(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-08-09
(45)【発行日】2023-08-18
(54)【発明の名称】植物の成長を促進するためのデバイス
(51)【国際特許分類】
A01G 31/04 20060101AFI20230810BHJP
A01G 9/00 20180101ALI20230810BHJP
A01G 31/00 20180101ALI20230810BHJP
【FI】
A01G31/04 B
A01G9/00 C
A01G31/00 601C
A01G31/00 612
(21)【出願番号】P 2019566196
(86)(22)【出願日】2018-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2018064182
(87)【国際公開番号】W WO2018220011
(87)【国際公開日】2018-12-06
【審査請求日】2021-03-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-08-25
(32)【優先日】2017-05-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】597159765
【氏名又は名称】フラウンホーファーゲゼルシャフト ツール フォルデルング デル アンゲヴァンテン フォルシユング エー.フアー.
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100147762
【氏名又は名称】藤 拓也
(72)【発明者】
【氏名】ヴォゲル,サイモン
(72)【発明者】
【氏名】シルベルク,ステファン
【合議体】
【審判長】住田 秀弘
【審判官】居島 一仁
【審判官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開平3-133324(JP,A)
【文献】特開昭64-43143(JP,A)
【文献】実公昭62-42695(JP,Y2)
【文献】特開昭61-70930(JP,A)
【文献】特開平8-47348(JP,A)
【文献】特開昭59-120037(JP,A)
【文献】国際公開第2015/022782パンフレット(WO,A1)
【文献】特開2015-181465(JP,A)
【文献】特開2015-12826(JP,A)
【文献】特開2009-261300(JP,A)
【文献】特開2011-130765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01G 31/00-31/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物(8)の成長を促進するためのデバイスであって、コンベアベルト(2)を備え、前記コンベアベルト(2)は、コンベア経路(1)に沿って動かすことが可能であり、前記コンベア経路(1)に沿った移動中に、少なくとも一時的に、栄養剤供給部(9)によって栄養培地を供給され、照明ユニット(10)によって照明される植物(8)を、少なくともセクションにおいて搬送することが意図され、前記コンベア経路(1)は、少なくとも1つの第1のセクション(7)において少なくとも概ね水平であり、少なくとも1つの第2のセクション(6)において少なくとも概ね垂直である、デバイスにおいて、
前記植物(8)は、前記植物(8)の根の少なくとも一部が、前記コンベアベルト(2)の下面の下に位置する領域(19)内に突出するのに対し、前記植物(8)の葉および/または果実のうちの少なくとも一部が、前記コンベアベルトの、前記下面と反対側の上面の上に位置する領域(20)内に突出するように、前記コンベア経路(1)に沿った搬送中、前記コンベアベルト(2)に対し少なくとも一時的に固定され、前記栄養剤供給部(9)は、前記コンベアベルトの前記下面の下に位置する前記領域(19)において、前記植物(8)に栄養培地を空中で供給するための供給ユニット(9)を備え、前記供給ユニットは
、前記コンベアベルトの前記下面に向けて前記栄養培地を
噴霧し、
前記供給ユニットは、前記植物の葉が設けられる空間と別個である換気空間内であって、概ね水平方向に向かい合う根の間に設けられ、栄養培地を空中で噴
霧することを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
前記コンベアベルト(2)は、少なくとも領域内に、前記植物(8)が前記コンベア経路(1)に沿った搬送中に少なくとも一時的に固定される担持材(18)を含むことを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記コンベア経路(1)は、2つの少なくとも概ね垂直なセクション(6)間に下側偏向点(5)を含むことを特徴とする、請求項1または2に記載のデバイス。
【請求項4】
前記コンベア経路(1)は、2つの少なくとも概ね垂直なセクション(6)間に上側偏向点(4)を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
少なくとも部分的に自動の取付ユニット(12)が設けられ、前記取付ユニット(12)は前記コンベアベルト(2)に植物の種子および/または苗(8)を取り付けることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記照明ユニット(10)によって照明される少なくとも1つのセクション(11)および照明されない1つのセクションが前記コンベア経路(1)に沿って配置されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記コンベア経路(1)は、2つの少なくとも概ね垂直に延びるセクション(6)と、各々が前記垂直セクション(6)を連結する2つの水平セクション(7)とを備え、前記植物(8)に栄養培地を空中で供給するための少なくとも1つの供給ユニットが、前記コンベア経路(1)に沿って動かされる前記コンベアベルト(2)の前記対向する下面間に配置されることを特徴とする、請求項1~6のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記コンベアベルト(2)は複数の移動可能に相互連結されたスラットを含むことを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記栄養剤供給部(9)は、栄養剤溶液を含む少なくとも1つの浸漬浴(9b)を有し、前記植物(8)の少なくとも根が、少なくともセクションにおいて、前記コンベア経路(1)に沿って前記浸漬浴を通って誘導されることを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項10】
上から下まで少なくとも概ね垂直に延びる前記コンベア経路(1)のセクションと、下から上まで少なくとも概ね垂直に延びる前記コンベア経路(1)のセクションとの間の距離を変更するために、少なくとも調整ユニット(21)が設けられることを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項11】
下から上まで少なくとも概ね垂直に延びる前記コンベア経路(1)のセクションと、上から下まで少なくとも概ね垂直に延びる前記コンベア経路(1)のセクションとによってモジュールが形成され、前記植物の成長期を達成するのに必要とされる数のモジュールが、成長させる前記植物、特に、前記植物の成長に必要な空間に依拠して、インターフェース要素によって相互連結されることを特徴とする、請求項1~10のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項12】
前記少なくとも1つの照明ユニット(10)が前記モジュールに統合されることを特徴とする、請求項11に記載のデバイス。
【請求項13】
前記2つのモジュールは、前記コンベア経路(1)の少なくとも概ね水平に延びるセクションによって連結され、前記セクションの長さは、成長させる前記植物に基づいて選択されることを特徴とする、請求項11または12に記載のデバイス。
【請求項14】
少なくとも2つの予めグループ化されたモジュールを組み立てることによって製造される、請求項11~13のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項15】
少なくとも部分的に自動の収穫ユニット(13)が設けられ、前記収穫ユニット(13)は、植物(8)を前記コンベアベルト(2)から少なくとも部分的に取り除くことを特徴とする、請求項1~14のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項16】
前記コンベアベルト(2)を清掃および/または滅菌するための清掃および/または滅菌ユニット(14)が、前記植物が前記コンベアベルト(2)から少なくとも部分的に取り除かれる領域と、植物の種子および/または苗(8)が前記コンベアベルト(2)上に固定される領域との間に位置する前記コンベア経路(1)の領域内に配置されることを特徴とする、請求項1~15のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項17】
植物(8)の成長を促進するためのデバイスであって、コンベアベルト(2)を備え、前記コンベアベルト(2)は、コンベア経路(1)に沿って動かすことが可能であり、前記コンベア経路(1)に沿った移動中に、少なくとも一時的に、栄養剤供給部(9)によって栄養培地を供給され、照明ユニット(10)によって照明される植物(8)を、少なくともセクションにおいて搬送することが意図され、前記コンベア経路(1)は、少なくとも1つの第1のセクション(7)において少なくとも概ね水平であり、少なくとも1つの第2のセクション(6)において少なくとも概ね垂直である、デバイスにおいて、
前記植物(8)は、前記コンベア経路(1)に沿った搬送中、前記コンベアベルト(2)に対し少なくとも一時的に固定され、それによって前記植物(8)の根の少なくとも一部が、前記コンベアベルト(2)の下面の下に位置する領域(19)内に突出するのに対し、前記植物(8)の葉および/または果実のうちの少なくとも一部が、前記コンベアベルトの、前記下面と反対側の上面の上に位置する領域(20)内に突出し、下から上まで少なくとも概ね垂直に延びる前記コンベア経路(1)のセクションと、上から下まで少なくとも概ね垂直に延びる前記コンベア経路(1)のセクションとによってモジュールが形成され、前記植物の成長期を達成するのに必要とされる数のモジュールが、成長させる前記植物、特に、前記植物の成長に必要な空間に依拠して、インターフェース要素によって相互連結され、少なくとも2つのモジュールが、前記コンベア経路(1)の少なくとも概ね水平に延びるセクションによって連結され、
前記供給ユニットは、前記植物の葉が設けられる空間と別個である換気空間内であって、概ね水平方向に向かい合う根の間に設けられ、栄養培地を空中で噴
霧する、デバイス。
【請求項18】
植物(8)の成長を促進するための方法であって、前記植物(8)は、コンベアベルト(2)によってコンベア経路(1)に沿って動かされ、前記コンベア経路(1)に沿った移動中に、少なくとも一時的に、栄養剤供給部(9)によって栄養培地を供給され、照明ユニット(10)によって照明され、前記植物(8)は、前記コンベア経路(1)の少なくとも1つの第1のセクション(7)において少なくとも概ね水平に動かされ、前記コンベア経路(1)の少なくとも1つの第2のセクション(6)において少なくとも概ね垂直に動かされる、方法において、
前記植物(8)は、前記コンベア経路(1)に沿った搬送中、前記コンベアベルト(2)に対し少なくとも一時的に固定され、それによって前記植物(8)の根の少なくとも一部が、前記コンベアベルト(2)の下面の下に位置する領域(19)内に突出するのに対し、前記植物の葉および/または果実のうちの少なくとも一部が、前記コンベアベルトの、前記下面と反対側の上面の上に位置する領域(20)内に突出し、
前記供給ユニットは、前記植物の葉が設けられる空間と別個である換気空間内であって、概ね水平方向に向かい合う根の間に設けられ、栄養培地を空中で噴
霧することを特徴とする、方法。
【請求項19】
前記植物(8)は、少なくとも概ね垂直に動かされている間、水および/または栄養培地を少なくとも一時的に空中で供給されることを特徴とする、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記植物(8)は、少なくとも概ね水平に動かされている間、水および/または栄養培地を少なくとも一時的に水耕法により供給されることを特徴とする、請求項18または19に記載の方法。
【請求項21】
前記コンベア経路(1)全体が少なくとも一時的に照明されることを特徴とする、請求項18~20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンベア経路に沿って動かすことができ、植物を少なくともセクションにおいて搬送することが意図されるコンベアベルトを有する、自動植物栽培のためのデバイスに関する。少なくとも1つの第1のセクションにおいて少なくとも概ね水平に延び、少なくとも1つの第2のセクションにおいて少なくとも概ね垂直に延びるコンベア経路に沿って植物が搬送されている間、植物は栄養剤供給ユニットによって少なくとも一時的に水および栄養剤を供給される。
【背景技術】
【0002】
水耕植物栽培(hydoroponic plant cultivation)および気耕(aeroponic plant cultivation)植物栽培は、長年にわたって、特に最近の数十年にわたって知られており、これらの植物栽培方法は、特に温室作物、例えば、トマト、キュウリおよびレタスのために集中的に開発された栽培システムのために用いられてきた。外部からの影響が厳密に制御される完全に空調管理されたビル内での農産物の大量生産は、「屋内農業」とも呼ばれる。
【0003】
これに関して、植物が棚システム内に配置され、成長期の間、自動的に栄養培地を供給される、植物を栽培するための知られているシステムが存在する。この種の1つのシステムが、例えば、特開2014-168420明細書に記載されている。この場合、栽培されることが意図される植物は、水平面内のキャリア培地内に個々に固定され、定期的な栄養培地の冠水および排水によって水および栄養剤を供給される。加えて、植物は、植物の真上に取り付けられた蛍光灯またはLEDによって人工的に照明される。
【0004】
更に、オーストリア国特許第250728号明細書は、タワー温室の形態の特殊な温室を開示している。この場合に重要なのは、ビルの高さを利用して、植物を栽培するためのコンベア経路を実装することである。記載されている温室は、曲がりくねって配置された、複数の植物搬送コンベアベルトを有する。コンベアベルトは循環路の形態を取り、植物を異なる方向に垂直に動かすことができるような上側および下側の偏向プーリーを有する。効率的な照明を確実にするために、垂直に配置されたコンベアベルト間に適切な蛍光灯が設けられる。
【0005】
自動植物栽培のための更なる技術的解決策が、米国特許出願公開第2012/0279122号明細書に記載されている。記載のシステムは、曲がりくねって配置され、部分的に垂直に延びるコンベアベルトを有する。コンベアベルトを偏向させるために、対応する偏向プーリーが設けられる。更に、植物を搬送するための特殊な容器が設けられ、種子または植物を保持するための担持材が前記容器内に配置され、これらは特定のフック要素によって、循環するコンベアベルト内に留められている。この場合、植物を保持するための記載の容器は、コンベアベルトの範囲全体にわたって延び、各々が複数の植物を隣り合って保持することができる。
【0006】
エネルギー需要の増大にかかわらず、植物を栽培するための知られている自動システムは、畑での従来の農業を上回る複数の利点を有する。気候に対する完全な非依存性に加えて、温室内の環境条件は、任意の所与の植物に対し最適に適合させ、それによって一定の植物成長を達成することができる。更に、特殊な水回収システムに起因して、植物を栽培するために必要な水の量が、屋外の畑を耕作するよりも大幅に少ない。更に、必要とされる肥料の量が比較的少なく、完全に空調管理された空間内で植物を栽培することにより、殺虫剤なしで植物を成長させることが可能になる。
【0007】
更に、垂直に配置されたコンベア経路の使用は、利用可能な表面積の利用を大幅に改善するという利点を達成する。これは特に、都市エリア、および日本等の農業に適した表面積が比較的少量である先進国において非常に有利である。
【0008】
完全に空調管理された部屋内での自動植物栽培のための知られているシステムでの問題は、多くの場合、用いられるシステムを様々な植物に適合させることが比較的複雑であることである。成長させる植物が変更されるとき、様々な植物の大きさが、様々な範囲まで、かつ成長期における様々な期間において変化することを考慮に入れなくてはならない。自動植物栽培のための知られているシステムを、任意の所与の変化した条件に適合させることは困難である。更には、葉または根に損傷を与えることなく、必要な栄養剤および水を植物に供給することは、多くの場合に問題を呈する。
【0009】
自動植物栽培のための知られている従来技術によるシステムおよび上述した問題から進展して、本発明によって対処される問題は、好ましくは閉鎖空間において、単純で植物成長期に対し適合された方式で、作物および観賞植物が栽培されることを可能にする植物栽培システムを提供する問題である。指定された技術的解決策は、植物の栽培が、種子の設置から完全に熟した植物の収穫まで、実質的に完全に自動の、特に比較的単純な方式で行われることを可能にすることが意図される。更に、水および栄養剤の要件を最小限に保つことができることが確実にされることが意図される。本発明によるデバイスは、好ましくは、自動温室システムを構築するための知られているシステムコンポーネントを用いて達成することができる単純な構造設計によって特徴付けられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述した問題は、請求項1による自動植物栽培のためのデバイスによって解決される。本発明によって用いられる植物栽培のための方法は、請求項12において規定される。本発明の有利な実施形態は、従属請求項の主題であり、以下の説明において図面を部分的に参照して、より詳細に説明される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、植物の成長を促進するための、特に、自動植物栽培のためのデバイスに関し、このデバイスは、コンベア経路に沿って動かすことができ、植物を、少なくともセクションにおいて搬送することが意図されるコンベアベルトを備える。搬送される植物は、コンベア経路に沿って動かされている間、少なくとも一時的に照明され、栄養剤供給部によって栄養剤および水を供給され、コンベア経路に沿って搬送されている間、少なくとも1つの第1のセクションにおいて少なくとも概ね水平に動かされ、少なくとも1つの第2のセクションにおいて少なくとも概ね垂直に動かされる。本発明は、植物が、植物の根の少なくとも一部が、コンベアベルトの下面の下に位置する領域内に突出するのに対し、植物の葉および/または果実のうちの少なくとも一部が、コンベアベルトの、下面と反対側の上面の上に位置する領域内に突出するように、コンベア経路に沿った搬送中、コンベアベルトに対し少なくとも一時的に固定され、栄養培地供給部がコンベアベルトの下に配置され、それによって、コンベアベルトに固定された植物、特に、コンベアベルトの下の根が、栄養培地を空中で(aeroponically)供給されることを特徴とする。これに関して、本発明の本質的な特徴は、植物が、成長期の間、コンベアベルトに固定され、連続的に動かされ、少なくとも一時的に光源に沿って搬送されること、および、特に噴射ノズルを有する栄養培地供給部が、コンベアベルトの下面から離間して位置し、この栄養培地供給部が、植物が前記領域内で栄養培地を空中で供給されることを確実にすることである。更に、好ましくは、垂直および少なくとも一時的に水平の双方である移動中、根領域は連続的に栄養剤を供給される。コンベア経路が少なくとも概ね垂直に上方および下方に延びる経路セクションを有する特殊な構成により、植物は連続的に軌道方向に(orbitropically)再位置合わせされ、これにより植物成長が促される。
【0012】
本発明の特定の実施形態において、コンベアベルトは、少なくとも領域内に、植物がコンベア経路に沿った搬送中に少なくとも一時的に固定される担持材を含む。好ましくは、担持材は、種子または植物が適所に強固に保持されるように選択され、担持材も分散し、少なくとも一時的に水および/または栄養培地を格納することができる。本発明によるデバイスは、少なくとも一時的に概ね垂直に植物を搬送するため、本発明の特定の展開によれば、植物が、その成長期の間、照明源に沿って、かつ/またはその照明源に向かって連続して動かされることが可能であり、植物は好ましくは、垂直に動かされるやいなや照明される。有利には、コンベアベルトの下面に位置する根領域も同時に、栄養剤および水分を空中で供給される。根領域への栄養剤の空中供給も、好ましくは、少なくとも一時的に、植物が垂直に動かされている間に行われる。これに関して、上側偏向点がコンベア経路の2つの垂直に延びるセクション間に設けられ、それによって、植物がコンベアベルトと共に垂直に上方に動かされ、次に、偏向点を通過した後、垂直に下方に動かされることが考えられ、植物の向きは、根から新芽の先端まで、前記移動方向に対し直角を成す。
【0013】
照明のために自然光および/または人工光を用いることが一般的に考えられ、前記人工光は、例えば、少なくとも1つの蛍光灯および/またはLEDを含む照明ユニットによって生成される。光を生成するために照明ユニットを設けることは、植物を選択的方式で、特に、成長させる植物のタイプに対し適合させ、かつ/または植物の成長と合わせた方式で、必要な場合は常に照明することができるという点で有利である。本発明の特定の展開によれば、植物は、コンベア経路の特定の領域、特に、植物が垂直方向に動かされる選択された領域においてのみ照明され、特に好ましくは、昼/夜のリズムを模倣することができるように垂直領域全体の半分にわたってのみ照明される。有利には、植物は、垂直方向に配置されたLEDパネルまたは他の照明システムによって照明される。
【0014】
特定の展開によれば、照明ユニットは、植物が、コンベア経路の特に選択されたセクションにおいて照明されるように設計される。有利には、植物は、コンベア経路の垂直セクションに沿って上方に連続して動かされている間、照明される。更に、植物が偏向点を通過した後、特に、下方に垂直に動かされるやいなや、前記植物が、少なくとも一時的にもはや照明されなくなることが有利である。
【0015】
特に有利な実施形態では、コンベアベルトに固定された植物、特にコンベアベルトの下の根は、前記植物が垂直に動かされるやいなや、栄養培地を空中で供給されるのに対し、前記植物は、コンベア経路の2つの垂直に延びるセクション間に位置する下側偏向点の領域において、少なくとも部分的に、浸漬浴を通って動かされ、それによって、植物、特に根が、前記領域において栄養剤を水耕法により供給される。このため、間に下側偏向点および上側偏向点または領域が位置する、垂直に延びる複数の経路セクションを有する、曲がりくねったまたは蛇行したコンベア経路にわたって、植物は栄養剤および水分を連続的に供給される。植物の根に空中で給水するために、好ましくは、栄養培地噴霧システムが用いられる。上記で説明したように設計される自動植物栽培システムによって、好ましくは、根がコンベアベルトの下面において連続して空中で給水されるのに対し、植物担持材は、コンベアベルトがトラフ段階にあるときに下側偏向点の領域において水耕法により浸漬される。
【0016】
植物をコンベアベルトに固定することによって、根が、連続的にまたは少なくとも長期間にわたって、植物の葉を不要に湿潤させることなく空中で給水される。このようにして、葉の塊(leaf mass)の病害が確実に防がれる。コンベアベルトの下の、特に垂直コンベア経路セクションに沿った空気の温度および湿度がセンサシステムによって監視され、値は、前記領域において過度な湿度を確実に回避することができるように、中央制御ユニットによって適切に制御される。
【0017】
有利には、間に1つの偏向部を伴うコンベアベルトの単一の上下移動が、根領域の同時の下面湿潤処理とともに、1つのモジュールとして構成されるように、コンベア経路が寸法を設定され、かつ/またはコンベアベルトの進行速度が調整され、この種の栽培サイクルは好ましくは24時間で完了する。モジュール設計は、有利には、自動植物栽培のためのシステム全体を、任意の所与の要件、すなわち、任意の所与の植物品種および/または成長期に対し適合させることを可能にする。モジュールを並べることによりコンベアベルトを延長することによって、作物のための完全な成長期間を容易に得ることができ、各モジュールは、栄養要件、照明および表面積要件に関する所与の植物の成長ステージの需要に対して適合される。この理由により、本発明の好ましい実施形態によれば、コンベア経路の個々のモジュールまたはセクションは、コンベアベルトと共に、特に2つの垂直に延びる経路セクション間に位置する下側セクションの長さを変更することが可能であるように設計される。システム全体を形成するために複数のモジュールが組み立てられる場合、概ね垂直に下方に延びる経路セクションと、概ね垂直に上方に延びる経路セクションとの間の距離が、植物の搬送持続時間が増大するにつれ広がり、距離が植物の成長に対し適合されるようにすることは理にかなっている。垂直に延びる経路間の距離を慎重に変動させることによって、距離を、コンベアベルトに固定された植物の所与の大きさに対し適合させることが可能になる。
【0018】
更に、代替的にまたは上記で説明した実施形態を補うものとして、有利には、個々の植物がコンベアベルトに固定される地点間の距離を変更することによって、所与の植物の大きさの要件に対する、自動植物栽培のためのデバイスの調整を達成することが考えられる。好ましくは、個々の固定点間の距離が必要に応じて調整され得ることを確実にする機械的要素がこの目的で提供される。例えば、植物の搬送持続時間が増大し、植物が成長するにつれ、個々の固定点が更に離れて拡散することが考えられ、様々な位置における係止位置が考えられる。本発明の更に好ましい実施形態によれば、コンベアベルトは、ポリ塩化ビニル(PVC)等の種々の材料から作製することができる、並べられた堅いスラットを含む。この種のスラットは、植物が容易に固定され、同時に、コンベアベルトを偏向プーリー上で誘導することができるような高度の可撓性により区別されることを可能にする。
【0019】
このように、コンベア経路またはコンベアベルトを、植物の変化する大きさに対し調整することによって、植物の増大する空間要件が満たされ、材料およびエネルギーの使用が最小限にされる。このようにして、システムは、例えば、苗段階において給水および照明のための支出が大幅に低減されるため、経済およびエコロジーの双方の観点から特に効率的に運用される。
【0020】
本発明の更なる特定の実施形態において、コンベア経路またはコンベア経路に沿って動かされるコンベアベルトは、閉じた円形または楕円形の経路に沿って動かされる。このため、偏向点の領域内の2つの垂直セクションおよび2つの水平セクションが設けられ、水平セクションは垂直セクションと相互連結する。コンベアベルトの垂直セクションの長さを変更することによって、この種の植物栽培システムを、少なくとも、実質的に所望の通りの高さとなるように構築することが可能である。好ましくは、動かされる植物を栽培するための内部の空中栄養剤供給部が設けられる。この種の植物栽培システムは、イチゴ、リーフレタス、ホウレンソウ、ハナダイコンおよび/またはブッシュトマトの栽培に特に適している。特に、自動収穫機によって、植物または果実が下側偏向点の領域において収穫される場合、有利な収穫が可能である。
【0021】
本発明によるデバイスの更なる特定の実施形態によれば、植物が、選択的な制御された方式で適切な波長を用いて照射されることを可能にする照明ユニットが設けられる。この場合にも、照明を植物の所与の需要および/または異なる成長期に対し適合させることが再び考えられる。このようにして、植物の照明は、植物の成長に対し特に適合される。更なる実施形態によれば、デバイスは、コンベア経路の照明セクションおよび非照明セクションの双方が提供されるように設計される。
【0022】
更に、本発明による自動植物栽培のためのデバイスは、好ましくは取付システムを備え、この取付システムによって、コンベアベルトおよび/またはコンベアベルトに設けられた担持材に、少なくとも1つの種子および/または苗が自動的に取り付けられる。コンベアベルトの領域内に、所望の程度まで成長した植物、特に葉および/または果実が収穫されることを可能にする収穫モジュールを設けることも考えられる。更に好ましくは、本発明によるデバイスは、好ましくは収穫モデルの上流に、コンベアベルトが清掃および/または滅菌されるセクションを有する。
【0023】
好ましくは、本発明によるデバイスは、取付ユニットおよび収穫ユニットが設けられ、それらの間に、清掃および/または滅菌システム、特に蒸気滅菌システムがコンベアベルトの移動方向に位置し、それによって成長した植物が収穫された後、再取付前に、コンベアベルトが清掃および/または滅菌されるように設計される。
【0024】
コンベアベルト内またはコンベアベルト上に植物を固定することに関連して、原理的には、種子および/または苗が担持材によってコンベアベルト内またはコンベアベルト上に直接または間接的に固定されることが考えられる。代替的な実施形態によれば、コンベアベルトは、植物を取り付けることができ、循環するコンベアベルトに締結要素によって締結される適切な植物容器を有する。これに関して、例えば、コンベアベルトが少なくとも1つのコンベアチェーンを含み、その中に、植物がコンベア経路に沿って搬送されるやいなや、締結要素としての役割を果たす植物容器のフックが留められることが考えられる。したがって、コンベアベルトに連結することができる植物容器が用いられる場合、前記容器は、好ましくは収穫プロセスのためにコンベアベルトまたはコンベアチェーンから取り外され、収穫が完了した後に清掃され、最終的に取付システムに戻して供給される。コンベアベルトまたはコンベアトラックの開始地点において、対応する植物容器が、種子または苗を取り付けられた後、前記トラック内に再び留められる。
【0025】
自動植物栽培のための特定のデバイスに加えて、本発明は、作物または観賞植物の自動栽培のための方法に更に関する。
【0026】
本発明による方法の本質的な特徴は、植物が、コンベアベルト上に堅固に固定された方式で搬送され、上側偏向点および下側偏向点と組み合わせて、少なくとも一時的に、少なくとも実質的に垂直に搬送されることによって、連続的に軌道方向に再位置合わせされることである。植物が固定して誘導される結果として、植物の葉が不要に湿潤されることのない連続空中給水を確実にすることが更に比較的単純である。この理由により、葉の塊の病害を大幅に回避することができる。葉および根の領域が空間的に分離される方式により、空気をより良好に制御することも可能であり、過度な湿度を確実に回避することができる。
【0027】
更に、本発明の特定の利点は、コンベア経路またはコンベアベルトを植物の大きさに対し適合させることが可能であることである。好ましくは、これは、コンベアベルトを、固定点の領域内に機械的に拡張させ、かつ/または個々の栽培モジュール間の距離を、成長させる植物の増大する空間要件を満たすように拡張させることによって行われる。植物間の変更された距離に対し最適化される照明および給水手順により、セットアップおよびエネルギー消費に関して大幅な節減が行われることが可能になる。垂直のループ状の設計を有する栽培モジュールが好ましくはモジュール形式で並べられる本発明によるデバイスは、植物が、特に柔軟性があり、植物の植え付けおよび成長ステージに対し適合され、経済的でもある方式で栽培されることを可能にする。更に、コンベア経路のそれぞれ開始および終了地点における自動取付ユニットおよび/または収穫ユニットと組み合わせることにより、有利には、大幅なコスト節減を行うことが可能になる。
【0028】
以下において、本発明が、実施形態に基づき、図面を参照して、全体的な発明的概念を制限することなくより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明による自動植物栽培のためのデバイスの概略図である。
【
図2】自動植物栽培のためのデバイスに適したコンベアベルトの平面図である。
【
図3】植物栽培実験に用いられる、本発明による植物栽培システムのデモンストレータの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1は、本発明による自動植物栽培のためのデバイスの概略図である。前記デバイスの本質的な特徴は、植物8が、コンベア経路1に沿った搬送中にコンベアベルト2上に固定され、植物8の根の少なくとも大部分が、コンベアベルト2の、葉に対して反対側に配置されることである。コンベア経路1の寸法およびコンベアベルト2の移動速度は、種子または苗をコンベアベルト2上に設置してから、コンベアベルト2から取り除くまでの、植物8がコンベア経路1に沿って動かされる期間が、対応する植物8の成長期に対応するように選択される。
【0031】
コンベア経路1の構成に関して、コンベアベルト2上に固定された植物8がセクションにおいて垂直に上方および下方の双方に動かされるのに対し、前記植物は、個々の垂直路セクション6間で、特に上側偏向点4および下側偏向点5の領域内で少なくとも一時的に水平に動かされることが特に重要である。
【0032】
コンベア経路1の開始地点に取付ユニット12が設けられ、これによって、コンベアベルト2の受容要素3が各々、苗8を取り付けられる。説明される実施形態による受容要素3は各々、植物8、特にその根が中で固定される担持材18、好ましくはロックウールを有する。重要な特徴は、植物8の根がコンベアベルト2の下の領域19内に位置するのに対し、葉はコンベアベルト2の上の領域20内に延びることである。このため、根および葉がそれぞれ位置する領域19、20は、空間的に互いに別個である。更に、植物8がコンベア経路1の垂直セクション6に沿って動かされる間、根は、植物8が空中湿潤および栄養剤供給プロセス9aを受ける換気空間内に位置する。
【0033】
コンベア経路1の特定の設計により、コンベアベルト2は、植物8を垂直に上側偏向点4まで動かし、次に再び下側偏向点5に向かって下方に動かすことを交互に行う。植物8が垂直路6の下端に達するやいなや、前記植物は少なくとも短経路セクション7にわたって水平に動かされる。下側偏向点5の領域内の前記移動中、担持材は、内部に配置された植物8の根と共に、浸漬浴9b内に浸漬され、それによって植物8が水耕法により湿潤され、栄養剤を供給される。前記少なくとも一時的な水平移動に続いて、植物8は再びコンベア経路1の次の2つの垂直路セクション6にわたって動かされる。2つの垂直路セクション6間には上側偏向点4がある。植物8が前記垂直路セクション6に沿って動かされる間、植物の根は再びコンベアベルト2の下面において空中湿潤9aを受ける。
【0034】
第1に、植物8が下から上に、次に上から下に動かされる2つの垂直セクション6と、第2に、垂直セクション間に配置される偏向点5とからなるコンベア経路1のセクションは、モジュールまたは栽培モジュールと呼ばれる。モジュールの構成およびコンベアベルト2の速度の設定は、植物8がこの種のモジュールを24時間以内に循環するようになっている。そして、システム全体は、所与の植物8の完全な成長期を達成するのに必要な数のモジュールで構成される。
【0035】
更に、自動植物栽培のためのデバイスは、コンベア経路1に沿って動かされている間、植物8が、一部は人工的に生成された光により照明され、一部は照明されないように設計された照明ユニット10を有する。
図1に示す実施形態において、植物8は、上側偏向点4と下側偏向点5との間の垂直路セクション6に沿って下方向に動かされているときに常に照明される。しかしながら、植物8が下から上に延びる経路セクションに沿って動かされているとき、遮光段階11が設けられる。これに関して、照明ユニット10は、植物8が照明されないように覆われる。原則として、植物の所与のタイプに対し、照明のタイプ、強度および持続時間を適合させることが考えられる。それぞれの場合に、照明が制御されるか、またはセンサおよび制御ユニットによって適切に調整される。
図1に示す実施形態では、それぞれの下方に延びる垂直路セクション6の反対側に配置されるLEDパネルが照明ユニット10として設けられる。
【0036】
更に、
図1に示す自動植物栽培のためのデバイスは、各々が2つの垂直路セクション6と、垂直路セクション間に配置された上側偏向点4とからなる個々のモジュール間の距離を、個々の植物8の大きさの成長に対し適合させることができるように、調整ユニット21を有する。
図1に明確に見て取ることができるように、植物8の大きさは、コンベア経路1に沿って搬送されている間増大する。植物8が成長する範囲まで個々のモジュール間の距離が増大され、照明が、植物8の青葉の量が大きくなることによる光要件の変化に対し適合される。前記手段を補うものとして、コンベアベルト2も、植物が固定される個々の受容要素3間の距離を植物の成長に基づいて変更することができるように設計される。植物の大きさの成長に対し適合させることができるコンベアベルト2の特定の実施形態が
図2に関して説明される。
【0037】
コンベア経路1の終了地点において、自動収穫ユニット13が設けられる。自動収穫ユニット13は、循環するコンベアベルト2から、通常の大きさまで成長した植物8を取り除く。収穫ユニット13の直接上流で、コンベアベルト2が再び偏向され、循環して取付ユニット12まで戻る。コンベアベルト2の必要な清掃および滅菌を確実にするために、収穫ユニット13と取付ユニット12との間の経路に沿って、コンベアベルト2がまず清掃され、次に、蒸気滅菌システム14による表面滅菌を受ける。これにより、コンベアベルト2は、完全に清掃され、滅菌された状態で取付ユニット12まで戻り、前記取付ユニットは、コンベアベルト2の個々の受容要素3に、担持材18を(少なくとも、この担持材を複数回用いることができない場合)、そして種子または苗8を再度取り付ける。
【0038】
図1に示すように、個々の受容要素3は、取付ユニット12または上流の処理ステップにおいて、まず担持材18を(この担持材を複数回用いることができない場合)、そして種子または苗8を取り付けられ、それによって、既に取り付けられた受容要素3をコンベアベルト2上に設置および/または締結することができる場合、有利である。
【0039】
しかしながら、通常、受容要素3が、コンベアベルト2に統合されるか、または少なくとも固く連結され、取付ユニット12が、単に、種子または苗8を、および必要な場合、新規の担持材18を受容要素3に挿入するようになっていることも考えられる。
【0040】
双方の場合に、受容要素3が既に、種子または苗8が取付ユニット12によって中に挿入される担持材18を有するか、またはコンベアベルト2の個々のレセプタクル3が、その根が既に担持材18内にある種子または苗8を取り付けられることが可能である。
【0041】
図2は、植物8がコンベア経路1に沿って搬送されている間にこれらの植物8の成長に適合させることができるコンベアベルト2の一部分の平面図である。個々の受容要素3間の距離を適宜調整することは理にかなっている。これはなぜなら、植物8が成長するにつれ、例えばレタスの結球の場合、特に葉の成分が増大し、このため、個々の植物8の表面積要件も増大するためである。この理由により、コンベアベルト2の個々の受容要素3は、機械的要素によって適切に離して分散され、それによって、個々の植物8は成長するための更なる空間を有し、十分に照明される。
【0042】
上記で説明した適合は、実質的に、受容要素3間の距離を変動させることによって達成され、その各々において、植物8またはその根は、植物8がコンベアベルト2上で費やした時間に基づいて担持材18に固定される。植物成長の範囲および速度を考慮に入れて、個々のレセプタクル間の距離は、植物8が搬送されている間、増大する。これに関して、
図2は、コンベアベルト2の一部分を、コンベアベルト2に固定された植物8と共に、植物8の2つの異なる成長ステージにおいて示す。
図2a)に示す植物8は、まだコンベア経路1の開始地点にあり、比較的小さいが、前記植物は、
図2b)に示す状態において収穫されようとしており、したがって、対応する大きさに達している。この大きさの成長を考慮に入れるために、個々の受容要素3間の距離は、
図2b)において、
図2a)における対応する距離よりもかなり大きい。
【0043】
図2に示す実施形態において、コンベアベルト2はコンベアチェーン15を有し、このコンベアチェーンに対し、個々の植物レセプタクル3が適切な弾性搬送ベルト16によって締結される。搬送ベルト16は、平行な搬送ベルト16間の距離「A」、および所与の搬送ベルト16に締結された受容要素3間の距離「B」の双方の距離を変更することができるように設計される。搬送ベルト16を外方に動かすことによって距離「A」に対する変更を達成することができるのに対し、個々のレセプタクル3間の距離「B」は、長手方向に搬送ベルト16を弾性的に延長することによって変更される。同様に、搬送ベルト16に直接連結されていない受容要素3に対する距離の増大は、受容要素3間に、搬送ベルト16が動かされるときにそれに応じて延長される弾性連結部要素17を設けることによって達成される。
【0044】
レセプタクル3は、レセプタクル3の少なくとも一部を搬送ベルト16に引き込むことによって搬送ベルト16に締結することができる。レセプタクル3の少なくとも一部分が1つの搬送ベルト16に各々固く連結されることも考えられる。
【0045】
しかしながら、
図2において見て取ることができるように、全てのレセプタクル3が直接搬送ベルト16に連結されなくてはならないわけではなく、弾性連結部17によって他のレセプタクル3を介して少なくとも1つの搬送ベルト16に間接的に連結されてもよい。植物8の搬送時間が増大するにつれ、例えば、搬送機構によってコンベア経路に沿って動かされるドラムの周りに搬送ベルトを巻き付けることによって、搬送ベルト16は離れるように動かされ、長手方向に延長され、それによって、中の植物8と共に、レセプタクル3間の距離が増大する。これに関して、弾性に延長可能な要素17が単に個々の受容要素3間に設けられ、単に外側のレセプタクル3、すなわち、
図2の角点に位置するレセプタクル3が外方に引かれることも考えられる。同様に、レセプタクル3は、弾性ネット内の異なる位置に配置され得るか、または対応する弾性ネットがコンベアベルト2の少なくとも一部を形成し、特に植物成長に基づいて、要求に応じてネットを引き離すことが可能であり、それによって必要に応じてレセプタクル3間の距離を変更する。
【0046】
更に、個々のレセプタクル3が弾性連結部要素17の移動の結果として動かされず、個々のレセプタクル3が個々に能動的に移動可能であることが考えられる。選択されたメカニズムのタイプと無関係に、個々の受容要素間の距離が、植物の増大する空間要件を満たすために、運搬方向およびそれに直交する方向の双方において変更されることが重要である。
【0047】
技術的実現可能性をチェックし、本発明による解決策の利点を証明するために、
図3に概略的に示すデモンストレータが構築された。前記デモンストレータは、長円形状に循環するコンベアベルト2を有するコンベア経路1を有し、2つの垂直路セクション6と、一方が上側偏向点4の領域内にあり、もう一方が下側偏向点5の領域内にある、2つの水平路セクション7とを含む。コンベア経路1の水平路セクション7は、デモンストレータの設計に起因して比較的短く、コンベアベルト2の特定の反転領域に制限される。
【0048】
コンベアベルト2は、ローラーシャッター要素の形態を取るプラスチック材料、好ましくはポリ塩化ビニル(PVC)から作製されたスラットを有し、その上に植物8が配置され、コンベアベルト2の下の領域19内に根が突出するのに対し、葉および/または果実はコンベアベルト2の上の領域20内に突出するようになっている。空中栄養剤供給9aのための手段を備える栄養剤供給ユニット9が、コンベアベルトの下またはコンベアベルト2内に位置し、楕円状に循環する。示される実施形態において、空中栄養剤供給ユニットは、栄養剤溶液タンク25を有する再循環水ポンプシステムに連結された非ドリップ4ジェットヘッドの形態の3つの噴射ノズル24を有する。
【0049】
コンベアベルト2は、ウォーム駆動部23によってコンベアベルト2に連結された電気モータ22によって駆動される。
【0050】
植物を照明するために、LEDを有する照明ストリップがコンベアベルトの上の領域20内に垂直路セクション6と平行に照明ユニット10として設けられる。駆動モータ22および照明ユニット10としての役割を果たす照明ストリップは、中央制御ユニット26に連結され、これは、照明と、植物がコンベア経路1に沿って動かされる速度との双方を、動かされている所与の植物の要件に対し適合させる。例えば、照明段階および暗段階または遮光段階をこのように変動させることができる。
図3に示されるデモンストレータは、可変環境制御を有する環境室内に設置され、様々なレタスの品種における成長実験に用いられた。
【0051】
図3に示すデモンストレータから開始して、前記デモンストレータまたは少なくとも同様に設計されたデバイスを、植物栽培システムのための基本モジュールとして用いることが考えられる。植物栽培システムは、この種の複数の基本モジュールを含む。ここでもまた、植物の所与の要件に依拠して、垂直路6および水平路7が、要件に応じて、このため最適化された方式で配置されることを確実にする植物栽培システムを提供することが可能であることが重要である。
【0052】
図3に示すデモンストレータを用いて、特定の植物栽培実験が実行された。Rijk Zwaan社からの専門のペレット化されたレタス品種(Expertise RZ)が種子材料として用いられた。第1のステップにおいて、前記品種は、2cmのロックウールブロックの栄養剤溶液内で、120μmol/s/m
2のLED光(青色/暗赤色)下で11日間にわたって作成された。前記期間において、日中18時間にわたって温度が27℃、湿度が65%に設定され、夜間6時間にわたって19℃、湿度が55%に設定された。したがって、照明は、18時間にわたってオンに切り替えられ、8時間にわたってオフに切り替えられた。
【0053】
苗は、12日目にデモンストレータに移され、前記苗は、同時に、水耕NFT栽培(NFT:栄養フィルム技法)のために10cmのロックウールブロックに移された。青色および暗赤色のLED光ストリップ(Philips社からのGreenPower製造モジュール)によって約135μmol/s/m2の照明が達成された。5バールおよび間隔を開けた散布で設計された(Netafim社からの)噴霧システムが空中栄養剤供給のために用いられ、栄養剤溶液が5秒の期間にわたって散布され、次に散布は4分間にわたって無効にされた。
【0054】
栄養剤溶液のpH値は希釈された5%の硝酸によって5.5~6.5に設定され、栄養剤成分は、(YARA社からの)液体肥料によって0.8~1.0EC(電気伝導度)に保たれた。
【0055】
栽培段階全体にわたって、植物は徐々に動かされるコンベアベルトによって24時間の間に360°の回転を経た。3週間の栽培後、葉バイオマスが計量された。
【0056】
上記で説明した植物栽培実験の結果が以下に示される。
図3に示すように、デモンストレータシステムにおける3週間の栽培後、LED照明を用いた標準的な水耕NFT栽培と比較して、最大25%の葉バイオマスの大幅な(t検定:0.03)の増大が観測された。更に、連続的な軌道方向の再位置合わせにより、レタスの丸く均一な結球が形成された。対照的に、垂直壁上で静的かつ水平に栽培された植物は、地球の重力場による強力な影響を受け、結球はいびつとなった。このため、本発明による実施形態は、良好な植物成長を促すことが示された。
【符号の説明】
【0057】
1 コンベア経路
2 コンベアベルト
3 レセプタクル
4 上側偏向点
5 下側偏向点
6 垂直路セクション
7 水平路セクション
8 植物
9 栄養剤供給ユニット
9a 空中栄養剤供給ユニット
9b 水耕栄養剤供給ユニット
10 照明ユニット
11 遮光段階
12 取付ユニット
13 収穫ユニット
14 清掃および滅菌ユニット
15 コンベアチェーン
16 搬送ベルト
17 弾性連結部要素
18 担持材
19 コンベアベルトの下の領域
20 コンベアベルトの上の領域
21 調整ユニット
22 電気モータ
23 ウォーム駆動部
24 噴射ノズル
25 栄養培地タンク
26 中央制御ユニット