(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】フレーム構造体用のボルト及び締結構造
(51)【国際特許分類】
F16B 35/04 20060101AFI20230810BHJP
F16B 35/06 20060101ALI20230810BHJP
【FI】
F16B35/04 E
F16B35/06 F
(21)【出願番号】P 2019213912
(22)【出願日】2019-11-27
【審査請求日】2022-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390025243
【氏名又は名称】ポップリベット・ファスナー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100067013
【氏名又は名称】大塚 文昭
(74)【代理人】
【識別番号】100086771
【氏名又は名称】西島 孝喜
(74)【代理人】
【識別番号】100109335
【氏名又は名称】上杉 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120525
【氏名又は名称】近藤 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100139712
【氏名又は名称】那須 威夫
(74)【代理人】
【識別番号】100141553
【氏名又は名称】鈴木 信彦
(72)【発明者】
【氏名】牧野 敬範
【審査官】鵜飼 博人
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-082434(JP,A)
【文献】特開2001-280332(JP,A)
【文献】特開平10-103328(JP,A)
【文献】特開2005-024023(JP,A)
【文献】実開昭61-063012(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B 23/00- 43/02
B21D 39/00
B60N 2/07
E04B 1/38- 1/61
F16B 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ボルトを用いてフレーム構造体を被取付部材に取り付ける方法であって、
前記ボルトは、雄ねじ部と中空のフランジとを有し、
前記フレーム構造体は、底部が、前記ボルトの前記雄ねじ部の外径より大きく、前記ボルトの前記フランジの外径より小さい径の孔を有しており、
前記雄ねじ部を前記フレーム構造体の孔に貫通させた状態で、前記フランジの頭部に対するプレスにより、前記フランジの側面を外側に塑性変形させて、前記フランジの側面を前記フレーム構造体の内壁に固着させるステップと、
前記雄ねじ部を前記被取付部材に取り付けるステップとを有する方法。
【請求項2】
前記フランジは、矩形形状である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記フレーム構造体の内壁は、1又は複数の突起部を有しており、前記フランジの側面が前記フレーム構造体の内壁に固着する位置において、前記突起部が前記フランジの側面と当接するように構成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記フレーム構造体は、シートレールである、請求項1から3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
被取付部材に取り付けるための
フレーム構造体に対してボルト
を締結した締結構造であって、
前記ボルトは、
前記フレーム構造体を前記被取付部材に取り付けるために、前記フレーム構造体の底部の孔を通り、更に、前記被取付部材の孔を通った状態で、ナットに嵌合するように構成された雄ねじ部と、
前記フレーム構造体を前記ボルトに固定するための中空のフランジとを有し、
前記雄ねじ部の外径は、前記フレーム構造体の底部の孔の内径より小さく構成されており、
前記フランジの外径は、前記フレーム構造体の底部の孔の内径より大きく構成されており、
前記フレーム構造体を前記被取付部材に取り付けた状態において、前記雄ねじ部は前記フレーム構造体の前記孔を貫通し、更に、前記被取付部材の孔を貫通し、前記ナットに嵌合しており、前記フランジの底部の前記雄ねじ部から外側に拡がった部分が前記フレーム構造体の前記孔の周囲に当接しており、前記フランジの側面は、外側に塑性変形して、前記フレーム構造体の内壁に固着している、
締結構造。
【請求項6】
前記フランジは、矩形形状である、請求項5に記載の
締結構造。
【請求項7】
前記フレーム構造体の内壁は、1又は複数の突起部を有しており、前記フランジの側面が前記フレーム構造体の内壁に固着する位置において、前記突起部が前記フランジの側面と当接するように構成される、請求項5又は6に記載の
締結構造。
【請求項8】
前記フレーム構造体は、シートレールである、請求項5から7のいずれか1つに記載の
締結構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フレーム構造体を被取付部材に取り付けるためのボルト及びその取付方法に関する。特に、シートレール等の構造体を被取付部材に取り付けるためのボルト及びその取付方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シートレール等のフレームには、従来、M8ボルト等を用いられ、溶接により接合されている。シートレールは、軽量化のため、例えば、980MPaハイテン材が使用されている。このようなM8ボルトの溶接によるハイテン材のシートレールは、溶接した後、溶接不良が原因となり剥がれるといった問題がある。また、M8ボルトの溶接により、検査のための破壊試験時に割れの起点となり強度低下するという問題点もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従って、本発明の目的は、シートレール等のフレーム構造体にM8ボルトを取り付ける歩留まり良好な方法及び取付具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この目的を達成するため、本発明の1つの態様は、
ボルトを用いてフレーム構造体を被取付部材に取り付ける方法であって、
前記ボルトは、雄ねじ部と中空のフランジとを有し、
前記フレーム構造体は、底部が、前記ボルトの前記雄ねじ部の外径より大きく、前記ボルトの前記フランジの外径より小さい径の孔を有しており、
前記雄ねじ部を前記フレーム構造体の孔に貫通させた状態で、前記フランジの頭部に対するプレスにより、前記フランジの側面を外側に塑性変形させて、前記フランジの側面を前記フレーム構造体の内壁に固着させるステップと、
前記雄ねじ部を前記被取付部材に取り付けるステップとを有する方法である。
【0005】
前記方法において、好ましくは、前記フランジは、矩形形状である。
【0006】
前記方法において、好ましくは、前記フレーム構造体の内壁は、1又は複数の突起部を有しており、前記フランジの側面が前記フレーム構造体の内壁に固着する位置において、前記突起部が前記フランジの側面と当接するように構成される。
【0007】
前記方法において、好ましくは、前記フレーム構造体は、シートレールである。
【0008】
本発明の別の態様は、
フレーム構造体を被取付部材に取り付けるためのボルトであって、
前記フレーム構造体を前記被取付部材に取り付けるために、前記フレーム構造体の底部の孔を通り前記被取付部材の孔を通りナットに嵌合するように構成された雄ねじ部と、
前記フレーム構造体と前記ボルトを固定するための中空のフランジとを有し、
前記雄ねじ部の外径は、前記フレーム構造体の底部の孔の内径より小さく構成されており、
前記フランジの外径は、前記フレーム構造体の底部の孔の内径より大きく構成されており、
前記フレーム構造体を前記被取付部材に取り付けた状態において、前記雄ねじ部は前記フレーム構造体の前記孔を貫通し、前記被取付部材を貫通し、前記ナットに嵌合しており、前記フランジの底部の前記雄ねじから外側に拡がった部分が前記フレーム構造体の前記孔の周囲に当接しており、前記フランジの側面は、外側に塑性変形して、前記フレーム構造体の内壁に固着している、
ボルトである。
【0009】
前記ボルトにおいて、好ましくは、前記フランジは、矩形形状である。
【0010】
前記ボルトにおいて、好ましくは、前記フレーム構造体の内壁は、1又は複数の突起部を有しており、前記フランジの側面が前記フレーム構造体の内壁に固着する位置において、前記突起部が前記フランジの側面と当接するように構成される。
【0011】
前記ボルトにおいて、好ましくは、前記フレーム構造体は、シートレールである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、溶接による不具合がなく、歩留まりが向上し、生産性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態によるボルトの斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態によるボルトをシートレールに取り付ける前の様子を示した断面図である。
【
図6】本発明の一実施形態によるボルトをシートレールに取り付けた様子を示した断面図である。
【
図7】本発明の一実施形態によるボルトを用いてシートレールを被取付部材に取り付けて締結された状態の断面図を示している。
【
図8】本発明の一実施形態によるボルトをシートレールに取り付けた状態の斜視図を示している。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[ボルトの構造]
図1は、一実施形態によるボルトの斜視図である。
図2は、
図1のボルトの正面図である。
図3は、
図1のボルトの上面図である。
図4は、
図2のボルトのIV-IVの断面図である。
【0015】
ボルト100は、フランジ110と、フランジ110の底部から延びる雄ねじ部120とを有している。
【0016】
フランジ110は、
図3に示されるフランジ110の頭部をプレスして座屈させて径を拡げることができるような構造になっている。フランジ110は、中実の構造であってもよいが、好ましくは、座屈を容易にできるようにするために中空の構造である。一実施例では、フランジ110は、
図1に示されるように、中空の四角柱の形状である。
【0017】
また、フランジ110の断面形状は、
図3に示されるように、一実施例では矩形形状であり、正方形であっても長方形であってもよい。
【0018】
本発明に係るボルトを用いてシートレールを被取付部材に取り付ける際には、当該ボルトは被取付部材の孔を通しナットを締め付ける時、回り留めが存在しない。そのため、ボルトのフランジ110は、シートレール内側幅内でフランジの座屈後に回転留めができるように矩形形状にすることが好ましい。フランジ110の断面形状を矩形にすることで、円形時よりもシートレール内側幅内にフランジの座屈の外径の接地面が増え、回り留めとして機能し得る。さらに積極的な抜け留めもないため、シートレール内側との接触が多いほど、摩擦による抜け抵抗が発生する。摩擦による抜け抵抗のみが機能しないときは、後述するように、シートレール内側に突起(ダボ)を設けてもよいが、矩形で接触すれば突起(ダボ)の数量も増やすことができる。このように、フランジ110の断面形状を矩形形状とすることにより、回り留めと抜け留めの機能をより向上させることが可能となる。
【0019】
なお、上述の通り、ボルトのフランジの形状は、レールの側面の形状に沿った形状である矩形が望ましいが、これは、取付対象がシートレールの場合であることに基づくものである。取り付けようとするフレーム構造体が円形等のその他の形状である場合には、その側面の形状に沿った形状として、円形等であってもよい。
【0020】
フランジ110は、上述の通り、
図1に示されるように、一実施例では、中空の四角柱の形状であるが、シートレールに接することのない面を取り除いたコの字形状であってもよい。この場合、フランジ110の頭部への上方からのプレスにより、シートレールの内側面に対向するフランジ110のコの字形状の2つの面が座屈してシートレールに接合するように構成してもよい。
また、フランジ110の外枠の幅とフランジ110の高さは、フランジ110の頭部に対する上方からのプレスによりフランジ110の側面が座屈により外側に拡がるのに十分な程度に幅及び高さを有することが望ましい。
【0021】
フランジ110の雄ねじ部120は、例えば、シートレール等のフレーム構造体の底部の孔を貫通し、更に、被取付部材を貫通した状態で、被取付部材を締結するナットを取付けることにより、フレーム構造体を被取付部材に取り付けることができるようになっている。
【0022】
[ボルトを用いたフレーム構造体(シートレール)の取付方法]
本実施例では、フレーム構造体がシートレール130である場合について、上記のボルト100を用いてシートレール130を被取付部材350に取り付ける方法について説明する。
【0023】
図5及び
図6は、本発明の一実施形態によるボルト100をシートレール130に取り付ける様子を示した断面図である。
図8は、本発明の一実施形態によるボルト100をシートレール130に取り付けた状態の斜視図を示している。
図9は、
図8の状態のIX-IXの断面により内部の様子を示した図である。
図8及び
図9の例では、後述するように、ボルト100をシートレール130に取り付ける際に補強のためにブラケット150を設けているが、
図8及び
図9の例は、この点を除けば、
図6と同様の取り付け状態を示すものである。
図6に示されるボルト100とシートレール130を取り付けた状態の断面図は、
図8及び9の例に対してブラケット150を設けない場合の
図8のVI-VIの断面の様子に相当するものである。
図7は、本発明の一実施形態によるボルト100を用いてシートレール130を被取付部材350に締結された状態の断面図を示している。
【0024】
まず、
図5に示されるように、ボルト100の雄ねじ部120を、シートレール130の底部の孔に貫通し、更に、雄ねじ部120を締結治具200に通す。シートレール130の底部の孔は、ボルト100のフランジ110の外径より小さくなっており、この段階で、ボルト100のフランジ110の下側部分は、シートレール130の底部の孔の周囲に内側から当接しており、シートレール130の底部を締結治具200側に押し付けた状態にする。このことにより、シートレール130の底部の外面は締結治具200に当接した状態になる。
【0025】
次に、
図6に示されるように、
図5の状態から、プレスツール300によってボルトのフランジ110の頭部を押し下げることにより、フランジ110の外径部を座屈させてシートレール130の内壁に固着させて締結状態にすることができる。この例では、シートレール130の内壁には、突起部140が設けてあり、突起部140をフランジ110の座屈した部分に当接(干渉)させることにより、フランジ110の外径部がシートレール130の内壁に固着(締結)される。このようにボルト100の側面が座屈してシートレール130に固着された状態から、締結治具200を取り外した後、
図7に示されるように、ボルト100の雄ねじ部120を被取付部材350の孔に通し、雄ねじ部120に対してナット370を締め付けることにより、シートレール130を被取付部材350に固定することができる。
【0026】
この点、フランジ110の形状をシートレール130の側面に沿って矩形にしておくことにより、シートレール130との接触面積を増やすことができ、固着強度を高めることができる。
【0027】
本実施例のように、シートレール130に突起部140を設けておき、フランジ110の座屈した部分をシートレール130の突起部140に固着することは、高い抜け強度が必要な場合に有効である。本実施例では、シートレール130の各内壁に対して3つの突起部140が設けられている。シートレール130の内壁の突起部140の数は、要求される強度の仕様により設定することができ、突起部140の数を増やすことにより、より高い抜け強度とすることができる。
【0028】
シートレール130に突起部140を設ける場合には、シートレール130の突起部140の位置は、
図6に示されるように、ボルト100のフランジ110の座屈した部分の最も膨らんだ部分の位置より僅かに高い位置に設計することが望ましい。このように設計しておくことにより、ボルト100の側面が座屈してシートレール130に固着された状態では、ボルト100の座屈後のフランジ110から、シートレール130に対する外向きの力だけではなく、シートレール130の突起部140に対する上向きの力とシートレール130の底面に対する下向きの力も伝わることになる。結果として、ボルト100を介したシートレール130と被取付部材350との締結をより確実な状態にすることができる。
【0029】
また、シートレール130に更なる強度が必要な場合には、
図8及び
図9に示されるように、ブラケット150をボルト100のフランジ110とシートレール130の底面の間に設けてもよい。この例では突起部140(締結ダボ)が邪魔にならないように加工されたブラケット150が設けられている。
【0030】
上記の本発明の取付方法によれば、溶接による不具合がなく、歩留まりが向上し、生産性を向上させることができる。更に、本発明の取付方法は、溶接ではなくプレス工程により締結するものであり、取付に要する時間を低減することが可能となり作業効率を向上させることができる。
【0031】
[フランジ幅の寸法]
座屈前のフランジ110の外径は、
図5に示されるように、シートレール130の内幅より小さく設計される。座屈後のフランジ110の外径は、
図6に示されるように、シートレール130の内幅とほぼ同等となるように設計される。
フランジ110の座屈後の外径は、フランジ110を潰しきらない余裕のある状態が望ましく、座屈前の外径の1.1~1.5倍である。すなわち、座屈前のフランジ110の外径の寸法は、シートレール130の内幅の寸法の1/1.1~1/1.5として設計することができる。
【0032】
以上のように、本発明に係るボルトの実施の一形態及び実施例について説明してきたが、本発明は、上記の実施例に限定されるものではなく、これに種々の変更を加え得るものであることは容易に理解される。そして、それらが特許請求の範囲の各請求項に記載した事項、及びそれと均等な事項の範囲内にある限り、当然に本発明の技術的範囲に含まれる。上記の実施例は、フレーム構造体としてシートレールを取り付けの対象とするものであったが、これはあくまでも一例であり、本発明がこの特定の具体例に限定されるものではない。
【符号の説明】
【0033】
100 ボルト
110 フランジ
120 雄ねじ部
130 シートレール
140 突起部
150 ブラケット
200 締結治具
300 プレスツール
350 被取付部材
370 ナット