PPまでの距離T2よりも短くなる(T1<T2)ように設定されている。
【0063】
ここで、閉栓開始における外蓋20の位置は、
図9(b)に示すとおり、容器口部1aの第2螺子1bと内蓋10の第1螺子13とが接触して螺合が開始されるときの状態で規定される。
また、閉栓完了における外蓋20の位置は、
図9(c)に示すとおり、容器口部1aの第2螺子1bに内蓋10の第1螺子13が締め込まれることで、第1螺子13と第2螺子1bとの螺合が完了するとともに内蓋10のシール部14と容器口部1aとの密閉が完了したときの状態で規定される。
【0064】
以上説明した本実施形態の合成樹脂キャップ100によれば、内蓋10と外蓋20の間に形成される収容空間ASに配置された電子部品40によって、内蓋10の容器口部1aに対する閉栓が完了した後で初めて報知を行うことが可能となる。これにより、過不足のない密封性や閉栓動作の明示性を確保することが可能となっている。
【0065】
なお上記した実施形態は一例であって、本願の趣旨を逸脱しない限りにおいて種々の変形が可能である。例えば弾性片15は、射出成形などで内蓋10と一体的に形成されていることが好ましいが、必ずしも内蓋10と一体で形成される必要はなく、内蓋10とは別体で弾性片15が頂壁11の外面11aに取り付けられる構成であってもよい。
また、本発明の趣旨を逸脱しない限りにおいて、上記した実施形態に対して公知の要素を適宜組み合わせて合成樹脂キャップを構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、使用者個人の主観に頼らずに、閉栓動作が完了した後でその報知を行うことが可能なキャップを提供するのに適している。
【符号の説明】
【0067】
1a:容器口部
1b:第2螺子
10:内蓋
11:頂壁
12:第1スカート壁
13:第1螺子
14:シール部
15:弾性片
16:収容壁
17:周状凸部
20:外蓋
21:天面壁
22:第2スカート壁
23:係合部
24:開栓用リブ
30:開閉栓機構
40:電子部品
40a:押圧面
50:カム機構
51:柱状突起
52:誘導溝
100:合成樹脂キャップ
PP:押圧部
PM:押付手段